主 2015-12-05 22:37:41 |
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神は人間ごときに特定の感情を向けはしないだろう……それが嫌悪であれ好意であれ。
(神父として看過出来ぬ発言には顔を上げ訂正の意を唱えるが、すぐにまた脱力して。悪びれない発言にも適当な生返事を寄越すのみでほとんど耳にすら入れていない様子。だがその翼が消えたのを見た途端、芯を取り戻した声で「あっ!」と、座り込んだままにご丁寧に視線の高さを合わせてくれた赤い目を見て)
そうだ忘れるところだった、お前あんな姿にもなれるんだな?
まぁ、そりゃあそうでしょうね。
(まともに訂正されればややつまらなさそうな表情を浮かべつつ肩を竦めて。自身の言葉に返ってくるのが生返事ばかりであることに更に機嫌を損ねては深いため息を吐いて立ち上がろうとするも、突然相手が上げた声を聴くと思わず動きを止め。こちらを見る相手の瞳に困惑しつつ次の言葉を待てば、その内容に嫌な予感がしつつも頷き)
それがどうかしましたか?
もう一回あの蛇の姿になれないか?
というかなれるよな?
(ほとんど確信を持って黒い蛇の姿を話題に出す。逃げられては甚らんと先程同様にしっかとその服を握り、期待でいくばくか光を取り戻した目で見つめて。もう一回、と菓子をねだる子供の如く、断られる可能性など端から考慮にない勢いで裾をぐいと引っ張り)
嫌です。
(なれる、なれないを答えるよりも先に拒否の言葉が口をついて出て。立ちあがりかけの体勢で裾を引っ張られると体勢を崩し、その場に肩膝を着いて体勢を立て直しつつ睨むように相手を見ながら「またあの姿になれと? 嫌ですからね」と重ねて拒否の意を示して)
いや、何故そこまで…………………ふは、何故、そこまで、嫌がるんだ?
(きっぱりとした拒否に疑問を感じて問うも、言葉の途中で嫌がっているのだと気付くとにこりと笑って。同じ質問を、明確に異なる意図をはらんで一言ずつ区切りながら尋ねる。既に純粋な好奇心は邪な悪戯心に変わっているが、気にせず裾を引いたままで)
なぜ、そんな質問に答えなければいけないんですか。
(裾を引く相手の腕をがしりと掴んでは、眉を顰めたままずいっと相手に詰め寄りつつ逆に問い返して。どうやらからかわれているらしいと感じれば嫌がらせのつもりか相手の腕を掴む手に少し力を入れてやりつつ白々しい笑みを浮かべて)
ほら、とっとと放しなさい。
い゛っ……!?
(力を入れられれば思わず裾から手を離し、腕を引っ込めて。何故口より手が先に出るんだとでも言いたげに掴んできた相手の腕をぎろりと睨む。だが口に出すことはせずに、そのまま視線もふいと逸らすとふらつきながら立ち上がり、入り口の方に向かって歩き出して)
……もういい、別に無理強いはせん。
(相手が腕を引っ込めるとあっさりと掴んでいた腕を離し、してやったりとでも言うような笑みを浮かべて相手を見。相手が立ち上がったのを見てはこちらもそれに続いて立ち上がり、入り口に向かう相手の背を眺めながらくすくすと笑って「なら良いのですが」と肩を竦め)
…………ばーか。
(未だ痛みの余韻が残る腕を押さえ、好奇心も悪戯心も急速に冷めた表情になり。正直一度戦って以降互いに傷を負わせることはしていなかったり、今し方共同戦線を張ったりでそれなりに安定した状態だと思っていただけに腕の痛みには無性に苛立ち。何よりも腹が立つのは悪魔相手にそんな安定を信じた自身で、それこそ子供の様な八つ当たりが口をつき)
……何幼子のようなことを。
(ようやく相手の様子が先程までのようなからかいや悪戯の応酬に対するものとやや異なっていることに気が付けば怪訝な表情を浮かべ。相手の思いなど知るはずもなく、ただなんとなく気になり相手に歩み寄っていけば「もしや拗ねているのですか? それほどまでに痛かったのでしょうか」と相手の正面に回りその顔を覗き込もうとしつつ)
うるさい、八つ当たりされたくなければ散れ。
(八つ当たり、という言葉を用いて暗に自分が勝手に苛々しているだけなのだと主張する。事実、オルキスは正しく悪魔たるだけなのだから。覗き込んでこようとする相手を追い払う様に右腕を振るい、ついでに顔も背け。一度は止めてしまった足を再び動かして教会の外へ出ようとして)
……そんなに傷つけられたことが気に入らないのですか。
(追い払うような仕草に眉を顰めては大人しく相手から離れ、溜息を吐いて。外に出ていこうとするその背に向け、少々的外れな推測のまま上記のように言葉を投げかけ。その後視線を逸らしては「それならば一言手を上げるなとでも命じれば良いでしょうに。呪いも聖水もある以上、最終的には貴方に逆らうことなどできないのですから」と言葉を続け。どうやら相手の怒りの原因は自分が相手に痛い思いをさせたことにあると思っている様子で)
……なあ、お前、呪いが解けたら可能か不可能かはさておき、俺のことを殺してやりたいだろう?
(黙って放っておけば良いものを、的外れながらも言葉を投げ掛けてくるのに、ますますどうすれば良いか分からなくなり足を止める。振り返りはしないまま、しかし相手が確かに悪魔なのだという確信が欲しくなりそんな問い掛けをして。そもそも安定を信じてしまったのもその表面上は穏便な態度の所為なのだ、と歯噛みして)
……はぁ?
(相手の問い掛けに対し何故そんなことをと疑問が浮かび。その返答は迷うまでも無く、しかしなんとなくそのままを口にするのが憚られ一瞬の沈黙を置き。だが他の答えが見つかるはずもなく「当たり前ではありませんか。貴方を殺して、その魂を奪ってやりたいと思っていますよ」と、冷ややかな声色で相手に告げて)
だろう?
(想像通りの返事にほっとして、喜色すら滲ませて応じ。無表情からようやく口元に自嘲気味な笑みを戻し、「気に入る気に入らないの問題ではないだろう」と左腕をぶらぶらと揺らして。顔だけ振り返って相手を仰ぐと、また少し笑って)
それを一時でも忘れた、己の愚かさに憤慨しているところだ。
(相手の笑みと言葉にぽかんとした表情を浮かべて、それから噴き出すように小さく笑っては馬鹿にするような笑みを浮かべつつ「つまり何です? 悪魔相手に油断でもしていたのですか」と首を傾げて。くるりと相手に背を向け教会の奥に足を進め)
まったく。えぇ、本当に愚かなことですねぇ。
恐ろしいことに、俺は悪魔という生き物が案外嫌いでないからな。
(肩を竦め、かつて戦わずして追い返すことに成功したいくばくかの悪魔の存在を思い出しながら言う。人間の言葉を解せばそれだけで相手にしてやりたくなるのだから仕方がない。だがそれは相手を選ぶべき対応なのだよなとオルキスの背を見やり)
だがその隙で痛い目にあっては敵わん。
では次からは、大人しくしているからといって安心しないことです。
(ある程度足を進めたところで立ち止まってはその場で腕組をしつつ鼻で笑って上記を述べ。神父の癖に、と何度目か分からないこの文句を頭に思い浮かべつつ悪魔が嫌いではないと言う相手に内心呆れてしまい。背を向けたままで溜息を吐いて)
そうやってお前がご丁寧に警告してくれる限り、俺は何度でも絆されるぞ?
(返ってきた言葉に心外だとばかりに口をへの字にして。何だって時折微妙にこちらの利になることを混ぜてくるんだ、悪魔の癖に!と頭の中だけで叫ぶと、相手と同様に息を吐いて)
村へ事情説明に行ってくる。
説明が済むまで信者もここには来ないだろうから、良い子で留守番していろよ。
それはそれで、私にとっては都合が良いので構いませんが。
(身体ごと相手の方に向きなおっては呆れを隠さぬ笑みを浮かべ。役に立たないと思われては心外だから、呪いを解かせるまで死んでもらっては困るから、何かと理由付けをしつつも結局根は世話焼きな性格であることを否定できずに自分自身に対してもため息を吐きたい気分になり。相手の"良い子で"という言葉を聞くと途端むっとした表情を浮かべて「おや、子供扱いですか? 態々そんな注意を残していかずとも、大人しくしていますよ」と、しっしと手で追い払うような仕草をし)
出来れば大人しくしているよりは、精力的に片付けや修繕をしていて欲しいんだがな?
(軍の者にも口出しされてしまったぼろぼろの礼拝堂をぐるりと見回し、真顔でそう促して。この痕が直ればまた一つ危機意識が低くなるのだろうかとつらつら考えながらも、相手の仕草に適当な返事を寄越すと今度こそ扉から外へ出て行って)
(相手が外へ出ていくと、教会内を見回して。ぼろぼろの礼拝堂に我ながらなかなか暴れたものだと頬を掻き、じっと待っているのも暇な為相手に言われた通り片付けでも進めようと瓦礫に近づいて。ここが教会でさえなければ支配下に置いている悪魔に手伝わせることもできたのだがと今更ながらこの場を呪いつつ大きめの瓦礫の破片を抱え上げ。どこへ運べばいいのかを聞き忘れていた為一先ず庭の隅にでも移動させようと歩き出し)
……戻ったぞ。
(日がほとんど沈む様な時間帯、ようやく戻ってきて。げんなりとした、どこか疲れの滲む声で一応帰還を知らせる。暗くなりだした為今いちよく見えない中を覗き込み、「オルキス、居るよな?」と確認をとって)
(/了解です、夕方まで飛ばしました!)
