匿名さん 2015-11-23 11:32:49 |
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狼君!?
(2階から3階へと繋がる階段を上がっていれば後2つかと残りの階数を思い浮かべていき、そしてすぐに周囲に仕掛けられているであろう罠へと目を光らせていると、何かが開くような微かな音が聞こえたので視線を上げればボウガンが狼君を射抜こうとしていて声を上げ。ーーそれを避けて無事だった相手を見ては、ホッとして深く安堵の溜め息をつき。冷や汗をかいて罠の発動場所を探している彼に続いて、こちらも先を通る前に探していき。ふと、右斜め前にあった一部分だけくり抜かれた壁にあった小さなライオンの石像が気になり。後ろの聖君の肩を叩けば「……あー、ビンゴですね。今解除しますー」とカタカタとキーボードを打っていき。その間に狼君の方に向き直り)
……どうやら、あの石像の目の部分にセンサーが埋め込まれていたようだね。それで、狼君が今さっきいた横の壁からボウガンが発射されたみたい。
…マジかよ…そんな所にセンサーがあるなんて思いもしてなかった。
あっぶね、死ぬとこだったぜ…。
(あの音に気付いて咄嗟に避けたので難を逃れたもののまさかそんな所にセンサー式のトラップが組み込まれているとは思ってもおらず、本当にこの施設は侵入者を排除しにかかっているとひしひしと感じられ。これは本当に警戒して進まなければ危なさそうだと感じて辺りをぐるりと見わたすとこの階段から上にもいくつかの石膏像があり、本当にサイバー班を連れ立ってよかったと実感することになり。トラップを解除してから次の階へと進み、再びその入り口で立ち止まり十分に用心して先ずは壁や床等を確認し)
…なんか、何も無い様に見えるのって却って怪しいよな?
そうだね、怪しいや。
……狼君はここで待っていてね。さっきのこともあるし。
(3階の入り口の前で立っている相手に、やや強めにそう言えば今度は自身が先頭を切り。先程のことは本当に肝が冷えたので、これ以上はあまり彼を危ない目に遭わせたくないと感じて罠を見つけようとしていき。何も無い風に見えたが何本かのテグスと床のスイッチを見つけたので、一旦入り口で待機している三人の元へと戻り。それぞれの危険箇所を指差していって)
あの右奥とあそこの左手前、あとは曲がり角の一歩手前とそれから三歩後ろにテグスとスイッチがあったから気を付けてね。
(しかしその言葉を聞いた聖君がやや渋い顔で「……何かまだありそうな気がします。原始的な罠の方ではなく、セキュリティの方で」と意味深なことを言っていて。とにかくそちらは専門外なので解析を待った方が良いのかと、チラリと狼君を見遣り)
…え。…ったく…
(待てと言って自分より先を歩いていく相手を見ては何となくハラハラしてしまい、自分が前を切って歩いていた時は感じなかった類の嫌な緊張を感じて。恐らく相手もボウガンの件の時に相当焦ったのだろうと直ぐに察しがついて、あれは自分の不注意のせいなので何も言うことが出来ず任せる事にする他に選択肢はなく小さく溜息を吐き。戻ってきた相手がテグスとスイッチの箇所を言うのでそれを頭に留めつつその後の聖の言葉に少し此方も表情を険しくするとやはり待った方が良いのかもしれないと考えて。すると貂が”…あった、セキュリティ系のプログラム。其処の角にセンサーがあって曲がるとタイマーが作動するようにセットされてる。五秒後に前後にある防火壁が閉まるようになってて、その後の解析はシステムが作動してからじゃないとできないようになってるけど何重にの罠が仕掛けられてる。でも、このセンサーロボットみたいに回路が別で解除出来ないから、五秒以内にあそこからあの扉の部分まで駆け抜けるしか無いみたい。”と険しい顔で言うので少し困ったように他の三人と顔を見合わせ)
五秒か…ギリギリ…四人で走り込める、かな。
最後は閉まってる壁と床の間を通り抜ける形になるな。
だとすると小柄な俺が最後っていうのが一番妥当だな。貂はパソコン持ってるし。
僕と狼君は良いとして、聖君と貂君は厳しくないかな?パソコンを持っていることを入れて計算しても持ち時間は5秒だし、それにパソコンって精密機械だし。
……うーん、聖君。そのセキュリティだけど君でも解除は無理そう?
(狼君の言葉に承諾したいのは山々だったが、それに賛成することは難しく。一応本人の面子を保つ為にも言ってはいないが、一番の理由は聖君の足がマフィアの構成としてはとてつもなく遅いからと言うことだ。たぶんこちらがパソコンを持ってあげたとしても、彼にとっては5秒以内と言うのはキツイだろう。そんなことを考えて、念の為に聖君へと問い掛けてみればパソコンの前で眉を顰めていて「……セキュリティの解除はさすがに出来ませんが、一応時間制限を5秒から10秒に増やすことは可能ですけど……」と答えており。その言葉を聞いて、狼君の方に向き直れば)
時間制限を変えることは出来るみたいだから、少し待って貰っても良いかな?
…成程。じゃあそうして貰うか。
そしたら多分余裕ができるな。
(確かに滑り込んでも万が一パソコンが壊れてしまっては仕方がない。その為秒数を増やせるというのは有り難く、聖の件を知らなかったので喜んで頷き。貂に大丈夫かと問いかけるとノートパソコンを一度閉じてカバーの中にしまい込み頷き。貂は運動神経が悪い方ではなく小回りも効くので余り心配はしておらず、頭の中で作戦を立てて)
取り敢えず一番心配なのは途中に罠が仕掛けられてないかどうかだ。
だから、朧、お前が先頭で罠を見ながらなるべく急いで扉まで向かってくれないか?
その後に聖、次が貂、最後に俺が滑り込むから道を空けといてくれると有難いな。
突っ込むかもしんねぇ。
(最悪三十センチあれば意地でもスライディングで滑り込んでやると踏んでおり、万が一扉の中に閉じ込められたとしても先に出たサイバー部隊がセキュリティシステムを食い止める迄の間を堪えきればいいだけであり余り心配はしておらず)
(相手がすんなり提案を飲んでくれたことに感謝し、聖君のセキュリティ解析を待ち。その間に彼の「……帰ったら刃に足が速くなる方法教えて貰おうかな」と小声で呟いていた独り言が聞こえ。何とも言えない気持ちになったが、向上心を持つことは良いことだと思い、水を差すような真似は止め。そして、狼君から説明されていく作戦に耳を傾けていき、それに強く頷けば)
了解、僕が先頭だね。罠は一つも見落とさないようにするよ。
分かった、すぐに場所も開けておくようにするね。
(狼君のことだから大丈夫だろうと、全面的に信頼を寄せていたので彼が最後だと聞いてもあまり動揺はせず。ただ先程のボウガンのこともあったので100%大丈夫だとは言い切れないものの、ここでほんの少しの不安でも口に出してしまうのはメリットが無い。そんなことを思っていれば、聖君が「OKです。時間制限を10秒に変更出来ましたー」と言いながらパソコンを厳重なカバーに入れていっていて。ぐるりと皆を見回せば)
それじゃあ、準備は大丈夫?
了解、お前も急ぎ過ぎて罠にハマんなよ?
(聖よGOサインを聞くと門の手前で立ち止まり所定の位置について。唯一の心配は罠の探索とスタートダッシュを同時に行う相手のことで、テグスや床の切れ目はごくわずかなものでそのスピードでダッシュして見落としをしないとも限らず少し不安そうに眉を寄せたものの相手に対する信用は硬く最後に一言忠告するに留まり。貂の準備も完了したのを見届けると軽く頷き二人を見て)
俺たちは準備万端だ。
いつでも始めてくれ。
分かった。こっちも大丈夫。
ーーじゃあ……3、2、1、0!
(全員の準備が出来たのを見届ければ所定の位置に付いて、自身がスタートを切ることもあってか分かりやすいように秒数を数えれば、0と同時に飛び出して走り出して行き。途中で何個かのテグスやパネルを見つけたので、走りながら指を使って知らせる合図を出せば罠のスイッチを軽く飛んで避けていき。先頭と言うこともあり、10秒と言わず5秒以内でゴールへと辿り着けば後から来る彼らのことを考えて、急いで道を開けていき。まずは二番目の聖君が無事にゴールへと飛び込んで来たのが見えていって)
(カウントと同時に相手が走り出したのを見て次に聖、その次に貂が駆け出したのを見送ってから自分もスタートダッシュを切り。相手が示した通りに罠を避けて走って行くと徐々に防火扉が閉まっていくのが見えて貂がその扉とを潜り抜けたのを見ると半分以上降りているその扉と床の間をくぐり抜ける為に重心を下に下げ、全ての罠を突破すれば勢いよく地面を蹴り飛び込むようにしてその隙間に体を滑り込ませると地面との摩擦で熱を感じながらもギリギリで扉の向こうに入ることが出来、ほっと一息吐いて)
…ふう…危なかった。…皆、怪我は無いか?
こっちは無傷だよ。狼君達も大丈夫?
(一瞬ヒヤリとしたが、全員無事に罠を通り抜けられたことが出来たのを確認すれば安堵の息をつき。自分達の心配をしてくれる彼に、笑顔を向けて無事だと言うことを示していけば立ち上がり。これから進む廊下の先を見ればまた何個か石像が置いてあったので視線を尖らせていると、聖君が「あれダミーなので大丈夫ですよー」と言っていて。ザッと見た限り、テグスや不審な床も見当たらなかったので進めそうだと思っていき)
ん、俺らは大丈夫。
(軽く乱れた服を直すと貂の方を少し心配してみやったもののパソコンをかばって若干服と頬が汚れている以外は怪我もないように見えてほっと一息吐き。相手も無事な様子であったので上手くいって良かったとほっと一息吐き、聖の言葉通りダミーで特に何も起きない石像の前を通って行くと今度は3階から4階へと至る階段に行き付き、再び神経を尖らせて)
この階段にサイバー的なトラップはあるか?
(逸早くトラップを見つける為にパソコンを覗き込んでいた聖君は、狼君の問い掛けに「んー、ヤバそうなのが一個ありますね。あと数歩進んだところに“レーザートラップ”が仕掛けられています」と渋い顔をしていて。何でも逃げ場の無いこの狭い階段の正面と背後からレーザー光線が迫って来て、侵入者の肉体を切断しようとするシンプルかつ残酷な罠らしい。詳しく知っているなと思っていれば、サラリと「似たようなの作ったことありますから」と何食わぬ顔で言われて。無邪気そうな顔して案外恐ろしいなと感じつつ聖君を見ていれば、彼はパソコンから目を離して狼君の方に近づいて行って「狼さん、この子お借りしても良いですか?レーザートラップは解除に時間が掛かるので、少しでも短縮したいから手を借りたいんです。解除のやり方は僕が教えるんで」と貂君を指差して問い掛けていて)
…ん?良いぞ…って勝手に答えちゃったけど良いよな?貂。
何事も経験だぞ、経験。
(パソコンを取り出し何やら画面を見ながら非常におぞましい事を言う相手にぎょっとしながらも先に聞いておいて良かったと心の底から思い。不意に貂の手を借りたいという相手の申し出に咄嗟にOKしてしまってから本人の方を見て、今技術を先輩たる聖に教えて貰えるならばそうして貰った方がいいと言うように相手に言うと”…わかった。…聖さん、お願いします。”と言ってケースに入れたパソコンを起動させ再び画面を開くと、レーザートラップの解除方法はわからないらしく真剣な表情で聖に教えを乞うて)
(「わーい、ありがとうございます。ではでは、お借りしますねー」と聖君は上機嫌そうに狼君へとぺこりと頭を下げて、貂君を手招いていて。自分の仕事場では15歳の聖君が一番歳下なので、貂君に教える姿は何だか新鮮だと感じつつ少し敵組織同士だと言うことは忘れていて。にしても、専門用語は少し多めだったが端から聞いていても聖君の説明は分かりやすく、これなら安心だと考えてレーザートラップの解除を待っていき。ーー暫くして「終わりました!いやー、この子手際良いですね。僕みたくハッカーやクラッカーの才能ありますよー」と、ケラリと笑いながら狼君に貂君を返していっていて。その後に小声で「ほーんとAtaraxiaじゃなかったら弟子にしたかったですよ。残念残念」とポツリと呟いていて。そんなことを言うなんて珍しいと感じつつも、何だかその姿が本当に残念そうにしているように見えたので。上司として慰めるようにポンポンと聖君の頭を軽く叩けば、レーザートラップが解除された階段の方へと視線を向けていき)
ーーそれじゃあ、4階に行こうか。
(若干不安げに聖の隣へ歩いて行く貂を見守っていると何やら聖が自分には少なくとも日本語には聞こえないような言葉を発しながら説明しているのを眺めつつも貂が真剣な表情でキーボードを打ち込んでいるので恐らく理解しているのだろうと思い感心して。暫くして聖が終わったと言葉を発したのでそちらを見て見ると褒められたことが嬉しかったのか存外に貂が明るい表情をしており。中々自分以外には懐かない子だったので物珍しそうに聖に礼を言っている姿を見ていると朧の声で引き戻されて其方を見遣り一つ頷いてサイバー以外のボウガンの様なトラップに注意しながら4階へと続く階段を上っていき)
…、そうだな。行くか。
(4階へと到着したので一旦入り口で止まり。テグスか床のスイッチがないかどうか調べようとしていたのだが、その前に「朧さん…!上!ロボット!」と聖君に小声で言われて天井を見上げれば、数十メートル先に今までのロボットとは違うタイプのロボットが張り付いていて。新しいタイプのロボットは蜘蛛型で小振りであり、その脚に吸盤のようなものが付いているようだった。聖君に視線をやるとあらかじめ解析をしていたのか「アイツ体内に小型爆弾を内蔵していますねー。偵察用かと思いきや立派な兵器っぽいです。侵入者を見つけ次第張り付いてきて爆発して来ると思います」とスラスラと説明をしていって。最奥地に近付いて来たとあってか、本格的に殺しに掛かって来たなと考えながら入り口で立ち往生し。「解除は出来ないことも無いですけど、まずあの機械を統制する制御コンピューターをこの施設の広いネットワークから見つけないといけないので、さっき以上に時間が掛かりますしそこから更に小型ロボットへのハッキングで時間が掛かるので、たぶん突破しちゃった方が楽ですよ」と言われたので悩み。狼君の方を向いて)
……4階に着いたは良いけど、聖君の言う通りこのまま突破する?
破壊、ってことか?
(隣の朧と聖が話しているのを見て天井に視線をやると新しいタイプのロボットが張り付いており。しかし小型爆弾ともなると無闇矢鱈と攻撃して爆発されたりしたらたまらないと溜息を吐き。しかしシステムを止められないのならばロボット自体を破壊する以外に回避の方法はないように思われて少し首を傾げて訝しむ様に眉を寄せて口を開き)
このロボット、爆発したら何か作動したりしないだろうな…?
(「破壊と言うか全力で躱して下さい。要するに引っ付かれなければ爆発しないので」と、狼君の疑問に聖君がパソコンを閉じて答えていき。その言葉を聞いて、この狭い通路で避けるのは中々の至難の技だよなぁと考えて、自分や狼君達はともかくとして聖君は大丈夫だろうかと思い。まあ、もし危なそうだったら横からフォローしよう。そんなことを思っていれば、狼君の“何か作動したりするのではないか”と言った不安に聖君が「それはご心配無く。自爆する為の爆弾を持っている使い捨てのロボットなんかに、そうそう色んな機械を組み込む技術者はいませんから。コスト的な意味で!」と、何故か最後の方だけ力を込めて言っていて。とにもかくにも爆発しても何らかの信号が送られる心配は無さそうだ。改めて狼君を見ていき)
…成る程、全力で躱す…
(もう少し広い通路ならまだしもこの通路では難しそうだなと思いつつもやるしかないことは明らかで。何やらコストという言葉に力を込めている聖を見て少し笑いながらも心配は貂にあり。自分と朧は大丈夫、聖は恐らく朧がなんとかする、すると残る貂が不安要素であることは否めず、どうするかと腕を組み。窮地に陥ったら助けようと決めて貂の方を見て大丈夫そうか尋ねると少し表情は不安げだったのでしっかりと頷いたので再び朧の方を見遣り)
わかった。それでいいよ。
了解っ。……あっ、ちょっと待って。聖君、あれって行動範囲とかは決められてる?
(ふと、走り出す前に気になったことがあったので一旦話を止め。先程から彼は躱してやり過ごすのを推奨して来ていたので、恐らく小型ロボットの行動範囲は狭いのだろうと予想はついていたものの念の為に問い掛けてみて。すると「はい、勿論です。さっき計算したんですけど、あそこの突き当たりの右の角を曲がればついて来ませんよ。あと、角を曲がった付近には他の罠も仕掛けられてないです」と答えてくれて。ならと、ゴール地点は決まったようなものだと考えつつ狼君に視線を戻し)
ーーそれじゃあ、全力で躱して右の角を曲がろうか。さっきのとは違って今度は通路が狭いから二人ずつで通ろう。最初は僕と聖君、その次は狼君と貂君の順番で大丈夫?
罠は無いなら全力で突っ切れるな。
了解、その組み合わせでいこう。
(聖の言葉を聞きながら計画を立てつつここの通路から角までを眺めて。朧の言う組み合わせが一番無難なように思われ、聖の事は先ほどの走りを見ていると少し足が遅いように見えたので心配ではあったが朧がなんとかしてくれるはずで。貂も再びパソコンを脇に抱えなおしていて準備は万端に見えたので朧と聖に向き直り自分達の準備は出来たので何時でも開始していいと伝え)
ん、俺たちの準備は整ったぞ。
何時でも始めてくれ。
分かった。
じゃあ、先に行かせて貰うね。
(そう言って準備を終えた聖君に視線をやって、走る体勢に入っていき。先程とは違い罠を探しながら走るのではないため今回は彼の重いパソコンを持ってあげていって。カウントダウンは聖君の方に任せていき。すぐに「3、2、1、0!」と言った数字が聞こえてくれば0と同時に二人で飛び出して行って。数十歩進んだところで小型ロボットが動き始めたのが視界の端に見え、まずは壁からバネのように跳んで来たので身体を捻って避けていき。次いで後ろから聖君の背中に向かって跳ねようとしていた為、隣の彼には悪いが思いっきりその体を横へと押し出して何とか回避させ。だが諦めの悪い小型ロボットは金属の脚を素早く動かして、最後に天井から聖君の頭上に落ちて来ようとしていてのでその直前で、彼の背中を前へとグッと力強く突き飛ばせば上手く避けさせることが出来。そのまま二人で曲がり角まで到着すれば息をついていって。その時に聖君がゼーハーしながら「はぁはぁ…っ、朧さんに殺されるかと……思いました…」と呟いていて。避けさせるのに必死だったので、何度か彼を壁にぶつけてしまったからなぁと先程のことを思い浮かべては、“ごめんごめん”と言うように謝っていき。そして、狼君達が来るのを待ち)
貂、行くぞ。
(二人が飛び出していったのをじっくりとまずは観察し。小型ロボットの大体の動きを頭に入れて確認を取ると相手がしっかりと頷いたのを確認してから自分たちも飛び出して。ロボットが此方の動きを視認して素早く飛びかかってくるのを横跳びで壁を蹴って避けると貂の方へとロボットが向かったのを見て腕を引こうと手を伸ばしたものの飛んできたロボットを貂が屈んで避けたのでその必要はなく。猛ダッシュで直線を走っていけばしぶとく追いかけてくるロボットが行く手を遮るように先回りして再び貂に飛びかかろうとしており、貂の最初の動きが遅れて居るのを見て今度こそ相手の腕をぐいと引っ張ると背中を思い切り突き飛ばし背後に落下するロボットをギリギリで避けて何とか角まで走りきると疲労で流石に大きく溜息を吐きながらも全員無事切り抜けられたことに安堵して)
…ふう…何とかなったな。貂も大丈夫か?大分突き飛ばしたけど…うん、怪我はないな。
みんなお疲れ様。
(無事に狼君達も抜けられたのを見れば労いの言葉を掛けていき。そして、預かっていたパソコンを聖君に返せば先の廊下を見ていって。今いる付近には罠は無いものの、ここから進めばまた新たな罠が設置されているのだろうか?そんなことを思いつつ、狼君達の息が整うのを待っていき)
(少しして自分と貂の息が元に戻ると再び散策を始めることになり。貂の調査によりこの付近にこれ以上サイバー系のトラップがないことはわかっていたものの引き続き古典的なトラップの方には注意をしており、案の定複数個トラップを見つけて避けていくとふと貂が画面を見て固まっており。一体どうしたのかと尋ねると少し青白い顔で”…さっきの三階で発動した秒数制限付きのトラップがこっちでも作動してる。見落としたけど、連鎖式らしい。あそこから十分以内に五階まで移動しないと四階から一階までの床全てが開くトラップが仕掛けられてる。類推して残る時間は…一分弱。”と話しており、それを聞けば流石に焦り、未だ階段も見つけられていない状況下でこの状態は不味いと考え一刻も早く先を急がなくてはと考えて)
…不味いな。兎に角なるべく早く移動するしかないか…。
……1分弱か。かなり厳しいね。
(罠を片付けて一安心していたのだがそうもいかず。相手の1分弱と言う言葉を聞いて、さすがにその短時間で階段を見つけて上に登るのはキツイだろうと考えていれば、相変わらず他人を警戒しない聖君が貂君の方まで急いで近寄って行くのが見え。そのパソコン画面をチラ見すると何かを閃いたのか、ふむと頷きながら「よーし、貂くん!僕が今から指差すソースコードを全部この文字列に書き換えて言ってくれない?7分ぐらいには引き伸ばせる!」と宣言をしていて。1分弱から7分にまで稼げるのならこちらとしても有り難く、たぶんその為の作業も間に合うだろうと思いつつ顔を上げ)
("わかりました、やってみます。"と近づいてきた聖に対して真剣な表情で頷くと相手の指示に従って物凄いスピードで貂がキーボードを叩いていき。貂はキーボードになど目もくれておらず相手の指示のままにキーボードを叩いている。いわゆるブラインドタッチという奴だろう。いつの間にそんな技を取得したのかと貂の成長に驚きながらも暫く様子を見ていればぴたりと貂がキーボードを打つのを止め。そして小さく溜息を吐き”…出来ました。これで七分の猶予が出来たはずです。”と聖に画面を見せて。七分あれば何とか階段を探せるだろうが万が一に備え少しでも早く移動したほうがいいだろうと今すぐに移動することを提案し)
それじゃ、早速階段を探すか…。
(「オッケーバッチリ!お疲れ様。君って筋が良いんだからAtaraxiaでちゃんとハッキングのことを教えてくれる人を見つけるんだよー」と敵組織ゆえに聖君自身が教えられないからか、アドバイスのようなことを送れば足早にこちらの方に戻って来て。「7分稼いで来ましたー。ですが狼さんの言う通り、早めに行動しましょう」とパソコンを持ち直して歩こうとしていき。こちらも罠に注意しながら、施設の廊下を見回して)
そうだね、早いとこ階段を探して行こうか。
(何だか妙に嬉しそうな貂を横目に良い職を見つけたなと思い、戦闘員には向いていないと悩んでいた時期があったことを知っているからこそ自分の事の様に嬉しく思い。廊下をしっかりと見回して罠を掻い潜りながら歩いていくものの中々階段を見つけられず、時間ばかりが過ぎていき。三分を切った辺りで焦燥に駆られた表情で朧を見て)
…不味いな。見つからない。
ここまで探しても見当たらないとすると隠し階段とか?
(焦り気味に呟く狼君を見て少し考え。しかしそうなると、益々どこに階段があるのかが分からない。ややこちらも焦りを感じたが、ふと角を曲がった瞬間に見えた、目先にある行き止まりの壁が気になりジッと観察して。何だかあそこの壁だけほんの少し色が違うと感じ、隣にいる狼君の肩を叩いていき)
ねえ、狼君。あそこの壁怪しくないかな?たぶん、どこかに罠じゃないスイッチとかがあると思うんだけど…。
…確かに…少し色が違う様な気が…
(相手に言われてじっと突き当たりの壁を見てみると周りと比べてやや色が暗いように見え。辺りをぐるりと見渡すと天井にも他の部分と色が違う部分が見受けられて。しかし天井にスイッチがあるのでは手が届かない。困ってしまってなにか足場になりそうなものはないかと見渡してみるものの見当たらず、こうなったら肩車しかないかと思い少し躊躇したものの相手に頼み)
…朧、多分スイッチは天井のアレだ。俺が押すから…肩車、してもらえるか?
か、肩車?…いや、うん、緊急事態だし仕方ないよね。肩車…。
(狼君が見つけてくれたスイッチは天井にあり、さすがにこのメンバーの中で一番背の大きな自身でも届かない高さにあるので、彼からの肩車と言う提案は何らおかしくはなく。しかし肩車かと、あまりやったことがない為どういう手順で相手を持ち上げれば良いのか分からなく、取り敢えずしゃがんでみて)
えーと…肩を貸すのでどうぞ乗って下さい?
(何故か敬語になりつつ問い掛けてみて)
…あ、ありがとう、ございます…?
(相手に敬語を使われると此方も何だか固くなってしまい敬語で返してゆっくりと相手の肩に跨る様にして乗っかって。重くないか、立ち上がれるか等色々と不安でありしゃがんでいる相手に無理だけはしないようにと念入りに注意して)
お、重かったら悪い。無理そうだったら無理しなくて良いから…
(相手が乗っかったのを確認すれば立ち上がり、割と軽い思ってしまって。一瞬、小さい頃の狼君を思い出してあの時のようにロクに食べていないのかと考えてしまったが、しかし身長差があれば体重差もあるかと考え直していき。そのままバランス良く天井のスイッチの下へと入れば狼君を見上げて笑みを向けていき)
大丈夫大丈夫、むしろ軽くて驚いてるぐらいだから。
…マジで?
(少し不安げに相手を見ていたもののすんなりと相手が立ち上がったのでその高さに若干恐怖感を抱いたものの相手ならば自分を落とすはずがないという信頼だけはあって無闇矢鱈と怖がって動くほうが危ないとじっとしており。スイッチの下まで安定性のある動きをする相手に徐々に恐怖心は薄れスイッチに向かってゆっくりと手を伸ばし色が違う天井の部分をゆっくりと押すとカチリという音がして扉が開き。突き当たりの壁には開いた扉の先に階段が現れ其方を見て思わず口元を緩め)
正解だったみたいだな。…時間が無い、急ごう。
朧、有難う。降ろしてくれ。
了解っ。
(狼君が押したスイッチはどうやら当たりだったようで、さすがと思いつつも時間が無い為に相手の言葉に一つ頷けば床へと降ろしていき。4階から5階への階段へと差し掛かる前に、一応その入り口に物理的な罠が無いかどうかだけはサッとチェックをしていき。何も無いことを確認したものの、この先に目に見えないセキュリティシステムが無いとは言い切れない為、念には念を入れて階段を登り切らないで入ってすぐの入り口付近で待機し。サイバー班の言葉を待っていき)
よ…っと。
(相手がかがみ込んだのを見ると肩から足を外して。貂がパソコンを使って階段に仕掛けられている罠を解析しているのだろう、難しそうな顔でパソコンの画面とにらみ合っていたがふとその画面から視線を外して”階段にはセキュリティシステムは仕掛けてられていないみたい。先を急ごう。”と言ってきたのでこれで安心して階段を急いで昇る事ができると一つ頷き階段を駆け足で登っていき遂に五階まで行き着いて)
…5階まで来たね。
えーと、聖君。1階の時に言っていたルートを教えて貰っても良いかな?
(貂君の解析によりセキュリティシステムが無いと聞いたので時間を掛けずに階段を登り切れば5階へと辿り着き、隣の聖君に彼が先程1階で解析していた最奥の部屋までのルートを尋ねていって。「はーい、どうぞ!ここですここ」と、5階だけ解析が終っていたのかマップを見せて貰い。サッと目を通せば頷いて)
…なるほど。狼君、目的地の最奥の部屋なんだけどここから突き当たりの壁を左に行った壁のところが入り口みたいだよ。
成程…、このフロアに部屋があるということは大分このフロアにセキュリティシステムはえぐそうだな。
注意して進むぞ。
(マップにこちらも目を通すと地図を頭の中に描きながら真っ直ぐ伸びる廊下を見て。変に突っ走るより慎重に行ったほうがよさそうだと考えて貂の方を見やると案の定トラップが仕掛けられているらしく一つ頷いて”廊下には目に見えないレーザーが大量に張り巡らされてるぜ。俺が指示するから指示通りに動いてくれ。”というのでじっと目を凝らしてみたもののやはりレーザーらしきものは見えず貂の指示に素直に従う他に手段はなさそうだと頷いて朧たちの方を見て)
それで良いな?
ん、大丈夫だよ。
(相手の言葉に頷けば了承の意を示し。ただ聖君が心配だったが、何だかんだ言ってヘマをしたことは無かったのでレーザーには引っかからないだろうと思い直していき。その考えが相手に読まれたのか「…戦闘が駄目なだけであって、運動神経が悪いわけではないですからねー?」とジト目気味に言われてしまい。“ごめんごめん”と言うように宥めつつも、目の前の罠に集中しようと貂君の指示を待ち)
(全員が準備完了したのを見て貂が”まず、一歩大きく前へ踏み出て次は左端によってまたぐように一歩前に、直後にそのまま横に移動してまた一歩前に出たら今度はしゃがんで二歩…”というように的確に指示を出していくのでそれに従っていればストップサインが出て此処でレーザー地獄は終了らしく。指示を出していた貂が今度は画面を睨みながらゆっくりとレーザー地獄を通って此方へとやって来て取り敢えず第一関門は突破したようで小さく溜息を吐き)
…さてと、次か。
(相手の指示が分かりやすかった為に難なくレーザートラップをクリアすれば、狼君の次と言う言葉に頷いて進んで行き。物理的な罠は無かったのでそのまま突き当たりまで進めたが、左に行く前に「ちょっと待って下さい」と聖君に止められたので立ち止まり。何やらパソコンを見て難しい顔をしている彼は少し困ったように言って「ここ一部の床パネルに電流が通っているみたいです。しかも踏めばタダでは済まないレベルの電気です。今から指を差すところは絶対に歩かないで下さいね」と念を押されていき。相手の言葉に強く頷けば「右手前、左手前、右奥、その後ろ、左手前奥、二歩先」と何箇所か差されていって。指示に従いながら電流地帯を通って行って、何とか安全地帯まで渡り歩き)
…致死量の電流って、罠にしては過激だよなぁ。
(聖の言う電流の通っている床を踏まないように慎重に歩いて行き何とか自分も安全地帯まで行き着けば目的の場所はもう眼前まで迫っていて安堵の溜息を吐き。さすがに凄い数のトラップが敷かれていたとしみじみと思い出しながらも同時にこれからの事に懸念を抱いており。中に入れば朧ともう協力はできない。Apatheiaにデータを渡すなと言われているからだ。つまり一方的に裏切る形になってしまう事が心苦しく無意識にネックレスに服の上から触れて。しかし仕事は仕事、公私はつけなければならないと自分に言い聞かせ隠し扉の前まで歩いて行き)
この先に部屋があるんだよな…?スイッチみたいなのあるか…?見当たらねえんだけど…
確かにスイッチが無いね。
……聖君は分かる?
(もしかしたら先程の隠し扉とは違ったタイプのもので、開け方も異なるのかもしれないと思った為に、たぶんこの中で特に電子系に詳しい聖君に問い掛けてみて。「あー、ここのは指紋認証で開くらしいので、恐らくこの辺に読み取りの機械が……」と、何やら手で壁を叩いていて。一つだけ音の違う部分を見つければ、その部分の壁が外れて中から指紋認証を読み取る為の機械が出て来て。「今からハッキングして開かせますので少々お待ちをー」と言えば、その機械のカバーを開いていって直接パソコンのプラグを差してカタカタとタイピングをしていき。ものの数秒で「はいっ、オッケーです!」と解除をしてしまった聖君にお礼を言って開いた扉を見ていき)
…ここから先が最奥の部屋か。
(ものの数秒で扉のロックを解除してしまう様子を眺めながら感嘆の息を漏らしていたが、いざ室内を目にすると気を引き締め。目当てであるデータが入っているとみられるUSBが部屋の中央の台の上に置かれガラスケースで厳重に周りを囲まれている。これまでの経験から考えてもあのケースまでの間にも幾つか罠がある上、ケースそのものにも何か罠があると考えたほうが自然だろう。貂の方を見てセキュリティ系での解析を頼むと"部屋中にレーザーが張り巡らされてる。全部解除しておいた。その他にも干渉できないセキュリティシステムが幾つかある。まず…"と細かに話そうとする貂に一度言葉を途切るように言い。これ以上情報を相手に与えてはいけない。静かな声に変えさせて再び話を聞くと床には電流の通ったパネルが数枚、壁にはセンサーが数カ所あってそのセンサーにひっかかるとこの前のようにボウガンが飛んでくるという。それらの場所を全て把握すると、しかしやはり何も言わずに協力体制を一方的に解くほどには非道になりきれなかったので一度朧と向き合い)
…実はあのデータ、そっちには渡すなって言われてるから。ここからは仲間じゃなくて敵と扱わせてもらうぞ、お前の事も。
(最奥の部屋に入った途端、何やらコソコソとした態度へと変わった相手を見ては。あちらのボスにApatheiaにはデータを渡すなとでも言われているのだろうか?と予想をしていき。まあ、仕方がないことかと聖君の方を見ていって耳打ちをしていき「あららー、そうですか。ならもう教えない方が良いんですね」と案外素直に聞き入れていて。そのままこちらにパソコンの画面を見せてくれば相手に聞こえないよう耳打ちで「レーザーセンサーがありましたけど、これはあっちが解除したようです。それと後は電流パネルと石像の時と同じくボウガンのセンサーがそれぞれありますね」と仕掛けられている場所の説明を受けていき。「一応ボウガンのセンサーは解除できますよ。その分狼さん達も有利になりますけどどうします?」と言われ、しかしどちらにしろボウガンは邪魔そうなので聖君には解除を頼んでおき。そして、狼君から言われた言葉にやっぱりかと思いつつも事前に教えてくれるのは彼らしいやと口元に笑みを浮かべれば頷いて)
言ってくれてありがとう。こっちもボスから似たようなことを言われてるから遠慮無くどうぞ。
(そう言って非戦闘員の聖君を後ろで下がらせつつ武器を取り出せば構えていき)
貂、お前は下がってろ。
…じゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ。
(向こうが聖を待機させたのを見ると此方も貂に待機するようにと告げて。ポケットから銃を取り出しながら部屋の中へと足を踏み入れる。電流が流れている床とボウガンを避けながら朧を威嚇攻撃しつつUSBを入手する算段だ。向こうも本気で攻撃してこないとわかっているのでゆっくりと間合いを踏み入れながら先ずは相手の横に一発発砲するとそのまま障害のある場所を避けつつ一直線にUSBへと向かい走って行って)
(部屋の中へと入れば彼の威嚇射撃に気を取られないよう、足を踏み込んで行き。互いにだが相手を傷付けるような真似はしないので、攻撃の系統は全て進路を妨害する為のものになるだろう。一直線にUSBへと走っていく彼の背を見ては、構えていたナイフを進路を妨害するように投げていき。狼君は知ってるかどうかは分からないがボウガンのセンサーは既に聖君が解除しているので、こちらは電流のみの罠を避けるだけなのですぐに相手との距離を縮めて行って)
(一直線にUSBにたどり着けるはずもなく、進路を妨害するように投げられたナイフに軽く舌打ちをして。直ぐに迂回したルートを通ろうとしたとき相手がボウガンのセンサーがあるはずの部分を通ったのを見てぎくりとして。しかしボウガンの矢が飛んでくる事はなく、聖が解除したのだと瞬時に察し。となると残るは電流だけのはずだ。縮められた距離をこれ以上縮められないようにと数発相手の近くに発砲して動きを封じてから再び自分もまた走り出して)
(幾ら相手に当てる気が無いとは言え、銃を向けられれば反射的に躱そうとするのは至極当然のことで。先程よりも差は縮まったものの、すんでのところでなかなか彼を捕まえることは出来ず。むしろこのまま追い掛けるよりかは、一つしか無い出口で待ち構えていた方が良いのではないかと考えるほどで。そうなると全面的にぶつかる羽目になるかと溜め息をつきたい思いで、再びナイフを引き抜けば今度は天井にあった数歩先のスプリンクラーを破壊して、相手に水を被せようとしていき)
…ッ…
(不意に相手が放ったナイフは自分の頭上を大きく外れていきその逸れ具合に珍しいと思って其方を見れば突然頭上から水が降り注ぎ思わず足を止め。狙いはスプリンクラーだったのかと漸く気づいたものの此処で走ったら滑りそうで万が一その拍子に電流の床にでも触れてしまったらどうしようもない。徐々に距離は詰められていき、こうなったら此処で待ち構えて応戦するしかないかと相手に銃口を定めるものの引くことは出来ず)
(相手が水を被ったのを見て、こちらも感電には気を付けようと電流パネルは絶対に踏まないようにしていき。さすがに滑りやすい中で走るのは無理と判断したのか、彼が立ち止まってこちらに銃口を定めて来たのが視線に入り。それを警戒しつつ新たなナイフを手に持って、その銃を弾く為に数本の得物を飛ばせば水で濡れた床を滑らないように軽く踏めば、その懐に入ろうとしていき)
(相手がナイフを飛ばしたのを見て数発の弾でそれを弾くと懐に入り込まれては億劫だと咄嗟に右に避けようとした瞬間床にきらりとしたなにかが光るのが見えて。咄嗟に銃を投げ捨てるとその部分を通ろうとしていた相手の腕を引きぐいと抱き寄せるとその場に倒れ込み。電流の床を避けるように静止させると痛む体を押さえて立ち上がり先程光った場所を見て)
…テグスだ。水が撒かれたおかげで光って見えたのか。
ーーっっ。……え?テグス?
