匿名さん 2015-11-23 11:32:49 |
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うっせ、お前なんてそれくらいしか用法ねえんだからじっとしてろよ。
(大人しく布団に入ってきた狐を抱えてぎゅっと抱きしめてみると着物越しに体温が伝わってきて毛布の中が温かくなり。これならば直ぐに眠れそうだと完全に警戒心を解いて暫く瞳を閉じて微睡んでいればいつの間にかそれは本格的な眠りに変わっており。すうすうと規則的な寝息を立ててどんな夢を見ているのか頬はだらしなく緩んでおり、しかし腕の中の相手を抱きしめる力は尚強いままで)
(相手は寝たのか、すぐに穏やかな寝息が聞こえて来たので顔を上げ。さて寄宿舎の番をして来るかと思い、スルリとその腕から抜け出す算段でいたものの存外強く抱き抱えられてしまっている為に、丸で身動きが取れず。此れが己が見初めている書生君でなかったのなら、牙を立ててガブリと噛んで抜け出していた所だと。そんな贔屓染みたことを思いつつも、獣の前足でその頬をぺしぺしと軽く叩いて行って。其れにしても、まだ他の悪霊の気配はしないから良いものを随分と幸せそうに寝ていると彼の顔を覗き込み。こう言った顔を何時か己にも見せてくれる日が来るだろうかと、少々哀愁を感じながらも考えていれば本格的に眠気が来たのでウッカリ寝そうになり。ふるふるとこうべを振って睡魔を払っていき)
(何やら時折頬を叩かれれば寝苦しそうに一瞬呼吸を乱すものの数秒とせず再び規則的な寝息へと収束し。完全な深い睡眠へと移行したのか緩みきっていた頬は普通の表情へと戻り、相手をきつく抱きしめていた腕の力も少しばかり緩んで空間が生み出され。布団の中が2人分の体温で普段より温かく快適だという以外には特に未だ変わったこともなくごく普通の、否、普通よりは快適なくらいの夜を過ごしており)
(暫くして相手の腕の力が解けた為に、その温もりを名残惜しく感じつつもスルリと抜けて行き。真夜中、多くの人の子が寝静まった時間帯。足を立てぬようこの寄宿舎の廊下や縁側を歩いて行って。所々に害の無い付喪神が居るだけかと思えば、踵を返して彼が眠る部屋へと帰って行き。今度は敷布団の中に入るのでは無く、猫のようにその毛布の上にストンと乗っかって丸まっていって。梟の鳴き声か、時おり微かに聞こえて来る囀りに狐耳を立てつつそのまま夜の番をしていき)
(暫くして、不意に大きく一度寝返りを打ち。時間が経つにつれて部屋の中の空気が重くなっている、ような気がする。意識こそまだ無いものの寝苦しいのは確かで、無意識ながらにもそれは感じており。先程まであんなに幸福そうに寝ていたのは何処へやら少し眉を顰めたり言葉になっていない唸るような寝言を零したりと落ち着かない様子で寝返りを何度も打って無意識のうちに布団の中で手を動かし相手を探している様子で)
(夜も益々更けて来た頃。部屋の壁時計がボォンと鳴り響き、午前2時を示す音が聞こえて来て。丑三つ時のこの時刻が一番警戒すべき時だと分かっていた為に、己の視線をより一層尖らせていれば)
……来たか。
(ふと、月明かりに照らされた障子の前を通り過ぎる影が一つ。この部屋へと入って来るのか来ないのかはさておき、用心に越したことは無いと狐火で払おうとしていれば。この満ちた妖気が息苦しいのか、寝苦しそうにしている彼が目に入り。早く追い払ってしまおうと、障子の前へと跳んだ刹那__何処からともなく雑音混じりの“れとろ”な音が耳を劈き。これは蓄音機かと、時々掠れるその不気味なレコーダーの音楽を鬱陶しげに感じながらも、長年の勘で嫌な予感がした為に急いで狐の姿のまま書生君を揺すり起こせば、狐火で障子の影を燃やそうとしていき。しかしその直前で、カタカタと独りでに動く日本人形に阻まれたせいで影には当たらず。舌打ちをしたい気持ちでいると、下っ端の妖怪であろう天邪鬼達が天井から降りて来たので。書生君の前へと己が躍り出れば、低い唸り声を発した威嚇をして近付けないように牽制をしていき)
…っ、う?
(苦しそうに眠っていたため揺り起こされると存外簡単に起き上がり。寝ぼけ眼ながら辺りに立ち込める気配の異様さにはすぐに気づき、そのぼんやりとした視界も漸く妖の姿を捉え。自分の目の前には妖達から自分を守るように相手が威嚇しながら立ちはだかっており。その状況に一瞬思考がついて行かず、ぼんやりと眺めてしまってから慌てて布団から飛び出て。よくよく考えたらこの部屋には凄まじい妖気が漂っている。しかもかなり良くない類のものだ。幾ら朧が力のある妖狐だと雖も数の優位のせいで力の差は歴然としているのがわかり)
…っ、おい。何だよ、これ…どうなってんだ?
