悪魔との暮らし（BL）

ならもう少しして一段落ついたら中に戻ってこい。
朝食を用意しておいてやる。
(可能ではあるとの返事に、よしと満足げに頷き指示を出す。この際要不要は問うまい、どのみち自分は食べねばならないしその中で仕事をさせっ放しというのは気分としては良くない。ひどく質素なものだが味が悪い訳でも特別聖なる何かというのでもない。言うだけ言うとさっさと中へ引っ込んで)

はぁ……わかりました。ではさっさと終わらせますよ。
（悪魔に朝食を用意するとは妙な、と思いつつ了承し。先程少女から聞いたことについて問い詰めるのにも良い機会だろうと考え。一段落というのでせめてこの辺りの邪な気配だけでも祓っておこうと、視界に映った黒い靄に向かい聖水を振りかけることを数度繰り返し。小瓶の中が空になった辺りで瓶の蓋を閉め教会の中に向かい）

食う必要は無いならほとんど俺の自己満足に近いが、まあ付き合え。
(戻ってきた悪魔に小さな多目的室から手招きして呼んでやり。必要が無いのなら豪華でも美味でも珍味でも無い質素な朝食はわざわざ口にする意味など見出せないだろうかと、つい言い訳めいた言葉が出るが食べないというのは認めるつもりはない。どうせ働くよりはこちらを選ぶのだろうしな、と久方振りの一人前でない朝食を机に並べて)

食事に付き合わせるのは構いませんが、不味くなっても知りませんよ。
（手招きされれば素直にそちらに向かい。相手の言葉に対して薄く笑みを浮かべながら上記の言葉を返して。要は食事中でも遠慮なくからかうつもりらしく。机に並べられる朝食を見て、人間の食卓を見るのは初めてではないものの、実際に食事を共にするのは初めてだなとなんとなく新鮮な気持ちになり。机の傍にある椅子に腰かけて）

一人で食った方が不味くなるからな、別に構わん。
(共に食おうと放っておこうと何かしら不味くなる可能性があるのなら一緒に食べていた方がまだ気が楽だと肩をすくめる。取り立てて抗いはしない姿に笑い、「適当なものから好きに食えば良い」と机の上を指し示して勧めると自身も席につき)

（適当なものから、と言われてもどれもこれも初めて口にするものである。何から手を付けて良いものか分からず暫し迷った末に、人間の主食らしいと記憶しているパンを手に取って。一口分千切れば口に入れ、静かに咀嚼し、飲み込んで。それから「……そういえば先程、貴方の秘密とやらを子供に教えてもらいましたよ」と、問い詰めるつもりであった話を今思い出した風を装って切り出し）

……秘密？
(迷った末に食べ始めたのを見届けてから自分もまたパンに手を伸ばす。食べながら突然振られた己に関する話題に思わず身に覚えが無いと疑問府が浮かんだ。外で掃除しながらよりによって苦手そうな子供と話していたのかとそちらの方向にも密かに驚いて)

子供の言うことですから、でたらめである可能性もありますが……なんでも、父親から聞いたそうで。
（視線を手元のパンにやったまま、また一口大に千切り。上記のように前置きをしてから相手に視線を移して。「神父が悪魔と契りを結び、大罪を犯した、と」実際のところはどうなのだと言いたげに、相手の顔をじっと見つめつつ少女に聞いた秘密の内容を告げ）

……………………誰、から。
(手元から、貴重な神からの恵みたるパンが滑り落ちる。目をこぼれんばかりに丸くして、震える声で情報元の心当たりは無いのにと信じられない思いを洩らす。明らかな動揺は知られた内容もさることながら、よりによって悪魔たるオルキスに知られたのにも起因していて)

そういえば、名前を聞いていませんでした。しかし、教会に訪れる子供などそう多くはないでしょう。十歳くらいの女の子ですよ。
（相手があからさまに動揺したのを見て強く興味を惹かれるものの、質問攻めにしてやりたいのをぐっと堪え、冷静に答えて。相手の様子からしてあの話は本当だったのだろうかと推測し、今度こそ相手の弱味を握ることができたのではないだろうかとクスクス笑い）

あの成金、子供にまで話しているのか……!?
(与えられた情報に思い当たる心当たり。笑う目の前の悪魔の目を気にする余裕もなく、表情を焦りを通り越して最早泣きそうなものに歪める。小さな村に情報が広まるのなど早い、特に子供の口は軽いから尚更に。昨日来たばかりのオルキスが既に聞き付けたのだ、どれだけの人間に広まったのかと想像は止まらず口元を手で抑えて)