(ナイフが躱されたのは視界の端に見えたものの、何故か自ら銃を手放して来た相手の不可解な行動を気にしている間も無く、下が水浸し故に腕を引っ張られてしまえば転倒は免れずそのまま倒れ込んで一瞬狼君を潰してしまったのかとヒヤリとしたが、相手から発せられた“テグス”と言う言葉に立ち上がって視線を走らせると確かに光っている細い糸が見えて)
……本当だ。気が付かなかったよ、ありがと狼君。……他の所にもテグスがありそうだね。
(そう思い辺りを見回していって。何箇所かあったので先程のお礼も兼ねて、そこを狼君にも教えていき)
…あー、俺もお前もびしょ濡れだな。
悪い悪い、咄嗟だからそっちまで気が回らなかった。
(床に巻かれていた水で自分も相手も濡れてしまったのを見て肩を竦めて苦笑を零すと相手の指し示す部分を見て。さすがにセキュリティ的な罠だけでなくやはり古典的な罠も併せて仕掛けられていたかとその位置を確認しつつ頭の中に叩き込んでから改めてポケットから捨てた銃の代わりにナイフを取り出し構えて)
…さてと、新しい罠もわかったことだし改めて再開するか。
(“濡れことに関しては気にしないで”と言うように、苦笑を浮かべつつヒラリと手を振っていき。テグスを回避出来たのならスーツが濡れたぐらい安いものだと思い、手に付いた水を軽く払って。一呼吸置いてナイフを構える相手に視線を戻せば、スッと腰のホルダーから引き抜いてこちらもそれを構えていき)
そうだね、早いとこ終わらせないと厄介なセキュリティが出て来るかもしれないしね。
(相手が武器を構えたのを見てすっと重心を下げると地面を蹴り上げテグスを避けるようにして大きく前方へと飛びそのまま相手の横に回り込みナイフを数本投げていき。蹴りや突きを入れると万が一相手がバランスを崩したときが危ないのでなかなか使えず、更に床が濡れていて滑りやすいという悪条件の中、足を止めるようにナイフを投げるくらいしか攻撃方法がないのは確かで。いかにしてUSBに近づいていくかと頭の中で考えつつ相手の出方を伺い)
(投げられたナイフを弾き落とせばこちらもナイフを投げ返していき。水浸し、電流パネル、テグスと言った悪条件の中で戦うのは中々にハイリスクで。それに、迂闊に相手に体術を食らわすのは危険であるためどうしようかと悩んだものの、今は一分一秒が惜しい。上手く相手を罠の無いところに飛ばすのがベストかと思えば、テグスを飛び越えて狼君の背後に回るとその背中に軽い蹴りを入れようとして、罠の無い部分に蹴り飛ばそうとしていき)
(背後に回り込んだ相手にとっさに反応して振り返ると両手を胸の前でクロスさせて相手の蹴りの衝撃を受け止め。其方は罠が無い方向とは言え飛ばそうとしてくるとはなかなか酷いではないかと心の中で毒突いては至近距離にいる相手を牽制するように顔面すれすれに拳を繰り出し身構えたところを直ぐに間合いを開け、ナイフ数本を相手の足元に投げつけ進路を邪魔すると今度こそUSBを取るために足元に留意しながら走り出して)
ーーっ。
(軽い蹴りでは簡単に受け止められてしまうかと思ったものの、さすがに仕事とは言え相手に重い蹴りを入れる気は無く。次の一手を出そうとした瞬間、こちらの顔面に向かって拳が飛んで来たので咄嗟に避けてしまい。恐らくフェイントだったのだろう、気付けば彼がUSBを取ろうと走り出していたので投げられたナイフを避けつつ自身も後を追っていき。相手の組織の手に渡るぐらいならUSBのガラスケースを割って罠を作動させようかと考えたが、それはあまりにも狼君の身が危な過ぎる上に自分は彼を傷付けたいわけではない為に、その方法はすぐに却下して足を速めていき)
(何とかUSBのガラスケースの前までたどり着いたはいいもののこのガラスケースに施されている罠がどんなものかわからない以上迂闊にケースに触れることもできず。そうしている内に相手が距離をどんどん詰めてきており少し困ったように貂を見れば何やら必死にパソコンに向かって何かを打ち込んでおり。恐らくこのガラスケースのトラップの解除をしているのだろうと察しがつけば相手が打ち込み終わるまで朧を引き付ければ良いと考え再びナイフを握り直すと足元に一本投げると同時に腕を狙いもう一本を投げて足止めをする方向で戦っていき)
(何やら急に相手が止まったのが見え疑問を覚えたが、まだガラスケースの罠が解除出来ていないのかと予想が付き。後ろを振り返らないまま「聖君!」と大声で彼の名前を呼んで。「りょーかーいでーす!」と、すぐに大きな声で返事が聞こえてきて。貂君には悪いが今ここでガラスケースを開けられてしまったら確実にUSBを狼君に持って行かれてしまう為、今度は協力ではなく貂君の罠を開ける作業の妨害を聖君にやって貰っていき。自身は迫り来るナイフを弾きつつ、テグスを超えて相手との距離を詰めていき)
(相手が自分が立ち止まったことで罠がまだ解けきっていないのを認知してしまったのか聖に声を掛けるのを見て軽く舌打ちをして。恐らく妨害するつもりなのだろう。すると貂がそれに打ち勝つことを信じる他はないがそれまで時間を稼がなくてはいけない上、相手に負けてもいけないとなる。距離を詰められ壁側まで先に来てしまった為に逃げ場を失う形になり圧倒的な不利な条件の中、再びナイフを構えるとテグスに触れないように相手とこちらから間合いを詰めて再びフェイントで突きを入れようとして)
(テグスが厄介だと思いつつも、狼君からの突きを躱していき。足元にも目先にも集中しなければいけないこの状況は非常に神経を使う時で、少し距離を取ってナイフを持ち直せば小さく息をはき。聖君の方も気になるがハッカーの経歴を持つ彼なら大丈夫だろうと、なるべくそちらの方に気を取られないようにして狼君を見ていき。怯ませる意味合いを兼ねて、彼の頬すれすれにナイフを飛ばせば電流パネルが近くに無いことを確認した上で、相手の足を払おうとしていき)
(頬すれすれに飛んできたナイフに気を取られた隙に繰り出された蹴りに一瞬反応が遅れて諸に攻撃をくらいぐらりとからだが傾くのを感じ。とっさに床に両手を突いて反動ですぐに起き上がると相手の足元にナイフを投げて足止めを食らわせてから再びナイフを構え直して間合いを詰め直していき。ゆっくりと敢えて緩慢な動作で蹴りを繰り出してそちらに余裕を持たせながら躱している隙を狙って素早く突きを入れようとし)
ーーッ。
(相手の足を払いのけたのは良いものの転ばせるまでには行かず、間髪入れずに投げられたナイフと蹴りに気を取られていれば隙を縫って繰り出された突きは認識出来ずに食らってしまい、一度だけ眉を顰め。このまま立て続けに食らうわけには行かないので、すぐに体勢を立て直せばナイフを投げようとしたものの。ーー瞬間、この部屋の中が真っ赤なランプ一色になった為に驚いて動きを止め。「朧さーん!どうやらこの部屋、セキュリティが第二システムまであったようです!!見落としてました!済みませんー!」と、焦った声で聖君が言っていて。何でも扉を開けてから数十分もこの部屋に留まると作動するセキュリティシステムらしく、早いところ解かないとレーザートラップが作動するようで。残りは時間は1分。さすがにそれはマズイと、聖君にガラスケースの解除の妨害は止めさせて、すぐに第二システムの解除を頼んでいき。「分かりました!でも60秒もあれば大丈夫ですので!」と凄いタイピングの速さで解除をしていていって。彼の腕は確かなのでその言葉に嘘は無いだろう。そう考えれば、第二システムは飛んだ横槍だと思いつつ、ナイフを構え直していき)
…ッ
(部屋が不意に赤一色に変わったのを見て何事かと流石に戦闘の手を止めて辺りを見渡せば聖の声が聞こえてきて。この状況下で再びレーザートラップが発動してしまえば自分も相手もただでは済まない事はわかっており相手が解除を急がせたのを見れば卑怯ではあるが今がチャンスだと貂に視線を送り。頷いた貂が再びパソコンと睨み合うのを見てもう少しの辛坊だと自分に言い聞かせながらナイフを構え直した相手の動きをよく見て。視界が真っ赤になっているせいで色々とやりにくい上に万が一聖が解除に失敗すれば自分達の命は無いがそれでも退く気はなく一気に相手と間合いを詰めナイフを振りかざし)
(見辛い視界の中、何とか相手の初撃を弾き返していき。真っ赤になっている周囲はテグスも見えにくくなっている為、引っ掛からないように気を付けながら相手との距離を縮めていって。勢いよく踏み込めば手のナイフをくるりと回転させて柄の方で、その鳩尾に突きを喰らわそうと力を込めていき)
(相手への初擊は弾き返されてしまい、続いて攻撃を再び仕掛けようとしたものの相手が間合いを詰めてくれば一気に警戒態勢に切り替え柄をナイフで受け止め押し返し。直ぐに相手の足を払おうと蹴撃を繰り出すとふと貂が何やら此方に合図を送っているのが見えて。どうやら解除が終わったということらしい。相手の足元にナイフを一本勢いよく投げつけると直ぐに再びガラスケースに向かって走り出し思い切りナイフを投げつけてそのガラスケースを割り。中のUSBを傷つけないかが心配ではあったがそれ以外に方法はなく、無事だったUSBに手を伸ばし。しかしその瞬間ガシャンという無機質な音がして見てみればUSBを掴む自分の腕を台座から出てきた拘束具が固定しており、けたたましい警告音が部屋の中に鳴り響き。咄嗟に貂を見るとパソコンの画面を見て顔をさっと青くして”悪い、トラップを見落としてた…!USBを取った瞬間に取った者を拘束するトラップらしい。しかも爆弾がセットされてて一分で爆発する…、プログラミングの書き換えで時間を伸ばすことは出来るけど、止められない…っ”と危機迫った顔で言うのを聞いて此方も若干顔から血の気が引くのを感じ、取り敢えず手に持っていたナイフでなんとか拘束が外れないか試してみたもののそう簡単に外れる筈もなく舌打ちをして)
(どうやら貂君のガラスケースの罠の解除が終わったらしく、そちらの方へと視線を向けた狼君を見てはすぐに止めようとして距離を詰めようとしたものの、相手から飛ばされて来たナイフのせいで妨害することが出来ずにいれば、彼の手によってUSBのガラスケースが割られていき。こうなったら途中でUSBを奪うしかないかと思っていれば、何やら第二システムの警告音とはまた違う音が響いていって。そして、貂君の焦った声と狼君の様子がおかしいことに気付き。その内容が分かれば、こちらまで血の気が引いていって。するとタイミングの良いことに部屋の赤色ランプが正常に戻った為に、聖君の第二システムの解除が終わったことを悟れば彼に視線をやって指示を促し。「何とかしてみますけど!爆発したら済みませんー!」と、聖君が大声で言いながら貂君のサポートをする為にそちらへと行っていて。自身は狼君の方に近付けば、その拘束具を見てどこかに隙間が無いかどうかをチェックしていき)
ーー狼君、今聖君に解除を頼んだから。でも成功するか分からないから、取り敢えず僕らはこの手枷を何とかしよう。
(カチャカチャと無駄に手首を動かしてみたものの金属音がするのみでどれだけ力を入れようとも拘束具はびくともせず、次第に焦りを感じ始めていれば相手が近くに来たのを見て少し眉を顰め)
おい、爆発したらお前まで巻き込まれるぞ。
先に出てろよ。
(懸命に二人がプログラムと戦ってくれているとは言えいつ爆弾が爆発してもおかしくないような状況で相手を自分の近くに留めておくわけには行かずゆっくりと首を横に振るとやや厳しい口調でそう告げて。拘束具と台座の接合部にナイフを突き立てて間を割ろうとするものの金属に金属では上手く行くはずもなく、本気でこれは死ぬかも知れないと安易にUSBに手を出したことを後悔して振り返ると拘束されていた方の手に握り締めていたUSBを相手に手渡して)
…持って行けよ。爆発して塵になったらそれこそ俺達が何しに此処まで来たのかわかんねえよ。
ごめん、それは受け取れないし僕は君を置いて外にも出ない。正直に言えば、狼君を見捨てるぐらいならUSBなんてどうでも良い。
(相手の厳しい口調を物ともせずに差し出されたUSBを受け取らずに上記を述べていき。狼君を死なせる気など無いので心中すら覚悟していると言う言葉はおかしいが、とにもかくにも退く気など無く。ナイフを手に取れば拘束具を砕こうと、両手でしっかりと握り込んで勢いよく振り下ろし。だがガキンと弾き返された為に、やはり力技では駄目かと考えれば少し悩み。不意に聖君が「少しだけですが拘束具を緩められました!爆弾はちょっと待ってて下さい!」と叫んでいて。よく見てみると、ほんの僅かだが先程よりも隙間が出来ていて急いでそこにナイフの刃を上手く入れていこうとし)
っ…朧…
(軽く瞳を見開き相手を見遣るとそっと俯き。自分のせいで相手まで巻き込んでしまうのは望むところではないが、相手はこうなると頑として離れてはくれなそうだ。恐らく自分が相手でも同じ道を選ぶだろうことはわかっていたので強くも言えず。なんとか拘束具を外そうと悪戦苦闘している相手を見て小さく言葉を漏らして)
…ごめん。…いつも俺の不注意で困らせてばっかだ。
(キーボードを叩く音がやけにうるさく聞こえる。貂も聖も頑張ってくれている事はわかっているが、万が一の事は既に自分の中にあり、恐怖は無かったが朧が此処に残っていることだけが心残りで。少し緩くなった拘束具に相手がなんとか刃を差し込もうとしてくれているが果たして外れるかどうかは定かではなく、本当にもしもの時は恨まれてでも蹴り飛ばして外に出そうと考えて)
それはお互い様だよ。僕だって君に迷惑を掛けて困らせたことは沢山ある。今回は偶々逆なだけだよ。
…大丈夫、安心して。いつも狼君が僕を助けてくれるように、僕も君のことを絶対に助ける。
(暗い顔をしている相手に笑い掛ければ、片手でポンポンと軽くその頭を撫でていき。そもそも彼に困らせられたことなんて無く、むしろ自分の方が相手を困らせているんじゃないかと思うことの方が多く感じ。とにもかくにも時間が無い為ナイフを握り締めれば、微かに空いた隙間にそれを入れていき。狼君の手を傷付けないように細心の注意を払いながら、ゆっくりとテコの原理を利用して少しずつ隙間を広げていって。集中しているとあってか、ヤケにパソコンのキーボードを打つ音が遠くに聞こえる。爆発は止められただろうか?そんな大事なことを聞く余裕すら無い状況ゆえにタイムリミットがあるのかどうかも分からないが、集中したままナイフを器用に動かしていって。ーーそしてようやく狼君の腕が通るくらいまでの隙間を開けさせれば、彼の腕を掴んで拘束具から解き。深く安堵の息をつけば)
……良かった、何とか解けた…。
…ん、…わかった。信じてる。
(視界に映った相手の微笑みを見た時、今まで死ぬのは仕方ないと割り切っていた気持が呆気なく崩れていくのを感じ。生きていたい、未だこの人の隣に居たいと思う心が前面に出てしまってUSBを握っている方の拳を強く握り締めれば安心させるように頭を撫でてくれる相手に微笑み返しそっとそれだけ伝えて。慎重に隙間を広げていく相手の手付きを眺めていればいつの間にかその隙間は徐々に大きくなり自分の腕が抜けるまでに達し、少しして拘束具から自分の腕が外されれば確かな安堵を感じ相手に礼を言い)
…サンキュ、朧。
(色々と他にも言わなければならない事はあったがそれを阻むように貂が”狼、朧さん!あと十秒しかない…ッ、扉を閉めるプログラムを発動させるから早く走って!!”という切羽詰まった声にはっと現実に引き戻され相手の腕を掴むと全速力で罠を避けつつ部屋から外に転がりでた瞬間背後で扉が閉まり激しい爆発音が更にその向こうで聞こえて)
…たす…かった…
……ギリギリ、だったね。
聖君と貂君もありがとう、助かったよ。
(二人で転がるようにして部屋を出れば、タイミング良く後ろの扉が閉まって大きな爆発音がしていき。あと少しでも遅かったらと思うと、生きた心地がしなくなり。しかしながら本当に狼君を助けられて良かったと思い、相手のことを抱き締めたかったが人前な為にさすがにそれは控えておき。そして、後ろからサポートしてくれていた二人にお礼を言えば緩慢に立ち上がっていき)
悪い、助かった。本当にありがとな。
(パソコンから手を離して余りの出来事に相当緊張していたのか放心してしまっている貂の頭をくしゃりと撫で、聖にも礼を言い。それから朧に向かい合い先程は有耶無耶になってしまった礼をちゃんと言って)
朧も、悪かったな。有難う。命拾いした。
(本当はあの時感じたことや相手が死ぬ様な事がなくて良かったという思いを伝えたいところではあったが流石に二人が居る手前そこまでの事は口に出すことが出来ず、礼を言うに留まり。立ち上がった相手を見て自分も立ち上がると手のひらに握り締めたままだったUSBを見て少し考えてからやはり相手に差し出して)
…受け取れ。本当は持って帰らなきゃなんねぇけど、流石に助けてもらってこんなの持って帰れねえよ。
今回の礼だと思って受け取ってくれ。
お礼って……そんなのーー。
(君が助かっただけで充分だと言おうとしたものの、やはり人前な為にその言葉すら言えずに飲み込み。受け取るのを躊躇っていれば「朧さん、狼さんの厚意を無下にしては駄目ですよ」と、パソコンを仕舞いながら聖君が言ってきて。少し考えてから狼君の持っているそのUSBを受け取っていき)
…ん、ごめん。ありがとう。
(そう言ってUSBをしっかりと持てば、コートの中へと仕舞っていき)
ん、それでいい。
(受け取るのを最初は躊躇していたようだったが聖の言葉もあり受け取ってくれた相手を見てUSBを持ち帰るという任務には失敗してしまったものの確かな充足感があり。貂はそれを見ていたが何も咎める様な事は言わず、漸く放心状態から戻ったような状況であり、帰ったらしっかりと礼を言わなければいけないなと思い。さて、帰りもまたあの面倒な設備が待っているのかと思うと非常に気が重く、窓をチラリと見遣れば窓から出てしまおうかと割と安易な考えを抱き。何かの為に縄は持ってきていたので窓枠に括りつけて降りれば問題ないだろうと考えそれを提案し)
帰りは窓から降りるのでいいか?縄持ってるし。サイバー班のPCは何だったら俺が持つから。
俺は別に片手でもなんとか降りられるしな。
僕は全然構わないよ。聖君も大丈夫だよね?
(相手の窓から降りると言う言葉には少し驚いたものの、この厳重なセキュリティの中をまた通って行くのは少々骨が折れ。だったら、ショートカットしてしまった方が楽だと思い隣の聖君にも聞けば「降りるのなら大丈夫です」と言っていて。ただ念の為にパソコンは持ってあげようと考えて、彼からケースを受け取っていき。そして、狼君の言葉に頷けば窓の方へと歩いて行き)
(貂や二人が承諾してくれたのを見ると縄を取り出して丈夫そうな窓枠に縄を何重にもしっかりと巻きつけて自分から先ずは降りて行き。貂のパソコンを片手に持っていたので多少骨が折れたもののなんとか下にたどり着くことが出来て下から上に向かって声を掛けて)
どんどん降りてきて良いぞ。万が一落ちても俺が受け止めるから安心して降りて来い。
了解っ、先に貂君や聖君を降りさせるね。
(上で何かあっては困るので、自身は最後に降りようと思い貂君や聖君を先に行かせていき。ここは5階なので結構な高さがあると感じつつ、二人が降りて行くのをハラハラしながら見守っていって。数分後に二人が無事に降りたのを確認すれば、自身も聖君のパソコンを持ちながら器用に降りて行き。少し時間が掛かってしまったものの地面に無事に降りれば、三人の所へと行って聖君にパソコンを返していき。これで任務は終わりかと狼君達を見れば)
ーーそれじゃあ、キリも良いしここで別れる?
(聖と貂が降りるのを下でサポートして受け止めたもののいざ最後に朧が降りてきた時は受け止める事が恥ずかしくてできないという事態に陥ったものの縄を回収すると取り敢えず任務は終了し。此方を見て解散を提案してくる相手に軽く一つ頷いてそうすることにして。後で本部についたら電話でもすればいいかと礼はその時に取っておくことにしてひらりと手を一つ振り別れの挨拶をして)
ん、じゃあそうするか。お疲れ様。気をつけて帰れよ。
狼君達もお疲れ様。そっちも気を付けて帰るんだよ。じゃあ、またね。
(笑みを浮かべてヒラリと手を振れば、横で元気良く別れの挨拶をしつつ手を振っている聖君を連れて車へと戻って行き。そのままApatheiaの本部へと帰ればボスの部屋に寄ってUSBを渡し、労いの言葉を貰っていき。そして、時間が時間だった為に本日はこのまま帰って良いと言われたので、聖君と別れて自宅マンションへと戻っていって息をつき)
(/今晩は! セキュリティ編お疲れ様です! バリエーションのある罠を回避させるの楽しかったです! あと本日は車学が無かったのでトピ主様と沢山ロルのやり取りが出来て本当に幸せでした…!改めて狼君やトピ主様が大好きです…!(( 次のお話ですが、今の所は朧がヤキモチを焼く話か、RPGや妖怪パロディ(夢オチ)をやってみたいなーと考えていますが、トピ主様のご意見もお聞かせ願えればと思います!)
(相手にひらりと手を振り自分も歩き出すと車を止めた場所に戻り貂を助手席に乗せて自分は運転席に乗り。Ataraxiaまで戻る道の途中、相手のサイバー的な技術について褒めてやはり相手はその道に進むのがいいだろうと思い。任務自体は失敗してしまったが今回の貂の腕の事は必ずボスに報告しようと考えて本部に着くと二人でボスの部屋へと向かい任務の失敗について朧の事を抜かしてUSBを取ろうとした時に罠が作動してその隙に取られてしまったのだと話し。一方でその罠についての見落としはあったもののほかの罠については貂の技術により解除し大幅に任務の進行を容易な物にしてくれたという報告をボスにするとボスは貂についてAtaraxiaのサイバー課に正式に入れてくれると約束し。もちろん自分は始末書を書く羽目には陥ったもののそれ以上の追求はなく部屋へともどると自室に篭り朧に電話をかけて)
…もしもし、朧…?
(/長らくお付き合い頂き有難うございました…!成程、車学が無かったのですね…!お相手様とたくさん絡めて私も幸せでした…!!!もちろん私も朧君もお相手様の事も大好きですよ!!!()、ん、んんんん!?RPGに妖怪パロ…!?非常に気になりますね…!ヤキモチ編Part2も実に気になるところではありますが今回は妖怪パロをお願いしようかなと思っております…!)
(部屋で明日の書類を見ていたところ、不意に狼君から着信が入っていたので慌てて電話に出て行き。何だろうかと思いつつも、スマホに耳を当てて口を開いていき)
…もしもし狼君?どうしたの?
(もしかしてUSBのことで上司に怒られてしまったのだろうかと、一抹の不安を抱きながら電話の理由を問い掛けてみて)
(/いやはやほんと言葉に出来ないぐらい大好きですのでこれからも何卒よろしくお願い致します…!! 狼君のことが好き過ぎて、そういう系統もやってみたいなーと欲が生まれてしまったゆえのパロディ(夢オチ)です!さすがに別スレ作るのは大変ですので…! 妖怪パロですね!了解です!妖怪と人間、妖怪と妖怪などのパターンがありますがどちらに致しましょうか? それと妖怪パロは朧か狼君が寝てる時に見てる夢ですので、どちらか片方は普通に現実の記憶ありでツッコミ役と言うことも出来ますが、どちらも現実の記憶無しというのも出来ます!)
…あ、大した用事じゃねぇんだ。
ただ、さっき二人がいたから色々言い損ねたから。
(相手の少し焦ったような不安がっているような声を聞いて何か誤解をさせてしまったようだと察すると安心させるように先ずはそう告げて。やはり言いたいことは言っておかないと後々後悔するということは自分の身を持って何度も経験しているためこうして電話をかけてでもやはり伝えておこうと思っていたわけで、一度息を吸うとゆっくりと言葉を紡ぎ行き)
…さっきは本当にありがとな。
正直死ぬかもって思ったし、もし爆発するような事になればお前のこと蹴飛ばしてでも外に出そうと思ってた。
でもお前が一生懸命に外してくれたからさ。それ見てたら、多分俺が逆でも同じことするなって思って。
お前だけでも生き残ってくれたらとか色々考えちまったけど、やっぱりお前と生きたいっていう気持ちが溢れてきちゃってさ。
今までは死ぬ段になったら冷静に死なんて迎え入れられると思ってたのに、お前と居るとそうも行かなくなるんだなって思ったし、軽々しく一人で死のうと思ったことをちょっと後悔した。
…なんて、こんな話されても困るよな。
取り敢えず、お前に言いたいのは本当にありがとう、ただそれだけだ。
(/わかりますわかります愛が言葉にならなくて愛してますくらいしか言えませんが愛しております…!!()、んんん、成程、夢オチという設定で別設定の二人を描くということなんですね…!楽しみです…!マフィアな二人もいいですが妖怪となるとまた一風変わった二人を楽しめそうですね…!では設定としてはオチは狼の夢だったということで、朧が妖怪だったという衝撃の事実を知ってしまった人間の狼という設定でどうでしょう…?どの妖怪かというチョイスはお任せします…!)
(ゆっくりと相手から伝えられていくのは、先程の危機に陥ったことに対する感謝の言葉で。あの時は、自身が拘束されていないのにも関わらずこちらも血の気が引いていて。助かった今は最悪な事態など想定はしたくないものの、本当にその最悪な事態にはならなくて良かったと思いつつ、狼君の言葉一つ一つをしっかりと聞いていき)
……とにかくあの時は必死で、やっぱり狼君を死なせてしまうことは嫌だったから心中覚悟でいたけど……そうだね、僕ももっと狼君と生きていたい。もっと二人で色んなことをしたいしね。
それと、困るわけがないよ。こうして君の気持ちが聞けるなんて嬉しいしね。
こちらこそありがとう。
(/自分の方も海よりも深く愛しております…!! 設定了解しました!では舞台もガラリと変えて、大正時代の東京の帝都とか(( それとも現実と同じ時の方がやりやすいでしょうか? ちなみに大まかな妖怪パロのお話ですが、朧(妖怪)が唯一自分の正体を知る人間の狼君のことを気に入っていて常々契約(契約すると一蓮托生になるものの妖怪の力が強くなる)を結べと迫っていますが狼君はNOと言っているのが妖怪パロの日常で。そんな中、悪い妖怪が出たと言うことで狼君がその退治を任された(巻き込まれた等でも)為に行く羽目になって、朧が勝手に付いて行って。ピンチになった時に契約をして悪い妖怪をぶっ飛ばして、そこで目が醒めるなどは如何でしょうか? それともほのぼの路線をお求めでしたらそちらでのお話も考え致します!)
ん、そうか。
お前も同じ気持ちなら良かった。
…じゃあ、おれ、そろそろ寝るから。
お休み、夜中に掛けてごめんな。
(電話越しの相手の声を聞くだけで穏やかな気持ちになり相手もまた自分と同じ気持ちを抱いてくれていたことに安堵をすると口元に微笑を浮かべてそう述べ。時間も時間なので余り長電話してしまうと迷惑だろうと早々に話を切り上げると挨拶をして相手の返答を待ってから電話を切ろうとしており)
(/な、んと…!それならばこちらの愛は天より高いです!(?)、おおお、良いですね、大正浪漫…!是非そうしましょう!そうすると狼は荒くれ者で不良だけど腕っ節だけは強い書生ですね…!設定素晴らしいです…!是非それで行きましょう…!)
ううん、こちらこそ。それじゃあ、お休み。
(穏やかな笑みを浮かべつつ、名残惜しいが時間も時間なので狼君との会話を終えていき。今日は高度なセキュリティに随分苦労したなと思いながら手早く寝る準備をしていき。支度が整えば、あまりにも疲れていたので夕食など抜きにそのまま寝に入っていって意識を落としていき)
(/ て、天ですと…!くっ…届かないです!(( 書生いいいい!狼君が書生ってとても滾ります!ではでは、こちらが次ロルで妖怪パロの初回ロルを回しますね!他にご質問が無ければ蹴り可です!)
(相手と電話を切るとすぐに眠気が襲ってきたため小さく欠伸をこぼすと貂のこれからの方針もだいたい目処がたったし良かったなと思いつつシャワーをさっさと浴びて服を寝間着に着替えてベッドに潜り込み横になって瞳を閉じると直ぐに意識を手放して)
(時は大正、めくるめく混沌の時代。明治に文明開化の鐘を鳴らしてからと言うもの、この日本はあっという間に西洋文化の波に呑まれてゆき。散切り頭の面影など疾うに無く。草履や下駄を履いて歩く町人の姿も日に日に減ってゆくばかり。寧ろ、着物に下駄などと言った己のような江戸の風貌が珍しくなっている世知辛いご時世で。一部の人間達は、伝統と近代文化が織り混ざったこの時代を“浪漫”などと称しているものの。妖狐の身として永いこと生きてきたこちらとしては、それを西洋かぶれの真似事をして言うと“なんせんす”の一言に尽き。あゝ、生き辛い世の中になってしまったと“はいから”な格好をした人間達を眺めていれば、ふと一人の人間が目に止まり。ガラガラと灰色の石畳を通る馬車を避けて、洒落た西洋式のガス灯の下へとからんころんと下駄を進めていけば、ほんの少しの冗談を交えた言葉で声を掛け)
やあやあ、書生君。君がこんな馬車道に来るだなんて何とも珍しいね。
(気難しげな顔を取り繕い手に持っていた書物に目を落とし馬車道を歩いていき。本来こんな書物など疾うに川にでも投げ捨てたいところではあるのだが、細眼鏡の先生に次は無いと脅されている為論文を提出しなければならず。詰襟のシャツの釦は余りの息苦しさに一つ開けられており、西洋の外套と日本の羽織を混ぜたような妙な藍色の上着には若干の皺が見受けられ。黒の学帽は脱ぎ捨てて小脇に抱えられ、首には黒の首巻きが巻かれており。書物に気を取られ背後への意識がおろそかになり始めた頃不意打ちで掛けられた声に思わずびくりと肩を震わせてしまい、振り返らずとも誰だかわかるその声の主にそれを見られた事に恥辱を感じて首巻きで口元を隠しつつそれを隠すようにじっとりと湿っぽい視線を相手に送りまるであっちへ行けと言うようにしっしっと手で追い払うような仕草をして)
出たな、化け狐。見ての通り俺は今非常に忙しい、彼方へ行け。
あっはっは、化け狐なんて酷いことを言うねぇ。僕には朧と言う歴とした名前があるのにさ。
(藍色の着物の袖で口元を隠しながら、ニタリと弧を描いた笑みを浮かべていき。若草色の羽織を靡かせて馬車道の馬に蹴られぬよう煉瓦造りの歩道へと入っていけば、人間のそれと変わらぬような笑みに戻して口を開き)
ーーまあ、名前のことはさておき。そんなチンケな書物なんて読んでいないで、書生君は生き字引の僕と会話をした方がよっぽど有意義だと思うけど?
(西洋風の新しい学問が記された論文か、はたまたそれを猿真似した日本の学問か。けれどそんな人間の書物などどうでも良く、要するにただ単に己は数歩先にいる書生の彼と話がしたいだけで。幾年幾千、永く行き過ぎてがらんどうになった心を埋めてくれるのは今この時は揶揄い甲斐のある目の前の書生のみ。詰まるところ化け狐の執着心と言うものは犬神の怨念よりも厄介なもので、気に入られたら最後。それこそ最期まで憑き纏うほどしつこいものであり、ゆらりと今は化かして見えない狐の耳と尻尾を揺らせば、下駄を鳴らして近付いて行き)
対価が高過ぎる。却下。
どうせ知識と引き換えに契約しろとか言うんだろ、丸分かりだ。
それに生憎そこまで勤勉じゃないんで。
諦めて別の奴探せよ。
引き際のわからない奴は得できねえぞ。
(自分が拒絶の言葉を吐く毎に詰められていく距離に億劫そうに欠伸をこぼすと其方をチラリとも見ようとはせず。かと言って完全に無視する訳でもなく。退屈凌ぎに揶揄われているのは百も承知、まともに相手をしていては幾ら命があっても足りないと割り切り書物から目をあげることもせずに距離を詰めさせないようにさっさと足を運んでいき。自分にしかこの男の正体がわからないというのは中々に厄介でそれを自覚していてわざとつけ込んでくるその手ももう読み切っており兎に角逃げるが勝ちだと言わんばかりに足を止めることなく宿舎への道を急ぎ行き)
相も変わらず欲が無いねぇ、書生君。僕と契りを結べば、数多の知識と純然たる力を得られるのに。
(からんころんと軽快に下駄を鳴らして、そのつっけんどんな態度を取る相手の後を憑いて行き。妖怪と人間の契約とは、妖怪側からすれば人間の魂を糧に更に力を得ることが出来、人間側からすれば魂と引き換えに妖怪の持つ知識と力を共有することが出来ると言うもので。魂と言っても、別に契約したから短命になると言う訳ではなく単純に一蓮托生になるだけだ。こちらとしては、合法的に相手を縛り付けておくことが出来るので是非とも契りを結びたいところだが、現実は中々上手く行かないもので。今日も今日とて振られてしまった現状を見ては、人の命は儚いもの故、相手の寿命が尽きぬ内に結びたいと考えていると__辺りが薄暗くなって来て。煉瓦造りの家々やガス灯に火が灯ったのを境に、“しるくはっと”を被り“ふろっくこーと”を着た洒落者や着物に袴を合わせた“はいから”な女学生が忙しなく足を急がせていて。この大日本帝國の帝都は、夜になれば悪霊やら悪鬼やら人に害を為す魑魅魍魎がのさばり歩く。人の子が恐れるのも無理が無いと、夜の気配が濃くなっている茜色の天を見上げていき)
ほらほら、そうこうしている内に魔が蔓延る“大禍時”になってしまったよ。鬼の居ぬ間に帰らないとね、書生君。
欲が無いんじゃねえ、お前と契約を結ぶのは危険だって俺の直感が言ってんだよ。
知識も力も要らねえから、はい、消えた消えた。
(契約をすれば享受できる利点と言うのは何度から相手から聞かされたが其れを差し引きしても有り余る"お釣り"が来そうだと本能で察知しており全く相手にする様子もなく再び追い払うような仕草をしたものの流石に日が暮れてそろそろ手に持っていた書物の文字も見えなくなってきたので漸く書物から視線を上げてパタンと本を閉じるとチラリと相手の方を見遣り。辺りが暗くなると共に闇に潜む妖達の気配が色濃くなり、中には害を為す者が居ることはまことしやかにこの帝都に囁かれており。しかし自分としてはまだ姿を見せないその妖達よりも眼前にいるこの食えない狐の方が何倍も危険な物と捉えられており、言われずとも急いでいると言わんばかりに下駄を鳴らし)
煩い、黙れ、静かにしろ、しゃっと、あっぷ。
俺からすれば時も構わずやってきて付き纏うお前の方が危険だし言われずとも急いでる。
欲が無いんじゃねえ、お前と契約を結ぶのは危険だって俺の直感が言ってんだよ。
知識も力も要らねえから、はい、消えた消えた。
(契約をすれば享受できる利点と言うのは何度から相手から聞かされたが其れを差し引きしても有り余る"お釣り"が来そうだと本能で察知しており全く相手にする様子もなく再び追い払うような仕草をしたものの流石に日が暮れてそろそろ手に持っていた書物の文字も見えなくなってきたので漸く書物から視線を上げてパタンと本を閉じるとチラリと相手の方を見遣り。辺りが暗くなると共に闇に潜む妖達の気配が色濃くなり、中には害を為す者が居ることはまことしやかにこの帝都に囁かれており。しかし自分としてはまだ姿を見せないその妖達よりも眼前にいるこの食えない狐の方が何倍も危険な物と捉えられており、言われずとも急いでいると言わんばかりに下駄を鳴らし)
煩い、黙れ、静かにしろ、しゃっと、あっぷ。
俺からすれば時も構わずやってきて付き纏うお前の方が危険だし言われずとも急いでる。
(己は悪狐で有名な玉藻前ではないと言うのに、何故危険だと見抜かれているのだろうかと思考を巡らしていれば、相手の明け透けな言葉を聞いて成る程と思い。現にこうして自身が彼に憑き纏い、目論見を示唆しているからかと思い直し。それにしても早くこちら側へと落ちて来てはくれないだろうかと、何度も考えている希望的観測を胸の内で述べていき。落ちて来ないのなら落とすと言うのも手の一つではあるが、そのような真似をすればそこら辺の三下悪霊と同等に成り下がる。それだけは御免だと思うが故、このような初歩的かつ原始的な憑き纏うと言う行為に明け暮れているわけで。__鴉が鳴き影法師が伸びる朱の中、そろそろ日も落ちる頃だろうと歩みを速めた彼の後ろを歩いて行き。有象無象の闇の権化に捕まらぬよう、いつものように寄宿舎まで憑いて行くことを考えて、若草色の羽織をはためかせてゆき)
ははっ、釣れないねぇ。寧ろ、僕ほど善良な金狐は早々居ないものだよ。未だ人を食ったことが無いんだから。
そうですか、なんて誰が信じるんだよ。
口先だけならなんとでも言えるさ。
もうお前の手の内は俺には見透かされてんだ、さっさと俺なんか諦めて別の奴にしろよ。
(相手の言葉は何処まで行っても舌先三寸、信用に値するものではなく。然し相手がこうして付き纏っているおかげで普段近くを浮遊している霊も恐らく彼が牽制している為なのだろう、現れることはないのでその点ばかりが僅かな利点であり。それでもそう簡単に契約を結ぶ気にはなれず、しかし相手が自主的に消えてくれる以外には退魔的な能力も其処まで高い訳ではないし出来る事ではなく小さく溜息を吐いて。漸く下宿先の宿舎が見えてきた為ホッとしてその光の方へと歩いて行くと入り口でかつりと足を止めて相手の方を振り返り少し眉を顰めて見せて)
ほんと、俺はお前と契約する気ねえから諦めた方が早いぞ。
此れは俺の親切心から為す忠告だ。
幾ら付き纏おうが俺の命が無くなる方が先で無駄足だぞ。
無駄足かどうかは、書生君の命が尽きるその時までは分からないだろう?
(笑止千万、ここまで執着しているならば己の答えなど聞かずとも分かるだろうに。生憎とこちらは諦めろと言われて諦めるほど、浅い執着心は持ち合わせていない。そんな腹の底で燻らせている想いを発しては、背に狐の形をした影を伸ばしながらニタリと笑みを一つ零し。次いでとばかりに電柱の陰で目の前の相手を狙う小物_浮遊霊を睨みつつ、一度だけ袖から取り出した鈴をチリンと鳴らして追い払って行き。冬とあってかあっという間に暗くなる辺りを眺めては、星が見えぬどんよりとした夜空を一瞥し。ぼんやりと先に見えて来た彼の寄宿舎を視界に入れると、先程の忠告など軽く無視してその場でくるりと回っていけば、人型から元の金色の狐の姿に戻って中まで憑いて行こうとし。その直前で後ろにいる相手へと振り返って、今度はこちらが忠告のようなことを言っていき)
そうそう、今宵は満月だから夜間は気を付けた方が身の為だよ。そう言う訳だから、この寄宿舎の用心棒になってあげるよ。あゝ、因みに書生君に拒否権は無いからね。
…は、面倒臭い奴。勝手にしろよ、後で困るのはお前だからな。
(確かに自分が忠告をした位で相手が諦めてくれるのなら疾っくに相手は自分に付き纏うのをやめているだろう。溜息を吐き忠告する事を諦めると徐に相手の視線の先に目を遣りはっと息を呑み。電柱の陰に気付かない間に浮遊霊が居た様で、相手がいとも簡単に其れを追い払うのを横目で眺めながら、どうも妖を引きつけやすい体質なのか、色々な霊に付き纏われるなと溜息を吐きながら、相手の忠告を右から左に受け流して宿舎に入ってしまおうと思ったのだが、その相手の言葉に違和感を感じ振り向き)
…あっ、そう、どうぞ御勝手に……、って、はぁ?今お前、なんて言った?
用心棒?真逆、中まで入ってくる気じゃねえだろうな?
狐なんて持って歩いてるとこ見られたらどう言い訳するんだよ、俺が狐憑きみたいに見られるだろ、却下だ却下。追い出される。
あっはっは、既に半ば狐憑きのような者じゃないか。それと書生君には僕のことがちゃんと金狐に見えるけど、他の者達は惑わせて僕のことを猫に見させているから、その件に関しては安心して大丈夫だよ。
(霊力の無い人間を化かすのは、赤子の手を捻るより簡単なことで。但し目の前にいる彼は人よりも霊力があり、尚且つ霊媒体質なため己の妖術は効きにくそうだが出来ないと言うわけではない。とは言え、今のところ掛けるつもりは無いに等しいが。何はともあれ相手の気にする問題は易々と解決した訳なので、自身は狐の姿のままぴょんと寄宿舎の庭先へと入って行き。古き良き木造の建物を見上げれば、器用に前足を引き戸に掛けて上手い具合にガラリと開けていって。土間の頭上でほんのりと輝く笠を被った照明を見上げては、式台と上がり框を跳び越えていき。そして、大人しく玄関口で彼が入って来るのを待ち)
…おい、不法侵入。
(確かに猫に見えるのならばまだ言い訳のしようはあるもののだからと言って相手の侵入を認めたわけではなくさっさと自分の許可も取らず中に入っていく相手に言葉を投げつけたもののどうせ聞く耳を持たないのは確かで。何だかんだ自分が来るまで玄関口で大人しく待っている相手を見て、こんな寒い中また再び外に出すほど冷徹にもなりきれず大きな溜息を吐くと小さな体になった相手を抱き上げて玄関から中へと入り、畳の敷かれた自室へと移動をして。学帽を掛け、首巻きを外し、書物は文机の上に放り投げて隣に朧を置くと何だかんだ小動物の姿で居られると絆されそうになりちょいちょいと指でつついて安全を確かめたあとに毛並みに触れ撫でてやり。外見は可愛くても中身は朧なのだと思うと自分は何をしているのだと思ってしまったがやはりそれでも小動物を見ていたら愛でたくなってしまうもので暫く撫で回した後に尋ねて)
夕飯は?お前、何食うの?
人間の法は妖怪には適用されないよ。
(くすくすと笑みを浮かべて、ここぞとばかりに妖怪だと言うことを建前に我ながら好き勝手なことを言い。ゆらりと数本に分かれた尻尾を動かして相手を待っていれば、狐の姿の為かひょいと軽々と持ち上げられてしまったので少し驚きつつも、そこから落ちぬように前足に力を込めていき。それにしても相手の腕の中が温かった為に、偶には人の子に抱きかかえられるのも悪くは無いと思っていると。彼の自室だろうか、廊下からこじんまりとした畳の良い匂いがする小部屋へと行き着き。そのままそこで降ろされたので綺麗に着地をすれば、恐る恐る指で突かれたあと優しく毛並みに沿って撫でられたので特に嫌がる素振りは無く、丸い狐の目を細めて耳と尻尾を上機嫌そうに動かしていき。数分構って貰った後、不意に律儀にこちらの食事について聞いて来たのでスルリと狐の姿のまま足元に近付いて答えていき)
妖怪は毎日食事を摂らなくても良いから僕は大丈夫。夕飯中はこの寄宿舎を散歩するか、狐の姿で書生君の膝元で丸まっておくとか、まあ適当に暇を潰しておくよ。
あっそ。まあ勝手にしろ。
(何となく相手の素振りが嬉しそうだったのを見て撫でられるのが気持ちいいのだろうかと好意的に解釈して若干嬉しくなってしまった自分が居り、返答はあえて素っ気ない物に留めて。相手に食事の心配が要らないとなると自分の好きなものを作れるとそのまま併設された厨房へと移動して蝋燭に炎を点けて辺りを照らすと料理を始めて。書生の食事なんて質素なもので、麦飯、ほうれん草のおひたし、味噌汁と言った具合に肉等出るはずもなく。その質素な食事を居間に再び運ぶと温かいうちにてきぱきと夕食を済ませていき。貧乏ではあるがひもじい思いまではしたことがなく、この食事はこの食事で気に入っているのでいいだろうと食べ終わった食器を重ねると再び厨房に戻って井戸から汲んでおいた水で荒いものを始めて)
勿論っ。
(狐の姿ゆえ踏まれないように、相手の数歩後ろを気を付けて歩きつつ厨房まで憑いて行き。ほんのりと照らされる蝋燭の光は淡いものだと、近くの食器棚の上に登っては眼下の彼の様子を眺めていって。ものの数十分で相手の夕食が出来れば、彼が食事をしている間はこの寄宿舎を見て回るかと立ち上がり。猫のようにしなやかに棚から前足で床へと着地をすれば、そのまま廊下へと出て行き。他の書生達の部屋を覗いたり、大家の部屋を確認したりと余すとこ無く散策して行って。序でに庭先の縁側も見ていけば不気味なほどまあるい満月が夜空に浮かんでおり。やはり今宵は良からぬことが起きそうだと思いながらも、今はまだ何も居なかった為に書生君の部屋へと戻って来れば敷かれていた座布団の上で丸まっていき)
(食器を全て片付け終わり自室へと戻るといつの間に帰って来ていたのか狐が座布団の上で丸まっているのを見て小さく溜息を吐きながら隣に腰掛けて。今までは何度も宿舎前まで付いてくる事はあっても自室まで入り込んでくる事は無かったのに今日に限って部屋まで来るとはどう言う了見なのだろう。相手が話した言葉がまるっきり嘘でないことは薄々感付いており、確かに今夜は何時もよりも妙な感じが拭えず。満月の夜は外に出るなという戒言は統計的に満月の夜に誘拐事件、失踪事件が起こりやすいからだと聞くが、古来からの言い伝えはそれ以外の一面も本当に持ち合わせているようで。そもそもその誘拐事件、失踪事件が妖の仕業とすれば筋が通ってしまうのが何とも恐ろしい。この狐だって用心棒だなんだと言って夜に力が増強した時に自分を喰い殺さないとも限らずじっと座布団の上の狐を見ながら問いかけて)
おい、此処に居座るんなら居座るだけ仕事してくれんだろうな?
俺は明日の朝までにこの課題を仕上げなくちゃなんねえんだよ。
お前は知らないだろうけどな、龍先生は怖いんだぞ…
(相手が隣に座ったのを気配で感じ取れば、ゆっくりと頭を上げて緩慢に開けた瞳で姿を確認し。ゆるりと尻尾を動かせば、彼の呑気な言葉に微かに一つ溜め息を零してむくりと立ち上がって。ひょいと勉強机の前にある障子を前足で引っ掛けて、ガラガラと器用に半分まで開けて行くと。今宵がどれほど危険な晩なのかを少しでも分かって貰おうと、やや突き放すような物言いと共に、真っ暗な夜空で金色に輝く満月へと相手の視線を向けさせて。それを背にニィとした笑みを浮かべれば、軽い足取りで狐の姿のまま彼の元へと近付いて行き)
自身の命よりも明日の課題と来たか。書生君の自覚が無いのも厄介なものだよ。
無論、守ってあげることは守ってあげるけど五体満足かは僕の知ったことでは無いよ。
…だって、現実味ねえもん。言ってんだろ、俺にはお前の方が余程危険に見える。
(忠告のような言葉と開けられた襖に自然に視線が禍々しい月へと引きつけられる。明らかに妖しげな色を灯し出していることはわかるが、それでもそれが自分に実害を為すものであるとは思えず。面白くなさげに唇を尖らせて課題は半ば諦め気味に書物を更に遠くへと放り投げれば相手の方へと視線を遣り)
それじゃあ聞くけどお前は俺にどうして欲しいんだよ。幾ら気を付けようが俺に出来ることなんて限られてるし。
そうだねぇ、まずは普段からの行いを見直して欲しいね。例えば如何にも曰く付きな場所には行かないとか、予めこう言った魔除けの鈴を術者から貰っておくとか。
(霊力が多いとは言え、確かに術を身に付けていない人間に出来ることなど高が知れており、低俗の悪霊にしか効果は無いものの一応教えるだけ教えておこうと感じて、口頭のみでサラリと言っていき。障子を開けた為か、ゆらゆらと心許なく揺れている蝋燭の灯火に目を遣りつつ、冬だと言うのにも関わらず妙に生暖かい風に視線を尖らせて。数本の尾を靡かせれば、再び狐の姿のまま座布団の上へと腰を下ろしていき。序でに化かして隠していた先程の魔除けの鈴をドロンと言う感じに露わにすると、括り付けられている紅白の紐を口に咥えれば隣の相手へと投げ渡していって。念には念を入れて今夜は彼が持っておいた方が良い。何せ本日の帝都は、暦が仏滅、日付も忌み数、月相も満月と、何事に置いても不吉なことだらけで。妖怪の己としては非常に動き易い日だからこそ、相手のように霊媒体質の人間が襲われ易くなると言うのが、糸も簡単に予測出来。別に自身は彼の守護霊と言う訳では無いが、己が見初めている者をそう易々とそこらの魑魅魍魎共に渡す気は非ず。彼をじっと見詰め)
後は強いて言えば、僕と契りを結んで欲しいね。そうすれば、今以上に凡ゆる邪から君の身を守ってあげられるから。
その悪徳商法みたいな手には掛からないぜ。
なんだかんだ言って契約を結ばせる気か。
(曰く付きの場所に足をわざわざ向けるほど暇ではないし、受け取った魔除けの鈴もなんだか怪しい。訝しげな目で手の中の鈴を眺めつつ相手の話を聞いていれば終着点は結局契約を結べということで、詰まる所そういう事かと息を吐き。やはり妖は信用できないと考えてふんと鼻で笑いいつものごとく、否、いつも以上に回りくどい誘い方をした相手に否を突きつけてやればこんな嫌な気配の立ち込めている夜はさっさと寝てしまうが勝ちだと考えて眠るための支度をして)
俺は寝るからもう黙ってろ。
ま、危険になったら起こしてくれよ。
やれやれ、全く。人使い……いや、妖使いが荒いねぇ、書生君は。まあ、危なくなったらちゃんと叩き起こしてあげるからゆっくりとお休み。
(丸で聞く耳を持たぬ相手を見ては肩を竦める真似をして、不穏な満月が輝く夜空を遮るように机の前の障子を閉めて行き。龍先生と言う人間に出す論文とやらは諦めたのかと、数分前に部屋の隅へと放り投げられた書物を一瞥し。こちらとしてはその方が都合が良かったので、何も言わずに寝る支度をする相手を眺めていって。慣れ親しんだ畳の上にトンっと軽く着地をすれば、大人しく座布団の上で丸まっていき。彼が寝静まった頃にこの寄宿舎の見回りでもするかと考えつつ、災いと称される程の闇の権化が現れないことを願い。ゆるりとした時の中、相手の準備が終わるのを待ち)
(/本日免許取れましたので返信だいぶ回復します!お手数お掛けしましたー!)
(ずるずると布団を引きずってきて畳の上に敷き、毛布を被ると蝋燭の灯りを吹き消して。辺りはほの赤い光に包まれていたのが一瞬にして闇に変わり、先程よりも心なしか空気が重くなった気がするが、だからと言って何か妙な物が見えたわけでもないためそのまま毛布を被ることにして。信用性はどうであれ何かあれば起こしてくれると相手は言ってくれているし、翌朝には命が取られているかもしれないが何にせよ眠い。わざわざ徹夜まで付き合ってやる事もなく毛布に包まると大人しく座布団で丸くなっている相手をちょいちょいと手招きして呼び寄せ)
おい、何だっけお前、朧、だっけ。
こっち来い、中入れ。寒い、体温分けろ。
(/おおお…!漸くですね…!おめでとうございます…!おおおお物凄く嬉しいです!!!)
