主 2016-03-02 23:55:43 |
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腹を割って……分、かりました。
(昨日以上にじわじわと滲む、主の側に在れる多幸感もその誘いで途端に霧散してしまい。今ではなく長い時間の取れる夕餉後、ここではなく主の部屋というだけで何やら重要な話であるのを察するのは容易。加えて腹を割って話したいというのであれば、内容は分からずとも楽しい話でないのは確かで、思わず強張った表情のままこくりと頷き)
何、取って食いはせん。そう身構えるな。
(何やら硬くなっている相手の肩にポンと軽く手を置けば、威圧とは真逆の位置にある緩やかな笑みを向けていき。今から気を張っていては、夕餉後には疲れ果ててしまうだろう。そうなれば話どころでは無いと思いながら、暫くして肩の力を抜けと言わんばかりに置いていた手を離していき。朝餉の方へと向き直り)
では、朝餉を済まそうとするか。
(/100ですねっ。貴方様のお陰で毎日が楽しいです。/ 夜の勘違い解消前に、内番で一方的に不動が長谷部に突っかかって口論?させたいのですが(すぐに仲直りします)如何でしょう? また何かやりたい事があればお気軽に仰って下さい)
……頂きます。
(気にはなるものの、そう言われてしまってはあまり気に病む訳にも行かず言葉に従い手を合わせ。炊いた者が違うのか昨晩の夕飯時よりやや固い米を咀嚼しながら、段々と確かに今気にしていても主が話してくれるのは夜なのだとの念が強くなり、落ち着かない心地は一旦心の片隅へ。そうしてみると今更ながら手を置かれた肩が熱を持ち始めた気がしてきて、一度だけ箸を置き自身の肩を指でそっと撫ぜ)
(/三桁突入ですね、こちらこそ拙いロルに展開下手な身ながら素敵なこみなが様のお相手が出来て幸せです!/了解しました、実は不動は朝のccで出すか迷った子なので絡めて嬉しいです。信長様とのあれこれには欠かせない子ですよね。いつも展開任せ気味で申し訳ないです、何かやりたい事や提案があれば背後から失礼させて頂きます。ご配慮ありがとうございます)
(先程話しながら朝餉の支度をしていたからか、やや塩気の多くなってしまっただし巻き卵などを食し。然しアジの開きは焦げていなかったため上出来かと考え直しながら、朝ゆえ量の少ない其れらを直ぐに完食すれば本日の予定を脳裏に組み立てていき。昨日来たばかりのへし切に早く本丸に慣れて貰おうと、早々に今日は畑当番の内番を任せようと決め。相手が食べ終わるまで待ち)
(/いえいえそんな…!むしろこちらが感謝の言葉しか出ないです。/ おおそうだったのですか…! 欠かせないですよね!では出させて頂きますね。ああ、いえ逆に好き勝手やらせて貰って申し訳ない次第ですので…。はい、其の時は是非お呼び付けて下さいませ。それでは背後は失礼しますね。)
(諸々考えごとをしながら食べていれば、あっという間に皿は空になってしまいもう少し味わうべきだったかと微かに後悔しつつ箸を下ろして。よく見ると主はとうに食べ終えていた様子、もしかせずとも自分の完食を待っている風であり慌てて居住まいを正し)
主、俺に何か御用ですか?