……おや、随分と遅かったではありませんか。
(瓦礫を動かす中で埃っぽくなってしまった礼拝堂を換気するために開けた窓の、縁に手をつき外を眺めていれば扉の開く音が聞こえそちらに視線を向けて。確認をする相手の声に小さく笑っては上記のように言葉を返し。礼拝堂は未だぼろぼろではあるが、放置されていた瓦礫はあらかた片づけられており)
蝋燭付けてくれ、お前すぐ出来るだろう。
(声は聞こえたものの夕闇の中では影しか認識できず。目を懸命に凝らすも無駄と悟れば、あちこちに点在する燭台を指して指示を出す。マッチは今手元には無いし、持ってくる位ならば炎の能力を使わせた方が早かろうと窓の方を曖昧に見上げて)
あぁ、はいはい……
(比較的闇の中でも不自由の無い自分の目と違って、相手にはこの暗さは辛いのだろうと納得し。窓際から離れつつ辺りを見て燭台の位置を確認して。直後、一斉に蝋燭に火が灯り。相手に視線を戻してはそちらに歩み寄って)
!?
瓦礫が片付いて……お前本当に片付けしていたんだな!?
(明るくなった視界に飛び込んできた光景に、蝋燭を付けてもらった礼など吹き飛び。小綺麗になった礼拝堂というよりも、オルキスが片付けをしたという事実に驚きの声を上げて。思わずぱちぱち、と両手を叩くと大きく安堵の息を吐き)
正直もう一仕事覚悟していたんだが……この分なら必要無いな。
助かった。
それは良かった。私としても、とっとと此処を直して呪いを解いていただかないといけませんので。
(驚いた様子の相手に眉を顰め、相手が両手を叩くのを見て子供扱いでもしているのかと更に機嫌を急降下させるもその後に告げられた礼の言葉に思わず目を見開いて。なんとなく照れくさいのかつい視線を逸らしつつ、偉そうに鼻を鳴らしてから上記のように述べ)
はは、片付けと修繕が同じ手間だと思ったら大間違いだがな。
(にこりと笑顔でえげつない言葉を吐き。ぐぐっと体を伸ばすと視線を朝食をとった部屋の扉に向けて、朝方放置してきたままの残り物を思い出す。ぐ、と眉を顰めるも一度思い出した案件を無かった事には出来ず、かといってその処理に片付けに奮闘してくれた彼を巻き込むのも気が引けて)
……夕飯は、すまんがお前に出せるものは無さそうだ。
……修繕には資材も用意しなければいけませんからね。
(この先を思い気が滅入るが、とりあえず片づけは終わったのだからと軽く首を横に振って暗い思考を追いやり。そうしている間に相手の言葉が耳に入るとそちらを見て。首を傾げつつ「構いませんが……そんなに金に困っているのですか?」と問いかけるが、相手の視線を辿り今朝の部屋の扉に目を向けると朝食をそのままにしていたことを思い出し。納得した様子で、あぁ、と声を漏らし)
金ってお前……神からの恵みたる食べ物を粗末には出来んからな、ちゃんと全て食わねば。
(言いながらもその足取りは億劫そのもので。パンはともかく、野菜など水分全て飛んでいるんじゃないかなどと嫌な想像ばかり頭に巡り。半ば想像に費やす思考で、そちらを向くことはせずにオルキスに「今日はもういいから適当に休め」と言葉を投げ掛けて)
それでは、お言葉に甘えて先に休ませて貰いましょう。
(流石に軍人を追い払った後に続けての力仕事で体力を消耗したのか、昨夜教えられた懺悔室に足を向け。しかし途中で足を止めて相手を見ては「それにしても、一人で食べきれるのですか? 頼めば手伝って差し上げても良いのですが」と若干上から目線な口振りで述べつつ首を傾げて)
お前ちゃんと味覚があるのだろう?
普通に美味いものではないし、それを働いてくれた奴に食わせるほど俺は鬼ではないぞ。
(提案に露骨に視線が揺れるも、だから何でまたそんなことを言い出すんだといった表情のまま首を横に振って。「明日からまた頼んだ事をしてくれればいい」と、元々の約束に全くなかった案件はきちんと自分で片を付けるとばかりに言って)
……そうですか。
(相手がそういうのであれば、無理に食事を共にしようという気はなく。それが決して美味しいものではないのであれば猶更である。一つ頷けばそのまま再び相手に背を向けて懺悔室へと向かい。その扉を開けば中へと足を踏み入れ、後ろ手に扉を閉めて)
気遣いには感謝する!
(さっさと懺悔室に入ってしまった相手に、慌てて扉越しにではあるものの謝意を示して。先の提案は上から目線ではあるものの、彼なりに気に掛けてくれたのだろうかと思えば、湧き上がってくる形容し難い気分にがしがしと頭を掻いて)
……分かりにくい奴だな。
(/アテネは結局良い寝床が無くて懺悔室で寝るので、それだけ把握して頂ければ朝に回してしまって結構です。と、良いところなのですが本日はこれにて落ちます。ありがとうございました!)
(思っていた以上に体力を消耗していたのか、床に着いてからはすぐに眠りに落ちてしまい。目が覚めたころには既に空は朝焼けに染まっており、寝起きのぼんやりとした頭で上半身を起こす。その後小さく欠伸を一つ零してから懺悔室を見回して)
(/了解しました、では、朝まで飛ばしますね。 遅くまでお付き合いいただきありがとうございました!)
……、
(さして広くもない懺悔室の隅、扉近くで毛布一枚をお供に胎児の様に丸まっており。寝息も静かで、朝焼けの光にも反応を示さず熟睡したままで)
何故そんなところで……
(相手の姿を見つけては寝具から降り、相手に歩み寄って。その傍に屈んではじっと観察するように眺めて、静かではあるものの寝息を立てているのを確認すれば上記のように小さく呟いて。直ぐに立ち上がると窓に近づき朝焼けの眩しさに目を細め)
……ん、ん?
まぶしい、カーテンしめろ。
(近付いた気配の為か浮上した意識に、朝焼けの光が強烈に差し込み。寝惚けて困惑の声を漏らしつつ、寝起き特有の舌足らずな話し方ではあるもののどうにか会話を成立させる。目は未だ開けられないまま、光から逃れる様に身を捩り)
……貴方、随分と静かに寝るんですね。
(相手の指示の通りにカーテンを閉めつつ、視線を相手に向けぬまま口を開く。そのまま窓辺から離れ寝具に腰を下ろしては手櫛で気休め程度にやや癖のついてしまった髪を整え、服にできた皺を伸ばしながら「一瞬死んでいるのかと思いましたよ」と、先程起きたばかりでありながら既にはっきりとした声色で)
そうか?
寝ているときの自分は自分じゃ見られないから自分の自分……んん。
(未だ半分眠ったままの頭で会話を続ければ、すぐに自身でも何を言っているのか、言おうとしていたかを見失ってしまう。それをどう思うでもなく、適当な声を上げて再び眠りに落ちようと無言になってしまい)
……二度寝するのは構いませんが、朝早くから信者が来るのでは?
(寝癖も服の皺も完全には直らなかったものの、どの道姿を変えればすぐに直るのだからと諦めて寝具の上で脚を組みつつ視線を相手に向け。昨日訪れた老人の姿を頭に思い浮かべつつ首を傾げて。意外と寝起きが悪いのだなと相手の姿を見つつ考え)
明日は安息日……今日、休養日。
(毛布に頭を突っ込みくぐもった声で言葉を返し。安息日には多くの信者が集う分、その前日は準備の為教会は実質休みになる……という説明をざっくりとした単語の羅列のみで伝えようと。休養日に休んで何が悪いとますます小さく体を丸めて)
成程、そうでしたか。
(納得した様子で頷くと、それなら自分もゆっくり寝ておけば良かったと思うものの、既に目が覚めてしまい二度寝する気分にもなれず。立ちあがって相手に近寄れば見下ろしつつ「そんなところで寝ずに、ベッドで寝てはいかがです? 私はもう使いませんので」と問いかけて)
……、
(相手の言葉に、どうにかこじ開けた薄目で見上げてぼうっとしながら固まり。間があり、やがて言葉ではなく両腕を上げる動作を以て答える。要は「起こせ」なのだが、要求を直接口にすることは思いつかない様で)
……子供みたいですね。
(上げられた両腕を見て思わず首を傾げるが、その意図を察しては眉を顰めて呆れつつもその両腕を掴み。何故自分がこんなことをしなければならないのだろうかという疑問が浮かぶも、それを無視しながら相手の体を起こそうとそのまま腕を引っ張って)
……っ!?
