背後 2016-03-14 16:37:42 |
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(やはり嘘だったのか、と何とも言えない感情がこみ上げれば下唇を噛み。相手の方へと振り向いたその時には哀し気な表情でも憤慨した様子でもなくただ何も読み取れない様な無表情で。立ち上がれば寝室から出ていこうとドアノブへと手を掛け。)
--そんな事だろうと思った。
俺、今日オフ何だよ。他の部屋で寝てくる、御前は帰るなり好きにしろ。
……待ってよ。
何とも思わないの?
僕が酔っていようが何だろうが昨日は僕のこと受け入れたんでしょ?
それが、朝になって酔ってたからって、そんな事言われて、どうしてこんな時に限って楽は何も言わないわけ?
……別にそんな僕の記憶に無いときの事怒られても困るけどさ、楽が何も言わないなんて気味悪いんだけど。
(一度振り向いた相手のその表情の無機質さに一瞬驚いて僅かに息を呑み。何の感情も読み取れないその表情に心が一瞬でざわついて思わず相手を引き止めるとそんな事を問いかけ。奇妙だと思われるだろうかとは思ったがそんな事は考えられないほどに存外自分も必死になっており。寧ろ罵声を浴びせられたほうがまだ自分の罪悪感からすればマシだったという思いから煽り立てる様な言葉を並べじっと相手を見つめ)
さあな、寝起きの人間には内容が濃いんだよ。後質問多すぎだっつーの。
(何とも思わない訳がないがそれを口に出す余裕が無いくらいにショックを受けていて。またショックだと感じている自分の心の変化にも少し戸惑っているようで今はともかく此のことを忘れ去りたいと言う思いの方が強く、その場から逃げるように扉を開けて部屋から出れば一階のリビングへと向かい。昨日二人で飲み会をしたままの机は片付ける気にもなれず、ソファへと横たわれば瞼を閉じいっその事昨晩から全て夢であってくれと願い乍片腕で顔を隠し。)
…、……。
(逃げるように去っていってしまった相手の背中を見つめ大きく溜息を吐くともう一度ベッドに横になり。受け入れたという事について否定しなかった相手を見て、やはり自分の言葉に相手は真摯に答えてくれたのだろうと容易に予想が付き。だからこそ仕事の為とは言え相手を最も傷つける様な事をしてしまった自分が情けなく、どうしようもなく歯痒く。本当は本心から相手のことが好きなのだと言えてしまえば良いのに、酔っても居ない頭ではどうしても仕事の事やその他諸々の事情について深く考えそれを恐れてしまい。相手も自分が家に居ては過ごしづらいだろう、早々に退散しようと寝室を出て何とか階段を探し玄関を探して)
--馬鹿野郎。
(自分一人のリビングでそう呟けばその音は虚しく消えて。ふと相手のマフラーの事を思い出すも今届けに行くつもりは更々無く、通知の為に震えた己の端末手に取ればその内容は昨晩来れなかった龍からのもので。グループのトークへ送信されたメッセージは三人で遊ばないか、という内容のものだったがそんな気分にもなれずもう一人は絶対に今自分の顔すら見たくないだろうと思い一言簡潔に断る旨のメッセージを送り。再び眠ろうとするも眠気は全く無く眠れそうにない為立ち上がり洗面所へと足運んでは。)
(玄関を探し当て外に出ると自宅への道を歩いて行き。吐き出した溜息はいつもよりも深く、不甲斐なさと申し訳なさで心の中はいっぱいで。いっそ仕事のことなど考えず素直に全てを吐き出してしまえたら楽なのに、そうも行かずにふとポケットで震える携帯端末を手に取ればメッセージの欄が更新されており。龍からの遊びの誘いに断る返事をしている相手の様子を見てチクリと胸が痛むのを感じ、自分も龍に対して簡潔に断りの文を送ると漸く自宅に辿り着き玄関から入ってリビングのソファへと直行し体をソファの上に投げ出して携帯端末をサイドテーブルに置き)