嗚呼、お前に本日の仕事内容を伝えようと思ってな。この後は夕方まで不動と共に畑当番を頼みたい。畑の場所は分かるじゃろ? 先に其方へと向かっていてくれ。
(まだ内番の開始時間まで猶予がある上に、不動も朝餉を済ませていなかった為そう簡素に用件を告げていき。今の季節は春だ、恐らく馬鈴薯や胡瓜が実を付け始めている頃だろうと代表的な春野菜を脳裏に思い描けば、徐ろに腰を上げていって。膳を持ち上げては炊事場の方へと足を向けて行き)
さて、わしは朝餉の片付けをするか。長谷部、畑当番は任せたぞ。
はい、主の命とあらば。
(仕事という単語にぱっと目を輝かせ、一も二もなく頷いて快諾し。それが例え戦の命でなくとも仕事を仰せつかったというだけで嬉しかったのだが、畑へ向かいながらその仕事の相棒として挙げられていた刀の名前に僅かに眉を顰め。どうにも信長様の元へかつてあった刀というのは、それだけで気に食わなくて困ると思考を他所へやりつつ外履きを履き)
(/呼び方はお好きにどうぞ、公式で不明なものはこちらも捏造してしまっているので……/蹴り可)
そういや、今日は畑当番だっけか。
(信長様の御命令とあれば甘酒など飲んでいられず、そう呟けば朝餉を終わらせて素面のまま畑へと向かって行き。其処に着けば、信長様が好んだ西洋の服とキリシタンであった黒田の両方に感化されたかの様な服を着た付喪神の男が既に居て。…へし切長谷部。信長様に寵愛され、後に黒田へと譲り渡され、長く大切にされた国宝の刀。なのに昨日から思っていた事だが信長様に対して何処かヨソヨソしく、更に授かった名前の方で呼ばれる事を拒否している様に思える。昨日来たばかりなのに直感的に気が合わなさそうだと思っていた為に、夕方までの内番は彼と一緒かと思わず警戒気味に相手を見て)
……げっ、確かお前はへし切。何だよ、今日の畑当番はお前とやるのかよ。
(畑まで来てみたは良いものの、自身の着る戦装束では汚れては困る、何か動きやすく汚せる服に着替えねばと思案していた矢先に背後へ気配。振り返れば当番が同じになってしまった不動が立っており、元々良い感情など抱いていなかったというのに相手からも好意的でない態度を取られればみるみる表情は冷め、「主の命だ、文句は許されんぞ」と。くるりと踵を返しながら何の感情も出さぬ様に淡々と)
俺は一度着替えに戻る。それまでにお前も支度をしておけ。
…うっ、分かってるっての。信長様の命だからな。
(蛇に睨まれた蛙のような気分だと思いながら相手を見て。支度、と聞いてそう言えば内番では其れ用の服を着るんだったと思い出させられ。自分も此処に来て日が浅い為か忘れていたと、玄関ではなく縁側の方から自室に戻れば服の真ん中に名前が縫い付けられた作業用のものに手早く着替えて、さっさと畑へと戻って行き。相手が来て何か言われる前に農具を出してしまおうと、鍬や水を撒くホースを取り出せば癪だが彼を待ち)
(幸い本丸内の適当な刀へ声を掛ければ内番着のある場所は教えてもらえ、用意されていたそれに自室で袖を通し。姿見で一度確認しつつ信長様の命、との今し方の相手の言葉を反駁、「違う。……織田信長の記憶があろうと無かろうと、"主"の命だからだ」と己へか目の前にいない不動へか曖昧に呟いてから畑へ戻り)
ふん、支度は出来ているようだな。それで?どうすれば良いんだ。
何でお前は偉そうなんだよ…。一応、此の本丸ではへし切より俺の方が少し先輩なんだからな。
(身長も加えてやや上から目線な相手に愚痴るように呟けば溜め息をついて。こんな性格の刀だったのかと信長様の前とは全然違う態度に驚きつつも、其れはある意味で人間らしいなと相手を見ていき。然し此処で口論していても仕方ないので、まずは横で実が成っている胡瓜畑を指差してカゴを渡せば)
まあ、良いや。そうだなぁ、今日は胡瓜が収穫出来そうだからへし切は其れをやってくれよ。で、其れが終わったら馬鈴薯畑に水をやってくれ。俺は其の間に鍬で近くの畑を耕してるから。
…………分かった。
(相手に指図されるのは気に食わなかったが、相手の言う通り自分は現時点で本丸内一の新参、分からぬことも多い為仕方ないと渋々ながら了承し。渡されたカゴを抱えて胡瓜の方へ向かいかけ、ふとこれだけは言っておかねばと鍬を持つ相手に向かって「そうだ、先程から気になっていたが俺のことはへし切ではなく長谷部と呼べ。分かったな?」と念押しする様に)
