主 2015-12-05 22:37:41 |
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……俺はそこまで女らしくはないだろう?
(御似合い、との皮肉を額面通りに受け止めて理解に苦しむとばかりに首を捻る。ただ相手のわざとらしい挙動には神経を逆撫でされたらしく粗暴な声音のままに相手の名を小さく復唱。当然ながら特段いじる点があるでもないその名にさえ苛立ちつつ)
オルキス、明日の朝から早速仕事だ。
それまでどうしようと勝手だが、朝にはまたここに来い、分かったな!
……っふふ、そうですね。
(首を捻る相手が可笑しかったのか小さく声を上げて笑い。口元を押さえたまま一応相手の言葉には頷いておいて。相手の様子を見ながらそんなに機嫌を悪くすることも無いだろうに、などと先程までの自分を躊躇いもなく棚に上げつつぼんやり考え。相手の言葉を聞くと)
はいはい。明日の朝……ですね。
では、それまで短い自由時間を堪能しますか。
ちなみに寝るならそこの懺悔室使っていいぞ。
寝具も一式揃えて置いてある。
(明日の朝とは言っても、朝日が昇れば仕事はもう始まるのだから本当に大した時間は残っていない。堪能、という口振りからして眠るつもりは無いのだろうが一応そんな案内だけは告げる。「俺はこのまま寝ないから気配が気になるのならお勧めしないがな」と更に付け足して)
……ふぅん、教会で寝るというのはあまり良い気分ではありませんが、休む時は使わせてもらいましょう。
尤も、今日は日中に嫌というほど睡眠をとったので必要ありませんが。
(相手の言葉を聞き、懺悔室の扉を少し開け、顔を覗かせて中の様子を窺い。教会である、という点を除いては特に部屋に不満は無く、毎日余所と教会を行き来するよりは教会に寝泊まりしたほうが楽だろうと考え。「おや、眠らずにいて平気なのですか?」と、付け足された言葉を聞くと懺悔室の扉を閉めつつ相手の方を振り返って)
お前、本当に高位の悪魔なんだな。
(己の知る並の悪魔は、総じて教会という場に立つだけで弱体化する存在だ。無論それでも相手をするのが面倒な程度の力は持つのだが、休むという行為が可能とは思えない。呪いのことも考えての提案ではあったが、「良い気分ではない」の一言だけで受け入れたのに改めて実感する。が、問い掛けられた言葉にはつまらなそうに息を吐き)
生憎俺はそんな高位の悪魔様と違って並の人間なのでな。
今寝たら半日は目を覚まさない自信がある。
おや、今更ですね。
(相手の言葉に得意げに目を細め、口角を上げて笑み。勿論教会という場は自分にとって気分の良いものではなく、本調子が出せるかと言われればそんなことは無い。しかし並の悪魔程教会から受ける影響が大きいものではない為、ある程度は普通に過ごすことができる。それ故に教会で身を休めることに大した抵抗は無く。懺悔室の扉から離れ相手の方へと歩み寄っていけば馬鹿にするような笑みを浮かべつつ)
はぁ……成程。まったく、人間は不便な生き物です。
本当にな。
神も人間を作るのならもっと丈夫に作れば、悪魔なんぞを憂う必要はなかっただろうに。
(馬鹿にする様な言葉にも、否定する材料はどこにもないので全くだと頷く。そもそもここまで弱っているのは完全にオルキスが原因なのだが、それでも同じくらい深手を負ったはずのそいつに今や負傷の名残は見当たらないのだから、人間はやはりつくづく脆いのだ。未だずきずきと痛みを発する左腕を撫でながら、ふと思い付き)
それでも悪魔と契約すれば、人間もその強さの恩恵を得られるんだったか?
えぇ……そうですね。代価を頂くことが殆どですが。
(相手の問いかけに頷きつつ、過去に何度か人間と契約を交わした時のことを思い出し。契約相手が辿った末路を思えば、契約相手に対して自分が与えた恩恵は果たしてそれに釣り合うものであったかと考え。当然釣り合っていた筈もなく、思い出しているうちになんとなく可笑しくなり小さく笑みを零して)
まぁ、そもそも契約なんて大抵の場合一年も続かないのですがね。
は?そうなのか?
