悪魔との暮らし（BL）

規則でこの教会の者は悪魔のいかなる誘いにも乗ってはならないと定められているのでな、断る。
(ふんと不機嫌には不機嫌で応じつつ、己の信条たる「規則だから」を掲げる。悪魔の様な無法者には分からないだろうが、規則の枠の中は当面の楽が保証されていて居心地が良いのだ。と、そこまで考えたところで目の前の悪魔が自分に話しかけるしかしてこないことや、今ここには人も他におらず何一つ価値の高い物も無いことに思い至り、怪訝そうな顔になって)
お前、俺を堕とそうとしているのか？

……はぁ、規則……？
（まさか断る理由がそんなものだと思っていなかったのかまたもや拍子抜けしてしまい。広げた両手を下ろせば、眉間を手で押さえつつやれやれとでも言いたげに首を左右に振って。それから視線を相手に戻しては相手の問いかけに対しで。その場で腕組みをすれば「寧ろ悪魔が人間に構う理由なんてそれ以外にあると思います？」と、鼻で笑って薄く笑みを浮かべつつ問い返して。しかし眉は顰められており、相変わらず不機嫌な様子で）

(何故か拍子抜けした様子の悪魔に、何だ神に背く訳には……とでも言って欲しかったのか、と口をへの字に曲げて心底下らないとばかりに目を逸らす。悪魔の癖にこちらが神父と言うだけでそんなイメージを押し付けられても困る。それにしても表情に一貫性の無い奴だな、まるでにんげんそっくりだとあまり高位の悪魔と接したことがない故の感想を抱き。会話はどうにか成立するのかと口を開いて)
俺を堕落させて何が楽しいんだ、この村は小さいが若い娘くらい居るぞ。
そっちなら簡単だろうしお前も女相手の方が楽しいだろう、そら行った行った。

簡単に堕ちる者を相手にしたところですぐに飽きるだけですよ。
（邪険に扱われようと大人しく引き下がるはずもなく、一度目を付けた獲物を逃すことはプライドが許さない様子で。暫し視線をステンドグラスに向けては再び相手に視線を戻し。その時にはまた先程のような薄い笑みを浮かべており組んでいた腕を解きつつ「だいたい規則がなんだと言うのです？ 私の元に来たほうが、ここにいるよりも余程興味深い経験ができると思いますがね」と、また相手と距離を詰めようと足を踏み出して）

(表情に余裕の戻った相手とは反対に、目を付けられたのをはっきり自覚してああ面倒なことになったと眉間に皺が寄る。こうなってしまえば抵抗さえも意地にならせる燃料にしかならない。下手に敵対されて戦いになるより厄介ではないかと天を仰ぎたい心地になって。聞く耳持たないと主張したのにも関わらず何やら誘いを続ける相手が、次いで距離を縮めようと一歩踏み出してきたのが視界に入る。合わせる形で一歩後ずさろうとして、途端くらりと頭が揺れる感覚と共にその場に倒れ込んで)
そんなものに興味は無い、規則は絶た、いっ!?

……おや、どうされました？
（倒れこんだ相手に僅かに驚くような表情を浮かべるも、そのまま相手の傍まで歩み寄っていけば両手を腰に当てつつ相手の顔を覗き込んで。その表情には愉し気な笑みが浮かんでおり、心配などという感情は微塵もない様子で。突然相手が倒れた理由はわからないものの、これで少なくとも物理的に逃げられることは無くなったと考え笑みを貼り付けた口元の口角を更に上げて。すると鋭い牙が少し覗き。そのまま捕まえてしまおうと相手の腕に手を伸ばして）