…何でだよ、信長様に頂いた名だろ。
(鍬を手に持って畑へと向かおうとしていれば、不意に言われた事にムッとした表情で相手に言葉を返し。此の本丸には本人がいるのにも関わらず、貰った名前で呼ばれたがらないのは信長様を拒否しているのと同じに感じ。キッと相手を睨み付ければ畑に向かおうとしていた足を止めて、そっちへと向き直っていき。「お前、信長様にも長谷部って呼ぶ事を言わせてるだろ? 其れすっげぇ失礼だぞ。信長様はお前の事をあんなにも寵愛して下さってたのに」と、何処か複雑そうな声でそう呟いていき)
だからだ、俺を捨てた人間の付けた名など呼ばれたくないな。
(嫌なことばかりを連想させる名をまるで名誉なものの様に考えている風の相手に、きっぱりとその押し付けを跳ね除けて。信長様のことは慕っていた、だからこそ捨てられた途端にその情は真逆になって心に残ったのだと、説明する気力は無く。しかし後半の相手の言葉には「……あの方は"主"だ。信長様じゃない」と、自身も昨日は混同してしまったそこへ線引きする様に言い切り)
っ、信長様はお前の事を捨ててなんかいないだろ…!もう良い、二度と呼んでやるか。
(取り付く島も無く跳ね除けられた為に、犬がキャンキャンと吠えるみたく負け惜しみのようにそう言っていき。何でそう悪い方に曲解するんだと思ったが、信長様の優しさは分かりにくく尚且つ時折あの人は言葉が足りない。拗らせた勘違いはどう直せば良いのか部外者の自分には分からないので、それ以上名前の事には触れないでおき。だが付け加えられたように言われた相手の言葉には黙っていられず、其れこそ刺々しい声で「違う、あの方は信長様だ!俺達の持ち主だったお方だ…!お前は、本能寺で信長様の最期を見てないからそんな事が言えるんだ!あんな無念な姿を見ていたら、俺はあの人が今生まれ変わって第二の人生を送っていると思っていなきゃやってられねぇよ!」ほぼ私情となってしまった正しくない言葉を述べれば、ギッと歯を食い縛って相手を睨み付けていき)
やかましいな、野良犬か何かか貴様は。
(姦しく言い募ってくる相手に向けてわざとらしく耳を塞ぐ素振りで、内心誰も呼んでくれとは頼んでない、と突っ込みを入れ。もう放っておいて仕事にかかった方が良いかと歩みを向けかけた足はしかし、刺々しくなった相手の声音にぴたりと止まり。長々とした口上へ、「あの方は織田信長の記憶を持っているだけの、それでも別の人間だ」「別人だからこうして慕っているんだ、俺は二度とあの方に仕えるのは御免だね」と言いたいことは山ほどある中、その全てを飲み込みぎろりと睨み返し)
……っ、好きで、最期に立ち会えなかったんじゃない。
っ……。……ごめん、長谷部。カッとなって、八つ当たりして…。
(その言葉を聞いて一気に頭から冷水を掛けられた感覚になり、ハッとしてバツが悪そうな顔を相手に向ければ消え入りそうな声でそう呟いていき。彼は何も望んで立ち会わなかった訳じゃない。なのに、思わず八つ当たりをしてしまった。側に居ても主が焼けていくのを見ている事しか出来なかった自分の悔いを、相手にぶつけてしまった。自己嫌悪を覚えながらも「……本当に、悪かった。頭冷やして来る…」と言い残して逃げる様に鍬を持って畑へと向かって行こうとし)
構わん、お前ごときに何を言われようと気になどならないからな。
(素直に謝られてしまえばこちらの毒気も抜けるというもので、心なしか落ち込んで自己嫌悪にでも陥っていそうに見える相手に素直でないながら自分なりの「気にするな」を口にして。今度こそ背を向けると胡瓜の方へ向かい、内心でそっと今の主を信長様の第二の人生と考えねばやっていられない、と吠えた相手に詫びて)
だが……俺もまた、主をあの方とは別に考えねばやっていられないんだ。
(やってしまったと、ズーンとした重たい雰囲気のままで黙々と奥の畑を耕していれば一部始終でも見ていたのか、馬当番だった日本号がいつの間にか居て。「お前ら良い具合に別方向に拗れてんな。まあ、気にするなって、アイツもお前もどっちも悪かねぇよ。然し右府様も罪な男だよなー」と此方の背中をバシバシと叩きながら笑い飛ばしていて。続けて「色々と拗らせたのは右府様だ。後はあの人が如何にかするしかねぇさ」と言えば、そのまま日本号は立ち去って行き。そんな訳ないと思いつつも、確かに長谷部の方の問題は信長様にも非があるのかもしれないと考えて、然し悪くは言いたくないので其れをブンブンと頭を振って散らせば、再び夕方まで休まずに耕していき)
