Get out!!『非募』

……まあ、いつも落ち着いて食事が出来てるわけじゃないからさ。食べてる間に何かあってもそれなりに対処は出来るしね。取り敢えず、僕はあそこのブリトーやケバブとかにしようかな。
そっちも何か食べる？良ければ奢るよ。何か君を見てるとご飯をあげたくなるんだよね、身長的な意味でさ。

(朝から何も食べてない胃は先程までは死んだように眠り続けていたが、美味しそうな匂いに釣られて簡単に蘇る。食べ歩きなど行儀が悪いとは分かっているもののここは半無法地帯。作法も何も無いだろう。それに食事をしている最中に襲われるなど多々あったのでそれなりに慣れているし対処も出来る。そんなことを思いながら目に映ったのは、お洒落な屋台で大きな肉を回しているケバブの店やブリトーの店。片手で食べられるのは良いと感じて、それらを候補に挙げてみた。そして、何やら同じくお腹の空いてそうな相手を見て、弄りの一つでも入れないと気が済まないといった感じににこやかに上記を問い掛け)

…あー、成程な…それはまあ…わからない事も無いな。
要らねえよ！誰がお前に貸しなんて作るか！今必死に返してんのに！しかもまた身長か！？うっせえよどうせ食っても伸びねえよ、俺は牛乳にも裏切られたんだ、もう昨日時点で諦めたんだよ！

(確かに職業上抗争が始まれば鎮静のために派遣されたりする為にロクに飯にありつけない事は日常茶飯事であるので其処は取り敢えず突っ込まず納得したように頷き。しかし、一瞬奢ると言われて存外に良いやつなのかも知れないと油断しそうになった時に投下された爆弾は相手が性格が良いわけが無いと思い出させるには十分で再びかっと頭に血が上り牛乳を裏切り者に勝手に仕立てあげたりと訳のわからない事を叫んでいれば周囲の視線が痛いのに漸く気づいて餓鬼っぽい事をしてしまったと恥ずかしくなり小さな声で”兎に角”と付け加えるように言葉を付随して)

ブリトーだろうがケバブだろうがもう好きなもん食えよ。俺も適当に買ってくるから…ああ…大恥かいた…

おっと、そう簡単には引っかからないか。
ちなみに昨日は面倒で言わなかったけど、牛乳はそれ単体なら意味が無いわけで、早寝早起きと毎日三食の二つと合わせればちゃんと身長に貢献するよ。

(牛乳にも裏切られたと叫ぶ相手を見てこれは重症だと思い、さり気なく救済の手を差し伸べ。但し、成長期に限ると言う言葉は敢えて付け足さずに。残酷な現実だなぁとどこか他人事のように彼を見ながら一人で頷き。ーーとにかく食欲を抑える為に、一旦別れてお店に並んでワンコインでケバブを買えば元の場所に戻って来て、相手を探し)

当たり前だろ…ってそれ本当か！？なら、俺の身長あと30cm伸びるのも夢じゃねえってことか！
そしたらお前を越せるな！そうか、毎日三食と早寝早起きか…って今日からいきなり出来ねえじゃねえか、陰謀か！

(相手の言葉に思わず食いつき、その話が本当ならばまだ自分の身長が伸びる可能性はあると本気で信じ込み。今日から早速実践しようと思うものの今日は目の前の相手のせいで深夜までパトロールであることを思い出し大きな溜息と共に肩を落としては気を紛らわせるために自分も何か店を探し、ハンバーグステーキと書かれた看板を名残惜しそうに横目で見ながら片手で持てるサンドイッチを三つ購入して咀嚼しながら歩いて元の場所に戻ると既に戻っていた相手の姿が見えどうするか非常に迷ったものの”待たせた”と素っ気なく謝りを入れ再び隣に並び相手の持っているケバブを見て驚いたような声を出し)

お前…その量で足りるのか？

え？足りるけど？これ以外と大きいしさ。
そっちはサンドイッチ三つなんだ。

(ケバブを持って待っていれば、サンドイッチを三つ持って食べながら歩いてくる相手が帰って来て。素っ気なくも謝りを入れて来たのでひらひらとお帰りと言った風に手を振って。そしてこちらに近づいて来たら、何やらケバブを一つしか買ってないことを見て驚いているようで。むしろ、三つもよく食べるなぁと思いながらケバブを持ち直して取り敢えず歩こうと促して)

何でそれだけしか食ってねえのにそんなに背が伸びんのか聞きたいけどよ…

(本当はハンバーグステーキが食べたかったとは言わず無表情でサンドイッチを次々と食していきあっという間に三個など平らげてしまい。ケバブが存外に大きいとは言え一つは一つ、それだけしか食べていない相手に何故自分は身長が劣っているのかと世の中の理不尽を嘆きつつパトロールがてらに町を歩き。未だ夜が更けない為かしつこい客引きには合うものの目立った争いや大喧嘩は起きていないらしくこのままパトロール終了まで目立った争いが無ければ楽でいいのだがと思いながら歩いており)