(今更ながら腕の傷を自覚するも遅く、鈍いながらも走る痛みに目を開いて身じろぎして。起こされること自体には特段抵抗せず、きちんと身を起こされてからすっかり覚めた意識で相手を見上げる。その目を逸らし、擦りながら半ば寝ていた先程までも声は認識していたらしく答える様にぼそりと)
お前はあれだな、母親みたいだ。
……せめて父親なのでは。
(痛みに目を見開いた相手の姿にこちらも相手の傷を忘れていたのか少々驚くも、直後いい気味だとでも言うように鼻で笑い。呟きが聞こえると真っ先に頭に浮かんだのは"こんな大きな子供を持った覚えはない"というツッコミだが、それ以前にツッコむべき所があるような気がして暫し無言になった後にようやく口から出たのは上記の言葉で)
父親は子供を甲斐甲斐しく起こしたりしないだろう……多分。
(ふわ、と欠伸をしながら、奇妙に無言を貫いた後に応じてきた相手に軽く片眉を上げて述べ。流石にこの期に及んで二度寝する気にはならず毛布を適当に畳んで隅へ積んでおく。ぐぐ、と伸びをしてから着替えようとして、ふと相手の格好にぎょっとして)
お前、その服のまま寝たのか!?
着替えるのが面倒だったんですよ。
(それほど驚くことだろうかと自身の格好を見ては首を傾げつつ平然とした様子で答えて。しかし相手の言葉で再び服の皺が気になりだしたのか片手で袖についた皺を伸ばし。それから相手に視線を戻して)
あー……気になるのならば俺の服を、と言いたいところなんだが……。
(眠る前に着替えるのが億劫になる気持ちは分かる、翌朝自分でしておいて結局皺が気になる気持ちも。納得して頷き、提案を持ち掛けようとするも懸念が浮かび言葉を止める。首を傾げて言葉端を濁しながら一応提案はしようと口にして)
…………神父服でも良ければ、だが。
(相手の提案を聞けば眉を顰めてあからさまに嫌そうな表情を浮かべ。視線を逸らしつつ口元に手を添えて考え込むような素振りを見せ。それから何度か視線をあちこちに彷徨わせた後に「……悪意が無いことは分かっているのですが、嫌がらせみたいですね」と肩を竦め。最終的に相手に視線を戻せば、渋々提案を呑むのか頷いて。次からはしっかり着替えてから寝るようにしようと固く誓い)
ああ、だけどその服のままも気分悪いだろう。
(承諾した相手を一瞥して、すっかり私室と化している室内の衣装箪笥から適当にスータンを漁る。色や僅かな装飾の差を見て、なるべく神の影響の薄いものを探すというなかなか無い作業を続け。やがて一着を選ぶと、ぴたりと動きを止め)
お前、背は俺と比べてどの位高いんだ……?
さぁ? どれくらいでしょうね。
(相手の問い掛けを聞けば首を傾げ上記述べてから相手に歩み寄って。それから相手の頭に片手を置き、もう片方の手を自分の頭の高さにやっては見比べてみるも首を傾げ。「そう変わらない気もするんですがねぇ」と頬を掻くが、目線を合わせた時に自分のほうが軽く相手を見下ろす形になるのは確かで)
あ、ああ、身長は大差ないだろうがな。
(手の平による背比べにぴくりと肩を揺らすも、実際身長が著しく異なる訳ではないので頷き、視線を気付かれない様そっと相手の足元に向け。身長そのものではなくこっちが問題だ、と多くの悪魔の例に漏れず整った外見、スタイルに内心息を吐く。それ以上は口にせずに服を差し出し)
一部サイズが合わないかもしれんがどうにか着ろ。
どうにか……と言われましても。
(服を受け取りつつ相手の言葉に戸惑うような表情を浮かべて。しかし相手の言葉通りどうにか着るしかない為、寝具の方に近寄っては受け取った服を一度置いて。やはり神父服に着替えるのは気が乗らないものの仕方なく着替え始め)
それ、洗っても良いなら預かるが。
(相手が着替え始めるのを見て、自身も着替えを再開して。いつも通りのスータンは今更手間取ることなくさっさと着られてしまい、目線を戻すと目についた燕尾服に放置は出来ないだろうと洗濯してやることを思い付き、相手に尋ねて)
あぁ……では、お願いします。
(どうにか着替え終えて、着なれない服、それも微妙にサイズの合わない服に違和感を感じつつ、自身の身にまとう服の袖や裾に視線をやっていれば相手の言葉が聞こえて振り返り。少し考えてから頷くとベッドの上に置いた燕尾服を手にとっては差し出して)
ん、
(預かった服と己の寝巻きを脇に抱える。何はともあれ朝食だな、と思い立ち部屋を出ようとして相手を振り返り。せっかく時間があるのだからリクエストでも聞こうかと思うも、そもそも料理自体をあまり知らないのではと首を傾げて)
オルキス、朝食に何か希望はあるか?
希望と言いましても……人の食べるものはよく分かりませんからねぇ。
(何度か人間の食事風景を覗いたことはあるものの、そこに何が並んでいたかは大して思い出すことができずに頭を悩ませて。それから思いついたように、あ、と小さく声を上げつつ相手を見ては「昨日の……なんでしたっけ、黄色い……あ、卵焼きです」と答え。涼しい顔をして食べていたが相当気に入っていたようで)
…………気に入ったのか?
(昨日の反応を見るに卵焼きを食べたのは昨日が初だったはずだが、真っ先にリクエストに上がるとは相当だなとくすくす笑い。リクエストされるまでもなく固定でメニューに組んであるのだから楽なものである。「料理は女親の領分だからな、それを俺がするとなるとやはりお前は父親で正解かもしれん」などと軽口を叩きながら部屋を出て)
……えぇ、まぁ。
(相手の反応を見るとなんとなく恥ずかしくなったのか、視線をそらしつつ頷いて。自分でも人間の食べ物でここまで気に入るものがあるとは思っていなかったので少し驚く気持ちはあり。相手の軽口を聞くと「それだと夫婦前提になるのでは……」と相手が出て行った扉を見つつ呟いて)
(台所に立つと、適当に食材を物色して。リクエストはあって無い様なものだった為少し悩むも、昨日と同じで良いかと決めて卵とベーコン、野菜を引っ張りだしてさっさと調理を始めて)
(/早めですが落ちますね。明日は来られそうにありませんので、また明後日にお願いします。ありがとうございました!)
(いつまでも懺悔室に居るのも退屈だと考え、自身も部屋を出て。外を散歩でもしようかと思ったが、ふと足を台所に向けて。扉を開けると中の様子を覗いてみて)
(/了解です、お相手ありがとうございました!)
どうした、つまみ食いにしてもまだ早いと思うが?
(扉の開く音と背中に感じる視線に気付きはするものの、フライパンの上でまさに卵を焼いている最中の為振り向けずに声だけを掛けて。何をしにきたのかと考え、手伝いはしてくれる可能性以前に料理そのものが恐らく出来ないだろうと脳内で否定、からかう様につまみ食いかと言及して)
そんなみっともないことをするつもりはありませんよ。
(扉から顔だけ覗かせたまま相手の言葉にむっと眉を顰めて。台所を訪れた理由としては、人の料理がどのように作られているのかということに興味が湧いた為であったが、それをわざわざ相手に告げるのも気が引けて。人間風情、と見下している筈の存在の文化に興味を持つなど他人に知られるのは少々恥ずかしいことらしく。台所に足を踏み入れては壁に背を預け、何も言わずに相手が料理をする姿を眺めていて)
……どうせ眺めるならもっと見やすいところに来れば良いだろう。
(返答はする、反論もする、だがその場から動く気配はない相手に呆れ声で言って。見るなら近くで見ろと伝えると「それでゆくゆくは料理を覚えてくれると俺が楽出来るのだが」と、さりげなく新たな仕事の追加を匂わせる。火元に薪を足しながら振り向くと目で来ないのか、と尋ねて)
私の仕事を増やすつもりですか?
(相手の言葉を聞けば少し躊躇い、こちらを見る相手の目にようやく傍まで歩み寄っていき、その際に一言不満げにじとりと相手を睨みながら上記を述べるのも忘れず。足を止めれば大人しくしたまま料理が出来ていく様子を眺めて。
どのみちお前が居るのは期間限定だろう、使えるだけ使わんでどうする?
(にや、と口元を笑みに変えて近寄ってきた相手から視線を外す。火の通った様子の卵を脇の皿に落とすと、片手に持っていた菜箸で端を崩して。つまんで一口含むと無言で頷き、更に一つまみすると昨日の続きの様に相手に差し出して)
思った以上に容赦ありませんね、貴方。
(笑みを浮かべる相手に反比例するように眉を顰めては相手の手元から顔に視線を移して。しかしすぐに視線を戻せば小さくため息を吐いて。差し出された箸の先を見てはそのまま口を開きかけるも、ハッとした様子で口を閉ざせば片手で口元を覆い隠しつつ僅かに顔を逸らして疑うような視線を相手に向け)
下手に慣れ合うのは愚かなのだとご親切に忠告痛み入ったからな。
(ふんと鼻を鳴らして慣れない婉曲な言い回しをする。そのまま箸をゆらゆらと急かす様に揺すり、「安心しろ、これは味見であってつまみ食いではないから」と明らかにそこではないと分かり切っているフォローを入れて)
まだ根に持ってるんですか?