(余計なことを考えぬ様、ひたすら無心で言われた通りの仕事をこなして行き。幸い収穫と水やりというひどく単純な作業は考え事をしながらでも失敗をする様なことはなく、ただカゴに山と盛られた胡瓜だけは多すぎやしないかと思うも収穫後では致し方なし。朝方の会話以降完全に別作業でやや気まずいも、平静を装って不動の元まで戻り)
……こちらは終わったぞ。この胡瓜はどこへ持って行けば良い。
……其れは厨の方に持って行ってくれ。今日の夕餉は薬研だと思うからアイツに渡せば良い。農具とかは俺が片付けておくから。
(日本号にああは言われたものの、矢張り気まずいものは気まずく。然し、こっちも至って普通を装おうとして、やや視線は泳いでいたが相手の質問に答えていき。また鍬やホースを持てばそう付け加えていって。農具を片付ける為に倉庫の方へと向かおうとしたが、徐ろにその足をピタリと止めれば「……俺もお前も納得出来る答えが見つかれば良いな」そう振り向かないまま独り言のように呟いて、再び倉庫へと足を動かして立ち去って行き)
(特段意識せずとも自然に耳へ入ってきてしまった相手の呟きには内心でそっと肯定するに留め、相手とは反対方向にある廚目指して足を進め。カゴから溢れんばかりの野菜を落とさぬ様に留意しながら目的地へ辿り着くと「今日の収穫を持ってきたぞ」と声を掛けつつ調理場へ立ち入り)
おっ、こりゃ大量だな。
(廚で夕餉の準備をしていれば畑当番だった相手が来て、胡瓜が沢山入ったカゴを受け取れば用途を考えていき。此れは今日のサラダに使おうと決めては、相手の背中をポンと軽く叩いて「お疲れさん、長谷部の旦那。今から俺っちが美味いメシを作るから其れまでのんびりしていてくれ」と、そう労っていっては笑みを浮かべ)
(/差し支えなければ、ここから食事が終わった後まで飛ばしても大丈夫ですよ)
(不動とあの様なやりとりをした為か、何となく顔を合わせにくくなってしまい主からは離れた位置へ座って摂った夕餉。自身の取ってきた胡瓜が使われていることにささやかな達成感を覚えながらも完食してしまい、さて自室へ戻るかと立ち上がったところで今朝の約束を思い出し。あ、と声を洩らして意識から外す様にしてしまっていた主の方をふっと向いて)
(/ではお言葉に甘えて。お気遣い感謝します/蹴り可)
(食事を終えれば立ち上がり、何故か夕餉の時に限って遠くに座っていたへし切に視線を向けていって。ちょうど目が合った為に其方へと近付けば「朝餉の時に言った事は覚えておるよな? さて、行こうか長谷部。執務室はこっちじゃ」と特に此れといって威圧の無い普通の声の調子で言えば、相手を促して執務室へと向かって行き)
(無言でこくりと頷き、促されるままに相手に続いて執務室へ向かい。しかし日中の不動とのやり取りの件もあり内心はひどく落ち着かなく、朝方言われた通り"腹を割って話す"のだとして一体何話すことがあろうかと悶々とした思考は止まず。あっと言う間に目的地まで着いてしまえば迷う様に入り口で足を留め)
(/お返事遅くなりまして申し訳ございません!ここ一週間立て込んでおりました……。ひとまず落ち着きましたのでまた今まで通りレスは返せます故、まだお相手をしてくださるのであればお願いします)
(執務室に着けば障子をガラリと開けて中へと入り。夕餉後とあって、すっかり外の夕日も沈んでいるため電灯を点けて薄暗さを取り払い。「長谷部。お前は其処に座れ」と、予め敷いていた座布団に座るよう入り口に立っているへし切へと促していき。己は其れと対面する場所にある座布団にドッシリと構えて座れば、なるべく相手を萎縮させない様にしているものの此れが中々難しく。取り敢えず、相手の準備が出来るまで待ち)
(/お疲れ様です…!リアルは大事ですのでお気になさらずに。そして再びこのトピへと足を運んで下さりありがとうございます!勿論です、当方長谷部並みに待てますので、むしろまた宜しくお願いします!)
