旦那サン 2015-11-15 22:45:08 |
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ん、…っばか、此処どこだと思ってッ
(己なりの些細な我儘を了承してくれた相手に僅かに表情綻ばせると、髪を撫でる手に安心した様に瞼伏せ気持ち良さげに受けるも、不意に前髪を払われる感覚がしぴくりと薄く瞳開けば同時に視界へ入った至近距離の相手の顔に大きく目見開き。いくら人通りが少ないとはいえ誰が見ているかも分からないこんな場所で口付け等羞恥心しかなく、すっと顔俯かせ相手の唇から逃げると相手の肩軽く小突きながら上記発し)
良いだろ別に。見た感じ誰も居ねェし。
(周囲に人が居るか居ないかについては何の確証もないが、少なくとも視界に入る範囲には誰の姿もない事を確認しており、細かい事は逐一気にしない性格が災いして大分大雑把な返答をし。そもそも額に止めただけ上出来だと自らを評価してやっていた最中、気付けば相手の肩に薄く雪がのっており、片手で払ってやりながらそろそろ帰宅しなければ本格的に冷えてしまうと判断して立ち上がれば、しゃがみ込んでいる相手の方へ手を差し出し)
…帰るぞ。
そういう問題じゃ、ないだろ。
(額であろうと世間では男同士というだけで変な目で見られる事が多い為、己は良くても周りからの相手の評価が下がったらどうするんだと微かに眉寄せ。しかし不意に肩に薄く乗っていた雪を払った相手に手を差し出されると、立ち上がった相手見上げながらゆっくり手を重ねて自分も立ち上がり。先程まで泣いていた自分の顔は今酷い事になっているんだろうと考えつつマフラーで口元隠せば、相手だけに縛りを付けるのは不公平な気がするのか小さく問い掛けながら歩き出し)
…それで、真尋は?…真尋が、して欲しくない事とかあるなら、言えよ。
俺は理玖がどっか行っちまわなかったら何でも良い。
(重なった手を離される前に指を絡めて握り、予想通り冷えた手を自らの手と共に半ば強引にコートのポケットに捩じ込むと相手の歩調に合わせて歩き始め。そこへ隣から自分にはあまり理解できない律儀さにより、お互いの間柄が平等でなければならないと考えているらしい相手からの問い掛けが耳に届き、然して考える事もせずそれが当然であるかのように短い要求を口にして)
(帰り道などさっぱり分からないが途中人と遭遇する可能性は無いとは言い切れず、重ねた手を離そうとしていたもそうする前に指絡められると視線手へ落とし。しかし何か言葉を発する前に強引にも相手のコートのポケットへ捻じ込まれてしまえば驚き半分呆れ半分で無駄に抵抗するのを諦め、そのまま手を握り返すと直ぐに返ってきた短い要求に顔を上げ。そんな事でいいのかというような表情で相手へ視線投げるが、ふと頭を過ぎった疑問に首傾げるとその疑問を無意識に口に出しており。だがそんな事を確認したところで浮気をするつもりも無ければ己を相手にする様な物好きもそうそういないだろうという思考に行き着き、実際どうでもいい事かと自己完結させると前を向き直り)
…どこにも行かないなら、浮気してもいいって?
