語り手 2015-11-26 18:53:00 |
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取り敢えず、期限は明日の朝の9時頃と言うことでお願いいたします!選定はその時にしますので、延長は出来ませんので何卒ご理解をお願いいたします…!
名前:アレックス・ウナ
出身:現代社会
性別:男
年齢:16y(魔術学校一年生)
容姿:翡翠色の丸い目。髪は肩に付く位の黒髪に毛先が紫に染まってる。若干、整った顔立ちをしている。服装はシンプルな黒のローブ、裏地は紫。中はYシャツに赤のネクタイ、ズボンと楽な格好。ローファーらしき靴がローブから見え隠れする。左右の耳に赤石をはめたピアスをつけている。身長169cm、中肉中背のごく一般的な体系。
性格:悠々自適、自由奔放という言葉なお似合いなほど締りがない。いい意味でも悪い意味でも素直で、すぐ口に出す所為か自分でも知らない内に人を煽る。しかし困ってる人、弱き者には手を差し伸べる性分なのでイーブンにはなるらしい。幸運か不幸か記憶力はいいとは言えない。
備考:一人称「僕」 二人称「お前」又は「君」
約16年間魔術のことなど両親共々一切知らずに生きており、そのことに関しては無知の領域。突如として家にやってきた魔術学校への入学届けに目を輝かせるが、反面上手くやっていけるのか不安にも。16年に普通の学校で培ってきた勉学、運動は得意だが魔術は微妙。頭脳派だと言い切っている。パートナー制もパートナーも特に何も思わなく、興味がない。
「へぇー、一匹狼タイプなんだ。うん、かっこいいかっこいい。あ、でも、授業の点下がったら嫌だから協力はしてね?」
「人には少なからず一つは良い所があるって母が言ってた。僕は君の良い所でも暇つぶしに探してあげる」
(/先程質問させて頂いた者です!
目を通していただけたら幸いに御座います。
それでは、此方も時間まで待機させていただきますね)
おはようございます、大変お待たせ致しました。この度は参加希望、そして素敵なpfを有難うございます! 9時になりましたので募集停止と選定の結果をお知らせします。
選定させて頂いた結果、>4様のブリジット様にお相手をお願いしたいと思います!
>17様のアレックス様、今回は良い結果をお知らせ出来ず大変申し訳ありません。ですがご参加ありがとうございました!
>20様
いえ!こちらこそ9時頃とこちらの都合の問題で朝に締め切ってしまって済みません…!参加希望だけでも嬉しかったですのでありがとうございました…!はい、またお会いする機会がありましたらその時は宜しくお願いします!
>19
(/この度はお選び下さりありがとうございます…!ご期待に沿えるように頑張らせて頂きますので、どうぞよろしくお願い致します!)
>22様
いえいえ!むしろ、こちらこそ宜しくお願いします…!
ちなみに当方のロル数ですが、場面によって長かったり中くらいだったりします。また小説ロルですので、もしそれらが苦手ででしたら変更しますのでご指摘下さいませ!
ありがとうございます…!
取り敢えず、用語集をまとめてきましたのでパパッと参考程度に目を通して頂ければと!全体的にハリ◯タ的なイメージです(( 何か質問とご要望があればお受け致します。
[用語]
・幻想世界
現代いわゆる人間世界の裏側にある世界。ヨーロッパの街並みが広がっており、魔術師と幻想生物が生きる。各地にある専用のゲートで世界の行き来が出来る。基本はパスポートが必要だが、入学許可証を貰った見習い魔術師は入学式と里帰りの時だけ特別に通して貰える。
・魔術学校
16歳から入学出来る魔術を学べる全寮制の学校。城みたいな外観で中は洋館風。大きいため学生寮や中庭、食堂などが入っており多機能。長期休み以外は実家に帰れない。一学年のクラスは1組と2組の二つクラスのみ。校長は女性。
・授業
魔術史(座学/社会/歴史)
幻想生物学(座学/理科/生物/実習)
魔術式(座学/数学?/暗記)
魔術薬(座学/理科実験)
自然魔術(座学/実技)
破壊・防御魔術(座学/実技)
回復・強化魔術(座学/保健/実習)
精神魔術(座学/倫理?/実習)
飛行魔術(体育/サドル付き箒/実技)
変容魔術(座学/実習)
召喚魔術(座学/実習)
創造魔術(美術/家庭科/実習)
・学生寮
魔術学校の中にあり、最北にある扉を開けた所にある渡り廊下で行ける。鍵を持って指定された壁の近くに行けば魔術で寮部屋の扉が現れる。二人一部屋。天蓋付きのベッドとソファーと机とロッキングチェアと洗面台が置かれている。風呂は共同なので寮部屋には無い。
・魔術街
魔術学校の足元にあるヨーロッパ風の街並み。中心には魔術学校がある。魔術街と魔術学校を守るように周りは巨大な城壁で囲まれている。魔術道具、教科書、ローブなど魔術に関する物やそれで作られた物が売られている。
・魔術
幻想世界に漂う魔素と体内の魔力を組み合わせ、魔器で魔術式を書き詠唱をすることによって発動する力。魔術の効果は書いた魔術式と発した詠唱に依存する。どちらかを少しでも間違うと失敗する。纏めると、魔素+魔力+魔術式+詠唱=魔術発動。何でも出来るようで何でもは出来ない。自然(火水氷風土木雷光闇)、破壊、防御、回復、強化、精神、召喚、変容、飛行、創造。
・新式魔術
現在の主流。宙に杖で魔術式(文字のみの短縮型)を書き詠唱することで魔術を発動させるタイプ。メリットは手間が掛からず分かりやすい。デメリットは不安定でやる人に左右され、また時間を置くことが出来ない。
・旧式魔術
過去の主流。地面にチョークで魔術式(円状の原形型)を書き詠唱をすることで魔術を発動させるタイプ。なお、使い魔を呼ぶ召喚魔術はこれではないと成功しない。メリットは予め地面に魔術式を仕込んでおけば時間を置くことが出来るし遠くから発動させることも出来る、罠に便利。デメリットは手間がかかる上に地面のを消されれば発動出来ない。
・魔術式
いわゆる魔方陣。新式魔術において書くのは文字のみの短縮型で、旧式魔術において書くのは円状の原形型。
・魔術道具
杖などの魔器やローブなどの魔装のこと。また、人間世界の道具に+αの便利能力が付いた物もある。動く新聞、喋る魔術書、歩く椅子、飛行用のサドルの付いた箒。
・魔器
魔術を使う上で欠かせない武器。新式魔術をする場合は杖。旧式魔術をする場合はチョーク。魔術街には専門の杖店が複数ある。僅か程度だが杖やチョークの材料によって効果が違う。
・魔装
魔術から身を守る為の防具。ローブやマントが主流。とんがり帽子は高等魔術師だけが被れる一級品。僅か程度だが杖やチョークの材料によって効果が違う。
・魔素
空気中にある見えない物質。幻想世界にしかない。
・魔力
生まれつき持っている者と持っていない者がいる。魔力=生命力な為、一度に使い過ぎると最悪の場合死に至る。時間を置けば自然回復する。
・使い魔
召喚魔術で呼んだ生物のこと。魔術式は旧式魔術でないと成功しない。手間がかかる魔術。一時契約のため魔力が切れれば消えてしまう。
・階級
見習い魔術師…魔術学校の生徒達。
魔術師…上記の卒業者。
中級魔術師…一定の成果を上げた者。
高等魔術師…とんがり帽子が被れるぐらい一流の魔術師。魔術学校の先生は必ずこの階級の者。
(いえいえ!ごちゃごちゃしてる部分もあって見にくいかとは思いますがありがとうございます。
見落としてました…!可能ですよ!珍しい物だと思うのであまり持っている人は少ないと思いますが!)