(失礼致します、と不思議と夜の静けさが満ちている空間にぽつりと声をこぼして足を踏み入れ。示された座布団にそうっと腰を下ろすも心地は落ち着くどころかますます強ばるばかり、所在無さげにうろうろしていた視線も床の一点に固定されたままで。しかし沈黙にそう長々と耐えることも出来ず、そろりと口を開き)
……用件を伺っても良いでしょうか、主。
(/お優しいお言葉感謝です……!もうしばらくは一日1、2回程度の置きレス気味になってしまうのですが、ご容赦頂けると幸いです/蹴り可)
嗚呼、では用件を言おうか。お前に聞きたい事が一つあってな。単刀直入に聞く。長谷部、お前はわしに捨てられたと思っておるか?
(シンと静まり返った中で、ぎこちなく唇を動かす相手を見ては、遠回りに聞き出すのは逆に酷かと判断して、勿体付けず直ぐに惜しみ無く本題を提示していき。朝餉の時に言われた鶴丸の言葉を片隅に置きつつも、相手との間にある見えない深い溝を此の場で暴いてしまおうと鋭い双眸で目の前のへし切を見据えていき)
っは……?
(あまりに直球な問いに、一瞬呼吸さえ乱れて喉元からはひゅうと掠れた音が鳴り。そんなもの問われるまでもなかった、むしろあの下賜を捨てられた以外にどう受け取れと言うのだろうか!主に織田信長の記憶があると知ってもなお、相手はかの魔王ではなく"主"なのだとの一念で押さえ込んでいた積年の恨みやあれそれがともすれば溢れそうで。それでも無理矢理に口元をいびつな笑みに変え、もはや半ば自己暗示に似た調子で言葉を放ち)
何を仰るかと思えば。俺と"主"はまだ出会って二日、まして捨てられたなどと思う様な待遇は受けていませんよ。
ふむ、言い方が悪かったか。先程のわしの言葉は前世の織田信長としての言葉じゃ。主は主でも、お前にとっては元主の方じゃな。
(何処か藤色の瞳を揺らしながらも口元では気丈に笑みを描くへし切を真っ直ぐに捉えつつ、目は口ほどに物を言うなと顎下に手を当てて己は思い。此方の言葉を直ぐに理解をしている癖に敢えて"主"などとしらばくれる相手に半笑いを浮かべれば、ならばと退路を塞ぐ様な上記の言葉を発していき。生まれ変わりとは言え、己が持つ記憶は紛れもなく織田信長のもの。故に今も先も紡ぐ言葉は嘘では無く、相手が過去に知り得る事が出来なかった事も今は知らせる事が出来る。然し其れは相手が聞こうとしなければ意味など無い。再び、目の前の付喪神へと一部分だけを変えた問いを投げ掛けていき)
もう一度尋ねるぞ、へし切。お前はわしに、織田信長に捨てられたと思っておるか?