(相手の言葉を聞けば呆れつつも思わず小さく笑ってしまい。揺らされる箸を見つつずれたフォローを聞けば「そこを気にしてるんじゃありませんよ」と口元を押さえたまま相手の目を睨むように見て。どうするか悩み)
……根に持っているも何も、それが悪魔本来の在り方なんだろう。
(笑う相手をじとりと見つめ、溜め息を吐き。ごちゃごちゃと考えてしまうのは性分ではないというのに、と相手にいっそ恨みがましささえ抱く。相も変わらず動かない相手に「食べないのなら俺がまた食うぞ」と手に持った箸を引っ込めようとして)
……食べます。
(相手の行動を見ると少し慌て。無理やり自分の中で、また昨日と同じことをされたら仕返しすればよいだけだ、と結論を出せばぽつりと上記のように答えて)
そら。
(ぽいと相手の口に欠片を放り込んでやり、そのまませすぐに野菜に手を伸ばして次の作業を開始する。手際よく野菜を刻みながら、「味はどうだ?」とそちらに目は向けられないままに感想を求めて)
(杞憂だったらしいと少し安心しつつ卵を咀嚼して。新たに作業を始める相手の手元を見つめつつ、感想を尋ねられると視線はそのままで、一度口の中の物を飲み込んでから「美味しいですよ」と素直に答えて)
何だお前、何かおかしくないか?
(素直な賛辞にしかし素直さが妙に気持ち悪いとぎゅっと顔をしかめて。朝頼めば起こしてくれたことや何だかんだ神父服を甘受したことも頭をよぎり、変なものを食べたかもしくは何か企んででもいるのかと、手を止めて訝しげな目を相手に向け)
は? 何を言い出すかと思えば、失礼ですね。
(相手に視線を向けては眉間に皺を寄せつつ上記のように述べ。しかしそう言われる心当たりがないかといえばそうでもない為暫し間を置いてから怪訝な顔で首を傾げては「……常に反抗的でいる方が良いのですか? 私も疲れますし、貴方も疲れると思うのですが」と不思議なものを見る様な目で相手を見つつ)
いや、そういう訳ではないんだが……。
(そんな風に自ら苦労を背負いたがるほど奇特ではない、とそこは首を振って否定し。そんな不思議そうな目で見てくれるな、と視線から逃れる様に野菜刻みを再開させながら言葉をまとめる。一時の間があり、考えが整うと口を開いて)
それにしたって、昨日とは随分な違いだから困惑したんだ。
……成程。
(納得した様子で頷いてから一度相手の手元に視線を戻し。しかし作業を見るよりも何か考えることに集中しているようで、暫くぼんやりとした様子でそれを眺めた後にぽつりと「気のせいだと思いますけどね」と独り言を呟くように)
え?
(脇で呟かれた声にきょとりと声を上げ。作業の手は止めずに野菜を皿に移しながら、聞こえた「気のせい」との声に首を傾げる。気のせいでも何でもなく明らかに昨日は皮肉や嫌がらせが多かったし、今日はそれがさっぱりだと考え。うん、と一人頷くと「気のせいということはないだろう」と返して)
気のせいですよ。大体、まだ今日が始まってからそんなに経ってないでしょう?
(頑なに気のせいだと主張しつつ相手に視線を向け。それから妙に自信ありげな笑みを浮かべては肩を竦めつつ「こんなにも反応が面白い人間が傍に居て私が何もしない筈ありませんよ」と言い切っては視線を手元に戻し)
まあそうだが、えっ?
(渋々ながらも納得しかけて、ただ続いた不穏な言葉に再び声が上がる。その不穏さを問い正すべきか、反応が面白いとの評を否定すべきか悩んで結局何も言えずに朝食の支度を終えてしまい)
(短く声を上げたきり何も言ってこない相手に可笑しそうに小さく笑い。出来上がった朝食を見ては成程こうやって作っていたのかとぼんやり理解した様子で眺めていて。それから相手の顔を見ては「貴方って、料理は得意な方なんですか?」と問いかけて)
これで得意と言ったら村の食堂に怒られるぞ。
(若干のもやもやは残るものの、切り替わった話題に大人しく応じる。焼いただけの卵とベーコン、切っただけの野菜だけではそもそも料理と呼べるかも怪しい。「こんなもの、言っておくが子供でも出来るからな」とどうやら分かっていない様子の相手に大したものではないのだと教えてやって)
子供でも……
(相手の言葉を繰り返せば出来上がった朝食を一瞥し、それから相手に視線を戻せばややめを細めつつ「……もう少し凝った料理になると作れない、ということですか?」と首を傾げては問いかけて)
作れない……ということはないと思うが……。
(手先はそれなりに器用な方という自負はあるし、作り方さえ分かればどうにかなる気はする。だが普段から質素な食事を義務付けられている身として、そんなもの挑戦したこと自体がない為はっきり肯定は出来ず曖昧に頷き。はたと、何故それを聞くのだろうかと思い相手の目を見返して)
それなら良いのですが。
(それを聞くとあっさりと相手から顔をそらし、小さく息を吐きつつ上記のように述べて。薄く笑っては「料理を覚えてくれると……なんて言いながら、料理が出来ない人のものを参考にするのは癪ですからね」と顔を逸らしたまま相手に視線を向けて)
そういうことか。
いや、何もそこまで本格的なものは求めていないんだがな……?
(言われた言葉に成程、と納得はするものの要求するのはそれこそせいぜい今作った朝食レベルなのだがと首を捻り。料理という言い方をしたのが悪かったのか、そもそも何でそこまで向上意欲が高いんだ、とつらつら考えながら皿を運び始め)
とりあえず冷めるからさっさと食うぞ。
どうせやるなら半端なものを作りたくはありませんよ。
(折角ならば、相手を唸らせられるくらいのものを作りたい。そんな妙な意地が顔を覗かせては小さく鼻で笑ってから上記を述べ。皿を運び始める相手の後に次いで歩き、どうやら皿運びを手伝う気はない様子で)
(そろそろ落ちますね、遅くまでお相手いただきありがとうございました!)
何だその負けん気は。
(相手の妙な意地にふは、とつい笑いが洩れてしまい。皿は持たずについてくる相手にそういうところは健在かと内心謎に安心しながらも、二往復してようやく運び終えて。昨日と同じ椅子に座ると相手にも「ほら食うぞ」と椅子を勧めて)
(勧められるままに相手の向かいの席に腰を下ろして。二回目の食事はまだ新鮮さを感じさせてどこか妙な気持になるが、そう悪いものでないことは昨日のうちに知った為特に不安はなく。しかし食事に手を付けるタイミングはまだ掴めないのか、向かいの相手の姿をじっと見ていて)
(向かいからの視線と、その意味するところに気付けばふと思い付くことがあり。胸元から昨日新調した十字架を引っ張り出すと片手に握り、己の額をその手に当てて「我らが主よ、この恵みに感謝致します」と呟く。真似てみろとばかりに弧を描いた目で相手を見て)
……なんですかそれ。
(相手の行動に寒気を覚え思わず自身の腕を擦っては、椅子の背凭れに背をぴったりとくっつけるようにして出来るだけ相手から距離を取り。嫌なものを見た、と言わんばかりに歪めた表情のまま相手の目を見てはその視線から感じ取ったものに信じられないと目を見開くと視線を逸らして)
挨拶だ挨拶、食事の前にも祈りは捧げるものだぞ、神父さん?
(神への祈りを、厭う様な目で見られても尚くつくつと笑うだけの余裕は見せて。相手が着ている服になぞらえてからかい半分の呼称を用いる。十字架を服の内に仕舞い込むと、「冗談はさておき『頂きます』位は言うべきだと思うがな」と首を傾げて)
私は神父ではありません。
(皮肉や冗談で返す余裕すらないほどに気に入らなかったのか、体勢を元に戻しつつ生真面目な言葉を返して。仕舞われた十字架にほっと肩の力を抜いては、首を傾げる相手の言葉を聞いて暫し黙り込んだ後に「……イタダキマス」と棒読みで)
よし、
(棒読みながらも返ってきた挨拶に満足げに頷き。自身も手を合わせて同様の言葉を小さく口にすると、手を伸ばしてパンを一つ手に取りちぎってちまちまと食べ始めて。パンに視線をやったままで「タイミングなど気にしないで適当に食えばいい」と声を掛けて)
そうですか。
(それをもっと早くに言ってくれれば良いのにと内心文句を零しつつも相手の言葉に頷くと、フォークを手に取ってまず卵焼きを刺し。それを口に運んでは無言で咀嚼して。僅かに頬を綻ばせつつ飲み込むとパンに手を伸ばし)
…………は、まだ寝惚けているのか。
(ちらりと見やった相手が僅かに表情を変えたのに気付くと同時、見目は整っているもののどう足掻いても図体のでかい男のはずの相手に「何か可愛い」という感想が浮かんでしまい。動きが暫しフリーズした後、小声でまだ頭が眠りに浸ったままなのだろうと結論付けて首を振り)
はぁ……?
(パンを千切り口に運ぼうとしたところで相手が固まっていることに気が付き怪訝な顔を向けて。どうしたのだろうと暫し様子を見ていると小さく聞こえた相手の言葉に意味が分からないといった風に首を傾げ。「よく分かりませんけど、起こして差し上げましょうか」と、冗談交じりに告げて)
あ、うん、なら頼む。
(相手からの冗談であろう提案にしかし、こくりと真顔で頷き。手に持ったパンをぐいぐいと口に収めてしまうと、飲み込みながらも相手の目を見据えて動かないまま相手が動くのをじっと待ち)
(頷かれると思っていなかったのか相手の顔を見つめるも、真顔なのを見て小さくため息を吐き。手に持ったままのパンの欠片を自分の口の中に入れてしまえばパン乗った皿に視線を向けつつ、テーブルの下で足を伸ばし、相手の足を思い切り踏みつけて)
っ!
