Mid 2016-01-04 17:59:09 |
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泥まみれだぞ、顔。ガキみてえ(くつくつと馬鹿にするように喉で笑うも嬉々とした表情、その口から繰られた問いかけにまた仏頂面に戻り)…冗談で聞いてんじゃねえよバカ。こんな時間まで大学なんてこともねえしこの空で傘持たずに家出るバカでもねえよな。って事はずっと外いたんだろ?(踏み込み過ぎか、ただの隣人の癖に、と自嘲しつつも探る口調で問いかけて)あとこの俺がんなヤワに見えんのかよ。風邪なんかここ数年引いてねえ。
(笑う彼を珍しいと覗き込み、またいつもの表情で尋ねられたその問いに今度はぱちりと一つ瞬き返す。)…在間さんってホント聡いってか鋭いってゆーか。シャーロックホームズですか(驚いたと言わんばかりに目を丸くして。明るく、と努めていた笑顔も不意に溶暗する。)……もしかしたら、大したことじゃないかも。在間さんに話したら笑われそうです、そんなことかよーって。…(でも、と) ご相談よろしいです?ほんの少しだけでも聞いてくれたら元気出ちゃう。(階段を降りながら、縋ってみるように)…あは、そうかも。でも私だって18年生きてきて風邪引いたことないですし!
(名探偵でも何でもない。ただ、その顔を見れば誰だって分かるだろ、と涙の跡と腫らした目を見て思った)…、(消え入った笑顔にやはりと目を伏せ、それから道路へと歩み出て、相手に振り返り)……人の不幸笑うほど性格悪くねえよ。(それも弱った子供の、と心底で大人ぶってみれば)俺なんかでいいなら、なんて謙遜はしないが、それでお前の気がすむんならな。聞いて欲しくねえなら流すしなんか言って欲しいなら考える。出来んのはそんくらいだ。
(陶器のように透き通る黒の髪が目下に見える。放かれた聞けばその視界も涙に歪んで)……なんですかそれ、どうして今日に限ってそんなに優しいんですか。泣いちゃいますよう私。 …猫、がいたんですよ。野良猫。私がよく遊んだりたまに餌あげたりしてて(それまでの記憶を呼び起こすようにぼんやりと口を切って)…車に轢かれた、んです。道路に飛び出して。…それで、目を離した隙にどこかに行っちゃって。探してたんですけど……(見つからないまま雨が降り出して今に至る、と説明して)もう見つからないのかな。…死んじゃったなんて、考えたくない、です、けどっ(言葉が詰まり堪えていた大粒の涙がぼろぼろと零れて)
(いつか、彼女が猫を可愛がっているのを目にしたことがあった、かもしれない。雨に混じってその目から涙が頬を伝うのを見た)…… (死んでいる、確率の方が高い。牽かれて、さらにこの雨では)……探すか。 どっち行ったか知ってるのか、あんた。(お隣さんを放っておけなかった。女の泣き顔に負けたとは認めたくなかったが、その感情も押し込めて)
……ありま、さん。(探すか、という声に今度は目を大きく見開いて。あなたからそんな言葉が出てくるなんて思わなかった、とは薄情視し過ぎているかも知れないけれど。)…それが、……こっちかな、って思った方向は探してみたんですけど。(居なかった、と首を振る。)やっぱり、ちゃんと見てなかったから…(芯まで冷たく濡れた体をいっそう小さく縮めて、肩を落とした。)
あんたに懐いてんなら家の方にいることも考えられる。そっちはどうだ?(行ってみたか、と尋ねて。それから彼女が自分よりも薄着であることに気付き)……着てろ。さっき駅出たばっかだからンな濡れてねえはずだ。(呆れの混じった顔で自分の上着を渡す。先程の風邪を引いたことがないとの主張が嘘でなくとも、このくらいの配慮は最初からするべきだったのだと、思案した)
…!(質問に、瞬きを数回。帰るつもりがなかった自分には思い付かなかった。)…行ってみます、(それから、差し出されたものを受け取って。口を開きかけたが、彼は返すことこそ認めなさそうだった。ありがたく羽織った自分にはぶかぶかの上着には、彼の体温が残っていた。)…んへへ。ありがとうございます。在間さんは雨の日は優しくなる、って覚えておこうかな。(階段降りきって、急ぎ足に家への道を駆ける。)
(急ぎ家への道を、彼女について辿った。雨脚はまだ増していく。視界の悪い歩道が、時折歪んだようにも見えるのは、彼女の不安が自分にも伝染している所為もあるのだろうか。名も知らない野良猫を気にかける羽目になるとは思いもしなかった)…勝手なジンクス作んなよ。貸しイチだからな。(ふいと顔逸らして、短く吐いた息は白く。スーツは雨に濡れて色を変えた。この時期というのはこうも肌寒かっただろうか。帰ったら暖房を点けよう、とぼんやり考えて) …居そうか、猫。怪我してんなら早いとこ見つけねえと。