了解しました!ちなみに愚息ですが物語を進めやすくするためと、たぶん不快にさせてしまうかもしれませんので若干マイルドにしようと思います…!
では、絡みロルを投下しても大丈夫でしょうか?
(/了解致しました!無論ツンケンしていてもキャラと分かっていれば不快には思いませんので、主様の匙加減にお任せします…!
はい。お願いします!)
(ここは幻想世界、人間達が暮らす現実世界の裏側で、魔術師と幻想生物たちが生きる世界。ヨーロッパの街並みが広がる幻想世界の中心地には大きな『魔術学校』が建っており、そこは16歳から入学が許可されていた。見習い魔術師たちは皆ここで魔術を学び、卒業してから正式に魔術師を名乗ることが出来る。
16歳になったばかりのノエル・ラドクリフはその魔術学校の門を潜り、今年度の入学式に出ていた。彼の目的はただ一つ、この魔術学校であらゆる知識を学んで一流の魔術師になること。何故なら、自身を捨てて姿を消した両親にまで名の届くほどの一流の魔術師となり、己を捨てたことを後悔させてやろうと考えている為だ。つまりは学校生活や友人作りには興味など無く、支障が出ない程度に上手くやっておけば良いと彼はこの時まではそう思っていた。
しかし、シャンデリアと蝋燭が宙を漂うホールで行われていた入学式の後半のこと。とんがり帽子とローブを身に纏った若い女性の校長が出てきて「では、これより我が魔術学校の決まりによって、恒例のパートナー制の振り分けをしていく。パートナーはこの三年間の学校生活をしていく上で君たち生徒にとっては互いに欠かせない存在。その為、きちんと仲良くするように。授業や試験でも組むのだから仲良くしないと成績にも響いてしまうぞ。では、“センドリア(届け)”」そう言って、校長が杖を一振りすると新入生一人一人の元に手紙が飛んで行き)
パートナー制?そんなのは魔術学校の入学案内のどこにも書いていなかったぞ。
……全く、面倒な制度だな。扱いやすい奴なら良いが……。
(ぶつぶつと、それなりに整った顔からは想像も出来ないほどの辛辣な言葉を呟いた。ノエルは渋々受け取った手紙を開けて中の紙を見る。『α-14』ただその文字だけが書かれていた。
これだけで、どうやってこの烏合の衆からパートナーとやらを見つけ出せと? 微かに眉を顰めるが、しかし校長が「“チェンジャー(変化)”」と唱えた瞬間、その手紙は『白い鳩』へと変身する。一瞬驚いたものの手紙の裏に旧式魔術の魔術式が仕込まれていたのだろうとすぐに推測し、ノエルは飛び立とうとしていた白鳩を乱暴に片手で掴まえる。周囲を見れば蛙やら犬やら猫やらが暴れていて、どうやら人によって手紙が変身する生物は違うようだ。
すると、壇上にいる校長は快活に笑って「新入生諸君!魔術は凄いだろう?君達のパートナーはその生物達が導いてくれる。……さて、これで入学式は終わりだ。本日は授業も無いから学生寮に行くなり、街に行くなりしても良い。門限までには戻って来るようにな。では、解散!」嵐のようにそう言って校長はホールから姿を消す。残されたのは彼女の魔術に右往左往する新入生達。校長のイタズラには付き合いきれんと言った感じにノエルは白鳩を手放す。
そして、パートナーを見つけるよりも先にこの混乱するホールから出ようとして、獅子のレリーフがあしらわれた立派な出口の扉へと向かって行き)
(/ありがとうございます…!なるべくバランスよくしていきますね! / 最初ロルゆえに長くなってしまいましたが、無駄な部分はじゃんじゃん蹴って下さいませ…!)
えぇ……いくら2クラスしかないとは言え、効率悪すぎじゃない…?
(入学式も後半にさしかかった頃。パートナー制についての説明があったかと思えば途端に阿鼻叫喚と化したホールの様子を、ブリジットは立ち尽くしたまま呆然と眺めていた。普通班分けやパートナー分けといったものは席順に対応させておくべきものではないのだろうか。魔術師の考えることは分からないわ、なんて密かに溜め息を零せば「っと、待って待って!今行かれても追えないわよ!」と今にも飛び立とうとしていた白鳩を呼び止める。果たして言葉が伝わったのか白鳩はブリジットの肩の上に収まり、見失わずに済んだ事にホッと胸を撫で下ろした――その時。「退けッ!」と男の怒号が響き、近くに居た女子生徒が突き飛ばされて転倒する。しかし男子生徒は謝罪どころか舌打ちをしてこちらの方に向かってくる猫を追って走ってきており、それを見たブリジットは男子生徒とのすれ違いざまに足をかけて転倒させる。そして勢いよく床にダイブした男の前で仁王立ちになって指を突きつけ)
ちょっと!人を押し退けるだけじゃなく、突き飛ばしておいて謝罪もしないなんて何様のつもり!?
(二人の居る場所を中心に、あれほど騒がしかったホールが静まり返っていく。立ち上がった男子生徒は顔を真っ赤にして「うるせぇ!!」と叫ぶが、対するブリジットは片眉をひょいと上げて「なぁに?自分の非を指摘されて逆切れするの?……男の風上にも置けないわね、アナタ」とつまらなそうに言って腕を組むだけ。当人にいくらその気はなくとも容姿も相まって煽りでしかなく、熱くなった男は怒りに任せて拳を振り上げた。しかし肩から飛び立った白鳩と近くの出入り口の方から飛んで来た白鳩が男子生徒の顔の辺りを執拗に突っついたため、彼は顔を庇って動きを止める。暴力沙汰を回避したことで周囲の緊張した空気が和らいだころ、騒ぎを聞きつけた教師が駆けて来る音を聞きながら、ブリジットは未だ警戒するように男の周りを旋回している二羽の白鳩を見つめ)
同じ動物の人がパートナー、なのよね?……と言う事は近くに居るのかしら。
(/「出会いは最悪」との事でしたので、ノエルくんの期待を全力で裏切って扱いにくさMAXにさせて頂きました…!← こんなある意味問題児パートナーですが宜しくお願い致します!)
(廊下へと通じる扉に手を掛けようとした瞬間、騒音が一瞬にして静まり返り、一際目立つ女子の声がノエルの耳に届く。入学式早々に喧嘩かと、呆れたように後ろを振り返れば目に入ったのは顔を真っ赤にしている男子生徒と何やら注意をしている女子生徒。どちらが正しいのか間違っているのか、そんなのはどうでもいい。ああ言う連中は悪目立ちをする為、関わらないのがマシだ。あのパートナーになる生徒はさぞかし大変だろうなと鼻で笑い、ノエルは二人から視線を外そうとした。
だが、先ほど彼が放した白い鳩がその女子生徒に助太刀をする。しかもよく見れば彼女の肩にも同じような白い鳩が止まっていた。勘のいいノエルはすぐに察してしまい、悪い夢なら醒めてくれと言った感じに)
……冗談じゃない。あの扱いにくそうな奴がこれから三年間も組むパートナーなのか?
