【誰かの独白】
思えば微かだが…‘予兆’は確かにあった。
ここ1週間、ニュースを騒がせていた連続猟奇殺人事件。
その死体はまるで喰われているかのような酷い有様で、犯人は未だに見つかっていなかった。
自分には関係が無いと、傍観者の立場で居たその頃が懐かしく感じられる。
……しかし、気が付けば目の前は惨状と悲鳴で埋め尽くされていた。
ニュースで語られていた死体と同じような形で殺され、または負傷していく人々。
否、数分も経てば被害者は人ではなくなる。チープなホラー映画でよく見かけた、所謂‘ゾンビ’に似た何かに変貌していった。
恐らく、まだ平和だった頃の連続猟奇殺人事件の犯人はこの‘ゾンビ’に似た何かだったのだろう。今となっては、ただの推測にしかならないが。
ああ…俺は明日も人間でいられるだろうか。