……何を、当たり前のことを。
(駄目押しの様に繰り返された問いに今度こそ何かの糸がぷつりと切れた気がして、今し方よりも数段声音はほの暗くなり。「名付けまでしておきながら、結局は手離しただろう」、「直臣でもない輩へ下げ渡しただろう」、「捨てた以外にどう受け止めろと?」話しているはずの自身にも何を言っているのか断片的にしか分からぬ言葉を投げつけ、ようやく落ち着いた時分には妙な空虚感があり。はは、と乾いた声を上げて一転ゆったりとした声で)
けれど貴方は、主は織田信長ではありません。ただ記憶を持っているに過ぎない、こんなものは主には関係のない話だ。
…其処まで言っておいて、わしには関係無いと?ははっ、意地が悪いなへし切。生まれ変わりとは言え、記憶を持っている以上は介入しても良いじゃろう? むしろそうすべきじゃとわしは思う。
(相手の恨み辛みの籠った断片的な言葉を聞き、鶴丸の言っていた事がいよいよ明るみに出て来たかと思いつつも、常に何処か一線を置いていた相手の本心が垣間見えれば何となく嬉しく感じるもので。然し、最後の最後で其れら全てを無かった事にしようとする相手の発言には、ピクリと片眉が僅かに上がり。目の前の付喪神の真意は分からぬが、其れは己が紛い物だと言われている様な気すらする言葉で、軽快そうに笑ってはみたものの眼光は鋭いままにそう断言し。また焚き付ける様な言葉を投げ付けていき)
…嗚呼、其れともわしの口から真実を知るのが怖いのか?その様な逃げ道を作るなど。
怖い?はは、主に捨て置かれた事実より怖いものなどありましょうか!
(相手の口先とは裏腹な鋭い眼差しに僅かにたじろぐも、心底おかしいとばかりに顔を歪めて相手の言う"真実"を暗に自身への悪い評価なのだと決め打ち。「主をあの男だと認めたくないのはね、俺がもう二度と仕えたくないからです。あんな男に仕えたが最後、……また、いつ捨てられるか知れたものじゃない」と拒絶の理由を震えた声に乗せて告げ、にこりと日中に見せる対主用の曇りない笑顔で)
貴方は俺のことを捨てたりしないでしょう?だって貴方はあの男とは違う、別の人間でしょう?
…捨て置かれたと、お前はそう決め付けておるのだな。嗚呼、それと残念じゃがわしもあの男も根は同じじゃ。別の人間とは一概には言えぬ。
(ジロリと己の鋭い双眸を相手へと向けては、決して軽くは無い声色で言葉を発していき。思い込みによる積年の恨みは、如何やら安易には払拭出来ぬかと視線を鋭くさせ。然しながら一見感情を出しているかのようで、何処か押し殺しているかの様な相手の笑みのチグハグさは、見ていてあまり気分の良いものでは無いと感じ。また其の口から何度も告げられる"捨てる"と言う単語に、鶴丸が言っていた通り此れはトラウマになっているなと察せられ。少し考えていたが、此のままでは平行線な上に拒絶の理由も相手から聞けたので仕掛けるかと、自身の懐から閉じた扇子を一つ取り出せば、其の先端と共に自身が持つ真実を相手へと向けていき)
のう、へし切。何やら誤解が生じている様じゃが、元よりあの男_もとい、わしはお前の事など捨ててはいないぞ。
(相手の言葉にふっと表情を消して視線を正面から見据え。扇子を取り出す所作はひどく懐かしささえ覚えるもので、はじめから内心十分に承知だったものの改めてこの方は疑いようもなく信長様なのだとの思いがすとんと胸に落ち。とはいえそれを認めていない体の自分は主と信長様の同一に関しては言及出来ず、小さく息をつくと無表情のまま首を僅かに傾けて、どの様な言い訳が飛び出すのやらと半ば諦念混じりに)
……捨てていない、と言うのは?
其のままの意味じゃ。_お前はわしが黒田に渡した事を捨てたと捉えている様じゃが、何も理由無しにわしはお前を渡した訳ではない。
(先程へし切が告げて来た、直臣でもない輩へ下げ渡しただろうと言う言葉を聞いて直ぐに黒田へと渡した事が捨てた事だとされているのだろうと、鶴丸の推測と合わせてそう察していた為に扇子を差しながら上記を述べ。「理由は二つ有る。一つ目は、お前程の刀でないと有能だった黒田をこちら側に繋ぎ止めておく事が出来ないと考えたからじゃ。二つ目は、お前を大切にしていたからこそ手離した」あまりに一遍に言われても整理は出来ないだろうと思ったが、小出しにして途中で会話を切られる心配は無い為に一遍に言い、扇子を持っていた手を胡座を掻いている膝に置けば相手の反応を伺い)
大切に、していたから?