(一年未満?と思わず呆けた声が出た。人間側か悪魔側のどちらかが一年も経たずして相手に飽きてしまうのだろうか、などと平和的かつ的外れも良いところの予測を頭の中でぼんやり浮かべる。自身の推測にしかし腑に落ちずにううん、と唸り)
俺の中では死ぬまで切れない様なイメージがあったんだが……。
まぁ、死ぬまで続きますよ、一応。
一年以上続くような契約は……余程双方の相性が良かったか、人間が賢かったか……でしょうね。
(口元に薄く笑みを浮かべたままその場で腕を組み。薄く悪魔側が生かしておきたいと思えるような人間か、恩恵で得た力に溺れることのない人間であればそれも可能だろうと考えつつ上記を述べ。実際にそんな相手に御目に掛かれたことは無いため、結局は憶測の域を出ないのだが)
……ああ、そういうことか。
(返ってきた説明にようやく理解が及んで、苦い顔になりながらも納得する。遠回しな言い方ではあったが、命尽きるまでの契約なのに一年も持たないというのはまあ、つまりそういうことなのだろう。それにしても適当な嘘八百を並び立てるか曖昧に誤魔化しても良かったのに、よくまあ隠し立てもせずきちんと説明してくれたものだと皮肉では無く純然たる笑みを浮かべて)
契約すればこの傷もとっとと消えるかと思ったんだが……説明感謝する。
お陰様で不用意に命を賭す真似をせずに済んだ。
それは良かった。私としても、呪いを解かれる前に貴方に死なれては困りますので。
(相手の笑みに対し鼻で笑っては、腕を下ろしてポケット越しに十字架を撫でながら、あくまで自分の為であると示し。そもそも聖職者が悪魔と契約するのはどうなのか、と思わなくもないが、悪魔である自分が聖職者としての在り方を説くのも妙な気がして浮かんだ疑問は呑み込み。「まだ傷は痛みますか?」と 相手の腕に視線をやりながら問いかける声はどこか嬉しそうで)
嬉しそうに聞くな、阿呆。
(呪い云々の下りにそういえばそうだった、と既に半ば忘れかけている状態を自覚する。働いてくれるのならきっかけなどもう塵ほどにどうでもいいのだ。だから懇切丁寧に説明してくれたのか、と十字架の入っているであろう燕尾服のポケットをじっと見つめる。その視線を問い掛けがあると同時に上げ、鬱陶しげに答えて)
むろん痛いが……慣れているしなあ。
もっとひどい怪我も負ったことはあるし、この程度ならまだ耐えられる範疇だろう。
おや、そうですか。
(慣れている、と聞けば笑みを消してつまらなさそうな表情を浮かべ、先程より幾分か冷めた調子の声色で。小さく肩を竦めつつ、もっと酷い傷を負わせてやることができていれば……と今更どうにもならないことを考え。次の相手の言葉に興味を引かれたのか視線を相手の腕から顔に移し、首を傾げて)
もっと酷い怪我……? 何があったんです?
俺からすれば、悪魔より人間の方が恐ろしいという話だ。
(予想外に掘り下げて問われた質問に無意識の内に声の温度を下げて、微妙に噛み合わない返答を以て返す。一番に酷い怪我を負ったのは10年以上も前のことだろうかと思い返して、連鎖的に己の身に未だ残る当時の名残を思い出す。オルキスの目を覗き込む様な形に距離を縮め、自身の色が僅かに異なる両目を指して)
結局治らなかったものもあるしな……分かるか?
……否定は致しませんが。
(悪魔が手を出さずとも勝手に同士内を始める人間たちの姿には覚えがあり。相手もそういったものの被害者の一人なのだろうかと推測して。突然縮まった距離に少し驚くも、指されるままに相手の両目をじっと見つめ。確かに普通の人間とは少し違う、左右異なる色を持つ相手の目に、成程これは何かで傷を負った名残なのかと判断しては一歩後ろへ下がり距離を取り)
余程のことがあったようで……貴方のトラウマを塗り替えるのには少々骨が折れそうですね。
トラウマのつもりは毛頭ないんだが……そうだったらむしろ普通に人間を憎んでとうにお前の様な悪魔に堕ちている。
恐ろしいとは言ったが、それでも俺は普通に人間は好きだからな。
(さらりと投げられた暴言に苦笑いで応じ、己が唯一持つ聖職者らしさだと自負する「人間への平等かつ無償の慈しみ」の片鱗を見せて。こっちは見えないんだよな、と右目を擦りながら追加で説明をしてやる。言ってしまってから、その内残った左目が狙われるかもしれんと少しだけ身を引いて)
博愛というものですか、馬鹿らしい。
(相手の柔い部分を知ることができたかと思えば期待外れで、思わず眉を顰めては忌々し気に吐き捨てるように述べて。しかし相手の片目が見えていないことを知ると、成程相手の右側は死角になっているのかと考え、意地の悪い笑みを浮かべ。身を引いた相手に今度は自分から一歩距離を詰め)
それは良いことを聞きました、いつか何かの役に立ちますかねぇ。
ああ、馬鹿らしいな。
だがまあ安心しろ、俺の博愛は言うほどお綺麗なものではないから。
(言いながら距離を詰めてきた相手に面倒そうに「立たん立たん」と応じながら詰めてきた分だけ後ずさる。第一こいつその死角が多い俺相手に普通に戦って負けたんだろうがとも思ったが、言うだけ無駄に煽ることにしかならないと察し大人しく口は噤んで)
そうでしょうか……しかし、覚えていて損は無いでしょう。
(後ずさる相手の言葉に対しクスッと笑っては首を傾げ、また相手が下がった分一歩距離を詰めてみて。相手にとって損はあるだろうが、と内心そっと言葉に付け足し。相手の元で手伝いをすることになった今でも相手に一泡吹かせてやろうとチャンスを虎視眈々と狙っている様子で)
そういえば、貴方普段はどこで寝泊まりしているんですか?
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