別に構わねェよ。他の奴ンとこ行ったら理玖にどんだけ俺が必要か分かるだろうし。
(手を繋いでも珍しく抵抗が無く、その上握り返される手の感覚が伝わって来ると思わず頬が緩んでしまい、微かに顔を伏せ。そこへ不意に投げ掛けられた疑問は相手の口から出るには些か意外性のある物でだったが、然して此方の返答を気にしている様子が無いのを見ると本気での問い掛けでは無さそうで。だがそれが至極真剣な問い掛けであっても答えは結局同じであり、あっさり承諾の意を示せば続けてとんでもなく自信過剰な一言を平然と述べ)
…自意識過剰。俺がそう思わなかったらどうするんだよ。
(返答はなくてもあってもどちらでも良かったが、思いの外あっさりと承諾の意を示して来た相手に数回瞬きし。もしかすると己と違って嫉妬心などは薄いのかも知れないと納得しかけたものの、続けて述べられた自信過剰といえよう言葉に思わず小さく吹き出せば顔斜め下に向け。その状態のまま肩竦めると一つの可能性として上記述べつつ前方に見えた別れ道はどちらに進むのかと悩む様に目細め)
思わせるだけ。簡単だぜ、何処の馬の骨とも知れねェ奴からお前取り返すくらい。
(相手と交際にまでこぎ着けた時点でかなり自信過剰になっていおり、それは今までこうして相手を繋ぎ止めてきた中でも健在で。どうするかと聞かれても結局は自分がそうなるように仕向けてやるまでであり、飄々とした口調は強ち冗談とも言えない響きを持っており。ふと前方に枝分かれした道が見えてくると、敢えて先を行かずに然り気無く半歩程相手よりも下がって歩き始めつつ、笑みを漏らしながら再び言葉を続け)
取られたくらいで諦める程聞き分け良くねェし、ンな浅い気持ちで付き合ってねェよ。
…ばーか。
(本気で言っているのかはさておき冗談とも思えない響きを持つ言葉にどう言葉を返してやればいいのかと口を閉せば、次いだ台詞に不覚にも胸が高鳴ると何となく嬉しいと思ってしまい、結局呆れと照れ隠しを織り交ぜて稚拙な暴言を吐き。しかしそうしている間に別れ道は近付いてくるわけで、歩く速度を落として見慣れない景色交互に見遣ると一度助けを求めるように相手に視線向けたもののふと方向音痴をバカにされそうだと前向き直れば、数秒悩んだ後右へ足踏み出して)
これってどっちに…、
この辺やっと覚えてきたんじゃねェの。もう何ヵ月も住んでッけど。
(相手の暴言は照れ隠しであると宣言しているようなもので、そんなところを見ると構い倒してやりたくなるのだが、流石に屋外である手前肩を揺らして笑い絡めた指先に微かに力を込めるだけに止まり。岐路に差し掛かるとてっきりどちらに行くべきなのかと聞かれると思っていたが、気位だけは一級品な相手が素直に助けを求めてくるはずも無く、迷うような沈黙の後進む方向に着いていきながら軽口を叩き。だが左側の方が近道というよりは寧ろ逆方向で、それでも帰れない事はない為に極めて軽い口調で付け足し)
…向こうからの方が早ェけどな。
あ、…当たり前だろ。もう一人でも帰れるしッ。
(絡まった指先に力が込められ薄っすら上がる口角をマフラーで隠すと、己の少し後ろにいる相手から叩かれる軽口にむすりと眉寄せ強がる様に言葉並べ。しかし実際のところは曖昧に覚えているだけではっきりと家までの道を覚えているわけではなく、普通に歩いていれば必ず迷うくらいで。だが間違っているとは言われない為にこの道で大丈夫なら問題ないだろうと歩み進めるが、付け足された言葉にバッと相手へ振り向くと拗ねた様な口調で言葉ぶつけ)
---っし、ってるし。遠回りしたい気分なんだよ…!
ならこれからは俺先帰って飯作ってられんだな。ついでに買い物も頼めるし。な?理玖。
(今までは一人では帰って来られない相手を待つか待たせるかしていた為に夕飯が遅くなってしまう事も度々あったが、相手が一人で出歩けるようになったならば話は別で。無論相手の強がりを理解した上で一人で帰ってくるのは勿論の事、夕飯の買い物までも頼まんとする台詞を吐けば意地悪く口角を上げて問い掛け。振り返り不平を口にされれば可笑しそうにクスクスと笑みを漏らすが、ただでさえできる限り長い時間、密着している程のスキンシップがしたい身としては現在の距離感は焦らされているようでもあって。一頻り笑うと気が抜けたような返事をするが、直ぐ目の前の曲がり角を曲がってまた元の道に戻ると自宅への最短距離を進みつつ握った手の指先で相手の手の甲を擽るように撫でながら呟き)
ッ、…へェ、そうか。…けど俺そろそろ我慢できねェし近道して帰ろうぜ。
…そ、んなの余裕だし。買い物でも何でもっ、してやるよ。
