主 2016-01-02 00:38:07 |
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俺、加州清光。裕福な家庭に生まれた所謂お坊ちゃんってやつ。突然だけど、俺の話を聞いてよ。
俺は、小学校の頃家の裏にある山で出会った”安定”って男に恋をした。その山は俺の家の私有地だから勝手に人が入っちゃいけないんだけど、当時の安定はそんなこと知らなかったらしいし、俺も家族の目を盗んで安定を招き入れて一緒に遊ぶようになった。中学の頃告白したけど受け入れてもらえなくて、毎日の様に遊んでいたはずが距離を置かれてしまった。まあ、当たり前だ。俺達は男同士なんだから。
そうして気まずいまま望んでもいない高校、大学へと進学させられて、大学で興味もない研究室へ入ることになった。無理やり入学させられた私立玉.川大.学農学.部。頭の良い奴は学費を免除されるらしい、それ以外は金持ちのボンボンばかり。そんな奴らのせいで偏差値は高くない、俺はもちろん後者だった。
けれど結果として、俺は決められたレールを用意してくれた自分の両親に感謝することになる。なぜなら同じ大学同じ学部同じ研究室に、安定の姿があったから。
俺は素直に喜んだよ、まだ安定の事が好きだったから。だけど嬉しい反面”早くこの想いを消し去ってしまわなければ”とも思った。なぜって、一度振られているんだから。
俺は昔父に連れて行かれた座敷遊びに一人で通うようになった。当時は嫌々だったけど、いつしか常連と呼ばれるまでになった。全ては安定を忘れるため。その程度には、女遊びが派手になったと言える。
そんなある日のことだ、安定が俺に”一緒に帰らないか”と持ちかけてきたのは。気まずい雰囲気はきっとどちらも感じていた、だから俺はびっくりしてでも嬉しくて二つ返事で了承した。大学を出て二人で歩く、俺の家も安定の家もここから徒歩圏内。ってことは安定、引っ越したりしてないんだな。遠い昔の記憶を引っ張り出してそんな事を思った。すると道中の神社で縁日をやっているのを見かけた。懐かしい、昔安定と一緒に来たことがある。寄って行こうと誘ってみると安定は頷いた。俺は内心でガッツポーズをしたけどそんなのはおくびにも出さずくじを引いたり林檎飴を食べたり、とにかく楽しんだ。純粋に楽しかったのだ。座敷遊びなんかよりもずっと、綺麗に着飾り化粧を施した美人といるよりもずっと、此奴と、安定と、一緒に歩いているのがひたすらに楽しかったんだ。
だからこそわからなかった。俺の気持ちを受け取ってくれなかった彼奴のことが。
安っぽい瓶のサイダーを傾けて、美味しいなって笑った俺の、唇を奪って走り去った安定の気持ちが。
まだレス禁
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