(くしゃりと困ったように黒い目を細め、一度だけ金色の髪をかく。成績優秀、品行方正で三年間を通して行こうと考えていたが、パートナーらしき人物が開始早々あの様子では自分まで教師に目を付けられそうだ。
けれど、起きてしまった問題は仕方ない。なら、教師が来て面倒くさいことになる前にここから去るまで。ノエルは周りが自ら道を空けてしまうぐらい威圧的にづかづかと彼女の元まで歩いて行くが。
しかし辿り着いた途端、その雰囲気を緩やかなものに変えて)
そこの君、ちょっと良いかい?その白い鳩は僕の手紙が変化したものなんだ。だから、僕と君はパートナーなんだけど……先生が来ればゆっくりと話すことが出来ないから少し場所を変えようか。
(にこりと優しげに微笑んで、人混み故に中々こちらまで進んで来れない教師を一瞥して目の前の彼女に告げる。
そして、くるりと振り返ると再び出口を目指してホールから出ようとし)
こっちだよ、付いて来て。
(/ありがとうございます…!こう言う娘さん大好きなので、むしろ大好物です! / いえいえ、こちらこそ初っ端から猫被ってますが、ホールを出た時にでも見破ってやって下さい(笑) / では、背後はこれにて失礼しますね! また、何かあれば遠慮なくお呼び下さい)
……で、アナタはいつまで座り込んでいるの?
(女性であるブリジットに手を上げようとしたことで周囲から咎める様な視線を向けられ、身動きが取れなくなった男子生徒をよそに、転倒した状態のままぽかんと事の成り行きを見つめていた女子生徒に歩み寄る。かけた言葉こそ厳しいが手を貸して立ち上がらせれば膝を少し擦りむいてしまっているようだったので「よければ使って」とティッシュと絆創膏を差し出し、女子生徒が戸惑いながらも受け取ったところで周囲にできた人だかりを割って現れた相手に声を掛けられ)
そう、アナタが…。でも私、その先生と話があるのだけど……って、ちょっと!?
(相手の言葉と戻って来た白い鳩が手紙に戻ってお互いの手に収まったのを見れば納得したように頷くも、続く言葉にはむしろ教師と話がしたいと言って人だかりの向こうに見えるとんがり帽子に視線を向ける。しかし相手は外に出る気のようで扉の方に向かって歩き始めてしまい、絶対数の少ない教師よりはこの広い校内ではぐれてしまった名前も知らない一生徒を探す方が大変だと判断して、小走りに相手の後を追ってホールを出て)
(/了解致しました!ではこちらも失礼しますので、何かあればお声掛けください…!)
(雑踏した入学式のホールから解放され、さながら城内の廊下のような学校内を歩いて行く。辿り着いたのは学校内にある中庭。近くに生徒や先生はおらず、二人っきりで話すのには好都合だ。周囲は壁に囲まれており中央には大樹が聳えている。四月特有の穏やかな気候に当てられつつもノエルは後ろを振り返って)
取り敢えず、自己紹介をしようか。僕はノエル・ラドクリフ。幻想世界の出身だよ。魔術の知識は沢山持っているから、分からないことがあったら遠慮せずに聞いておくれ。
良ければ君の自己紹介も聞きたいな。
(にこにこと笑顔のままで話す。これはいわゆる猫被り。扱いにくそうな相手でも大体は優しく接すれば大人しくなる。そう腹の中で真っ黒なことを考えて、ノエルは人当たりの良さそうな笑みを崩さずに相手の自己紹介を待ち)
(相手の背中を追って中庭へとたどり着くも、そのままにしてきてしまったホールの事が気がかりでちらちらと後ろを振り返る。あれだけ目撃者がいるのだから男子生徒が罪を逃れることは無いと思うが、どうせなら突き飛ばした女子生徒に謝罪するところまで見届けたかった。歩きながらそんなことを考えるも、ようやく立ち止まって振り返った相手に話しかけられれば一旦意識を目の前の人物に戻し)
……え?ああ、そうね。ブリジット・クロックワークよ。
出身は幻想世界だけど育ちは現代、先月まで向こうに居たわ。だから魔術に関しては何も知らないし、学校に関しても説明を聞く間もなく放り込まれたの。
(相手に倣って自己紹介をしつつ、母親の逝去から怒涛のように流れた時間を振り返って溜息を一つ。おかげで感傷に浸っている暇もないのは父親の気遣いなのだろうか。ありがた迷惑という言葉が浮かびかけるのを何とか振り払って、人当たりのいい笑顔を浮かべる相手の顔を見上げる。どこからどう見ても非の打ちどころのない好青年だが、それ故にどこか胡散臭い気がして仕方ない。加えてホールを後にした時の強引さが少しだけ引っかかっており、じっと見つめる事数秒、おもむろに口を開き)
――ねぇ、それって素なの?それとも演技なの?
へぇ、それじゃあ分からないことだらけで大変だろうね。なら、これからパートナーとして手助けするよ。逆に僕は人間世界のことを知らないから機会があれば教えて欲しいな。
(相手の自己紹介を聞いて、魔術初心者かと裏で思う。しかし変に知識を付けているよりかはマシな上に、人間世界の文化にも多少の興味がある。ある意味で当たりの部類に入るだろうと考え、ノエルは笑顔のまま上記を述べた。
完璧に相手を騙せている。むしろ、孤児院や親戚の家などで今まで騙せなかった奴などいない。そう己の演技力を自画自賛していたが。
しかし、ジッと見られていた相手に鋭い指摘を入れられ一瞬動揺しそうになるが、何事もなかったようにノエルは微笑みつつ)
……君って面白いこと聞くね。勿論、素だよ。
(くすくすと面白そうに笑う演技をして見せる。
少しヒヤリとしたもののバレるはずなどない。そう確信して、相手が勘違いだと認めるのを待ち)
……ふぅん、そう。やっぱり演技なんだ。
(愉快そうに笑っているさまはとても演技には見えないが、瞳を細めて薄らと笑みを浮かべたブリジットはほとんど確信を持った様子でそう言い切る。ただのクラスメイトとしてならばむしろ外面の方でいてくれたほうが付き合いやすいと思うが、相手とはこれから三年間パートナーとして一緒にやっていかなくてはならないのだ。被った仮面の裏を覗くように一歩、相手に向かって踏み込んで距離を詰め)
もしアナタが本当に何の演技もしていなかったら、素だなんて答えずに何のことか分からないってリアクションをするはずよ。……だって私、「それ」としか言ってないんだもの。
……にも関わらず「勿論素だよ」なんて主張するからには、ねぇ?思い当る節があるってことでしょう?
(にこり、と効果音が付きそうなほどに笑みを深めて相手を見上げる。とは言え別に好青年ぶりが演技であろうと本性がどうであろうと態度を変える訳ではなく、ブリジットはただ単に感じた違和感の正体が知りたかっただけのため話は終わったとばかりに詰めていた距離を戻して片手を差し出し)
――改めてよろしく、ノエル
(きょとんと一瞬だけ目を丸くする。現在のノエルの心情を代弁すると、見誤ったのただ一言。演技が上手いことは自負していた。実際にそれで成果を上げてきた。なら何故バレた? 若干心の中でイライラしつつもノエルはまだ笑顔のまま相手を見遣る。
もしやあの反吐が出るほど人から好かれそうな外面に、相手が誤魔化されなかったからこそ見破られたのか? 優しい、笑顔、柔らかい物腰、その要素があれば中身も見ずに良い人と判断して他人は気を許す。
そして、人と言うのは都合の良いことしか見ない故にこちらの本性に気が付かない。つまりは、己の演技力が落ちたのではなく今回は相手が悪かっただけか? むしろそう思わなければ説明がつかないと考えて、ノエルは溜め息を吐きたくなる。このまま外面を押し通しても何とかなりそうだが、さすがに止めておこう。一度疑われれば三年間も突き通せる保証は無い上に、逆に素の方が何かと便利かもしれない。
やがてノエルは顔を上げると、穏やかそうに微笑んでいた表情をガラリと皮肉的な笑みに変えて)
……はっ、どうやらただの無鉄砲な輩ではなかったようだな。
御名答、今さっきのは全部演技だよ。騙される馬鹿が多いからあの性格の方が色々と都合が良くてね。
(そうやって、人を食ったように鼻で笑い。相手の差し出してきた手を一応形式的に取って)
ーーでは、こちらこそ改めて宜しく。
ブリジット・クロックワーク。
ほんとに中の人居た……じゃなくて、無鉄砲って何よ!聞き捨てならないんだけど?!