そうそう朧、金狐の朧。
……妖狐を湯たんぽ代わりする人間なんて帝都中を探しても君ぐらいしかいないよ。まあ、有り難く御厄介にはなるけれど。
(蝋燭の火が消され、独特の残り香が漂う暗闇の中。夜目の利く獣の瞳を動かしていれば、不意に掛けられた声と手招きに対して複雑な溜め息をつき。今己が人型ではなく狐の姿を取っている為か、随分と先程よりも無防備になったものだと思っていき。ゆったりと起き上がれば鼻先を器用に使って、和柄の敷布団を押し上げて中へと入る。寄宿舎の見回りをしなければと考えながらも、冬の晩ゆえこの敷布団の温さには勝てず。気を抜けば寝てしまいそうだとその中で丸まると、意識だけは鈍らせずにして於いていき)
(/ありがとうございます…!!上手く事が運んで最短で取れました…!改めて宜しくお願いします…!!蹴り可)
うっせ、お前なんてそれくらいしか用法ねえんだからじっとしてろよ。
(大人しく布団に入ってきた狐を抱えてぎゅっと抱きしめてみると着物越しに体温が伝わってきて毛布の中が温かくなり。これならば直ぐに眠れそうだと完全に警戒心を解いて暫く瞳を閉じて微睡んでいればいつの間にかそれは本格的な眠りに変わっており。すうすうと規則的な寝息を立ててどんな夢を見ているのか頬はだらしなく緩んでおり、しかし腕の中の相手を抱きしめる力は尚強いままで)
(相手は寝たのか、すぐに穏やかな寝息が聞こえて来たので顔を上げ。さて寄宿舎の番をして来るかと思い、スルリとその腕から抜け出す算段でいたものの存外強く抱き抱えられてしまっている為に、丸で身動きが取れず。此れが己が見初めている書生君でなかったのなら、牙を立ててガブリと噛んで抜け出していた所だと。そんな贔屓染みたことを思いつつも、獣の前足でその頬をぺしぺしと軽く叩いて行って。其れにしても、まだ他の悪霊の気配はしないから良いものを随分と幸せそうに寝ていると彼の顔を覗き込み。こう言った顔を何時か己にも見せてくれる日が来るだろうかと、少々哀愁を感じながらも考えていれば本格的に眠気が来たのでウッカリ寝そうになり。ふるふるとこうべを振って睡魔を払っていき)
(何やら時折頬を叩かれれば寝苦しそうに一瞬呼吸を乱すものの数秒とせず再び規則的な寝息へと収束し。完全な深い睡眠へと移行したのか緩みきっていた頬は普通の表情へと戻り、相手をきつく抱きしめていた腕の力も少しばかり緩んで空間が生み出され。布団の中が2人分の体温で普段より温かく快適だという以外には特に未だ変わったこともなくごく普通の、否、普通よりは快適なくらいの夜を過ごしており)
(暫くして相手の腕の力が解けた為に、その温もりを名残惜しく感じつつもスルリと抜けて行き。真夜中、多くの人の子が寝静まった時間帯。足を立てぬようこの寄宿舎の廊下や縁側を歩いて行って。所々に害の無い付喪神が居るだけかと思えば、踵を返して彼が眠る部屋へと帰って行き。今度は敷布団の中に入るのでは無く、猫のようにその毛布の上にストンと乗っかって丸まっていって。梟の鳴き声か、時おり微かに聞こえて来る囀りに狐耳を立てつつそのまま夜の番をしていき)
(暫くして、不意に大きく一度寝返りを打ち。時間が経つにつれて部屋の中の空気が重くなっている、ような気がする。意識こそまだ無いものの寝苦しいのは確かで、無意識ながらにもそれは感じており。先程まであんなに幸福そうに寝ていたのは何処へやら少し眉を顰めたり言葉になっていない唸るような寝言を零したりと落ち着かない様子で寝返りを何度も打って無意識のうちに布団の中で手を動かし相手を探している様子で)
(夜も益々更けて来た頃。部屋の壁時計がボォンと鳴り響き、午前2時を示す音が聞こえて来て。丑三つ時のこの時刻が一番警戒すべき時だと分かっていた為に、己の視線をより一層尖らせていれば)
……来たか。
(ふと、月明かりに照らされた障子の前を通り過ぎる影が一つ。この部屋へと入って来るのか来ないのかはさておき、用心に越したことは無いと狐火で払おうとしていれば。この満ちた妖気が息苦しいのか、寝苦しそうにしている彼が目に入り。早く追い払ってしまおうと、障子の前へと跳んだ刹那__何処からともなく雑音混じりの“れとろ”な音が耳を劈き。これは蓄音機かと、時々掠れるその不気味なレコーダーの音楽を鬱陶しげに感じながらも、長年の勘で嫌な予感がした為に急いで狐の姿のまま書生君を揺すり起こせば、狐火で障子の影を燃やそうとしていき。しかしその直前で、カタカタと独りでに動く日本人形に阻まれたせいで影には当たらず。舌打ちをしたい気持ちでいると、下っ端の妖怪であろう天邪鬼達が天井から降りて来たので。書生君の前へと己が躍り出れば、低い唸り声を発した威嚇をして近付けないように牽制をしていき)
…っ、う?
(苦しそうに眠っていたため揺り起こされると存外簡単に起き上がり。寝ぼけ眼ながら辺りに立ち込める気配の異様さにはすぐに気づき、そのぼんやりとした視界も漸く妖の姿を捉え。自分の目の前には妖達から自分を守るように相手が威嚇しながら立ちはだかっており。その状況に一瞬思考がついて行かず、ぼんやりと眺めてしまってから慌てて布団から飛び出て。よくよく考えたらこの部屋には凄まじい妖気が漂っている。しかもかなり良くない類のものだ。幾ら朧が力のある妖狐だと雖も数の優位のせいで力の差は歴然としているのがわかり)
…っ、おい。何だよ、これ…どうなってんだ?
(先程貰った鈴を念のため取り出して片手に握り締める。幼い頃から妖が見えていたおかげで恐怖心はそこまで無かったものの明らかにこれは命が危ないというのがひしひしと伝わってくる。そして、その中で本当に自分を守ろうとしている相手を見遣り少し不安げに眉を下げて)
予想以上の大物が来たみたいだ。……どうやら前々から書生君のことを狙っていた鬼の頭のようだね。いやはや、君って妖狐の僕と言い、大妖怪に好かれるねぇ。
(目の前に立ちはだかる手下の種族と数からして、それなりに名を馳せる鬼の長だろうと読むことが出来。本来なら天邪鬼単体の力はそれ程でも無いが、この数であれば己を疲労させるには充分な数であり。なるべく鬼の頭に行き着く前に妖力を使ってしまうのは避けたかったので、上記の軽口を叩きつつも数秒だけ策を巡らせていき。その間にもジリジリと迫り来る天邪鬼達を鋭い獣の牙と唸り声で威嚇して。一つの案が閃いた為に、少しの妖術を使って煙を帯びた赤いちりめんの巾着袋を露わにさせ。その中に入っているのは、ビー玉やおはじきを己の妖術で“金平糖”や“きゃらめる”に化かした物で。巾着袋を口で咥えるや否、それを彼の手中へとポンと投げ渡し)
ーー書生君、それを部屋の隅でもどこでも良いから一箇所に投げて欲しい。天邪鬼の気を引ける物が入っているから宜しく頼むよ。
お、鬼…?…はぁ、よくわかんねぇけど、わかった。投げれば良いんだな?
(こんな訳のわからない妖に好かれるだなんてたまったものではないと言わんばかりに眉を顰めて辺りを見渡し。何か手伝えるような術があれば良いのだろうが生憎退魔に効きそうなのは先ほどもらった鈴のみ。書物で見かけるような護符を数枚昔行った寺の住職に持っておきなさいと渡されたものの効果があるのかはわかったものではない。受け取った巾着袋を投げて欲しいと言われては今は相手を信用して頼るしか術はなく素直に一度頷くとそれを部屋の隅に向かってぽいと投げて。中からは何やら色々な物が転がりでて、それは一瞬金平糖やきゃらめるに見えたものの直ぐにビー玉やおはじきだと見抜くことが出来。しかし霊力の低い天邪鬼にはあれが金平糖やきゃらめるのままに見えるのだろうと考えれば気を逸らす作戦かと納得して)
おい、朧、本当に大丈夫なのか…?
大丈夫大丈夫、あんな三下妖怪にやれるほど弱くはないからね。伊達に永く生きて来た訳ではないよ。
(心配そうにこちらを見遣る彼を見ては、狐の姿のままニヤリとした笑みを浮かべ。江戸の後期にちょっとした事情から六尾にまで落ちたとは言え、元の己は九本の尾を持ち得ていた九尾。悪戯するしか能のない天邪鬼など、一箇所に纏めてしまえば倒すことなどお茶の子さいさいで。書生君が部屋の隅へと化かしたお菓子を投げて、それに気を取られた天邪鬼達がそこに群がって行くのを確認すれば作戦は上々で。そして後から追い掛けて来られるのも面倒なので、容赦無く狐火を展開させると、一箇所に固まっていた天邪鬼達を囲んで一気に燃やして消し炭にしていき。だいぶ妖力を使わずに済んだと思えば、くるりと回転をして獣から人型へと戻って。しかしながら狐耳や尾は表したまま辺りを見回していき)
……妖力の感じからして、鬼の頭は庭先かな。
で、お前が強いのはわかったけど、その鬼の頭とお前ならどっちが強いんだ?
(天邪鬼は案の定お菓子に目移りしてすぐに其方へと向かっていくので安直だなと内心で割と率直な感想を述べつつ。其処を狐火で全て消し炭にする様子は圧巻で、流石にこの程度は妖狐には相手ではないかと若干安堵の息を漏らしたのも束の間、本体の鬼の頭たる妖は未だ姿を見せておらず。先ほどの相手の言葉を拝借するならば鬼の頭は朧と並列されていたように思えるが、果たしてどちらが強いのだろうか。勿論朧に勝ってもらわないと困るのだが、とそこまで考えたところでいつの間にか自分が相手に頼りきっていることに気付き。信用等するものかとあそこまで頑なに考えていたのにも関わらずいざ妖に襲われると全て朧頼みだなんて何と都合のいいのだろう。流石に若干ばかり気が引けて手首に巻きつけた鈴を眺めながら)
それと、他に俺が手伝えることは?
……あゝ、それを聞いちゃうか。……そうだね、今の所は五分五分かな。僕が悪狐にでもなれば楽に捻り潰せるけど、まだ君の側に居たいからそれは遣りたくない手だね。
(ケラリとした軽い笑みを作れば、若草色の羽織を靡かせていき。悪霊に落ちるなどそれこそ最終手段であり、好んで選ぶ妖怪など居ないに等しい。思考は破壊のみで埋め尽くされ、生きとし生けるもの全てを食らうのが悪霊。妖怪が落ちる所まで落ちた姿で成れの果てであり、己でさえもその姿を見るのは憚られるもの。先程滅した天邪鬼は悪霊では非ず、まだただの妖怪であったが、果たして鬼の頭は如何だか。恐らく違うとは思うものの庭先からひしひしと感じる妖気はそれなりに高いもので。全盛期よりも力が衰退してしまった己が勝てるかどうかは半々ぐらい。だが勝たなければ彼が死んでしまうため二度と朝日は拝めぬ。だからこそ、何が何でも勝たなければならない。そう心に秘めつつ相手に視線を戻していき)
本当なら、今すぐにでも神様のお膝元である神社に避難をして欲しいんだけど、この状況じゃあそれは不可能だしねぇ…。
それに、書生君は僕と契約を結んで狐憑きになる気もないでしょう?
…悪狐って。今は悪狐じゃなかったのか、そりゃ知らなかった。
(相手の言葉からこれが厳しい戦いであることはひしひしと伝わってきて、重苦しい雰囲気を壊そうとわざとそんな言葉を相手に掛けて肩を竦め。恐らく此処で相手が負ければ自分の命はない。つまり自分の命は既にいつの間にか相手に掌握されていたということで。契約の話を再び持ち出されては、こんな状況下になっても尚相手と契約を結ぶ気はなく、性格が歪んでいると言われても仕方ないだろうが此処までしてもらっても尚騙されているのかもしれないと疑る気持ちは抜けず。相手は化かすのを得意とする狐、どこまでが本当でどこからが虚構か等そう簡単に見抜けるものではないと警戒することは怠らず相手に答えて)
ま、其処に行くまでに食い殺されるだろうな。
お前は結局それかよ、ねえって言ってんだろ、ねえって。
お前、まさか鬼の頭と手組んで俺を嵌めようとしてるんじゃねえだろうな?
ははっ、それはさすがに傷付くなぁ。
(そう言いつつも平然とした素振りでケラケラと笑えば、ゆらりと六本の尾を動かしていき。鬼と結託をするなどと言った方法は考えつかなかったことだと思いながら、己はさすがにそこまで邪道ではない上にそもそも彼を陥れる気は無く。けれど、妖の言葉など人からすれば戯言に聞こえるのもまた仕方の無いことで。今ここで反論や否定を述べても意味の無いことだと分かっていたからこそ、誤魔化すように笑えば、その場で踵を返して机の前の障子を開け。そこから庭先へと飛び降りようとして行き)
……まあ、何はともあれ他の寄宿舎の人間に被害が及ぶ前にもあの鬼の頭を倒さないと。
だってお前、信用ねぇし。
(少し可哀相ではあったがずばりとそう言い切って。庭先へと出て行く相手の背を追いかけて上着を羽織りそっと首を出してみるとその癪気に思わずといった具合に眉を顰め。今までに対峙した事が無い程のその妖気は異常という言葉そのもので、本当に朧が太刀打ち出来るのか一抹の不安が過ぎり。妖は信用できない。口先三寸で丸め込んで、何を狙っているのかわかった事ではない。だけれど、朧の言葉が全て本当だったらどうしよう。もしも、騙そうとしているのではなく本当に守ろうとしてくれているのだとしたら。しつこく付き纏って何度も何度も契約を強請ってくる相手がもしこの鬼の頭にやられてしまったら、どうしよう。そんな不安が胸の中に渦巻き緩く着物の胸の部分を掴み、しかし言葉は口に出せず部屋の外を覗き込んだまま固まってしまい)
(嫌に輝いている満月の月明かりがあるとは言え、視界が薄暗いことには変わらず。しかしそんなことは御構い無しに、書生君の部屋から庭先へと降りてゆけばトンッと軽く着地をして、数十歩先に居る鬼の頭を見遣り。己と同じく人間の形をしているものの相手は一回りも大きい体躯で、それは岩をも砕きそうな程。頭の左右から生えた角は雄々しく正に鬼の頭と言った所だ。さて言葉は通じるだろうかと、出来れば円満解決したかった故に話し掛けようとした瞬間__既に己の眼前には拳が迫って来ていて)
ーーッ!?
(それを寸で躱せば、後ろへと飛び退き距離を開け。些か攻撃を仕掛けるには性急過ぎないかと疑問符を浮かべていき。それに鬼ともなれば、言葉を交わすぐらいの知識は持ち合わせているはず。なのに一体如何したと言うのだ?敵の次の一手を警戒しつつ、相手を観察していけばやや血走った瞳と目が合い。そこで遅れて気付く。あゝ、半悪霊化しているのだと。変に判断力が残っているため純粋な悪霊よりも厄介だ。相も変わらず、書生君は厄介な妖怪に好かれるものだと冗談を抜きに冷や汗を掻きながら、目の前の鬼と対峙していき。そして矢の如く飛んで来た敵の第二撃である蹴りを避け、こちらはすぐさま相手を青い狐火で炙ろうと思ったものの、糸も簡単に金棒で払われて消されてしまい。軽く舌打ちをしつつ__ふと、上を見上げてみれば書生君が窓から顔を出しており。鬼の気がそちらへと移ったら危ないので、手で奥に行くように合図をすれば再び周囲に狐火を灯していき)
(朧と鬼の戦いは見ていて決して安堵できるものではなく寧ろヒヤリとさせられ。流石に相手が五分五分と言っただけあって鬼の攻撃は素早く、それでいて抉るようだ。朧も負けず劣らず反応しているものの碌に攻撃は通っていない。心配になり始めた頃不意に此方を見た相手が奥に行けというような仕草をしたのを見て戦いの続きは気になったものの鬼に此方に来られると確かに困るので慌てて首を引っ込め。本当に大丈夫なのだろうか。見ていないうちにやられたりしないだろうか。何となく首を引っ込めたあとも室内でそわそわしてしまい結果そっと外をバレないように除いて相手と鬼との戦いを見守る以外には自分に出来ることはなく、固唾を飲んでその動向を見守っており)
(書生君が大人しく奥へと引っ込んでくれたのを確認すれば、足に力を込めて狐火を纏いつつ鬼の懐へと入って行き。素早く何発か蹴りを入れるものの体格差ゆえに丸で手応えは無く。火力を上げてみるかと、狐火の灯火を強くさせて攻撃をすれば今度は其れ相応に効いたようで。少しばかりぐらりと揺れる鬼の体躯を見ては、巻き込まれぬようまた数歩後ろに下がり。しかしこれでは埒が明かないと、終わりの見えぬ攻防戦を見据えて相手を睨み付けていれば__不意に、敵の視線がこちらではなく別の方へと向いているのに気付き。嫌な予感が一つ。慌ててその視線の先を追ってみると、そこには何故か書生君が居て。先程部屋の奥の方に行ってくれていたのではないのかと思っているのも束の間。そちらへと鋭い爪で襲い掛かろうとしている鬼が視界の端に見えて、ここからでは止めさせるのが間に合わないため声を上げ。結界を張ることの出来る魔除けの鈴を咄嗟に言っていき)
ーーっ!?書生君!手の鈴を!!
…っ‥!?
(鋭い相手の声に不意に鬼が此方を見ていることに気づき。咄嗟に魔除けの鈴を翳した瞬間ギリギリで鋭い爪の為す攻撃を防ぐことが出来たものの、さらに追い打ちを掛けるように何度か攻撃を繰り出されればずるずると後退する羽目に陥り。相手の言う通りちゃんと言う事を聞いて部屋で大人しくしていればと思うものの既に後の祭り、どうせ逃げ場も無いのだしこうなったらいっそと鬼を睨みあげると魔除けの鈴を翳し相手がしていたように軽くその鈴を鳴らして応戦を試みて相手の援護が此方へと届くまで何とか場を持たせていくものの次第に其れが厳しいものへと変化していくのがわかり声を上げて)
…ッ、朧…っ、はや、く…!!
今行く!!
(勢いよく地面を蹴り上げ、その空いた横っ腹を蹴り飛ばしていき。ズズズと両の足で地面を擦ってやや後退したものの倒すまでにはいかず。しかし、鬼から視線を外して書生君を見れば無傷だったのでホッとし。彼の霊力の賜物か、兎にも角にも己が行使するよりも結界が分厚くなっていた為に、綺麗に鬼の攻撃を防げていたようで。やはり先程魔除けの鈴を持たせていて良かったと思い、目の前の鬼へと視線を戻していき。その強固な肌はどう遣れば傷が付くのかと視線を鋭くさせていると__途端、鬼の頭が天を切り裂くような咆哮を上げ。振動でビリビリとした空気が流れるのも一瞬。辺りの妖気が更に重いものへと変わり、悪霊化が進んだのかと警戒の色を強くさせようとしたものの遅く。気が付けば地面へと叩き付けられていて)
ッ!!
…っおい、朧…!
(相手が直ぐに此方に飛んできてくれたのを見て安堵し。結界はなんとか持ちこたえていたものの張り直さなければならない寸前のところまできておりもう少しで破られる寸前で。しかし、相手が来た瞬間周りの空気が一層どんよりとした事に気付き、慌てて結界を貼り直そうとした瞬間、相手の体が思い切り地面に叩きつけられており。直ぐに立ち上がれないでいるのを見て咄嗟に鈴を掲げて自分の持っているありったけの霊力を其処に注ぎ込むと結界を貼り直し、倒れている相手の元へと駆け寄り)
おい、朧…!しっかりしろ、大丈夫か…?
このくらい…っ、大丈夫…!
(一撃一撃が重い鬼の攻撃をまともに喰らってしまった為に、立ち上がる時に多少フラついたものの運の良いことに骨は折れていないようで血は吐かずに済み。いつの間にか纏っていた狐火は全て消えていた為に、新たに幾つかのそれを灯していって。敵の悪霊化が進んだ為に結界内に居ても空気は澱んでおり、五分五分から不利な状況へと立たされてしまったと直感的に感じていき。自身が死ぬか悪霊になるかの最終的な選択肢を視野に入れつつ書生君へと背を向けて。そして、結界の外からこちらの様子を伺っている鬼を見ては時間の問題かと、この結界から再び外に出て敵と対峙しようとして。この場から足を進めようとし)
……もしも僕が負けそうになったその時は、何が何でも鬼を食い止める事だけはして於くから。その間に書生君は無事に逃げおくれよ。
……っ…お前……
(相手がふらりと立ち上がったのを見て慌てて手を貸そうとしたものの相手は直ぐに自分に背を向けて鬼へと対峙していき。その言葉は余りにも重く、相手が自分を逃がすためには命をも捨てようとしている事に気付き。こんな時ばかり契約契約と言わないで自分の命を擲って戦おうとしている相手の背を見て思わず返す言葉もなく絶句してしまい、尚結界から出て行き自分の逃げる時間を稼ごうとしている相手の腕を咄嗟に掴み引き止めて思わずと言った風に声を荒げ)
契約すれば!お前の力は強くなるんだろ?
良いよ、わかった、俺がお前と契約してやる!
……その言葉、本当?
(永い事、死と言うものを実感した事は無かったが今回ばかりは流石に体か精神の何方かが死ぬかもしれないと覚悟を決めようとしていれば、不意に掴まれた腕と掛けられた言葉に足を止めて振り返り。己は口では簡単に契約を結べと迫っていたものの、実際これは人間側からすれば忌み嫌われていることであり。大正の時代となった今でも、狐憑き、鬼憑きなどと言った人間は忌み子と称され暴かれれば迫害されるのが現実。なら何故己が普段の日常で契約をと煩かったかだって?そんなこと、単に書生君へと話す口実が欲しかったからと言うのが一番の理由で。彼の身を他の邪から守ると言うのも訳の一つだったが、不運が重ならない限りは己の力のみで追い払うことが出来ていた。しかし、今の事態は深刻過ぎるほど深刻な状況で。仮に己が命を賭けて鬼を食い止めたとしても、書生君が無事に逃げ切ることが保障されている訳でもない。少々複雑そうな面持ちで彼へと近付き)
……嘘偽りは無い?言霊って結構強力なんだよ。それに、僕と契りを結んだら……少なくとも他の人間から迫害される可能性もあるよ?
男に二言は無い。
お前が俺を守るのに命を張るなら俺もお前を守るのに命を張ってやる。
…幸運な事に最初から仲が良い人間なんていねぇし。
迫害されようが何されようが、お前はずっと俺に付き纏うんだろ?
(複雑な面持ちで此方を見てきた相手の瞳には未だ迷いがあり。いつもはあんなに煩く契約を結べ結べと煩い癖にいざ結ぶと言うと心配そうに此方を見てくるなんて変な奴と眉を下げて笑えば先程打ち付けられた時に頰についていた一筋の切り傷にそっと手を伸ばし。上手くいくかはわからなかったものの優しくその上を指でなぞってやると案の定己の僅かばかりの霊力で相手の傷口は跡形もなく消え去っており。自分には力が無いためにこんな小さな傷しか消すことはできないが、契約を結べば相手の力になれる。そして相手は信用するに値すると漸くわかったのだ。口元に微笑を浮かべて相手の双眸を見るともう一度繰り返し)
俺は、お前と契約を結ぶ。
……勿論、僕は君の命がある限り、憑き纏うし憑き添うよ。
ーー分かった。急いで契約の儀を行おう。
(相手の真剣な眼差しに、その瞳に迷いが無いことを感じ取ればこちらもその想いを無下にはせずに頷いて。治された傷口に、使い方を知れば彼の霊力はもっと化けるだろうと考えつつも側に落ちていた長い木の枝を持って、ものの数秒で地面に簡易的な陣を描いていき。あとはこの陣の中に契約者である彼の血を垂らして、己が契約の言葉を述べていくだけだと思い。顔を上げていき)
この陣の中央に君の血を少し貰えないかな?
了解。
(直ぐに相手がさらさらと地面に描いて行く陣を見て、いよいよ契約をするという実感が湧き怖気付きそうになるものの、決意は固く、この道を選べば相手と共に生きて行く以外の道は絶たれてしまうとわかっていてもそれを嫌だと思う気持ちは無く、言われた通り血を垂らすために懐から護身用の小刀を取り出すと左手の人差し指の腹にぷつりと刃を入れて。傷口から滲んできた血を見てゆっくりとそれを陣の真ん中へと数滴垂らし)
…これで良いか?
うん、それで大丈夫。
(ゆっくりと落ちて言った赤い血を一瞥して彼に向かって頷けば、己は契約の陣の手間へと移動をしていき。緩慢な動作で片手を突き出して、有りっ丈の妖力を込めながらより強い言霊を発してゆき。言葉を紡げば紡ぐほど契約の陣はくすんだ赤色に輝き出して、辺りの空気も重苦しいものへと反転し。そこから溢れた力が庭先の小石や着ている羽織を少しばかり浮かしていき。ピリピリとした慣れぬ感覚にやや眉を顰めつつも琥珀色の瞳を一度固く閉じて、薄っすらと開けてゆけば普段よりも何処か低く嗄れた声を発していって)
……我は千を生きる狐の化身。有する真名は朧。今宵、人の子である汝と契りを結ばんとする。さあ我の真名を述べよ。然すれば、己が力を与えよう。
……、…朧。
(相手が言霊を発して行く度空気が重くなっていくのがわかる。けいやくの陣は鈍い赤へと変わり、霊力があるからこそ辺りに立ち込める気の強さに気付き、目をそらす事ができず。その契約の言葉を紡ぐ相手はまるで別人のようで、食い入るように見つめていれば自然と自分の口が相手の真名を呼び。自分でも驚くほどしっかりした声音でその音を紡げばじっと相手を見つめて)
(己の真名を呼ばれた刹那__契約の陣が一度強く輝いて、その光が粒子のように辺りへと飛散してゆき。丸で赤い粉雪が舞っているような、現世とは掛け離れた幻想的な光景に視線を流しつつも契約主である相手へと近付いていって。徐ろに彼の手を掴めば、己の指をその手の甲に軽く落として行き。ちりちりと微かに燃えるような感覚がした後、相手の手の甲には月のような契約印が刻み込まれていて。無事に契約が終了したことが見て取れる。それから少し遅れて、己へと逆流して来るような相手の霊力を実感していき。多少の違和感を覚えながらも、全盛期の頃のような力を取り戻せたのは確かなことで。ゆらりと六つの尾ではなく、九つの尾へと増えたそれを揺らせば。先程よりも青く燃ゆる狐火を展開させれば三日月のような笑みを浮かべ)
……契りは結ばれた。
我が主、狼よ。汝が死せる刻は我の死せる刻。その逆もまた然り。それを努々忘れぬように致せ。
……!…嗚呼。
(目が眩む様な光に思わず瞳を閉じてしまい、再び目を開けた時には赤い光の粒子が辺りに舞っており。その中央にいるのは相手の姿で、その相手に不意にぐいと腕を引かれ、指を添えられた瞬間にちりっと掌に痛みを感じた後、じわじわと契約印が掌に浮かび上がり。ドクドクと鼓動が早まっていくのがわかる。自分の力が流れ出すと同時に相手の力や知識が体に流れてくる。これが、契約の力。はっとして相手を見遣れば、それこそが真の姿なのだろう、9本の尾、そして青白い狐火を纏った、先程とは雰囲気の違う相手の姿があり。その雰囲気に抗うことが出来ず、そして抗うつもりもなくゆっくりと頷き、その神々しいまでの相手の姿から目を離す事が出来ずに居て)
ーーまあ、そう言うわけで手短に倒して来るよ。狼君は援護を宜しくね。
(先程の雰囲気は何処へやら、ケラリといつもの調子で笑えば書生君改め己が主である狼君から視線を外し。流石に大分時間が過ぎた為か、結界は鬼の力で所々ひび割れており。しかしながら契約を結んだ今は怖いものなど無く。潔く結界の外へと躍り出れば、一直線に向かって来る敵をひらりと躱して重い蹴りを入れていって。妖しげに九つの尾を揺らめかせれば、間髪入れずに狐火で鬼を炙ってゆき。瞬間、相手は地を響かせるような雄叫びを上げて、しっちゃかめっちゃかに拳や金棒を振るっていき。そのような敵を見るに、こちらの攻撃は随分と効いているのだろう。はてさて、我が主は己が妖狐の知識を使って、自身の多量の霊力を上手く行使する事が出来るだろうかと。丸で武士の初陣を見守るようだと思いながらも、暴れる鬼を前にして、それを鎮めてくれるだろう彼の援護を待ち)
……は?援護って……おい!
(神々しい雰囲気は嘘だったのかもしれないと目を擦ってしまう様な相手の変容に目を擦っている内に適当に援護を押し付けて戦線に飛び出していった相手を見て溜息を吐き。先程よりも相手の動きはずっと軽やかで、一撃一撃に重みがある。これが本当の力なのかと思わず目を瞠ってそれを眺めていたが、自分は援護を頼まれていたことを思い出し、自分の中に流れる力がふと一点に流れていることに気づき。それは手元に握りしめたままだったあの鈴で、先程より眩い光を放つ其れを腕の動くままに翳すと左手で刀印を結び九字を切り)
臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前!
(九字護身法が行われた途端、天から光を帯びた主柱が降り注ぎ。丸で牢のように鬼を囲めば閉じ込めていって。そうして動きが鎮められている間、鬼の命の源でもある二本のツノを見遣れば一回りも二回りも大きい敵の体躯へと飛び移り、トンッと上手くその肩に乗ってゆき。己の扇子を刀へと化かせば、勢いよく目の前の立派なツノを斬り落としていって。すると断末魔を上げた後、鬼は糸が切れた人形のように地面に倒れ込んでピクリとも動かなくなり。その妖気が完全に途絶えたことを確認すれば、からんころんと下駄を鳴らして彼の元へと戻って行き)
初めてにしては上出来過ぎる援護だったよ、お陰様で楽に鬼が倒せた。いやぁ、僕等って最初から相性が良かったのかもね。
お前な……
(自分の援護で身動きが取れなくなった鬼の首を討った事は素直に凄いと思うものの、自分に何の説明もなく援護を押し付けてしれっとした表情をしていることは気に食わず。憎らしい相手の額をコツンと軽く叩くとありありと手の甲に浮かんだ印が目に入り、相手と契約したという事実を見せつけられているようで。此れからは完全に相手と運命共同体になると言うわけで、面倒な事が増えると思って気が重くなったものの目の前の相手が自分を逃がす為に命を落とすという最悪の事態にならなかったことに安堵して相手の体を抱き寄せて肩口に頭を埋めて呆れたような口調で話し)
お前、俺が契約結ばなかったら死んでたかもしれねぇじゃねえかよ…、無茶しやがって…、俺なんか見捨ててお前だけ逃げれただろうが。
確かに逃げる事なんて簡単に出来たよ。でもさ、ただ生き永らえるのは僕には酷な事で価値の無い事なんだ。
(唐突に抱き締められた為に、あの書生君が…!と嬉しさ半分で驚きつつもそれ程心配させてしまったのかもしれないと考え直して、己よりも幾分か小さい相手の背に腕を回してその頭を優しく撫でながら、少し躊躇ったがこの胸の内に留めていた気持ちを述べていき。己が生きて来た月日は千を超え、移り変わる季節は何度もこの目で見てきた。その度に出会いと別れがあり、そして幾つも生まれた寂しさに耐えられなくなった為に、己は何時しか次第に誰か一人へと固執すると言うことを止めてしまった。しかし、それがいけなかった。心はがらんどうになり何故己は生きているのか、何の為に気の遠くなるような時を過ごしているのか。ぐるぐると思考を悪循環させるばかりで、だがそんな答えの無い問い掛けに答えてくれる者など在らず。そうやって半ば己を見失い掛けていた頃に、彼と巡り合う事が出来、再び生きる意味を持つ事が出来たのだ。ゆるりと九つの尾を揺らしつつ穏やかな笑みを浮かべて、相手の顔を眺めてゆき)
……狼君には想像が付かないかもしれないけど、僕は君に会う前は丸で死んだ様に生きている抜け殻みたいなものだったんだよ。けれど、狼君に会ってから僕は生きている実感を得る事が出来た。あゝ、長生きをするのも悪くなかったなって思えたんだ。
……そんな恩人の君を見捨てて逃げるだなんて、そんな事をするぐらいならこの命を賭けて守る方が僕にとっては冴えた遣り方だったんだよ。
…───お前…
(いつもはおちゃらけて、軽くて、しつこく付き纏うだけの五月蝿い妖としてしか相手を認識していなかったが、相手の口から聞いたその言葉は自分等とは比較できないほど重く長い年月が積み重なったもので。一体彼が過ごした時間は何れ程彼を苦しめて来たのだろう。人間を愛せば先立たれ、別れを繰り返せば関わりを持つことすら怖くなってしまいそうだ。妖故に避けられ、妖故に忌み嫌われ、妖故に存在を認識してもらえない事もあったのではないだろうか。自分を抱きしめる相手の身体は確かに自分よりも大きいけれど、自分には今の相手が少しだけ小さく見えて。彼が過ごした年月の内に出来た大きな大きな穴を埋めるには余りに自分はちっぽけでどうしようもない人間で。それでも少しでも相手の傍に寄り添って、悠久の時を過ごす寂しさを減らしてあげることが出来れば。心からそう思うようになって相手の体を強く強く抱き締めると緩く笑み視線を合わせて)
本当、馬鹿な奴。俺なんか止めとけって言ったのに、ずっと付いて来やがって。
そんなに俺の事が好きなら居てやるよ。お前の隣に、ずっと、俺が。
だからお前も居なくなるな。不幸にしたりしないから、俺を守る為に死ぬとか、もう止めろよ?
……永い事生きて来たけどこんな化け狐の側にずっと居てくれるなんて言ってくれた人、狼君が初めてだよ。
(相手から伝えられた言葉に目を二・三度ぱちくりとさせたが、やがて淡く柔く微笑めばそう嬉しそうに呟いていき。大体の人間は己が妖狐だと気が付けば怖がられて離れてしまうか、憎まれて退治をして来ようとするかの二択だったので、彼の言葉は己にとっては新鮮で、そして一番求めていたものだったのかもしれない。そう考えると千年と言う永い時を生きて来たが、彼と居ればまだまだ己が知り得ない事を沢山教えてくれるかもしれないと思い。あゝ、この目に狂いは無かったと、漸く己がこの現世に生きて居ても良いのだと言って貰えた様な気がして。何だか込み上げて来る切なさを隠す様に、ぎゅっと彼を抱き締め返し。......妖怪と人間の寿命に差がある事は分かってはいる。彼の方が必ず先に死んでしまう事など言われずともだ。それでも春は桜を、夏は渚を、秋は紅葉を、冬は雪を、彼と共に見たいと想いを馳せて。それは永遠ではないけれど、今のみの幸せだとしても。この想ふ気持ちを誰かにそう易々と引き裂かれる気は無い。そんな事を胸の内に隠して、相手の額へと口付けを一つ落として行き)
ありがとう…。そうだよ、僕は狼君の事が好きで愛してる。或る小説家の言葉を借りれば…月が綺麗ですねと言った所だよ。こっちこそ、居なくなったりしないし、君の事を不幸にさせたりなんてしない。全ての凶から守り抜くと誓うよ。
あっはは…何だそれ。随分嫌われてんじゃねぇか。
(自分のその言葉にさえ嬉しそうにしている相手の様子を見れば相手が今まで受けてきた仕打ちを容易に想像する事が出来て眉を下げてくしゃりと笑えば誤魔化すように相手の頭を撫でて。思えばもしかしたら最初から似た者同士だったのかもしれない。小さい頃から人ならざる者が見えてしまい、それを一々やれあそこに何が、あそこには何が、誰々の後ろには何がと口にしていれば次第に友人と呼ばれる者は減っていき、気味悪がられ、疎まれ、遠ざけられ、次第に一人には慣れていき、滅多に妖の事を口にすることも無くなった。別に一人でも良いと思っていたし、人間関係だなんて億劫なだけで、一生懸命に護摩を擦り人間関係を構築しようとしている者達を見るとそれが滑稽に見えていた。だが、始めてあそこまで心の蔵が縮むような思いをして、此奴は無くしたくないと彼処まで思ったのも初めてで、ただ付き纏ってくるだけの面倒な妖が自分の中で自分でも気付かない内に大きな重量を占めていて。今こうして自分の後ろに回されている腕に力が込められる度に相手の気持ちの昂ぶりを察したり、正面切って好きと言われたり、額に落とされた口づけに驚き、顔に熱を集中させ、それでも嬉しかったりと今までに感じた事のなかった感情が沢山押し寄せてきて、相手の胸元に顔を埋めて一段と細い声で言い)
…お前、冗談で言ったのに…本当に、好き、って……。俺の事、好きで居てくれる、のか?
…俺も好きだ。朧の事。…ずっと一緒だ。もし俺がお前より先に死んでしまったとしても、何度でも生まれ変わってお前に会いに行く。
そしたら寂しくないだろ?
当然。むしろ狼君を好きでいないで誰を好きになるのかと言うぐらいに愛してるよ。
(にこにことした笑みを浮かべれば、徐に撫でられた頭を擽ったそうにしながらも甘んじて受け入れていき。正直に言って己の好意は突っ撥ねられてしまうかもしれないと思っていたものの、無事に受け入れて貰えたようで。頬を林檎の様に紅く染める相手を見ては、上機嫌そうにゆらゆらと九つの尾を動かして己へと顔を埋める彼の背をぽんぽんと優しく叩き。同性で種族差が有るとは言えこの気持ちに偽りは無い。ただこれから先、化け狐である己のせいで相手を沢山苦しめてしまうかもしれない。そう考えるとこの契約もこの告白も、随分と彼に重たい足枷を付けてしまったのかもしれないと、そんなつもりは微塵も無かったのについ思ってしまう。あゝ、しかし今この時だけではなく生まれ変わっても会いに来てくれると宣言してくれる彼の言葉は、己にとっては何よりも幸福を感じられる言葉で。そんな事を言われてしまえば、それこそ相手の魂が輪廻転生しなくなるまで執着してしまうと。化け狐の恋情は泥よりも纏わり付くようなしつこさを持っている為に、そのような事を思っていき。背中を優しく叩く手を止めて、それこそぎゅっと抱き締めては口を開き)
…ん、それなら寂しくない。別れる時はきっとこの身が引き裂かれるような思いを感じると思うけれど、生まれ変わっても会いに来てくれると君が言うのなら僕は百でも千でも何時までも、それに耐える事が出来るし待つ事だって出来るよ。
絶対だ。男に二言は無い。
お前が百でも千でも待ってくれるなら、俺はお前がこの世界の何処に居ようがきっと見つけ出す。
隠れても逃げても無駄だからな。
(思えばこんな風に愛を告げられた事なんて無かったのでどこかその言葉は擽ったかったが不思議と心地よく。手の甲についた相手との契約印はまるで目に見える形で相手と自分を繋ぎ留めてくれているようで。この契約印のある限りにおいて自分と彼は運命共同体で、ずっと寄り添って生きていくことが出来る。綺麗な月の様なその紋様をうっとりと見つめた後、何か手甲の様な物を買わないとこのままでは生活出来ないなと苦笑して。狐憑きだと露見するまではいつも通りの日常を送ろう。再び不真面目な書生へと戻り、明日には龍先生にこっぴどく叱られるわけだ。もし、露見してしまったらそれはそれで良い。此処から別の場所へ移って、さながら放浪の旅とでも洒落こもう。何れにせよ相手と一緒なら全ては円滑に行くように思えて、微笑を浮かべ)
(/今日は…!!!妖怪パロ最高に楽しいです……!!妖狐の朧君イケメンすぎて神々しすぎて拝んでました!!!!夢オチは何処で区切りましょうか…?いきなり翌朝起きるシーンにぶつっと切っちゃっても大丈夫ですか…?)
ははっ、最後の其れ。何だか脅迫染みているね。
(藍色の着物の袖で口元を隠してはくすくすと笑っていき。己は隠れも逃げもしない。再び巡り合う為ならば、言葉を交わさずとも彼にも分かる様な思い出の地を此れから作って、其処で何時まででも待っていよう。此の身が朽ちるのはきっとまだまだ先の事。其れが良いの事なのか悪い事なのかはさて於き。彼と共に生きられるのならば憂鬱だった明日や朝日も、また違って輝いて見えるのだろう。そんな事を考えてはゆっくりと昇って来る太陽を視界に映して、その眩しさに目を細めれば彼の体を離して。其方へと手を差し伸べてゆき)
ーーそれじゃあ、此れからも宜しくね。狼君。
(/今日は!!こちらこそ趣味全開でやらせて頂いて妖怪パロも楽しかったです!!!何時もと違った二人を見られてウハウハしてます!!((あと狼君が男前過ぎて妖狐朧の執着度が増し増しになりました(笑(( そうですね!次で終わりで大丈夫です!上の部分で受け答えをして貰ってから、下の部分は翌朝起きている感じにして貰えばスムーズに繋がるかと…!済みません語彙力無くて…!!)
勿論。
(笑っている相手の表情は他の何にも代え難く綺麗で。ずっとこの笑顔を守っていこうと心に決めて、話された体の代わりに差し出された手を取るとゆっくりと光の中へと歩き行き)
──────
…ッ…
(瞳を開き辺りをゆっくりと視認していく。見慣れた天井、見慣れた壁、此処はいつもの自分のベッドの上。緩慢な動作で状態を起こし辺りを見渡すとあの宿舎の面影等どこにもなく、無論朧の姿があるはずもない。ぼんやりと手の甲を眺めてみてもそこにあるのは骨ばった自分の肌だけであの印は何処にもない。これらの事実から類推するに、詰まるところ)
…夢、か。
(妙な夢を見てしまったと頭を掻き。朧が狐で自分が書生で契約を結んで、なんて。ふあ、と欠伸を一つするものの、何となく妙にリアリティがある夢で頭の中に焼きついており、しばらく携帯の画面を見つめていたが徐ろに電話帳から相手の名前を探して”お前、狐じゃないだろうな。”と恐らく相手が見て困惑するであろう内容のメールを早朝早々に送りつけて)
(/違った時線だとこうなるのですね…!また別の経緯を辿ってくっつく二人を見るのも楽しかったです!!そして久しぶりに朧君にツンツンな狼をやれて楽しかったです()、了解致しました、そうさせて頂きました…!!そして今後の展開に関してなのですが、朧君の誕生日をやらせて頂きたいと思っております…!!)
(寝室に朝日が差し込んで来た為に、その穏やかな日差しで目が覚めて。今日はよく寝れたと思いつつ少し寝惚けた頭で鳥の囀りを聞いていると、おもむろに自身の携帯機器が鳴ったので、こんな朝早くに誰だろうと思っていると、その差出人は狼君であり。疑問に感じつつもメールを開けてみれば『お前、狐じゃないだろうな。』と言う全く心当たりの無いものであって。何かの暗号だろうかと少し頭を悩ませたが、結局文章の意図が分からなかった為に『ん?狐?ちゃんと君と同じ人間だよ。』と送っては、やや引っ掛かる言葉だった為に、もしかしたら前世で狐だったのかもれしないと。そんな有り得ないようで有り得なくもないことを思いながら、朝の支度へと向かっていき)
(/ツンツンな狼君が久々で、こちらもツンツンな狼君も可愛いーー!!!とハイテンションになっていました(笑) おお、朧の誕生日ですね…!了解しました!!楽しみにしております!! …ちなみに今の狼君に朧は何処まで攻めても大丈夫でしょうか?(( )
…そうだよな。…そうだよなぁ…。
(直ぐに返ってきた相手の返信から相手はやはり人間である事がわかり、妙なことを聞いてしまったことへの謝罪の文を返すと携帯を机の上に置き。そんな、出会うべくして相手と出会ったなんてまさか、と。深く考えてしまった自分を一笑し、それでも何だか少しだけただの夢だと鼻で笑って捨てる事が出来ない自分もいて、不思議な縁もあったものだと思いながらもこうして今、朧と共に居るのだから何れにせよ幸せだと考えることにして寝室からして伸びを一つすると眠たげに朝食を作り始めて)
(/うわああ良かったです…!!ツンツン時の狼なんてただの生意気なクソガキですが!!今の狼なら何処まででも大丈夫ですよ…、遠慮なく攻めて頂いていいんですよ…!!()、朧君のことが大好き故と恋愛経験の無さ故に放心しちゃうかもしれませんがお構いなく…!!何だかんだ嬉しすぎて悶え死んでるだけです())
ーーもう3月の終わりか。
(それから数週間後、決算月とあってか慌ただしく3月の月日は流れて行き。カレンダーを眺めてはそう独り言を呟いていって。明日でようやく正真正銘の20歳になれると思いつつ、これで気が引けることは何も無くなると考えては視線を外していき。ややうきうきした心で仕事場へと向かって行って)
(/そんなツンケンな狼君も大好きです!むしろ愚息曰く狼君の全てが愛おしいですので!!! 良いんですか…!!狼君がオーバーヒートしないように自重はしますが一段一段愚息に攻めさせて頂きますね!! そして次が誕生日イベと言うことで日付を飛ばしてしまいましたが大丈夫でしたでしょうか?)
(暫くして、三月の末ともなれば自分の頭は相手の誕生日のことでいっぱいであり。母親が死ぬ前は自分の誕生日毎に小さなケーキを焼いて祝ってもらったものではあったが、母親が死んでからはめっきりとそんな機会も無くなり。祝う側は当然のごとく初めてで何をしていいのか皆目見当もつかなかったものの相手が生まれた貴重な日、祝福したいという思いは確かに心の中に有り。そこで毎日忙しい仕事の隙間でインターネットを駆使して色々な情報を収集し、目当ての物を何とかつい二日ほど前に押さえたのだが、勇気が出ず結局今日に至るまで相手を誘い出すことが出来ず、当日になってしまい。今から連絡してももう遅いだろうかと不安になりつつもやはり折角押さえたのであるしそれとなく誘ってみて駄目そうだったら捨ててしまえば良いのだと携帯を握り閉めて相手の電話番号を入力していき)
…もしもし、朧?…あの、さ、今日の午後から明日いっぱい、暇…じゃないよな?仕事あるよな…?
(/そんな言葉を聞いた日には狼が卒倒してしまいます…!!()、了解致しました!!どうぞ宜しくお願い致します!!日付飛ばし有難うございます…!!このまま進めていきますね!!ストーリーはサプライズで行きたいので、深く考えず楽しんでいただけると幸いです!!それでは、質問など無ければ蹴り可で!)
あれ?狼君?もしもし。
……え、今日の午後から明日?ちょうど仕事は無いけど。
(いきなり掛かって来た狼君の電話に少々驚くものの、すぐに出れば今日の午後から明日いっぱいに掛けての予定を聞かれたのでそう答えていき。ちょうどApatheiaは今年からボスの気紛れでバースデー休暇なるものが実施されたので、その為に忙しい月にも関わらず自分は休暇を取ることが出来ていて。それにしても何だろうかと思いつつ、いやまさかねと期待半分で相手の反応を待ち)
…!…っ、本当か?
…あの、な、急で悪いんだけど、今から俺、そっちに迎えに行くから。
一日分の着替え用意して待っててくんねえ?待ち合わせはApatheiaの近くの教会の前、時間は一時間あれば大丈夫か?
