けだま。 2016-01-08 23:22:19 |
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何を笑って居るのだ。矢三郎もお前も呑気にしているが、また夷川が何か仕掛けてくるかもしれんのだぞ。…特にお前は早く感覚を戻せ、井の中なら兎も角、こんな所では鳥に食われても文句は言えん。
(弟達には阿呆だ何だと口酸っぱくしながらも、金曜倶楽部に捕まり鍋の具にされそうになったり、長老達との席で『鴨虎』の名の通り酷く暴れてしまった己もまた阿呆。過去の醜態から目を背け目線を落とせば末弟のように半端な化け方をした次男、然程焦りは感じられない間延びした言葉の後手の平に感じる両生類特有のひんやりとして湿り気を帯びた感触。ふ、と口が緩むのを堪えきれずに空いた方の手で口元を覆い、返事の代わりにぺったりとした頭を軽く小突いては歩き出し。寝ぐらから少し離れた場所に先程のように胡座を掻くと弟が降りれそうな高さまで手の位置を下げ。)
矢三郎は平気だろうね、弁天様と赤玉先生が居るからなあ。それに偽電気ブランがあれば、何処となり叡山様が駆けつけるさ。そうだね、蛙だと思い込む時間は終わった。本来の俺になった時は_兄さんと朝、こうしてボンヤリしていたいよ。
(阿保遺伝子の中でも何でも楽しめる性質を受け継いでしまえば、上の弟の暴走も安心して眺めていられる心地がして心配御無用の意思を緩やかに示し。最早役立たずの矢二郎に非ず、家族にも兄にも次男坊としての「役に立てるという思い上がり」が披露される機会はいつでもあり得る、そして長兄の味方は不変である事を言葉に含ませ。小突かれると「おお」と小さく声を上げ、血の繋がる兄弟ながら不思議とそうでない気持ちが胸の中で膨らみぼおっと笑う様相を見つめ。地面に降りると小蝿を一瞬にして舌で絡め取り、かつて肩を並べ歩いていた頃へのノスタルジーに浸り願望は自然と言葉になり。)
確かにあの二人の御力と矢三郎の性格であれば怖いものは無いだろうな。酒の力を借りなくても化けられるように____さて、それは楽しみだが…お前も朝寝をするんじゃないかと俺は踏んでいるがね。
(胡座の状態で両眼を閉じ、丁度人間が瞑想するような姿勢のまま静かに弟の言葉に耳を傾け。そういえば父が亡くなる前までこの蛙、もとい狸は好んで酒を飲み『偽叡山電車』に化け洛中を騒がせていた事を思い出すと、頼もしいながらもどうせ一騒ぎ起こす事になるのだろう場面を想定して少々頭を抱え。気を取り直して精神を集中させようとした矢先、ぽつりと零された健気な願望には心からの同意に少しの皮肉を交えて、その時くらいはこの毛玉に付き合って酒の一杯くらい煽ってやるかと鼻を鳴らし。)
矢四郎も例に漏れず、俺にひと暴れさせる為に工場から抜け出して駆けて来たんだぜ。狸としての沽券に関わる…と真面目に考えてもいるよ。ケロ、俺は嘘は吐かんね、蛙に二言無し。
(霜に覆われた様が美しい土を眺め、寒い中何処からか聴こえる不思議な冬の音色にぼんやり耳を澄ませ。当時は無論誰も彼も必死であり、卑怯な夷川一族も末娘の海星の事も含めて全てが嵐の後の一時の静けさなのだと思うと、阿保はやはり阿保らしく暴れなければ阿保とは云えないのかもしれないとさえ思い。酒が無くても、と言われ地面から再び兄へ視線を移し、珍しく真剣な眼差しで頷いて。流石家族は己の性質を御存知でいらっしゃる、此れが家族が家族である所以と笑い出して。「兄さん、実は俺も同じ事を考えていたよ。朱硝子で付き合ってくれないかい、今から。」と約束事の実現を今直ぐに設定し。)
ふむ…矢四郎が居なければ俺も母上も食われてしまっただろうし、お前もずっと彼処に居たままであっただろう。…狸なのか蛙なのかはっきりせんか。その言葉、俺は忘れんぞ?