……あー、ああ、目は覚めたな。
(予想外の方向から来た攻撃にびくりと跳ね、しかし同時に安堵の息も吐く。やはりこいつに可愛げなどないな、と再認識すればばっちり目は覚めた様だと踏み付けたままの足を蹴り返して退けつつ、ぼんやりと考えを巡らせ始めて)
休みとはいえ、今日はどうしたものか。
それは良かったです。
(退けられた足を椅子の下で揺らしながら、口の中のものを飲み込んでから満足げににやりと笑みを浮かべて上記のように述べて。それからまたパンを千切っては薄く笑みを浮かべたまま「休みなんですから、のんびりとすれば良いのでは?」と首を傾げて)
修繕。
(相手の言葉に誰の所為でこんな状況になっているのだと万感の思いを込めて単語で返答して。修繕にしても道具を揃えに街に出ねばならないし、かといってまた留守をオルキスに任せるのもどうなのだろうと色々に頭を悩ませて)
……街、行ってみたいか?
(相手の言葉に言葉を詰まらせると、視線を下げつつ眉を顰めては小さく舌打ちをして。相手が頭を悩ませている間に卵焼きをまた一つ口に運び飲み込めば、思ってもいなかった相手の問い掛けにぽかんとした表情を浮かべ。しかし直ぐに頷き)
だよな……だがここを無人にして良いものか……?
(唸りながら素直に肯定した相手に更に悩みを深めて。盗みの類ならば心配するまでもなく盗むものなどはない。懸念されるのはそれこそ正面に居る様な悪魔の悪戯である。下手に荒らされたらまた面倒だ、と眉間に皺を寄せ)
……問題があるようでしたら、別に留守番でも構いませんが。
(確かに教会を無人にするのは不安が残る。何かあれば増えるのは自分の仕事であることはよく理解していて。少々残念に思う気持ちはあるものの平静を装い、視線を皿に落としパンを千切りながら上記のように述べて)
お前は行きたいんじゃないのか。
(一度は行きたいと言い出した以上、その希望があるのは確かなのだろうと首を傾げて。昨日の今日で街も安全かは怪しいのだし、ついてきてもらう理由も十分あるのだがと再び唸り。「分裂くらい出来んのか」と悪魔という存在に適当な期待を投げ掛けて)
プラナリアじゃないんですから。
(分裂と聞けば何を言い出すのかとぎょっとした様子で相手の顔を見て。悪魔によって持つ力にも違いがある為、探せばそれこそプラナリアのようにどんどんと増殖する者もいるのかもしれないが、少なくとも自分はそうではないしそんな者を見たこともない。困惑するような視線を相手に向けたままひとまずちぎったパンの欠片を口に運び)
冗談だ冗談。
(まともに向けてくる困惑した視線に苦笑して、手の届く範囲に置いた卵をつつく。街までの往復時間や買い物にかかる時間を頭の中で数え、ややの沈黙の後にふう、と息を吐いて)
……さっさと戻れば問題ないだろう。
どのみちこの腕だ、荷物持ちは必要だしな?
護衛兼荷物持ち……といったところでしょうかね。
(冗談だ、という相手の言葉に内心ほっとしながら、今度は野菜に手を付けて。口に運べばそのまま数度噛んで飲み込み。「なんにせよ、ここにいるより少しはましでしょう。ここはあまりにも窮屈なので」それは自分が悪魔だからこそこの環境が息苦しく感じるだけなのかもしれないが、少しの間でも教会から離れられるのは嬉しいらしく小さく笑みを浮かべて)
そうだな、そんなところか。
(的確な役職名に一つ頷き、どこか嬉しげな相手に目を細めて。縛り付けている自分が思うのも何だが、正直呪いを以て悪魔を教会に縛るのにはややの申し訳なさもあり。修復の作業を全うするとの保障があれば解放もしてやれるのだがなどと考えつつ手をひらりと相手に差し出して)
ああ、そうだ、お前を縛っている例の十字架、少し貸してくれ。
……呪いの強化でもする御つもりで?
(差しだされた掌を見ては疑うような視線を相手に送りつつ、そんな風に問いかけて。しかし答えを待つでもなく一度フォークを皿に置けば懐に手をやり、相手の乾いた血に塗れ赤黒く染まった十字架を取り出せばその手の上に置いて)
何故これから出掛けるというときにそんなことをするんだ。
(呆れ顔で暗に否定し、説明する前に受け取った十字架を新調したものと共々に首にかけて懐に隠して仕舞う。媒体となっている十字架を破壊すれば強引ではあるが呪いは解けてしまう為、相手に持たせていては良くないと今更ながら気付いての行動だが当然説明する訳には行かず曖昧に笑って誤魔化し)
いえ、なんとなく貴方ならやりかねないと。
(小さく笑っては冗談を口にするような調子で上記。その後結局何故今更回収したのかと疑問を残したまま相手の懐に仕舞われる十字架を見ていて。暫く十字架がかけられた相手の首元を見つめるも、やがて興味を無くし視線をそらしては皿に置いたフォークを手に取り)
お前は俺を何だと思っているんだ……。
(わざわざ面倒が増えることを「やりかねない」とは、一体自分はどんな目で見られているのだとじとりとした視線を送り。相手が食事を再開させるのを見ながらパンの最後の一口を詰め込むと、「ご馳走様でした」の一言と短い祈りを済ませて空の食器を手に立ち上がり)
いけ好かない神父、ですかねぇ……
(わざとらしく肩を竦めながら皿に残っているベーコンをフォークで刺せば口へと運び。しかし相手が立ち上がるのを見るとそれまでよりもやや食事のスピードを速め。ベーコンを咀嚼しつつ残ったパンの一欠片を手に取って)
そうかそうか。
(返答に構うのも面倒で適当な調子で受け流し、台所へ向けてくるりと身を翻し。視界に食事のペースを早めた相手が入れば、「俺もすることがあるから、合わせて急ぐ必要は無いぞ」と声を掛け巻き直さねばならないであろう腕やらの包帯に意識を向けて)
……合わせてなどいません。
(相手の適当な反応にややつまらなさそうに眉を顰めるとじとりと睨み。しかしすぐ皿に視線を戻しては、相手の言葉を聞いて食事のペースを元に戻しつつ妙な意地を張って。パンを口に放り込めばあとはさっさと残りのおかずを片づけてしまおうと)
……あいつ、妙なところで子供らしい面があるのだよな……。
(気を遣ったつもりの声掛けに睨みを以って返してきた相手を尻目に、台所の流しへ持ってきた皿を置いて一人呟く。洗うつもりは毛頭なく、夜か最悪明日の朝で良いだろうと自己完結してすぐに台所を出ると食事をしていた部屋の隅にあるカゴから一つ鍵を手に取って)
(相手が戻ってくる頃には食事を終えており、食器を重ねては立ちあがって台所へ運ぼうとしていた時に戻ってきた相手に気が付き。相手がかごから鍵を取り出したのを見ては食器を持ったままそちらに歩み寄っていき、鍵を見ながら「何の鍵ですか?」と問いかけて)
ん?ああこれか、俺の家のだ。
(いつの間にやら寄ってきていた相手に僅かに目を丸くしながらも端的に答える。巻き直そうと思った包帯は応急処置用に一度分しか教会には置いておらず、街へ出る前に自宅に寄ってその包帯を回収して巻き直そうと思ったからなのだが、相手も一緒に来れば一旦教会へ戻る手間も省けるかとひらめいて)
街へ行く前に用があったんだが、お前も来るか?
行きます。
(考える素振りも見せず真顔で即答しては相手に背を向けて部屋の戸に向かい足を向け、しかし扉を開きかけたところで足を止めて相手に視線を向けては「今すぐ行くんですか?」と問いかけて。両手は皿で塞がっているため肘で開けた扉を足で閉まらないように押さえている状態で)
元々街に行く支度をそっちでしようとしていたからな、すぐに行くつもり……見ていて危なっかしいからそれ置いてこい。
(相手の質問に一つ頷き答えるも、両手に皿を持ったままに戸を押さえる半端な状態に眉は寄り。言葉の途中で気になって耐えられなくなり皿をどうにかしてこいとの指示を出し、ポケットに鍵を滑り込ませて)
あぁ、はいはい。
(指示に従い扉の外に出ていきつつぼそりと「皿を割るような無様な真似はしませんよ」と文句を呟いて。台所に行けば流しへ放置されたままの食器を見て眉を顰め。しかし、代わりに洗おうという気はないのか同じように食器を流しにおいては先程の部屋へと足を向けて)
もう行けるなら行くが?