(半ば諦め半分で尋ねてみたものの相手の返答はそれを覆すもので。思わず声を弾ませて急いで約束を取り付けようと息巻いて色々な情報を一気に話して。相手も驚くだろうが自分も諦めかけていたので準備はしておらず、今から急いで準備の必要があり。事前に準備しておいたものもしっかりと持っていかなければいけないし、これは中々に忙しくなると思いながらも高鳴る胸の鼓動を抑えることはできず、詳しい情報だけは伏せて相手にそう尋ねて)
わ、分かった!大丈夫、急いで支度するよ…!もし待たせたらごめんね!
それじゃあ、今から準備をして来るからまた後で。
(まだ仕事場だった為に早口でそう答えたものの、一日分の支度なら一時間もあれば出来ると考えて相手の言葉にしっかりと頷くと、彼の方も支度があるだろうと思って早めに携帯機器の電源を切り。そのまま休憩室から出れば、最後に仕事場に顔を出して軽く挨拶をしてApatheiaの本部を出て自宅マンションへと帰って行き。手早くトランクケースに一日分の着替えとアメニティグッズを入れれば、私服であるキャメル色のトレンチコートを羽織って。急いで指定されたApatheiaの近くの教会の前へと向かって行き)
ああ、また後で。
(相手との電話を切ると直ぐに準備に取り掛かり。スーツケースを引っ張り出して一日分の着替えを入れるといつものラフな服装とは少し趣向を変えたグレーのダブルブレスジャケットを取り出すと細かい黒白のストライプのズボンと併せ。勿論ネックレスは忘れずに首元に付けて、用意しておいた”例の物”も忘れずにスーツケースとは別の手提げに入れて気をつけて持つとサイバー課で仕事をしている貂に書き置きを残して急いで駐車場へと向かい車を出して教会前へと向かえば既に相手の姿は有り、車を止めて窓を開けると中から声を掛け)
悪い、待たせた。後ろの座席に荷物入れて、助手席に座って貰えるか?
いや、待ってないから大丈夫だよ。了解。
(何とか間に合ったと教会の前で息をついてそう思っていれば、少しして狼君が車に乗ってやって来たので有り難く後ろの座席にトランクケースを置いて、助手席へと乗り込みシートベルを締め。ふと、気になったことがあったので聞くのは野暮かと思ったが念の為に尋ねてみていき)
……そう言えば、これからどこに行くの?長距離なら疲れるだろうだし途中で運転代わろうか?
そうか、なら良かったけど。
…ん?…大丈夫、そこまで長い距離じゃねぇよ。
直ぐ着くから、まあ待ってろって。
(相手が助手席に座りしっかりとシートベルトをしたのを見てからもう一度車を発進させ。行き先を尋ねてきた相手にふと笑って答えをぼかすとそのまま暫く車を運転していき。朧がいつも用意してくれるものの様な豪華な物を用意出来れば良かったのだが、中々そうも行かず、しかも一泊のみの物となると中々絞られてくる中で漸く見つけた其れは設備も外装も中々よさげで。車で約一時間弱、到着したのは港の駐車場で、大型と迄は行かなかったものの中くらいの大きさながらに煌びやかな装飾の施された船の前までスーツケースを転がして行くと相手の方を振り返って口元を緩めて)
東京湾一周クルーズ。出来るなら地中海一周でもしたかったんだが、何せ時間も金も無くてこんなショボいので悪いんだけどさ。
ーー?
(笑みを零してぼかされた行き先に疑問符を浮かべていき。しかし、長距離でないとなると自身の運転の出番は無いかと大人しく助手席に座っていて。反面、心の中では妙にそわそわする気持ちが無いわけではなく、車内から見える外の景色から推測しようとするものの当然思い付くわけがなく。やがて行き着いた先は東京湾で、相手から受ける内容を聞いては嬉しさの余り若干言葉を失ってしまい。そのクルーズ船を見ては、トランクケースを持ち直して)
ショボいだなんてとんでもない…。狼君が用意をしてくれた時点で、僕はとても嬉しいんだよ。
(この嬉しさを上手く言葉に出来ないもどかしさを感じつつも、相手に微笑み掛けていき)
お前の誕生日、明日だって聞いてたから。準備期間も少なくてそんなたいそうな物用意できなかったんだけどさ。
それに、お前、明日で成人だろ?折角だから一緒に過ごしたくて、急に無理言って連れて来ちゃって御免な。
(クルーズ船を見る相手の表情は心から嬉しそうで、それを見れば探し回って予約した甲斐があったとほっとして相手を見て。船に乗り込み、乗務員に名前を告げると予約しておいた部屋へと通されて。折角だし、たった一泊で料金もそこまで馬鹿みたいに跳ね上がる事も無かったので奮発して船に数部屋しか用意されていないスイートルームを取っただけあって、部屋は広々としており、綺麗にメイクされたベッドは見ただけでふかふかだとわかり、他にも冷蔵庫やテレビ、コーヒーメーカー、ジャグジー付きのバスタブまで備え付けられている。流石に凄いなと自分でも感嘆の息を零しつつ荷物を置くとにっこりと笑って相手を見て)
船は14時出航だからもう直ぐ動き始めると思う。夜は中のレストランでディナーを予約してあるから、
そこで東京湾の夜景を見ながら食べて、明日は途中で江ノ島に停まって少し観光が出来るらしい。で、明日の夕方また此処に戻ってくるって言う日程だ。
…ちょっとは楽しみになってきたか?
(トランクケースを持って狼君の後について行けば、乗務員に通された場所は清潔感のあるロイヤルチックな部屋で。恐らくスイートルームなのだろうと、簡単に見て取ることが出来。何だか自分の為にこんなにも豪華な部屋を用意して貰ってしまって申し訳ないと思いつつも、心は正直で高鳴る鼓動は抑えきれずにいて。先程から笑みが絶えない、幸せで緩んでしまう口元を少し正しては狼君の方をしっかりと見て)
ちょっとどころじゃないよ、凄く楽しみだ。……狼君、本当にありがとう。こうして誰かに誕生日を祝って貰う機会なんて、あまり無かったから嬉しいよ。
(親にすらロクに祝って貰えなかった誕生日を、今こうして何よりも大切な人が祝ってくれるだなんて。生きていて良かったと思える瞬間だと思っていき)
大袈裟だな。
(相手が本当に幸せそうに言うものだから此方まで心から幸せになって肩を竦めて笑うと、持ってきた物をこそこそと冷蔵庫の中に押し込んで、今回ばかりは相手に心から楽しんでもらおうと考えて先ずは手はじめに何か飲みものでも入れようと見回してみるとそう言えばコーヒーメーカーが置いてあったはずだと其方を少し見てみることにして。かなり色々な種類のコーヒーが用意されていて、リフィルを入れるだけで簡単に作れてしまうという画期的なしろ物らしい。自分はカプチーノのリフィルをひとつ選びつつ相手にも尋ねてみて)
動くまではコーヒーでも飲んで待ってるか。えっと、何でもあるぞ。アメリカン、キリマンジャロ、モカ、ラテ、カプチーノ、カフェオレ…
(取り敢えず手に持っていたトランクケースをベットの脇へと置いていけば、何やら相手がコーヒーメーカーのところにいて。この部屋にはあらかじめコーヒーメーカーが設置されているのかと思い、便利だなと口には出さずとも遠目からリフィルを見ていればコーヒーの種類を尋ねられたので少し考え。モカの雑味の無い味も良いが、キリマンジャロの甘酸っぱい香りも捨て難いと悩んでいって。散々悩んだ後、コーヒーメーカーの方へと移動をすれば最終的にはモカのリフィルを選んでいき)
じゃあ、僕はモカにするよ。狼君はカプチーノ?
ん。泡が好きなんだ。
(相手が選んだリフィルを受け取り、先に相手の方を淹れてやり。説明書を読みながらリフィルを定位置にセットしてボタンを押すと勝手にコーヒーが抽出され、感嘆の息を漏らし。珈琲独特の香りがふわりと鼻腔をくすぐり、思わず頬を緩めると次はカプチーノを入れて。ふわふわの泡までこんな機械ひとつで作り出してしまうとは一体どうなっているのだろうかと興味深げにその様子を見ていれば無機質な機械音がして珈琲がぴたりと止まったのでマグカップを取り出すとその隣にスプーンやクリームや砂糖などが置かれており、自分はそれを一つずつ取って)
朧は?何か使うか?クリームも砂糖もあるぞ。
(そう言えば遊園地の時も狼君はカプチーノを飲んでいたようなと考えつつ、泡が好きと言う相手の言葉に彼らしい可愛い理由だと思いながらも自身もコーヒーメーカーにモカのリフィルをセットしていき。簡単にモカが作られていく様子を眺めながらマグカップを取り出して、その良い香りにホッとしつつ。何となく今は甘いコーヒーが飲みたい気分だったので、スプーンと砂糖を見遣って)
そうだね、僕は砂糖を使おうかな。偶には甘いコーヒーも良いかなって思って。
ほんとだ、珍しいな。ブラックでいいって言いそうなのに。
(聞いたは良いものの恐らく要らないと言うのだろうと予想していた自分としては相手の答えは意外で、もう一つずつ相手の分の砂糖とスプーンを取るとカプチーノのカップを持ってソファの前に置いてあるテーブルにそれを置き、ふかふかとした大きなソファの左側に腰をかけ。高そうなソファだ、幾らくらいするのだろうと考えてしまう辺りに自分の貧乏人具合が出ている気がして考えるのを辞めると先ほど取ってきた砂糖をパラパラとかけ、クリームを一つ入れてスプーンで簡単にかき混ぜるとゆっくりとそれに口を付け。砂糖が泡にかかってほんのりと甘い其れは口の中で直ぐに解けて消えて行き、機械で作られたとは言え流石に本格派なその味に感動していれば低い出航の音が聞こえ、ゆっくりと船が動き出したのがわかり)
後で甲板にでも行ってみるか?天気もいいみたいだし、夜行けば星空と夜景が綺麗に見えるだろうな。
ひょっとしたら狼君と好みが似てきたのかも。
(そんなことを冗談交じりに言いつつ、モカの入ったコーヒーカップを持ちながらソファの右側へと腰を掛ければ、狼君が持って来てくれていた砂糖とスプーンを取って零れないようにゆっくりと入れていき。冷めない内にかき混ぜていけば、火傷をしないように飲んでいき。砂糖とモカの甘みのある味に気分を落ち着かせていると、どうやらクルーズ船が動き出したようで。もう午後の2時になったのかと思っていれば狼君からの提案に頷いて)
うん、そうだね。コーヒーを飲み終わったら甲板に行こうか。確かに今日は晴れているし、今の時間帯だと東京湾がよく見えそうだね。
何だ、それ。…何となくこそばゆいな。
(相手の冗談に思わず笑ってしまったものの、よくよく考えれば何となく嬉しくて。其れ程多くのことを共有出来た証であり、こんなに良く自分が笑う様になったのも思えば何となく相手に似てきたからである様な気がして。無愛想で毒しか吐かない様な自分に笑顔と優しさを教えてくれたのは間違い無く相手で、それは言い換えれば似てき始めたということで。多くの時間を共有すると人は似ると言うが、相手とそうなれたのは中々に嬉しいことであり、カプチーノをゆっくりと飲んでいきながら相手の言葉に頷き)
そうだな。幸い風もそこまで無いし寒くもないだろうし。一緒に行くか。
ん、了解。
(そう頷いて、手元にあるモカを飲んでいき、ようやくコーヒーカップを空にすればそれを片付けていって。ふと、こう言ったクルーズ船は、あの出会ったばかりの頃に任務のため二人で乗った豪華客船を思い出すなと懐かしんで、彼に悟られないようにして微笑みを零しつつ、トレンチコートを着直すと、甲板へと一緒に行く為に相手を扉付近で待ち)
(カプチーノを全て飲み干し片付けるとダブルブレストジャケットに腕を通し、先に行って待っている相手の隣へと足早に歩いて行き。扉を開き甲板に上がるがてら探索してみると、中にはバーやビリヤード、ダーツ等があり、其処を越えて更に歩いていくと甲板に続く階段があり登っていけば潮風が気持ちいいデッキへとたどり着き。数人の先客こそ居たもののゆったりと楽しむことが出来、足を踏み入れると人の少ない方を選んで相手を手招きして)
見ろよ、朧、海が太陽を反射してきらきらしてて綺麗だぞ。
本当だ、綺麗だね。潮風も穏やかで気持ちが良いよ。
(彼に続いて船内を探索をしていればカジノのような洒落たバーがあり、そこには色々と楽しめそうな物が置かれていたので後で来ようと思いながら甲板へと出れば、ゆるやかな日差しと程良い潮風が頬を掠めたのでそう答えていき。そして、相手が気を利かせて人通りの少ない方に手招きをして案内してくれた為に、そちらへと移って行き。隣に並びながら東京湾を見下ろして)
落ち着くなぁ…。日頃の疲れが取れるよ。
昔デッキに登った時はワインで酔ってて気持ち悪かったからな。
改めてちゃんと甲板から景色見るのは初めてだな。
(豪華客船での任務のときの事を思い出し、あの時はワインで酔って相手からチョコレートを貰って甲板へ連れて行って貰い酔いを覚ますのに必死だったと思い出せば苦笑を零し。船は既に岸からだいぶ離れており、船上では穏やかな時間が流れており、相手が楽しめる事を第一目的としている為に相手の口からその言葉が聞くことが出来ればほっと安心して。隣に並ぶくらいならば不自然にも映らないだろうとそっと相手との距離を縮めると微笑を零して)
…良かった。お前が楽しんでくれたら俺も嬉しい。
今日と明日だけは存分に我儘を言っても良いぞ。出来る事なら何でも叶えてやる。
成人の祝いだからな、”先輩”としての責務だ。
ははっ、懐かしいね。狼君は見事に食前酒で気分が悪くなっていたもんね、本当に懐かしいや。
(そう言えば坊ちゃんと執事役と言う関係で乗り込んで、その時はまだ敵対関係だった為に甲板で彼にこれ以上気を緩さないようにと、忠告をしたこともあったっけと思い出しながらも笑みを零していき。気持ちの良い潮風と心地の良い太陽のお陰で、何だか眠ってしまいそうになる午後の陽気に心を休めていって。そして、不意に掛けられた言葉に何だか狼君が大人っぽく見え。これが20歳の雰囲気かとよく分からないことを思いつつも“我儘を言っても良い”と言った彼の言葉に、あまりそう言った機会が無かった為に悩み)
……何でも、か。うーん、じゃあお言葉に甘えて何か思い付いたらその時に我儘を言わせて貰うよ。
…ああ、本当に懐かしい。
お前が何でもしてくれるって言うからつい任務に同行を頼んじまったけど、よくよく考えれば俺も凄いことを頼んだもんだったな。
(敵対して互いに命の保証は無い中での共闘だなんて今思えばかなりリスキーな行為をしていたものだと笑って。僅か半年ほど前の事なのにそれが大分昔の事の様に思われて懐かしむように目を細め)
ああ。良いぞ。
(まだまだ旅行の行程は長い。何時でも相手が望んだ時にそれを叶えてやればいいのだと思い、暫く海風に当たった後、部屋へと戻ることにして。大体16時頃になっており、ディナーは18時からだったので未だ二時間の余裕があった為に何をしようかと部屋に戻って考えてソファに腰を下ろし)
先に風呂入っとくか?夜は下のバーとかも開くみたいで何だかんだ忙しそうだし。
(それを提案したのは確かに夜に開催されるプログラムが多い事も理由の内ではあったが、何より大切な0時にどちらかが風呂に入っていましたなんて事になってはどうしようもないためで。今から入ってしまえばそんな事態にもならずに済むだろうと考えてそんな提案を相手にして)
しかも、取り戻したのはAtaraxiaの大事な書類だっけ?確かに凄いことを頼んだね。
(それほどまでに相手はこちらの言葉を信じてくれたのだろうと思いつつも、本当に共闘したのが自分のように彼に好意を持っている者で良かったと改めて思いながら暫く潮風に当たっていき。__そして、部屋へと戻って行けばちょうど中間の時間帯になっていて。ディナーは18時らしいのでどうしようかと考えては、相手のお風呂と言う提案にコクリと頷いて)
そうだね、その方が夜は動きやすそうだし。じゃあ、先に狼君がお風呂に入って来て良いよ。僕はたぶん長風呂だしさ。
じゃあ、そうさせて貰う。
(相手の言葉に有り難く先に入らせて貰う事にして。スーツケースの中から下着の着替えだけを取り出し、まだ外で行動することから私服に関しては夜まで着る事にして。脱衣所で服を脱ぎ中に入るとジャグジー付きのバスタブには並々と湯が注がれており、掛り湯をして体と髪を備え付けのボディソープやシャンプーで洗ってからゆっくりとその中に足をつけると泡の中に体を潜らせて。湯加減は丁度良く、何か入れてあるのか白く濁った湯からは花の香りがしており。中々に洒落ているなと暫く湯に浸かりながら考えつつ、熱くなってきたので風呂から上がりもう一度掛り湯をすると風呂から出て、備え付けのバスタオルで丁寧に水気を拭き取ると服を着て客室へと戻り)
上がったぞ。結構広くて気持ちよかった。
へぇ、さすがお風呂までしっかりとしているんだね。じゃあ僕も入って来るよ。
(ふかふかのソファーで腰を下ろして待っていれば、暫くしてお風呂の入浴剤の匂いなのか、良い香りを纏った狼君が出て来たので、自身も早速入りに行こうとトランクケースから下着だけを出せば脱衣所まで持って行き。ジャクジー付きの風呂場に入ると、やはり湯の中には入浴剤が入っていて上品な花の香りが漂っていて凝っているなぁと思いつつも、髪や身体を洗っていけばゆっくりとお風呂へと浸かって行き。血行が良くなると少々ジジ臭いことを思っては、逆上せない内に浴槽から出て行って。サッとバスタオルで体を拭いて再び服を着れば、部屋へと戻って行き)
狼君の言っていた通り広かったよ。あと良いお湯だった。
な?何処の部屋にもバスタブは付いてんだけどジャグジー付きなのは此処だけなんだよ。
ドライヤーあったから使えよ。終わったらそろそろ時間だし夕食に行くか。
(自分と交代で入って行った相手を見送ったあとはソファに座ってテレビを見たりドライヤーで髪を乾かしたりして相手を待ちつつ、戻ってきた相手の抱いていた感想が自分と同じであったので少し笑って言葉を返し。時計を見てみると時刻は17時40分と中々丁度いい時間になっていたので、夕食のレストランに向かわなくてはならないが相手も髪を乾かしたいだろうと考えてドライヤーを指さして)
へぇ、何だか凄い贅沢だっ。
あ、そうだね。髪乾かして来ないと。
(確かにジャクジーは良いものだったと思いつつも、そろそろ時間と言うことを聞いて、夕食に遅れたらマズイと思った為に髪を乾かしに脱衣所へと戻り。そのまま約数分程度を掛けて自身の髪を乾かせば、再び客室へと戻って行って)
待たせてごめん。
夕食はクルーズ船の何階で摂るの?
ううん、全然大丈夫。
えっと、船の三階にあるダイニングレストランを予約してある。
(相手が髪を乾かして戻ってきたのを見てソファから立ち上がると部屋を出て予約しておいたレストランへと向かい。綺麗な夜景を見ながらシェフがその場で作る鉄板焼きを食べることができるというそのレストランは船を予約するよりも正直大変だった。座席数が数席しかなく、予約を開始すると直ぐに埋まってしまうと評判で日付を跨ぐまでずっとインターネットの前で待機していた記憶がある。そんなレストランは確かに雰囲気もよく店内自体は狭めではあるものの窮屈さは感じず、名前を告げてカウンター席に腰を掛けると置いてあった手拭きで手を拭いて)
中々有名な店らしくてさ。結構期待しても良いぜ?
(彼の後を付いて行って、予約をしてくれていたらしい船の三階にあるダイニングレストランへと到着すれば、店内の雰囲気は雰囲気が出ていて良く。トレンチコートではなくもう少しマシな格好でくれば良かったなぁと後悔しつつも、それでもやはりこれを狼君がわざわざ予約してくれていたと聞けば嬉しいものがあり。浮ついてしまう心を鎮めつつ、数席しかない座席をチラリと見やれば案内して貰ったカウンター席に腰を掛けていき)
いや、もう何か雰囲気だけ分かるよ、凄いお店だって。狼君の言う通り期待するね。
(相手が何処となくウキウキしているのを雰囲気で察して鉄板越しのシェフの方を見ると、最初に小皿にフランスパンらしきパンが数枚載った皿を出され。何が始まるのだろうとワクワクしながら見ていれば、シェフが取り出したのは二枚の貝。中は空洞で、貝の代わりにスープが中に入っており。魚介のスープ、見たところブイヤベースといった所だろうか。深めの貝に入ったスープが鉄板上でぐつぐつと煮立っていくのを見ていればちょうど良いところで貝を取り、それ専用のガラスに固定したスープをスプーンと共に出されれば思わずごくりと舌がなり。普通に飲むもよし、パンを漬けるもよしといったところなのだろう。両手を合わせて挨拶すればまずは一口口をつけてみて)
頂きます…凄い、美味そう…。ん、海鮮の風味が凄い…海老とか貝とか、色々凝縮されてる感じがする。
(フランスパンに似たパンが乗っけられたお皿を眺めていれば、今度は二枚の貝が取り出されていき。その中身に貝の身は無く、スープのようなものが入っていて。お洒落で面白い調理方法だなぁと思いながらじっくりと煮込まれていくそれを見ていき。ちょうどいい具合で特殊な容器に入れられたそれらを渡されて、これはパンに浸すソースみたいなものかと思いつつ一枚取れば軽く付けて食べていき)
いただきます。
わっ、美味しい。魚介のダシが効いてるね。このパンに合うなぁ。
(スープとして飲んだり、浸したりして食べていればすぐにブイヤベースは無くなってしまい、再び派手な音のする鉄板の方を見やると今度は伊勢海老がまるごと焼かれており。思わず感嘆の息を漏らしてそれを眺めていれば、良い色に焼けたそれを二匹、一匹ずつ皿にのせ、中央に殻に切れやすい様に切れ込みを入れれば隣で熱されていた熱々のソースが上から掛けられ。二枚の皿がそれぞれの前に置かれると同時に置かれたフォークとナイフを手に取り殻を抜くように剥くと剥き出しになった海老を見てごくりと喉を鳴らしてナイフで一口大に切ると熱い内にソースを絡めて口に運び)
…!んん…、美味い…、肉厚…。海老だと思ってちょっと舐めてたけど、これは…甘味があってソースとの相性も抜群で凄く美味い…!!
(あっという間に無くなったブイヤベースを端の方へと片付けていれば、豪快な音と共に鉄板で何かが焼かれていたのでそちらに視線を向け。見た目も立派な伊勢海老が焼かれていたので、先程の狼君の“期待しても良いぜ”といった言葉は確かに間違いではなさそうだと一人でに深く頷けば、オリジナルのソースを掛けられた伊勢海老の鉄板焼きが目の前に置かれたので、フォークとナイフを手に取っていき。上手くその食器を使って伊勢海老を切れば口に運んでいって)
ん、食感が良いね。あと噛めば噛むほど海老の特有の甘味が出て来て少し濃いめのソースとの相性も合ってる。
ほんと。すっげぇな…
(自分で期待しておけと言った割に此処までの物が出てくるとは自分も思っておらず目を丸くしており。余りの美味しさに料理を食べる手を早めていけば直ぐにまたも皿は空になり。”お兄さん達、良い食べっぷりだね”と鉄板のむこうのシェフに笑われて漸く恥ずかしさを感じたものの、シェフは寧ろ気を良くしてくれたらしく、”次は少し大きめの物を出してやるよ、特別だ”と豪快に笑って冷蔵庫の中から霜降りの載った綺麗なステーキ肉を二枚取り出して。これには思わず瞳を輝かせて食い入る様に見つめていれば”お、肉好きかい?うちの肉はA5ランクの松阪牛を使ってるからね。美味いぞ~”と予め言われて思わず生唾を飲みその肉が鉄板上で焼かれているのを見ると興奮したように朧の腕をとんとんと叩いて)
おいっ、朧っ、凄いぞ…、あれは絶対美味ぇ……!!
松阪牛…!そうだね、絶対美味しいって既に約束されているようなものだよ…!
(気前のいいシェフに感謝しつつ松阪牛と言うブランドものの霜降り牛肉を見遣れば、期待値は高まっていて柄にもなく目を輝かせていき。ジュージューと美味しそうな音を鉄板の上で立てている厚切りのステーキ肉から視線が逸らせず。そして、同時にモヤシなどの野菜もそこから出た肉汁と一緒に絡められて焼かれていって。思わず、お腹の音が鳴ってしまいそうなほどの良い匂いに更に食欲がそそられていき。皿に一枚ずつ載せられたステーキと添えられた野菜炒めを受け取れば、フォークとナイフを持って分厚い肉を切っていき。それだけで肉汁が溢れ出しており、零さないように上手く口へと運んでいけばあまりの美味しさに言葉を失いかけ)
〜〜! 美味しいっ!さすが松阪牛!牛肉なのに蕩けるようなほど肉が柔らかい…!
("お兄さんたち本当に愉快だな"とシェフが相変わらず豪快に笑いながら目の前に置いたステーキを見て瞳を輝かせると早速ナイフを入れて一口大に切ったそれをまずはそのまま口に運び。溢れる肉汁と柔らかさ、肉本来の旨みに言葉も出ず、頬を押さえて幸せそうな表情で数秒間固まっており。それから咀嚼を再開し一度飲み干すと隣で感動している相手に声を掛け)
う…美味い…待って、美味い…
(今日ばかりは一生懸命美味しさを言葉にするぞと息巻いていたはずだったのだが、ここまで美味しいものを前にすると再びいつものあの”美味い”しか言えない病を発動してしまい。しかし今はそんな事はもうどうでもよく、ステーキを野菜と共に口に運んだり、岩塩をパラパラと少し振って味に変化をつけたりして食べていくと、大分お腹が膨らんできて。それを見たシェフは次に何やらフランスパンに卵をつけたフレンチトーストの様なものを取り出してそれを鉄板の上で焼きながらキャラメルをその上からかけて程よく焦がし、さらにその熱々のフレンチトーストをさらに移動すると上から冷たいバニラアイスを載せ自分達の席の前にトンと置いて)
(/今晩は、お楽しみ頂けているでしょうか…!?明日(今日)の事についてなのですが用事があり一日あけてしまうことになるかと思います…!夜は顔を出しますのでお待ちいただければと!予めご報告させて頂きます!それでは!/蹴可)
…ほんと同意、美味しい…いや、本当に何でこんなに美味しく出来るんだろう。
(狼君と共に言葉を失いつつも食べていく手は止まらずにステーキを切っては口に運んで舌鼓を打っていき。この有り余る幸福感はどこにやれば良いのかと、思っていきながらペロリとメイン料理を完食をしてしまえばお冷で喉を潤していって。すると次はデザートなのか、フランスパンのフレンチトーストの上にバニラアイスが乗せられたお洒落かつ美味しそうなデザートが出て来て。新たに置かれたスプーンを使って、まずはバニラアイスを掬って食べていき。次は下のフレンチトーストと一緒に食べてみれば、熱いのに冷たい感触が混ざり合って不思議な感覚がしたが。少し苦いキャラメルとバニラアイスの相性は抜群で頰を緩めていき)
はぁ、美味しい…。至福の時だよ…!
…良かった。
(出されたフレンチトーストをスプーンで小さく切ってキャラメルとバニラアイスを存分に絡めるとそれを口に運び。卵のよく染み込んだフレンチトースト自体は甘さ控えめで、周りをコーティングする少し苦めのキャラメルとバニラアイスの甘さがまた絶妙だ。フレンチトーストの熱で僅かに溶けたバニラアイスは濃厚でクリームを掛けている様だ。至福のひとときに浸っていると隣の相手もまた幸せそうな表情をしていたので予約した甲斐があったと頬を緩ませ。あと6時間もせず相手は二十歳になる訳で、その大事な日を一緒に祝えるのだから自分もまた幸せである。デザートの最後の一口をゆっくりと味わってからお冷を口に運びながらふと笑って相手に問いかけて)
一生の思い出になりそうか?
勿論っ。
(そのままスプーンを進めていって、デザートとあってか、すぐに完食してしまえばお皿を下げていき。お冷を飲んでゆっくりとしていると、その相手の言葉にこくこくと頷いていって。そもそも彼が自分の誕生日を祝ってくれるだけでも嬉しいのに、更にこのように美味しいものまで食べさせて貰えるなんて贅沢の限りを尽くしており。これで我儘を言っても良いだなんて言うのだから、既に幸福過ぎて思い付かないよなぁと思っていき。飲み干したコップを置いていって)
ごちそうさまでした。美味しかったよ。
それなら俺も嬉しい。
(相手の幸せそうな表情を見るだけで自分の心の中も満たされていくようで。この前の様に敵対組織にいる以上どれだけ愛していたとしても戦わなければならないことはあるが、それでも今この時ばかりはそんな事も全て忘れて互いに互いの体温を預け合って落ち着くことが出来るような関係でありたいと願っており。お冷を一口飲むと会計を済ませるために相手に先に店から出て貰い、手早く会計をすませると直ぐに自分も後を追って店を出ると微笑み)
次はこのまま下の階にあるバーに行くか。
ダーツとかもあるし、少し娯楽も楽しめるかもな。
(何だか悪いなぁと思いつつも、相手にお会計を任せて自身は先に外に出て待っており。ふと、お腹も満たされているが心も満たされていると小さく笑みを浮かべては、7月の狼君の誕生日には自身も相手に幸せだと感じて貰えるようなサプライズをしようと考えつつ、店を出て来た彼と合流をし)
ん、そうだね。バーに行こうか。実はさっき気になっていたんだ。
(そして相手のバーと言う提案に頷けば、ダイニングレストランから一つ階を降りた場所にある先程のお洒落なバーに辿り着き。カウンター席が空いていたのでそこに座れば、メニューを見ていき。酔わないように気を付けようと思いながらも、カクテルの王様と称されているソレに興味が惹かれてしまい)
僕はマティーニにしようかな。狼君は何にする?
…しょ、正気か?
マティーニって言ったら確かアルコール度数は40度近いとか何とか…
いや、止めねえけどさ、悪酔いするなよ?
俺はソルティ・ドッグにしとく。
(相手と共に訪れたバーでカウンター席に座り相手と共にメニューを捲っていれば相手の口から出てきたその名前に思わず目を丸くし。カクテルの王様とも呼ばれるマティーニは群を抜いてアルコール度数が高いことでも有名だ。相手の誕生日故余り口出ししたくはないが此処で酔われて明日まで引き摺られたら流石に困る。まさか相手は酒豪と呼ばれる類の人種なのだろうか。確かに酔っている所は見たことがなかったが、其処まで飲んでいるところも見たことはなく。訝しげに相手を見ながら自分はアルコール度数の弱目の物をチョイスしてバーテンダーに注文して)
(/お待たせ致しました…!若干まだ不定期ですが更新戻す方向です…!/蹴可)
いやー、なんかもう少しで正式に大人の仲間入りになるって考えたらマティーニに挑戦してみたくなって。
悪酔?しないしないっ、沢山飲むわけじゃないしね。ああ、でも何か君に粗相をしそうになったらブン殴ってくれて構わないよ。
(そう冗談半分で笑いつつ若干不吉なことを言って、こちらもバーテンダーにマティーニを注文をしていき。前に初めて二日酔いになった時は強い度数のお酒を何杯も飲み過ぎたのが原因だったので、今回は反省も込めてマティーニは一杯だけにしておこうと決めており。生憎と、お酒には強い方なのでマティーニでも一杯ぐらいなら記憶が無くなるほど酔うまでには至らないだろう。つまりは冗談を抜きにすれば、粗相もしないと断言できるわけで。目の前で華麗な手捌きで作られていくソルティ・ドックとマティーニを見ながら、そう言えば裏社会から足を洗う時にバーテンダーのバイトをする予定だったなぁと、そんな二ヶ月前に起きたあの出来事を唐突に思い出していれば、頼んだ飲み物が完成したのか、それぞれのカクテルグラスが目の前に置かれていき)
そりゃ遠慮なくぶん殴るけどさ。
お前が嫌だろ、折角の誕生日に記憶が無くなるなんて。
まあお前が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろうけど。
(人畜無害そうな表情をして割とさらりと相手の冗談に真剣に返すと目の前のバーテンダーの華麗な手捌きを見てほうと小さく溜息を零し。さすが本職、見事な腕でカクテルを作り上げいく姿はそれ自体が芸術的だ。目の前に置かれた自分のカクテルグラスには彩り良くミントが乗せられており、香りも爽やかで。グレープフルーツジュースが入っている為か爽やかな柑橘系の香りも混ざっており、まずはその香りを一通り楽しんでからカクテルグラスを持ち上げてマティーニの入った相手のグラスを眺めながらそっとそれを近づけて)
さてと、じゃあ乾杯と行くか。
はいっ、乾杯。
(カクテルグラスを持ち上げれば、そっと相手のそれに近付けて音が鳴らない程度の優しさで軽く当てていき。マティーニは、ドライ・ジンにドライ・ベルモットを加えてオリーブの実を添えただけののシンプルなカクテルだが、それだからこそバーテンダーの力量が問われるものだと言われている。香りはオレンジピールで和らげられていたものの、どこか薬っぽさがある癖の強いカクテルで。そのまま一口飲んでみれば、辛口でアルコールの強いまさに王様と言った味わい深いものであり、誤魔化しが効かないものとなっている。舌先にピリピリとする感覚があったものの、自身は辛口のカクテルが好みだったので美味しく感じられ)
へぇ、初めて飲んだけど美味しい。オレンジピールも辛口のマティーニと合ってて味わいもスッキリしてる。
…ほう、俺だったらまず一口で酔うな。
頭がまず痛くなるだろうし。
(相手がそのカクテルを飲むのが気になり、思わず自分のグラスを持ったまま相手が一口飲むのを見ていると、直ぐに相手が美味しそうな表情をするのを見て本物の酒豪だと実感し。そんな度数の高い酒を自分が飲んだ暁には一口で翌日まで引っ張りそうだ。改めて自分のグラスと向き合い一口飲むと、香りから想像していたように清涼感のあるそれは、ミントのすうっとした独特の香りとグレープフルーツの柑橘系の香りが織り成す爽やかで後味がさっぱりとしたカクテルで。余り度数も強くなく、自分にも飲みやすく、少しずつ少しずつグラスに注がれた酒を飲んでいき)
こっちも中々美味しいし、これくらいの酒だったら俺でも行けるかも。凄い爽やかですっきりしたカクテルだな。
それなら良かった。狼君の方が悪酔いしちゃったらそれもそれで大変だしね。
(美味しそうにソルティ・ドックを飲む相手を見ては、ふっと笑みを零して微笑ましげに見つつも軽口を言っていき。そのままマティーニをゆっくりと飲んでいけば、最後に残ったオリーブの実を食べていって。マティーニを飲み終わったが、意識も明瞭だし頭もスッキリしている。やはりただの杞憂だったかと思って、バーに設置されていたダーツコーナーを見遣り)
ね、狼君。飲み終わったらダーツをしてみない?
し、失礼だな…流石にこれくらいの度数なら大丈夫だ。
(むっとした表情で相手の軽口に返すと、このやり取りは何だか久しぶりにした気がして思わず自分も笑ってしまい。最後の一口を飲み干し相手の方を見遣れば相手もいつの間にかマティーニを飲み干しており、しかし酔っている様子もなく流石に強いなとある種感嘆して。不意に相手が視線を遣ったダーツの方へと自分も視線を遣ると、ダーツとは中々洒落込んでいると思いながらも立ち上がり其方へと移動して悪事を思いついた幼子のように口角を上げニィと笑い)
良いぜ。何だったら俺と勝負するか?
勝負?良いけど、何だか負ける気がしないなぁ。
(普段からナイフ投げをしている為、こう言った投げると言う動作は自分にとっては大得意で慣れ親しんだものであり。ニッとした笑みを浮かべればやや挑発気味にそう言って。設置されていたダーツの矢を取っていけば、相手にも手渡していき。しかしながらダーツのルールはよく分からない為、まあ同じ回数分を交互に投げて点数を競えば良いかと思いながら彼に向き直り)
それじゃあ、最初はどっちから投げる?
はっ、まあ見てろって。直ぐにそんな事言えなくさせてやるから。
じゃあ俺が投げるぞ。
(勝負ともなれば瞳を輝かせ相手を見、こういう時ばかりは誕生日の相手に花を持たせるという発想も消え爛々と目を輝かせてダーツを持ち。狙うのならば得意だ。問題は狙い通りに投げられるかであるが。相手からダーツの矢を受け取り、五本のそれを見てまずは自分が試しに投げてみようとダーツのボードの真正面に立つとすっと矢を構え狙いを中央に定めて大きく腕を振って投げればものすごいスピードで飛んだは良いものの腕の力が伝わりすぎて真ん中から大きく外れており)
…あちゃー…14、か。
あっ、じゃあこれってチャンス?
(何だかガックリしているような相手を見ては、少し意地の悪い笑みを零していき。勝負事は嫌いではなくむしろ好きな方なので、ダーツの矢を一本取って手中でくるりと回せば所定の位置につき。腕を水平に保ったまま狙いを真ん中に定めて投げていくが、当然ナイフとは勝手が違う為少し上の方に外れてしまい狙った真ん中には当たらず)
んー…25点、シングルブルか。
は…お前しょっぱなからそんな真ん中かよ……チッ…
(相手の投げたダーツは軌道が若干ずれたとは言え真ん中へ目掛けてキレイに飛んでおり、目を丸くしてそれを眺め。しかし負けてもいられず再びスローイングラインに着くと今度はしっかりと何度も何度も中央を確認し。投げたダーツはしかし、指がまた触れてしまい大きく変な方向へと外れていき溜息をつきながら確認すれば、しかし見事にダブルの位置に刺さっており、これには思わず喜んで)
20のダブル、40か。大分外れたけど結果オーライだな。
いや、あれでも結構ズレた。実戦だったら死んでたなぁ。
(そう何だか職業病みたいなことを言えば、お遊びなのに真剣に考えていて。投げるタイミングが悪かったのだろうかと、次はやや早めに腕を動かそうと思っていればどうやら狼君が40点と言う高得点を取ったようで。これは負けてはいられないと益々火が付けば、再び定位置につき。何回かダーツの的を見定めていって投げていき)
……うわ、力み過ぎた。えーと、8のトリプルで24点。意外とコントロールが難しい。
実戦って…職業病だな。
…うおお…トリプル…
(苦笑を漏らしながらダーツボードを見やり、相手のダーツの飛んだ先を見ればトリプルの部分に刺さっていたのでヒヤリとして。刺さっていたのが8のところだったので良かったもののもっと高得点のところであれば取り返しのつかないことになっていたのは確実で。気を引き締めてボードの前に立つと再び真ん中を狙い矢を投げ)
…あ、またちょっとずれた。
でもさっきよりはマシか…点数は悪いけど…12、か。
えーと、今の狼君の持ち点は14、40、12の66か。振り幅が大きいね。
(しかしそれは裏を返せば最後の最後で逆転されてしまう可能性があると言うことで、気が抜けないと思いつつ自身の持ち点を改めて数えてみて。今は49なのでここでは17以上取れば良いかと考えながらもやはり狙いは真ん中で。今度は優しめに投げていき)
…うっ、またシングルブル。25点。
残りのダーツの矢は互いに2本か…。
…器用だな、お前。
(相手がまたシングルブルにダーツの矢を当てたのを見て思わずそう呟くと、残り二本まで減ったダーツの矢を握り締め、再びラインに立ち。相手の得点は25,24,25で74。安定して高スコアを取ってきている。ここは自分も少なくとも25点を越して相手を追いかけたい所である。静かに息を吐くとゆっくりと狙いを定め。落ち着け。銃口を構える様に、照準を定め。指のフォローは少なめで、力は丁度良く。そんな意識を持ちながら放たれた矢は綺麗にダブルブルに命中し)
…ダブルブル、50で116。
ダブルブル…!?本当に振り幅が大きいね…!
(皮肉や軽口を抜きに驚いてそう言っていき。今のところの点数は74と116なので、ここで50点か40点を取って差を縮めたいものの狼君が投げた姿勢から察するに、自身は少し集中力が切れている。お酒のせいにするわけではないが、自分でも知らない内に頭の回転率が悪くなっているのか?と首を捻りつつも、言い訳などカッコ悪いのでとにかく集中と言った感じに頭を切り替え。そして、一つ大きく息をついて、ゆっくりと狙いを定めればなるべくブレないように投げていくが)
…13のダブルで26。マズイな、投げる度にどんどん外側になってく。
ダブル…大分外にずれたな。
(相手の放った矢は最初の正確さを失い、軸がブレて外側へと飛んでいき。ギリギリダブルに留まったものの下手をすれば枠の外に出ていたかもしれないような危うさを感じる投げ方に相手の集中力が切れかかっているのを感じ。これで相手の得点は100。自分がもう一本大きな点数をたたき出す事が出来れば相手は一気に逆転が難しくなるはずで、ゆっくりとラインに立つと今度はダブルブルでは無く20のトリプル、すなわち60を狙い矢を放ち)
…あ、くそ…っ、10のトリプルかよ…146、か…。
いやいや、30取れてるだけでも凄いって。えーと、狼君に勝つには46以上取らないといけないのかー。
(今まで取ってきた数値が20の半ばなので、また最後もその辺りの数値になりそうだと思いつつ一本だけになったダーツを握り締め。ダブルブルは何だか当たる気がしないので、そこを狙うのは止めていき。かと言って、トリプルを狙うのも骨が折れそうだと考えながら狙いを定めていって。集中集中と思いつつ、ダーツを投げて行って)
あっ、トリプルだけど13…。んー、18のトリプル狙ったんだけど外れたかぁ。
ということは、39…計139、7点差で俺の勝ちだな。
(相手の放ったダーツをごくりと息を飲みながら見ていたが、当たったのは13のトリプル、その瞬間自分の勝ちは確定して。たかがダーツ勝負と雖も若干嬉しくて少しばかり優越に浸るように得意げな表情を見せ、ダーツの矢を全て引き抜いて返却すると、存外に22時頃になってしまっていたのでそろそろ外のデッキから夜景を見れば綺麗になった頃だろうと考えると料金を支払って相手を連れ立って再び甲板へと向かい)
な、もう一回デッキに行こうぜ。きっと今なら夜景も綺麗だよ。
…わー、本当に実戦だったらあの世行きだったよ。次は150取れるように頑張ろ。
(大見得切った割にはあまり高い点が取れなかったので苦笑を零しつつ、そんなことを言ってはお金を支払ってくれた相手に礼を言いながらダーツの矢を返していき。熱中していた為か、気が付いたら午後10時ぐらいになっていたようで、再びデッキへと誘う彼に頷いて)
そうだね、星が綺麗そうだ。見に行こうか。
(そう言って先程の甲板へと到着し、頭上で輝く満天の星空に感嘆の息をついて冬の大三角形を見上げていき)
まあ、お前の場合ナイフ使いだから、逆に感覚が狂って調整が効かなかったのかもな。
(変に投げる感覚が身についているより寧ろなんの柵も無く投げられたと中々満足しており。デッキに上がると外は少しだけ冷えていたが凍えるほどではなく、寧ろ夜風が涼しく快適で。星空は美しく、はるか向こうに見える大都会のイルミネーションはキラキラと輝いていて美しく、目を細めてそれを見れば人気の少ない端のほうへと歩いて行きそっと息を零し)
…ほんと、綺麗だな。やっぱり夜は昼とはまた雰囲気が違うな。
ね、全然違うや。あっ、カシオペア。
(そう北天に見えるより一層輝いた星座を指差していき。ここは人気のない場所とあってか、昼間よりも周りの目を気にせずに済み。しかも夜なので雰囲気が出ていて、春に近いこの夜も悪くないと考えてはそっと相手との距離を詰めて星を眺めていき)
流れ星とか見えたら良いね。
さすがにな〜…どうかな。
(相手の指差す方向にあるカシオペアを眺めて感嘆の息を漏らすと夜空を見上げ。相手が距離を詰めてきたことに気付き、思わず鼓動が高鳴ってしまった為落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながら流れ星が見えたらという相手の言葉に笑って。流れ星が見れたら本当に幸運だと思いながらも相手の成人の誕生日だ、満天の空を見渡してじっとくまなく探したもののやはりどこの星も綺麗に輝くばかりで流れる気配はなく)
…うーん、やっぱり無理かな…。
そう簡単に拝めるものじゃないか、残念。
(キラキラと輝く満天の星空を見ているものの、確かに相手の言葉通り流れ星が出てくる気配はなく無理そうで。狼君の側にずっと一緒にいられますようにと、願い事を掛けたかったのだが、まあまた別の機会にしようと考え直してはすぐ隣にいる彼に視線を遣り。星空に照らされているその横顔を見ては、やっぱり可愛いよなぁと惚けたことを思いつつ再び周りに人がいないことを確認して。向こう側の肩を優しくこちらの方に引き寄せて、身を寄せ合っていき)
…最初の我儘。少しこうしていても良い?