...クソッ
(本当に自分は相手に弄ばれていたのだろうか、等色々なことを考えていれば自然と頬へと涙が伝い。その痕を残さないように水で顔を洗えば寝癖で少々乱れた髪を掻き上げて。何故自分がこんなにも相手のことで振り回されなければいけないのだろうかと考えるも、それよりも恋しさが薄く残っていることに自身で驚いていて。)
……はぁ。
(どうしてこんな事になってしまったのかとソファに突っ伏しながら考えており。楽が昨晩のこと等忘れてくれれば良いのにと思いつつ、あの様な別れ方をしてきた為に相手のことが心配で。寝室で見せた一瞬の寂しそうな表情や何の感情も灯さない無機質な表情を思い出してまた深い溜息を吐くと、仕事というのは相手をあんな風に傷つけてまで守るべきものなのだろうかと真剣に考え始め。本当に守るべきなのはし事ではなく八乙女楽だろうと糾弾するような自分の中からの声に苦しくなって服の胸元をくしゃりと掴むと再び家を出て来た道を逆に戻って行き)
...此れ、いつ返すか。
--もう俺の顔なんて見たくも無いだろうけどな。
(自分の為にと貸してくれたマフラー畳み、其れをリビングへと持っていけば机の上に置いて。昨晩のコップやら瓶やらを片付けるとソファへと再び横たわり。薄く見える程度の涙痕指でなぞれば言葉にし難いこの霧がかかったような相手への気持ちをどうすれば良いのだろうかと目を瞑り。玄関の鍵を施錠し忘れている事にも気付かずにそのまま浅い眠りへとついてしまえば。)
…、…楽。
(相手の家へと辿り着き、気まずいが自分の蒔いた種なのだから仕方がないと扉を押してみると未だ相手は鍵を掛けておらず容易に中へと入る事が出来。リビングへと向かってみると相手がソファの上に横になっており恐る恐る中へ入ってみるものの相手が起き上がるようすはなく。寝ているのかと少し安堵してしまった自分が居てゆっくりと近づくと相手の頬には薄く涙の跡が付いており、それを見ると胸がまた苦しくなって。自分の羽織っていた薄桃のカーディガンを相手に掛けてソファの背もたれの後ろに座り相手が起きるまでじっと待っており)
--... ... ?
(少し時間が過ぎた後、目を開ければ何故か見覚えのあるカーディガンがかかっていて。思考が追いつかずに髪を掛けば己の辺りを見回し。未だ相手の存在には気付いていない様子で暫し天井を眺めていれば上体起こし。その際やっと相手に気がつけば驚いた様子で目を丸くし。)
...天?
……
(暫く待っていれば衣擦れの音がして相手が起きたのがわかり。其方に顔は向けられず相手が気づくまで待っていれば、背後から相手が自分の名を呼ぶ声がして漸く振り向き。状況を把握しきれておらず困惑しているような相手を見つめて少し眉を下げるとゆっくりと立ち上がって無言で相手の方へと近づいてその頬についた涙の跡を指で拭い)
……楽、ごめんね。
--何だよ、御前らしくない
(謝罪の言葉が相手の口から紡がれれば更に驚き。相手の指の感触が己の頬へと伝われば顔逸らし、"同情何て要らねえから"消え入りそうな声でそう呟くと己に掛かっていたカーディガンを帥へと差し出し。相手は何を考えて自分に謝っているのだろうかと考えてみるもやはり同情しか無いだろうと推測すれば不安そうにちらりと視線を送り、再度逸らして。)
…っ、同情じゃ、ないから。
好きな人をこんな風に泣かせて、…本当最低。
ちゃんと話すから、話を聞いて、楽。
(相手に顔を逸らされれば其れだけのことをしたのだから当然だと思うもののやはり胸が痛み。相手の頬からそっと指を話し消え入りそうな相手の声を聞くとぐっと拳を握り締め、カーディガンを受け取ると今度はこちらが俯く番で。独り言のようにそれを述べると今度は決意したように顔を上げ相手の瞳をじっと見つめ、今度は相手が視線を逸らさないように頬を両手で包み込み)
