匿名さん 2015-11-23 11:32:49 |
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…っおい、朧…!
(相手が直ぐに此方に飛んできてくれたのを見て安堵し。結界はなんとか持ちこたえていたものの張り直さなければならない寸前のところまできておりもう少しで破られる寸前で。しかし、相手が来た瞬間周りの空気が一層どんよりとした事に気付き、慌てて結界を貼り直そうとした瞬間、相手の体が思い切り地面に叩きつけられており。直ぐに立ち上がれないでいるのを見て咄嗟に鈴を掲げて自分の持っているありったけの霊力を其処に注ぎ込むと結界を貼り直し、倒れている相手の元へと駆け寄り)
おい、朧…!しっかりしろ、大丈夫か…?
このくらい…っ、大丈夫…!
(一撃一撃が重い鬼の攻撃をまともに喰らってしまった為に、立ち上がる時に多少フラついたものの運の良いことに骨は折れていないようで血は吐かずに済み。いつの間にか纏っていた狐火は全て消えていた為に、新たに幾つかのそれを灯していって。敵の悪霊化が進んだ為に結界内に居ても空気は澱んでおり、五分五分から不利な状況へと立たされてしまったと直感的に感じていき。自身が死ぬか悪霊になるかの最終的な選択肢を視野に入れつつ書生君へと背を向けて。そして、結界の外からこちらの様子を伺っている鬼を見ては時間の問題かと、この結界から再び外に出て敵と対峙しようとして。この場から足を進めようとし)
……もしも僕が負けそうになったその時は、何が何でも鬼を食い止める事だけはして於くから。その間に書生君は無事に逃げおくれよ。
……っ…お前……
(相手がふらりと立ち上がったのを見て慌てて手を貸そうとしたものの相手は直ぐに自分に背を向けて鬼へと対峙していき。その言葉は余りにも重く、相手が自分を逃がすためには命をも捨てようとしている事に気付き。こんな時ばかり契約契約と言わないで自分の命を擲って戦おうとしている相手の背を見て思わず返す言葉もなく絶句してしまい、尚結界から出て行き自分の逃げる時間を稼ごうとしている相手の腕を咄嗟に掴み引き止めて思わずと言った風に声を荒げ)
契約すれば!お前の力は強くなるんだろ?
良いよ、わかった、俺がお前と契約してやる!
……その言葉、本当?
(永い事、死と言うものを実感した事は無かったが今回ばかりは流石に体か精神の何方かが死ぬかもしれないと覚悟を決めようとしていれば、不意に掴まれた腕と掛けられた言葉に足を止めて振り返り。己は口では簡単に契約を結べと迫っていたものの、実際これは人間側からすれば忌み嫌われていることであり。大正の時代となった今でも、狐憑き、鬼憑きなどと言った人間は忌み子と称され暴かれれば迫害されるのが現実。なら何故己が普段の日常で契約をと煩かったかだって?そんなこと、単に書生君へと話す口実が欲しかったからと言うのが一番の理由で。彼の身を他の邪から守ると言うのも訳の一つだったが、不運が重ならない限りは己の力のみで追い払うことが出来ていた。しかし、今の事態は深刻過ぎるほど深刻な状況で。仮に己が命を賭けて鬼を食い止めたとしても、書生君が無事に逃げ切ることが保障されている訳でもない。少々複雑そうな面持ちで彼へと近付き)
……嘘偽りは無い?言霊って結構強力なんだよ。それに、僕と契りを結んだら……少なくとも他の人間から迫害される可能性もあるよ?
男に二言は無い。
お前が俺を守るのに命を張るなら俺もお前を守るのに命を張ってやる。
…幸運な事に最初から仲が良い人間なんていねぇし。
迫害されようが何されようが、お前はずっと俺に付き纏うんだろ?
(複雑な面持ちで此方を見てきた相手の瞳には未だ迷いがあり。いつもはあんなに煩く契約を結べ結べと煩い癖にいざ結ぶと言うと心配そうに此方を見てくるなんて変な奴と眉を下げて笑えば先程打ち付けられた時に頰についていた一筋の切り傷にそっと手を伸ばし。上手くいくかはわからなかったものの優しくその上を指でなぞってやると案の定己の僅かばかりの霊力で相手の傷口は跡形もなく消え去っており。自分には力が無いためにこんな小さな傷しか消すことはできないが、契約を結べば相手の力になれる。そして相手は信用するに値すると漸くわかったのだ。口元に微笑を浮かべて相手の双眸を見るともう一度繰り返し)
俺は、お前と契約を結ぶ。
……勿論、僕は君の命がある限り、憑き纏うし憑き添うよ。
ーー分かった。急いで契約の儀を行おう。
(相手の真剣な眼差しに、その瞳に迷いが無いことを感じ取ればこちらもその想いを無下にはせずに頷いて。治された傷口に、使い方を知れば彼の霊力はもっと化けるだろうと考えつつも側に落ちていた長い木の枝を持って、ものの数秒で地面に簡易的な陣を描いていき。あとはこの陣の中に契約者である彼の血を垂らして、己が契約の言葉を述べていくだけだと思い。顔を上げていき)
この陣の中央に君の血を少し貰えないかな?