あー……畜生、これだからこの教会は……。
(受け身も取れずに倒れ込んだ衝撃に苦悶の色を浮かべ、ぼそりとあまりに人手の少ない職場に毒づく。くらりと頭を襲った倦怠感の正体など考えるまでもない、連日の激務によるただの寝不足。一度自覚すると抗いがたく存在を示す眠気に、だがこの状況で寝てたまるかとどうにか意識を保ち。「出来れば避けたかったが、悪く思うなよ」と呟くと懐から聖水の入った小瓶を取り出す。狙いも適当に、とにかく相手と自分の双方に水がかかるよう瓶の中身をぶちまけて)

……な、何を……！
（相手の呟きに思わず伸ばしていた手を止め、次の瞬間相手が取り出した小瓶を見ると本能的に危険を感じ取り手を退き。自身の慢心と油断に遅すぎる後悔を感じつつも咄嗟に腕で顔はかばうが、その他の場所には聖水を被ってしまい。不快な臭いに込み上げる吐き気と焼けるように痛む肌、思わず苦痛に表情を歪めては、足もとがふらつくも地に伏すことはプライドが許さず無理に体を動かして立ち上がり。近くの長椅子に手をついて体を支えては相手を睨みつけて）

おい悪魔、こちらも伊達に神父やっていないんだ……なめるなよ。
(眠気で半眼になりながらも、床に転がったまま睨んでくる悪魔を見上げる。懐を更に探れば聖水の小瓶はまだいくらかあるし、純銀の針もある。首から下げた十字架まで効くかは分からないがそれら全てを相手にちらりと見せて無言の威圧。起き上がるべきか少し悩むも、こちらが倒れたままの方が実力差は誇示出来るはずだと考え(あとまだ頭は痛む)そのままの姿勢から動かずに)
……頼むから帰ってくれ。

……っはは、何を言っているんですか。ここまでされたらますます帰るわけには行かないでしょう。
（鋭い眼光で相手を睨みつけたまま牙を剥き出しにして笑い。途端教会の灯りとして灯された蝋燭の火がフッと掻き消え、どうやら炎を操る力を使用したようで。もはや堕落させることは諦め、相手の命を奪うことを目的に切り替えると両手の手袋を外し、痛みに荒くなっていた息をどうにか整えつつまた相手に一歩歩み寄り。軽く上げた左手には炎を乗せ、右手は鋭い爪が露わになっていて）

…………チッ。
(目の前の悪魔相手には己の行動は火に油を注ぐものだったと悟り、出来るだけ風波立てずといった日和った考えを捨てる。底冷えした目で相手を見据えると、適当なタイミングで跳ね起きて銀針を投げつける。投擲の技能もこれまでの場数でかなり成長した、場所はともかくまずは当たれと一応左手を狙い)

（暗い視界の中でも炎に照らされきらりと光った銀針の姿は視界に捕らえ。先程の聖水のこともあり警戒していたのか咄嗟に身を躱せば、その勢いで一気に相手と距離を詰めまずは鋭い爪での攻撃を仕掛けようと相手の喉元を狙って右手を振るい。怒りにぎらぎらと燃える瞳は、どこか愉しそうな光さえ宿しているようで）

(避けられた銀針を目で追ってしまい、つい爪への反応が遅れる。たった一瞬のことだが、はっと目線を戻したときには既に人間の動きで避けれる距離にしては近すぎるほどまで迫っていた。だがいくらなんでも喉はまずいと、左腕の太い血管の無い面で受ける。貫かれる痛みに血管の位置は関係なかったかと自嘲するが、その腕は先程己でぶちまけた聖水でびしゃびしゃに濡れていて)

（相手の腕に触れた指先が酷く痛みを訴えるが、相手の肌を切り裂いたことに対する喜びが苦痛を上回り口元には笑みが浮かび。しかしそう何度も繰り返すことのできる攻撃では無いと判断すれば一度距離を取り、左手に乗せていた炎を相手の足元を狙って打ち出して。じんじんと痺れる右手は爪の間から聖水が体内に入り込んでしまったためか碌に動かすことのできない状態で）