(半ば確信していたとは言え全て憶測でしかなかったため、実際に態度が180度変わると思わず間の抜けた感想が零れた。しかしこちらの手を取る相手が述べた言葉にぴくりと眉を吊り上げれば、ほとんど振り払うように手を離して先ほど踏み込んだ時よりも距離を縮めて詰め寄る。確かに男子生徒の凶行を見て咄嗟に足が動いたが、全く何も考えていなかったわけではない。……なかったはず。身長差もあってじとりと睨みつけるように相手を見上げ)
パートナーを探しもせず、出入り口に向かっていた誰かさんよりはよっぽど考えてますぅー。
(ポケットから取り出した『α-14』の紙を人差し指と中指で挟んでひらひらと揺らしながらわざとらしく唇を尖らせる。本当に好青年演じる気あったの?とでも問うかのように真紅の瞳は疑わしげに細められ、頭の中では幻想世界の住人は皆騙されやすいのだろうかと失礼な事を考えていた。中々アクの強い人物に当たってしまった気がするが、魔術に詳しいというのは素人的には有難い。そして幻想世界には少なからず人間世界を良く思っていない人が居る事も知っているから、興味を持ってくれているというのは朗報だった。パートナー分けにはその辺りも考慮されているのだろうかと考えた所で、校内放送で名指しで職員棟に呼び出されたため相手から視線を外し瞳を伏せ)
何で名前……ああ、ペアごとの動物で分かるわね。白鳩ちゃんたち大健闘だったし……にしても職員棟ってどこよ…。
ただでさえ、混雑していた中で注目と好奇の目を集めるような真似をしたそちらには言われたくないな。暴力沙汰にならなかったから良いものの。
(加えて、まだあの男子生徒が魔術を使えなかったのが幸いした。稀にだが幻想世界の出身者で習う前から魔術を扱える輩もいる。そう言うのは本当に少数であるがいることは確かだ。運が良かったななどとどこか上から目線でそう思い、ノエルは振り払われた手を仕舞う。
次いで、見上げて来た彼女に向かって意地の悪そうな笑みを浮かべていれば、蓄音機のような音触りで校内放送が聞こえてくる。嫌な予感がすると思えば『ブリジット・クロックワーク』とフルネームの名指しで呼ばれていた。もはや初日から有名人である。呼び出された理由が注意ではなく賞賛の意味で、教師達の頭の中があのような正義感とやらを褒めてくれるお花畑であることを願いつつノエルはジト目でパートナーを見て)
教育棟など入学案内に載っていただろう。一人で行け……と言いたいところだが、迷って教師達を待たしたら敵わん。案内してやるから付いて来い。
(何故か偉そうにローブを翻して、春の陽気が暖かい中庭から去っていく。振り返ることなく城のような長い廊下を歩いて行き、途中独りでに歩いている甲冑や召喚魔術で呼び出したのかピクシーに振り回されている二年生を横目に、教育棟に続く螺旋階段を登る。
ふと窓の外を見れば箒で空を飛んでいる三年生が目に入り、八の字を描いたりクルクルと回転したりして空中遊泳を楽しんでいた。伊達にこの世界で唯一の魔術学校なだけあるな、と感心して再び細い装飾が描かれた螺旋階段を登って行く。教員室と書かれた英国風の室名札を見遣るとノエルはその木製の大きな扉の前で立ち止まり)
教員室に着いたぞ。これで良いだろう?
では、こちらは杖の調整もあるので暇ではないから失礼するよ。
(パートナーを待つ素振りすら見せず、魔術街の杖専門店に行こうと来た道を戻ろうとし)
入学案内……?もしかして、今朝受け取ったあの中に……って、待ってよ!
(そう言えば今朝がた父親に「忘れてた」と言って渡された冊子や本の中にそんなものが紛れ込んでいた……ような気がする。と言うのも朝の時間が無い時に渡すものだから、寮の方に直行させる荷物の中に放り込んでまだろくに見ていないのだ。帰ったら早々に確認しようと心に決めて、振り返らずにどんどん進んで行く相手を追う。途中周囲で繰り広げられるいかにも魔術学校と言った様子に時折目を奪われながらも、ローブの背中を見失わないように歩いて行けば、やがて教員室の扉の前に辿り着いた。何を言われるかは、正直何パターンか予想が付くため別にどうでもいい。問題はその後である。入学式で配られた、授業初日――つまり明日までに揃えておくもののリストに「杖まはたチョーク」と書いてあり、それを今日中に魔術街に買いに行かなくてはならないのだ。――はっきり言って心細かった。そもそも方や棒、方や筆記具の二択は意味が分からない。必要だと言うのならせめて何に使うかをちゃんと説明していただきたい。そんな事を考えていれば去ろうとする相手のローブの裾を咄嗟に掴んでしまい)
…………。
(自分でやっておいてなんだが、何やってるんだと言いたい気分になる。まさか先ほどまで皮肉の応酬を繰り広げていた相手に待っていてくれないのかなど聞けるはずもなく、しかし手を離すと本当に置いて行かれてしまいそうなので放すこともできずに視線を彷徨わせ)
……何の真似だ?
(ローブを掴まれては進もうにも進めない。何も言わないため相手の意図が分かりにくく、ノエルが不可解そうに後ろを見遣れば視線を泳がす彼女が目に入る。
とは言うものの、相手は魔術初心者ゆえにこちらを呼び止めた理由は大体予想がつく。大方、入学前に課せられていた魔術学校での必需品の調達に関することだろうと思い、ノエルは未だに視線を別方向へと向けている相手を見る。他人ならここで見切っていたところだが、パートナーの成績はそのパートナーでもある自身にまで影響を及ぼす。ここの特殊な制度はつくづく厄介だなとノエルは心中で舌打ちをする。くしゃりと柔い髪を一度だけ掻き、まるで自身はこんなことをする柄ではないのだがとでも言いたげに彼女を見て)
仕方ない……数分だけここで待ってやる。但し、それ以上時間が掛かれば問答無用で置いていかれると言うことだけは頭に入れておけ。
……さっさと教師のところに行って来い。
(腕を組んで教員室の扉のすぐ横にある壁に背中を預けて、早く行けと言わんばかりにノエルは目を細め)
(振り払われるぐらいは覚悟していたのだが、パートナーだと言う事が効いたのだろうか。待ってやると言われれば嬉しそうに表情を輝かせ、すぐに我に返って緩む口元をきゅっと引き結ぶ。しかし約束を貰った事で幾分か心細さが和らいだのか、先ほどよりは自然な表情に戻れば掴んでいた裾を離して扉に向き直り)
……言ったわね、三分で十分よ。――――失礼します。一年のクロックワークです。
(横目で相手を見遣りながら軽口を述べ、重厚な扉をノック。程なくして返って来た返事に教員室の中へと足を踏み入れる。後ろ手に扉を閉め名を呼ぶ声に呼ばれて部屋の一画に向かえば、四人の教師が待っていた。その中でも一番年若いやる気に満ちた感じの教師が急に呼び出して済まない、などとお決まりの文句を述べるのを「人を待たせているので手短にお願いします」とカットし、用件を聞けば言わずもがな入学式でのこと。あの後の顛末と男子生徒への処分――と言っても厳重注意だが――と、ブリジットの行いへの注意だ。それらを代わる代わる口に出す教師たちはそれぞれ探るような視線を向けてきており、態度や言葉の端々から感じる態度は露骨すぎて逆に笑えて来る。若い方から順に親人間(界)派、中立派、傍観派、反人間(界)派、といった具合だ。特に最後の老爺の魔術師は嫌味と嘲笑を隠そうともせず、若い二人が取りなそうとしてもどこ吹く風。老害先生、と脳内で不名誉な渾名を付けてはまだ何か言ってこようとするのを「あの」と声を上げることで制し)
申し訳ありません、そろそろ約束の時間なので失礼させていただきます。
(ここまできっかり二分三十秒。熱血先生が間髪入れずに承諾してくれたのをいいことに一礼して踵を返し、机の間を縫って再び出入り口の扉を開けば二分と五十秒で相手の前に戻ってきて)
――どう?ほとんどぴったりでしょう!