(先程貰った鈴を念のため取り出して片手に握り締める。幼い頃から妖が見えていたおかげで恐怖心はそこまで無かったものの明らかにこれは命が危ないというのがひしひしと伝わってくる。そして、その中で本当に自分を守ろうとしている相手を見遣り少し不安げに眉を下げて)
予想以上の大物が来たみたいだ。……どうやら前々から書生君のことを狙っていた鬼の頭のようだね。いやはや、君って妖狐の僕と言い、大妖怪に好かれるねぇ。
(目の前に立ちはだかる手下の種族と数からして、それなりに名を馳せる鬼の長だろうと読むことが出来。本来なら天邪鬼単体の力はそれ程でも無いが、この数であれば己を疲労させるには充分な数であり。なるべく鬼の頭に行き着く前に妖力を使ってしまうのは避けたかったので、上記の軽口を叩きつつも数秒だけ策を巡らせていき。その間にもジリジリと迫り来る天邪鬼達を鋭い獣の牙と唸り声で威嚇して。一つの案が閃いた為に、少しの妖術を使って煙を帯びた赤いちりめんの巾着袋を露わにさせ。その中に入っているのは、ビー玉やおはじきを己の妖術で“金平糖”や“きゃらめる”に化かした物で。巾着袋を口で咥えるや否、それを彼の手中へとポンと投げ渡し)
ーー書生君、それを部屋の隅でもどこでも良いから一箇所に投げて欲しい。天邪鬼の気を引ける物が入っているから宜しく頼むよ。
お、鬼…?…はぁ、よくわかんねぇけど、わかった。投げれば良いんだな?
(こんな訳のわからない妖に好かれるだなんてたまったものではないと言わんばかりに眉を顰めて辺りを見渡し。何か手伝えるような術があれば良いのだろうが生憎退魔に効きそうなのは先ほどもらった鈴のみ。書物で見かけるような護符を数枚昔行った寺の住職に持っておきなさいと渡されたものの効果があるのかはわかったものではない。受け取った巾着袋を投げて欲しいと言われては今は相手を信用して頼るしか術はなく素直に一度頷くとそれを部屋の隅に向かってぽいと投げて。中からは何やら色々な物が転がりでて、それは一瞬金平糖やきゃらめるに見えたものの直ぐにビー玉やおはじきだと見抜くことが出来。しかし霊力の低い天邪鬼にはあれが金平糖やきゃらめるのままに見えるのだろうと考えれば気を逸らす作戦かと納得して)
おい、朧、本当に大丈夫なのか…?
大丈夫大丈夫、あんな三下妖怪にやれるほど弱くはないからね。伊達に永く生きて来た訳ではないよ。
(心配そうにこちらを見遣る彼を見ては、狐の姿のままニヤリとした笑みを浮かべ。江戸の後期にちょっとした事情から六尾にまで落ちたとは言え、元の己は九本の尾を持ち得ていた九尾。悪戯するしか能のない天邪鬼など、一箇所に纏めてしまえば倒すことなどお茶の子さいさいで。書生君が部屋の隅へと化かしたお菓子を投げて、それに気を取られた天邪鬼達がそこに群がって行くのを確認すれば作戦は上々で。そして後から追い掛けて来られるのも面倒なので、容赦無く狐火を展開させると、一箇所に固まっていた天邪鬼達を囲んで一気に燃やして消し炭にしていき。だいぶ妖力を使わずに済んだと思えば、くるりと回転をして獣から人型へと戻って。しかしながら狐耳や尾は表したまま辺りを見回していき)
……妖力の感じからして、鬼の頭は庭先かな。
で、お前が強いのはわかったけど、その鬼の頭とお前ならどっちが強いんだ?
(天邪鬼は案の定お菓子に目移りしてすぐに其方へと向かっていくので安直だなと内心で割と率直な感想を述べつつ。其処を狐火で全て消し炭にする様子は圧巻で、流石にこの程度は妖狐には相手ではないかと若干安堵の息を漏らしたのも束の間、本体の鬼の頭たる妖は未だ姿を見せておらず。先ほどの相手の言葉を拝借するならば鬼の頭は朧と並列されていたように思えるが、果たしてどちらが強いのだろうか。勿論朧に勝ってもらわないと困るのだが、とそこまで考えたところでいつの間にか自分が相手に頼りきっていることに気付き。信用等するものかとあそこまで頑なに考えていたのにも関わらずいざ妖に襲われると全て朧頼みだなんて何と都合のいいのだろう。流石に若干ばかり気が引けて手首に巻きつけた鈴を眺めながら)
それと、他に俺が手伝えることは?