(あっさり告げられた下賜の理由、その一つ目は納得出来るかはともかく理解は出来るもの。だが二つ目のそれは根本においてまず理解が叶わぬ説明であり、はっきりと疑問を顔に出して引っかかった言葉をオウム返しにして。大切な物は手元に置きたいはずだ、それをだからこそ手放すという相手は何と複雑怪奇な価値観なのだろう、ほんの一時今のいざこざを忘れて純粋な疑念に眉を顰めて)
嗚呼、そうじゃ。大切にしていたからこそだ。…わしは、多く者から恨みを買っていたからな。だから此の側は危険だと判断した。
(己が多くの者から恨みを買っていた事は自覚しており、だからこそ何時か其れが此の身に帰って来る事は理解していて。自身の側は何よりも危険な場所だと、月日が経つ毎にその考えは増していき。名前を授けるほど大切にしていた刀、其れだけは巻き込みたくは無く事が起こる前に、誰の恨みも買っていない黒田へと渡して正解だった。実際に其の後、己は本能寺の変で焼け落ちた。其の様な地獄にまで付き合わせてしまった左文字や不動、薬研には悪い事をしたと思いながらも静かな声色で言葉を続けていき)
……現にあのまま共に居たら、わしと同じくへし切も焼けていた。真っ直ぐで美しい刀だ。己の手では終わらせたく無かった。
……っ、信長様は、分かっていない!
(思いもよらぬ言葉に息を飲んで目を見開き、自身と相手の考えの差異につい相手をかつての名で呼びながら声を上げ。それは確かに大切なものを守るという行為なのだろう、それでも自分はそんなことを望んではいなかった。荒げてしまった声に触発される様に六百年もの間溜め込んできた本音がほろほろと溢れだし)
あの頃の俺にとっては信長様が全てで、官兵衛様は確かにお優しい御方でしたが、それでも俺は、貴方と共にありたかった!薬研が、宗三が、不動が羨ましい、俺も叶うなら貴方の側で朽ちてしまいたかった!守られなくたって良かったんです、貴方の最期に側にあれたならそれが最上の幸せだったんです、少なくとも俺にとっては。
!……。嗚呼、成る程。お前は、へし切長谷部は、その様な想いを抱えていたのか。
(怜悧的な声色から一変して、感情のままに発せられた名前と本心には此方も少しばかり目を丸くし。永く燻らせていた刀の何百年の想いは、確かに己の想いとは真逆に位置しており相反するもので。自身が現世に居た頃、福岡の博物館に展示されていたへし切長谷部の刀身を見た時、其れは己が所持していた時と変わらず、何処も錆びてなどなく美しい輝きを保っていた。今では国宝だ、己の元に居ればこうはならなかっただろう。手離して良かったと、其の時の己はそう思っていた。然しこうして刀本人の想いを聞いてしまえば、誰かの為何かの為と起こす行動は所詮は其れ自体が己のエゴかと、眼差しの鋭い双眸をやや伏せて告げていき)
……朽ちる事なく在り続けて欲しいと思った事が、逆にお前をずっと悲しませていたのだな。
だってそうでしょう、慕う方が既に居ない世界で生き長らえることに何の意味がありましょうか。
(散々腹の中身をぶちまけて、それを相手が静かに納得してくれたことで長年のわだかまりがいともあっけなく消え去った気がして。嗚呼、そうだ、自分はずっと待っていたのだ。いつか迎えに来て下さると信じて、それが叶わなくなった為にその想いが歪んでしまっていただけで。自分でも気付かなかった本心がすとんと落ちてくると同時にようやく、本当にようやく目の前の"主"、つまり信長様とまた会えたのだと心の底から理解して。あまりに今更ながら湧いてきた再会の喜びに、ぽろりと一筋雫が頬を伝って)
……へし切。_済まなかった。
(伏せていた双眸を上げ、明瞭な声色で発するのは短くも感情の籠った謝罪の言葉で。此の騒つく胸の内を焦がす物は、罪悪感と言う物かと涙を流す相手の藤色の瞳を見てはその様な事を思い。全てがとんだ間違いだったと内心では己へと自嘲に似た何かを零し。少し間を置いて、神妙な面持ちで相手を見つめれば、まるで数百年前に拗れてしまった関係をやり直すかの様にゆっくりと慎重に言葉を紡いでいき)
再び、わしがお前の側に居る事を許してくれるか?