思ったよりも時間は掛からなかったようだな。許容範囲内だ。約束通りここで待っていてやったぞ。
(手元の時計をチェックすれば、せいぜい掛かった時間は二分強。確かに三分で充分だと宣言した相手の言葉に間違いは無い。てっきりタイムオーバーをして、自身は何事も無く一人で魔術街へと行くことを予想していたが、ことごとく彼女はこちらの考えを覆してくれる。そんな相手を一瞥して、ノエルは来た道を戻ろうとするが足を止め)
それで、こちらは今から魔術街に行くが、そちらはどうするんだ?
先程の様子だと、どうせ入学前に課せられていた魔術学校の必需品すら揃えられていないのだろう?
(後ろを振り返ってやや意地悪く笑うとそう言い出し)
ちょっと強引に切り上げて来たもの。……アイツの話を真面目に聞いていたら日が暮れるわ。
(後ろ手に教員室の扉を閉め、相手の言葉に肩を竦めてみせる。掛からなかったと言うよりは掛けなかったの方が正しいだろう。老爺の魔術師を思い出して溜息交じりにそんな事を言えば、やや不機嫌そうに肩の髪を払いのけて教員室の扉を睨みつけてから相手の後を追った。しかし数歩も進まないうちに立ち止まった相手に意地の悪い笑顔と共に図星をつかれれば、言葉を詰まらせてそっぽを向き)
うっ……だっ、て。仕方ないじゃない……まだこっちに来てから三日しか経っていないのよ、私。
初日は久々に魔素?に当てられたせいで寝込むし、二日目は父の実験とか儀式みたいなのに訳の分からないまま付き合わされるし、三日目の今日は手続きやら入寮やらで早朝からてんやわんやよ。
(拗ねたような口調で一息に幻想世界に来てからの事を話せば、視線は戻さないまま腕を組む。そもそもそんなものが課せられていたこと自体、先ほどの入学式で知ったのだ。元々通達されていたのならば教師の口調が伝達と言うより確認だったのも頷ける。父親の計画性の無さに対する苛立ちを抑えるように深々と溜息を吐き、視線を彷徨わせて何度か言いよどみながらも最後には真っ直ぐに相手を見つめて頭を下げ)
……その、魔術街で杖とチョーク、それから箒が買えるお店に一緒に来て欲しいの……お願いします。
(リストにある魔装とは恐らく二日目の儀式後に父から渡されたこのショートマントの事だろうし、書物系は同じタイトルの物を買えばいいだけなので最悪一人でも何とかなるだろう。しかし他のものはそうもいかない。本当なら本を読むなりして自分で知識を仕入れてから行きたいが、門限というリミットがある以上それも厳しいため相手の反応を待ち)
まるで計画性が無いな。
まあ、この世界の常識に振り回された部分だけは同情しておこう。
(今日までの目まぐるしい状況へと理不尽さを訴えるような形で語る相手に上記を述べ。
幻想世界と人間世界は異文化交流など無いに等しいため、こちらの知ったことではないが最初の内は苦労するだろう。右も左も分からない状況など自分だったら願い下げだ。人間世界のことは書物でしか読んだことはないが、文化や価値観はかなり違うと認識している。さぞかし大変だろうな。胸の内でそう鼻で笑っていると、何やら相手から頼み事と共に頭を下げられてしまい、一瞬目を白黒させる。まさか、素直に頭を下げられるとは予想できず毒気を抜けてしまう。そのままふいっと前へと向き直り)
はぁ……頭まで下げる必要は無い。
杖とチョークと箒だな。それなりに良い店を紹介してやる。だが途中で逸れたりしても探しには行かないからな。
では、行くぞ。
(どうにも下手に出られると弱くなることは自覚済みだ。歯向かってくる人間なら突き放すのは容易いが、その逆は微量の良心が働いて気が引ける。やれやれとどちらに向けてのものなのか分からない溜め息を一つ付き、ノエルは再び歩き出す。
暫く魔術学校の廊下を歩けば外に出て、黒い鉄の正門から魔術街へと辿り着く。ヨーロッパ風のレンガ造りの街並みに石畳で出来たメインストリート。魔術式のカフェやアンティークショップに魔術道具店や魔装店など、当然だが魔術に関する店が多い。昼時はとうに過ぎているものの夕方には程遠い時間帯のため人はまばらだ。外を歩いていても見える各店のガラス越しの展示品に目を向けつつも目的の店を探していく。
やがて、ノエルはある一つの店の前で立ち止まる。看板には『魔術師ジルベールの杖店(チョークも取り扱い有り)』と書かれており、それを一瞥してチリンとベルの音を鳴らして中へと入る。やや薄暗く淡い紫色の照明で照らされた中には左右にアンティーク風の棚が設置されており、一本一本丁寧に長さや色の違う杖が沢山置かれていた。それらは材料別に並べられており、近くの壁には『振ってお試しも可能です』と書かれている紙が貼ってある。そんな店内を横目に奥にいる店主の魔術師の前に自身の杖を置き)
この杖のコーティングをお願いします。
(と、人当たりの良さそうな笑みを浮かべ言えば「随分とヴィンテージものの杖だね。少し待っていくれ」とまた奥に引っ込んでしまう。それを確認すれば後ろを振り返り、現時点でのパートナーに向けて)
杖と言うのは魔術師にとっては一生物だ。自分に合った物を慎重に選んで来い。
えっ……。
(背に腹は代えられないため嫌味の一つや二つは甘んじて受け入れようと身構えていたのだが、予想に反して溜息一つで引き受けてくれた相手に思わず顔を上げる。捻くれた素の印象が強かったが、どうも自分と同じく真摯に向き合われるのが苦手なタイプらしい。ぱちくりと目を瞬かせて見つめているとこちらに背を向けたままの相手が歩き出し、その背中に向けて僅かに口の端を上げて)
…………ありがとう。
(聞きとれないぐらいに小さく呟きを落としてから、駆け寄って相手の隣に並ぶ。周囲の店先に並ぶ魔術関連の品々に視線を向けながらメインストリートを歩いていると、以前暮らしていた街と造りだけは似通っているため、余計に別の所に来たという感覚が強くなった。どうやら無意識に足を止めてしまっていたようで、慌てて郷愁を振り払って杖屋の看板を掲げた店に入っていく相手に続いて中に入る。ずらりと並べられた沢山の杖はまさに圧巻。興味深そうに眺めていると店主との話を終えた相手が振り返り、告げられた言葉に「一生もの、かぁ」と困ったような笑みを浮かべて繰り返す。魔術学校を卒業したとして、自分は一体どうするのだろうか。そのまま思考の海に沈みそうになるのを何とか切り替えて、周囲の棚をぐるりと見回し)
