東の宗主大国・オルレア聖領に衝撃が走った。
かねてから大陸の支配権をかけて衝突していたオルムゴンド帝国の現皇帝・イシリアドゥネ7世が病に倒れたとの報せが齎されたのだ。
教皇庁は直ちに首都軍備増強令を発布。国中のありとあらゆる領地から兵・武器・食糧などの軍需品が首都シェンベニに集結した。
来たる猩々の月。帝国に潜伏していた間諜から〝皇帝、崩御間近〟との報せを受けた教皇庁は、ついに第三次聖戦軍の派兵を宣言。
総勢五十万の大軍勢が南方諸国の帝国派を討つべく聖領を出立した。
ところで、聖戦軍編成の為の膨大な資金の調達元となったのは市民だった。度重なる戦時徴税に、抑圧されていた民衆の怒りが爆発した。
反教会を唱える武装蜂起は軍の出払った聖領全域で頻発し、オルレアの地は荒廃の一途を辿った。
そんな中、教皇庁は異例の声言を出した。
〝エレグスレンの地で開催される天覧試合を制した者に、士農工商を問わず神殿騎士(テンプルナイト)の位を与える〟
神殿騎士とは、私刑特権などの超法規的権利を有する司教座聖堂直属の騎士で、竜殺しの武器〝ドラゴンキラー〟を持つことを許された唯一の人々でもあった。
その力は陸軍一個師団に相当するとも言われ、神殿騎士に取り立てられるということは、強大な武力と権力を手にするということに他ならなかった。
この驚くべき情報を聞きつけたあなたは達は、それぞれの思惑を抱え、湾港都市エレグスレンの地に足を運ぶこととなる。
オルレア聖領…秩序にして善の女神オルレアを崇拝するオルレア正教の信徒を中心に繁栄した宗教国家。エクメネア東部に位置する。
エレグスレン…月光湾に広くまたがるモントヴィラ家の領地。エレグスレンとは銀盤を意味する。
モントヴィラ家…過去、数多くの神殿騎士を輩出した名家。現頭首のドア・モントヴィラは先々代の神殿騎士長として有名。
司教座聖堂…教皇が身を置く大聖堂。首都シェンベニの中央にそびえている。
オルムゴンド帝国…エクメネア南西部に広大な国土を持つ帝政国家。オルレアとは二度に渡り大戦を行っている。
ドラゴンキラー…嘗てエクメネアで猛威を振るったドラゴンの王〝淀みの主〟に打ち込まれた32本の武器。竜の血を浴びた武器は強大な力を宿した。
イシリアドゥネ7世…オルムゴンド帝国の皇帝。重い病に伏している。