(あの時の末弟の活躍を思えば素直に頷いて褒め称えるべきであるが、同時に思い出すのは夷川海星という従姉妹の存在。三男の元許嫁であり、隣でぺったりしている二男が文字通り井の中の蛙となってしまった理由の一端を担っていると表現しても過言ではない彼女の事を考え、複雑な面持ちで蛙のままである弟を薄目でちらりと見やり。約束を持ちかけられてしまえばあからさまに動揺した様子で体勢を崩し、「今からか!?いや、断りたくはないが…まだ日も明けたばかりだぞ?そんな阿保のような、…まあ阿保だが。」としどろもどろに、しまいには顎に手を添えてうんうん唸りながら悩み始め。)
三人集まれば文殊の知恵、とは良く云ったものだなあ。海星に惚れていたのは事実…今は秋空のようにからりとしているよ。宇宙規模の蛙と狸の狭間さ。俺が兄さんに嘘を吐いた事はあるかい。
(家族の絆は脈々と受け継がれ、亡き父と母の「クタバレ」根性の賜物と言って過言では無いだろう四兄弟の、毛玉風情乍ら悪足掻きばかりの人生に思いを馳せ。しみじみとした様子で若い彼女の姿を脳裏に浮かべ、まごう事なき事実から今の心境迄を綴り口をぱっかり開けて笑い。相も変わらず反応が堅苦しい兄の姿にも変わらぬ居場所を見い出し、けろっぷとしゃくり上げ流れる雲へ心を預けて。悩み始めた相手を面白そうに眺めた後、「然し兄さん、頭ばかりで動くのは毛玉のする事じゃあ無いと思うぜ。アルコールでかちこちの脳ミソを柔らかくしたらどうだい。」と更に誘いをかけ。)
いや…すまなかったな、矢二郎。…お前は嘘は吐かんが一言余計だ、阿呆め。しかしそうと決まればさっさと出るぞ。矢三郎にでも見つかると面倒な事になる。
(かつて弟本人の口から彼の身の上の話を聞いた時には大きなショックを受け、年甲斐も無く涙を零した日もあった。長兄で有りながら自らの抱えた問題に取り掛かるので精一杯、彼の為に何もしてやれなかったという後悔の念を滲ませながら小さく呟いて目を伏せ。"かちこちの脳ミソ"という言葉には片眉を上げるも中々に的を得た事実。くよくよと思い悩まないようにとは心掛けているが長考してしまうのが己の性故、アルコールで理性を飛ばしてしまうのも悪くはないかも知れない、と混乱した頭で結論付けると勢いよく立ち上がり。衣服を整え土を払いながら、得意の偽電気ブランでも含めば人間に化けられるのではないかと淡い期待を抱きつつ再び相手の方に手を差し出し。)
__此れも又、阿保の血のしからしむるところさ。兄さんは人に頼るのを潔しとしないからね、其処が面白い訳ですごめんなすって。楽ちんだ…兄さんの掌や肩が一番落ち着く気がするよ。…何年振りなんだか、ねえ。
(あの夜、糺の森で兄が涙を零した事は当人は知らない。焼き付いたかのように思い出せるのは、驚きと戸惑いに揺れる兄の表情。我が身である資格無しと苦しみを吐露した時の月は何と寂しく、何と眩しかった事かとまざまざと記憶は巡るが、今は心中穏やかに結論へと言葉を繋げ合わせ。怠惰の化身であり乍ら長兄の熱意には一種の尊敬を込め、少し戯けて話の角を丸くして。兄が期待しているであろう事は無論、自身も期待しているのは間違いが無く。伸ばされた手に飛び乗ると白い息も春の陽のように優しく溶けていく小径を、朱硝子がある方角へと共に向かっていき。)
阿保の血のしからしむるところ、か…。お前こそ、兄を敬う気概が幾らか足りん。それは___喜ぶべきなのか?…積年振りであることは確かだろう。