逆に何でそんなに食べてるのに小さいのか…。
まあ、遺伝じゃないかな？

(そう言えば両親は身長がどちらも高い方だったと思いながらケバブを齧り。よく咀嚼しながら東と北のパトロールをして行って。途中、何度か酔っ払いに絡まれたものの適当にあしらっていき。無事に飲食店が集中している東と北の地区は何事も無く終えて。ーー時刻は夜の11時。繁華街はネオンライトで明るいもののそれが当たらない路地裏は真っ暗で。その闇を掻い潜るかのように西と南の地区には夜の蝶が飛んでいる。今はそこが活性化し始めた時間帯だ。しかもその西と南の地区の方は荒れていて、ほんと何事も無ければ良いなと思いつつ隣を歩く彼を見遣り)

ここから先は西と南の地区だよ。こっちは東と北よりも危ないから、いつでも武器が取り出せるようにしといてね。狼君でも分かっているとは思うけど一応言っておくよ。

喧嘩売ってんのか…。
遺伝…遺伝か、お袋は確かに若干小さかったな。親父は知らねえけど。

(遺伝と言われれば少し考え込み母親の姿を思い浮かべると確かに若干小さかった様な気がしてそのせいかと責任をなすりつけつつ。南と西の区画は酷く荒廃していると専らの噂で仮に繁華街に用があったとしてもその区画には立ち入らないようにしていたのだが、こうなると話は別だ。ネオンの灯りすら消え暗い路地には影ばかりが光を避けるように行き交っている。生半可な気持ちで足を踏み込めば直様その匂いを嗅ぎつけられ餌食になるだろう。ジャケットのコートのポケット、いつもの位置に銃があるのを再度確認し手首を軽くぐるりと一度回して一度頷くと変に怖気付く事無く闇に紛れるように体を路地に滑り込ませて巡検を開始し)

ああ、大丈夫だ。さっさと終わらせんぞ。

(チカチカとした光が飛び交う繁華街の表通りに背を向けて。「お兄さん達ちょっとお店に寄って行かない？」と聞いて来た彼女達を「また今度ね」と蒸せ返るような香水と共に振り切って彼と共に裏路地へと入り。そこは足元にネズミとゴミ箱とよく分からない物が散乱している酷い状況で。また闇が深い故に警戒しつつもドンドン先へと進み、一旦広い空間に出る。周りにはシャッターの降りた閉店した店ばかり。昔はここも表通りのように明るかったのかなと思いつつ息をひそめるように、左から行こうと彼にジェスチャーで示して。そうして進んで行くと何やらコソコソと怪しい二人組が)

あー……あれは薬物バイヤーかな？よく見えないけど、何か粉みたいなの渡してるね。
……ウチの所はボスの方針で薬物自体の販売が禁止されているけど、狼君の所はどう？

(物陰に隠れながら数キロ先にいる二人組を見つつ横の彼にそう聞き)

…お前、女の扱い慣れてんのな。俺なんかいつも怒鳴りつけて金切り声上げられるわ。

(こんな忙しい時に女の相手など出来たものではないと思っていたが隣の相手が慣れたように振り切るのを見て珍しく若干感心してそんな事を呟き。シャッター街には街灯も無く月の明りで辛うじて辺りが見えるが一寸先は闇がまさに現実世界に現れたような空間で。彼のジェスチャーに頷き着いて歩いていくと確かにどう見ても顔付が正常の人間の物ではない人間と顔をサングラスのようなもので隠した人間が粉末と札束を交換しているのが見え腕を組み眉を顰めて小さな声で相手に返事をして)

俺のところでも薬物は容認されてねえ。アレは人間を生きたまま殺す。地獄を凝縮したようなモンだ。あんなのを売り捌くやつの気が知れない。殺人犯と一緒だ。

(自分の組織で薬物の売買が発覚した時は追放、場合によっては処刑される。勿論、構成員以外での薬物の密売も許されることではなくパトロールの一貫として薬物の売買を目撃した場合相応の措置を取れと言うのがあったはずでありどうするかと問いかけるように相手を見て)

僕も君と同意見。そういう所だけは意見が一致してるようで良かったよ。

(薬物は金にはなるが、確実にその人間の人生を狂わせる悪魔の粉だ。ボスは武器は売れどもそう言った物は好まず、こちらの組織では所持しているだけで処刑は免れない。ボスが忌み嫌う物を持っているなど、ボスを裏切ったも同然と見なされるからだ。かく言う自身も薬物は好いてはいないので、ボスの意見に賛同している。そして、横の彼の意見にも大いに賛成しており上記を述べた。さて、目の前の薬物バイヤーをどうしようかと考えていると、意見を求めるような視線を感じたので一応実現出来そうな方法を提示しようと小声で説明し始め)