……きっと素材によって違いがあるのでしょうけど、残念ながら全部確認している暇は無いわね。
(慎重にと言われた直後ではあるが、生憎と時間は有限だ。呟くや否や首にさげているハンターケース型の懐中時計をそっと握りしめる。本体は金製で木が嵌め込まれた蓋の部分には草を編み込んだような意匠の十字が刻まれ、中央に瞳とよく似た色合いのルビーが輝いているそれは、生まれた時に両親から贈られたものだ。自身の名前の由来と共にこの懐中の持つ意味も寝物語に散々聞かされていたからか、沢山の樹木から一つを選ぶとしたら他に選択肢など無く、一直線に一つの棚の前に向かい)
――ナナカマド。一説によると、炎・豊穣・治癒・鍛冶・詩なんかを司る女神ブリギッドの象徴らしいわね。……この懐中に使われているのもそうなのよ。
(迷いなく持ち手に炎の意匠が彫られたナナカマドの杖を手に取って相手を振り返る。まさか母の口癖のような話がこんなところで役に立つとは思わなかった。壁に貼ってある"振ってお試し"の意味がよく分からないのか、暫く杖を眺めた後に何となしにタクトのように振ってみては首を傾げ)
(彼女の言葉を聞き、だからナナカマドの杖を取ったのかと心中で納得をする。どうやら闇雲に選んだわけではないらしい。相手の顔と杖と懐中時計へと順番に視線を移す。大事そうに首から下げられた金色の懐中時計は、恐らく大切な物なのだろう。ならば、それと共通点を持つ杖は相性が良いはずだ。――そのようなことを考えていれば、こちらを振り返った相手がナナカマドの杖を振る。同時に、薄暗い店内がまるで快晴の下に出たかのように明るくなり、穏やかな太陽の光が降り注ぐ。陽光に照らされたことで棚にある杖の持ち手の金属部分が反射していき、宝石のように煌めいていく。その眩しさに少し目を瞑れば、次に現れていたのは太陽の元で黄金に輝く稲の畑。充分に実った稲は、どこからともなく吹いて来る緩やかな風に揺られている。その豊穣を祝っているかのような景色に、先ほど述べられた女神ブリギットとやらを連想させられた。――やがて、魔術の効力が切れ店内が薄暗い紫色の雰囲気に戻った頃、彼女とナナカマドの杖を見て)
相性は悪くなさそうだな。あそこまで杖本来が持つ力を解放できれば上出来だ。
余談だが、この店内は人為的に魔素の密度が高められているため杖を振るだけでもあのような効果が出る。外ではそのような効果は出ないので、くれぐれも魔術式無しで振るような真似はしないことだな。
(素直に褒めることはせず、余計な言葉まで付けていく。純粋に褒めると言うのは己の柄では無い。相変わらず捻くれた性格を発揮しつつ、ノエルはようやく奥の部屋から戻って来た店主から自身の杖を受け取る。猫を被りながら代金として金貨と銀貨を一枚ずつ渡していき――ふと、パートナーはチョークすらも買っていなかったかと思い出し店主に「そう言えば、紹介がまだでしたね。彼女はブリジット・クロックワークさんと言って魔術学校での僕のパートナーなんですよ。入学祝いとして代金をまけてやってはくれませんか? ついでに常連のよしみで僕の杖のコーティング代もまけてくれると嬉しいです」と対人用の笑顔をにこりと浮かべる。そう伝えれば店主は気前良く値引きをしてくれ、先ほど支払った銀貨を一枚返してくれる。更にナナカマドの杖が金貨が十二枚なところを十一枚に、十本入りのチョークが銅貨が三枚のところを二枚に値引きをしてくれると言ってくれたので、パートナーの魔術に対する初々しさが功を奏したかと、値引きの成功に心中でほくそ笑んで彼女に向き直り)
金貨が十一枚に銅貨が二枚だってさ。安くなって良かったね、クロックワークさん。
(/大変遅くなってしまって申し訳ないです…。勝手なことですが、まだいらっしゃいましたら引き続きお相手願いたいです…)
う、そ……。
(何も考えず杖を振った瞬間に店内が暖かな光に包まれ、気付けば周囲が麦畑と化しており呆然と立ち尽くす。抜けるような青空と何処までも広がる黄金の絨毯。それは今は無き記憶の中の故郷の姿で、思いがけない現象にどうすることもできずにただぼんやりとその光景を見つめた。やがて眼前に薄暗い店内が戻って来れば相手の姿も目に入り、未だ混乱の収まらない様子ながらも回りくどい言葉から必要な部分だけを抜き出して頷き)
……え、ええ。覚えておくわ。アナタがそう言うなら、杖もこれで問題なさそうね。
(まるで夢でも見ていたようだと思いながら相手と店主が会話しているのを見つめ、あっという間に成立した商談にちゃっかりしてるんだから、と軽く肩を竦める。振り返った相手の表情を見れば空気を読んでそれを口にすることはせず、頷いてから店主に笑顔を向ければぺこりと頭を下げ)
ありがとうございます。こちらに来たばかりで何かと入り用なのでとても助かります。……素敵なお店を紹介してくれたラドクリフくんにも感謝しないとですね。
(実はこちらの世界の相場はおろか通貨単位もよく分かっていないが、単純に16%オフと33%オフだと考えればいい買い物をしたと言っていいだろう。そして先ほど通りがかったカフェの看板に出ていたメニューと杖とチョークの値段からして、どうも父親は知識は全く与えてくれなかったくせにお金だけは大量に寄越したようだ。寮に送った荷物にも含まれている大量の硬貨は銀行のように預けられる場所があるのかと考えつつ、鞄から取り出した財布代わりの布袋から金貨と銅貨――だと思われるものを取り出して店主に手渡す。はい確かに、と返って来たので間違っていなかったと安堵の息を吐き、杖を買うとセットで付いてくるというホルダーの中から、服に合わせて黒革の腰に巻くタイプの物を選び取って言われるがままに装着して杖を差し)
――どうかしら、ひとまず外見だけは取り繕えてる?
(杖を揺らすようにその場でくるりと一回転すると、それに合わせてマントと髪がふわりと広がる。高等魔術師の証だとは露知らず、物語の魔女や魔法使いを見慣れている身としてはとんがり帽子が欲しい所だと思いつつも、見た目だけはそれっぽくなってきた気がして首を傾げて問いかけ)
(/いえいえ、ご自身のペースで大丈夫ですよ!こちらこそ引き続き宜しくお願い致します!)
