しかく。 2016-01-01 15:29:54 |
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⏩storyというか○○さんの過去と現在です。⏪
彼の体は父親の物だった。
母親は彼が産まれた直後、彼を父親に押し付け見知らぬ誰かと愛の逃避行。次第に神経が磨り減っていった父親は彼を殴った。小学校5年生の頃だった。
虐待は中学生になっても続き、気付けば体には消えない痕だらけだった。
高校1年生の頃、彼は父親と肌を重ねた。暗示のように耳元で
“愛してる、愛してる、あいしてる”
そう囁かれ、彼はこれが愛なのだと知った。けれど何故だか涙が込み上げて仕方がなかった。
大学生になる少し前、父親が自殺した。
愛してくれる人が居なくなり、虚無感に耐えられなくなったら知らない人に頼った。
それから時が経ち、彼にはたった一人の相手ができた。
お金を貰って知らない人に愛してもらうのも止めた。
強請れば強請るだけ、その人は愛してくれたし求めてくれた。
彼は本当の愛がどんな物か、知り始めた。
同時に、彼は“体を繋げる事こそ愛情”という自分の考えに嫌悪を抱くようになった。その考えを消し去ってしまいたくて堪らなかった。
それでも彼は、誰かの温もりを本能のように求めてしまう。
汚い気持ちでその人と体を繋げる事が辛くなり、彼はまた知らない人を頼った。
それでも、その人とでなければ満たされない彼は、以前のように快感や安堵を得る事ができなくなっていた。
代わりに込み上げる嫌悪と吐き気と倦怠感と絶望が彼を苦しめた。そんな一面が自分にあるなんて、その人には口が裂けても言えなかった。
だから、次の日には散々その人に甘やかしてもらった。体を繋げなくても、それだけで不思議なくらい満たされた。
それでも彼は、負の連鎖から抜け出せない。今も、ずっと。
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