……そうだね、まずは僕がこの後ろの路地裏を通ってあのバイヤー達がいる路地の近くまで行くよ。それで狼君がここからあの二人に銃を向けてその気を引いて足止めしてる間に、僕が背後から二人に仕掛けるとかはどう？銃の扱いは君の方が上手いだろうし、逆に僕はナイフや体術での接近戦の方が得意だから悪くはない案だとは思うけど？

ああ、お前もたまにはマトモな神経持ってんじゃねえか。

(珍しく意見が一致したようで考えてみると自分たちが言い争いをせずここまで簡潔に物事が決まるのもなかなかに珍しく変なところに感動し。そして相手が練った案を聞きつつ少しばかり考え込み。自分が足止めをして万一相手が裏切った場合でも2:1程度で片や薬物中の人間程度ならば最悪一人でも何とかなるだろうという一番悪いシミュレートでさえ自分の無事が確保出来る事を確認して相手の案に了承を示し。それに今相手が裏切るメリットは殆ど無い為その心配もほぼ無用の物であると読んでおり、ジャケットの中のポケットに手を突っ込み銃を取り出し安全装置を外し後ろ手に隠し持つと小声でまた話し)

わかった。その案で行くぞ。完全に此処で始末するか？それともお前の組織に連れ帰るか？そこまで大怪我はさせねえ方がいいなら銃は唯の脅しに使うが。

本部に連れ帰って芋づる式に背後の組織も暴くから出来れば生かしたままの方が良いな。
ーーあっ、そっちが出るタイミングは僕からスマホの着信が来た瞬間ね。だから音が鳴らないようにサイレントモードにしてて。じゃあ、僕はあっちに移動してくるよ。

(時間が惜しいのでそう矢継ぎ早に言い、路地裏へと姿を消す。もし相手が裏切ってもここの辺りのルートは頭に入ってるので、最悪三人に襲われても上手く逃げられるだろうと思いながら。なるべく音を立てずに走って、数分ほどで薬物バイヤーの背後近くの路地に移動しナイフを構えると、合図として彼に着信をかけ)

おー、怖いな。ま、事後処理は任せるぜ。つまり命に関わらない程度であれば最悪良いってことだな。わかった。

(相手の言葉を聞き、同意を示す様に頷くと路地裏へと姿を消していった相手を見送り。言われたとおりスマホをサイレントモードへと変更し合図を待っているとポケットに軽い振動を感じる。次の瞬間、隠れていた場所からバイヤーたちの居る路地へと姿を現しその注目を完全に集めるように高圧的な言葉をかけつつ口元には笑みを浮かべ、銃口を二人のうちのバイヤーと見られる方に向け。最悪、反抗された時にでも薬中の方ならば何とかなるという読みからだ。注目が完全に此方に集まっている隙に早く来いと相手を待ち、なるべく背後は見ないようにして間を繋ぎ)

よぉ、楽しそうなコトしてんじゃねぇか。何の取引だ？
…なあ、二つのマフィアが統治してねえここでなら何でも許されると思ったか？大間違いだぜ。さあ、どっちから先に中の餌食になりてぇんだ？

(合図は出したが囮役をしている相手に注目が集まるまで息を潜めること、数秒後。手前の薬中と奥の薬物バイヤーの視線が前方へと集まり、彼の挑発する声が聞こえてきて。このタイミングだと自身は紛れていた路地裏の闇から飛び出して、まずは厄介そうなバイヤーの背中を蹴り付けるとそのまま地面に押し倒す。間髪入れずに腕を捻り上げ、取り出そうとしていたスタンガンを逆に奪い強くそれを背中に押し当てる。バチバチッとした音と共に気絶をし、足が竦んですっかり動けなくなってしまっていた薬中にもニコッと笑いかけ、それを押し当てて同様に気絶をさせた。思ったよりも呆気ないと感じつつ倒れている二人の身体を蹴り、反応が無くちゃんと気絶していることを確認すると)

もしもし狼君？無事に終わったよ。

(スマホで狼に電話を掛けてそう告げる。ーーだがそんな朧を左斜め前方から狙う影が一つ。シャッターが降りた店の二階のベランダから、男が一人ライフルで狙いを定めていて。どうやら、気絶している二人の仲間のようで監視役のようだ。相手は自身がここにいることを狼や朧に気付かれていないと思い、まずは朧に向けてその引き金を引こうとしていき。ライフルのスコープがほんの少し月明かりで反射をするものの、朧は気付かず電話を掛けたままで)