この話をしたことは秘密にして、と言われましたし、あの子も父親には口止めされていたのではないでしょうか。
（これ程の反応があるとは考えておらず、僅かに戸惑い視線を揺らしては誤魔化すように視線をパンに戻しながら上記を述べて。大体変に周りからこの教会や神父に目が付けられれば、ここを離れることができない以上自分の身も危ういのだという考えに至り笑みは消えて。「村の者に知られているのであれば、今朝の老人ももう少し余所余所しい態度を取っていたものと思いますがね」と、半ば自分に言い聞かせつつ、平静であるよう努めて）

……お前、は。
聞かないのか、俺が何の罪を犯したかなどと。
(オルキスの言にこくりと頷き、数度の深呼吸の後少し落ち着いて伏せていた顔を上げる。それからじっと目線を固定させて、初めはからかおうと話を振ったのであろう悪魔に問い掛け。単に興味の無い話だからか、と聞くだけ無意味だったかもしれない質問に小さくは、と息を吐いて)

……聞けば話してくださるのですか？
（気にならないわけではない。寧ろそれが聞きたくてこの話を切り出したようなものである。先程の取り乱した状態であれば聞くだけ無駄だろうと質問を耐えていたが、今ならば答えてもらえるだろうかと上記のように首を傾げて問いかけて）

聞きたいのならば答えるが。
(悪趣味だな、流石は悪魔だと薄く己か相手かを嘲る色のある笑みで応じ。落としたパンを今更ながらゆっくりと拾い上げて、どうにか声色だけでも平時のものに戻そうと努力する。絶対に当たるまいと思いつつ、そうだ、と上げる声はわざとらしくないようにして、今度は裏の無い笑みを貼り付けて)
むしろ、俺の犯した罪といえば何だと思う？
当たったら……そうだな、お前の呪いを解いてやろうか。

（逆に質問をされると思わず眉を顰めるが、当たれば呪いを解いてもらえるらしいと聞けば一度パンを置き、真剣に思案し始め。とはいえそんなことを聞かれたところでなかなか当たるものとも思えない、正解することはさほど期待せずに、しかし難しい表情を浮かべて考え続け）
……悪魔の手を借りる必要があったと考えて、金や殺し、盗みなんてものを貴方がするとは考えにくいです。
不治の病を治す……というのは罪と言うにはまだ軽いでしょう。亡者を生き返らせるのであれば、禁忌を犯したとして、罪と言ってもおかしくないかもしれませんね。

はは、ははははっ！
(考えながらつらつらと相手の口から出てくる言葉に思わず笑い声が上がってしまう。おかしさを堪えきれず、合間合間に笑いが入りながらも「予想の初っ端から大外れだ」や「お前は俺のことを買い被りすぎだ」やらをどうにか伝えて。だってそんな言葉遊びの様な綺麗な罪なんか罪ではない、自分のしたことは正しく裁かれるべきものなのだからと笑いをまた僅かに歪めて)
当時はまだ12だったし、教会なんて眠くなる場所は大嫌いだったとも教えなくてはフェアでなかったな。

……あんまり笑っていると目ぇ抉り取りますよ。
（相手の笑い声に舌打ちをし。行儀悪く机に頬杖をついては本気ではないものの低い声で脅しを口にし、もう少し考えを巡らせて。そういえばこの神父の片目は見えていなかったこと、過去に大きな怪我を負ったという話を自分の発言から思い出しては「では、故郷でも焼きましたか？」と、不愉快そうな表情を浮かべたまま問いかけて）

今度はいやに規模が広がったな……。
(突然に放られた脅し文句に知らず知らずの内片目をかばう様に手で左目を隠して。実質視界がほとんど隠された体勢のままに「当たらずしも遠からず、か？」と呟くと正解と言うには違うから呪いの解除は無しだが、と前置きしてから淡々と)
父と母を殺した。
お前の様な悪魔からしたらちっぽけな罪かもしれんが、平和惚けした村では大罪人扱いだ……まあ悪魔と手を組んだのが一番の理由だろうが。

悪魔の力を借りたんですから、それくらい出来るかと思いまして。
（左目を隠した相手を見て鼻で笑ってからしれっと上記を述べて。端から期待はしていなかったものの、折角の解放のチャンスを逃してしまったことに小さく溜息を吐き。それから相手の語った罪を聞けば、頬杖をついていた腕を下ろし）
親殺しですか……それはまたどうして？

（/本日はこの辺りで落ちますね。遅くまでお付き合いありがとうございました！）