紫、 2016-02-28 02:52:23 |
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▷一松side
こんな事があるだろうか。いや、あるのかもしれない。少なくともくとも俺はそうだ。
そもそも兄弟にそういう感情を抱くという心理が未だに理解出来ない。家族に普通でない好意を持つだなんて考えただけで、とても複雑で独特な気色の悪さがこめかみにドロリと溜まるくらいなのだから。不愉快というやつだ。
だがアイツだけは家族であって圧倒的に家族ではない。兄弟であって圧倒的に兄弟ではない。要するに、いつからか奇妙な好意が俺の全てを占めてしまっていたのだ。汚い感情は胃と心臓の中を隅々まで蝕んで行き、偶に思い出した様に逆流して来る訳で。
かと言って、辛うじて綺麗なままの現実を護ろうとする程、僕は真っ当な人間ではないことに気が付いてしまった。暫くの間恋心に気を取られていたが思い出してしまったらしい、…ふといつもの様に路地裏のゴミ溜めが瞼の裏に映ったのだ。
翌日の昼下がり、十四松と他愛のない話をした後、なけなしの金でのヨーロッパ行きのチケットを二枚買った。行き先はノルウェー…勿論スウェーデン語なんて喋れない。──が、確信はあった。アイツは絶対に来ると。
「…勿論だマイブラザー、孤独な旅だろう?何処までも着いて行くぜ。」
どうせなら消えてしまおうだなんて自分の事情でこんな馬鹿を巻き込んだって、正真正銘のクズだと自己嫌悪に沈むしかないのだが。
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