うん?そうだね。だいぶ魔術師っぽくなってきたね。似合っているよ。
(店主がいる手前、猫被りを止めるわけにもいかず、にこりと笑い掛ける。店内で聞くとはこいつ確信犯かと思いつつも相手からは悪意を全く感じないので、単純に感想を聞いただけかと思い直し。……まあ、見て呉れだけはマシになっているし似合っていないわけでもないので訂正する気は無く――ノエルは店主に会釈をして杖店を出て行く。そして、店前から少し離れた所で後ろを振り返り)
それで、次は箒だったな。あの店に入るぞ。
(猫の看板が立った『黒猫の魔術道具店』と言う、如何にも絵本で言う魔女の家のような建物を指差してノエルは中に入る。ここの店主は変わり者で、変容魔術でいつも黒猫の姿をしている。その為カウンターには人では無く黒猫が呑気に寝ていた。それを一瞥して、やや広いが小瓶やら蠢めく本やらでごちゃごちゃした店内を歩き――やがて、飛行用のサドル付き箒が立て掛けられたスペースに行けばそこで立ち止まり)
飛行用の箒は製造会社によって性能が違うが、そちらは何を重視したいんだ? 耐久性、スピード、ブレーキの性能、座り心地の良さ。
まあ、どちらにしろ自分に見合った物を選んだ方が振り回されずに済むがな。
(そう意地の悪そうに笑い)
(/ありがとうございます…! それとご相談なのですが、ロル数を長ではなく中にすれば今より返信速度が上げることが出来るのですが……長と中でしたらどちらがお好みでしょうか?)
え……あぁ!そっか、そうよね。……悪かったわ。
(先ほどの文字通り魔法のような現象に思わずテンションが上がってしまい、調子に乗って明らかに一蹴されるであろう質問をしてしまった事を後悔していると、予想に反して人当たりのいい返事が返ってきて思わず首を傾げる。しかしすぐに店主が傍に居るからだと気付けば意図せず当てつけのようになってしまっていたことを謝罪し、同じように店主に挨拶をしてから店を出て)
まるで映画のセットみたいね。……まぁ、それを言ったらこの街全体がそんな感じだけど。
(次に示された店の外観はまるで物語から飛び出してきたかのようで、人間世界の現代人らしい感想を呟けば店内へと足を踏み入れる。カウンターの上の黒猫はこの店の名前からして看板猫だろうか。店主が変身しているなどとは夢にも思わず、近寄って行って起こさないよう一撫ですれば少し遅れて相手の後を追って箒が立てかけてある一画へ向かい)
……メーカーごとの特色って言うと、車やバイクみたいなものかしら。見た目は自転車に近いけど…。
(振り回されるという言葉に安易にその様子が想像できてしまい眉を寄せるも、気を取り直して相手の説明を自分なりに解釈していく。しかし箒にサドルがくっついているという出来の悪い工作のような見た目にふと首を捻れば視線を相手に移し)
一番に求めるのは安全性、時点で扱いやすさね。その他の性能なんて初心者が求めるべきじゃないもの。――ところで、空を飛ぶのって箒でしかできないの?
(/どちらかと言えば長めの方が好みですが、ご負担になるようでしたら全然中ロルで構いません!場面によって長さを変えていただいても構いませんし…繰り返すようですが負担になるのは私としても本意ではないので、あなた様のやりやすい方でお願い致します!)
そうだな、そちらにしては賢明な判断だ。
なら、箒の耐久性とブレーキの性能が良い『アトラス社』の中から選ぶんだな。
(安全性と使いやすさを選択した相手にノエルはやや満足そうに頷き。飛行用のサドル付き箒のコーナーの中でも『アトラス社』と書かれたスペースを指差して言う。ここの会社はスピードが落ちて少し座り心地が悪い代わりに、箒の柄は頑丈でブレーキ性能も優れている。初心者には打って付けの箒を作っている大手企業だ。値段もお手頃だと適当に箒の一本を手に取って見ていれば――相手から素朴な疑問が飛んで来たのでそれに答えようとし)
空を飛ぶだけなら箒以外でも出来るが、基本は箒だけだと決められている。だから交通ルールは全て箒が基準だ。それと、車やら絨毯やらに乗って飛べば罰金が掛かるぞ。
(説明するのは面倒だったが規則を破られるよりかはマシだと考えて、そうノエルは幻想世界での交通ルールを伝えていく。別に破っても退学にはならないのだが、ペナルティが付くので好ましくはない。しかしそんなことをするぐらいなら、学園側も少しは人間界から来た生徒に幻想世界の一般常識を教える講習会でも開けば良いのにと、ノエルは心の中で不親切な魔術学園へと愚痴を零す。――そして、手に持っていた箒を元の場所に戻し)
さて、説明したのだから早く箒を選んでいけ。時間は有限だからな。
(/お優しいお言葉をありがとうございます…! では、場面によって長さを変えることとやや長よりの中にさせて頂きますね…! 改めてこれからも宜しくお願い致します! 最後に愚息がこんな性格で申し訳ないですが、ブリジットちゃん可愛いです! ではこれにて背後は失礼しますね!)
ふぅん、絨毯もダメなの。利権の問題でもあるのかしら。道交法……もとい空交法?で規制なんて意外と露骨ね。
(相手の指し示す先、アトラス社の箒を順に物色しながら返ってきた来た回答に意外そうに声を上げる。ファンタジー小説における絨毯と言えば箒に次いでポピュラーな空飛ぶ乗り物ではなかろうか。よもやペナルティが付くとは思っておらず、ついでに雨の日は箒より車の方が良さそうだと考えていたのを見透かされたような気がしてそっと視線を逸らす。そして早く選ぶようにせっつかれると慌てて箒に向き直って)
ん~……選べって言われても、杖と違って「これだ!」っていうのが無いのよね……ん?
(手前の何本かを代わる代わる手に取ってみるもいまいち違いが分からず、杖の時のように参考になりそうな話も無いので煮え切らない表情で考え込む。どれもこれも決定打に欠け、しばらく手に取っては戻しを繰り返していると、やがて奥の方に立てかけてあった一本が目に留まる。雪崩を起こさないように慎重にそれを抜き取れば、長く店頭に置かれていた所為か柄とサドルに積もった埃を軽く払い)
――やっぱり。これ、ローズウッドだわ。サドルの色も似てるし……うん、決めた。
(/かしこまりました!いえいえ、こちらこそ格好いいノエル君に対して天邪鬼な娘で申し訳ないです…!それではこちらも失礼致しますね。今後とも宜しくお願いします…!)
(とにかく数多くの箒を手に取っては悩ましい顔をして戻していく相手を、軽く近くの壁に寄っ掛かりながらノエルはやや退屈そうな表情で観察をしていく。そんな箒の選定は数分から数十分弱ほどの間に繰り返し行っていて――不意に、何かが気になったのかそちらへと移動して茶色だが赤茶よりの箒を手に取る。どうやらアトラス社の中でもその箒が気に入ったらしい。ローズウッドと聞いて、古くからチェスの駒やナイフに使われているあの木材かとノエルは思いつつ、壁に少し重心を置いていた体を微かに起こして)
決めたのなら、さっさと済ませるぞ。店主はあの黒猫だ。起こせば会計に応じてくれる。
(そう告げて、やたらゴミゴミとした店内を掻い潜ればその黒猫が昼寝をしているカウンターに辿り着く。自身が買い物をするわけではないので、起こすと会計は相手に任せておく。起きても変人なため店主は黒猫の姿のめまで会計をしていくのだろうが。一応、会計をする際に困ったことがあるかもしれない上に時間を取られたら面倒なので、先に一人で外には出て行かず、少し後ろの方でまた壁に寄り掛かりながら待機をしておき)
――――は?
(店主は黒猫。そんな何気なく言われた言葉の意味が分からずに、カウンターへ向かう相手の背中を見つめてぽかんとした表情で首を傾げる。黒猫とはさっき撫でたあの猫だろうか。にわかには信じがたいが相手が冗談を口にするタイプとも思えないため、きっとそんなこともあるのだろうと無理矢理自分を納得させて一足遅れてカウンターへと向かい)
あのぅ、お会計をお願いしたいのですが……?