もう少し眺めてればもしかしたら…
(どうにかして相手に流れ星を見せてあげたいと思うもののこればかりは自分の計らいで何とかなるような事ではなく。流れろ流れろと必死に念じながら夜空を眺めていると不意に相手の方へと肩を引き寄せられ。驚いて目を瞠り其方を見ると視線が合ってしまい慌てて其れを逸らすと高鳴ってしまった鼓動が相手に聞こえてしまいそうで更に緊張してしまい)
い、良いけど…なんかこそばゆいな…
ははっ、そんなに力まなくても大丈夫だって。
(相手の体を寄せて密着していれば、何だか緊張気味な声と体に軽快に笑ってぽんぽんと軽く肩を叩いていき。とは言え、外だし落ち着かないかと思い直しつつも、恋人の体温が名残惜しいので離す気はあらず。逸らされてしまった視線は照れ隠しなのだろうと笑みを零しては、どこか浮世離れした満天の星空を眺めていって。そんなロマンチックな中にいるからか、いつも以上にオブラートに包んでいない惚気た言葉を呟いていき)
…やっぱり狼君の隣は居心地が良いよ。君の側にいると安心できる。
ま、マジでやめろ…そろそろ俺が恥ずかしさで死ぬ。
(肩を叩かれても中々落ち着かずソワソワとしながら相手と密着していると、じんわりと衣服越しに相手の体温を感じ。緊張するものの相手の体温を感じていると何処か安堵感が胸の中に広がり、強張った肩の力を抜いて相手に自分も体温を預けて。満天の星空の下、吐かれたのは余りにも甘い惚気の言葉で、その雰囲気だけで悶え死んでしまいそうだと思いながら相手に抗議の声を上げると、代わりと言うようにそっと相手の手に手を伸ばしておずおずと触れてみて)
狼君はうぶだねぇ。
まあ、そこがまた可愛いんだけどさ。
(相手の言葉にくすりとした微笑みを浮かべては、思ったことを素直に口に出していき。こう言うことを言ったらまた照れ隠しされてしまうかと思ったものの、その姿を見るのも好きなのでついつい言葉の愛情表現はストレートになってしまい。幸せしか感じないこの一時に浸っていると、不意に触れられた手に少し驚くが。すぐに意図を察ればゆっくりとその手に自身の指を絡めて手を繋ぎ。この行き場の無い幸福感を胸の内に燻らせつつ、ぎゅっと優しく手を握っていき)
…、何かムカつく…
(相手の言葉は緩まるところを知らず、相変わらずド直球に投げつけられて来る言葉に目元を赤くしてしまい、負け惜しみのようにそう呟き。何か相手に上手い返しの一つ出来れば良いのだろうが、そんな言葉が思い浮かんでくるはずもなくまた恥ずかしさに押し黙ってしまい。それでも押し寄せる波の音のお陰で完全な静寂は何処にもなく、却って居心地の良い沈黙がそこにはあり。自分の意図を読み取った相手が絡ませてきた指に自分もまた指を絡めて行き、きゅっと力を入れてみると直に肌で感じる相手の体温に自分の体温が上がってしまうのを感じつつ顔を隠すようにわざと空を見上げて)
ふふ、…あっ、そうだ。なら、もう一つの我儘。いつも以上に惚気ても良い?
(せっかくだから思う存分使わせて貰おうと、お昼に言われた我儘とやらをここぞとばかりに行使しようとし。普段は立場なら仕事やらで相手とはあまり恋人らしいことが出来ていなかった上に、2週間前ほどのホワイトデー以降は忙しくて会う機会も中々無かった。それと、個人的には甘やかされるより甘やかしたい派なので、せめて言葉だけでもいつも以上にと。そんなことを思ってはほんのりと顔を赤くしている恋人を見て、繋いだ手から伝わる体温と共にこちらも表情を緩めていって)
…、お前、狡い使い方するのな。
(確かに自分は相手に何でも我儘を聞いてやるとは言ったものの、こうも惚気る事を許可することを頼まれると断れるはずもない事で、赤くなった顔を相手と手を繋いでいるのとは逆の手で覆う様にすると小さく溜息を吐き。自分の心臓が保つかどうかというのが非常に心配な所ではあったが、やはり相手に素直な言葉を伝えてもらうというのは嬉しいことであるのには変わり無く、ゆったりとした時間に身を委ねながら星空を眺めていれば不意に星がキラリと流れたのが見えて)
…!朧!流れ星だ!
えー、良い使い方だと思うけど。
(にこにことしたままそう言っていき。反対をされたわけではないので、つまりは惚気ても良いと言うことだろうと笑みを浮かべていって。手を繋いだままゆっくりと流れる時間の中に身を寄せていれば、不意に流れ星と言われたので慌ててバッと顔を上げると満天の星空に尾を引いて流れる星が見え)
わっ!本当だ、流れ星!
(まさか見れるとは思えなかったので驚いていたが、ハッとして願い事願い事と思いつつ、先程の願いを心の中で反芻していって)
(隣の相手もまた流れ星を見て目を輝かせているのを見て、こうして見ていると相手は到底敵組織の幹部には見えず、幼い少年のようだと思い。彼の過去は知っているし、幼少期に甘える相手が居なかったことも、その為にあんなに小さいのに素直に感情を滅多に表さなかった事を思い出せば、今はその分を自分に心を開いてくれているのだろうかと思ったりして。そうだったら嬉しいなと思いながら自分も流れ星にこれからも自分達が健康で寄り添って生きていけるようにと願い繋いだ手にもう一度力を入れた後そっと相手の方を見て)
そろそろ戻ろうか、もう23時だよ。
(願い事をし終えた後に、こちらも繋いでいる手を握り返していき。少し柄にも無くはしゃいでしまったかと思ったものの、それでもやはり相手の前では着飾っていない自身が出せると言うもので。存外子供っぽいこちらを見て幻滅されてしまはないかが心配だったが、けれど狼君ならそんなことは思わないだろうと、一種の直感に似た信頼感を抱いていて。ふと、23時だと今の時刻を教えて貰い相手の言う通りそろそろ戻った方が良いと自身も考え)
そうだね、少し寒くもなって来たし戻ろうか。
(満天の星空を背に二人で甲板を後にして、部屋へと帰っていき。後一時間ほどで誕生日かと思いつつソファーへと座り)
(相手と手を離してしまうのは名残惜しかったが、今日はいつもと違ってもう別れてしまうわけではない。この後も一緒にいるのだし、寧ろこれから一時間後こそが今回の旅行のメインイベントであると考えれば寂しさは感じず。部屋に戻りソファに座った相手を見て、ふと笑って隣に座ると個室ならば周囲の目など気にせず存分に相手に触れていることができると少しだけ距離を詰めて問いかけ)
お前もしてるか?ネックレス。
勿論、いつも付けているよ。狼君も?
(ソファーのすぐ隣に座ってくれた相手に表情を緩めつつ、首元のシャツのボタンを一つ取れば、誕生日石であるアクアマリンが嵌め込まれたペアネックレスを手の平に取り出して見せていき。もはやこれは宝物でありお守りみたいに大切な物であるので、常に身に付けていて。特に素材が良いため錆びる心配も無く、お風呂でも付けていられるのが有り難い。これが外されるのは自身が死んだ時ぐらいだろうと、そんな重いことを考えつつ相手にも尋ねてみて)
勿論。俺もずっと付けてる。
(相手と同様にして胸元からネックレスを手のひらに取り出すと、久々にルビーとアクアマリンが隣に並ぶのを見てふと表情を緩め。対局に近い色ではあるが良い具合の調和するその色と色を眺めてふと笑みを浮かべると、相手が肌身離さずつけていてくれたという事実が嬉しくて。きっと相手ならつけていてくれているだろうとは思っていたが、やはり実際に相手の胸元にそれが付けられているのを見るのは特別な心持ちのするもので)
これしてると、お前と一緒に居ない時でもお前が傍に居るような感じがするしな。
ん、そうだね。それに、ネックレスを付けていると狼君と会えない日でも寂しさが紛れるよ。……いや、やっぱり会えるのが一番だけどね。
(そうくすりと笑みを零しては、アクアマリンのネックレスをしまってシャツのボタンを付け直していき。しかしながら、相手のルビーの眩むような赤は自身の青いアクアマリンとは本当に対照的で。けれどそれが混ざれば紫色と言う綺麗な新しい色に変化するのだから、まるで自分達の関係のようだと思っていき。何だか嬉しくなってしまったので、おもむろに目の前にいる狼君の頭を撫でていき)
まあ、そりゃな…って、おい、何してんだよ。
(会えなくても寂しさが紛れるとは言え、やはり会うに越したことは無いというのは同感で、頷いていれば不意に相手の手が自分の頭へと伸びてきて、久方ぶりに頭を撫でられ。相手の手のひらは大きくて、昔自分の頭を撫でてくれた母の手を思い出してしまい、何となく心地がよくて言葉ほど表情は刺々しいものではなく、されるがままになっていればゆっくりと相手の胴体に腕を回し体を密着させて恥ずかしそうに視線を泳がせて)
…今日は、さ。ちょっとだけ甘えさせてくれるか?お前と二人きりで居れる機会なんてそうそう無いから、さ。
ん?狼君を愛でているんだよ。
(さっき許可も出たことだしサラリと惚けたことを言っては、それこそ優しく相手の頭を撫でていって。今日は大人しく撫でさせてくれるなぁと、嬉しげに思っていれば途端に回された手に少し驚いては更に相手から発された言葉にも驚いていき。頭を撫でていた手を止めれば、こちらも彼の背に腕を回して、相手の頭を自身の肩口に寄せるようにして優しく抱き締め)
勿論っ。むしろちょっとと言わずに、存分に甘えてくれて良いのに。狼君って結構遠慮してるような気がするしね。
め、愛で…っ
(流石にその返答は予想外で、頬を紅潮させ口をぱくぱくとさせてしまってから恥ずかしさに顔を逸らし。変な表情を見られてしまったと思っていれば、相手が自分の言葉に了承し、そっと抱きしめてくれたのでおずおずと自分も相手の体を抱きしめてみて。こういう素直な感情表現の仕方は矢張慣れないものではあったが、相手に甘えたいという気持ちは心の奥底にはいつもあり、こうして相手とくっついていたいと言う気持ちも確かにあって、しかしそれを言って退かれたりしないだろうかと思うと今までは中々言い出せなかったわけで。なのでこうして了承して相手が受け入れてくれる事が嬉しくて少し微笑を浮かべ)
…ありがと。…遠慮、っていうか、こういう事、朧が嫌いだったらどうしようって思うと出来なかった、だけ。
(顔を真っ赤にさせる相手を見て、可愛い可愛いと口には出さずに心の中で悶えつつ表面上では至って澄ました面持ちで耐えていき。生殺しと思いながらも、彼の肩にポンと頭を置いてみては顔を埋めてみて。すぐに横にある相手の髪に擽ったさを感じつつも、数十秒ほど経ったら顔を上げていき。不意に彼から言われたことに緩やかに首を振っていって)
いやいや、嫌いなわけがないよ。逆に、もっとしても良いぐらいだしね。勿論、可愛い恋人の狼君以外にされたら嫌だけどさ。僕って君一筋だし。
(そうストレートに言えば、にこにことした上機嫌そうな笑みを浮かべていき)
(不意に肩口に寄せられた相手の頭に少し驚くものの、ゆっくりと相手の背中を優しく撫でて。綺麗なブロンドの髪だなと改めてじっくりと見る相手の髪に、自分の特別さもない髪と比較してしまって少し虚しい気分になりながらも、相手の全てが愛おしく感じ。再び擡げられた頭がゆっくりと横に振られ、自分の懸念を否定してくれたので、此方もまた表情を緩めて嬉しさを素直に表現し、チラリと時計を見れば日付を越えるまであと十分ほどであったので名残惜しい気持ちはあったが相手からゆっくりと離れて席を立ち)
…それなら、良かった。俺だってお前一筋だよ、当たり前だろ。
…何かまた珈琲淹れてやるよ。何が良い?俺は…そうだな、カフェオレ。
改めて狼君の口から聞くと嬉しく感じるよ。(相手と好き合っていることは百も承知なのだが、やはりこうして言葉にすることで再び実感することが出来て。それに対して緩やかな笑みを浮かべていき。不意に離れた相手をまだ抱き締めていたかったものの、時計を見たら時間が時間だったので察していき。どうやらまたコーヒーを淹れてくれるらしい彼を眺めては、せっかくだし狼君がよく飲んでいるカプチーノが気になっていたのでそれをチョイスし)
じゃあ、カプチーノでお願い。
(/背後失礼します! 明日の恒例のあれですが、文中に狼君の名前をちゃんと出したいなーと思いましたのでこちらのトピに書かせて頂きますね!/蹴り可)
ん、わかった。
(カプチーノのリフィルを手に取るとコーヒーメーカーにセットしてカプチーノを淹れてやり。相手がカプチーノを選んだのは自分がいつも飲んでいるからだなと直ぐにわかり何だか気恥ずかしいような嬉しいような妙な気分で。自分の分のカフェオレも淹れて、今回は敢えて砂糖をつけずに運んでいくと相手の前にカプチーノをトンと置き、自分の座っていたところの前にカフェオレを置き。丁度一分前になっていた時計を見て、予め冷蔵庫に入れておいた箱を取り出すと、箱の中から予め包んでおいた皿とフォークを取り出し相手の前に並べてからそっと箱を開けて。崩れていないか心配だったが、昨日の夜焼いて一から自分で作った小さなホールケーキは、昨日作った時と同じく、白い生クリームで周りを綺麗にコーティングしてあり、上は苺やブルーベリーで鮮やかに彩られており。中央には買ってきたチョコの痛にチョコペンでHAPPY BIRTH DAYと書かれており。どれ一つとして崩れていないことに安堵して相手にそれを見せて笑いかけて、ふと時計を見れば丁度秒針が日付を跨ぐところで)
…これ、作ってきたんだ。お前のバースデーケーキ。
ケーキなんて作るの初めてだったから上手く行ってるかわかんねぇけど…
お誕生日おめでとう、それから成人、おめでとう。
愛してるよ、朧。これからも一緒に居させてください。
_手作りのバースデーケーキ? 僕に? ありがとう…、ありがとう狼君。こう言うの、本当に初めてだから…凄く、嬉しいよ…。
(目の前に置かれたホールケーキにはHAPPY BIRTH DAYと書かれていて、既にこの半日のクルーズ船での旅だけでも嬉しかったのにこんなにも気持ちのこもったプレゼントを貰ってしまえば、感極まって泣いてしまいそうで。何だか自分はこの世界に生まれて来て良かったんだと認められているような、大袈裟に言えばそんな感覚すら覚えてしまうほどで。思えばこれが初めてのバースデーケーキだと考えつつ、ある意味でその最初の記念すべき物が愛おしい狼君が手作りしてくれた物なので、自分は本当に幸運だと思いながら柔らかい笑みを浮かべていって。相手から貰ってばかりの幸せをしっかりと零さないように受け止めつつも、有り余る幸福感に溺れてしまいそうだと満たされた心で思っては、ゆっくりと口を開いていき)
…僕も狼君のことを愛しているよ。こちらこそ、いつまでも君の側に居させて下さい。
(相手の声は少しだけ震えていて、声からも相手がどれだけ嬉しかったかがわかり、自分も嬉しくなって。買っていった方が間違い無く失敗は無いと何度も思い悩んだものの手作りをしたのは、自分が作った料理を美味しそうに食べてくれる相手の表情が見たかったからで。此処まで漕ぎ着けるのに大分失敗してしまって、練習をしていた日も含めればかなりの日数を要してしまったが、最終的に形になったケーキはまずまずの出来で。予め切り分けていたそれをフォークでゆっくりと半分半分に分けて、半分を相手の皿に乗せると、もう半分は自分の皿に置いて。上に乗っけていたチョコレートの板は勿論相手のケーキの上に乗せて、相手の言葉に既に抱きつきたい気分になっているのを堪えて微笑を返し)
喜んでもらえて本当に良かった。
…朧の大事な日をこうやって一緒に過ごせて本当に幸せだ。
今日は付き合ってくれて有難うな、こんな大事な日を俺と過ごす事を選んでくれて有難う。
…さ、遠慮なく食べてくれ!
(乗せられた半分のバースデーケーキには、先程のHAPPY BIRTH DAYと書かれたチョコレートの板が飾られていて。お店に並べられているケーキよりも、魅力的な狼君の手作りのバースデーケーキに自身がフォークを入れてしまうのは勿体無い気もしたが、せっかく作ってくれたそれを傷めてしまう方が失礼なので、食べる前にしっかりと目に焼き付けておくことにし。一通り鑑賞して携帯機器で写真を取れば、いよいよフォークを手に取り。そして、先程淹れて貰ったカプチーノを皿に寄せつつ笑みを浮かべて)
僕の方こそ、狼君と一緒に誕生日を過ごせて幸せだよ。上手く言葉に出来ないけど…生きていて良かった。それで、狼君と出会えて良かった。
うん、バースデーケーキをありがとう。さっそく頂きますっ。
(胸の前で手を合わせては、目の前にある綺麗なケーキにフォークを入れていき一口食べ。生クリームは程良い甘みでしつこく無く、下にあるふわふわとしたスポンジの甘さを打ち消しておらず、むしろ調和していて。乗っけられているイチゴやブルーベリーの果物も、その甘酸っぱさが生クリームの滑らかさと相性が良くスッキリとした味わいに仕上がっている。つまりはとんでもなく美味しいと言うことで、カプチーノで味がボヤけないように気を付けつつフォークを進めていって。何だか色々と感想を言いたかったのだが、感動し過ぎて言葉が短くなってしまい)
……凄く、美味しい…。
(それでも目を輝かせながら止まることの無いフォークを進めていき)
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宛先:狼君
件名:祝3ヶ月!!
本文:
今日で狼君と出会ってから3ヶ月目だね。1年の4分の1を君と共に過ごせたかと思うと、何だか感慨深いものを感じるよ。
思えば最初の狼君はツンケンしていて、まるで名前と同じく一匹オオカミのようだったね。まあ、僕と君が敵同士だったこともあるけどさ。その時もその時で弄り甲斐があって楽しかったけど、今は何と言うか可愛さが増したと言うか__うん。
……狼君に対する僕の見る目が変わったからかな?とにかく、君が拗ねていても怒っていても妬いてくれていても何をしても可愛いんだから、毎回僕は表情が緩みっぱなしだよ。
いや、本当だよ?いつもこっちは余裕ぶって涼しい顔をしているけどね、実際は理性を保つのに必死なんだからさ。それもこれも、狼君が可愛いのと狼君が無自覚に誘って来るのが一番の要因で…。まあ、君のことを大事にしたいから無節操なことは絶っっっ対にしないよ。神に誓っても良い。だからそこは安心していてね。むしろ、狼君のことが大切過ぎて大事にしたいからその…フレンチキスとかも出来ていないぐらいだし。あー、ごめん、やっぱり今の無し。直球な単語にドン引きしてたら本当にごめん…。
そう言えば1カ月の間にまた思い出の品が増えたね。誕生石のついたペアネックレス、大事に片時も離さずに付けているよ。次はその薬ゆ……うん、それはまだまだ先だとは思うけど、いつか君に渡せたら良いな。
でもこの1カ月間は、色々と僕の方が忙しくて中々返信することが出来なくてごめんよ。けど、どんなに忙しくても絶対に居なくなったりしないから。と言うよりも、僕の生活から狼君が居なくなるのなんて想像することすら無理なぐらいに、君のことを四六時中考えている程だしさ。本当にそれぐらい、いやそれ以上狼君のことが大好きで愛してる。
相変わらずこんな彼氏だけどこれからも末長く宜しくね。それじゃあ、またね。誰よりも愛おしくて可愛い僕の大切な彼女さん。( 額に口付け )
(相手が自分の作ったケーキを写真で撮っているのを見るとなんだかこそばゆいような心地になり、そこまでの品ではないのにと少し頬を掻きながら思い。それでも相手が喜んでくれている事は十二分に分かり、それだけで満足で。相手がフォークを手に取り口に運ぶ様子をドキドキとしながら見守っていたが、いつもは饒舌に美味しさを語る朧がたったそれだけしか感想を漏らさなかったので少し心配になったものの、目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、きらきらと輝いた瞳は本当に美味しいと思ってくれている何よりの証拠で。自分も安心して安堵の息を吐くと漸くフォークを手に取って自分の分のケーキを一口口にして。課題だったスポンジのふわふわ感も上手い具合に出せていたし、生クリームの味も悪くない。総じて上出来だと思いながら共にケーキを食べ進めていき、最期はカフェオレで甘くなった口をすっきりと戻して隣の相手を見て)
…はは、美味しそうに食べてくれるんだな。
──────
宛先:朧
件名:Re:祝3ヶ月!!
本文:
先ずは3ヶ月、こんな長い間一緒に居てくれて本当にありがとう、感謝してる。
最初のお前だって、俺の背の小ささばっか弄って来やがって、根性悪い奴!って心の底から思ってたけど、あの時はあの時で楽しかったな…今となってはあんな食ってかかる様な態度を取ってたのが遥か昔の事の様に思えるけどさ。
おいおい、辞めろよ…可愛くねぇから…マジで…
寧ろ俺の方がお前が何か言うたびにドキドキしっぱなしで心臓に悪ぃんだけど?
早死にしたらお前のせいだぞ…?
は、はぁ…?誘ってねぇけど…!?
む、無節操な事って………。……そんなに大事にして貰ってたのか……、否、本当は俺も……そういう事が市たくないわけじゃなくて、……ふ、フレンチ……ッ!?……ひ、退いたりしねぇけど…や、やっぱり恥ずかしいな…。聞いただけで…。
で、でもさ、ほら…その…キスくらいから…なら、良いかな…って………、や、やっぱ何でも無いぞ!!
ホワイトデーにもらった奴だな。…本当に嬉しかったよ、有難う。
後生大事にするよ、ちゃんとずっと片時も離さずつけておく。
これ外すとお前との縁が切れちゃうような気がしてさ…だから、絶対外す事はねぇよ。
ちゃんと此処に誓う。
…く、薬指の指輪って言おうとしなかったか…?き、気のせいか…?
………いつか、待ってるぞ(小声)
いや、全然気にしないでくれ。車の方が大変だったんだろ?本当にお疲れ様。
それでも毎日顔出してくれたよな。有難う、すごく嬉しかった。
俺だって、いつでもお前のことばっかり考えてるよ。最近は全然仕事も手につかなくなっちゃってさ、どうしてくれんだよ(笑)
俺だって、負けないくらいお前の事愛してるよ。
…本当に、あっという間で、充実した三ヶ月だった。
お前に巡り会えたのは本当に奇跡かもしれないな。
…俺の方こそ、こんな可愛げねぇ、彼女…だけど…、これからもずっとずっと傍に居させてくれよ。
誰よりも愛おしくて格好いい俺の大事な彼氏さん。(微笑浮かべ相手の頬に口付け返し)
勿論、と言うよりも本当に美味しかったからね。ごちそうさまでした。
(その言葉に笑みを浮かべたまま頷いていき。やがて食べ終わったので、フォークを皿の上に置けば残りのカプチーノを飲んで一息ついていって、後ろのソファーに寄り掛かり。そう言えばようやく20歳になったんだなぁと思っては、数え年のみではなく正真正銘狼君と同い年になれたのだと感じ。何だかそれだけでこそばゆい気持ちを抱いてくすりと笑みを零しつつ、食べ終わったので食器を下げていき)
(/3カ月ですね…! 朧共々背後もお目出たい気持ちです! それにしても朧が狼君のことを好き過ぎて、いつもに増して惚気てて気持ち悪かったら済みません…! 初期の頃のストイックな感じは何処へやら…。アレでしたら遠慮なくぶん殴って下さいね!(( / あとまさか狼君から最後の言葉を返して貰えるとは思わず、背後は悶え死んで、頬に返された朧は嬉し過ぎて固まってます…! 何だかんだ言って本当にこの2人は愛し合っているのが日々実感出来ているので、良い夫婦になれると思いまs((← 朧が薬指の物を買う姿がいつか書けたらと思います…!蹴可)
そう言って貰えれば作って貰えた甲斐があるよ。
(食後のコーヒーを飲み干して微笑を浮かべると相手も食べ終わったのを見て食器を片付け。流石にキッチンは付いていなかったのでティッシュで簡単に拭き取って再び袋にしまうとスーツケースの中に仕舞い。それから再びソファに座り、先ほどと同じようにゆっくりと隣に座りなおすと相手の胴にゆっくりと手を回し、中々伝えられない気持ちもこの機会に伝えてしまおうと口を開き)
朧、お前に会えて本当に良かった。
お前が俺の人生を変えてくれた…大袈裟なんじゃなくて、本当に。
きっとお前に会わなかったらこんな風に誰かを好きになるとか大切に思うとか言う気持ちは生まれなかったし。
(/蹴可とありましたが、是非私も書かせて頂きたく…!狼共々背後も目出度い気持ちでいっぱいです!そんなそんな、気持ち悪く無いですよ…!寧ろ愛が伝わってきて狼も凄く喜んでいましたよ!狼も朧君の一語一語に身悶えて中々読めずに固まっておりました()、世界で一番幸福なカップルだと親バカですが思っております…!う、うわあああ凄く楽しみです……うっ…()、これからもどうぞ宜しくお願い致します!/蹴可)
(ソファーに座り直していると、距離を詰めてくれてきた相手にこちらも狭く感じない程度に寄って行って。さり気なく彼の肩に手を回して、自身に寄っかかって貰うような形を取っていき。幾分か自分よりも背が低くく小さい体躯に、いつも任務ではこの体で無茶をしていると思うと気が気でないと考えつつも、ぎゅっと肩に添えている手に力を込め。__ふとおもむろに、彼から告げられた言葉を聞いた為に、今はそんな杞憂などは一旦置いていって。普段とはまた違った雰囲気の柔らかい表情を見せていき)
僕も狼君に会えて本当に良かった。
君に会えていなかったらこう言う風に着飾っていない自分を出すことなんて出来なかったし、何よりこの命を賭けてまで守りたいと感じるほどの強い気持ちを抱くことも出来なかった。
狼君のお陰で生きているって実感が出来てるんだ。僕の方こそありがとう。
何回言っても足りない程に愛しているよ。
(言葉も行動も追いつかないぐらいに有り余る相手へのこの気持ちを抱きながら、唐突に肩を掴んでいない方の手の指先で彼の輪郭を軽くなぞっていって手を添えていき)
(不意に肩に手を回されれば自然と相手に凭れ掛かるような形になり、そのまま相手に体温を預けて行って。ふと視線を上げて其方を眺めればその顔に浮かんでいたいつにも増して優しげな表情に思わず此方も頬を緩めて。投げかけられた言葉は自分を喜ばせるには十分で、言葉にはならなかった分の相手の愛情も全てその表情を見れば類推することが出来。相手の誕生日だというのにこんなに自分が嬉しくなっていてどうするのだと思うものの、普段敵対組織に所属して共に居ることが出来ない身としては、誰にも邪魔をされることなく、視線も気にすることなく居ることが出来る今この時は限りなく貴重なものであり、添えられた手を優しく両手で包み込むとふと口元を緩めて)
…ん。朧の気持ちがちゃんと聞けて俺も嬉しい。
俺もお前と会うまでは、いつ死んでもおかしくないと思ってたし、死んだら死んだでその時だろうと思ってた。
でも、お前と会ってからは極端に死が怖くなっちゃってさ。
やっぱりお前と生きてたいからさ。
……狼君。
(その表情と言葉はズルいと、思わず高鳴る胸を抑えては添えていた手の上から重ねられた温もりに、幸福さから目を細めていき。自分と共に生きていたいと言ってくれた言葉はこちらも同じで。復讐を終えたら死んでも良いと空虚な日々を過ごしていたあの頃が、今では嘘のように感じられる。職業柄死と隣合わせなのは仕方のないことだが、それでもこれから先も彼と共に人生を歩んでいけたらと。もっと沢山の掛け替えのない思い出を作っていけたらと。そんなことを胸の内で思っては、じっと相手の瞳を見つめていき。どうにも彼に対するこの愛しさは止まらずにいて。ただやはり大事な人だと言うこともあってか、唇と言うデリケートな部分に勢いのまま口付けをすることは憚られた為に、一度頬に添えていた手を解いてはそっと彼の唇に指を向けて。やや緊張気味に問い掛けていき)
__あのさ、また我儘なんだけど……その、キスをしても良いかな?いつもの額とか頬じゃなくてここに。
(一匹狼で、可愛げがなくて、向こう見ず。そんな有様だった自分は別に人と関わりを避けていたわけではなかったのだが、好んで寄ってくる者もおらず。その現場に納得はしており、寂しいとも思わず過ごしていた自分に人の温もりや優しさを思い出させてくれた、そして向こう見ずで目先の事ばかりしか見ない自分を本気で怒ってくれた事は今でも忘れられず。朧から始まって、龍、虎牙、貂と次第に自分の周りにも人が居てくれるようになって初めて、その有り難みや温もりを知ることが出来。そのきっかけはいつでも相手にあったわけで、思えば思うほど愛しく恋い焦がれる存在に感じて。不意に、解かれた手が伸びてきたのは唇で、思わずぴくりと肩を揺らし。相手と口付けを交わしたいと思った事は一度や二度ではなく、しかしそれを考えてしまうたびに恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだったわけで。だが、それはあくまで幸せ過ぎる為であり、本来嫌であったわけではなく、ゆっくりと瞳を閉じると軽く頷き)
…ん、良い、よ。
(彼から拒絶の意思が無いと見れば、やはり安心してしまうもので。心なしかホッと胸を撫で下ろしては、軽く口元に充てていた指を外していき。一度その指先を相手の輪郭を沿うようにしてすっと下ろして行くと、そのまま優しく顎の下の方に手を添えていって。ふと、彼の閉じられた瞳を見てしまえば、先程から五月蝿い気持ちも益々落ち着かなくなってしまい。たかが口付け程度でと思われてしまうかもしれないが、それ程までに相手のことが愛おしくて大切だからこそ緊張をしてしまうのは仕方がないことで。このような気持ちにさせてくれるのは狼君だけで、逆にこんなにも大切にしたいと思わせてくれるのも彼だけだ。ああ、本当に狼君のことが好きで好きでどうしようもないんだなと。改めて胸の内に秘めている想いを込めては、相手の肩に片手を回したまま添えているもう一つの手で少しだけ顎を上げれば、ゆっくりと唇を重ねていき)
──……。
………ッ……
(瞳を閉じて相手の姿が視界から消えると聴覚がより澄まされいつにも増して鼓動の高鳴りが煩いほど聞こえてきて。相手の指が顎に添えられるのがわかり、ぎゅっと瞑っていた瞳に力が入る。馬鹿みたいに心臓が五月蝿く鳴って破裂してしまいそうだ。どんなに危険を伴った任務でも此処までの緊張を伴った事はない。するならいっそ一思いに早くしてくれ!とまるで死刑囚の様な事まで思い始めた時、相手の指によってわずかに顎が押し上げられるのがわかり。はっと息を呑んだ時、唇に柔らかいものが当たるのを感じ。温かくて、柔らかくて、甘いそれは間違いなく相手の唇で、わかっていたことではあるというのに頭が真っ白になってしまい、カッチカチに体を硬直させ。数秒そのまま固まった後思わず直ぐに離れてしまい、同時に思い出したように顔に熱が集中するのを感じ、耳にまで感じるその熱に忘れていた呼吸を思い出しては大きく息を吐きながら余りの恥ずかしさで相手の肩口に顔を埋めて)
(不意に離れた体に驚きつつも、自身の目に入って来たのはそれこそ顔を真っ赤にさせている狼君で。口付けの余韻もさることながらそのような姿を見てしまえば、思わずこちらまで逆上せてしまう程の熱を感じてしまい。まるで繊細な物を扱うような手付きで、肩口へと預けられた相手の頭を撫でていき。こんなにも照れるなんて自分は生娘じゃあるまいしと思うものの、暫くこの顔の熱は引きそうにないと考えては何だか誤魔化すかのように、ぎゅっと狼君を抱き締めていき。正直に言えば嬉しいのが本音で、けれど自身の要求を優先させてしまった為に、もしかしたら彼に無理をさせてしまったかとしれないと。そんなこと思っては、何だか申し訳ない気持ちを抱いてつい謝ってしまい)
……ごめん。
(思わず自分から離れてしまったが、相手はどう思っただろうか。自分が嫌がったのだと思ってしまってはいないだろうか。そんな予感が的中するように、相手が掛けてきたのは謝罪の言葉で。未だ頬の熱も冷めやらぬ中相手の肩口に顔を埋めたまま上げることはできなかったのでそのまま首を横に振り)
…、謝るなよ。…、違うんだ、嫌だったんじゃなくて、嬉しくて、死にそう。
(素直な気持ちを小声ながらしっかりと相手に伝えて。嬉しすぎて死んでしまうとは正しくこの事だ。相手と口づけを交わしたという事実を思い返すたびに胸の中の温度が急激に上がってどうしようも無くなってしまう。成程、恋は病だとはよく言ったものだと相手の胴に回した手に力を込めて相手の体にさらにぎゅっと抱きついてぽんぽんと相手の背中を軽くたたき)
……、狼君。
(聞こえてきたその小さな声を聞いて、安堵の息をつくと共に無理強いをさせていなくて良かったと考えて、思わず相手の肩上に頭を置き。くらくらとする熱は引かず、更に体温が上がっていくのを自覚する。何だかこのままでは彼の顔を見れるかどうかと思いつつも、口付けと幸せの余韻に浸りながら身を寄せていて。__暫くして、名残惜しかったものの時間がだいぶ経ってしまい明日に響いてしまうと感じたので最後に背中を軽く叩けば、ゆっくりと離れていき。視線は合わせられなかったが伝えていって)
……ありがとう。僕も嬉しくて死にそうだ。
…ん、良かった。
…さてと、寝るか。
(暫くの後、ゆっくりと体が離されていく。当たり前の事なのに、名残惜しさと物寂しさがあり。しかし存外にもういい時間だ。我儘ばかりは言っていられないし、明日は観光だからしっかり寝ておいた方が良いのも心得ている。掛けられた相手の言葉に安心して漸く相手の肩口から頭を上げると、相手の口からもその言葉を聴くことが出来て安堵し。相手から離れた瞬間急に眠気が襲ってきて、先に風呂に入っておいてやはり正解だったと思いつつ、スーツケースの中から歯ブラシを取り出して洗面台に向かって歩いて行って歯を磨き。部屋に戻り相手を待つがてら就寝の準備をする為に寝巻きに着替えつつふかふかのベッドに腰掛けると今にも寝てしまいそうだと落ちそうになる意識を必死に堪えており)
そうだね、もう夜も遅いし。
(相手の言葉に頷けば、自身もトランクケースからアメニティグッズを漁って歯ブラシや寝間着を取り出すと、狼君の後に続いて洗面所で歯を磨いていき。それが終わった後はまだ少し顔が赤いと思ったので、ついでに冷えた水で顔も洗っていって取り付けてられていたタオルで拭いていき。さっぱりとしたと思いつつも、狼君がこちら側の洗面所を再び使う気配が無かったので、そこで手早く寝間着を着ていき。部屋に戻ればベッドに腰を掛けて、うつらうつらとしている彼が目に入ったので手に持っていた荷物を片付けた後、向かい合うようにして向かい側のもう一つのベッドに座っていき)
狼君、お待たせ。
それじゃあ、電気を消そうか。
…んー。
(相手が戻ってきたのを見ると、電気を消そうという言葉への返事もどことなくぼんやりしており。電気が消えて辺り暗くなるとふかふかのベッドの中に潜り込み非常に幸せな表情になったものの寝返りを打って相手のベッドがある方をじっと眺めると徐に口を開き)
…朧。…隣で寝ていいか?
(眠くぼんやりとした頭で随分凄いことを言っている自覚はあったものの、折角なので寝る時も相手と一緒に居たいというのが率直な気持ちで。普段は絶対に出来ないことだからこそどうしてもお願いしたいところである訳で、しかしベッドが狭くなることは否めず無理強いは避けて)
……え?__ね、寝る?隣、で?
(枕元のランプの電気を消してベッドへと潜り込めば、その柔らかい毛布に包まっていき、明日も楽しみだと思いながらも先程の余韻を思い出してはまた顔に熱が溜まりそうだったので、さっさと寝てしまおうと目を閉じようとしていれば__不意に横のベッドの狼君からトンデモないことを言われたので思わず自分の聞き間違いかと考えて、間の抜けた声を出してしまい。確かに先程は狼君と一緒のベッドで寝れたらなと、前に彼が10歳に戻った時に同じ毛布で寝たことを唐突に思い出したのでそんなことを考えてはいたが、まさか相手から言われるとは夢にも思わず。理性が持つだろうかと思ったものの、まあ自分なら大丈夫かと思い直してはおもむろにベッドの端へと移動をして彼の場所を開けていき。暗くてよく見えないが、横のベッドにいる狼君の方を見遣り)
…勿論、良いけど。どうぞ?
……、ありがと。
(相手が数拍の後に許可を出してくれたのを見てからモゾモゾと起き上がるとゆっくりと隣のベッドに移り。スイートルームのベッドとだけあって普通の客室のそれより僅かにゆったりとはしているがそもそも二人で入るために作られた物では無いため若干手狭ではあったが身動きが取れないほどではなく。そろそろと相手の方に寄っていくと、すぐ近くに相手の顔があり、それを見れば再び鼓動が高鳴り。慌てて視線を逸らして相手の背中に緩く腕を回すと相手の温度に安堵しながらゆっくりと頭を相手の胸元に埋めて小さく欠伸を零して)
……お休み、朧。
(彼がこちら側のベッドに入って来れば、重さでややマットが沈み。元々のこのベッド自体の広さはそこそこあるので、二人で寝ることになっても窮屈さは感じず。だが暗かったもののさすがに目の前に狼君の顔が来れば、至近距離と言うこともあってハッキリと見えるもので。静まりかけていた鼓動は再び早まっていった為にどうにかしようと思ったが、不意に回された腕とトンと胸元に預けられた頭にそれこそ数秒固まって。しかしながら、おもむろに聞こえて来た相手の柔らかい声に我に返り。こちらも彼の背中に腕を回して、その身体を包み込むようにして体温を感じていき)
……ん、お休み狼君。
(先程の口付けを思い出せば思わず再び顔が火照りそうになったものだが、存外に慣れない環境に身を置いていた為に疲れていたのか眠気は収まらず直ぐに眠りについてしまい。翌朝、船内に差し込んできた光によって目が覚めてゆっくりと瞼を擡げると昨晩眠ったままの姿勢で。目を開いた瞬間相手が明るい光の中で至近距離に居たので思わず驚いてしまったものの、未だ眠っている相手の顔をじっと眺めて。相変わらず綺麗な顔だなぁとマジマジとそれを見つめてしまってから、少し相手の頬に触れてみて相手が起きない事を確認すると相手の顔に掛かっていた髪をそっと相手の耳にかけてゆっくりとその頬に口付けを落として抱きしめていた腕の力を少しだけ強くして)
(翌日。船内の部屋に朝日が差し込むものの、朝が苦手な自身はすぐに起きる気配は無く。相手からの頬への口付けを受けても少し擽ったそうにするだけで、微かに自然な寝息を立てていて。ただ無意識の内にまるで抱き枕を抱き締めるような形で、彼の背中に回している腕に力を込めていき。__それから数分後、ようやく意識が浮上して来たようで。眠たげに瞳を開ければ見慣れない部屋が見えて来た為に、そう言えばクルーズ船に泊まりに来ているんだったとそんな寝惚けたことを思っていると、昨晩狼君を抱き締めて寝ていたことまで一瞬だけ忘れていたので、不意に自身の腕の中に収まっている彼を見た途端、驚いて反射的に理性を鎮めようと仰け反ってしまったため高い身長が災いして、勢いよく頭をベッドの上部分にぶつけてしまい、朝っぱらから悶える羽目になり)
……? __!? 〜〜〜〜っ!
(自分が口付けをしようと起きる気配の無い相手を見てふと笑うとじっと相手の寝顔を眺めており。暫くして不意に相手の瞳が開き、此方を見た相手が驚いたようで一気に起き上がった瞬間鈍い音がしてベッドの上に頭をぶつけたらしく思わず笑ってしまい痛そうな相手の頭に手を伸ばして笑いながらそれを撫でて)
…っ、はは…痛そう…
…おはよう、朧。
〜〜っ。
(情けないところを見られてしまったと、ジンジンと痛む頭を撫でられつつ額に手を当てて視線を外し。幾ら何でも動揺し過ぎな上にカッコ悪いなと、自身に対して溜め息をついては、緩慢な動作で目の前の相手を見ていって。恐らく自分よりも早く起きていたのだろうが、少し跳ねている髪を見つけてしまった為、おもむろに狼君の髪に触れて直しながらやや照れくさそうに挨拶をしていき)
……おはよう、狼君。
(不意に相手の手が伸びてきて自分の髪に触れたので少し驚いたものの寝癖がついていたのだろうと直ぐにわかり、自分でも自分の髪を触り軽く髪を梳きながら寝癖を直しつつ相手の挨拶に微笑で返し。ゆっくりとベッドから起き上がり小さく欠伸を噛み殺すと時計を眺め、7時半であることを確認すれば朝食のバイキングがちょうど7時半からであったことを思い出し相手に声を掛けて)
着替えて朝食のバイキングに行くか。
大広間で7時半から空いてるからさ。
そうしようか。じゃあ、着替えて来るよ。
(ベッドから立ち上がって洗面所で顔を洗えば、手早く持って来た私服を着ていき。黒色のチェスターコートと白色のケーブルニットと黒色のスキニーに着替え終わると、部屋の方に戻って行って。そのまま部屋の出入り口付近で狼君を待ち)
(相手が部屋を出ていったのを見てスーツケースから服を出し。無地のTシャツの上にはジッパー付きのパーカーを前を開けて着て、上からテーラードジャケットを羽織り。下は黒のカモフラスキニーを着て、それから中にしまっていたネックレスを出して服から前に出してみて。今日ばかりは表立って着けてもいいだろうと考えて着替え終えた寝間着をしまうと玄関へと向かい)
お待たせ。行くか。
うん、行こうか。
(朝食は大広間と先程教えて貰ったことを脳内で反芻しつつ狼君を見遣れば、いつもは服の下に付けているペアネックレスを出してしたのでそれを嬉しく思って。ここなら顔見知りもいない為、自分のペアネックレスも服の上から付けてしまっても良いだろうかと考えながら歩いていれば、目的地の大広間に着いたので、バイキングのトレーを取って狼君にも渡していき)
__朝食のバイキングと言っても結構種類があるね。
そうだな。
和食から洋食まで、かなり品揃えが豊富だな。
(相手と共に大広間に入れば中には色々な種類の食事が並べられており。白米に温泉卵、味付け海苔や卵焼き、秋刀魚の塩焼きやきんぴらごぼうなど和食から、パンにジャム、スクランブルエッグ、ソーセージ、ベーコンと洋食に至るまで様々な種類があり朝食といえども侮れない。すぐにお腹がすいてしまい、相手に礼を言ってトレーを受け取ると温泉卵や白米、パンやソーセージなど和洋問わず幅広く取っていき、朝食だというのにトレーの上は料理で一杯で)
うーん…取りすぎたかな…まあ食えるだろ。
(さっそくバイキングの料理を取ろうと、ぐるりとクロステーブルに置かれた品々を見ていき。和食から洋食まで幅広くあるそれらを見ては、備えられていたトングでバランス良く取っていき。朝と言うこともあって、ロールパン二つとサラダとハムとスクランブルエッグと野菜スープなどと言った軽めな物を選べば、狼君の元へと戻り。大体予想はしていたがその通りに大盛りな彼のトレーを確認して微笑むと、空いている席を探してそこに移動していき)
ははっ、狼君のトレー凄いことになっているね。__あっ、あの席が空いているからそこに座ろうか。
ま、まだ食べ盛りなんだよ…おう、わかった。
(相手のトレーには軽めのばかりがよそられており、自分からすればよくそれで足りるなと思うのだが、なんとなく恥ずかしくて視線を泳がせると言い訳がましく言葉を発し。相手の示した席に座ると両手を合わせてまずは熱々の白米に味付け海苔を乗せて食べつつ温泉卵を口にして)
頂きます。…ん〜、美味い!
(食べ盛りなら伸び盛りなのだろうかと、余計なことを胸の内で思いつつ席へと座り。洋食中心なのでトレーに乗せていたバターナイフを手に取れば手を合わせて)
頂きます。
ん、パンも焼き立てで美味しい。
(バターを塗ったふわふわで甘みのあるロールパンを食べつつ、野菜スープも飲んでいき。昨日の夕食もそうだったがここのクルーズ船の料理はどれも美味しいと思っては、スクランブルエッグにも手をつけていき)
(味噌汁を飲み干し、魚に手をつけながらご飯をすべて食べ終えると今度は洋食に向かい。パンは確かに相手が言うように焼きたてでフワフワとしており非常に美味で。ソーセージをたっぷりと食べつつベーコンを切り分けて口に運ぶと更に朝から揚げ物はどうなのかとも思ったが取ってきてしまったフライドポテトと唐揚げを口に運び幸せそうな表情を浮かべ)
ん〜…揚げ物はやっぱり美味いな…
ははっ、ガッツリいくねー。
(ハムを食べていれば、もうあの量を食べ終えたのか狼君が立ち上がって洋食を追加して来たのをマイペースに食べながら眺めていき。朝からガッツリ揚げ物を食べている彼を見つつも、幸せそうに食べているその姿は可愛いの一言に尽き。今は自室ではないため愛でたい気持ちを抑えながら、自身も朝食を食べ終えたので食後のコーヒーを飲んでいって。ふと、首元のペアネックレスを服の上に出そうとチェーンを少し引っ張って取り出せば、再び残っていたコーヒーを飲み干していき)
…んむ、待たせて悪い…。
(これも美味しい、これも美味しいと料理を一口食べる度に感動しながら食べていればいつの間にか皿の上の料理はあれだけあったのにも関わらず綺麗になくなっており。流石にお腹いっぱいだとお腹をさすりながら珈琲を飲んで待っている相手に詫びを入れ。自分も珈琲を取ってきて口直しに飲んでいると不意に相手が服の下からネックレスを取り出したのを見て思わずその動作を見つめてしまい。相手の胸元で光っている片割れのそれを眺めて自分の胸元のもう片方を眺めると何とも言えず幸せな気持ちになり微笑を零して)
今日はちゃんと、お揃いで歩けるな。
(相手の詫びに“気にしないで”と言うようにヒラリと小さく手を振って。おもむろに、こちらのペアネックレスを見て微笑みながらそのように可愛いことを言ってくれる彼を、こちらも微笑み返し。何だか先程から可愛いしか心の中で言ってないなと自身の語彙力に苦笑を零していって。しかしながら、もう一度アクアマリンが付いた自身のペアネックレスをチラリと見ていけば、同じ形をしたルビーが付いた狼君のペアネックレスも見ていき)
そうだね、いつも服の下に隠してるから。ここでは隠さなくても大丈夫だね。
折角着けてるのになかなか服の上に出せないって言うのも勿体ないしな。
(ただそれを着けていて、相手もまた着けてくれているのだろうと思うだけで嬉しかったが、やはり視界に入るとまた新たな喜びがあり。珈琲を飲み終えれば立ち上がり、朝食はプランに入っていたのでお金は既に払ってあったのでそのまま大広間を出て自室へと戻っていき。九時ごろに横浜の港に着くと言っていたので未だ30分ほどは余裕がある。ソファに座り相手の名前を呼ぶと予め持ってきていたパンフレットを取り出して)
朧、何処回るか決めようぜ。
九時に到着で三時出発だからさ。
六時間くらいはあるよ。
(相手の言葉に大いに同意しつつ部屋へと戻れば、ソファーに座ってパンフレットを取り出している彼が目に入ったので自身もその隣に座っていき。横合いから広げられたパンフレットを覗き込みながら、昨日に聞いていた予定を思い出して)
6時間か、確か江ノ島を観光するんだっけ?
