mey。 2016-04-02 10:13:09 |
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prologue
目を覚ます。辺りはもう明るく、昨日の静寂が嘘のように楽し気な声が隣の部屋から溢れんばかりに聞こえてくる。
ああ、少し起きるのが遅くなってしまったようだ。枕元の上に綺麗に畳まれた青く染まったお揃いのパーカーを手に取り、何時ものように着替えて腕を捲る。
「よし、今日もイカしてるぜ。」
鏡の前に一人でキメポーズを決めると、勢いよく襖を開いて息を吸った。
一章 始まり
時計の針はもう11時過ぎ、皆揃った“いつもの 場所”はいつも通りそれぞれ好きな事をやって過ごしている。襖が開いて、カラ松兄さん出てきた気がするけどきっと気のせいだろう。ほら、皆だっていつも通りの無視ってやつだ。少し可哀想な気もするけど、まあカラ松兄さんならきっと大丈夫。僕は端末を巧みに弄りながら、壁に凭れ掛かかった。
『「あー、暇だなあ…。」』
独り言のようについ口から洩れたと思いきや、タイミングよく何人かの兄さん達も同じように呟いたみたいだ。それを待っていたかのようにおそ松兄さんの表情がなにか閃いたように明るくなると、突然立ちあがった。
「よーしっ、皆!なんかしようぜ!」
なんだ、考えてないのかよ。此れだからバカな兄を持つと疲れる、小さくため息を吐きそのまま瞳を閉じる。
「何するの!?野球しよーよ!」
「野球って前やったじゃん、ほら最終回の時!だから却下」
「ちょっちょっと!最終回とかメタ発言やめろ!」
「フッ、だったらかくれんぼなんてどうだ?」
「『…。』」
「とりあえずさ、なんかしよーぜ。もう俺、暇すぎて死にそぉ…」
あえて聞こえないふりなんてしている間にどんどん、別々に話し出す皆。もう聞いてるのにも疲れたのか、再びため息を吐くと僕は小さく口を動かした。
「じゃあさ、とりあえず外いけばよくない?」
「『それだ!!』」
そんな声合わせて言わなくても、呆れてる僕に関係なしに皆準備に取り掛かる。僕は薄いピンク色の日傘を持つと、ポケットの中に端末をいれた。
一章 始まり
そんなこんなでトッティの提案で外へ出てきたのだが、今日に限って天気があまりに良く太陽の光が目に染みる。暫くの道中、皆の話し声も絶えずに聞こえていたのだが、いつの間にか話題も尽きたように聞こえなくなっていた。
比較的家で過ごす僕たちからしたら、この炎天下外に出ること自体自殺行為だったのかもしれない。はっきりしなくなってきた意識の中、休憩を促そうと声を掛けようとした瞬間。後頭部からもの凄い衝撃を受けた、まるで何かに殴られたような重い痛み。
咄嗟に、熱いアスファルトに叩き付けられる。いや、叩き付けられるというより倒れたのかもしれない。徐々に薄れていく意識の中、最後に見えたのは紅く染まる自分の手のひらと無動作に転がる兄弟たちの背中だった。
二章 監禁
『…………ぃ、…ぉ…ろ……。』
何か聞こえる。よく聞こえないけれど、妙な寒さは感じる。なんだ、もう朝か。また今日もなにもすることなんてないのに、朦朧とする中いきなり身体を強く揺すぶられ反動で目を覚ます。
『よ、良かったあ…。お前目覚まさなかったら、俺マジ泣くとこだったわ』
まだぼんやりとした景色でも見える、おそ松兄さんの顔。鼻の下から血痕が滲んでいる、少し涙目なそんな顔。手にはべったり、朱黒な液体をつけている。
「此処、何処。」
徐々に取り戻してきた意識で、上半身を起こすと同時に頭に痛みが走る。小さく呻き声を洩らし、痛みを発する頭に手を当てると生温い液体が手についた。
「なんだよ、これ………っ。」
『ちょっ、まてまて!あんまり触んなよ、お前なんか頭ぶつけた?すっげえ出血してて。』
頭を抑えつつパニック寸前の中、辺りを見ると同じく怪我をおおった兄弟たちが壁にもたれ掛かっていた。カラ松兄さんは、顔面にパンチを食らったか頬に痣が。一松は比較的無傷に見えるが、なにかぶつぶつ呟いて震えている。十四松は右腕を痛そうに抑えながら、一松にカラ松兄さんと一緒に明るく話しかけている。トッティは、右の指先がもう無く涙をぐっと堪えている様子だ。あとは、皆に共通して言えることすれば皆を怪我しているといったところだろうか。
比較的軽傷であるおそ松兄さんがみんなの止血をしたんだろうか、履いていたジャージのズボンは膝の上まで千切れていて。それぞれ兄弟たちの患部に、不器用ながらくくりつけられていた。
『なあ、皆。とりあえずさ、一旦此処に来たとき何があったのか一人ずつ話してくんね?』
こういうときやっぱり、一番助けてくれるのは長男なのかもしれない。パニック状態だった頭は徐々に冷静さを取り戻し、一旦大きく深呼吸すると状況を整理しようと頭をフル回転させた。
>香パンダさん
わあ、2度目!!ありがとうございます*
更新日、まとまりなく申し訳ないです^^;
>スカイさん
コメントありがとうございます!*そう言っていただけるとありがたい!頑張ります^^
二章 監禁
なんでこんな事になったんだろう、よくよく考えてみれば可笑しな話だ。ついさっきまで、楽しく皆とお散歩だったのに。いつの間にか、一松兄さんもトッティも、皆暗くなってしまった。なんとかその場を盛り上げようと負傷した腕を抑えながら、ぱたぱたと片腕を振ろうと試みる。けれど、それを遮るかのような一松兄さんの冷たい目線。流石の自分でも分かる、凍り付くような目だ。若干焦りが見えてきた中、おそ松兄さんが何か提案を出した様だ。すると欠かさず、僕の隣に居たカラ松兄さんがそれに答えるように小さく口を動かした。
「まず、歩いていただろ?俺もあまり覚えていないんだ、あまりに暑すぎて休憩を言おうにもタイミングが無くてな。暫く我慢していたんだがなんか凄い眠くなってきて、気付いたらこの有り様さ。」
そうそう、僕も同じような感じだ。必死に首を縦に振ると、小さな声で“一松兄さんもだよね”なんて耳元で語りかけるように話しかける。当然、返事は帰ってこないが。
『そっかぁ、他は?』
「あ、僕もそうだよ。歩いてて、僕もあまりの暑さに休憩がとりたくなったんだ。でも、休憩する前になんか後ろから殴られたみたいで。それからは、同じ。気付いたら此処に居たって感じかな」
続いてチョロ松兄さんが淡々と冷静な口調で話し出すと、おそ松兄さんは疑問そうに眉を潜めた。小さくため息をはき、再び僕たちに質問を投げ掛けようとした時のことだった。耳を塞ぐような大きな機械音が冷たい鉄の床に反射して、甲高い音が部屋全体に響き渡った。その途端、アナウンスのような声が天井付近にあるスピーカーから流れ出す。
[六つ子の皆さん、おはようございます。貴方たちは監禁されました、出たければ私の命令にそって動いてください。]
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