了解。
(直ぐに相手がさらさらと地面に描いて行く陣を見て、いよいよ契約をするという実感が湧き怖気付きそうになるものの、決意は固く、この道を選べば相手と共に生きて行く以外の道は絶たれてしまうとわかっていてもそれを嫌だと思う気持ちは無く、言われた通り血を垂らすために懐から護身用の小刀を取り出すと左手の人差し指の腹にぷつりと刃を入れて。傷口から滲んできた血を見てゆっくりとそれを陣の真ん中へと数滴垂らし)
…これで良いか?
うん、それで大丈夫。
(ゆっくりと落ちて言った赤い血を一瞥して彼に向かって頷けば、己は契約の陣の手間へと移動をしていき。緩慢な動作で片手を突き出して、有りっ丈の妖力を込めながらより強い言霊を発してゆき。言葉を紡げば紡ぐほど契約の陣はくすんだ赤色に輝き出して、辺りの空気も重苦しいものへと反転し。そこから溢れた力が庭先の小石や着ている羽織を少しばかり浮かしていき。ピリピリとした慣れぬ感覚にやや眉を顰めつつも琥珀色の瞳を一度固く閉じて、薄っすらと開けてゆけば普段よりも何処か低く嗄れた声を発していって)
……我は千を生きる狐の化身。有する真名は朧。今宵、人の子である汝と契りを結ばんとする。さあ我の真名を述べよ。然すれば、己が力を与えよう。
……、…朧。
(相手が言霊を発して行く度空気が重くなっていくのがわかる。けいやくの陣は鈍い赤へと変わり、霊力があるからこそ辺りに立ち込める気の強さに気付き、目をそらす事ができず。その契約の言葉を紡ぐ相手はまるで別人のようで、食い入るように見つめていれば自然と自分の口が相手の真名を呼び。自分でも驚くほどしっかりした声音でその音を紡げばじっと相手を見つめて)
(己の真名を呼ばれた刹那__契約の陣が一度強く輝いて、その光が粒子のように辺りへと飛散してゆき。丸で赤い粉雪が舞っているような、現世とは掛け離れた幻想的な光景に視線を流しつつも契約主である相手へと近付いていって。徐ろに彼の手を掴めば、己の指をその手の甲に軽く落として行き。ちりちりと微かに燃えるような感覚がした後、相手の手の甲には月のような契約印が刻み込まれていて。無事に契約が終了したことが見て取れる。それから少し遅れて、己へと逆流して来るような相手の霊力を実感していき。多少の違和感を覚えながらも、全盛期の頃のような力を取り戻せたのは確かなことで。ゆらりと六つの尾ではなく、九つの尾へと増えたそれを揺らせば。先程よりも青く燃ゆる狐火を展開させれば三日月のような笑みを浮かべ)
……契りは結ばれた。
我が主、狼よ。汝が死せる刻は我の死せる刻。その逆もまた然り。それを努々忘れぬように致せ。
……!…嗚呼。
(目が眩む様な光に思わず瞳を閉じてしまい、再び目を開けた時には赤い光の粒子が辺りに舞っており。その中央にいるのは相手の姿で、その相手に不意にぐいと腕を引かれ、指を添えられた瞬間にちりっと掌に痛みを感じた後、じわじわと契約印が掌に浮かび上がり。ドクドクと鼓動が早まっていくのがわかる。自分の力が流れ出すと同時に相手の力や知識が体に流れてくる。これが、契約の力。はっとして相手を見遣れば、それこそが真の姿なのだろう、9本の尾、そして青白い狐火を纏った、先程とは雰囲気の違う相手の姿があり。その雰囲気に抗うことが出来ず、そして抗うつもりもなくゆっくりと頷き、その神々しいまでの相手の姿から目を離す事が出来ずに居て)
ーーまあ、そう言うわけで手短に倒して来るよ。狼君は援護を宜しくね。
(先程の雰囲気は何処へやら、ケラリといつもの調子で笑えば書生君改め己が主である狼君から視線を外し。流石に大分時間が過ぎた為か、結界は鬼の力で所々ひび割れており。しかしながら契約を結んだ今は怖いものなど無く。潔く結界の外へと躍り出れば、一直線に向かって来る敵をひらりと躱して重い蹴りを入れていって。妖しげに九つの尾を揺らめかせれば、間髪入れずに狐火で鬼を炙ってゆき。瞬間、相手は地を響かせるような雄叫びを上げて、しっちゃかめっちゃかに拳や金棒を振るっていき。そのような敵を見るに、こちらの攻撃は随分と効いているのだろう。はてさて、我が主は己が妖狐の知識を使って、自身の多量の霊力を上手く行使する事が出来るだろうかと。丸で武士の初陣を見守るようだと思いながらも、暴れる鬼を前にして、それを鎮めてくれるだろう彼の援護を待ち)
……は?援護って……おい!