……っふふ、貴方に謝罪は似合いませんよ、信長様。
(かつて天下を取らんとしていた御方が自分の様な付喪神の分霊ごときに謝罪をしてくることが、恐れ多くもおかしくくすりと笑みをこぼし。主、とは呼ばなかったことが身に余る謝罪への自分なりの答えだ。二番目の問いに至ってはもっと言わずもがな、そもそも前提が違うのだと僅かに声音に呆れを滲ませて)
俺は今も昔も、誰の元へあろうとも信長様の刀ですよ。何を今更許すのですか、持ち主が自分の刀を携えるのは当然でしょう?
…ふ、はっはっ。そう言われては返す言葉も無いな。
(ほんの一瞬だけ目を見開いたものの、直ぐに其れを吹っ切れたかの様な豪快な笑いへと変えれば目の前に居る愛刀に笑い掛け。名付けたと言う事もあり、此の後世まで織田家の顔として在り続けた刀。故に何処に有ろうとも誰に渡ろうとも、何時でも相手は自身の刀だったと改めて気付かされ。ふと此の場合はあの言葉の方が妥当かと口を開き)
ならば、こう言おう。随分と永いこと待たせてしまったが……へし切、迎えに来た。またわしに振るわれてくれ。
ずっと、お待ちしておりました。
(長らく待ち望んでいた言葉にすっと座布団から退くと主の前にひざまずき。やはり相手には豪快な程の笑いがよく似合う、伏せた顔にひっそりとにんまりと満足げに笑みを浮かべてから顔を上げ。実際の契約の上では何一つ変化は無いが、気持ちの問題で改めて契約を結び直したいとの思いから口を開いて、相手の命にも応じる形で名乗りを上げ)
俺は貴方の刀、へし切長谷部です。貴方の命とあらば、いかなるときでも振るわれてみせましょう。
(/遅くなって申し訳ないです、お待たせ致しました!)
うむ、改めて存分にお前を振るおうか。
(満足気な笑みを浮かべると扇子を仕舞って、自然な流れで目の前で跪いた相手の頭を軽く片手で撫でていき。今腹を割って話した事で過去に出来た溝が埋まった為に、己へと其れを促して来た鶴丸には後で礼の一つでも述べておこうと考えて、ゆっくりと煤色の細い髪から手を離していき)
(/いえ、こちらも遅れてしまい済みません…!本編の方は丁度区切りがいい所になりましたね、お次に何かやりたい展開などが有りましたらお聞きしたい所存ですっ)
それでは、俺は今宵はこれで下がらせて頂きますね。
(離れていく手に名残惜しさは感じるが、もう夜も更けて良い時間、いい加減お互い眠らなくては明日に支障が出るだろう。そう判断してぺこりと頭を下げると、障子を開き廊下へ出て。去り際、ふと思い出した様に振り返ると「それから出陣も、なるだけ早くお命じ下さると幸いです」と言い残してから部屋を後にして)
(/そうですね、主従としては和解したので今度はお互い恋慕を自覚するターンでしょうか。信長様が現役だった頃はまず出来なかったであろうおやつタイムだったり一緒に戯れたりの、ほのぼのかつ距離の近い時間を過ごしたいです)
嗚呼、ゆっくり休め。_無論、早い内に組んでおこう。…では、良い夢を。
(律儀に礼をして去って行く相手を視線のみで見送っては、行灯の火に照らされる木製の壁時計を見ると確かに夜も遅い頃で。随分と話し込んでいたようだと腰を上げれば、湯浴みをして寝るかと己も部屋を出て行き)
(/一旦シリアスは終いにして恋慕を自覚するターンですね。了解しました!とってもほのぼの等させたいです。取り敢えず、次ロルは次の日または別の日に飛ばして大丈夫です。やる事としましては、長谷部の初陣か本丸外の町の案内、そちら様の仰る様におやつタイムなど本丸での日常、とかを考えていますが如何でしょう?)
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