(我々はどう化けて姿形を変えようと狸であり、それ故阿呆であるのは致仕方ない事である。偉大なる我々の父が遺した言葉はなんとおおらかで、己が無駄に力んだ肩を解してくれることだろう。朱硝子へと向かう道すがら、弟の台詞を無意識的に復唱しては微かに口元を緩め、冬特有の肌を刺す冷たい外気に反しぽかぽかと体の中が温まるのを感じ。真昼間から酒を頂くというのに辛気臭い顔ではいけないと心持ちを切り替えると、誰でもない自らの肩を"落ち着く"などと言ってのけた弟に意外そうな視線を向け。いざ店の前で足を踏み入れるのを躊躇うも、所詮は阿呆、思い切ったように勢いよく戸を開け中へと歩を進め。)
胃の中にストンと収まる位に、実にしっくりくる言葉だ。いやはや、俺はつくづく兄さんでなければ成せない事をしているものだと感心しているよ。勿論嫌味は無いんだがねえ。……あの席にしよう、カウンター席は弁天様の特等席だからね。
(思い出の中でも父は呵々大笑し、兄弟達の阿保三昧を見守っているのだろうと思えば、胸の何処かに支柱があるような気さえしてふわふわ笑い。敬意が足りないと言われると、能動的な性格の兄と鞣された毛皮並みにダラけた己の間の高い壁の存在を示唆し小さく頷いて。向けられた視線に和かな瞳を向け、一番乗り心地の良い場所へ這い。店内には驚きまなこの店主が此方を見て何かぱくぱく言っているのが見えるものの、其処は素知らぬ振りを決めテーブル席を指し。其のまま椅子の上への自ら飛び降りて。)
ああ、流石は我らの父上だ。…と、解った、解ったからその辺で止めてくれ、調子が狂う。…そうだな。いくら阿呆とはいえ自ら危うきに近寄ることはない。
(弟の言う事が心からの真実であるのはその声音、話し方から嫌でも分かるが、いざ真っ直ぐな言葉を掛けられるとこそばゆいというのが一番の本音で。弟達も母も訪れる店、己が顔を見せようと何ら不自然な事ではないが、如何せん外はまだ夜も開けたばかりの明るい空。店主が面食らったように表情を引き攣らせるのも尤もだと思い眉を下げて、介入不要だと言わんばかりに彼を掌で制し。下手をすると天狗よりも恐ろしい弁天と関わり合いにはなりたくないと素直に弟の向かい側の席に着けば、此方は相手程酒を嗜むのに慣れている訳ではない身、注文に始まる諸々は任せてしまおうと腹を据え視線を合わせ。)
おや、兄さんは弟の言葉で照れているのかい。此れ位で照れていちゃあ…世辞も本音にも耐性がつさなさそうだ。一番に良い物は後回しにする、最初は軽い一杯から。此れこそ飲み飽き無いが為の工夫と云うものだぜ。
(固ゆで卵脳が少々柔らかくなる、其れも毎度踏ん張って頑として動こうとはしない兄が照れ臭そうにする様子は珍しくもあり見ていても大層愉快であり。ケケケと蛙の声で含み笑いを零し、良い反応という名の収穫に満足して細く柔く息を吐き。目を合わせる長兄に次男坊からも視線を送り、吸盤がぽこぽこくっ付いた前脚を上げると酒人生から培った薀蓄を並べ。同じく正体は狸である店主へ「赤割り、二杯。其れと次はハイボール。」といつもの惚けたような声音で注文し。運ばれて来た赤割りを舌を伸ばしてちびりちびりと舐めて行けば行くほどに、緑の蛙の血色が巡り気分も陽気へと変化していき。)
(/ お返事滞ってしまって大変申し訳ございません…!
ここの所立て込んでおりまして、明日にはお返し出来るように致します…。お待たせしてしまい本当にすみません!)