(此方の張った意地を素直に受け取ったのか、はたまたまだ一人では帰れない事に気付いていてわざとなのか問い掛けられた事に視線泳がせると、強がってしまった手前引くに引けず半ば投げやり状態になり。クスクスと笑みを漏らす目の前の相手を睨む様に見つつ気恥ずかしさで微かに頬赤く染めれば、文句の一つでも言ってやろうと口開いたが不意に曲がり角を曲がって元の道へ戻った相手に小首傾げると、手の甲を擽る指先に思わずピク、と反応してしまいつつ仕返しに負けじと力を入れて手を握り締め)
笑うな…っ、なら最初から言え性悪が。
じゃあ早速明日頼むか。理玖が好きなもん作ってやるよ。
(愛しい恋人が強がるならばそれに乗っかってやるものだと極めて都合よく頭を働かせ、何らかの買い物を頼む代わりに相手の好きな物ならばなんでも作るという条件を提示して。性悪、なんて言われても今更否定はできないが、からかうつもりもあって白々しく惚けた事を述べ。少しは痛みを訴える程の強さで手を握り返されるがそれでも尚そんは抵抗さえ愛しいと思う気持ちは変わらず微かに口角を上げ)
性悪?今すぐしてやりたい事は山程あンのに手ェ出さないでやってンだろ。こんな紳士的な男他に居ねェよ。
っい、いいけど…ちょっと寄り道して来るから、帰るの遅くなる…と思う。
(早速明日買い物を頼まれ狼狽えるものの口から出るのは肯定の言葉で、しかし直ぐに帰れる保証はない為寄り道と称して遅くなると告げればもしかしたらそのまま家に帰れない可能性が頭を過ぎり、無理矢理にでも友人を買い物に連れ出すべきかと一人頭をフル回転させ。握力は弱い方でもないが痛そうな素振りを見せずに惚けた事を述べる相手に不満げな表情滲ませると、手の力緩めて相手とは反対方向に顔向けて)
惚けんな。…真尋の、どこが紳士だよ。
あんま遅くなんなよ。…で、何食いてェの?
(どうやら意地を張り通すつもりらしく、それならばいっそ本当に頼んでしまおうと寄り道の件についても一言注意を促すに止め、そこで肝心の相手が食べたいものは何なのかと改めて問い掛け。普段よりも数倍長く感じる道のりを歩んでいれば漸くマンションに辿り着き、簡素な作りのエントランスを抜けつつ本音を冗談めかして呟けば狭いエレベーターに乗り込んで)
酷ェなァ。俺理玖程大事にしてる奴居ねェんだけど。
…、肉じゃが。
(相手からの注意に視線空中へ彷徨わせると遅くならないどころか寧ろ盛大に帰りが遅くなる可能性の方が圧倒的に高く、敢えて返答せずその注意を流せば食べたい物について少し思案した後ぽつりと上記呟き。相手について歩いていれば前方にマンションを発見し、こんな道だったかと周りを見回しながらエントランスを抜けエレベーターへと乗り込む相手に続いて自分も乗り込むと、呟かれた台詞に苦笑零しつつもう家に着くのだからと絡めている指を地味に離していき)
何回も言うけど、お前が言うと色々と嘘くさい。
ん、了解。
(返答がない辺りやはり相手の心中は勝手に察するが、素直な返答には思わず頬が緩んでしまって、微かな仕草で首肯して見せ。解ける指先を追うことはせず、嘘臭いなどと揶揄されようとも承知の上である為に否定の言葉は言わずにおり。だが普段のように軽口で返してやる事は無く、ただ口元に淡く笑みを浮かべると上昇を停止したエレベーターから下り自室に向かって。終始無言のまま数個めの扉の前で立ち止まり鍵を開けると、扉を開いて室内へ足を踏み入れ、暗闇の中照明を点ける事もせずに小さく息を吐き)
(この流れだと本当に買い物に行かされそうではあるが一度引き受けた事を簡単にやめる等性格上無理で、迷子になる覚悟で考えるのを止めると此方の食べたい物のリクエストに首肯する相手を見つつ真面目に友人を誘おうと一人でに頷き。特に追われる事も無かったからか簡単に指先解けると、ポケットから手を出して残っている相手のぬくもりに頬緩めながら軽く手を開いたり閉じたりと繰り返し。しかし室内へ入ったまではいいが照明を点けようとしない相手に不思議そうに声掛けると、照明を点けようと壁に手を添えて探し)
真尋?…電気、点けろよ。
…後で良いだろ。
(声を掛けられても尚返事すらせずに佇んでいたが、徐に振り返ると壁を探る相手の手を指を絡めて握り低く呟き。つい先程の“別れる”という言葉が自分でも意外な程に堪えたらしく、相手と共に帰宅した途端安堵が一気に押し寄せると、首筋に顔を埋めて唇を這わせ。決して性急では無いが普段にも増して余裕は無く、突然の心境の変化に自分自身が驚きながらその存在を確かめるように名前を呼び)
…理玖…、
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