……あゝ、それを聞いちゃうか。……そうだね、今の所は五分五分かな。僕が悪狐にでもなれば楽に捻り潰せるけど、まだ君の側に居たいからそれは遣りたくない手だね。
(ケラリとした軽い笑みを作れば、若草色の羽織を靡かせていき。悪霊に落ちるなどそれこそ最終手段であり、好んで選ぶ妖怪など居ないに等しい。思考は破壊のみで埋め尽くされ、生きとし生けるもの全てを食らうのが悪霊。妖怪が落ちる所まで落ちた姿で成れの果てであり、己でさえもその姿を見るのは憚られるもの。先程滅した天邪鬼は悪霊では非ず、まだただの妖怪であったが、果たして鬼の頭は如何だか。恐らく違うとは思うものの庭先からひしひしと感じる妖気はそれなりに高いもので。全盛期よりも力が衰退してしまった己が勝てるかどうかは半々ぐらい。だが勝たなければ彼が死んでしまうため二度と朝日は拝めぬ。だからこそ、何が何でも勝たなければならない。そう心に秘めつつ相手に視線を戻していき)
本当なら、今すぐにでも神様のお膝元である神社に避難をして欲しいんだけど、この状況じゃあそれは不可能だしねぇ…。
それに、書生君は僕と契約を結んで狐憑きになる気もないでしょう?
…悪狐って。今は悪狐じゃなかったのか、そりゃ知らなかった。
(相手の言葉からこれが厳しい戦いであることはひしひしと伝わってきて、重苦しい雰囲気を壊そうとわざとそんな言葉を相手に掛けて肩を竦め。恐らく此処で相手が負ければ自分の命はない。つまり自分の命は既にいつの間にか相手に掌握されていたということで。契約の話を再び持ち出されては、こんな状況下になっても尚相手と契約を結ぶ気はなく、性格が歪んでいると言われても仕方ないだろうが此処までしてもらっても尚騙されているのかもしれないと疑る気持ちは抜けず。相手は化かすのを得意とする狐、どこまでが本当でどこからが虚構か等そう簡単に見抜けるものではないと警戒することは怠らず相手に答えて)
ま、其処に行くまでに食い殺されるだろうな。
お前は結局それかよ、ねえって言ってんだろ、ねえって。
お前、まさか鬼の頭と手組んで俺を嵌めようとしてるんじゃねえだろうな?
ははっ、それはさすがに傷付くなぁ。
(そう言いつつも平然とした素振りでケラケラと笑えば、ゆらりと六本の尾を動かしていき。鬼と結託をするなどと言った方法は考えつかなかったことだと思いながら、己はさすがにそこまで邪道ではない上にそもそも彼を陥れる気は無く。けれど、妖の言葉など人からすれば戯言に聞こえるのもまた仕方の無いことで。今ここで反論や否定を述べても意味の無いことだと分かっていたからこそ、誤魔化すように笑えば、その場で踵を返して机の前の障子を開け。そこから庭先へと飛び降りようとして行き)
……まあ、何はともあれ他の寄宿舎の人間に被害が及ぶ前にもあの鬼の頭を倒さないと。
だってお前、信用ねぇし。
(少し可哀相ではあったがずばりとそう言い切って。庭先へと出て行く相手の背を追いかけて上着を羽織りそっと首を出してみるとその癪気に思わずといった具合に眉を顰め。今までに対峙した事が無い程のその妖気は異常という言葉そのもので、本当に朧が太刀打ち出来るのか一抹の不安が過ぎり。妖は信用できない。口先三寸で丸め込んで、何を狙っているのかわかった事ではない。だけれど、朧の言葉が全て本当だったらどうしよう。もしも、騙そうとしているのではなく本当に守ろうとしてくれているのだとしたら。しつこく付き纏って何度も何度も契約を強請ってくる相手がもしこの鬼の頭にやられてしまったら、どうしよう。そんな不安が胸の中に渦巻き緩く着物の胸の部分を掴み、しかし言葉は口に出せず部屋の外を覗き込んだまま固まってしまい)
(嫌に輝いている満月の月明かりがあるとは言え、視界が薄暗いことには変わらず。しかしそんなことは御構い無しに、書生君の部屋から庭先へと降りてゆけばトンッと軽く着地をして、数十歩先に居る鬼の頭を見遣り。己と同じく人間の形をしているものの相手は一回りも大きい体躯で、それは岩をも砕きそうな程。頭の左右から生えた角は雄々しく正に鬼の頭と言った所だ。さて言葉は通じるだろうかと、出来れば円満解決したかった故に話し掛けようとした瞬間__既に己の眼前には拳が迫って来ていて)
ーーッ!?