(傍から見れば猫に話しかけている変な人だということは極力意識しないようにして、そっと黒猫の頭を撫でながら声を掛ける。すると黒猫もとい店主が目を覚まし、動きは猫そのものにも関わらず流暢に言葉を話すので思わずまじまじと見つめてしまう。これも魔法なのだろうが、人間が猫に変身しているのか、猫が魔法で人語を解しているのか分からない。覆わず考え込みそうになったところで数秒後に何とか自力で我に返って支払いを済ませれば、後ろで待っていてくれた相手の元に向かい)
不思議ね、魔法界。
(抱えた箒の柄を撫でれば神妙そうな表情でぽつりと零し)
(黒猫の姿をした店主に対して不思議そうに話し掛けていく相手を見ては、思わずくつくつと笑ってしまい、ノエルはやや口元に手を充てて抑える。自分にとっては新鮮味の無い光景でも、彼女には奇怪で物珍しく映るのだろう。はてさてこの調子なら魔術学校で本格的に授業が始まれば大変そうだなと、笑みを深くし。けれど、ちゃんと会計は済ませられたようだ。容量は悪い方ではないのだろう。こちらに頼りっぱなしではないと言う点は大いに評価出来る。敢えてそれを口に出さずに思っていれば、ノエルは神妙そうな表情で呟く彼女を見て"直に嫌でも慣れる"と言った風に意地悪く笑うと、用も済んだので踵を返してその魔術道具店を出て行く。杖とチョークと箒を買った為、もう行く所は無くなったので)
これで全ての買い物が終わったな。
さてと、魔術学校に帰って学生寮に行くとするか。
(そう言うと、ノエルは石畳で出来たメインストリートを歩き出し――やがて魔術学校に到着をすれば、その中でも最北にある扉を開けて渡り廊下を通って学生寮に辿り着く。様々な絵画が飾られただけの壁しか無い広い部屋だが、間違いなくここには生徒の為の部屋がある。実際に入学案内にも書かれていたし、入学式の時もそう説明されていた。だが、その自身に与えられた部屋に入る為の『鍵』をまだ貰っていない。大方、ここで配られるのだろうと思っていれば予想は当たり――突然、絵画から半透明の幽霊が出て来て二人を見ると、金色の鍵を二つフワリと投げて寄越して来る。そして無言でそのまま引っ込んでしまい)
ここの学校は随分と手荒い鍵の渡し方をするな。まあ、良い。……とにかく、これを使えば自室に入れるようだな。
――では、また明日。パートナー制と言えども、さすがに異性ゆえに同部屋ではないだろうからな。寝坊だけはするなよ。
(上手くキャッチをすることが出来た鍵を手中でくるりと回せば、ノエルはサラリと別れの挨拶を告げて、壁の方へと向かって行こうとし)
……?!
(相手に続いて歩いて行けば辿り着いたのは絵画の飾られた一室。学生寮に向かうと聞いていたので行き止まりの部屋に首を傾げ、問いを投げようとしたところで壁にかけられた絵画から半透明の何かが姿を現せば反射的に上げそうになった悲鳴を何とか飲み込む。凍り付いたように動きを止めて幽霊と絵画を凝視し、そのため勿論相手のように上手く鍵をキャッチできるはずもなく、地面に落ちる音と相手の言葉で我に返れば咄嗟に立ち去ろうとする相手の腕を引き止めるように引っ張り)
ちょっと待ってこの学校"出る"の?!…………じゃなくて、違うわ。違うのよ、今のは忘れて。聞きたいのは……そう、ここが寮ってどういう事なの?
(どうやらまだ多分に動揺していたようで、思った事をそのまま口にしてしまってから慌てて首を横に振る。これでは幽霊が怖いと言っているようなものだ。魔術なんて代物が存在するのだから幽霊が居たって可笑しくはない、人間世界において「常識的に考えて有り得ない」のはさっきの喋る猫も一緒。そんな風に自分に言い聞かせながら全力で話題を逸らしにかかるも、何となく周囲に飾られたただの絵が気味悪く思えてしまい相手の腕は掴んだままで)
"出る"?……ああ、そう言うことか。それはもうウジャウジャ出るぞ。寝る時も気を付けることだな。
(腕を掴まれたので一瞬驚いて退かそうと思ったものの、次いで発せられた言葉に"なるほど"とノエルはすぐに意図を理解すれば、からかうように表現を大袈裟にして上記を述べ。確か、あちらの世界では幽霊は存在してはならないものとして扱われているので、畏怖の対象だと聞いたことがある。こちらの世界に置いてゴーストと言うものは珍しくもない種族な為、自分としては既に慣れているが。それにここにいる幽霊は、学校案内にも書かれていた通り人間に危害を加えてくる種族ではない。なので、相手の怖がるような反応にニヤリとした嫌な笑みを浮かべれば、掴まれている腕に視線を落として)
――それで、そちらいつまで腕を掴んでいるんだ? しおらしいのは結構だが、これではここが寮だと言うことを説明出来ないのだが。
(ちょうど鍵を持っている腕だったので動かすことが出来ず、寮の部屋を出現する為の動作を行うことが不可能で。故に、意地の悪い笑みを深くしてそう言っていき)
う、嘘でしょ……?
(完全にからかわれているのは分かるのだが、今は正直それどころではない。部屋に出没する大量の幽霊を想像してしまい、小さく肩を震わせて消え入りそうな声で呟く。ほんの数日滞在していた父の家では遭遇することがなかったのもあり、まさか学生寮がそんなことになっているとは思いもしなかった。寝る時は絶対に灯りを消さないと心に決めていれば、意地の悪い笑みで見下ろされてようやく一連の自分の行動を客観的に理解して慌てて相手の腕を離し)
っ……み、見慣れてないから少し驚いただけよ!別に怖くなんてないわ!
(動揺しているのが丸分かりな様子で今更感溢れる台詞を述べれば、ふいと顔を背けて先ほどキャッチし損ねた鍵を拾い上げて視線を落とす。見た目は何の変哲もない鍵だが、これも魔法道具的なものなのだろうか。室内には入って来た扉以外に扉らしいものはなく、鍵が差し込めるような場所も見当たらないため大人しく相手の説明を待つことにして)
(慌てて離れていく相手を見ては、強がっていることが明らかだったので全く素直ではないなと、やれやれと言うように肩を竦めていき。今度暗がりで脅かしてみるかと、捻くれたことを思っていれば、視界の端で先ほど相手が取り損ねた鍵を拾っているのを捉えて。こちらが説明をすると言った手前、待たせるのもどうかと思い、手早く使い方を教えようと前へと歩き出し)
使い方は至ってシンプルだ。単にこの鍵を持ってこの肖像画に近付けば――このように自身の寮部屋へと繋がる扉が現れるので、持っている鍵を使ってその中に入れば良いだけだ。
(扉から入って真正面にある天使の肖像画に来れば鍵を取り出していき。すると、本棚と肖像画しかなかった目の前の風景が一変して木製のドアが現れる。恐らく、変容魔術の応用だろうと思いながら後ろにいるであろう相手へと簡単に説明をしていき)
と言うわけで、もう分からないことはないだろう? こちらはこれにて失礼するぞ。
(魔術学校は皆一斉に大ホールで食事を取らないといけないが、席は決められていないのでパートナー制と言えどそんな時まで一緒にいなくても良いだろうと考えていき。なら、今日はここから先は別行動を取れるので楽が出来るなと、ノエルは失礼なことを思いつつ相手の返答を待ち)
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