とある執事 2015-12-23 09:43:29 |
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(/ありがとうございます!
……
(シャワーを済ませ、アンティークな鏡台の前に座り、濡れた髪の自分を暫く眺めていて。どのくらいそうして居ただろうか、漸くドライヤーを手に取り、櫛で丁寧に髪をときながら乾かしていき。サラリと髪が落ちるほどまで乾けば、ドライヤーを置き、また鏡の中の自分を見詰めていて。時計に目を遣るも、まだ眠るには早い気がして、内線を掛け。)
……あ、北條? …部屋まで来て?
(どの執事でも良かったが、ふと思い付いたその人に掛けていて。その声色は、か細く、気の抜けたようなもので。)
(/自分の精一杯で書いてみました。不備等あれば、おっしゃってください。
どうされましたか。何か問題でも?
(本日の業務を追え、与えられた私室で日誌を纏めているとそこへ内線が鳴り響き。受話器を取ると主から部屋へ来るように言われ、承知致しましたと答えると通話を切り。時間的にそろそろお休みになられる頃だと思うのだが、何か不都合でもあったのだろうかと推測しつつ、主の部屋の前まで来れば扉をノックして。返事が返って来るのを待って扉を開き、部屋の奥へと歩を進めながら相手の目の前で足を止め。お待たせ致しましたと一礼してから、どうしたのだろうと問いかけて)
(/不備等ございません。よろしくお願い致します)
問題は、…何もない。 …眠れないから、一緒に居て欲しい。
(内線を切ってから、自分は鏡台の前に座ったまま動けずに居て。ほんの数分で扉をノックする音が聞こえれば、どうぞ、とだけ返事をして。すぐに扉が開き、自分が呼び出した相手が歩み寄ってきて。傍まで来て問い掛けられると、くるりと座ったまま振り返り、相手を見上げて上記を伝え。目の前のその人は、相変わらず読めない表情だ、なんてふと思ったりしていて。)
…承知致しました。ではまず、ベッドに入られてはいかがでしょう。お体が冷えてしまいますよ。
(主から告げられたのは単純で、けれど己には不向きな命。きっと共に時を過ごすだけでは足りない、他愛ない会話を欲しているのだろうが、己には適当な会話が見当たらず。だが執事の己に主の命を拒否する権利はなく、恭しく頭を下げ。眠る意思はあるようなので、とりあえず主にベッドに移動するように促してみて)
そうね。……
(初めからそうしていれば良かったものの、何だか動くことすら面倒に思えて、座ったままでいれば、相手からの促しで漸く動き出し、ベッドへと向かい。綺麗に整えられているそれの前まで来ると、布団を捲ってベッドへ上がり。横になることはせずに、幾つかの枕を腰にあてがっては、布団を半分ほどまで引き寄せ、上半身は起こしたままで。)
…ここ、座って?
(ベッドの縁をポフポフと叩き、傍に来ることを要求しつつ、真っ直ぐに相手を見据えて視界から逃さず。)
お言葉ですが、それは出来かねます。主のベッドに使用人が腰を下ろすなど言語道断。私はこちらで構いません。
(素直に己の言葉を聞き入れベッドに潜り込む相手の様子を何の感動もなく観察していると、不意にある場所に座るように提案され。そこはベッドの縁、相手とすぐ手が触れ合える距離。男なら誰でも揺らいでしまうような誘いだったが、少しも心を揺れ動かせられた気配もなく、ただ淡々と何故できないのかを説明し。代わりにベッドの横の椅子を引くと、そこへ静かに腰を下ろし)
そう。 …
(自分は話し相手が欲しいと思っていた為、自分の要求を拒まれても気にせず、簡単に返事をしてから、相手が椅子を持ってきて座る一連の行動を眺めていて。どこを見詰めるでもなく、前方へと朧気に視線を向けていて。)
…北條は、眠れないとき、ある?
(前方へ視線は向けたまま、焦点は壁紙の模様の一つに漸く合って、思い付いたことをゆっくりと相手に問い掛けて。足元は高価な布団のおかげで、すでに温かさを感じ始めていて。)
私も偶にならありますが…目を閉じて布団に入っていれば、大概眠れますので。何か温かいお飲み物でもお持ちしましょうか?
(椅子の背凭れに凭れることなく背筋を伸ばして、無感動な瞳を向けていると続いて質問を投げかけられ。普段の様子を思い浮かべているのか、視線を虚空に彷徨わせながら淡々と答え。それにしても、こうして相手と向かい合わせでいることなど日常でもほぼないに等しく、慣れない場面にどうして良いか分からず。飲み物を持って来るかと提案して)
ううん。要らないわ。…
(気を利かせているのか、この場から離れたいのか、相手の声色からはその真意を掴めないが、一旦傍に人が来てしまうと、少しの時間でも一人で居るのが嫌になり、相手を逃がさず。)
…北條は、悩むこと、ある?