(戻ってきた相手を振り向き、どうすると首を傾げて。恐らくは自分と同じで相手も大した支度を必要とはしないだろうと、聞いておきながら半ば確信していて。答えを聞く前から既に体は台所とは逆側の扉に向けられていて)
構いませんよ、私には荷物もありませんから。
(聞いておきながら既に行動を開始している相手の様子に先程の台所の流しの光景も併せて呆れたように溜息を吐いては上記のように答え。相手に歩み寄っていきつつ相手が体を向けている扉に視線を向け。落ち着いた様子を装っているが若干外出に期待しており)
だろうな、なら行こうか。
(溜め息の意図は流石に理解出来て、苦笑を返しながらぐっと扉を押し開き。先導する形で礼拝堂に出るとステンドグラスを見上げて「行って参ります」と目を細めて神へ挨拶をすると、相手をちょいちょいと手招きして外へ出る扉の前に立って)
(挨拶の言葉を聞くとあからさまに相手から視線をそらして小さく鼻を鳴らしては歩調を速めて。相手に手招かれるままに扉の傍に近寄って足を止めては、扉を見上げてから相手の顔を横目で伺いつつその場で腕組みをして)
俺の家はそう遠くはないからな。
(重めの扉を少し苦労しながら開き、相手共々外へ出てから手を離す。始めに上記を伝えれば変わらず先導する形のままに歩き出して。街への方向ではなく足を向けたのは村から少し逸れた方向、ぎりぎり村の一部だがほとんど村から隔離された様な場所で)
……随分と端の方に住んでいるんですね。
(相手が向かった方向を見ながら、街に住んでいるのではと疑問に思いつつついていき。一応はいま向かっている先も街であることに気が付くが、なぜもう少し街の中央の方に居を構えなかったのかと不思議に思い上記を述べて)
その方が教会から近いだろう。
(外れにあることは否定しないが、教会に勤める分には便利だろうと答えて。厳密には居を構えた方が神父となるよりも早かったのだが、詳しい話はするつもりもなくそれらしい言い分を挙げる。本当に少し、時間にして10分も歩かない内に、一軒の一人暮らしには大きすぎるほどの家というより小さな屋敷の前で立ち止まり鍵を取り出して)
貴方は仕事のことしか頭にないんですか。
(まさか教会までの距離で自宅の場所を決めたのだろうかと考えてはぎょっとして。しかしそれ以上に疑問を感じることも無く、問い詰めることはせず。屋敷に辿りつけば本当に教会から近いなと半ば呆れつつ建物を見上げて。相手が鍵を開けるのを待ち)
……こんな大きな家に御一人で?
家賃が下手な家より安かったものでな。訳有り物件か何かなのかもしれん。
(相手の反応に苦笑を返し、暫く開けていなかった所為で立て付けの悪い玄関扉をどうにか開き。玄関へ一歩足を踏み入れた途端床からたつ埃に咳込みつつ、仮に訳有りだとしてもほとんどここで過ごさぬ為関係のない話だとどこか他人事な調子で首を傾げ)
訳有り……奇怪な人死にでもあったのであれば少しは興味も惹かれるのですが。
(蝶番の軋む音で扉が開かれたことに気がつけば上の方へと向けていた視線を相手に戻しつつ相手の後を追って玄関に足を踏み入れようとして。しかし相手が咳き込むのを見ると扉の前で足を止めて口元を手で覆い。眉を顰めつつそうっと中へと入って。上記を冗談交じりに述べ)
この辺りで寿命や病気以外の死人など、早々出ないから恐らくそれはないと思うがな。
(肩を竦め、自身が既に一度人殺しには手を染めている為全くないとは言えないものの、ほとんど平和そのもののこの界隈ではそれは無かろうと否定して。舞う埃を軽く扇いで散らしながら、どっちに何の部屋があったかと迷いながらも廊下を進んで)
つまらない場所ですねぇ。
(相手の言葉を聞けばわざとらしく残念がるように肩を落としてみせて。ため息交じりに上記を述べて。しかし実際に先程自分が口にしたような事情があったとして大した暇つぶしになるとも思えないのだが。廊下を進む相手の後ろをついて行きながら屋敷の内装を見回していて)
元より面白い場所だと言った覚えは無いんだが。
(つまらなそうにする相手に、とんだ嗜好だなと軽く引いた目を向けて。一、二歩物理的にも引きつつ廊下の突き当たりにある扉を開いて大広間に立ち入る。入ってすぐ右にある灰すら無い暖炉の、脇に置かれた小箱を見つければ「あったあった」と歩み寄って)
それはそうですが……もう少しくらい物珍しいものがあっても良いでしょうに。
(腕を組んではぶつぶつと無遠慮に文句を続けて。しかし相手がこちらに向けた視線と物理的に出来た距離に眉を顰めては大広間に入った相手を追いかけるように開いた距離を詰めつつ「そんなあからさまに引くことはないでしょう」とやや責めるような声色で。その後小箱を見ては不思議そうな視線を向けて)
(/遅れましたが明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたしますね。年末、年明けということもあり、なかなか返信できず申し訳ありませんでした)
大家に聞いてみなくては実際のところは定かではないがな……おお、まだ残っていたか。
(何を期待しているのやらとは思いつつ、自分も実際何故家賃が安いのかなど知らない為曖昧にぼかして。小箱の前でしゃがみこむと鍵は特に付いていないそれを開き、中に雑然と詰められた薬の類を掻き回す。すぐに見つかった包帯を引っ張り出すと劣化も無いのを確かめて満足げに口元を緩め)
(/あけましておめでとうございます。こちらこそこの様な素敵なトピで素敵な悪魔様と話にお付き合い頂けて光栄の限りでした、今年もまたよろしくお願い致します。年の瀬が忙しいのはお互い様ですのでお気になさらず!)
……それを取りに来たんですか。
(家を買う時に気になって尋ねたりはしなかったのだろうかと内心呆れつつ、しゃがみこんだ相手の背後に立ち、片手を壁につきつつ後ろから箱の中身を覗き込んで。相手が包帯を取りだすのを見れば納得したように上記を述べて)
それじゃあ、そら。
(相手の言葉に無言で頷き、くるりと身を翻して相手の正面に向き直り。べりべりと乾いた色々なものが剥がれるのに僅かに表情を歪めつつ、今巻いている包帯を綺麗に外して適当に付近に放り投げ。右手で今発掘した新しい包帯を差し出し、傷のある左腕を突き出しと両手を出した状態で上記を述べて)
あぁ、巻けということですね。
(差しだされた包帯を反射的に受け取り、そのまま自分の手元と差しだされた相手の腕を交互に見やっては微妙に嫌そうな表情を浮かべ。仕方なく渡された包帯を伸ばしては、慣れない作業にやや戸惑いつつも相手の腕に包帯を巻き始め。「私にこんなことを任せるとは……また傷が開くようなことをされるとは思わないんですか」と手元を見たままため息交じりに)
いや、ああ……え?
(大人しく包帯を受け取った相手に呆けた表情で暫し固まり。腕に包帯を巻かれ出して初めてフリーズが解けて、そわそわと落ち付かなさげながらも腕を相手に委ねて。溜め息交じりの相手の問いには何とも言えぬ微妙な表情で応じ、腕は動かさない様にしつつ視線を逸らして)
冗談、というか……てっきりお前が拒否するものだと思っていたから……。
まさか本当にやるとは思わなかったし今かなりビビっているぞ、一応な。
おや……従順なのが落ち着かないようでしたら、今からでも喜んで反抗いたしますが?
(眉を顰めつつ相手の腕に包帯を巻く作業をしていたものの、戸惑った様子の相手を見ては満足そうに薄く笑みを浮かべて。首を傾げ爽やかな笑顔を顔に張り付けつつ上記を述べては、巻いた包帯を少し強めに引っ張ってみて)
いや、生憎俺はそういう趣味は無いから普通にやってくれ。
(強く引かれた包帯にびくりと体を震わせて、ふるふると首を横に振り。何をしたでもないのに既に体力が削られた様子でぐたりと脱力すると、「面倒だろう、いちいち警戒をするのは」と口を開き、少し会話を戻して先程の質問に馬鹿正直に答え)
こうなった都合上共に過ごす時間がほとんどだというのに、毎度警戒したり、お前も隙を狙うのは疲れるだろう。だから気を張るのは最低限にしている。普段はもう面倒だから警戒するのはやめた。
それはそれは……残念です。
(大して思ってもいないことを口にしクスクスと機嫌よく笑っては、引っ張っていた力を緩めてまた包帯を巻き始め。相手が質問に対する答えを相手が述べるのに静かに耳を傾けては、顔はやや伏せ気味にしたまま視線だけを相手に向けて)
……そうですか。私にとっては好都合なのですが……貴方のそういうところは時々心配になりますよ、柄にもなく。
……心配? 何がだ。
(好都合、との言葉にいやだから付け込むのも面倒ではないのかお前、と呆れ顔になるも次の言葉は理解すら出来ず眉が寄り。ずっと上げていて疲れてきた左腕に視線をやったまま己の性分のどこに不安要素があるのだと聞き返して)
悪魔を傍に置いておきながら、面倒なんて理由で警戒を解くなんて信じられません。呪いがある以上殺すことは出来ないとしても、いつ後ろから襲われるとも分からないでしょうに。
(包帯を巻き終えると最後に結んで固定し。軽く引っ張って簡単に解けてしまわないか確認してから顔を上げて。その表情は相手の言動に対する困惑が浮かんでおり。確かに一々相手の隙を虎視眈々と狙うのも疲れはするが、だからといってちょっかいをかけるのを止めるとも限らない。少し呑気すぎるのではないかと戸惑っている様子で)
ありがとう、なかなかに上手いな。
(相手の言葉を一旦意図的に無視して、巻き終えた包帯を撫でては口元に薄く笑みを浮かべて感謝の意を示し。かなりの間腕の包帯を無言で撫で続け、やがて顔を上げると表情を薄い笑みから一切変えずに、声だけを感情を隠した固いものにして)
相手が悪魔だろうと、他者を危険視するのは苦手なのでな。襲われたときのことはそのときまた考えれば良いし……なあ?