（完全に注目が此方へと引きつけられた瞬間、素早い動作で2人の意識を奪っていく相手の動作をやや遠目に眺めて純粋にその素早さと手際に感嘆の息を漏らし。自分が対峙した時も相手の戦闘に手慣れた様子は伺えたがこうして傍目で傍観していると際立ってその才能の異質さが伺える。この若さで幹部になっているのはそういう所以なのだろうかと考えているとスマホから流れてきた声でハッと我に帰り適当に一つ返事を返したとき、奇妙な違和感を感じぐるりと辺りを見渡し。こんなに簡単に終わっていいのだろうかという疑念は夜闇に微かに反射した光を見た瞬間確信に変わり瞬時に地面を蹴り上げ）

ッ…おい、馬鹿、朧！

（あの銃口が狙っているのは真っ直ぐ相手だと言うのに相手は悠長にスマホなど握って気付いている様子もなく一つ舌打ちをすると二人の間の距離を僅か5、6歩で駆け抜けて咄嗟に相手の体を掴むと横ざまに倒れ込み、次の瞬間には朧の頭があった場所に銃弾が通っており。向こうは高台で此方の姿を未だ捉えられており圧倒的に不利である状況には変わりがなく相手の体を引っ張り一度路地を曲がり銃弾の届かない路地裏へと退避して）

(突然、勢いよく倒された為に被っていた帽子が宙を舞う。次いで身体に鈍い振動と続けざまに聞こえた銃声。弾の軌道から見るにあそこの二階かな、と考えつつ倒れ込んだまま取り出した拳銃で五・六発そちらに撃ち。別に当たらずとも次の攻撃を遅らせる威嚇射撃程度にはなったか、と銃を構え直そうとしていれば、早く隠れろと言わんばかりに近くの路地まで引っ張られ。しかし、へらっとした雰囲気で相手に笑い掛け)

助かったよ狼君。君が僕の名前を呼んで駆け付けてくれなかったらたぶん死んでた。いやー、こうして君に借りを作っちゃったから近い内に僕もそれを返さなくちゃね。

助かったよ、じゃねぇよ！もっと警戒心ってモンをなぁ…
はぁ…ったく…

（取り敢えず相手と自分の無事を確認すると安堵のため息を吐いて。此処は建物の陰になっていゆため狙撃できない筈ではあるが、このままここでじっとしていればあの狙撃手の男に仲間を呼ばれてしまい兼ねない。かと言って迂闊に飛び出せば撃たれてしまう。一気に圧倒的不利になった状況に内心頭を抱えつつも再び銃を構え直しながら次の作戦を手早く立てようと考え）

良いか、兎に角あの狙撃手の動きを止めなきゃなんねぇ。俺がアイツと銃撃戦をして時間を稼いでる間にお前は裏からあの建物に回りこめるか？

ははっ、ごめんごめん。

(ヒラヒラと手を軽く振って、緊張感を持っていなさそうな緩やかさで本人はそう答えて。単に撃たれそうになったのか、逆にワザと撃たしたのか。その真意は謎のままで。朧は狼の話を聞くと、やはり相手を殺す気は無いのかナイフではなく敵から奪ったスタンガンを持ち)

勿論。
ーーじゃあ早速、回り込んで来るよ。

(先程の軌道から場所は図れた。スナイパー故に素早く移動をし始めている可能性もあるが、それは一時の相棒が銃撃戦で引き止めてくれるだろうと思い。黒のロングコートを翻して再び奥へと走り出し)

（相変わらず軽々しく自分の言葉を受け流されればムッとするものの全く何の考えが無かった様にも見えず疑るように目を細め。しかし自分の作戦を聞き急ぎ路地を駆けて行った相手の背中を目で追って路地裏から先ほどの通りへと飛び出し。辺りを見渡し先程のスナイパーを見つけた瞬間弾丸が顔スレスレを通過し大きく横へ飛べばゴミ箱の影から相手の方向へ銃を向け数発発砲すると窓ガラスが割れる音と何かが崩れる大きな音が響き。命中してしまったかと若干ゴミ箱から身を乗り出した瞬間けたたましい発砲音が再び響き瞬時にゴミ箱を盾にしたものの一つの弾丸が左腕を掠め。一度大きな舌打ちをすると、しかし弾切れになっていてポケットから予備の弾丸を補充しようとするものの左手が上手く使えず震えてしまいその間にもゴミ箱には何発も弾丸が当たっておりこの隠れ場も時間の問題かと思われ。なんとか装填し終え片手で相手に照準を絞り、彼の到着はまだなのかと若干焦りを感じ始め）