(相手のペースも考えずに先程の質問と同じかと思えるほど変わらない口調で問い掛け。しかし、先程とは違い、問うた後にゆっくりと顔を相手の方へと向け、小首を傾げ、長い髪をするりと落とし。)
…えぇ、もちろん。
(主が要らないと言えば素直に引き下がって。では、どうすれば良いのだろうと頭を捻ってしまうが、新たな問いかけがされれば感情など一片も読み取れない無表情がぴくりと片眉を上げ驚愕の色を見せ。すぐに表情を戻せば白状するかのように頷いて。もしかして、お嬢様は何かお悩みになっていらっしゃるのですか?と同じ質問を返し)
ううん。
(相手から同じ問い掛けがくるも、悩みが特にあるわけでもなく、間を置かずに数回首を振って否定して。)
…でも、意外。 …どんな悩み?
(何となく自分と同類ではないかと感じていた為、もちろん悩みがあるという答えに興味を惹かれて。相手の方へと掌一つ分手を着き直し、僅かばかり身を乗り出してまた問い掛けて。瞳には少し光が宿り。)
私も一応人間ですから。悩みの一つや二つくらいありますよ。
(意外と言われ心外とばかりに口を歪ませ、胸の前で腕を組み。しかしそうやって怒ったようなポーズを取る反面、悩みがなさそうに見られているのは好都合でもあり。どんな、と詳しく話すよう言われてしまうと頭を捻ってしまい。悩みの種は貴女ですとも言えるはずもなく、いつものような平坦な口調で教えません、とぴしゃりと言い切って)
じゃあ、その悩みは、誰が聞くの…?
(自分が思っていた相手の性格と、本当の性格とは違うらしいことが分かり、関心は尽きず。更に相手寄りに手を着くと、先程よりも身を乗り出していて。手を着いた所はゆっくりと沈み。髪は肩から落ちて。瞳に宿った光は輝きを増し、視線は完全に相手に向けられていて。)
誰にも話すつもりはありませんよ。話したところで解決するとも思えませんから。…いえ、解決方法なんてないんですよ。
(少し話し過ぎてしまっただろうか、うっかり相手の関心を引いてしまったようで徐々に前のめりになっていく相手を止めることもできず。小さく息を吐くと、あくまで冷静に答えていき。解決しないと言った自分の言葉を更に強調するように、解決方法なんてないと言い切って。この話はおしまいです、と手を叩くとすっかり布団から体を出してしまった相手に布団に戻るように言い聞かせ)
……… 下がっていいよ。
(これ以上は話してくれないことが分かり、詮索するのは止め、促されるままに元の位置へと戻り。しかし、今度は起きた体勢ではなく、ふっくらとした枕の一つに頭を預け仰向けになり。まだ暖かさの残る掛け布団を肩口まで引き寄せて。顔だけを覗かせた状態で、目線だけを相手へ向けていて。瞳に宿った光は消え失せており。)
…かしこまりました。お休みなさいませ。
(相手を怒らせてしまっただろうかと内心では脅えている癖に、表情は一切表さずに相手の言われたまま椅子から立ち上がると、恭しく頭を下げ。照明をテーブルに設置されたスタンドのみにすれば、部屋を出る前に相手の表情を肩越しに見つめ。すみません、と扉の前で小さく呟くとドアノブを捻り)
……
(作業的にも見える相手の一連の動きを感じつつも、自分は髪を枕に広げたまま天井を見詰めていて。視線は相変わらず朧気だが、特に眠気のせいではなく、何も考えていないだけで。
…ありがとう。 …少し、楽しかった。
(相手が扉の方へと歩いていけば、小さな声で礼を述べて。相手の退室の方が早く、届かなかっただろうか、最後に一言付け加えて。それに満足し、ゆっくりと瞼を降ろして、相手が言っていた眠れないときの対処法を実践して。)
いえ。お嬢様を不快にさせてしまいました。申し訳ございません。…次からは話の上手な執事を向かわせるように致します。
(楽しかったという謝辞の言葉も、あの光のない瞳を思い出せば素直に受け取ることが出来ず。ドアノブから手を離し、振り向くと深々と頭を下げて自分の非礼を詫び。相手と二人きりの空間は何よりも願ってもいない機会だが、棘のある言葉は相手を傷付けるだけで。悔しいが他の執事と仕事を変わってでも自分以外の者を寄越すよう告げると、今度こそ扉から姿を消して)
………
(相手が話し始めれば、降ろしていた瞼を再び開き、目線だけそちらへ向けて言葉を聞き。此方が言葉を返す間も無く、扉が閉まる音が響いて。もぞもぞと体を横向きにすると、手足と背を丸めて胎児のようになり。本心を伝えたつもりだったが、伝わっていなかったことに悔しさが芽生え、少し強めに瞼を閉じて。小さく丸まった自分には、大きいベッドが更に大きすぎるものに思えたが、必死で目を開かないようにして。)
(/お相手頂き、本っ当にありがとうございました。 無愛想なキャラですみませんでした…。
おやすみなさい。
(扉に背を預けたその表情は暗く。だが、これで良かったんだと何度も自分に言い聞かせるように遭った間の中で唱えて。扉一枚隔てた距離に相手がいるというのに、己とはまるで別世界で生きる華なのだと思い知らされた一幕だったと回想し。息を吐くと、またいつものような感情のない瞳を階段へと向け、音を立てぬよう気を付けながら私室へ戻り)
(/こちらこそお相手ありがとうございました。こちらこそつっけんどんで申し訳なかったです。おやすみなさいませ)
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