(/背後失礼します。25日26日は卒業旅行であまり返信が出来なくなってしまいます! 本当に済みません、お手数お掛けします…!蹴り可)
そうそう。
でも水族館はこの前行ったしな?
有名な縁結びの神社があるらしいからそこ行くか?
(江ノ島と言えば水族館、しかし水族館自体はついこの間行ってしまっていたので避けたいと思い。ページを捲っていると有名な縁結びの神社というページに目を引かれ、そっとページをなぞり相手に示し。集合場所は江ノ島ではなく横浜であった筈であるし、最悪江ノ島で飽きたら早めに横浜に戻って中華街や鎌倉を巡ればいいだろうと考えながら)
(相手の言ったページに目をやると、そこには江島神社と言う縁結びにご利益があるとされている定番恋愛成就スポットの特集が載せられていて。「むすび絵馬」や「龍恋の鐘」など、カップルで行けば絆が深まるデートが出来るのを売りにしているらしい。そう言えば恋人の丘にある龍恋の鐘はかなり前にテレビで見たことがあると思いつつ、確か一緒に鐘を鳴らすと絆が深まったり、その柵には二人の幸せを願う南京錠を付けることが出来るはずと考えながら、何だか無性に嬉しくなったので隣の彼の頭を優しく撫でていき)
縁結び神社か、まさか狼君からそう言う場所へのお誘いがあるとは。うん分かった、そこに行こうか。
…若干気恥しいけどな。
でも、まあ、知り合いもいねぇし、お前が隣にいるなら今日ばかりは周りの視線を過度に気にしすぎるのも止めるよ。
(2人きりで江島神社に行って普通のカップルが行うような事をして行けば自然と人の目を集めてしまうかもしれないと懸念すれば相手が嫌がるのではないかと少し心配になったが相手は喜んでくれているようで。ほっと安堵して、どうせその神社に行くのなら変に縮こまってしまったら損であるし、やはり相手との将来を願って色々なことをしたいと思っており。龍恋の鐘もしかり、折角ならば相手と共に体験したいと考えるものの相手が嫌がるようならば止めなければならないなと相手の顔を伺い)
あっ、じゃあそれなら龍恋の鐘を鳴らしても良い? 一応今日は平日のお昼だから人も少ないだろうし…。けど勿論、無理強いはしないよ。
(彼の言ったことに対して期待の眼差しを向けるものの、過度に気にしないと言っただけなので、さすがにこう言った露骨過ぎる行為は苦手かなと思い伺うように視線を遣り。今は平日の昼間、しかも三月の後半とあって観光客は少ないはず。もしかしたら学生などがいるかもしれないが、自身は他人であれば見られるのは平気で。ただ狼君には負担を掛けたくないと感じているので、そのようなことを問い掛けていき)
…ああ、良いよ。
俺達ってああいう職業だし、もしかしたらって事も他の人達より多いし。
だからこういうのはちゃんとしておきたい。
(龍恋の鐘と言えば二人で鐘を鳴らさなければならず、傍から見ても直ぐに自分達の関係については勘づかれてしまうし好奇の目に晒されることもあるかもしれない。だが、相手はそれを押してもしたいと思ってくれているのならば恥ずかしいと思うのは相手に対する裏切りのような気がして。誰かに何か言われれば朧から離れるかと聞かれれば確実に否と即答でき、誰に何と言われようと朧は自分の大切で愛しい彼である事は変わりなく、その隣にいることが出来ることは自分にとって喜びで。好奇の目など気にしなければいい、自分たちは自分たちだと堂々としていれば良いのだ。相手はそれが出来るほど誇らしい自分だけの彼なのだから。口元を緩めて穏やかな表情を浮かべると相手の言葉に肯定の返事を返していき)
ん、良かった。…そっか、そうだよね。最悪な事態は想定したくないけど、願掛けをするに越したことはないよね。これからも狼君と一緒にいたいし。
(マフィアと言う職業柄、人よりも死ぬ可能性は高く。しかも狼君とは敵組織な為にいつも自分が近くにいて守ってあげることは出来ない。相手は強いから大丈夫だと信じてあげたいが、それこそ裏社会は何が起きるか分からないため心配をしてしまう杞憂は尽きず。しかしながら、相手の柔らかな表情を見れば不安な表情など出ずにこちらも緩やかな笑みを浮かべていき)
ん。
…でも嫌だな、お前が好奇の目に晒されんのは。
俺がそういう目で見られるのは全く構わねぇんだけど、お前が誰ともわからない奴に変な目で見られるのは、凄く嫌だ。
ごめんな。俺が女だったらお前も変な目で見られることなんて無かったのに。
(相手が穏やかな表情を浮かべたのを見ると、不意に胸の内に湧いてしまった懸念を口にして。相手が周りの人々の好奇の目に晒される。自分だけでなく相手までそういう目で見られてしまうのは心情的に耐えきれなくて。本当はもっと街で歩いているのを見かけるカップルのように普通のカップルのように振る舞いたいだけなのに、そんな事ですら自分達にはするだけで視線がまとわりついてきて。自分がその目に晒されるのは良い、ただその目に相手が晒されることを想像すると申し訳なさで顔を上げることは出来ず)
狼君、君が謝ることはないよ。僕だって君のことを好奇の目に晒すのは嫌だし、そうさせている自分が情けなく感じてる。…でもそれを差し引いても狼君のことが好きだから。あまり気に病まないで。
(同じ性別と言う隔たりは大きく、普通のカップルのように振る舞えないことは何度も実感している。世間一般的には自分達のような関係はイレギュラーなことで。しかしそのようなことで相手を不安にさせてしまうことが何よりも悔しく。思わず俯向く彼を抱き寄せては、自身の気持ちを素直に述べていき)
…、う、ん。
(折角の相手の誕生日なのにこんな事で空気を悪くしてはいけないと慌てて顔を上げて謝ろうとした時、不意に相手に抱き締められ告げられた言葉に伏せていた瞳を上げて。相手がこれ程思ってくれているのにと自分の不甲斐なさが目立ってしまい、相手の背中に腕を回してぎゅっとその体を抱きしめ返すと力を込めたまま相手の胸元に顔を埋めて)
俺も、俺も好きだ。
大切で、誰よりも愛しい。
だから、本当に嫌になった時はどんな時でも直ぐに言ってくれ。
お前の誕生日だ、お前が嫌な気持ちをする事だけはしたくない。
……大丈夫、僕は狼君と一緒に居られればそれだけで幸せなんだからさ。けど、気に掛けてくれてありがとう。
(嫌になることなんて無いと思ったものの、せっかくの彼の好意を無下にすることは自身がやりたくないことだったので、相手を抱き締めたままそう呟き。そしてポンポンと二・三回その背中を優しく叩いた後、ゆっくりと体を離して微笑み掛けていき)
…わかった。
(顔を上げる頃にはその顔には微笑が戻っており、相手に心配を掛けさせてしまった事も申し訳なく思いながらもこれ以上は引きずらないように努めて明るく振る舞い。時計を見てみれば良い時間になっており、少ししてアナウンスで港に到着したことを報告する音声が流れたので鞄を手にして部屋を出て)
さ、行くか!楽しみだな。
うん、楽しみだね。
(こちらもカバンを持って、港に到着したクルーズ船から江ノ島へと降りて行き。近くの停留所にパンフレットが置いてあったので、それを二人分取って相手にも渡して行き)
まずは江島神社だっけ?
ん、そうだな。此処からなら歩いても近そうだ。
(相手が手にしたパンフレットを覗きこみながら位置を確認すると港からそちらへと向かって歩き始め。流石に湘南の海はなかなか綺麗だと思いつつ橋を渡り暫く行くと入口が見えてきて。平日の昼間といえども空いているわけではなく、混んでいるわけでもなかったがそこそこ人の姿があり、流石に有名な神社なのだなと思いながら鳥居を潜って行き)
先ずは本殿にお参りするか。
本殿か。あっ、あそこかな?
(そこそこに混んでいる江ノ島の通りを進みながら、鳥居を潜って行って。それらしき場所があったもののさすがに有名な神社の本殿だった為に人がそれなりに集中していて。若干の時間を使って、やっと本殿の前へと来ることが出来)
それじゃあ、祈願しようか。
ん、そうだな。
(二人で本殿の列に並びしばらく待つと漸く先頭にたどり着く事が出来たので財布から五円玉を出して賽銭箱に投げ入れると相手と自分が怪我なく無事にずっと一緒に居ることが出来るように祈願していき。じっと目を閉じ拝んで祈ると相手が祈願を終えるのを隣で待っており)
(こちらも賽銭箱にお賽銭を投げ入れれば、手を合わせていき。これから先、狼君と共に健康的に過ごせますようにと願っていって。神頼みなんて自分らしくないと感じたものの、それでも願わずにはいられないもので。閉じていた目を開ければ既に狼君が祈願を終えていた為に、一緒に列から外れていき)
次はむすび絵馬を買う?ちょうどあそこに販売所もあるし。…やっぱり気恥ずかしいかな?
(少し苦笑を零してそう尋ねてみて)
…買おう。…俺が買ってくるから此処で待ってろ。
(相手と共に列から外れてふと相手が尋ねてきたのでその視線の先を見ればむすび絵馬が売っており。じっとそれを見て苦笑する相手を見ると胸がきゅっと締め付けられるような感覚がして、相手の手を一瞬ぎゅっと両手で握り締めて相手の目を見てそう言うと販売所まで言って絵馬を一つ買ってきて。サインペンなどが置かれた場所に二人で歩いていくとサインペンを持ったは良いものの何を書くにしても気恥ずかしくなってしまいどうしようかと悩み)
…な、何て書こうな。…ず、ずっと一緒に居られますように、とか…?
(まさか相手が買って来てくれるとは思わず、きょとんとした顔を一瞬だけしてしまったがすぐに微笑ましく思いながらサインペンが置かれた場所へと移動をし。自身もサインペンを持てば、色々と書きたいことがあったので迷い)
そうだね…沢山書きたいことがあるけど、やっぱりずっと一緒に居られるのが一番の願いかな。
じゃあ、それ書いておくな。
(相手の同意を受けると漸く安心したようにサインペンのキャップを外して考えた通りの文面をなるべく丁寧に書こうと並べて行き。こんな絵馬だなんて書いた事も無かった上に大切な人との大事な物だと言うのだから緊張がしてしまう。何とか書き上げたそれを手に持つと相手に見せて微笑し)
出来た。…名前を書くのは流石に恥ずかしいよな?イニシャルとかにしとくか?
んー…見られないとは思うけど、一応イニシャルにしておこうか。僕はOだね。
(むすび絵馬に書き上げられた文章を微笑ましげに見つつ、相手のイニシャルと言う提案に自身の名前は朧なのでOかと思いながら、そう言えば狼君はRとLのどちらなのだろうと微かに疑問に感じつつもむすび絵馬を見ていき)
うん、じゃあ俺はRだな。
(イニシャルで書くということに落ち着いたので絵馬の隅の方にRという文字を書くとイニシャルばかりは相手に書いてもらった方が二人で署名したような感じがして何となく心境的には良いだろうと思い相手にサインペンと絵馬を手渡して)
この隣にOって書いてくれるか?
勿論。
(笑みを浮かべて相手からサインペンと絵馬を受け取れば、その端の方にOと書いていき。互いに名前のイニシャルのみだが、何だかそれだけでも嬉しく感じてしみじみと絵馬を眺めていって。そして、それを持てば掛ける場所を探していき)
狼君、あそこに掛けられそうだね。
(相手がイニシャルを書く様子を眺めていると二人分の願いを込めた絵馬が完成して。両手でそっとそれを持ち上げると相手が示した場所へと近づき、少しだけ空いていた隙間に絵馬を結びつけ。きゅっときつく結んで固定するとゆっくりと絵馬から離れて相手の隣に並び)
…うん、これで良し。
さてと、龍恋の鐘のところに行くか。
(絵馬が結び付けられたのを眺めていき、成就すれば良いなと思いながら狼君が側まで戻って来たのを確認すると、さっそく龍恋の鐘の方まで歩いて行き。しかしかなり名が知れているとあってか、少ない方だとは言え若者達やカップルなどが本殿よりも多くいて。けれどここまで来たのならやはり鳴らしたい為に、横の狼君を見遣り)
あれが龍恋の鐘か。狼君、鳴らしても大丈夫?
(/先ほど旅行から帰って来ました! 返信安定します!蹴可)
…うん。行こう、丁度空いてる。
(龍恋の鐘の前までたどり着くといよいよ緊張してきてしまい。若い男女のカップルで賑わっている其処で明らかに自分達は浮いていて。未だ友達同士で観光に来ただけと言い張れるが、鳴らしてしまえば間違い無くどんな言いわけも通用しない。それでも、先程船の中での相手の言葉を聞いていた自分としては穏やかな気持ちで了承の返事をする事が出来、ゆっくりと頷くと二人で龍恋の鐘の目の前まで歩いて行き)
…はは、やっぱりちょっと緊張するな。
(相手の了承に感謝しつつ、龍恋の鐘が設置されている場所にくれば恋人の丘にあると言うこともあって、目の前の見晴らしは良く。このように晴れた日に来れば遠くまで見渡すことが出来。周りの視線があるのかどうかはさておき、今は目の前にある龍恋の鐘に集中し。今も今後もこう言ったことで狼君に負担を掛けてしまうかもれしないが、それでもこのようにカップルらしいことが出来るのを嬉しく思う自分がいて。隣の相手と同じように、少し緊張気味になっている自身も頷いて)
…そうだね、でもきっと大丈夫。
(柔い微笑みを浮かべれば、龍恋の鐘から垂れる赤い紐を掴んでいき)
…ああ。
(周りの視線を気にすると居ても立ってもいられなくなってしまいそうなので今は目の前の鐘の事だけに集中することにして。若干の恥ずかしさはあるが、相手の言葉に自分も頷くとその赤い紐に自分も手を伸ばし。相手の手に自分の手を重ねるとゆっくりと一緒にその鐘を鳴らしていき。鐘の音が鳴り響き、一時の静寂が訪れ。ゆっくりと瞳を閉じると相手と共に在る事を願うように心の中で言葉を紡いでからゆっくりと瞳を開き、相手の方を見遣り微笑を浮かべ)
(龍恋の鐘の音を、瞳を閉じて聞いていきながらも、自身の願いを心の中で唱えれば、やがて緩慢に瞳を開けていき。微笑みを浮かべる相手にこちらも笑みを返せば、周りのことなど気にせずに龍恋の鐘から離れていき。たった一度の鐘の音であったが、自身にとっては既に思い出深いものとなっていて。こうして付き合ってくれた狼君には感謝の言葉しか出ず)
狼君、今日は本当にありがとう。
(ゆっくりと鐘から離れていく間、周りの笑い声やひそひそと囁く声が耳に入ったが、そんな物は心まで届かない程心の中は満たされた気持ちでいっぱいになっており。傍から見ればおかしいかもしれない、それでも自分はこれほどに相手のことを思って、相手もあれほど自分のことを思ってくれているのだ。幸せになれない理由等どこにあるだろう。増して人様に迷惑をかけているわけでもなく、自分たちは自分たちだと今ならば胸を張って言える気がして感謝の言葉を述べてくる相手にくしゃりと笑うと言葉を紡ぎ)
礼を言われる事じゃねえよ。寧ろこっちこそ有難う。すごくいい経験だった。
これできっと俺達もう死んでも離れられないぜ。どうすんだよ、覚悟しとけよ?
覚悟なんてとっくに出来ているよ。君に好きだと告げたあの時からね。
(その笑みに相手のことを抱き締めたくなる気持ちを抱くが、ここでは我慢していき。軽く二・三回その頭を撫でるだけに留まっては、去年の秋頃のことを思い出しながらそう微笑み。自然と自らそう言う固い決意を持っていたほど、彼のことが好きでどうしようもなく。なかなかに重症だと考えては、恋人の丘を降りて行き)
…そろそろお昼の時間だね。どこかで食べる?
っはは、そっか。…安心した。
(それを同意と取ると安堵したような表情を浮かべて一度頷き。相手の言葉に釣られて時計を眺めると確かにお昼時になっており、何かを食べようと考えては先程パンフレットで眺めた湘南の名物が頭に浮かび)
何かここら辺生しらすが有名らしいじゃん。丼でも食べに行くか。
やっぱり湘南なら海の幸だよな。
(そう言いながら恋人の丘を降り、江島神社を抜け出て道を歩いていけば至るところに生しらすを売り出した看板が多々見られ、どれにしようかと悩みながら眺めていき)
生しらすか、良いね。お昼はそれにしようか。
(相手の提案にすぐに頷けば、江ノ島でも飲食店が並んでいる観光の通りへと出て行き。名物とあってか、沢山の旗や看板が並んでいたが、さすがに適当に入るのはリスクが高いためパンフレットを開いて良さそうな店を探して行き。ふと、ページの中でも一際美味しそうな生しらす丼の写真が載せられたその店が目に留まって、隣の彼の肩を軽く叩き)
ここの店なんてどうかな?お店自体も新しくて良い感じだし、写真の生しらす丼も色んな海の幸が乗っかっていて美味しそうだしさ。それにお店もこの通りにあるみたい。
…ん、そうか。じゃあそこにしよう。
(相手が何やらパンフレットを捲って調べてくれたので自分もそれを覗き込んでみると確かに雰囲気のいい店で、しかも近いとあって探してみると直ぐにその店は見つかり。中に入ってみると人気店らしく少しだけ待つことになったが嫌というほど待つというわけではなく十分ほど待っていると直ぐになかに通されたのでメニューを開きながら相手に話しかけて)
おすすめの生しらす丼にするか?生しらすの他にマグロとかサーモンとかも乗せられる丼もあるみたいだな…。
(メニューを開けば色々な丼ものがあったものの、一番大きく表示されていたのはやはり生しらす丼で。特にオススメと書かれている生しらす丼は、パンフレットにも載っていたように見栄えも良く見るからに美味しそうなものに仕上がっていて。ふと、小さくメニューの端に書かれている部分があり)
あっ、オススメの生しらす丼にもオプションでマグロとかを乗せられるみたいだよ。
取り敢えず、僕はお吸い物がついてくる生しらす丼のセットで、オプションはイクラとマグロにしようかな。狼君はどうする?
(相手に示されて視線を移してみると自分もそれにしようと考えて何を乗せるか考えていき。やはりマグロはどうしても食べたいがサーモンも良いし、鯛というのもある。料金は少し高めだがウニという選択肢もありかなり迷ったものの決めると店員を呼んで相手の分も一緒に注文して)
…ん、俺もそれにしよう。
すみません、この生しらす丼のやつ二つで、マグロとイクラをオプションで載せたのとマグロと鯛をオプションで載せたのをください。
(自身の分まで頼んでくれたことに感謝の言葉を述べていって、少しの間談笑をしていればすぐに料理が運ばれて来た為に話を止めて。赤の縁取りがされた黒いお盆には、生しらす丼とお吸い物とお新香が置かれていて。食器や見た目も凝っていたので、益々食欲がそそられていき。お盆に添えられていた箸を取れば)
生しらす丼美味しそうだね。
それじゃあ、頂きます。
ん、本当だ、美味そう。頂きます。
(相手と談笑していると少しして運ばれてきたお盆とそれに乗せられた生しらす丼や付随する付け合わせを前にして、流石に美味しそうだと目を輝かせ。両手を合わせて挨拶をすると自分も箸を取り醤油をさっとかけてまずは目玉の生しらすの部分を一口食べていき。茹でしらすとは違い生である故の独特の苦味はあったが口の中で蕩けるような食感は新しく、非常に美味しく食べることが出来て)
…生しらすって始めて食べたけどすっげぇ美味いのな。
不思議な感じがするけど美味しいね。
(醤油をさっと掛けて、ミョウガと共に透明なシラスを一口食べれば茹でたシラスには無い甘みと苦みが口の中に広がり、しかし生姜やミョウガのお陰で生臭くは無く、むしろ口当たりが良い。オプションで付けていたマグロやイクラも炊きたてのご飯と良く合っていて、箸のスピードも早く進み。最後にお吸い物を飲んで一息ついていって)
ん。マグロと鯛も美味い。
(相手の言葉に同意しつつ箸を進めていき、しらすから今度はマグロや鯛などにも箸をつけて。新鮮な海の幸はどれをとっても非常に美味で、あっというまの丼の中のものは全て胃に収まってしまい。付け合わせやお吸い物も残さず綺麗に完食して満足そうに笑顔を浮かべつつ、店を出る前にポケットからパンフレットを取り出し)
江ノ島はもう水族館くらいしかねぇけどこの前行ったからちょっと早めに横浜まで行くか。
中華街とかレンガ倉庫、鎌倉っていう線もあるけどお前は何処に行きたい?
(「ごちそうさまでした」と呟いて食器を横に片せば、おもむろにポケットからパンフレットを出した相手のそれを横から見ていき。江ノ島ではなく横浜の方を提案してくれる相手の言葉に少し悩んでいき。中華街に赤レンガ倉庫、また鎌倉など何処も行ったことがなく、それに何処に行っても狼君となら楽しめるだろうと思っていって。少々悩んだ後、口を開き)
そうだね、中華街も捨て難いけど今ご飯食べたばっかだし赤レンガ倉庫にしようかな。狼君はそこでも大丈夫?
じゃあそこに行こう。まずは江ノ電だな。
(相手の言葉に頷き、赤レンガ倉庫を目指すために地図を眺め始めて。取り敢えず江ノ電に乗って大きい駅まで出て乗り換えればよさそうだと思い。上着を羽織り会計に足を運ぶと二人分の食事の代金を払って店を出て駅までは二人で並んで歩いて行き、乗り換えをスマホで調べながら時刻表と時計を見比べて口を開き)
んーと…あと五分後に電車が来るみたいだな。それに乗れれば赤レンガ倉庫にはあと一時間くらいあれば着くよ。
一時間か、調べてくれてありがとう。
(今日は何から何までして貰って悪いと思いながらも、これも誕生日の特権かと考えては狼君の誕生日が来た時は今度はこちらが甘やかそうと思っていき。やがて駅へと着けば改札口を通って江ノ電のホームで電車を待っていると、相手の言う通りの時間に来たので二人で乗っていき。ちょうど席が空いていたのでそこへと座れば、周りの目に注意を払いつつも心なしか距離を詰めて。携帯端末で調べたこれから向かう赤レンガ倉庫のホームページを相手にも見せていき)
今は新春和菓子祭りって言うイベントを広場でやってるみたいだね。それと、建物の中では雑貨屋さんとかもあってショッピングも出来るようだね。
和菓子!良いな、楽しみだ。…へえ、店もあるんだ。益々期待しちゃうな。
(江ノ電に乗って二人がけの席に座ると相手が示した携帯端末を眺めて感嘆の声を漏らし。自分も和菓子は好きだ。それにショッピングができるというので中々期待してしまうと口にしながら目の前の景色を眺めていると、電車は線路の上ではなく市街地の真ん中を通っており。これには驚いてしまって隣の朧の肩をとんとんと叩き窓の外を指さして)
市街地走ってる…路面電車…ってやつ?
(和菓子やショッピングにキラキラと目を輝かせる彼を微笑ましげに見ながら、自身も赤レンガ倉庫を楽しみにしているとおもむろに肩を叩かれて掛けられた言葉に、後ろの窓から外を覗き込んでいき。自身の目に映ったのは軌道を走る路面電車で、そう言えば横浜には走っているんだったけ?と思いながらも頷いていき)
そうそう、路面電車。僕らが乗っているこの江ノ電も昔は路面電車だったらしいよ。
>2677
>2678
[訂正]
(和菓子やショッピングにキラキラと目を輝かせる彼を微笑ましげに見ながら、自身も赤レンガ倉庫を楽しみにしているとおもむろに肩を叩かれて掛けられた言葉に、後ろの窓から外を覗き込んでいき。自身の目に映ったのは街の中であり、そう言えばこの江ノ電は昔は路面電車で、今も一部の区間では軌道を走っていると聞いたことがあると思いながらも、頷いていき)
そうそう、路面電車。僕らが乗っているこの江ノ電は昔は路面電車だったらしいよ。
(/本当に済みませんでした…!今後読み間違えがないように気を付けます!(土下座) 蹴可)
へぇ…その名残、ってことか。
(相手の説明を聞いて納得したようにうなずき街中を列車で走り抜ける奇妙な感覚をしばらく味わっていれば市街地を抜けいよいよ線路の上に電車は戻り、綺麗な湘南の海を横目に走る有名なスポットへと突入し)
やっぱり綺麗だな。今日なんか晴れてるから特に、反射してキラキラしてる。
本当だ、綺麗。東京湾も東京湾で良かったけどまた違った良さがあるね。
(いつの間にか江ノ電は市街地の軌道上ではなく線路上を走っており、まるで宝石がキラキラと輝くようなほど太陽の光で反射した青い湘南の海が見えて来て、昨日の東京湾の風景を思い出しながら相手の言葉に賛同するように頷いていき。__やがて、何回か乗り換えをして馬車道の駅に着けばそこで降りて行き。駅内の掲示板にある地図を見て、徒歩6分の所にある目的地へと向かい。ようやく目当ての"横浜赤レンガ倉庫"が見えて辿り着けたので一息つき)
ここが赤レンガ倉庫か。フェスティバルをやってるからかな?平日でも結構観光客が多いね。
有名な観光地だしな。
さ、和菓子和菓子!
(横浜赤レンガ倉庫に辿り着くと相手の言う通りの混雑ぶりに少し驚いたものの、観光地ではあるのだし予想外のことではなく。色気より食い気とはまさにこの事で、赤レンガ倉庫にはちらりと目をくれただけで二言目には和菓子という言葉が口から出る始末で、相手に聞いた時から相当楽しみにしていたのだろう、キョロキョロしながら和菓子の出店を探して)
(/すみません、本日諸用で昼間の返信遅いです…!/蹴可)
会場はこっちみたいだね。
(明治に出来たと言う赤レンガ倉庫を眺め、そのレトロな雰囲気にここだけタイムスリップをしたような感覚だと思いつつ、立派な佇まいの赤レンガ倉庫を写真を撮って携帯機器に収めていき。そして、さっそく和菓子フェスティバルの会場を探す彼を微笑ましげに見ては、公式サイトを開いて場所を確認し。すぐに調べ終えれば軽く相手の肩を叩いて、その洒落た出店が出ている広場へと向かって行き。着いた広場はやや混雑していたが、全体的に和の雰囲気が漂っていて、新春を祝うかのように一つ一つの店には可憐な桜の飾り付けが施されていて華やかで。店員さんも艶やかな着物を着ており、その凝りように感嘆の息を零しては隣の狼君に話し掛けていき)
沢山お店があるけど、まずは端から回ってみる?
お、凄い…何だか明治時代にタイムスリップしたみたいだな…。
(相手に連れられて広場へと向かうと、其処には本格的に作りこまれた世界観が広がっており。桜の飾りつけが施され、店員も含めて和の雰囲気の味わう其処と、背景のレンガ造りの建物を見やればさながら文明開化直後の和洋折衷な様子で、思わず此れには感服して。しかしやはり一番の興味はその食べ物。相手の言葉にゆっくりと辺りを見渡してそれぞれの店で何を売っているのか確認しながら歩いていけばよいだろうと賛同するように頷き)
そうだな。どんなのが売ってるのか気になるし、取り敢えず見ながら歩いていくか。
(/お返事遅れました…!!更新周期戻ります!/蹴可)
(相手が頷いたのを見れば、出店のショーケースに並べられた色とりどりの和菓子を見ていき。綺麗な桃色をした桜型の干菓子や、桜の模様が描かれた雪兎の形に似た兎のお饅頭。後は定番中の定番の桜餅に三色団子などがあり、どれも春を彷彿とさせる色合いとなっていて綺麗の一言に尽き。一つ一つが職人の手で作られていることが納得出来るほどの出来栄えで。見ているだけでも楽しいそれを見ながら歩いて行って)
凄いなぁ…どれも凝っている和菓子だね。ちょうど小腹も空いて来たところだし何か食べる?
(色とりどりの和菓子は見目も華やかで楽しく、ウインドウショッピングでも十分に楽しめたが、やはり食べる事に最も楽しみを感じ。どれも愛らしく食べたいと思うようなものばかりであったが、中でも兎のお饅頭に心惹かれて相手のコートの裾を少し握ってちょいちょいと引っ張るとその兎の形をした饅頭を売っている和菓子屋の前まで軽く引っ張って指さして)
なあ、この兎の饅頭すごく可愛くないか?先ずはこれを食べようぜ。
じゃあ、二つ買おうか。
__済みません、これを二つお願いします。
(コートの端を引っ張られるままにある一つの和菓子屋へと来れば、狼君の言う通り先ほど見たあの可愛い兎の饅頭が置いてありそれを二つ着物を着た店員さんに頼めば、すぐに四角い品の良い小箱に入れられた和菓子を渡されてお金を支払って受け取り。何処かで食べられる場所は無いだろうかときょろきょろと探せば、奥の方に休憩処と達筆な字で書かれた紙がゆらゆらと風で揺れていて。そこには赤いシートが敷かれた長方形の椅子と上には赤い傘があり、直射日光を遮っていて。まるで時代劇に出て来るような茶屋だと思いつつ狼君を見遣り)
あそこでなら座って食べられるから移動しようか。
お、悪いな。
(相手が和菓子を買ってくれたので礼を言いつつ示された方向を見てみると休憩所と記された場所があり。こんな所まで凝っているのかと感動してそれを見ながら相手の言葉にうなずき了承を示し其方へと移動して。空いていた席に座り兎の顔が描かれた饅頭を見ては見目が愛らしいせいで食べることに罪悪感を覚えてしまい、携帯機器を取り出して写真にしっかりとその愛らしさを収めてから両手で包み込むようにその饅頭を持ち)
頂きます。
いえいえ。
(そうヒラリと手を振っては休憩処の椅子に座っていき。買った小箱を開けたは良いものの、兎の和菓子があまりにも可愛過ぎて食べるのに躊躇い。特にこのつぶらな瞳で見られてしまえば、顔から一気に食べてしまうのは良心が働いてしまうもので。どうしようかと悩みつつも、しかし結局は小腹の空腹には勝てずに、散々悩んだ挙句に兎の饅頭を手に掴めば)
……な、何と言うか、あのひよこ饅頭みたいで食べ辛い。いや勿論。食べるけどね。頂きます。
__わっ、美味しい…!
(てっきり粒餡だと思っていたが中はこし餡で、皮のモチモチした食感と滑らかな餡子の相性が良くお茶が欲しくなるような味で、舌鼓を打っていき)
(しばらく何処から食べようかと迷い、さすがに顔から行ける程外道になりきれず脇腹辺りから一口食べて。和菓子独特の派手過ぎず、控えめながらほんのりとした甘みに此方もまた舌鼓を打ち、見目もさることながら味も文句ないクオリティで思わず感嘆の息を漏らし)
本当だ…美味い。
…餡も甘すぎないでさっと口の中で消えて行くから凄いな…
(和菓子はやはり繊細な味がすると思いながら一口一口楽しんでいき、あっというまにその饅頭は食べ終えてしまい)
これが職人技と言うやつか…。ごちそうさま。
(和菓子は小降りなのであっという間に兎の饅頭を食べてしまうと、やはり飲み物__特にお茶が欲しくなり。どこかに自動販売機はないかと探していれば、ふと奥の方でお茶会が行われていて。その前のカウンターでは“お抹茶一杯250円、桜の落雁付き、持ち帰り可”と書かれているのが目に入り。隣に座っている狼君の肩を軽く叩けば)
狼君、あそこで抹茶買って来ない? お茶会に出なくても抹茶飲めるみたいだしさ。
ん、ごちそうさま。
(相手もすぐに食べ終わったのを見届けて両手を合わせると立ち上がり次はどうしようかと相手を見遣れば何かを探しているように見えて。おや、と首をかしげてどうしたのかと尋ねようとすればふと相手が奥のカウンターに貼られた貼り紙を示しており。見てみればどうも抹茶が持ち帰りで手軽に飲めるというものらしい。丁度甘さが口の中に広がっていてお茶を飲みたいと自分も思っていた所だったので頷いてカウンターにいた女性にそのセットを二つ頼んでお金を払うと紙コップに入った抹茶が出てきて、お持ち帰りだと紙コップなのかと苦笑するものの抹茶は本当にきちんとした手順で立てられたもので良いにおいが漂っていて)
はい、これ、朧の。…うわ、美味そう。ってか凄いお茶の匂い。
あっ、買って貰っちゃって悪いね。ありがとう。確かにまさに抹茶と言う感じの匂いだね、落ち着くよ。
(相手にお礼を言って紙コップに入った抹茶を取れば手でしっかりと持っていき。ついでに渡された小さな桜の落雁も手に取れば、先程の席に座り直していって。そう言えば、カウンターの張り紙には由緒ある茶道家が京都の宇治抹茶を茶筅で点てました、と書かれていたのを思い出し。だから普通のお茶よりも良い匂いがするのかと納得すれば、躊躇いなく一口飲んでいき。全く甘みの無いほんのりとした苦さのある抹茶だったがそれでも飲みやすい口当たりで、不思議だなと感じつつも桜の落雁を齧りながら抹茶を飲み干して、その満足感から息をついていき)
はぁ…落ち着く。
ん、どう致しまして。
(相手に言葉を返し自分もしっかりと紙カップを握り。もう一度香りを楽しんでからゆっくりとそれに口をつけると口に入れた瞬間抹茶の香りと苦み、そして少しの酸味が口いっぱいに広がり。すっと消えて行くわけではない奥の深い味を舌で楽しみつつ口語にほろりと甘い落雁を齧れば非常に相性は絶妙で。和とは良いものだな…と爺臭い事を感じながら抹茶を飲み干すと落雁が包まれていた紙ナプキンを小さく折り畳み紙コップの中に入れるとくしゃりと潰して近くに置いてあったゴミ箱へと入れて此方も小さく息を吐き)
何だかほっとする味だな。
ねっ、ホッとするよ。
(まだ肌寒いものの太陽はポカポカとした陽気だったので、うっかりこのまま寝てしまいそうな雰囲気になってしまったがハッとして目を覚まさせれば、手に持っていた紙コップなどを近くのゴミ箱に捨てていき。充分に和菓子フェスティバルは堪能した為に今度はちゃんと赤レンガ倉庫の方を楽しもうと立ち上がれば彼の方に視線を遣り)
さてと、小腹も満たしたことだし赤レンガ倉庫で何かお土産でも見て行こうか。
っはは、朧、眠そう。
ん。そうだな。
(相手の顔を覗きこんでみると少しばかりうとうとしている様子だったのでおかしくて少し笑って揶揄う様に言ってから自分も立ち上がり和菓子フェスティバルの会場から赤レンガ倉庫の方へと歩いて行き。赤レンガ倉庫の方もまた観光地とだけあってそこそこ混雑しており、人の行き交うのを見ながら目当ての土産物屋を目指して歩いて行き)
へぇ、色々なお土産が売ってるね。このチョコとか、童謡の赤い靴をモチーフにしていて横浜らしいね。
(眠そうにしていたところを見られていたらしくそこの部分は不覚だったと思いながらも、赤レンガ倉庫へと来れば程々に混んでいるお土産コーナーに立ち寄って行き、そこに置いてあった有名な横浜の童謡“赤い靴”を形にした、サイズ5cm程のチョコレートのパッケージを手に取り。どこかレトロな雰囲気のそのお土産の説明文にはロングセラー商品と書かれていて、確かにこのように凝っていたら買いたくなると思っては取り敢えず買い物カゴを探していき)
赤い靴?…ああ、あの外人に連れて行かれるやつ…
(お土産コーナーを見て回りながら色々な商品に目をやっていると相手が赤い靴をモチーフにした商品を取り上げたので少し首を捻って何の話だったかと思いだしてさらっと要約してから何となく物騒であることに気づき口を噤み。しかしながら赤いかわいらしい女の子のロゴの入ったそれは中々に愛らしく値段も手ごろで、向こう側に置いてあった買い物かごを二つ取って片方を朧に渡してから自分もそのチョコを一つ手に取りこれは龍へのお土産で良いだろうとかごの中に入れて)
そうそう、よく考えると怖い歌だよね。
(子供の頃は意味が分からなかったが大人になって聞くと、それはゾッとするような怖さを持つような歌詞になっていて。しかし、それをモチーフにしていてもこのように可愛いお土産に変身してしまうのだから凄いよなぁと考えつつ、狼君から買い物カゴを受け取ってお礼を言い。赤い靴のチョコレートは、その童謡に馴染みの無さそうな綴さんに話題の提供がてら敢えてあげようと考えていき。ふと、赤レンガ倉庫のレンガに見立てた大きめのブラウニーが目に止まったので、それを部下のお土産として五つぐらい買っていき)
他にも洒落たものがあるね。赤レンガ倉庫のお土産は特にパッケージが凝っているね。
そうそう、意外と童謡って子供の頃は何も考えずに歌ってるけど怖いの多いよな。
(同意しつつ他のお土産も見てみると赤レンガ倉庫に見立てたブラウニーを相手が大量に買っているので見てみると確かに言われた通りパッケージが凝られており。貂に買っていってやろうとそれを買い物かごの中へと入れると、最後に虎牙へのお土産も見ていって。彼に関してはまともなものを買う気はなく、自分たちは足を運ばなかったが中華街のお土産も置いてあり、喋りかけるとその言葉をそのまま返してくれるパンダのぬいぐるみが売っていたので少し笑ってそれを買い物かごに入れてから朧を呼び)
朧、こっち来てみろよ。
確かに、かごめかごめとかね。
(ふと思い浮かんだ童謡である、かごめかごめや花一匁を思い出しながらエグいなと苦笑していき。一通りお土産を見ては特に他に買いたい物も無いなと考えて、一旦買い物を中断していると、おもむろに何やら企んでいるような笑みを浮かべた狼君に呼ばれたので、何だろうかと疑問に思ってそちらへと近づいて行き)
ん?どうかしたの?
(相手が近付いてきたのを見ては訳知り顔で自分の喋った言葉を繰り返すパンダのぬいぐるみのサンプルとして展示されているものを手に取ってはひょこりと自分の顔の前にそれを掲げてぼそぼそと内蔵されているマイクに言葉を入れていくと、パンダから合成された愛らしい機械音で”朧、大好き!”と再生されてくすくすと笑ってパンダを外すと元展示されてあった場所へとそれを返して)
俺の百倍は可愛く言ってくれるな。買うか?これ越しにお前と話そうか。
〜〜〜っ。狼君、ほんと君って…! あー、もー…!
(突然のことに赤くなった顔を隠すように前髪をくしゃりと乱して手で顔を覆い。うつむき加減に小声でそう言っては、心の中では可愛いあざと過ぎるなどと惚気が止まらず。今すぐにでも抱き着きたかったのだが、店内でそれをするのはさすがに憚られ。再び周りの客に聞こえないようにボソボソと呟いては)
……狼君の方が比べ物にならないぐらい可愛いからいらないよ。
あはは、何だよ。可愛いのは俺じゃなくて此奴だって。
(顔を真っ赤にしてしまった相手を見て可笑しそうに笑うと喜んで貰えたのだろうかと考えながらニコニコとして其方を見遣り。とんとんと指先でパンダをつつくと”此奴だって!”と愛らしい声で返してくるパンダを見ながら本気で買おうかと考えていると不意に聞こえた相手の呟きに今度は自分が顔を赤くする番で。思わず顔に熱が集中してしまい誤魔化すように視線を外すと買い物かごを持ちさっさと歩き始めて)
そ、そうか。じじ、じゃあ要らないな。かかか会計行くか!
っふ、…ははっ、狼君が可愛いことをして来たのに、そっちが動揺してどうするの。
(未だに自身の頬の熱は引いていないが同じく顔を赤くしている相手を見たら余計に愛らしく思えて、つい笑ってしまい。自身も会計を済ませようと思い、彼の後についていって列に並び。混んでいたがものの数分で順番が来ると、その前に頬の熱は引いていたので何食わぬ顔で会計をしていき。そして、自分と同じく買い物を終えた狼君を探していき)
………可愛くねぇし。
(可愛いのはパンダだとあれ程言っているのにと溜息を吐きながら熱を逃がしつつ会計を手早く済ませると会計を既に終えて此方を探していた相手の隣に移動して時計を見遣るとそろそろ港へと向かう時間になっており、店を出てから駅へ向かって再び歩き出して)
ん、そろそろ港に行かねぇとな。港の最寄りまでは電車で一本だからまずは駅に向かうか。
了解っ、そろそろいい時間だしね。
(その提案に頷けば赤レンガ倉庫を出て行って、駅の方へと向かって行き。美味しい和菓子も食べれたしお土産も買えたし可愛い狼君も見れたしと、自分的には非常に満足であり、気分良く駅へと到着すれば改札を通ってちょうど来た電車に乗って行って。タイミング良く空いていた座席に腰を下ろしていき)
(駅へと向かい直ぐに入ってきた電車に乗って相手の隣に腰をかけ。ここから港の最寄りの駅まではそこまで遠くなく、数十分とせずに目的地にたどり着いたので相手と共に降りると港へと向かい。港には既にあの船が停泊しており、いよいよ後は東京に戻るだけだなと思うとなんとなく寂しく感じてしまうもののこの二日間は非常に充実していて、相手と普段は出来ない様な甘い時間を過ごすことが出来たので満足しており、二人で船に乗っていき)
さてと、じゃあ一度部屋に戻って降りる仕度でもするか。
そうだね、直前になって慌てるのも何だし。
(電車に乗った後、すぐに港へと到着したので再びクルーズ船に乗り込んで行き。あっという間だったなぁと、この二日間の旅を名残惜しく感じつつも自分達の部屋へと戻ればさっさと荷物を片付けようと、トランクケースに丁寧にお土産を詰めていき)
(相手と共に自室へと戻って荷造りを開始し、散らかしていた物を全て片付けて、お土産もスーツケースの中へと入れていき。全てが終わった頃船はまた出航して、もう一時間と経たず東京についてしまうので最後に一杯コーヒーでも飲むかとコーヒーメーカーの前まで行ってから今度はハニーミルクラテを手に取ってから相手に尋ねて)
お前も何か飲むか?
それじゃあ、キリマンジャロを飲もうかな。
(全ての荷物をトランクケースに詰め終えれば、どうやらクルーズ船はいつの間にか出発していたらしく。微かに揺れているなと思っていれば、不意に相手にコーヒーのことを尋ねられたので少し考えてから頷いて、まだ飲んでいないキリマンジャロを口に出していき)
ん、わかった。
(相手の言葉に頷いてキリマンジャロのリフィルをセットしてコーヒーを抽出していき。それを終えると今度はハニーミルクラテのリフィルを手に取り甘そうだなと思いつつセットすると抽出ボタンを押して。こんなに良いコーヒーメーカーでコーヒーを飲むこともしばらくは無いなと思いつつミルクと砂糖を前にして相手に尋ね)
ミルクと砂糖はいるか?
そのままで大丈夫だよ。ありがとう。
(トランクケースをベッドの上へと置けば、何だかこの二日間は相手にコーヒーを淹れてもらってばかりだと思って、少し申し訳なさそうに感謝の言葉を述べていき。今は甘いものよりもストレートで締めたい気分だったので、ミルクと砂糖は入れないことを示していき)
わかった。
(要らないということだったので自分もこれ以上この飲みものを甘くする気はなくそのまま二つのカップを手に取ってソファまで運んでいくとテーブルにトンと二つを並べておき。ふかふかのソファに腰を下ろしてハニーミルクラテを手に取るとふうふうと息を吹きかけてからゆっくりとくちにするとミルクと蜂蜜の甘味が程よく口の中へと広がっていきほっと一息吐いてから相手に問いかけて)
…楽しかった、か?