(神々しい雰囲気は嘘だったのかもしれないと目を擦ってしまう様な相手の変容に目を擦っている内に適当に援護を押し付けて戦線に飛び出していった相手を見て溜息を吐き。先程よりも相手の動きはずっと軽やかで、一撃一撃に重みがある。これが本当の力なのかと思わず目を瞠ってそれを眺めていたが、自分は援護を頼まれていたことを思い出し、自分の中に流れる力がふと一点に流れていることに気づき。それは手元に握りしめたままだったあの鈴で、先程より眩い光を放つ其れを腕の動くままに翳すと左手で刀印を結び九字を切り)
臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前!
(九字護身法が行われた途端、天から光を帯びた主柱が降り注ぎ。丸で牢のように鬼を囲めば閉じ込めていって。そうして動きが鎮められている間、鬼の命の源でもある二本のツノを見遣れば一回りも二回りも大きい敵の体躯へと飛び移り、トンッと上手くその肩に乗ってゆき。己の扇子を刀へと化かせば、勢いよく目の前の立派なツノを斬り落としていって。すると断末魔を上げた後、鬼は糸が切れた人形のように地面に倒れ込んでピクリとも動かなくなり。その妖気が完全に途絶えたことを確認すれば、からんころんと下駄を鳴らして彼の元へと戻って行き)
初めてにしては上出来過ぎる援護だったよ、お陰様で楽に鬼が倒せた。いやぁ、僕等って最初から相性が良かったのかもね。
お前な……
(自分の援護で身動きが取れなくなった鬼の首を討った事は素直に凄いと思うものの、自分に何の説明もなく援護を押し付けてしれっとした表情をしていることは気に食わず。憎らしい相手の額をコツンと軽く叩くとありありと手の甲に浮かんだ印が目に入り、相手と契約したという事実を見せつけられているようで。此れからは完全に相手と運命共同体になると言うわけで、面倒な事が増えると思って気が重くなったものの目の前の相手が自分を逃がす為に命を落とすという最悪の事態にならなかったことに安堵して相手の体を抱き寄せて肩口に頭を埋めて呆れたような口調で話し)
お前、俺が契約結ばなかったら死んでたかもしれねぇじゃねえかよ…、無茶しやがって…、俺なんか見捨ててお前だけ逃げれただろうが。
確かに逃げる事なんて簡単に出来たよ。でもさ、ただ生き永らえるのは僕には酷な事で価値の無い事なんだ。
(唐突に抱き締められた為に、あの書生君が…!と嬉しさ半分で驚きつつもそれ程心配させてしまったのかもしれないと考え直して、己よりも幾分か小さい相手の背に腕を回してその頭を優しく撫でながら、少し躊躇ったがこの胸の内に留めていた気持ちを述べていき。己が生きて来た月日は千を超え、移り変わる季節は何度もこの目で見てきた。その度に出会いと別れがあり、そして幾つも生まれた寂しさに耐えられなくなった為に、己は何時しか次第に誰か一人へと固執すると言うことを止めてしまった。しかし、それがいけなかった。心はがらんどうになり何故己は生きているのか、何の為に気の遠くなるような時を過ごしているのか。ぐるぐると思考を悪循環させるばかりで、だがそんな答えの無い問い掛けに答えてくれる者など在らず。そうやって半ば己を見失い掛けていた頃に、彼と巡り合う事が出来、再び生きる意味を持つ事が出来たのだ。ゆるりと九つの尾を揺らしつつ穏やかな笑みを浮かべて、相手の顔を眺めてゆき)
……狼君には想像が付かないかもしれないけど、僕は君に会う前は丸で死んだ様に生きている抜け殻みたいなものだったんだよ。けれど、狼君に会ってから僕は生きている実感を得る事が出来た。あゝ、長生きをするのも悪くなかったなって思えたんだ。
……そんな恩人の君を見捨てて逃げるだなんて、そんな事をするぐらいならこの命を賭けて守る方が僕にとっては冴えた遣り方だったんだよ。
…───お前…
(いつもはおちゃらけて、軽くて、しつこく付き纏うだけの五月蝿い妖としてしか相手を認識していなかったが、相手の口から聞いたその言葉は自分等とは比較できないほど重く長い年月が積み重なったもので。一体彼が過ごした時間は何れ程彼を苦しめて来たのだろう。人間を愛せば先立たれ、別れを繰り返せば関わりを持つことすら怖くなってしまいそうだ。妖故に避けられ、妖故に忌み嫌われ、妖故に存在を認識してもらえない事もあったのではないだろうか。自分を抱きしめる相手の身体は確かに自分よりも大きいけれど、自分には今の相手が少しだけ小さく見えて。彼が過ごした年月の内に出来た大きな大きな穴を埋めるには余りに自分はちっぽけでどうしようもない人間で。それでも少しでも相手の傍に寄り添って、悠久の時を過ごす寂しさを減らしてあげることが出来れば。心からそう思うようになって相手の体を強く強く抱き締めると緩く笑み視線を合わせて)
本当、馬鹿な奴。俺なんか止めとけって言ったのに、ずっと付いて来やがって。
そんなに俺の事が好きなら居てやるよ。お前の隣に、ずっと、俺が。
だからお前も居なくなるな。不幸にしたりしないから、俺を守る為に死ぬとか、もう止めろよ?