……当然でしょう。
(相手の言葉に対し冗談を返すがその表情は笑っておらず。なかなか返ってこない先程の言葉への返答を待つうちに視線は床へと下がっており。次に相手の声が耳に届いた瞬間少し驚いた様子で相手に視線を戻しては黙って話に耳を傾けた後納得できない様子で眉を顰め)
随分……随分とお人好しですね、知っていましたが。いつか不意を突かれて大怪我しても知りませんよ。
大怪我しようが、不覚をとって死のうがそれはそこまでだったということだろう。
(お人好しはどっちだか、と丁寧に巻かれた包帯とわざわざ気に掛けてくる相手を交互に見やり。長い間寄せられたことの無かった心配がどこかくすぐったく、ついくすくすと笑いをこぼしてしまいながらひらひらと気にするなとばかりに手を振り)
それに異を唱えられる立場に俺は無いし、死ぬ覚悟程度ならいつだって出来ているんだ、気にするな。
……貴方がそれで良いのならばこれ以上は言いません。ただ私が心配なのは、私の呪いを解く前に貴方が死んでしまわないかということだけですから。
(何を笑っているのかと不満げな表情を浮かべるも、最後まで言葉を聞けば諦めたように深い溜息を吐いてから顔を逸らし。その場で腕組みをしてはあくまで自分の為の心配なのだと主張し、視線のみを相手に移して)
誰も俺が死んでは呪いは解けないとははっきり言っていないんだがなぁ……。
(なんてな、とふと湧いた悪戯心にそもそもの前提条件をひっくり返す様な思わせぶりな言葉を呟いてはにやりと笑い。小箱を閉じると包帯の為に捲くっていた袖を戻しながら、そっと横目で相手の反応を窺い)
……呪いをかけた者がいなくて、どうやって呪いを解くというのですか。
(相手の言葉に一瞬僅かに目を見開き、明らかな動揺を目に浮かべては平静を装おうと努め。馬鹿馬鹿しいとでも言うように相手に背を向ければ、視線を伏せつつ探りを入れる意図も含めて上記のように述べて)
呪いをかけた者がいなくて、どうやって呪いが継続すると言うんだ。
(相手の言い回しを真似て答え、背を向けられているのを良いことににやにやとする顔を隠し立てもせず。あまりやりすぎては痛い目を見るのは自分の方かもしれぬと頭の片隅では分かっていたが、それよりは露骨な動揺が見られた楽しさが勝って)
やっぱり貴方がいないと解けないんじゃないですか!
(相手の答えを聞くと振り返って相手を睨みつつ思わず大きな声を出してしまい。その際見えた相手の表情が更に癪に障り聞こえるように舌打ちをしては「全く、期待して損しました」と腹立たし気に文句を口にして)
……んん? うん、まあそうだな?
(自分が居なくなれば呪いは継続しない、という旨を述べたつもりだったのだが上手く伝わらなかったのに言葉は難しい、ネタバラシが早まってしまったみたいだと息を吐き。しかし相手の文句に再び口角を上げると、「期待した? 俺を殺す気にでもなったのか」と楽しげに尋ねて)
当たり前ではありませんか、それで終わるのであれば勿論そうしますよ。
(相手の反応を見ても自身のずれた解釈には気が付くことが無く。相手の問いかけに対し眉を顰めたまま視線を逸らしては躊躇いなく肯定し。何故相手がそんなに楽しげなのか理解できずに首を傾げて)
無理だから諦めておけ。
(清々しいまでににっこりきっぱり言い切ってやり、服に多少まとわりついた埃を払いながら立ち上がる。よしこれでやっと街に向かえる、と相変わらず相手の返答を待たないままに次の行動の開始として廊下に戻ろうと歩みを向けて)
……えぇ、そうします。
(相手の笑顔とは対照的にじとりと相手を睨んでは目を伏せ、小さく息を吐いて肩を竦めつつ頷いて。相手が立ち上がると一歩後ろへと下がって距離を取り、その後廊下へと向かうのを見てからその後ろをついていこうと自らも歩き出して)
用事は終わったし次は街だな、街。
(くるくると鍵を指に引っかけて回しながら玄関へ真っ直ぐ後戻り、歩く度に立つ埃に近々掃除に来ようと実行するかはともかく内心決意だけはしておいて。「セメント、ペンキ、それから……」と必要なものを声に出しながら指折り数えて)
ようやくですか。
(街と聞けば先程までのやや苛立っていたような態度とは一変し、上記のような生意気な口を叩きつつも声色に喜色を滲ませて。相手の後ろを歩く足取りも先程と比べて軽く。「買うものは沢山ありそうですね」と相手の言葉を聞き肩を竦めつつ)
はしゃぐのは勝手だが、こうなったのは全部お前の所為だからな。
(数える指を止めてじとりと相手を振り返り、とてもではないが支給される金で賄いきれぬ必要物資に眉間を押さえて。自腹を切るのも腑に落ちない、と少しの間唸りちらりと半ば諦めた目で相手を見て「……悪魔は金なんぞ持っていないものな」と)
貴方が抵抗するからではありませんか。
(心外な、とでも言うように肩を竦めるが、口角は上がっており。相手が悩むのも気にせずに、自分には関係ないとばかりに辺りに視線を向けていて。此方へと向けられた視線に気が付くと相手を見、その言葉が聞こえては「偽の金で良いならば今すぐにでも用意しますが?」と、にやりと笑みを浮かべつつ首を傾げて)
偽の……ああ、駄目だ。貨幣偽造は先月に法律違反に定められた。
(神父の割にかなり悪事に抵抗のない性質ゆえか、興味を持った様に一瞬食い付くもすぐに法で禁じられていると思い出せば首を横に振って。聖書にも人を欺いてはならぬとあるしこれはアウトだな、と内心結論付ければ「元々期待していなかったから構わん、どうにかする」と玄関口から外へ出て)
聖職者ならば嘘でもそれは駄目だと即答するべきではないのですか……って、貴方には言うだけ無駄でしょうね。
(一瞬喰いつく様子を見せた相手に対し若干引いたような表情を浮かべるが、最終的には呆れた様子で溜息を吐き眉間を押さえて。相手に次いで玄関を出れば後ろ手に扉を閉め、また相手の後ろを歩きつつ「どうにかって、自腹を切るんですか?」と問いかけて)
聖職者だからって何もかも綺麗事では通せん。生身の人間なのだからな。
(神父に夢を見すぎだ悪魔の癖にと一蹴して、引いた表情に心外だとばかりに顔をしかめ。尋ねてきた言葉に肩を竦め、「他にしようがあるまい」と恨みがましく元凶たる相手をじと、と見る。だがすぐに目を逸らして仕方ないな、と諦念を洩らし)
それはそうでしょうが、表向きだけでももう少し取り繕っては……いえ、やはり何でもありません。
(相手の言葉が分からないわけではなく、寧ろこれまでに見てきた人間たちの様子から十分に理解しているつもりではあり。外面だけでもらしくしてはどうか、と考えたが、よくよく考えれば相手が聖職者らしからぬ発言をするのはこの場に悪魔である自分しかいないからではないかと推測し、口に仕掛けた言葉を撤回して。こちらに向けられた視線に悪びれることも無く鼻で笑っては視線をそらし)
……今更だが、お前無駄に聖職者に詳しいよな。悪魔は本来俺達と接してこないものだと思うのだが、俺の元に来る前にも神父や修道女などに絡んでいたのか?
(やたらめったら神父らしくない、と言及してくる相手にふと悪魔は普通そこまで聖職者"らしさ"など知らないはずではとの疑問が浮かび。自分に手慣れた様子で声を掛けてきたところを見るに、やはりよく教会を狙って来る類の酔狂な悪魔なのだろうかと想像を巡らせて。話しながら見えてきた街、その予想以上の人の多さに僅かに顔をしかめて)
えぇ、まぁ、何度か……別に狙って手を出していた訳ではありませんがね。聖職者を堕落させるのは少々骨が折れますが、その分楽しみもありますから。
(相手の問いを受け、目を伏せてやや俯き、過去に関わった人間達のことを思い出しつつ。言葉の最後の方には意地の悪い笑みを浮かべて。街が見えると、こちらもこの人間の多さは予想していなかったらしく少し驚いたような表情を浮かべ。しかし別段嫌な顔をするでもなく、「おや、随分と活気のある街ですね」と単純に思ったことを口にして)
悪趣味め。……ちなみに、堕ちたのか、お前が手を出した連中は。
(母親が人混みに流されかける子供の首根っこを掴む様を見て、ふむと頷き恐らくは人混み慣れしていないであろう傍らの悪魔の服を掴んで引き寄せておき。群衆に流されながら目的の店へじわじわ接近しつつ、返答があればその笑みに呆れたとばかりに評して。やはり手を出された者は聖職者とはいえ例外無く堕ちたのだろうか、と聞くのも躊躇われた問いを少し迷って結局口にし)
さぁて、どうでしたっけ。焦れて殺してしまったこともあるような気がしますが……
(余所見をしていたところを引き寄せられ、少しふらついては不満げな視線を相手に送り。相手が問いを口にするのに躊躇った様子を見せるとにやにやと笑いつつ、わざとらしくとぼけてみせ。挑発でもするかのように、敢えてなんてことのないような口ぶりで)
(殺したと隠す気も無く宣う相手に目尻を強ばらせるも、静かに「……死なら、堕ちるよりは救いようがあるな」と呟き。挑発の為か事実そうであるのかは定かではないが、殺したのかさえも定かではないという言葉が肝要の殺したという言葉よりも気にかかり、表情を消したままに淡々と)
お前にとっては、殺したかどうかも覚えていないほど人間を殺すというのは軽い行為なのか?