勿論、楽しかったよ。
(テーブルへと置かれたもう一つのコーヒーを手に取って自身もソファーに座れば、心なしか相手との距離を詰めていき、緩く穏やかな笑みを浮かべた後、淹れてもらったキリマンジャロのコーヒーを飲んでホッとして心を休めていき。続いて、幸せそうな声色で呟いて)
凄く良い思い出になった。
そうか、良かった。
(ソファの隣に座った相手の笑顔は穏やかで、そしてその声音は本当に幸せそうで。彼の20歳の大事な日。こんな大事な日を自分との時間に費やして貰ったのだからその分相手が一緒に過ごせて幸せだったと思えるようにと意気込んでいたのだが、この声を聞けば良かったと安堵出来て。こんな風に相手と二人きりで過ごせる機会はまた暫く無いだろうし、そう考えると名残惜しくもあるのだが。ゆっくりと過ぎていく時間に今だけは身を委ねてしまおうとまた一口甘いハニーミルクを飲んで)
(コーヒーが溢れないようにそっと相手の方に肩を寄せていき、手の中のコーヒーと彼の体温を感じながら表情を緩めていって。また明日からはいつもの日常かと思ってしまうものの、それでも相手と一緒に居られるのなら周りなど関係無く。これからもきっと大変なことが起きるだろうけど、その度に彼と共に乗り越えて行こうと思いながらコーヒーを一口飲んでいき。__やがて、クルーズ船が緩やかな速度で止まった感覚がして。恐らく目的地に着いたのだろうと思っては、すっかり空になったコーヒーをテーブルに置いていき)
東京湾に戻って来たみたいだね。
(不意に相手と肩が触れ合って少し驚いたもののゆっくりとその体温に自分の体温を預けると無音ながら互いに互いの気持ちを預けている時間を楽しんで。ハニーミルクも甘かったがこの時間も十二分に甘いなと思わず口元を緩めながら考えていれば不意にクルーズ船が静かになり、緩やかな速度で止まっていき。もう着いてしまったかと名残惜しさを感じながらもゆっくりと相手から離れてスーツケースを手に立ち上がり)
ん、そうだな。Apatheiaの近くまで送っていくよ。
良いの?なら、お言葉に甘えるよ。
(ゆっくりと立ち上がってトランクケースを手に取れば、相手の言葉に嬉しげに微笑んで部屋を出て行き。そうして良い思い出をくれたクルーズ船を出て行くと、東京の港へと降りて行って。そのままゆったりと帰路についていたものの、程なくしてApatheiaの近くまで来てしまい。良い時ほど時間が流れるのは早いと思いながら彼の方を見て)
今日は送ってくれてありがとう。本当に楽しかった。ありがとう、狼君。
(港に降りて車で相手をApatheiaの近くまで送っていくと、車から降りた相手の方を見て少し物寂しい気持ちになったものの明日から会えなくなるわけでも無いのだしと割り切って手をひらりと振って)
お前が楽しめたなら俺も嬉しいよ、じゃあな、気をつけて帰れよ。
(ゆっくりと車を再び発進させると今度はAtaraxiaへと向かって車を走らせつつこの二日間の思い出を振り返ったりして)
じゃあ、また明日。 そっちも気を付けて帰ってね。お休み、狼君。
(Ataraxiaへと車で帰って行く相手を見ては、自宅マンションに帰る間にまた二日間の思い出を脳裏に浮かべては口元を緩ませ。楽しかったなぁと、惚気ては寝る支度をしていき。ベッドへと入れば疲れていたのか、そのまますぐに寝てしまい)
(/今晩は! 誕生日イベ楽しかったです!!何と言いますかまたステップアップしましたね!(( あと赤レンガ倉庫のパンダの時の狼君可愛過ぎて天使かと思ってました(真顔(( 何だか途中で色々ご迷惑をおかけしましたが、無事に終着点へと着いて良かったです…!! / 次のイベなのですが、普通の任務と朧のヤキモチでしたらどちらが良いでしょうか?是非ご意見を!)
(Ataraxiaに帰り部屋に戻ってみると貂が二日間の様子を聞いてきて色々と言葉を濁しながら答えたりしていき。ブラウニーを渡すと年相応の笑顔を見せて喜んでくれたのでくしゃりと頭を撫でてから、くぁと欠伸をこぼし荷解きもほどほどに、さすがにこの二日間は疲れたのでもう眠ってしまおうと考えてゆっくりと寝室へ足を運びベッドの中に潜り込み瞳を瞑れば直ぐに眠りに落ちて)
(/今晩は!!そう言っていただいて此方も安堵しております…!!そうですね、徐々にステップアップしていく感じが見守っていてハラハラして楽しいですね…!!うわああああ天使とは愚息には勿体無さすぎる褒め言葉ですありがとうございます(感涙)、いえいえ、大丈夫ですよ!!お気になさらず!!、次イベ直ぐに関係を壊してしまうのもアレだとは思うのですがどうしてもヤキモチイベが気になっておりまして…!!ぜひそれに致しましょう!!)
(数日後、新年度に入ったこともあり、Apatheiaも部屋の模様替えがされてボスの気分でリニューアルをされていて。何だか新鮮な気持ちで仕事に取り組んでいたところ、今日は午後に急なパトロールが入ったので刃君と共に街へと出掛けて行き)
(/もはや親のような気持ちで二人の仲を見させて頂いている次第です…!!(( いやもうほんと天使過ぎて愚息共々天に召されるところでしたよ!(( お優しいお言葉をありがとうございます…! /
ヤキモチですね! 流れですが、上の方(お好み)が狼君があまりにも女性慣れしていない為に潜入捜査を任せられない→諜報員も出来るようにさせるため女性慣れさせよう(カップル装うのは怪しまれないから)→ある組員の女性と数日間カップルのフリで(いつでも)→初日で互いにパトロールで愚息とばったり会う、こちら気にしてない風で内心で超絶気にしてます→数日間狼君は狼君で忙しくて、しかも女性にデート(相手の一方的)と言われるたびにタイミング悪く街とかで愚息と出会うなど→最後に狼君は上の方に女性慣れの成果を見せて来いと麻薬栽培してるらしい富豪のパーティーにカップルのフリして潜入調査する任務を貰い、ちなみに愚息も単独ですが潜入捜査してて、まあ任務の最中か終わった後に愚息の我慢の限界が来る。みたいな流れです! ちなみにヤキモチ焼き過ぎて愚息が怖くなってしまったら済みません…!(( )
…え、…その人と?
(ある日の事、不意にボスに呼び出され何事かと思えば告げ渡されたのは女性の組員との合同パトロールで。正直女性の扱いは本当に苦手なのだ。そもそも二人きりでパトロール等本当に何を喋れば良いのかわからないし気まずいだけである。しかしボスの言い分としては余りに自分が女慣れしておらずカップルを装った潜入捜査を任せられないのでどうにかしろとの事。命令は命令なので渋々了承し隣に控えていた女性と軽く挨拶を交わすとまずはそのままパトロールをという流れになって街へと出ることになり。カップルのフリをしろとのことで初対面の女性と腕を組む日が来る羽目に陥るとは誰が予想できただろうか。確実にぎこちない歩き方になっているのだが、寧ろ女性の方は様になっていて、時折当たる柔らかな膨らみに本気で此方の頭がおかしくなりそうだ。こんな事に数日間も耐えるのだろうかと思いつつ取り敢えずこの無言は避けなければと考えて名前を聞くと”兎和(とわ)。”と簡潔な返事が笑顔と共に返されてそれだけで心拍数が上がってしまい自分の名前を何とか相手に伝えるのがやっとでなるべく視線は合わせないようにしながら歩いて行き)
(/龍恋の鐘のギャラリーに紛れて二人を見守っていたのは私です()、そそそそんな…恐縮であります…!!いえ、私もやってしまう事があるので…(汗)、流れ了解いたしました…!!ひえええそれは完全に誤解しちゃいますよね()、了解です、女性の方は狼に気があるという事で宜しいですか…?清楚派よりもちょっと遊んだ感じの女の子の方がいいでしょうか…?)
…………?
(午後、刃君と共に街のパトロールをしていると何だか昼間っから夢でも見ているのだろうか、狼君らしき人が可憐な女性と腕組みをしているのが見え。これは夢か、夢なのかと混乱する頭でそちらを見て固まっていれば刃君が「あれ?あそこにいるのは狼先輩じゃないですか。隣には……女性?……あ」と何やら変に察せられてこちらに生暖かい目を向けて来たので、まだ振られたわけではないと全力で首を振っていき。大体狼君は女性慣れしていない。きっとアレは任務で仕方なくだと、強く心の中で思っては緊張した面持ちで、しかしなるべくいつもの笑顔を見せながら二人に近付いて行き)
……やあ、狼君。偶然だね。
(/な、何と…!?たぶん私もそこに紛れていました!!(( / どんな女の子でも大丈夫ですよ!ちなみに全力で女の子を悪者にはしない(したくない)主義ですので!大体朧のヤキモチが悪いと言うオチですので、大丈夫です!( 親指グッ ))
…え、ええと。そ、そうだ。ぶ、武器とかって何使ってるんだ?
(大体女性というのはこの自分の顔を見て怯えるものだが慣れているのか兎和は別段気にする風でもなくこのぎくしゃくとした質問にも笑顔で”ワスプナイフ”とかなり物騒な武器の名前を出してきたのでははははと乾いた笑いを返していれば不意に声を掛けられて顔を上げて飛び退きそうになり。何とタイミングが悪いのか、其処にいたのは朧の姿で、笑っているもののなんとなく雰囲気がぎこちなく。これは何か誤解されただろうかと思うものの隣に兎和が居る手前妙なことも言えず此方もなるべく普段通りに振舞う他はなく取り敢えず何とか直ぐに相手から離れようとして)
お…おう、朧。お前もパトロールか?俺もパトロールなんだよ、偶然だな。ははは…じゃ、じゃあな。
(/一緒に見ていたのですね…物陰から!!()、了解致しました…!!自分好みの女の子にしてしまいますね…!!朧君には大変モヤモヤとした気持ちをさせてしまい申し訳ないです…())
ははっ、釣れないなぁ狼君。一緒にパトロールしようよ。
(もはやApatheiaやAtaraxiaなど関係無く少し乾いた笑い声を返せば、内心で何で逃げる!?と焦りつつ、すぐに相手の服を掴んで止めていき。後ろで刃君が「端から見たら不審者ですよー」と声を掛けて来ていたがそんなことすら今は関係無く、とにもかくにもこちらは聞きたいことが山ほどあった為に一応表面は至って普通ににこにことしたまま、相手を引き留めようとしていき)
(/同士ですね!!(( 了解です! いえいえ!たぶんギャグ寄りですのでお気になさらずに!あと余裕の無い愚息を書くのも好きですので!!/ ではでは何か質問がなければ失礼しますね!)
いいいいいや俺らほら、”そういう”任務中だから。今日は勘弁してくれ…
(相手の笑みの種類が乾いた笑いになっているのに気づき慌てて弁明しようとするものの良い言葉が思い浮かばず服を掴んでいる相手に何とか笑顔を向けて説得を試みようと遠まわしに言葉を告げていき。完全に何か勘違いされていると思うものの自分にはどうすることもできず、”カップルらしく”しなければならないとすれば朧達と一緒にパトロールしてしまうのはまた立派な任務違反であり何とかその手を振り払おうとしてはっとして隣の兎和を見ると”…この人…何処かで見たことが…”と言っているので更に慌てて力付くで相手の手を引き剥がし兎和の手を引いて)
じゃ、じゃあな朧!またいつでも連絡してきていいからな!
(/了解致しました!!此方も失礼いたしますね…!!/蹴可)
!? 狼君ー!!
(何だか今生の別れみたいに叫んでしまったが、結局相手を引き留めることは出来ずに内心で落ち込み。何と言うか、最近誕生日を祝って貰えたからか、幸せの真っ最中に浸っていた為に幾ら任務と言えど相手が女性と一緒にいるのは嫌なもので。しかも腕を組んでいたし手を引いていたし…。いや、別に女性は何一つ悪く無いのだがとそこまで思い、そう言えば前に狼君が梓ちゃんのことで参っていた時期があったことを思い出し、正に今の状況は逆転しているなと考えていき。一連の流れを見ていて笑いを堪えている刃君が「…っふ、よ、良かったですね。浮気じゃなくて」と言っていたので、それでも良くはないと思いながら妙に騒つく気持ちでパトロールを再開していき)
……、何だか悪いな。変な奴に絡まれて。
(相手の悲痛な声を背後に聞きながらその場から逃げるように立ち去って行き。パトロールと称して街を巡回しながら兎和にぎこちない笑顔を向けてそう謝り。相手も驚いただろうと思っていると”大丈夫。…でも何処かで見た覚えが…”とまだ言っているので”あ…あぁ、そうそう、アイツ、ラボの職員で!!偶にこっちにも来てるから、廊下とかですれ違ってるんじゃないか?”と咄嗟に言い訳をして兎和を何とかなだめる事が出来。一通りパトロールを終えて報告に行き、これでめでたく解放。と思ったのだが。ボスに笑顔で”いつでも、って言ったよね?”と言われ、その瞬間に死刑が確定し。正直本気で同室で数日間一緒に過ごすことになるとは思っておらず、寝るときとお風呂は別にしていいが恋人らしさをより深めるためにそれ以外の時間は共にするようにと言われて隠れて溜息を吐きながら兎和を部屋に連れ帰ると先に部屋に居た貂に目を丸くされて)
…………。
(あれからパトロールでApatheiaの本部に帰った後でも、不安やらモヤモヤする気持ちは拭えずにいて。仕事の最中でもどこか思考が遠くに行っていたのでさすがに部下達に「ちゃんとして下さい」と怒られてしまい。しかし、どうにも狼君のことが気になる。浮気はしないと信じているのだが、もしかしたらとか万が一とかの杞憂は取れずに結局今日の仕事中はそのことばかり考えていて。自宅マンションに帰って来たが、そこでも悶々と悩んでいて。ふと、先程街で会った時に“いつでも連絡して来ていい"と狼君が言っていたことを思い出したので、早速電話を掛けていき)
(貂に詳しく事情を説明すると”ほう…”と何処となく察した様な表情をしてそれ以外は何も追求せずに居てくれたのは良いのだが、兎和の分の寝床は自分の部屋にはなく、これは数日間は自分がソファで寝るしか無さそうだなとぼんやりと考えながら取り敢えず兎和はソファに座らせておくと不意にポケットの中のスマートフォンが振動し。間違い無く朧だと一瞬で分かり作り笑いで”少し諸用があるから”と何とか兎和から離れてベッドルームに駆け込むと通話ボタンを押してあの様な別れ方をした為に相手は怒っているだろうかとおずおずと電話に出て)
…も、もしもし…?
__もしもし…!
(相手が電話に出た瞬間、彼のバツの悪そうな声色とは対照的にこちらは電話に出てくれたことの嬉しさで明るいトーンで声を出していき。ひょっとしたら、彼女といてコールにすら答えてくれないんじゃないかと思っていたのでそれは杞憂で。時間帯的に今は家にいるのだろうか?先程の女性とは別れたのだろうか? そんなモヤモヤする拭えない気持ちを思いつつも、まずはどういう任務なのか聞こうとし)
狼君、説明を求めたいんだけど…良い?
……いや、だからな。俺が余りにも女慣れしてなさ過ぎてカップルのフリもロクに出来ないと潜入も出来ないから慣れる為に数日間あの人と行動を共にすることになって…だからお前とは暫く会えない。悪い。
だってあの子、お前の顔多分知ってる。思い出すのも時間の問題だぞ。
(やけに明るい声で電話に出た相手にしどろもどろになりそうにりなりながらもしっかりと説明をしなければと一つ一つ丁寧に説明して行き。その上で任務を遂行するためにという点でも、兎和が思い出すのを避ける為にもやはり相手と会うのは避けなければならず先に謝っておくことにして相手の反応を待ち)
カップルのフリ?……まあ、任務だし仕方ないよね。僕だって梓ちゃんのことで君に迷惑を掛けたことあるしさ。暫く会えないのは寂しいけど……うん、分かった。こっちのことは気にしなくて大丈夫だよ。
(ヤケに饒舌になってしまったが、それでも声のトーンは変わらずに言い切り。確かに狼君はあまりにも女性慣れしていないから潜入調査でカップルのフリが出来ないのはだいぶ任務に響く。上の判断は合っているし、それに女性慣れすれば今後彼が任務をやりやすくなるかもしれない。そう考えるとただの私情で嫌だと思うのは自分勝手なので、どこか燻る感情が胸の底にあるものの、それこそサラリと了承をしていき)
ん、悪いな。本当に。
ごめんな、こまめに連絡は取るようにするから。
(相手が理解してくれたとはいえ一定期間距離を取ってしまう事に変わりなく、申し訳ないと言うように謝罪を重ねて。隙間時間を見て連絡を取ることくらいはできるだろうからと付け加えると少し眉を下げて。自分としても相手と会えなくなってしまうのは寂しく、任務とはいえ女性と1日中行動を共にするとなるとかなり辛く、気が重くなりながら電話を切って)
じゃあな。またメールとかするな。
じゃあ、またね。こっちからもメールするよ。
(もう少し話していたかったが、大人しくここで会話を終わらせて切っていき。女性と行動をすると言っても仕事の時だけだろうと楽観的に考えて、まさか一日中行動しているわけがあるまいとこの時はそう軽く考えており。それにしても会えないとなると、いつも街で一緒に取っている昼食でも会えないのかとやはり寂しくなり。その間に、やっぱり男と付き合って女役をするよりも女と付き合った方が自然だし良いや、とかにならないだろうか? いや、大丈夫。狼君だからきっと大丈夫だと思いつつも、晴れない気持ちをのまま本日はすぐに寝ることにしてベッドへと入っていき)
(電話を切り部屋に戻ると夕食の支度をして。三人分の料理を作るというのは予想以上に骨が折れ。兎和は美味しいと言ってくれたもののこうしていると本当に家族のような気がしてきてしまう。明日からは料理も手伝うと兎和が言うので女性にそんなことは出来ないと断ろうとすると"普通のカップルだったら本当は女の方が料理をするのが一般的だし"と言われてしまい、確かにそういうものかと思ってしまい結局翌日からは一緒に料理をすることになり。先にお風呂に入ってもらって自分の寝室に案内して扉を閉じた所までは良かったものの正直幾ら朧と付き合っているとはいえ健全な男としてふわりと良い香りのする風呂上がりの女性と接していれば普段以上に心拍数が上がってしまいシャワーを浴びてソファに寝転がり毛布を手繰り寄せながら小さく溜息を吐きつつ就寝して)
……刃君。いくら仕事とは言え、男女がカップルのフリを長くしていたら間違いとか起きるかな……?あの女性、雰囲気も良かったし狼君も満更じゃなさそうだったしさ。
(二日後。Apatheiaの本部の仕事場で、仕事机に突っ伏しながら唯一事情を知っている刃君へと愚痴のような相談をしていき。彼はまたかと言った風に呆れながら「何ウジウジしてるんですか。ほんと朧先輩って狼先輩のことだけに関しては情けなくなりますよね。それ以外のことはいつも興味無さげにしている癖に」と塩対応で仕事の書類を渡されてしまい。何も言えずにいれば、その態度に相手は言い過ぎたのかと思ったのか「…まあ、狼先輩のことですし大丈夫ですよ。と言うか、貴方達二人がそれぐらいで破局するようには見えないですし」と苦笑を浮かべてサラリと言っていて。今はその言葉だけでも有り難く少し励まされていき。ふと、時計を見ればお昼の時間になっていたので気分転換に一人で外で食べようと思って、彼に礼を言いつつヒラリと手を振って)
ありがとう刃君。少し元気出たよ。
……それじゃあ、僕はお昼に行ってくるよ。
(数日後の事。それとなくではあるがカップルらしさと言うのも板について来た気がする。要は朧が自分にするような事をすればいいのだと気づいたのは最近の事で。今日もパトロールでこうして彼女と町中を歩いている訳だが、どことなく様にはなっている、と、思う。カップルとはいえ手を繋ぐ事だけは勘弁してもらい今日も腕を組んで歩いているわけではあるが最近は会話もスムーズになってきた。そういう点ではボスの読み通りと行ったところなのだろう。そんなことを考えながらまた朧に会ってしまったりしなければいいがと思いつつ歩いて行き)
__!狼く……。
(お昼時とあってか、混んでいる街中を歩いていたところ狼君の姿が見えたので思わずいつものように近付いて話し掛けようと思ったものの、隣に女性の姿が見えて立ち止まり、自身がApatheiaの幹部だとバレかけていると言った言葉を思い出せば、その足は自然と止まっていって。渋々狼君に話し掛けることは止めて何処かに行こうと思ったが、やはり恋人の動向は気になるもので。お昼ご飯はそっちのけで、後ろから気付かれないように二人を尾行しようとしていき)
(まさか朧が付いてきているとは知らずパトロールを続けていると不意に隣の兎和がこちらを見上げてきて。流石に兎和は女性とだけあっていくら身長が低い自分といえども彼女よりは高く自然とこういう形になるのだが上から人を眺めるというのはなかなかに新鮮だなどと考えていれば不意に“今度、一緒に出掛けない?”と問いかけられ。一瞬相手の言葉の真意がわからず一緒にも何も任務でこうしてずっと一緒ではないかと思っていると視線を外され小さな声で“任務とか、無しで”と付け加えるように言われ。幾ら察しの悪い自分でもそれがデートの誘いであることは容易に理解出来驚いてそちらを見て)
(尾行すること数分。側から見たら自身は怪しいことこの上ないストーカーかもしないなと思いつつも、長年磨き上げてきた尾行力により今のところ周りや相手にも怪しまれている様子は無く済んでいて。しかしながら、狼君は成人男性にしては小さいとは言えさすがに女性の隣に並んでいると高く見え。同時に自分なんかよりも世間一般から見たらそっちの方がお似合いなんじゃないかと落ち込みそうになるが、気をしっかり保って尾行を続けていき。それにしても幾らカップルのフリとは言え、パトロールなのに今日も腕を組んでるなんてやっぱりノリノリじゃないかと、ヤキモチを覚えたがおもむろに狼君が驚いている様子が後ろから見えて、何の話をしているのだろうかと気になって心なしか距離を詰めていき)
で、デデデデート、ってこ、事か?
(確認しなければと思い尋ねてみたものの収まっていた上ずった声が再び出てしまい。否定してくれと思うものの兎和は少し俯いてこくりと小さく頷くのでこちらの心臓が飛び上がってしまい。生まれてこの方女性にデートに誘われた経験等持ち合わせておらず、どう対処すればいいのかわからず。自分には付き合っている人が居ると言うか?しかしそれならば何故此処まで極端に女性に弱いのかと訝しがられてしまう。だが本当に男と付き合っていますだなんて言ったらどんな目で見られるかわからない。そういう事に偏見を持っている人が居ることも知っているし彼女がそうでないとは限らないのだ。困ってしまって回答もできず黙り込みながら歩いており)
……???
(今デートと聞こえたような気がしたのだが自分の聞き間違いだろうか?仮にもしデートだと言う言葉が合っていたとしても、任務でのカップルのフリをしている最中のデートなのだろうか?それとも個人的なお誘いか?後者だとしたら、あの女性は狼君にデートのお誘いをしたと言うことになり相当見る目があると思いたいところだが、彼は自分が幸せにしたいと思っているのでどうにかこの事態は止めたいところであり。しかしここで割って入っていくのも不自然なので、狼君がうまく断ってくれるしかないかと後ろからじっと彼に視線を送り)
え…と、デートとかそういうの俺、全然、女の人とした事とか無くて…
(朧とだって両手の指で足りる数しかしっかりとしたことは無いと思いつつしどろもどろになりながらそう言うと兎和は”知ってる。でも、やっぱりちゃんとデートとかも経験したほうが有意義だと思う。”と輝く目線を送られてしまい更に退路を塞がれた気がして。どうしようどうしようと思っているとぎゅっと腕を組む力が強くなり、女の人から誘うのはやっぱり勇気が居る事なのだろうなと思い。しかし変に期待をさせては落差が大きくなるだけだとも思い上手い断り方も見つからず取り敢えず今日のパトロールはこの辺りで切り上げることにして本部へ戻る道を歩き始め)
…ごめん、ちょっと考えさせてな。
……断って、ない?
(何とか聞こえてきた声を拾っていたら、彼は保留という選択肢を取っていて。思わずポツリと呟いた言葉は地面へと落ちていき。ならやっぱり任務でのデートだったのだろうか?しかしそれにしては狼君は慌て過ぎやしないか?もどかしい、こういう時ですら敵組織同士という壁が邪魔するか。まあ良い後で電話で聞こうと、そこでメールではなく電話をチョイスしようとしている自分は随分と知らず知らずの内にモヤモヤが溜まっているのだなと思っては、自身も本部へと帰って行き。__その日の夜。仕事が終わったので早速彼へと電話をしようとしてコールをしていき)
あーーー…結局断れてねえ…
(任務が終わり少しだけ一人にして欲しいと部屋に閉じこもると大きく溜息を吐き。早く断ってやらなくてはと思って入るのだが口下手な自分がいうと傷つけてしまわないだろうかと心配で。正直女性から好意を向けられたのは本当に初めての経験だったのでかなり戸惑っており。どうしようかと思っていると不意にスマホが鳴りびくりと方を震わせ。おずおず画面を見てみればそこにあったのはやはり相手の名前。何となく罪悪感があり小さく溜息を吐きながら電話に出て)
…はい、もしもし…、朧…?
ああ、もしもし狼君。突然電話を掛けちゃってごめんね、姿が見れないから声だけでも聞いておきたくてさ。
(ニコニコとした声の調子で言うものの、電話越しの自身の顔はこれと言っていつもの笑顔と言うわけではなく、笑みを浮かべてはいるものの見ようによっては目が笑っておらず。狼君を責める気はこれっぽっちも無いのだがこのモヤモヤは晴れない為、やや威圧のある早口でそれらを言えば今日見て聞いたこと__すなわち、あのデートの意味とそれを何故相手が断らなかったのかを知りたいので彼に探るような真似をするのは些か気が引けだが、さっそく本題の方へと入ろうとし)
……あのさ、狼君。少し気になったんだけど、僕に何か隠してないかな?今日さ、偶々君達がカップルのフリをしている時に“デート”って言う単語が聞こえたら気になってね。
…ッ!?
(相手の声は何処か威圧があり、何を言ってくるのかと思えばピンポイントでその案件であり。まさか聞いていたのかと冷や汗が突然出てきて電話越しに思わず固まってしまい。いやいや、疚しいことは無いのだ、素直に話そうとぐっと真剣な声音で相手に告げ)
…あ、え、えーと…それはな…兎和が…えーと、そ、そう!デートに彼氏と行くらしくてどんな服装が良いんだろうかって聞いてきてな!
(……嘘を吐いてしまった。声音こそ真剣そのものだったが余りに自分の嘘は明け透けで相手ならわかってしまうだろうと思い更に冷や汗が出てきて言葉を付け加え)
と、とにかく!お前が心配してるような俺と兎和がデートに行くとかそういう事はねぇから。
……………………へぇー、そっか。ごめんね、疑っちゃって。
(嘘、と言うのは見え見えのことで何もそんなに必死に隠すことは無いのにと思ったが、まさかやましいことでもあるのかと思い直し、またもや威圧感を与えるつもりなど無かったのに妙な間を置いてから狼君へと返事をしてしまい。半ば無理矢理平静を保って言った言葉はどこか胡散臭いトーンになっていて、我ながら自身も嘘が下手だなと冷静な心情で考えていれば__ふと、電話越しに相手以外の物音がしたような気がして。何となく気になったので問い掛けてみて)
あれ?狼君って今仕事場?それとも家?
……、お、おう。
(やはり相手の声のトーンや間合いは普通の時の相手の物でなくおずおずと相槌を打ち。何だか申し訳ない気分になりながらもこれ以上話しているとボロが出そうな気がして早く切ろうと思っていたところに妙な質問をされれば少しきょとんとしてからそれには嘘を吐かず素直に事実を返事して)
…ん?家、だけど。
あっ、じゃあ貂君か。いや、何か物音がしたから気になっちゃって。
(まさか幾らカップルのフリとは言え、家にまであげているわけないかと一人で納得してはそう答えていき。気にし過ぎだとそんな自身に苦笑を零しては、何だかいつもより神経を使ってしまっているなと心中で溜め息をつき。本当ならもう少し話していたいところだったが、これ以上話していたら何だか気が気でなくなりそうだと思い一旦頭を冷やす為にもここで会話を終わらせようとしていき)
それじゃあ、またあし……じゃなくて、また今度ね。おやすみ。
ん?そうじゃないか?もしかしたら兎和かもしんねぇけど。おう、また今度な。お休み。
(相手の心配がよくわからず首を捻りながらそんな事を零してしまい。しかし自分は何か不味い発言をしたとは思っておらず、当然の事を言っただけだと思っており相手の返事を聞かず挨拶を済ませると電話を切り。そのまま風呂に入ったりと就寝の支度を終わらせてからやはりしっかり断ろうと兎和を呼ぶと"ごめんな。付き合ってる人がいるから、お前の気持ちには答えられないんだ。"としっかりと話すと兎和は少し驚いたような顔をしながらも"…そう。知らなくて、ごめんね。"と眉を下げて笑って言ってくれたので更に申し訳なくなってぽんぽんと優しく頭を撫でて"ごめんな、お休み。"ともう一度だけ謝ってベッドルームへ消えた相手を見送ってからソファに横になり大きな溜息を吐きつつ就寝して)
……………………ん?
(今何だか良からぬ単語が聞こえたような気がしたが、気のせいだと思いたいものの残念なことにハッキリと聞こえてしまったので、思わず電話越しで固まる羽目になり。数秒おいて首を傾げたが、これは駄目だ。許容範囲外だ。恋人が他の異性と一つ屋根の下で暮らしているなんて無理だ。大体まだ自分は狼君の家にすら泊まっていないのに。羨ましいと同時に、何だか今すぐにでも狼君にこのカップルのフリをすると言う任務を与えたお偉いさんの首を絞めたい気分だ。しかも狼君も狼君だ、普通恋人の前でそんなことをサラッと言うものか?そう言うところが狼君らしくて良いと思うけど!と、一人勝手に悶えていること数分。大きな溜め息をついて柄にもなく不貞腐れた様子で)
……狼君なんて、知るか。
(それから更に数日後の事。兎和もそれ以上は自分に迫ってくることは無く、かと言って変に距離を取られることもなく。想像していたより女性というのは面倒臭い生物ではなかったようだとホッとしつつ過ごしていればまたボスに呼び出され。今度はなんなのだろうと思いながら向かうと任務の終了を言い渡され。しかしそれには条件があり、実際に潜入捜査をして成功を収めなければならないと言うのだ。実際今ならば成功できる気がしていたし、何より早く朧と会いたかったので二つ返事に了承を示すと今日の夜行われるというパーティへの招待券を二枚渡されて)
(数日後。あれからこちらから連絡を取ることはなく、いつものようにニコニコとはしていたが、雰囲気は不機嫌極まりないもので。他の人達は気付いていないようだったものの部下は何となく察していたようでこちらには近寄らず。刃君も何か言いたげな顔をしていたが、彼すら特に聞いてくることはなく。そのまま黙々と作業をしていればボスから唐突に呼び出され。何でも“とある富豪が裏で麻薬栽培をしているようで、ウェイターとしてパーティーに潜入してその栽培場所を突き止めて欲しい”とのことで。何だか鬱憤を晴らしたい気分だったのでそれに快く頷けば、さっそくウェイターの服へと着替えていき。__その日の夜。豪華な屋敷でパーティーが開かれようとしていて。自身は既にその中の裏方から潜入をしていたので、ウェイターの服を身に纏いトレーにワイングラスを乗せてパーティー会場の様子を見ていて)
(華やかなドレスに着替えた兎和は確かに綺麗で思わず驚いてしまったもののそのまま会場の中へと入ると仕事だと集中しようとし。カップルを上手く装おうとしていれば不意に兎和が此方へと手を伸ばしてきたのでびくりとして其方を見ると笑顔で"蝶ネクタイ、曲がってる"と言われて見てみれば確かに少しばかり斜めになっていたので慌てて直そうとすると"じっとして"と言われたのでピタリと動きを止めると綺麗に直してもらい。余りに"恋人"らしい振る舞いに感嘆しながらこれは自分の実力と言うよりは兎和のエスコートだと思ってしまい流石に男として恥ずかしくなり。今日ばかりはしっかり自分も恋人らしく振舞ってやるぞと息巻いて先ずはウエイターの運んでいるトレーからワインを二つ取ってにこやかに片方を相手に渡してから何気なくその笑顔のままウエイターの顔を見てぎょっとして固まって)
…!?
…………。
(もはや何も言うまい。こちらは営業スマイルのままドレスコードを着た狼君ににこりと笑い掛ければ、何も言わずに無言で立ち去っていき。まさか、男女のペアでこのパーティー会場に潜入していると言う自分にとっては最悪なシチュエーションでばったりと出会うなんて何の因果だ。それに、女性にデレデレし過ぎじゃないかと先程の笑顔を思い出してはやや乱暴にトレーを置き。やっぱり自分では駄目なのだろうか?狼君は彼氏よりも彼女の方が欲しいのだろうか?そんなことを鬱々と思ったが、今は大事な任務中だ、さっさと麻薬の栽培場所を突き止めてしまおうと。パーティー会場を出て廊下へと来れば、パーティー中で人が少なくなっている富豪の屋敷の方へと急いで行き)
(笑顔で立ち去った相手のその表情の裏の怒りに気付かないほど鈍では無く、おろおろとしていると兎和に"あの人…ラボの人なんだよね?どうしてここにいるんだろう"と怪しまれてしまい更にこちらが慌てて。何とか話題を逸らして兎に角早く任務を終わらせて朧に弁明しなければと考えると人気の少ない方向へ楽しく喋っていてそのまま気付かず道に迷ってしまったふりをしながら侵入すると麻薬を栽培している場所を抑えようとその場所を探して行き)
(富豪の屋敷は無駄に広く、無駄に扉があったので一つ一つ開けていくのは骨が折れると思いつつも散策をしていき。時折、使用人に見つかりそうになりながらも隠れて部屋を開けていたのだが、特にこれと言った部屋は無く。しかしボスからの情報が間違っているわけがなく、もう一度探そうと思ったところ、ふと一箇所だけ鍵の掛かっている部屋があり。疑問に思って開けようとしていれば後ろからメイド長らしき人に「こら!止しなさい!_全く、貴方新人のウェイターさん?そこは旦那様から開けてはいけないと言われている部屋よ」と、怒られてしまったので謝っていき。メイド長が再び仕事へと戻った後、怪し過ぎると目の前の扉の鍵穴を見ていき。ピッキングで開けられるような類のものでは無く、これは専用の鍵がなければ無理そうだ。そう思って悩んでいると不意に“ワン!”と足元で鳴き声が聞こえ。いつの間にか足元にマルチーズがいたので富豪の飼い犬かと思い、それをひょいと持ち上げれば首輪についてある物が気になって。何やらキーホルダーかと思っていたが、どうやら鍵のようだ。まさかと苦笑いしつつも、目の前の扉の鍵穴へとその鍵を差し込めばガチャリと回って開き。ザル警備過ぎやしないかと思いながら、マルチーズを置けば犬は遊び相手でも探しに行ったのだろうか?廊下へと去って行ってしまったので放っておき。とにかく、狼君が誰かとパーティーで組んでいるところなんてもう見たくなかったので、さっさと任務を終わらせる為にも、自身はその部屋の中へと入って行こうとし)
(忙しなく動き回る使用人に見つかれば会場に帰されてしまう。その度に隠れながら麻薬栽培が行われている部屋を探していくもののあまりの館の広さにその仕事は中々に捗らず。困ってしまって辺りを見渡していれば朧の姿を見つけて慌てて壁に隠れ。そういえばあの時は焦り過ぎて何も考えられなかったが相手がここにいるという事は職務を遂行しているということだ。"何故ラボの人が…?"と兎和がまた不思議そうにしていたのでしっと指を唇に当てて静かにするように言うと少しして相手が一つの部屋の中へと入っていくのが見え。余りに気まずかったので少し時間を置いてから後を追うように二人で中へと入っていき)
(部屋へと入ればすぐに地下へと続く階段が目に入り。そこを降っていくと、地下室には様々な種類の薬物が栽培されているエリアが広がっていて。さながら植物園のようだと、太陽光の代わりに付けられている真っ白なライトを見ていれば、そこの管理か警備を任されているのか数人の黒服達が出て来て。「ったく、何だタダのウェイターか」やら「ああ、でもここを見られたからには死んでもらわねぇとな」などと武器を取り出していて。そのいかにも裏社会にいそうな風貌と言葉に“ビンゴ”と思いつつもここが麻薬栽培場所だと確信を持てれば笑みを深くして、その邪魔な人達に取り出したナイフを向けて)
今苛立ってるんで、もし甚振って殺してしまったら済みません。
(そう三日月のような笑みを浮かべると、まずは咄嗟に姿勢を低くくして飛び込んで来た相手のナイフの一閃を躱せば、その腹に重い蹴りを入れて顔面にも拳を入れて悶えさせ。次いで、横にいる者が銃を構えたので撃たれる前にその手の甲にナイフを突き刺して首を掴んだまま地面に叩き付けていき。骨の折れるダイレクトな感覚が手に伝わって来たが、そんなことすら今は心が晴れるような感覚で。元々嗜虐心はある方だったので、倒れている相手の頭を蹴り飛ばせば、次と言うようにまだまだ残っている黒服達を見ていき)
(その部屋に入ると地下へと続く階段があり。音を立てないようにゆっくりと歩いて行くと下で大きな音が聞こえ。間違いなくその音は戦闘時に出る音で兎和に此処で待っているように言うとポケットから銃を出して下へと駆けて行き。見れば朧が多くの黒服を相手取って戦闘を展開しており直ぐに援護しようと銃を構えたもののその相手の始末の仕方がいつにも増して残虐性に溢れておりぎくりとしてしまい。間違いなく怒っている。思わず此方が怖気付いてしてしまい銃を握ったまま固まっていれば黒服の一人が此方に気づいて指差してきた為、もう逃げられないかと諦めて残りの階段を駆け下りると銃で黒服達を次々と仕留めていき。近くまで寄って攻撃をしようとする男の手首を簡単に捻り壁に叩きつけて脳天に銃をかますと更に残った男達にも手を付けていき)
(鈍い音と短い悲鳴など聞き慣れたもので、足元に転がっている黒服の骨を折ってやれば敢えて致命傷は与えずにナイフで脚を突き刺し。しかし、幾ら傷付けても傷付けても少ししか晴れない心は気持ちが悪く。やはり時間を掛けないで殺してさっさと部屋に帰って寝た方が良かったかと、敵の首元を掻っ切っていき。残りは僅かかと数えていればいきなりナイフを投げ付けられたので、むしろそれを弾き返せば相手の額にナイフを投げて今度はすぐに殺していき。__ふと、そこで乱入してきた銃声に驚いて後ろを振り向けば狼君がいて。どうやらあの女性は一緒ではないらしい。だがそんなことなど関係無く、ドレスコードを着ているだけでも何だかそれが自分ではなく彼女がパートナーと言うような暗示に見えてしまって、益々負の感情は燻るわけで。狼君を視界に入れたくないわけではなくドレスコードを視界に入れたくなくて、思わずあからさまに目を逸らし。先程の熱は嘘のように消え、今は逆にそれこそ淡々と黒服達を殺して始末していき)
(黒服の相手をしながらも相手の目線が一度も此方へと向かないことに気づいておりいよいよ何だか落ち着かなくなり。黒服を全て始末し終えれば安全になったので兎和を呼んで来なければと思うものの少し相手の方を見て引きつった笑みを浮かべて話しかけて)
…あー、えーと…朧もここの任務だったんだな…?
(会話がぎこちない。まるで女性と話している時のようだ。相手が纏う雰囲気は何処までも冷ややかで此方が射竦められそうだ。おずおずとそう声を掛けたものの更に空気は凍るばかりで一刻も早くこの場から逃げたいと思ってしまい)
…………そうだけど。
(相手の言葉にそう答えるのが精一杯で、相手が女性と一緒にいるのは任務だと分かっているのにも関わらず、素っ気ない態度を取ってしまう。と言うか、そろそろ本格的に無理そうだ。今はドレスコードを着た狼君を見れない。こんな状況に気持ちは苛々として落ち着かない。けれど、だからと言ってここで狼君を返せばまたあの女性のところに行ってしまうだろう。理性は仕事だからと言ってあるものの、本能は嫌だと喚いている。そんなグチャグチャになった感情のまま、何だかこの場から立ち去ろうとしているような狼君の腕を強く掴んで)
……ごめん、無理。やっぱり仕事だとしても無理だ。
(そう絞り出すような声で相手を見ていき。じりじりと壁際まで迫って行き)
…ッ!?
お、朧……
(やはり何処か返ってくる返答は素っ気なく、どうもこの雰囲気の朧は怖かったので話も早々に切り上げて逃げようとした時、ぐいと腕を掴まれて。その力がまた存外に強く振り払えそうにはなく、じりじりと迫ってくる相手の言葉には感情がぎゅっと凝縮されており。この数日間録に連絡も取ってきてくれなかったことから考えても相当怒っている事はわかっていたのだが実際目の当たりにすると怖いの一言に尽き。そこまで広くない通路で壁まで追いやられるのに早々時間はかからず背後の逃げ道を壁に塞がれるとおずおずと相手を見遣り弁明の言葉を必死に述べて行き)
あ、あのな。俺も悪かったと思ってるから……お前と会えなかったのもアレだし、寂しい想いとかもさせちゃって…
……狼君はさ、本当は満更でもなかったんじゃないの?あの女性を部屋に上げたり、腕を組んだり、さっきだってニコニコしてさ。
(せっかく相手が謝ってくれているのにも関わらず、自身の口から出るのはどこか皮肉めいた言葉ばかりで。特に部屋に上げたと言う部分は他よりも心なしか強調して言っていて。強く握ったままの狼君の腕を離そうともせずにいて。これは醜い感情だ、それを目の前の相手にぶつけているのが申し訳なく感じるぐらいに。けど、堰を切ったかのように言葉は止まらずにいて、視線を尖らせつつ押し殺したかのような声で)
……もし女性の方が良いならそう言ってよ。僕は身を引くから。二度と君の前にも現れない。
そもそも男女の方が世間一般的には自然なんだもんね。ごめんね、嫌だったよね?僕の恋人なんか。忘れて良いよ、全部。
そ、そんな事ねぇよ!部屋に上げたのだって任務の一環だし…俺だって、ちゃんと恋人らしく振舞おうと頑張って…そういう任務なんだよ、そう言っただろ!なのに何でそうやって勝手に話を進めていくんだよ…!
そりゃお前と会える時間を取れなかったのは俺が悪いし、お前に寂しい思いとか沢山させちゃったと思うけど!そんな事言う事ねぇだろ!
そんなに俺の信用はねぇかよ!
(黙って聞いていれば言いたい事をずけずけと押し付けてくる相手に久しぶりに腹が立ってカッとして相手を怒鳴りつけて。デートの件の時にはぐらかしてしまったのは確かに自分が悪いが、その前にしっかりと任務の事について説明した筈であり。それなのに身を引くだとか嫌だとか忘れていいだとか勝手に押し付けられれば怒ってしまうのも仕方がないと開き直り)
意味わかんねぇ…、黙って聞いてりゃ身を引くとか女のほうが良いとか忘れろとか!
勝手に決めつけて押し付けんじゃねえよ!俺が好きなのは、お前だよ。
何度でも言ってやる、お前だ!女じゃなくて、お前!
(頭に血が上り過ぎて次第に自分でも何を言っているのかよくわからなくなってきたが、一番の問題は此処で叫んだ事で。カッカとして気付かなかったがこんなに怒鳴って叫べば全て階段の少し上にいる兎和にも筒抜けであるのだ。その事に気づいたのはヒールの音がして兎和の姿が見えた時であり、その姿を見た瞬間さっと顔が青ざめるのがわかり。頭に上っていた血がすっと引いていき、冷静になってみると兎和に聞かれてはいけないことばかりを叫んでいた様な気がして冷や汗を掻きながら相手を見遣れば、しかし兎和は予想に反して微笑んで朧を見ており。”断られたの。デートに誘ったんだけど、好きな相手が居るからって。貴方のことだったのね”と微笑を浮かべながらそう話した兎和を見て何も言えず固まってしまい。”あんなに綺麗にフラれたんだもの、未練も何も無いわ。優しい人だから、上手く私の事振ろうとして考えさせてくれなんて言って。貴方たちが喧嘩してたら私も見てて申し訳ない気持ちになる”と肩を竦めて弁明を代わりにしてくれる兎和を見遣れば驚いて声が出なくなり)
けど、……!
(信用が無いわけじゃない、むしろ誰よりも信用している。なのにこんなにも心が落ち着かなくて、心にもないことを言ってしまうのはやはりどこかに不安があったかもしれない。深読みして勝手に勘違いしてしまうのは自分の悪い癖だ。だけど、あの女性と狼君が一緒にいる姿の方が自然に見えて、しかも部屋にまで上げているとなったらどう信用していても勘違いしてしまうもので。いや、これは自分に自信が無いからかもしれない。だから今、こんなにもハッキリと言って貰うまで相手のことを疑っていたわけで。自分が情けないのは分かっている、嫉妬心で狼君を怒らせてしまったことなんて正にそうだ。そんなことを思って言葉を詰まらせていれば、階段からヒールの音が聞こえて来てあの女性が現れ。同時に先程の会話が全部聞かれていたかもしれないと思い、狼君と共に自分の顔も青ざめ、咄嗟に掴んでいた彼の手を離し。けれどやはりしっかり聞かれていたようで、そう彼女に指摘されて微笑まれてしまえば何も言えずに固まり。更にその後の言葉で、それこそ本当に何も言えなくなって。デートを断られた?フラれた? 自身の知らないところで狼君はちゃんと断ってくれていたのか。そうなると今は罪悪感しか無く、本当に申し訳ない気持ちになっておずおずと狼君の方を見遣り)
……ごめん。勝手に勘違いして。しかも酷いことを言って、本当にごめん……。何だか一緒にいる二人がお似合いに見えて、それで居た堪れなくなって……。
…?いや、俺の方こそ悪かった。…俺、不器用だから兎和を傷付けないで、朧も裏切らない様な選択肢が思い付かなくて…。俺、昔朧に同じことされたことあってお前の気持ちはわかってたはずなのに、ついカッとしちゃって。お前はちゃんと俺に理路整然と説明してくれたのにな。
(申し訳なさそうに謝って来る相手に漸く顔を上げると首を緩く横に振り。幾ら任務だとわかっていても相手が女性と歩いているのを見ると心がモヤモヤしたあの記憶が蘇り、少し目を伏せて。相手も同じ思いをしていたに違いないことは容易に想像がついた筈なのに、それでも自分は逆ギレの様に相手に怒ることしかできず。カッとしてしまいやすいのは悪い癖だとわかっていたのに相手にしてしまったことへの罪悪感から俯いていたものの不意に上の方が俄かに騒がしくなってきたことに気づき。こちらでの騒ぎが上に何らかのルートで露見したのだろうか。兎に角今は早く任務を終わらせなければならないという事に気付き奥へと向かって歩き出し)
…、話は後だ。早く麻薬の栽培現場を押さえねえと。
……頭では任務と分かってても、気持ちを抑えられなかった僕の方が悪いよ。狼君は優しいのに、その優しさに気付けなくて情けなく思ってる。……ごめん。
(少し目を伏せている相手に、小さい声ながらもきちんと聞こえるように伝えていって。誰も傷付けないようにしようとした狼君の選択は間違ってはおらず。むしろ、自分は自分のことだけしか考えていなかったとそのことに対して恥ずかしく思っているぐらいで。なのに全部忘れて良いだなんて、あんなにも酷いことを言ってしまったのが、やはり罪悪感を覚えていて。もう一度頭を下げて謝るようにしようとすれば、ふと上から物音が聞こえて来て。倒した黒服達の仲間だろうか?取り敢えずはここにいても仕方がなく、さっさと任務を終わらせた方が良さそうだ。自身も足早に奥の方へと足を動かしていき)
……了解。__と、アレかな?
