白楼 2016-01-30 19:15:09 |
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☆☆☆
「なぁ、ご飯まだぁ?」
目の前の黒猫耳付きの青年はソファに寝っころがりながら、黒髪メガネの男の顔を見上げ不満げに声をあげる。
「後少し待ってろ、もうすぐ片づくから」
男はため息混じりに閉店したカフェの最終確認を続ける。
「早くしろよ~、今日の夕飯何~?」
なおも急かすよう、青年は不満げに尾を揺らす。
まったく、なぜあの日こいつを店に上げてしまったのか、男は自身の人の良さをひどく後悔していた。
「ほら、帰るぞ。さっさと来い」
最終確認を終え、男は店の鍵を持つと青年に声をかけた。
「やた、早く帰ろ?ご飯、ご飯」
青年は急いでソファから飛び起きると、男の後に嬉しそうに付いていく。
そうして一人と一匹は、真っ暗なカフェを後にした。
一尾目 迷い猫?拾いました
事の起こりは二週間ほど前。
男が閉店準備をしていると、店の前で雨宿りをしている一匹の黒猫を見つけてしまった。
男が店の外の看板を中にしまおうとすると、ふと黒猫目があった。
この世界でケモ耳は珍しくもない。
昔から普通に人と共に生きてきたし、生活も何等変わりはない。
ただ男が気になったのは、その黒猫の目だ。
真っ黒な瞳の中に宿る小さな輝きが、どこか憂いを帯びて見える。
そう、まるで何かを探しているような、そんな寂しげな瞳にも思える。
「あの、俺の顔をに何か付いてますか?」
余りに見つめる時間が長かったのか不思議そうに黒猫の青年は、男に訪ねた。
「え、あっ、えっと、もう店は閉店なんですが」
男は我に返り慌てて答えながら左手で看板を掴む。
「あっ、ごめんなさい。じゃあ、帰ります。お邪魔しました」
青年は男の目線まで頭を下げると、立ち去ろうとする。
その時、男はつい青年の腕を右手で掴んでしまう。
自分自身なぜ掴んでしまったのかは分からなかった。
ただ分かるのは、この青年の瞳をこのままにはしてはおけないという思いだ。
「あの、店は閉店なんですが、よければ一杯コーヒーをの見ませんか?私からのサービスですから」
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