(見慣れた建物が見えてきた。視界不良の中にも、ぼんやりと灯ったいくつかの明かりを確かめられた。)何で返せばいいんですか、その借り。在間さんを満足させられる返却方法が思いつかないんですけど…!(そんな軽口で、ほんのすこし気分も浮上する。やっぱり彼の言葉も、気のせいではなくどこか暖かかった。) …えーっと、……
… (きょろきょろと、周辺を探し回った。玄関の、影になっている端の隅。濡れた小さな猫が静かに潜んでいたのを、見取る。あ、と声を上げて近づいた。何かにかすったような浅い傷が白い毛並みの上に目立っていたが、致命的な外傷はないようだった。)…いま、した。ねこ。 …いました……!在間さん、 (ばっと振り向いて、安堵を湛えて気の抜けた声で言った。)
(彼女の歩む道と、それから程なくして聞こえた声を追った先に白猫の姿を自らの目にも確かめると、深く溜め息を吐いた)……面倒かけさせやがって。そいつ、怪我は少ないみてえだが…病院とか連れてくのか。(そんな提案を何気なく零す。見たところ、猫は死にかけても弱ってもいないようだったが)……それほど深刻じゃねえなら、一度部屋に戻るか。…あんたに任せる。
ホント、本当に、…よかった。(声も震える。ゆっくりと緩慢に近寄ってきた猫を、傷つけないようにそっと抱いた。)…そう、ですねえ。一度私が部屋に連れていこうかな。もう動物病院って閉まっちゃってますよね…。今日私ができる限り手当てして、そんでもって明日病院にっ。(それじゃ帰りましょうか、と笑いかけた。)
(ゆるり笑う彼女を一瞥し、早足に建物の中へ。腕時計を見ればわずかな時間しか経っていなかったが、雨やら何やらと重なって仕事をするよりずっと疲れたような気がした)んじゃ、その猫は任せた。……っつっても、俺は今回探しただけだが(気怠げにポストを確認して、エントランスの鍵開ければエレベーターに向かう)
(やはりあちらは仕事帰りに付き合わされて疲れているだろうか。再三申し訳なく思いつつ、エレベータに乗り込む。)…あ、これ。ありがとうございました!あったかかったですよっ。(ふと自分の肩に掛けられていた上着に目を遣り、一度返すと言って。)部屋入ったらストーブ焚こうかな。こんなに寒い日だし風邪引いちゃいますしね。(猫が。と付け加える。自分にその心配はなかった。)
…ん(返された上着抱えて、機体のボタン押す。エレベーターはゆっくりと上昇していく)……別にとやかく言いてえ訳じゃねえが、自分の心配もしとけよ。馬鹿は風邪引かねえとかって言葉信じてんのか知らんが、あんたが阿呆だって可能性もある。俺は責任取らないからな(皮肉気に言えば眠そうに欠伸して、部屋のある階への到着を待った)
ふふ。分かってますって、重々しょーち。ちゃんとあったまっときます!あほじゃないですけどね!(いつもの軽口にいつもの調子で返す。それから、欠伸にぱちぱちと瞬きして。明日、お詫びとお礼に何か差し入れしようかな。ちょうど到着し、動きを止めたエレベーターから自分たちの部屋のあるフロアへと足を踏み入れて。)…それじゃあ、今日はお休みなさい、ですかね。もう遅くなっちゃってますし。
……ん(曖昧に返事を返す。自分も続いて機械から足を動かし、部屋の扉の前へ)…そうだな。あァ、つーかアンタ明日も授業あんのか?……おやすみ。そいつ、もう面倒かけさせんなよ(大学生に同情するような会話交わして、猫を指差して、溜め息混じりに告げれば静かにドアの中へ。鍵を閉める音が廊下に響く)
ありますよう。平日ですし。…在間さんのが、大変じゃないですか!お仕事!…あ、っと。(大きな声になってしまったのを、慌てて抑える。子猫は悪びれなくみいみいと泣いて。もういちど、お休みなさいと笑って、桃も部屋へと入っていった。 廊下をもたもたと歩く猫をまずは洗って、暖めて、…ストーブもつけてしまおうか。ともかくお風呂の準備をして、ふたりで温まるんだ、と靴を脱いで。)
ふあ、っは…くしゅ、へっくしッ(浅い呼気にくしゃみが続いた。隣に聞こえてはいないだろうかと一瞬身を竦め。緩慢に部屋へと上がれば、早々にベッドに倒れこみ、ネクタイを緩める。身はそれほど濡れていない)…ふ、ぇっくしょいっ(大きく体を揺らして三度目。食事を作るのも面倒に、部屋着に着替えてそのまま眠った)
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