(奥の方に行くと一際大きなエリアがあり、そこはビニールハウスが何軒も立っている場所で。中を覗き見てみればそこには麻薬や脱法ハーブの材料になりそうな植物ばかりが育てられている。それを写真に収めつつ本部へと転送していけば、後の処理は本部がやってくれるらしいのでApatheiaの方である自身の任務はこれで終わりで、狼君達はどうなのかと視線を送り)
…いや、もう良い、謝るな。
(相手がかなりの罪悪感を覚えていることはひしひしと伝わってきていた為、気にしていないからと少し笑いかけてひらりと手を振って。自分も怒鳴りつけてしまったしお互い様だと考えつつ奥の方へと足を進めていけば、室内だというのにビニールハウスが何軒も立っており。こんなに広大な空間を地下に作っていたのかと感嘆しつつ中の麻薬や脱法ハーブを見つけるとこちらもまた写真に収め本部に転送してからライターを取り出し)
焼却処分だ。後援が来る前に移動されたら困るからな。
(まあこの量では運ぶに運べないとは思うがと思いつつ麻薬に火をつけると其れが燃えていく様をもう一度写真に撮って全て鎮火し綺麗に焼き払われたのを確認してから元の道を留意して戻って行き)
ここ以外には無さそうだね。全部燃やしたか。
(一通り見渡して、他に薬物の材料になる植物が残ってないかどうかを見ていって無いことを確認していき。また、燃やされたことが富豪の方に分かってもそちらは本部が既に手を打っているらしいので、自分も帰り道に気を付けながら来た道を引き返していき。しかしながら敵を処分した今、この三人の状況は非常に気まずい。と言うよりも、そちらの女性に自分達の関係がバレてしまったが大丈夫なのだろうか? 抗争状態の時に狼君が一度疑われたこともあって、うっかり女性の口が滑ったら今度こそマズイのでは? 未練は無いと言っていたものの、抗争状態の時のことを思い出してしまえば念には念を入れたくなり、おもむろに女性に話し掛けては頭を下げていき)
……兎和さん、だっけ? 僕の口から言えたことではないけど今回の件_この関係についてはどうか内密にしておいて欲しい。……お願いします。
ん。これで全部か。
(相手の言葉を聞いて辺りを見渡すものの他に麻薬を栽培している様子は見受けられず。直ぐに道を引き返して行く途中、相手が発した言葉にギクリとして。そう、今一番まずいのは兎和に自分達の関係を暴露されることだ。しかし兎和はひらりと手を振ると"わかってる。貴方、何処かで見たことがあると思ったらApatheiaの幹部ね。どういう経緯で貴方達がくっ付いたのか知らないけどさっきのやり取り聞いてたら利用してるとか敵対してるとかそういう関係以上だって事は直ぐにわかる"と言い。廊下まで戻りこっそりと会場に再び紛れ込むと兎和は微笑んで"任務はここで終わり、成功したんだからもう貴方は合格、これで私達のカップルも解消。じゃあ、先に帰って報告しとくから後は二人でごゆっくり"と気を利かせたのか会場の人混みの中に消えて行ってくれたので少しだけ安堵してゆっくりと朧の方を振り返り)
(さすがに変装もしていないとあってか、自身がApatheiaの幹部とまでバレていたことにギクリとしたがこの秘密を利用してこちらの組織の情報を得るなどと言った脅しをされるわけでもなく、素直に引いてくれた女性に何だか悪いと思いつつも感謝してその姿を見送っていき。__周りは華やかなパーティー会場、富豪はまだ事が起きたことに気付いてはいないようだが長居しては危険だ。自身がウェイターの格好をしているとあってか、時折ワインを頼まれつつも会釈して適当に返しながら今度は優しく狼君の腕を掴んで、別の場所へと移動をしていこうとし)
……取り敢えず、場所を変えよう。
(やはり兎和は根は良い女性だと思い、だからこそ彼女の気持ちを受け止めてあげられなかったことを申し訳なく思うもののやはり自分には朧しかおらず。相手がワインを頼む客をのらりくらりと躱しながら自分の腕を引っ張ってきたので此方もその意図を察して早めに会場から出て。街中をウエイターの格好で歩くのは怪しまれると思い人気のない路地裏まで足早に移動すると少し落ち着いて漸く相手と向き合うことができて)
ごめんな、ずっと一人にしてて。今日で終わりだから。
またお前と毎日会えるからな。
……狼君。こっちこそ、ごめん。任務だったのに。邪魔しちゃって…。
(人気の無い路地裏に辿り着けば、もう一度申し訳なささでその言葉を伝えていき。一週間弱とは言え、その程度も我慢出来なかった自身に心中で溜め息をつきつつも、今日で終わりと言う言葉を聞けば明日からまた狼君と会える事実に、胸の内から嬉しさが込み上げて来て。途中で不貞腐れて自分から連絡を取らなかったとは言え、やはり仕事中でもプライベートでも考えていたのは相手のことばかり。思わず目の前の彼を、暫くは離さないと言うようにいつもよりぎゅっと強く抱き締めれば、その首元に顔を埋めて呟くように言っていき)
……でも凄く妬いた。それと、さっき忘れて良いって言ったけど本当はアレ意地張ってただけなんだ…。本心じゃない、どんなことがあっても君に忘れられたくない…。
…朧。
(抱き締めてきた相手の腕の力は何時にも増して強く、如何に相手に寂しい思いをさせてしまったか痛感させられ。首元に埋められた頭をぽんぽんと優しく撫でながら自分も相手の体をぎゅっと抱き締めると優しい声音で告げて)
…ん。妬いてくれて本当はちょっと嬉しい。
…はは、頼まれても忘れてやったりしねぇから安心しろよ。
な?朧。
(自分も相手と会えない期間は寂しかったのだ。ゆっくりと、しかししっかりと相手の体の熱を改めて感じていればやはり他の何処にも増して心地よく、相手の名前を呼べばその頰に軽く口付けを落として)
(不意に名前を呼ばれたので埋めていた顔を上げれば、頬へと相手の口付けを受けて。その感覚に幸福さで目を細めつつ、益々相手への愛おしさが増すもので。こちらも彼の額と頬に口付けをすれば、再びその体温を感じるかのように抱き締めていき。やっぱり誰一人として狼君の代わりになんてならない、むしろ狼君以外になどこの愛情を注ぎたくないほどに唯一自身が愛している人で。これから先、例えどんな人が現れたって自分は狼君しか愛さないし愛せない。あのような嫉妬心は醜くて情けないものであったが、それを再度自覚させてくれた点に関しては良かったのかもしれないと苦笑しては、相手の頭を撫でていき)
……狼君。大好きだよ、愛してる。
…はは、今更。
(相手に口付けを額と頰に返されては擽ったそうに肩を竦め。改めて愛を告げられれば何度告げられようが気恥ずかしいもので、ほんのりと頰を染め。相手の背中に腕を回してその体温を包み込むようにすると矢張り何処に居る時よりも心地よく。相手の嫉妬も自分への愛から来るものだと思えば矢張り嬉しく、愛おしい物に思われ、危うくまた喧嘩をしてしまいそうになったがこうして無事収束したことに安堵を覚え。ふと思い立ち相手の頰に手を添えると不意打ちのように相手の唇に自分の唇を重ねてからバッと相手から離れ)
…こ、これで、一週間分な。会わなかった分。
〜〜〜っ。
(ほんのりと頬を染める彼を愛おしく思っては柔い髪を撫でていたものの、不意に身を乗り出した相手から唇への口付けを受ければさすがに驚いて目尻を赤めてしまうもので。いつになく積極的な彼を見ては、こちらも歯止めが効かなくなりそうだと思いながらも離れてしまった相手にそっと近付き。おもむろに彼の顎を少しばかり上げれば、自身もお返しと言わんばかりに軽くその唇に口付けをして)
…こっちもさっき迷惑を掛けた分。おあいこだね。
(今のこの時へと幸せそうに目を細めていけば、相手にそう柔く笑い掛けていって)
……ッ!?…やられた…
(余りに大胆すぎることをしてしまっただろうかと不安になりながら俯いていれば不意に相手との距離が詰まり。驚いて顔を上げれば顎を軽く上げられ相手の顔が視界に映った瞬間、不意打ちの口付けに一瞬固まり。目の前で微笑む相手の顔を見てこれまでにない程に顔に熱が集中するのを感じてぎこちない動きでくるりと背後の壁の方へと振り返りそのまま蹲り顔を思い切り伏せて顔を隠し)
…朧……、お前、マジでそう言うの…良くない……
ははっ、狼君も心臓に悪いことをしたじゃないか。
(蹲って顔を隠してしまう相手の行動に、可愛い可愛いと内心で惚けながらも丸まっている背中を軽く撫で。このまま身も心も溶けてしまいそうだと、幸福な時間に身を寄せていて。しかし、そろそろ夜も深まり春と言えど寒くなって来たので帰路に着いた方が良いと感じ。名残惜しいが、ぽんぽんと狼君の肩を叩いていけば)
…それじゃあ、時間も遅くなってきたし帰ろうか。近くまで送って行くよ。
…〜ッ、そうだけど…
(あれは自分が相手にしたから自分は心の準備があったから良いのだと自己中心的な考えは口に出せるはずもなく言葉にならない言葉を胸の中で叫んでいると優しく肩を叩かれ。小さく溜息を吐いてゆっくりと立ち上がるとぽすと相手の背後から相手に抱きつき肩口に頭を一瞬預けてからゆっくりと離してそれから隣に移動すると相手と手を絡めるようにして繋ぎぶっきらぼうに言って)
…路地裏で人気が無い間だけでいい、こうさせてくれ。
うん、勿論。
(背中に抱き着かれて一瞬驚いたものの、すぐに握られた手へと意識を向ければこちらも優しく握り返していき。相手が歩き辛くないように注意をしつつも、心なしか彼の方へと身を寄せて歩いて行き。本当ならこのような暗い路地や人気の無い場所だけではなく、普通の場所でも繋いでいきたいもののそれを出来ないのがこの国であるため今だけはこの体温を噛み締めようとぎゅっと握り。ゆっくりと暗い路地を歩いて行って、ふと思ったことを一つ零し)
やっぱり狼君の手って暖かいね。
…、そうか?
朧の手もあったかく感じるけどな。
(相手が握り返してくれた、ただそれだけで幸せを感じて路地裏をゆっくりと歩いて行き。相手の体温が直接肌を伝わってくる温かさになんとも言えず幸福な気分に浸っていると不意に告げられた相手の言葉に少しだけきょとんとして。自分の手の熱のことなど今まで考えたことすらなく、そんなものなのだろうかと思いつつ歩いて行きながら相手に話しかけて)
朧の手は大きいな。でも指は細くてすらっとしてて綺麗だ。
…俺なんか手はちっちゃいし指は短いし。良いとこ無しだな。
そう? それなら良かった。
(あまり体温が高い方ではないので、もしかしたら無意識の内に狼君の手まで冷たくさせてしまっているかもしれないと懸念していたが、その言葉を聞いてそうではないと知ったので微笑みを返していき。ふと、おもむろに自身の手を褒められて手を繋いでない方の手を見ていって。そして、さり気無く自分自身で駄目出しをしてしまっている狼君の手へと視線を変えていき)
僕は狼君の手の方が好きだよ。小さくても銃の練習を沢山した努力の跡が見て取れるし、弱々しくなくてしっかりとした力強い手で好きだ。
…っ、…物は言いようだな……
(小さくてもせめてこんな無骨なゴツゴツとした男の手では無くて女の子のように白くて細くてしなやかで綺麗な手だったらと思うもののそんな事は叶うはずなく溜息を吐いていれば、その嫌いな手すら相手の口から出た言葉では綺麗に飾られており。思わず体温が上がってしまって照れ隠しのようにボソボソとそんなことを呟き、それならばこんな手でも良かったと思ってしまうほどには現金で。ゆっくりと歩いていたのにもかかわらず、何時の間にか路地裏を抜けるところまで来てしまっており、残念ではあるもののゆっくりと相手と繋いでいた手をそっと離して行き)
ん?
(相手の小さな声は聞こえず。しかし恐らく照れ隠しのような言葉なのだろうと思っては、益々その繋いでいる手を握ってしまうもので。先程よりも感じる体温が高くなっているのは気のせいだろうかと思いつつも、やがて路地裏を抜けてしまうところまで来ていたのでこちらもゆっくりとこの手を離し。__それから周囲を気にしつつも歩いて行けば、すぐにAtaraxiaの近くまで来てしまい。ここで別れるのはやはり何度しても慣れないと寂しく思いながらも、相手に向き直って)
狼君、今日はありがとう。明日からまた宜しくね。
ん、じゃあな、朧。此方こそ、明日からまた宜しくな。
(いよいよあの分れ道に辿り着くと例の如く何とも形容出来ない寂しさに襲われ。相手もまた何処と無く寂しそうな表情をしているのが見て取れて、こういう時ばかりはやはり敵ではなく同じ組織の仲間だったらと思ってしまうものであるが、それならば自分たちは出会わなかったかもしれないと思えばこの現状を甘んじて受け入れる他はなく少し眉を下げてひらりと手を振るとAtaraxiaの方へと歩き出し)
(/こんばんは…!先ずはお知らせなのですが私用があって来週の金曜日まで更新がまちまちになってしまいます…申し訳ないです…!嫉妬イベント凄く楽しかったです!少し怖い朧君も謝ってる朧君も口説いてくる朧君も全部愛おしかったです…!ありがとうございました!次のイベントなのですが病院編で行こうと思ってます…!表向きは優良病院、しかし実際は健康な患者を殺し、臓器を売買しているという裏の顔を持つ病院にどちらかが風邪をこじらせるか怪我をするか何かで入院(短い期間)、もう片方はそれを聞いてお見舞いに足を運んでいたが、ある日任務としてその話を聞かされ、裏の顔を知り、慌てて病院に向かった丁度その時、入院している方は睡眠薬を盛られ殺されそうになっているという片方だけ任務の入ったイベントにしようと思っております!個人的にはどちらがどちら役でも美味しいのでお好きな方を選んでください!)
(相手の後ろ姿が消えるまで見送れば、自身もApatheiaへと帰ろうとして踵を返していき。一旦本部に寄ればボスへと任務の詳細の報告をしていって。そのまま自宅マンションに帰ると、夜も遅かった為にさっさと寝てしまおうと支度をしていれば、ふと首に掛けられたペアネックレスが目に入り。おもむろにそこへと口付けを落として、また明日から毎日会えると無意識に頬を緩ませれば寝床へと入って就寝していき)
(/こんにちは!いえいえ!ご報告ありがとうございます!こちらは大人しく待機しておりますのでご用事頑張って下さい! / わー!ありがとうございます!狼君の方も愚息の相手をして貰うのが勿体無いぐらいかっこ可愛くて背後は悶絶しておりました…! / 病院編! それでしたら何時ぞやの逆パターンで是非狼君のお見舞いに行きたいので、朧に任務を遂行させて頂きたい次第です!)
(Ataraxia本部に戻ると既に兎和が報告を済ませてくれており、礼を言って部屋へと戻るとどことなく貂が寂しそうにしており。兎和を姉のように慕っていたのでやはり寂しいのだろうと思い至りその頭をくしゃりと撫でては励ますように無言でポンポンと肩を叩いてから寝る支度を整えて久々のベッドへと潜り込んで。やはり落ち着いて寝るにはベッドだなと思いながらゆっくりと瞳を閉じてそのまま眠りに就き)
(/すみません、ありがとうございます…!そんなそんな…何をしても空回る馬鹿息子で申し訳ないくらいです…!/了解致しました!それでは愚息は銃撃戦で肩に銃弾が当たって手術を受けて軽く入院している所から始めますので次ロルは御見舞に来る所からお願い致します!)
……ここか、狼君が入院している病院ってのは。
(あれから数日後。いつも通りの日常を過ごしていれば、突然狼君が銃撃戦で肩に銃弾を受けた為に手術を受けたらしく。つい先程そのメールが来たので、今こうして急いでその病院にまで来た所で。入り口で病院事務員から部屋番号を聞けば、お見舞いの品を持ってそこまで行き。病室の扉をガラリと開ければ、ベッド付近まで歩いて行って彼の体調を伺い)
狼君、お見舞いに来たよ。怪我の具合はどう?
(/いえいえ!そんなことないですよ!! / 取り敢えずこんな形で初めてみましたが、大丈夫でしょうか?)
…はあ、情けない…
(ある日の事、街中で銃撃戦が起き、現場へ駆けつけたのだが少しばかりヘマをして肩を銃で撃たれてしまい。更に悪いことに銃弾が体内に残ってしまいそのまま病院へと送られて手術の麻酔からたった今目覚めたばかりで。ギッチリと固定された右肩を眺めていると不意に扉をノックする音が聞こえ医者が来たのかと思い咄嗟に上体を起こし扉の方を見遣れば扉を開いてめ入って来たのは予想だにしなかった相手の姿で。唖然として其方を眺めた後何処から情報が漏れたのかとバツが悪そうに目を逸らして)
ん、右手は全く動かねえけどまぁ大丈夫だ。
…カッコ悪いな…これ…
(/大丈夫です!では続けさせていただきますね!何か質問なければ蹴可で!)
……良かった。
ううん、僕としては狼君の命があっただけでも万々歳だよ。虎牙君から君が手術をしたって言う連絡が来た時は、本当に心臓が止まるかと思ったんだからね。
(カッコ悪いなんてことは微塵も思わなく、むしろ命があって良かったということしか自身の頭になく。誰かを庇った?不注意?無茶?それとも奇襲に遭った?そう色々と聞きたかったが、まずはおもむろに相手の頭をわしゃわしゃとやや強く片手で撫でていって、上記のことを述べていき)
(/うおお…済みません昼寝落ちしておりました…。そして情報の出所は勝手に虎牙君にしてしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか?何か不備がなければ蹴り可でお願いします!)
はは…手術なんて大仰な事になっちまったけどただの腕の怪我だから心配すんなって。
あと数日安静にしたら退院できるって言ってたしな。
でも、心配かけて悪かった。
(頭を撫でられるがままにしておきながらとんとんと左手の指で右肩の固定器具を指さし苦笑して。それこそ撃たれた時だってしっかり意識があったわけだったのだが銃弾が中に入ってしまったのでやむを得ずと言ったところで病院に運び込まれたわけで。それにしても虎牙は朧に言ってしまうだなんて、と少し不服げで。彼が心配するのは目に見えていたので、そして何よりこんな失態を彼に見せるのが恥ずかしかったので言わないでおこうと思ったのにと後で虎牙を責め立てようと考えつつ。しかし相手に心配を結果としてかけてしまったのは事実だったので少し眉を下げて相手に謝り)
大丈夫大丈夫、僕のことは気にしないで。けど、そっか……数日間の入院か。毎日にお見舞いに来るよ。
(右肩の固定器具に視線を遣って、その時彼の隣に自身がいれば怪我をさせないで済んだのだろうかと不意に思い。しかし、そんなことを言っても仕方が無いので労わるように撫でていた手を離せば、かなり迷惑かもしれないがこれから毎日来ると公言していき。そして、忘れていたが片手に持っていたお見舞い品を相手に渡そうとしていき)
あっ、そうそう狼君。これお見舞いのフルーツゼリーだよ。食欲があるかどうかは分からなかったから、なるべく喉を通りやすいものを選んだんだ。
おう、忙しい時は無理しなくていいぞ。
(相手が見舞いに来てくれるというのは嬉しかったものの無理をさせてしまうのは本意ではなく。不意に相手が見舞いの品といってフルーツゼリーを取り出したのを見て目を輝かせ)
美味そう!有難う、朧。
丁度何も食べてなくてお腹空いてたのに食事制限で固形物食べれなかったところなんだよ。
ゼリーなら良いって言ってたんだけど俺ゼリーなんか持ってなかったからさ…ナイスタイミング。
(付いていたスプーンの袋を破り嬉しそうにゼリーの蓋を剥がすと早速一口いただくことにして)
…ん〜、美味い…!
いえいえ、狼君に喜んで貰えたのなら良かったよ。
(そう微笑みながら相手が美味しそうにフルーツゼリーを食べている姿を見て、また愛でたくなった為に横の方からポンポンと彼の頭を撫でていき。それにしても本当に大事に至らなくて良かったと考えていって。けれど、それでも痛々し気なギプスを一瞥しては、やはり少し複雑な思いを感じていき)
んー…ご馳走様…
(あっという間にカップ1つのゼリーを食べきって仕舞えば満足げにプラスチックスプーンを置き。カップとともにゴミ箱に捨てると何と無く複雑な表情をしている相手に苦笑を漏らして肩を竦めて見せて)
そんな顔すんなって。
お前が意識不明だった時はこんなもんじゃないくらい心像に悪かったんだからな。
……う、そこを突かれると痛いな。ごめん、辛気臭い顔をして。
(相手の声を聞いてハッとして顔を上げながらも心情が顔に出てしまっていたのだろうか、そこで指摘されて初めて気付き。確かに自身が入院した時はそれこそ死の淵を彷徨っていた為に、この比ではないぐらいに相手を心配させてしまったことを今でも鮮明に覚えており。一度鬱々とした雰囲気を払う為にも首を振れば、眉はやや下がっていたが笑みを浮かべていき)
はは、本当にな。
死ぬわけじゃねえんだからそんな顔すんなって。
もう手術も済んだんだしさ、後は退院するだけだから。
(少し情けない笑顔になっている相手の額を軽く左手で小突くとそんな風に冗談めいた口調で告げて。一番危ないとすれば手術中ではあるがそれももう済んでしまったのでこれ以上の危険は無いと笑いながら告げて。右肩は全く動かせないので不便ではあるが他の部位に異常はなくこうして元気である姿を見せれば相手も安心するだろうと考えて)
うん、後は退院だけなんだよね。その日が待ち遠しいよ。
(小突かれた額を押さえながらも元気付けようとしてくれている相手の姿を見ては笑みを零しつつ、そんなことをポツリと呟いては頷いていき。けれどやはり心配なので毎日来ようと胸の内で思いながら、ふと時計を見れば面会時間が過ぎようとしていたので立ち上がり)
それじゃあ、そろそろ僕は失礼するよ。狼君、お大事にね。
ん、俺も。
入院してたらお前と何処にも行けないしな。
(入院生活というのは存外退屈そうで、何をするな何をするなと規制も多いわけで早く退院したいという気持ちが強く。個室で良かったとは思うものの余り相手に心配をかけるわけにはいかず愚痴は口にせずに。もう帰ってしまうという相手にもう少し居て欲しいと思ってしまうものの相手も仕事を抜け出して来てくれているのであって我儘は言えず)
…おう、サンキューな。
気を付けて帰れよ。
勿論、気を付けて帰るよ。またお見舞いに来るね。
(相手に手を振っていけば病室から出て行き。もう少し長くいたかったものの、面会時間をオーバーしてしまうのは相手にも迷惑を掛けてしまうので大人しく帰路について。そのままApatheiaの本部へと向かって行き)
(朧が居なくなると部屋は急に寂しくなり。テレビを見たりして暇を潰していれば今度は虎牙と貂と龍が三人揃ってお見舞いに来て。龍には耳が痛くなるほど説教を受けたもののそれが心配してくれているからこその物であることはわかっており、思わず笑ってしまい更に怒られ。貂は手術と聞いて自分が死ぬと思っていたらしく目が真っ赤になっていてこの子にも変な心配をかけさせてしまったなと左手で頭を撫でてやり)
(それから数日後。毎日のようにお見舞いに行っていたが、いよいよ明日に狼君が退院出来るとなって前日と言うのにも関わらずソワソワとしており。退院祝いに何か作ってあげたいと思いながらも相手の好みが分からずに詰まり、そう言えば10歳の頃の狼君は嫌いな物が無く、また肉とリクエストしていたなと思い出しては肉料理にしようと決めていき。そんなことを仕事中に考えていれば、不意にボスへと呼び出されたので部屋へと出向いていき)
(/今日は!少し疑問に思ったのですがこちらがロルで一気に話を進めるor区切りの良いまでロルを回して狼君の方の状況ロルも出せるようにする、でしたらどちらの方が良いでしょうか?)
(更に数日後の事、明日には退院とあって漸くこの退屈な日々とはおさらばだと思うとかなり嬉しくて。荷物を詰めて、右肩は固定されたままではあるが殆どが元通りに戻ると看護師さんが部屋へと入ってきて四六時中付けていた点滴のパックを新たな物へと取り替えて行き。針は差したままで交換できるというのは入院して始めて知ったことで便利だなと思いつつその様子を眺めながら胸元のネックレスを手持ち無沙汰に弄っており)
(/今日は!そうですね、区切りのいいところで此方のロルも回せる方でお願い致します…!)
……それで、今回は臓器売買の案件ですか?
(ボスの部屋へと入って任務の説明を受ければ、何でも表向きは優良病院、しかしその実態は健康な患者を殺し臓器を売買しているという違法病院への調査を任されていき。こんな大胆なことをしている病院もあるのかと視線を尖らせていれば「そうそう。と言う訳で宜しくね。場所は、はい此処だから」と携帯端末にその病院の場所が送られて来て。ふと、その見覚えのある住所に首を傾げていると「帝都大学付属病院。朧も名前ぐらいは聞いたことあるだろう?」と言われていって。まさか今狼君が入院している病院だとは思わず、嫌な予感がしたので冷や汗をかけば)
…え、ええ存知ております。で、では早速任務を遂行していきます。
(早口でそれを伝え終えれば、足早にボスの部屋から出て行って狼君が無事であることを祈りつつ急いで車でその病院へと向かって行こうとしていき)
(/了解しましたー!その方法でやらせて頂きますね! 蹴可)
(点滴を受けながら本を読んでいると次第に眠くなってきて、慣れない事はするものではないなと思いながらサイドテーブルに本を置いた瞬間すっと消えるように意識が遠のき。次に気付いた時にはまず鼻に消毒液の匂いがついてきて。手術室の匂いに似た匂いだと余り働かない頭でぼんやりと考えつつ起き上がろうと思った時に体が動かないこと、そしてここが病室でないことに気づき。何故、それなら此処はどこなのだと辺りを見渡そうとするものの手や足に拘束具の類は付いていないのにも関わらず全く体が動かず声も出なくて焦りを感じ始め)
__ッ、いない…!
(駆け込むように病院へと入って行き、狼君の病室まで行ったは良いもののそこはもぬけの殻で。急いで受付のナースに彼のことを聞けば、既に退院なされましたよ、などと見え透いた嘘を付かれ。これは間違いなく今狼君が危険な状況下にいると判断をすれば、すぐに携帯機器で先程の貰った地図を取り出して怪しい箇所とマークされた地下5階の霊安室付近へと走って向かって行き)
(病院内に居る事は間違いない。見慣れた医療器具やこの染み付いた消毒液の匂いはそのままだ。だが、此処は病室ではない。それなら一体何故こんな所にと思い動かない体を必死に起こそうとしていれば部屋の扉が開き横目で伺えば手術着を着た医師の姿があり。手術?まさか。手術はもう疾うに終わらせていて、明日が退院だというのに何の相談も無く勝手に執刀されるだなんて馬鹿な話は聞いたことがなく。そしてその医師が持っていたのはメスなど生温いものではなく、明らかにそれはチェーンソーで。此処までくれば流石にこの医師の目的もはっきりと理解し、早く動かなければと思うものの、あの点滴のせいなのかピクリとも体が動かず、近づいてくる医師を見て声を上げることもできず掠れた声を喉から漏らして)
…あ………、あ……
(エレベーターを待っている時間すら惜しく、階段を一気に降りていけば何処かヒンヤリとした空気が漂う、不気味な病院の地下5階へと辿り着き。霊安室を通り過ぎれば何個か扉あった為に、舌打ちをしたい気持ちに駆られながらも一つ一つ開けていくものの、しかし狼君の姿はまるで見えず。額に冷や汗が滲み、あれから何分経ったんだと焦りつつ最後の扉を開けようとすれば、そこだけ鍵が掛かっており。中からは物音が複数。ここで間違いないと己の直感が働けば勢いを付けて問答無用で扉を蹴破っていき。目に映ったのは、手術台に乗せられた狼君とチェーンソーのような道具を持った医者らしき男やその助手達で)
__っ!お前らが狼君を…!!**ッ!
(すぐに標的を医者らしき男や助手達に定めれば、もはや怒りで銃すら使う頭は働かずに飛び蹴りを食らわせると、壁の方まで吹っ飛ばしていき。条件反射のようなもので素早く腰のホルダーからナイフを引き抜けば、任務のことなど忘れてそのまま首を掻っ切って息の根を止めていき。頬に付いた血など気にせず、狼君の方へと慌てて駆け寄っていけば五体満足かどうかを見ていこうとしたものの、未だにこの心臓は五月蝿く、それに伴って自身の声まで焦燥を帯びているものになったままで)
狼君!狼君ッ!!大丈夫!?何もされてない!?
(マズい、マズいマズい。このままではきっと本当に殺されてしまう。目的は臓器か。せめて体さえ動けばこんな男達等薙ぎ払って逃げることができるのに。チェーンソーの刃が近づいて来るたびに嫌という程冷や汗が噴き出て、こんな時に思い出されるのは朧の事ばかりで。自分がこんなところで死んだと知ったら朧はどんな顔がするだろうか。あんなに退院を楽しみにしてくれていたのに、こんな所で、きっとこの死は揉み消されて。泣くだろうか、悲しむだろうか、それとも怒るだろうか。何れも相手にさせたくない表情であることは確かで。ギュッと目を瞑った時不意に扉が開く音がして、視線をずらすと其処には此処に居るはずのない相手の姿があり。何故、此処に?そう思った瞬間に目の前には鮮血が散っており。ガシャンとチェーンソーが床に落ちる音がして、其処にはあの医師が絶命して倒れていて。数分とせず全ての男達を片付けて此方へと近づいてくる相手の声には焦りが混ざっており、此方も未だ心臓が嫌に五月蝿く音を立てているままで、更に声が出ないせいで多くを話すことも出来ず小さく頷き相手の名前を掠れた声で呼んで)
お…、ぼ、ろ……
良かった、本当に良かった…!
(小さく頷いた相手を見て、肩の怪我には気を付けつつも、ぎゅっと抱き寄せながら譫言のように良かったと何度も繰り返し呟いて。頭の中には最悪の結果だって過っていた。もしも狼君が死んでいたら、凛と同じ方法で殺されていたら。それはもう二度と味わいたくないことで。だからこそ消え入りそうな声のまま抱き締めていって。__しかし、ふと気付いたことがあったので一旦体を離していき)
……もしかして、体は動かせない?
(先程のこちらの名前を呼ぶ声は途切れ途切れで。睡眠薬か筋弛緩剤でも打たれたのだろうかと予測を立てながらも、そう問い掛けてみて)
(此方を抱き寄せた相手の背中すら優しく撫でることが出来ないことにもどかしさを感じ。漸く落ち着いて心臓の五月蝿さも止み、未だ体は動かせない上に声も出ないものの相手にじっと寄り添っており。そうか、此処まで相手が異常に反応を示しているのは自分が死ぬからだけではなく、彼の妹もまた臓器を取られて殺されたからか。嫌な事を思い出させてしまって申し訳ないという気持ちはあったが何より恐怖からの解放に此方の気持ちが安堵しきっていて相手の胸元に顔を埋めるとじっとしながら、掛けられた言葉に間違いなくあの点滴のせいであろうと小さく頷いて)
……そっか、やっぱり。
(腕の中で頷く相手を見て、どうやら薬を盛られたことは確かでありどうしようかと悩んでいき。医学の知識は無い為、解毒剤などの検討も付かず。それに下手に薬を使って悪化させる方が怖かったので結局無闇にそうすることは止めていき。しかし、このままここにいるのも危険なのでヒョイと狼君を抱き抱えれば、裏口から病院の外に出てしまおうと試みていき)
狼君、ここにいると危ないから病院の外に移動するね。
(相手に助けて貰った事への礼も言いたかったし、どうしてここに来たのかも聞きたかったが声が出ないためそれも叶わず、移動するという相手の言葉に僅かばかりだけ顎を動かして頷いて。動けない為に運ばせてしまって申し訳ない気持ちになりながら、相手に運ばれるのはあのResistanceのアジトで足を負傷した時以来だったかと思い出し懐かしい気分になりつつ相手の体温を感じながらじっとしており)
(ボスから地図を貰っていたので、それを上手く使って病院から出て行き。一応、携帯機器では軽く本部へと病院が黒だったことを送れば人影の少ない場所を通って、腰を落ち着かせられる場所を探していって。しかし、その前に狼君を専門の医者に見せる方が先かと思い直してはあの病院とは違う別の病院へと車を飛ばして行けば、医師に診せに行こうとしていき)
わる、い、おぼ…ろ
(車へと乗ると動かない体を何とか起こしてみようとするもののやはり上手くいかず、左手を上げるだけで精一杯で。声も未だ掠れたままで、声も上手く出ず、掠れ掠れになりながら何とかそれだけ伝えて。何も出来なかった自分の不甲斐なさやら何やらで相手とまともに合わせる顔など無く、左腕を顔の上に置いて顔を隠すようにして)
大丈夫だよ、狼君に落ち度なんて無い。君が生きていてくれさえすれば僕は平気だから。
(ポンポンと相手の頭を撫でながら、先程よりかは焦りが落ち着いた声で自身の今の心情を代弁したかのような言葉で伝えていき。ゾッとしてしまうような先程の出来事でも、狼君が生きててくれるのならどんな迷惑だって掛けられても良い、どんな仕打ちにだってあっても良い。そもそも狼君を守れるのなら自身はどうなっても構わない。そんなことを言えば、きっと怒られてしまうと思うので言いはしないもののいつだって己はそう言う心構えで相手の側にいる。だから、謝らなくて良いと言うように相手の頭を撫でていき)
……、ん。
(言いたいことは沢山あった。でもやっぱり、不甲斐ないとか、また助けて貰ってしまって申し訳ないとか、俺がもっと気を遣っていれば、とか、普段ならば口にしてしまうような言葉も喉から先には出てくることを許されなかった故に短く小さく返事をして。自分の頭を撫でる相手の体温に生きているのだと実感が持てて。あの時相手が来なければ本当に自分は死んでいただろう。今頃自分はバラバラにされて臓器毎に分けられていたかもしれない。体が動かず死を待つだけと言うのは想像以上の恐怖で、今思い出しても体が震えそうなほどだ。命の駆け引きをしている大の男が何を言うのだと言われても仕方がない。しかし、ああしてじわじわと大切な人との思い出が蘇ってきて、もうそれが全て消えてしまうのだと思うことの恐怖は今まで感じたどの恐怖よりも恐ろしいもので、薬のせいかその恐怖のせいか顔色が悪くなっているのは自分も感じており)
(信号が青に変わったので頭を撫でていた手を止めれば、車を発進させていき。そして、狼君の顔色も良くはなかったのでそのまま新たな病院へと駆け込めば、急患と言うことですぐに診察室に通して貰うことが出来。自身は治療が終わるまで外の椅子で静かに待機していて)
(診察を受けるとすぐに処置室へと運ばれて麻酔によって一度意識を手放し胃の洗浄と薬の作用を打ち消す薬の点滴を受けてそのまま看護師達に台に乗せられて病室へと運ばれて。未だ麻酔が効いており意識は戻っておらず瞳を閉じたままベッドへと移され一度看護師たちは部屋から出て行き)
(処置が終わったらしく、看護師の方に呼ばれて病室へと行けば狼君が眠っていて。起きるまで側にいようと思いながら、ベッドのすぐ横にある椅子に腰掛けて相手が目を覚ますのをじっと大人しく待ち)
(暫くしてゆっくりと瞳を開くと上体を起こし。体が動くようになっている事を確認して漸く安堵するとすぐ隣の椅子に相手が腰かけていることに気づき。時計を見ればかなりの時間眠っていたようであったがその間相手はずっと側に居てくれたのか。申し訳なさと有難さで胸がいっぱいになり、左手を伸ばしてぎゅっと相手の手を握って)
朧…、ごめん、本当に有難う。
…ごめんな。もしかしたらお前だけ残して死んじゃうかもしれないって、そしたらお前は苦しむってわかってたのに俺には何も出来なかった。
お前が来て無かったら、あのままきっとあの時俺は抵抗もせずに死んでた。
お前だけ残して。
……それが一番自分で自分が許せない。
(暫くして、狼君が目覚めたのでホッと一息ついていれば、おもむろに手を握られて告げられた言葉に、緩やかに横へと首を振っていき。ぎゅっとこちらも手を握り返せば相手の瞳を見て話していって)
……狼君、あれは仕方のないことだよ。薬なんて使われたら身体が動かせなくなるのは当然のことだし…。だから自分で自分を責めないでよ。
それに僕もあの病院に毎日お見舞いに行っていたのに、こうしてボスから任務を貰うまでは病院の裏の顔に気付けなくてごめんね。
でも助けられて良かった、生きていてくれて良かった。本当に、良かった…。
…ッ、朧…
(やはり、相手があの時病院に来たのは任務だったのか。もしも任務を仰せつかったのが朧では無く別の人物だったとしたら。相手は恐らく彼処が自分が入院している病院だと知っていたから真っ先に自分の姿を確認して急いで駆けつけてくれたのだろう。しかしそれが相手ではなく別の人物だったら助けられていた保証はなかった。寧ろ解体している現場を写真に収め証拠品として提出する方が幾分か任務としては楽だった。だからきっと相手があの任務を仰せつかったのは何かの縁なのだろう。これ以上謝るよりも寧ろ伝えなければならないことは沢山あるはずで。ゆっくりと左手を伸ばして相手の体を引き寄せるとその肩口に顔を埋め)
有難う。有難う、朧。
大好きだ、愛してる。生きててよかった、まだお前と一緒に生きれてよかった。お前を置いていかなくて良かった。
狼君…。僕も大好きだ、愛してるよ。
(裏社会に身を置いてるから常に危険と隣り合わせなのは分かっているが、それでも狼君と一緒に長く生きていたい。それだけが自身の幸せで。もし、今回自分が任務を受け持っていなかったらどうなっていただろうか?恐らくは、何れにしても自身が後悔する結果が待っていただろう。今ばかりはいつもの腐れ縁に感謝しつつも相手の背中に手を回して抱き締めれば、しっかりとした言葉で伝えていき)
…うん。…、…うん。
(母が死んだ時に死と言うのはあまりに突然で呆気ないものである事を学び、自分も何れそうなるのだろうと考えて甘んじてそれを受け入れて生きて来たのに、今ではもうそれが出来ない。昔の自分なら目の前に銃口を突きつけられても怯むことは無かった。それが今はどうだ。相手の事が死ぬ間際に過ってしまい死ぬに**ない始末だ。本当に弱くなったなと実感しつつ自分を抱きしめる相手の体温を感じており。置いていかれる恐怖は嫌と言うほど味わった。それを相手には味合わせは駄目だと、そう思っていたのに。愛おしい相手の体を抱き締めて、それでもこうして未だ相手をこの手で抱き締められることが奇跡の様に思えて微笑を浮かべ)
…お参り、沢山しといて良かったな。
ははっ、御利益あったね。
(神様なんてものは毛頭も信じていなかったが、今回だけは信じても良いかもしれないと感じ。お正月と江島神社でお参りを何度かしておいて良かったと思いながら、ぽんぽんと相手の背中を撫でていき。__暫くして医者と看護師が来る気配がしたので、名残惜しいが狼君からゆっくりと離れていって)
……看護師の人達が戻って来るみたいだ。狼君、念の為にもう一度だけ診てもらおうか。
(/ごめんなさい、少し忙しくなってしまってお返事滞ってます…!今日も書き込めそうにないので取り急ぎ顔だけ出しました!申し訳ないです、明日には一度返信しますので…!/蹴可)
(/伝言ありがとうございます!三月は何かとお忙しい時期ですし、リアルの方が大切ですのでお気になさらないで下さい。トピ主様と狼君の為なら朧共々背後はいつでも待てますので、お体だけは壊さないようご自愛下さいませ!蹴り可でしたがお伝えしたかったのでお返事失礼致しました/蹴可)
…ん、そうだな。
まあ、もう大丈夫だと思うけどな。
(廊下から足音が聞こえてゆっくりと離れるとすっかり動くようになった体を見ながら肩を竦めて笑い。怪我をした右肩もぞんざいに扱われた形跡はなく固定していたおかげでそこまで痛みも出ておらず。少しして入ってきた医師に簡単に診てもらい明日の午後には…正確に言えば気絶していた間に日付を跨いでいたので今日の午後だが…退院しても良いと許可を得る事が出来たのでほっと一安心して医師達が出て行ってから相手の方を見遣り)
こんな遅くにずっと付き合わせて悪かったな。
有難う、もう大丈夫だ。
(病室に入って来た医師達が診察をしていくのを側で見守り、数分して告げられた診断にホッと一息ついていって。後遺症とか何も残らなくて良かったと思いつつも、相手の言葉に気付かされて時計見てみれば夜も遅い時間帯で。しかし緩やかに首を横に振っていき)
いや、僕が勝手に残っていただけだから気にしないで。
それに何なら最後まで付き添――……。
(病み上がりなのだから一人にはしておけないと、思わず身を乗り出して今日の午後まで側にいようと考えたのだが、それは唐突になった自身の携帯機器の音によって遮られ。表示画面に映っている名前は“ボス”で、そこでその第三者の存在を思い出させられてギョッとして言葉を切り。忘れていた、任務を遂行中だったことを。自分にとっては狼君の方が大事だった為すっかり頭から抜け落ちていた。簡単な報告をした後は連絡をしていなかったので、これは確実にお咎めを食らう。しかしなるべく相手にそれを悟らせないように笑って、上手く誤魔化しながら椅子から立ち上がり)
ごめん、ちょっと用事が出来ちゃったからお言葉に甘えて今日は失礼させて貰うね。明日また必ず来るから。
(不意に相手の携帯機器が鳴りそれまでの会話が中断され。相手のディスプレイを見たときのぎょっとしたような表情から察するに彼の上司からだろう。彼はあくまで任務中で、それなのに自分を助け病院まで連れて来てくれたのだ。これ以上引き留めるわけにはいかないとひらりと手を振り)
ん、わかった。
…ありがとな、本当に。
(椅子から立ち上がった相手を見て振っていた手を徐におろすと相手の腕をぐいと掴んで優しく引き寄せて頰に軽く口付けて微笑みながら礼を言い)
気を付けて帰れよ。
(/お待たせいたしました…!!!用事終わりましたのでお返事通常更新にもどります‼︎本当にご迷惑をかけた上温かいお言葉をかけていただきまして有難うございました…!これからも何卒お願い致します‼︎)
!? …狼君ってほんと不意打ちで可愛いことをしてくれるよね。
(頬にキスされたことを自覚すれば己の額に手を当てて息をつき、赤くなった頬を隠すように狼君の頭をわしゃわしゃと撫でれば、するのは慣れているがされるのはどうにも慣れていないので気恥ずかしく感じつつ、扉の方に顔を向けたままで)
それじゃあ、また明日。
(火照った熱を逃がすように扉を開けて病室を出て行き。今日は色んな意味で心臓に悪い日だったと思いながら、急いでApatheiaの本部へと戻って行き)
(/いえいえ!お帰りなさいませ!こちらこそ今後とも宜しくお願いします!!)
うお…っ。
(相手の頰が紅潮したと思った瞬間には割と豪快に頭を撫でられ、次に顔を上げた時にはその顔は扉の方へと向けられ確認することができず。見たかったなと若干残念に思いながら逃げるように去っていく相手の背中を見届けて、今日は色々と本当に迷惑をかけてしまったなと小さく溜息を吐き。病院だからと思って油断しきっていた自分が居て、こういう事もあるのだし元より治安の良い地域ではないのだからもっと気を付けなければと思いながらもう一睡してしまおうと瞳を閉じて)
(/一応、病院編はこの辺りで終わりになりますが、退院の所もやりましょうか…?)
(/んん、どうしましょうか? 因みに次イベは一応まだフラグ回収していない西イベと考えてる感じです← そして、急で済みません。昨日と今日は住んでいる場所の関係の用事があって返信が出来ないです…。せっかく戻って来て下さったばかりなのに済みません…!明日また宜しくお願いします!)
(/飛ばしちゃっても大丈夫ですよ…‼︎お、西イベ久しぶりですね…!了解です‼︎久々の綴さん楽しみです…!返信の件、了解致しました!全然大丈夫ですよ!明日から楽しみにしてますね!/蹴可)
(/今晩は。お返事が無いので心配になって来てしまいました…。お忙しくて返信が出来ていないだけだったら申し訳ありません!全然催促とかでは無いので私情の方を優先させてください!風邪や怪我等では無いかが気がかりで…。ご無理はなさらないでくださいね!お手が空いた時にでも顔を出していただけたら喜んですぐに参りますので!それでは!)
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