鶴と月の部屋。(非募)

何だよそれ、鈍くなんてないぜ？（動きのことを彼は言っているのだろうか、それならば心配無用だと不思議そうに首を傾げそう言うと夕焼けを見つめ｢すごく綺麗だ、この色に染まったら俺は鶴らしくなれるな｣と笑って）

何処かに飛んでいってしまいそうだなぁ…(くすくすと笑うとすっかり紅くなった空を見上げ、白い装飾の彼にはとても良く似合っていると思い相手の瞳を見つめて)

飛んでいったら誰が君の世話をするんだい？（そもそも飛べるはずもないが自分の仕事とも言える彼の世話を放ったらかしにするほど自分は落ちていないとそう述べて｢飛べない鶴ってのもなかなかの驚きだなぁ｣と続けて）

はは、鶴がいない日は兄上達に世話を頼んでいるのだぞ？(どこか彼らしくなく意地悪く目を細めると自分と繋がりのある三条の兄達を思い出し、柔らかく笑って見せて)

そりゃ知らなかった、あいつらも大変だろうなぁ。でもそれなら俺がいなくても安心だ（そう述べ自分には今のところ同派といえる刀は居らず元主の繋がりで纏められることもあり兄弟の多い彼はどこか羨ましく無意識に｢兄弟がいるってのはいいな｣と呟き）

鶴も弟だぞ？…国永と宗近は師弟の関係だったではないか(直接的な血の繋がりは無いとはいえ師弟関係と思えば無関係ではないだろうと笑ってみせ)

はは、確かにそうだな。宗近殿に父上はとても世話になったもんだ（弟と思われていた事にどこか気恥しい気持ちになりながら昔のことを思い出しそう言って微笑み）

…昔の鶴は俺を驚かそうと躍起になっていたな。いや、今もそうか(自分よりまだ小さかった彼によく驚かされたことを思い出すと無意識に笑みがこぼれ｢昔は小さかったのになぁ｣とすっかり背の高くなった相手をみつめ)

君が初めて俺に驚かされた時の反応がそりゃ面白かったからな、躍起になるさ。それに千年も経てば大きくなるぜ（初めて自分が彼を驚かせた時の事は今でも鮮明に覚えておりもう一度あの気持ちを感じてみたいと何度試すものの驚かされ慣れた彼にはほぼそれも無意味でそれでも続けるのはきっとただ楽しみたいだけなのだろうと苦笑し彼からするとまだ自分は雛鶴のままなのだろうかという思いが頭を過ぎって）

そうかそうか、…俺の背を越すことはなかったがな(ほんの少しだけ差のある身長に目を細めて笑うと｢これからも俺を驚かせてくれるのだろう？｣と首を傾げ)

当たり前だ、ずっと驚かせるつもりだぜ！（たとえあの時のような反応はなくとも彼を驚かすことはやめないのは分かりきっていてにこりと微笑めばそう言い）

ああ、楽しみにしているぞ(いつものように柔らかく笑ってみせると、暫く歩いたところで自分たちが帰るべき本丸が見え｢もう着いてしまったか｣と少し残念そうに眉を下げ)

本当だ、遠回りしたのになぁ（楽しかった時間は早く過ぎると言うのは本当のようでそれを実感しながら苦笑し｢また今度行こうか｣と提案して）

…いいのか？(相手の口からまた行こうなんて言葉が出るとは思わず僅かに目を丸くするとどこか嬉しそうに表情を輝かせ首を傾げてみせて)

勿論！君との散歩も楽しいしな（束の間の休息となればそれでいい、今日見た彼の笑顔などをまた見れるとなればこちらとしても嬉しいもので微笑んで）

そうか、……なら、また行きたい(相手の言葉に目を伏せると小さく微笑み｢今度は鶴に何か買ってやろう｣と何処かに自慢げに胸を張り)

そりゃ嬉しいな！楽しみにしてるぜ、兄上（何か買ってもらえると言われると嬉しい気持ちになりまるで童だなと思いつつ悪戯っぽい笑みを浮かべ）

その呼ばれ方は久々で慣れんな…(眉を下げ困ったように笑うと｢帰ったら眠りたい気分だな｣といつもより多く歩いたせいか早速眠気がこみ上げ)

夕餉になったら呼ぶぜ、それまで寝ときなよ（疲れるのも無理はない、あんなにはしゃいでいたのだから。自分も初めの頃はそうだったなと懐かしみ微笑んで）

……鶴も一緒がいい、…駄目か？(そっと相手の服を引っ張ると子供のように強請ってみて、相手と一緒にいたいという気持ちが強いらしくそっと目を伏せて)