匿名 2016-04-02 18:50:39 |
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夕日が彼女の髪に反射して、キラキラと光っていた。生温かい風は、心地よく僕らを包む。彼女の髪が、制服が、優しく揺れていて、絵になると思った。彼女は、僕に見られていることも気付かずに(気付けずに)、サッサ、と独特な持ち方で鉛筆を動かす。何を描いているのかは、彼女の顔を見ればわかるから、僕はなんともいえない気持ちになって、自分の紙に目をおとした。
コツコツ、と紙に鉛筆を落とす。ダメだ、描きたいものが浮かばない。チラ、と横をを見る。いっそのこと、彼女と同じノを描いてやろうか。テーマを訊かれたら「君と同じモノだよ」とでも答えてやろう。そうすれば、少しは、僕を見てくれるかな。
よし、と鉛筆を動かそうとすると、彼女は僕に目を向けた。なに描くか、決まったの?と笑いかけてくる。彼女を見たとき、自然に視界にはいった紙は、悠々と揺れていて、少しだけ腹がたった。うん、と苦笑まじりに答えれば、応援のメッセージが返ってきた。なんだかモヤッとして、一瞬だけ鉛筆を強く握りしめてしまった。
「よっしゃぁあ!!」
外から聞こえる、声。おかしいな、ここ3階なのに。なんで聞こえんの、大声だしすぎでしょ、バカじゃないの。全く、笑わせないでよ。彼女も驚いて、少し固まったあと、耐えられないというように、ップ、と笑いをこぼした。その後諦めたように僕たちは笑い続けた。彼女はおもむろに席を立つと、窓に駆け寄った。僕も後を追って、外を覗き見る。そこには、楽しそうに笑う彼がいた。
彼女は彼を見つけると、大きく息を吸った。その行動に僕がギョッとしたと同時に、彼女は彼に負けないくらいの大きな声で、彼の名前を呼んだ。全く、似たもの同時だ。無意識に頬が緩んでいるのに、僕は気付かない。彼女の声は反響して、彼に届いたようだ。彼はこちらを向くと、眩しいほどの笑顔を浮かべ、ピースサインをおくってくる。彼女は、とても嬉しそうに笑って。周りのチームメイトが、彼の肩をつつき始めた。彼女もそれを見かねて、僕に笑いかけると「バカだよねぇ」と照れたように頬を赤くした。自分の席に戻っていく彼女。
もう、そんな顔されたら、描けなくなってしまうじゃないか。チラリと後ろを見る。彼は、やっぱり楽しそうに笑っていた。それを見て、思わず苦笑してしまう。いいよ、いいでしょう。仕方ない、描くものなんてないし、彼女達を描いてやろうじゃないか。そして、2人の顔には、憎ったらしいほどの笑顔を描いてやろう。そのときの僕は、どんな気分になっているのか、今から楽しみだ。
綺麗な思い出なんていらないの。
唯一でいてほしい、唯一でいたい。
彼女は過去を愛しすぎた。
頭を撫でる手が冷たい。
笑わないでよ、いつものように怒って。
私はあそこに入れない。
いつ会えるかの保証のないのに、
ねぇ、なんでもいってよ。僕の嫌なとことか、アイツにあって僕にないとことか、全部直すから。
「それじゃあ、キミがキミじゃなくなっちゃうよ」
じゃあどうしろってんだよ。
時の流れは残酷で、早くて、速くて仕方ない。
僕は、そのはやさについていけてなくて、幾らか置いてけぼりな気がする。
みんなが僕を置いて、足を進めていく。手を伸ばそうと思った頃には、時が彼らを連れ去ってしまうのだ。
そんな姿を見ても、悔しくもなんともない僕は、きっと、笑顔でそこに、あぐらでもかいて座ってしまうのだろう。
久しぶりに会う彼女は、ボクの知る彼女じゃなかった。
なんというか、怯んでしまって、昔のように話しかけることができなかった。
私は人見知りだ。だけど、そんなんでも話せる人は幾らかいた。そのなかに、好きな子だっていた。なのに、なのに。久しぶりに会った彼は、私の知る彼ではなかった。あの明るい笑顔をみたかったのに。
私の、僕の知らない時を、きっと彼は、彼女は、楽しく過ごしてきたのだろうと。
何故かそう思ってしまった。
騒がしいのは嫌いじゃない。
だからといって、好きか、と聞かれたら迷うところもある。
こういうとき、物事を好き嫌いでしか判断できないのはどうか、と思ってしまうのは、ただの逃げなのだろうか。
多分俺はアンタのこと好きにならないよ。俺はあの子が好きなの。しかも一途だし、まぁ、その辺は普段の生活でわかると思うけど。
「でも私はその多分に賭けたいの。少しでも可能性があるなら、いいえ、なくても、アナタが好きなことに変わりはないもん」
......もん、とか、アナタが使っても可愛くないんだてど。ホント、バカだよね。
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