(足元で燃え始めた炎に、聖水をかけようかとするも思い留まって、スータンの下半身部を引きちぎる。燃え続ける炎にホワイトセージを投げ入れ、煙で弱れば良いがと閉め切られた窓と扉を見て笑う。さほど広くもない礼拝堂、悪魔でなくとも……というか燃やすものが何であろうと煙が満ちれば弱るのは人間も同じ。炎にかけようとしていた聖水は頭から被る。傷口に激痛が走るのにしかし、にたりと凶人じみた笑みを浮かべ)
ははっ、聖水に限らず俺の血も、お前にとっては毒だろうから気を付けろよ？

ふん、ならば……毒が回る前に片づけてしまえば良いだけの話です。
（体内に取り込んでしまった聖水と相手の血液、それに加え充満していく煙に動けなくなってしまうのは時間の問題だろうと考え。一気に片づけてしまわなくてはと再び左手に炎を纏わせ次は相手の体に直接炎を飛ばしてやろうとするも早くもぶれ始めた視界にふらつき。相手に向かっていく炎は徐々に力を無くし、相手に届くころには先程打ち出した火の塊の半分ほどの大きさになっていて）

動きにキレが無いぞ、悪魔。
(飛んできた炎はしかし、今度は避けられる程のスピードと大きさで。脇でちろちろと燃えるそれにまたセージをくべてやり、ふらつく悪魔に嘲るような笑いを向けてやる。その実こちらも同じくらい、いやそれ以上にまずいのだがアドレナリンが馬鹿みたいに気分を高揚させるのに打ち消されているらしい。とどめとばかりに一等長い銀針をぐっと握り、悪魔に向かって駆け寄り)

……くそ、このっ……！
（再び炎を操ろうとするももはや椅子で体を支えつつ立っているのがやっとで。威勢だけが先走ってしまい前のめりになった為体勢を崩すと床に手をつき肩で息をして。もはや視覚は満足に機能しておらず、それでもぼんやりと見える相手の姿を最後の反抗と言わんばかりに睨みつけて）

（/良いところですが、そろそろ寝ないと不味いので落ちますね。夜遅くまでお付き合いいただきありがとうございました。明日……もう今日ですが、また返信させていただきます）

大人しくしていたら楽に済む……ん？
(睨んでくるのに対しても頓着せず、ひたと首筋に針を当ててみる。が、相手が碌に動けない状態なのを見て取ると短く息を吐き、針を横へ投げ捨てる。セージの葉を東洋で言うところの「お札」の様に悪魔の体にぐりと押し付けると、聖水のかかったと思われる部位をスータンの乾いた部位で拭ってやり、「これで見逃してやるから、とっとと帰れ」と声を掛け。段々と息も絶え絶えになり、ぐにゃりと悪魔の側で同じ様に倒れ伏しながら)
殺すのは、好かん。
入ってきたときの様に、どうにかして、出れば……



(/こちらこそ遅くまでありがとうございました。まだ始まったばかりですが、既にオルキスさんが素敵すぎてびったんびったんしていました。楽しみに待っています。良い夢を！)

（押し付けられたセージの葉に不快感を感じるも、その次に何か布で擦られるような感覚を感じ、どうにか目を凝らしてみれば自分の体についた聖水をふき取る相手の姿が見え。なぜそんなことをするのかと困惑が浮かびつつも少し体は楽になり視界も回復して。それでも眉はあいも変わらず不機嫌に顰められ、倒れこんだ相手の服の胸元を、聖水が被っていない場所を選んで掴んでは相手の顔を見下ろしつつ小さく舌打ちをし）
情けをかけると？ この私に？ それだけ恥をかかせるつもりですか。
だいたいこのままでは貴方死にますよ、火が回るか、そうでなくとも煙が……

（/こんにちは、本日もまたよろしくお願いします。びったんびったんしていただけたとは……私もアテネさんのキャラがドストライクで一人悶え狂っておりました！）