……永い事生きて来たけどこんな化け狐の側にずっと居てくれるなんて言ってくれた人、狼君が初めてだよ。
(相手から伝えられた言葉に目を二・三度ぱちくりとさせたが、やがて淡く柔く微笑めばそう嬉しそうに呟いていき。大体の人間は己が妖狐だと気が付けば怖がられて離れてしまうか、憎まれて退治をして来ようとするかの二択だったので、彼の言葉は己にとっては新鮮で、そして一番求めていたものだったのかもしれない。そう考えると千年と言う永い時を生きて来たが、彼と居ればまだまだ己が知り得ない事を沢山教えてくれるかもしれないと思い。あゝ、この目に狂いは無かったと、漸く己がこの現世に生きて居ても良いのだと言って貰えた様な気がして。何だか込み上げて来る切なさを隠す様に、ぎゅっと彼を抱き締め返し。......妖怪と人間の寿命に差がある事は分かってはいる。彼の方が必ず先に死んでしまう事など言われずともだ。それでも春は桜を、夏は渚を、秋は紅葉を、冬は雪を、彼と共に見たいと想いを馳せて。それは永遠ではないけれど、今のみの幸せだとしても。この想ふ気持ちを誰かにそう易々と引き裂かれる気は無い。そんな事を胸の内に隠して、相手の額へと口付けを一つ落として行き)
ありがとう…。そうだよ、僕は狼君の事が好きで愛してる。或る小説家の言葉を借りれば…月が綺麗ですねと言った所だよ。こっちこそ、居なくなったりしないし、君の事を不幸にさせたりなんてしない。全ての凶から守り抜くと誓うよ。
あっはは…何だそれ。随分嫌われてんじゃねぇか。
(自分のその言葉にさえ嬉しそうにしている相手の様子を見れば相手が今まで受けてきた仕打ちを容易に想像する事が出来て眉を下げてくしゃりと笑えば誤魔化すように相手の頭を撫でて。思えばもしかしたら最初から似た者同士だったのかもしれない。小さい頃から人ならざる者が見えてしまい、それを一々やれあそこに何が、あそこには何が、誰々の後ろには何がと口にしていれば次第に友人と呼ばれる者は減っていき、気味悪がられ、疎まれ、遠ざけられ、次第に一人には慣れていき、滅多に妖の事を口にすることも無くなった。別に一人でも良いと思っていたし、人間関係だなんて億劫なだけで、一生懸命に護摩を擦り人間関係を構築しようとしている者達を見るとそれが滑稽に見えていた。だが、始めてあそこまで心の蔵が縮むような思いをして、此奴は無くしたくないと彼処まで思ったのも初めてで、ただ付き纏ってくるだけの面倒な妖が自分の中で自分でも気付かない内に大きな重量を占めていて。今こうして自分の後ろに回されている腕に力が込められる度に相手の気持ちの昂ぶりを察したり、正面切って好きと言われたり、額に落とされた口づけに驚き、顔に熱を集中させ、それでも嬉しかったりと今までに感じた事のなかった感情が沢山押し寄せてきて、相手の胸元に顔を埋めて一段と細い声で言い)
…お前、冗談で言ったのに…本当に、好き、って……。俺の事、好きで居てくれる、のか?
…俺も好きだ。朧の事。…ずっと一緒だ。もし俺がお前より先に死んでしまったとしても、何度でも生まれ変わってお前に会いに行く。
そしたら寂しくないだろ?
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