遅くなってすまない、矢二郎。…くそ、矢張り俺はとんだ阿呆狸だ。こんな兄でも良いと言うのなら…これからも宜しく頼む。
照れるものか、余計な御世話という奴だ。ほう、伊達に経験を積んでいる訳では無いらしいな…今回ばかりは、素直にききいれると、するか。
(またこの弟は頭の中で失礼な喩えをしていそうだと勝手に想像しては口をへの字に曲げ顔を逸らし。ややあって運ばれて来た赤割りに目を落とすと浮かぶのはこの酒を愛飲しているという半天狗の女性。触らぬ何とやらに祟りなし、早々に打ち消すと一気にグラスの半分程をぐいと煽り。元来の体質か普段上の弟二人のように酒を好んで含まないせいか、頬が火照るのを感じ少々呂律の調子も悪くなったようで皮肉の歯切れも辿たどしくなり。二杯目に入る頃には既に目は座っていて、ぐらりぐらりと揺れる視界に映る蛙を見ては「む、矢二郎。お前はなぜそんなすがたなのだ」と唇尖らせ。)
帰って来たのかよ、兄さん。阿呆なのはお互い様だぜ?なにしろ毛玉だ…いつ何があったとしても気長に待っているよ。あんまり気にしなさんなってこった。
可愛い反応をするねえ、緑の蛙が赤くなってしまうよ。偽電気ブランを赤玉ポートワインで割った一杯、弁天様が好むのも解る気がするね。__兄さん、兄さんやい。
(つれない素振りも長兄ならではの照れ隠し、何処となく素直さに欠ける様は赤玉先生に共通しており生暖かい目で見守る事に決め。狸界の化ける礼儀云々にもとやかく煩い兄の事なので、まあ下戸だろうとは予測していたが思った以上に早速酔い潰れそうな彼を前にしてしみじみと味わい。不服を見せる兄の言葉に手を止め、とろりとアルコールが回った瞳をほんの一瞬閉じると蛙の足は次第に太く長く、こめかみからはピョンと特徴的な髪が飛び出し数年振りの人間の姿へと変化して。本人も余りにもブランクがあり過ぎてぽかんと口を開き、次第に勢いづいて「捲土重来」と呟いて。人間の腕を伸ばし、てろんと潰れそうな兄の肩を優しく揺すり。)
そう言ってくれると…うむ、本当に有難い。俺の方も、此処がお前の帰る場所となれる様ずっと待っている。まだやり切れていない事もある、体調には気を使うように。/蹴可
か、かか可愛いだと!?この姿の何処を見てそう思うのだ、遂に視界まで蛙になってしまったのかお前は____大体、む、俺はへいきだぞ。もんだいない、もんだいない。
(普段摂らないアルコールの回った脳では正常な思考はままならない。向かいの席からの生暖かい視線を浴びれば些か声を荒げ、グラスを持っていない方の手で握り拳を作ればテーブルをゴンと叩き。確か蛙は目が悪かった筈だが、はたと顔を上げた先にあったのは久し振りに見る人としての姿。懐かしさと照れ、そして矢張り経験の差からか気分が良さそうに呑んでいる弟に対する少しの悔しさから説教を始めようとするも、至極優しく揺らされる振動と幾年ぶりかの暖かい手に絆されただ頷くだけで。数年の間、井戸の中からとはいえ母を、下の弟達を、そして自分を気にかけていた次兄を諭すように彼の手に己のそれを添えて、ぽん、ぽんと軽く叩き。)
酷い言い草だ、俺は其処まで腐っちゃいないぜ。兄さんはいつも力んでばかりいる…今はあべこべにフニャフニャ。問題はあるらしい、意識を失ったら兄さんと二人の時間が夢の中に移ってしまうんじゃないかい。
(机を叩く音に「御立腹かよ」とぷつぷつ呟き、起きていても半ば眠ったままの瞳を酔いどれ長兄に向けて少しばかりムッとしたらしく。酔いに任せるとは怒りに任せるのでは無い、腹の底から暖かく、又人生を美しく歩むとは何かに気付けそうな心地と共に眼下には京都の景色が広がるようなもの。三男なら明らかに悪戯に手を出して、四男なら兄ちゃん平気かいと案じる所を目ばかり細め唯見つめに見つめ続け。安心させるような仕草は幼少時の二人を思い起こさせ、若い乍らもう狸の頭領になるべくえっちらおっちら崖を登る兄の重ねた苦労なるものが潰れた格好に表れているように見えて。触れられる手はそのままに、顔をそろりと兄の横顔へ近付け、耳朶に唇が触れそうな距離で淡々としつつも寂しげな色を含めた言葉を囁いて。)
兄さん、相変わらずのご多忙かい。
最近は風の神様が頑張っているらしい…兄さんが体調を崩したのかと心配しているよ。
もし俺とのやり取りが厳しいと思っているなら、一言だけ貰えれば井戸に帰るぜ。
もし俺の予測が外れていたら、また元気な姿を見せてくれれば何より。
懐かしくて来てしまったよ。二代目もついにアニメデビューするらしいね…兄さんの春も観れるらしいぜ。
もう見ていないとは思うけれども、俺はこうしてのんびりと兄さんを待っているさ。
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