(それを寸で躱せば、後ろへと飛び退き距離を開け。些か攻撃を仕掛けるには性急過ぎないかと疑問符を浮かべていき。それに鬼ともなれば、言葉を交わすぐらいの知識は持ち合わせているはず。なのに一体如何したと言うのだ?敵の次の一手を警戒しつつ、相手を観察していけばやや血走った瞳と目が合い。そこで遅れて気付く。あゝ、半悪霊化しているのだと。変に判断力が残っているため純粋な悪霊よりも厄介だ。相も変わらず、書生君は厄介な妖怪に好かれるものだと冗談を抜きに冷や汗を掻きながら、目の前の鬼と対峙していき。そして矢の如く飛んで来た敵の第二撃である蹴りを避け、こちらはすぐさま相手を青い狐火で炙ろうと思ったものの、糸も簡単に金棒で払われて消されてしまい。軽く舌打ちをしつつ__ふと、上を見上げてみれば書生君が窓から顔を出しており。鬼の気がそちらへと移ったら危ないので、手で奥に行くように合図をすれば再び周囲に狐火を灯していき)
(朧と鬼の戦いは見ていて決して安堵できるものではなく寧ろヒヤリとさせられ。流石に相手が五分五分と言っただけあって鬼の攻撃は素早く、それでいて抉るようだ。朧も負けず劣らず反応しているものの碌に攻撃は通っていない。心配になり始めた頃不意に此方を見た相手が奥に行けというような仕草をしたのを見て戦いの続きは気になったものの鬼に此方に来られると確かに困るので慌てて首を引っ込め。本当に大丈夫なのだろうか。見ていないうちにやられたりしないだろうか。何となく首を引っ込めたあとも室内でそわそわしてしまい結果そっと外をバレないように除いて相手と鬼との戦いを見守る以外には自分に出来ることはなく、固唾を飲んでその動向を見守っており)
(書生君が大人しく奥へと引っ込んでくれたのを確認すれば、足に力を込めて狐火を纏いつつ鬼の懐へと入って行き。素早く何発か蹴りを入れるものの体格差ゆえに丸で手応えは無く。火力を上げてみるかと、狐火の灯火を強くさせて攻撃をすれば今度は其れ相応に効いたようで。少しばかりぐらりと揺れる鬼の体躯を見ては、巻き込まれぬようまた数歩後ろに下がり。しかしこれでは埒が明かないと、終わりの見えぬ攻防戦を見据えて相手を睨み付けていれば__不意に、敵の視線がこちらではなく別の方へと向いているのに気付き。嫌な予感が一つ。慌ててその視線の先を追ってみると、そこには何故か書生君が居て。先程部屋の奥の方に行ってくれていたのではないのかと思っているのも束の間。そちらへと鋭い爪で襲い掛かろうとしている鬼が視界の端に見えて、ここからでは止めさせるのが間に合わないため声を上げ。結界を張ることの出来る魔除けの鈴を咄嗟に言っていき)
ーーっ!?書生君!手の鈴を!!
…っ‥!?
(鋭い相手の声に不意に鬼が此方を見ていることに気づき。咄嗟に魔除けの鈴を翳した瞬間ギリギリで鋭い爪の為す攻撃を防ぐことが出来たものの、さらに追い打ちを掛けるように何度か攻撃を繰り出されればずるずると後退する羽目に陥り。相手の言う通りちゃんと言う事を聞いて部屋で大人しくしていればと思うものの既に後の祭り、どうせ逃げ場も無いのだしこうなったらいっそと鬼を睨みあげると魔除けの鈴を翳し相手がしていたように軽くその鈴を鳴らして応戦を試みて相手の援護が此方へと届くまで何とか場を持たせていくものの次第に其れが厳しいものへと変化していくのがわかり声を上げて)
…ッ、朧…っ、はや、く…!!
今行く!!
(勢いよく地面を蹴り上げ、その空いた横っ腹を蹴り飛ばしていき。ズズズと両の足で地面を擦ってやや後退したものの倒すまでにはいかず。しかし、鬼から視線を外して書生君を見れば無傷だったのでホッとし。彼の霊力の賜物か、兎にも角にも己が行使するよりも結界が分厚くなっていた為に、綺麗に鬼の攻撃を防げていたようで。やはり先程魔除けの鈴を持たせていて良かったと思い、目の前の鬼へと視線を戻していき。その強固な肌はどう遣れば傷が付くのかと視線を鋭くさせていると__途端、鬼の頭が天を切り裂くような咆哮を上げ。振動でビリビリとした空気が流れるのも一瞬。辺りの妖気が更に重いものへと変わり、悪霊化が進んだのかと警戒の色を強くさせようとしたものの遅く。気が付けば地面へと叩き付けられていて)
ッ!!
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