昨晩のこと、僕は何も覚えてないけど、お酒で本心を零しちゃった、みたい。
でもその本心は、仕事の邪魔だし、楽が嫌がるかなと思ってずっと仕舞っておいた物だった。
だから、今朝楽の話を聞いた時は相当焦ったし、誤魔化すのが一番だと思った。
…でも、こんな風に楽を傷つけて、泣かせて。
ごめんね、僕が間違ってた。誤魔化そうなんてもうしないから。
…本当はね、ずっと大好きだったんだ、楽のこと。
...御前はプロ意識が強すぎるんだよ。其れに囚われて偶に誰よりも盲目だしな。
--天の所為で折角のオフが台無しなんだよ、責任取りやがれ馬鹿。
(顔を逸らしたくても逸らせないその状況に必然的に相手の瞳を見詰めていて。その真剣な表情と物言いに此方が相手の本心なのだろうと直ぐに分かればゆっくりと手を伸ばし相手の服を掴んで。その掴んだ手は僅かに震えていて力も弱く。原因は相手の気持ちが本物だったことの安心感からのもので胸が締め付けられる程に其の言葉は嬉しく。)
…───うん…っ
(自分の服を掴む相手の手は微かに震えており、それを見ればゆっくりとその上に自分の手を重ねて確かに握り締め。何も咎めず、許してくれた相手に眉を下げ笑顔を浮かべるとその体を愛おしそうに抱き締めて。そしてその額に口付けを落とすと然と相手の瞳見て、嗚呼、何だ、恋仲になって起こるだろう凡ゆる問題を恐るのではなく、自分がすべきはその凡ゆる問題から相手を守ってやることだったのだと今更になって気づき。)
…もちろん、責任取るよ。
今日だけじゃない、一生を賭けて、僕に楽を幸せにさせて。
--ふは、プロポーズかよ?
...一回御前の物になったんだから、簡単に離すんじゃ無えぞ。
(自分の体が相手と密着すれば今までの不安が一気になくなり其れは安心へと変わったようで帥の肩口へと顔埋めては何時かそうした様に擦りつけて。自分の腕を相手の背中へと回せば離すまいと腕に力込め強く抱き締め、相手の名を何度も呼んでは。顔を上げて視線交わらせると微笑む様に目を細め口許緩めて。)
本物のプロポーズの時までにはもう少し良い言葉と指輪を用意しておくから待ってて。
…当然。楽こそ離れたりしないでね。
(相手の体温を自分は覚えていないが身体は確かに覚えているようで何処か懐かしい心持ちがして。相手の背中を優しく撫で、何度も自分の名を呼ぶ相手が酷く愛おしく、応えるように相手の名前を呼び返し此方もまた微笑浮かべその頬に軽く触れるだけの口付けを何度も落とし。相手の幸せそうな表情を見て、嗚呼、自分がさせたかったのはこの顔だと安心したように頬を緩め)
…御前のファンにバレたら俺殺されるんじゃねえの?
離れてやらねえよ。
(相手の身体は自分よりも小さく歳も下なのだがそれを感じさせない程の男前、と云う表現が似合うようなその発言に一瞬心がきゅっと締め付けられる様な感覚になり咄嗟に顔隠して。頬への口付けに擽ったそうにするも相手の首後へと腕回し、甘えるような声で次発した後顔近づけて。)
--天、唇じゃ無えと足りねえんだけど。
楽のファンにバレたら僕だって殺されるよ。
…うん、絶対だよ。
(顔を隠した相手を見て赤くなっているのだろうなと思うと嗜虐心が沸いてどうしても相手の顔が見たかったが今は意地悪を言って泣かせたばかりなので大目に見ることにして。優しく相手の頭撫でていれば不意に首の後ろへ回された手に少し瞳丸くし相手を見れば近づけられた顔と甘えるような相手の声に思わず固まってしまい、直後一気に色々なボロが出そうになり内心の大慌てで取り繕いながら理性を何とか保ち相手の顎を指でくいっと上げさせるとふと笑ってその唇にそっと口付け落とし)
…強欲だね、楽。
良いよ、楽が欲しいものは全部あげるから。
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