……私にとって、それが軽いか重いかなど考えたこともありません。しかし……忘れてしまうということはそうなのでしょう。
(薄い笑みを口元に貼り付けたまま口を閉ざしては、腕組みをしてから街並みに視線を移し、まるで相手のとの会話に大した関心も無いかのように装い。しかし、暫し沈黙した後最終的には答えを返し。その時には既に笑みはなく、視線は依然として他所へと向けられたままで)
……まあ、悪魔だものな。
(頑としてこちらを向かない相手の真意を探る為にじっと視線を向けていたものの、やがて諦めた様な声音でぽつりと上記の言葉でまとめ。自身とは明確に異なる価値観に小さく羨ましいものだ、と呟いて一方向に一際強く相手の服を引く。見えてきた店を指してこっちだぞ、と話も切り替えて)
えぇ、悪魔ですから。
(クスリと小さく笑ってから頷いては、相手の呟きの訳を問おうと口を開きかけ。しかし丁度服を引かれ、一度相手に視線を戻し。わざわざ話を戻すつもりも無いのか素直に指さされた方向に視線を向け「もう到着ですか」と、肩を竦めつつ呟いて)
この後にも何軒か巡るがな、ひとまず一番近いところからだ。
(雑然とした店内に入ると勝手知ったるとばかりにさっさと目的の品がある場所まで進み、適当にいくつか補修材の入った袋を引き出して持てとばかりに相手へ突き出し。「荷物持ちに限界が来たら一旦教会に戻るからな、荷物が持ち切れなくなるか呪いの時間切れが来たら言ってくれ」と話す間も袋をひょいひょいと渡していき)
はいはい、分かりました……呪いの方はもう暫く大丈夫でしょうけど。
(突き出された袋を素直に受け取りつつ、呪いをかけられてから次の晩までの間のことを思い出し、不愉快そうに眉を顰めつつぼそりと。荷物持ちというからにはそれなりに大量の荷物を持たされることは覚悟していたものの、一軒目からこんなにもと少々表情引き攣らせて)
何だその顔は、何度も言うが恨むならばこれだけ買わねばならぬほど派手に破壊した己を恨め。
(ものの数分であらかじめ確かめておいただけの分を揃えると、懐から会計の為に財布を出しつつ店員の居る方を指差し。財布から紙幣に混じって突っ込まれたメモを出して確認をし、早くも次の店で買うものを考え始めており。「とはいえこの程度の買い物なら大したことはないだろう、悪魔様?」と話半分の状態ながら発破をかけ)
(返り討ちに遭うとは思わなかったのだと反論しに口を開きかけるも、逆に無様でしかないと気がつくと小さく舌打ちをして視線を逸らし。指さされた方向に視線を向けては、そちらへと足を向けつつ相手の言葉に対して「……は、当然です」と、眉を顰めたまま答えて)
(手早く運んでもらった品の会計を済ますと、大きな袋に買ったもの全てを詰めようとする店員を止め、別の袋に一部を分けて入れてもらい。小さい方を右手で持ち、大きな方を「気持ち程度だが軽くしてやったからな、もう二、三軒頑張ってくれ」と相手に渡し。店を出ながら足は既に次の店へ迷いなく向いており。ふと思い出した様に相手の服を再度掴んで)
次は二つ先の通りだ、はぐれるなよ。
(容赦なく全ての荷物を持たされるだろうと思っていた分相手の行動にやや戸惑い。何か嫌味の一つでもぶつけてやろうと思っていた気も削がれると荷物を受け取りつつ「はいはい……そんなことせずともこの程度の荷物ならば苦にもなりませんが」とせめてもの強がりを口にして。相手に続いて店を出、再び掴まれた服を見ては「逸れたりしませんよ、子供でもあるまいし」と呆れた様子で)
子供とは思っていないが、子供以上にタチ悪くふらふらしそうだろうお前。
(子供は他意無く迷子になるがこいつは自覚した上でどこかへ行きかねん、と判断し掴んだ服は依然離すことなく。荷物と服とで両手が塞がったままながらどうにか人を押し退け目的の店まで辿り着けば、今度は塗料の店為大して迷うこともなさそうだと歩みを進め)
……そんなことしませんよ、多分。
(その言葉に対して眉を顰め否定するも、その後視線をそらしては敢えて不安を煽るように一言付けたして。多くの人と肩がぶつかる感触に鬱陶しさを覚えつつも相手と同じように人々を押しのけながら相手についていき。辿り着いた店に並べられた塗料を物珍しそうに見て)
(悩む時間もなく白の塗料を複数手に取り、会計へ持っていこうとしてふと目に入った缶を笑いながらつつき。やや黒の混じったような暗い赤色に「見ろ、お前の目の色にそっくりだぞ」と楽しげに声を掛け、何を思ったかその缶も一つ持って会計に向かおうと)
(相手が塗料を手に取って居る間、退屈で仕方が無いとばかりに視線をぼんやりと棚に向けながら手に持った袋の持ち手部分を弄っており。しかし声を掛けられるとはっとした後、一体何を言っているのやらとそちらに視線を向けて。目に映った塗料の色に首を傾げると「……似てますかね……って、そんな色どこに使うんですか!?」と、その缶を手に取るのを見てぎょっとしつつ相手の後に続いて歩き出し)
(瞳の色に似ているとは言ったものの、瞳に限らず相手の存在そのものをよく象徴したような赤色を目を細めて見やり、「たまにはこういう必然では無い買い物も悪くない」と。白の塗料と共にさっさと支払いを済ませてしまい、袋を相手に渡しながら)
どこに使うかは決めていないが……まあ、良い色だろう?記念だと思えば良いんだ、記念だと。
……衝動買いを咎める気はありませんが、あまり荷物を増やさないでいただきたいものです。
(一度溜息を吐いてからじとりと睨むような視線を相手の背に向けつつ、上記。その後袋を受け取りつつ、使いどころを決めていないらしいことを聞くと眉を顰め。しかし先程自分の瞳のようだと言われたその色を良い色だと称されると、照れくさくも悪く無い気分であり。「全く、一体何の記念なのやら」と呆れたような笑みを浮かべ)
何の……ふむ、強いて言うのならお前と出会った記念、か?
(片手に持った荷物をくるくると回しつつ店を出て、荷物を増やすなとの苦言は聞かぬふり。ただ後半の言葉は拾い上げ、特に考えてもいなかった"記念"の内容を半ばその場のノリで口にして。言ってしまってから悪魔相手に何を記念することがある、と己の思考に首を傾げ「……いや、それはないか。すまん、忘れろ」と)
(相手に続いて店を出ては、相手が口にした記念の内容を理解するのに少々時間を要し。理解すると同時に相手に目を向けるが、その視線は困惑したようなドン引きしたようなものであり。その後に続けられた言葉にほっと胸を撫で下ろしては「……えぇ、それは無いでしょうね。驚きましたよ、この人正気かと」と乾いた笑みを洩らして)
うるさいな、特に何の気無しに言ってみただけだ、その目をやめろ。俺がこの色を気に入った、それで良いだろう?
(引きに引いた相手の視線に自分でも言ったことが大分おかしいと理解している為八つ当たり気味の睨みを寄越し、やや早口に話題をまとめ上げて終わらせようと。次の店へ足を向ける前に空を見上げて日の傾きを見て、しばらく考えた末に「……思いの外時間を食ったな。今日はもう戻るか」と午後からの修繕作業を考えるともう引き時だろうと結論付けて)
貴方が妙なことを言うから悪いんですよ。初めからそう言っていれば良かったんです。
(相手に睨まれるとこちらもムッとしたような表情を浮かべ、軽く鼻を鳴らしそっぽを向いて。相手の次の言葉が聞こえるとこちらも空を見上げて、もうそんなに経っていたのか、とぼんやりと考え。「……そうですね」と、特に異論もない為頷き。この後に待っている修繕作業のことを思い、小さく溜息を吐いて)
(/毎度毎度返信が遅くなってしまい申し訳ありません……!)
(相手の同意も得られたところで帰路へ足を向けて。道中は特段何も無かったものの、休養日とはいえ半日教会を無人にしていて大丈夫だったのだろうかと今更ながら憂慮しつつ帰還。恐る恐る扉を押し開くと朝と変化は無いようだったが、何となく程度に感じる障気に思わず舌打ちして)
半日空けた程度でこれだ、この地域本当に呪われてるんじゃあるまいな?
(/いえいえ、この時期は何かとお忙しいでしょうしね。戻ってきて下さったのでほっとしました)
……かもしれませんね。まぁ私の知ったことではありませんが。
(こちらも僅かに漂う瘴気を感じたのか、その源があると思われる方向をちらりと一瞥し。小さく鼻で笑いつつ、特に根拠もなく適当に相手の言葉に頷いてはさっさと教会の中に足を踏み入れ。手に持っていた荷物を一先ず床に下ろし、指示を仰ぐように相手を見)
(/今後も少し返信が遅くなる時期が続くかもしれません……近いうちに春休みに入るので、それからはもっとマシになると思います)
……久しいな、刹那主義の悪魔なら俺などのことはとうに忘れているかもしれんが。まあ、帰りがこれほど遅くなった俺が悪いんだ、お前を責める気は毛頭ない。恐らくはもう会えないとは思うが、願わくばお前をまたどこかで見かけられますよう。俺の所為で心労を掛けたりなど、してはいないとは分かっているんだがな。
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