匿名 2015-11-01 00:01:39 |
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(彼女の小さな口が開くのを見て、前のめりになった体勢を戻すと再びステーキを食べ進めた。元々一口が大きいためか、彼女が話し終える頃には二品目に手を付けている頃だろう。それにしても、何もいらないなんて言われなくて良かったと内心胸を撫で下ろしつつ、ふんふんと相槌を打ちながら)花かぁ。いいじゃないか!別にそんなこと気にしなくていいよ。あの家は君の家でもあるんだからさ。…ところで日本の花ってどんな物があるんだい?(日本の花という所からして、生まれ故郷が恋しいのかとも思ったがあえて口に出さず。笑顔でもって彼女の提案に賛同するも、日本の花と言われてすぐに思い浮かぶ物がなく素直に訊ねてみる。ふと彼女の方から指切りを持ちかけられれば、もちろん!と即答し右手の小指を差し出した)
(暖かく出迎えて貰ったことは感謝しているが、あの屋敷は自分には広すぎる。どうしてもよその子という感覚が抜けなくて、大事なものをどこかに置き忘れたような喪失感がじわりと心に染みついて離れないのだ)四季折々に沢山の花が咲きますよ。殊に有名なのは桜、私と同じ名前の桃色の花です。…この土地で育てられないのは実に残念ですが、いつかアルフレッドさんにも見て頂きたいですね。夜に見る桜はとても綺麗ですから。(ふふ、と思わず笑みが零れる。彼が日本の文化に興味を抱いたのならそれは良いことだ。向こうに帰るとはいかないまでも、墓参りついでに観光ぐらいなら許されるだろうか。差し出された小指に己のものを絡めて、お決まりの歌が口を突いて出た)
そうだね。俺もテレビでしか見たことがないから、いつか絶対日本に本物を見に行くんだぞ!その時は君も一緒にね、桜。(桜が何千、何万もの薄紅の花弁を散らしていく様は画面越しでも圧巻だったというのに、実際に見たらそれはもう感動で言葉にならないだろう。まだ知らぬ光景に、そして希望ある未来に目を輝かせながら遠い日に向けた約束を交わす。彼女の細い指に自分の指を絡ませたまま上下に振り、その後指が離された。小指に残る彼女の微かな温もりを確かめるようにきゅっと拳を握り満足そうに笑うと、パスタを食べ進めていく。小指でも触れ合えただけで嬉しいなんて、彼女が来る前の自分では考えられないことだ)
(/再び本体にて失礼します。お昼休みのシーンで他にやりたいことがなければ時間を放課後まで進めたいと思っておりますが、いかがでしょうか?
また、だいぶ遅くなりましたが萌え萎えをお聞きしてもよろしいでしょうか?シリアス×ヤンデレということで無限に想像が膨らんできたので…!)
ええ、貴方が良いというならご一緒させて頂きます。(桜は広い土地と数多くの木があればこそ、あれほどの美しさを出せるのだから。豪華でなくとも、植木鉢でひっそり育てられる花があればせめてもの慰めになるというのに。ぼんやりとそう考えながら水を飲む)そういえば、アルフレッドさんはご存知ですか?指切りの発祥というのは、男女の不変の愛情を誓う証として女性が小指を切り落としたことだそうですよ。(食事時に少々似つかわしくない話だが、自分はもう食べ終わっているのだから何の問題もない。何となく、指切りで嬉しそうに笑う彼を見ていたらふと思い出したことだ。)
(/そうですね、放課後まで飛ばして下さって構いませんよ。
想像…とても気になります!萌えはシリアス、ほのぼの、甘、欝、病み、グロ、嫉妬等。
萎えはスカぐらいです。基本何でもいけます。)
(きっと自分の発言の真の意味を彼女は気付いていないのだろう。とりあえず今は彼女の口からイエスの答えが聞けただけ良しとしよう。二皿目のパスタもあと一口と言った所で、彼女が何とはなしに話し出した内容に目を丸くして)なんだいそれ!俺なら好きな女の子にそんな酷いことさせないんだぞ!…それに、小指を落とすことのどこが証明になるのかさっぱりだよ。俺なら――(話し始めた時はその話の残虐さに憤慨している様子だったが、やや考えるような間を置いて目を伏せた。冷静に見えてどこか熱のこもった声は授業開始五分前のチャイムによって遮られてしまった。そのことにばつが悪そうに笑いながら最後の一口を飲み込み、彼女を連れ立って教室に向かうだろう)
***
(永遠にも感じられたホームルームが終わるなり、鞄を掴んで教室を飛び出した。背後から教師がヒステリックに自分の名を呼んでいたが知ったことではない。彼女が在籍するクラスの扉が開け放されて生徒達の雑談が聞こえることから、既にホームルームが終わっていることが分かる。いつものように我が物顔で別クラスの敷居を跨ぐと、彼女の名を呼びながら駆け寄っていき)ごめん、待たせたかい?(悪びれた様子で謝辞を口にするも、聞いてくれよという一言を皮切りに担任の教師の愚痴を零し出した。もちろん口煩い教師に対し鬱憤は溜まっていたが、本当に伝えたいことは別にあった。自分に桜とは別に意中の相手がいるのではという彼女の誤解を少しずつでもいいから晴らしておきたいのだ)
(/ありがとうございます!萌え萎え把握しました。
ヤンデレというからには嫉妬してなんぼだと思うのですが、このままでは張り合いがないので、まだ桜のことを諦めていないアーサーか桜に好意を寄せる怖いもの知らずのモブがちょっかいをかけてくれば、アルのヤンデレも加速しておいしいかなぁと思いましたが…いかがでしょうか?)
(彼の正義感からくる批判の続き、結局チャイムによって断絶されてしまった話は宙を浮いたままで簡単には片づけられない。所詮好奇心というものは好き勝手で、自分が何と思っていようと内側から食い破る勢いで暴れるのだから手に負えないな、と考えて陰鬱なホームルームを終えるなり、駆け寄ってくる彼に大型犬の姿を幻視する)いいえ、大丈夫ですよ。ふふ、そんなに慌てなくたって、私は勝手に帰りませんから。ね?(此処では目立って仕方がないから早く行きましょう、と鞄を手に昇降口へ足を向ける。どうせ友人などいないし、残る用事もなければ呼び止められることもない。ただ、底抜けに明るい彼といる時間だけが何となく温かいな、と感じるのだが、それは決して愛情ではないことを知っていた)
(/ふむ…確かにそうですね。
アーサーがちょっかいを出してくれれば私としてはとても美味しい展開になるのですが、お任せしても宜しいのでしょうか。もし負担になるようでしたら名もなきモブで構いませんのでっ)
(まるで幼い子供を宥めるような彼女の口振りに拗ねたように唇を尖らせる。自分の真意に気付いていないのか気付かない振りなのか。どちらにしても自分にしてみれば酷な話だ。彼女に促されて不服そうにしながらもその後に続く。彼女の歩幅に合わせてゆっくり昇降口までの廊下を歩きながら)君はもっと危機感を持った方がいいんだぞ。英国紳士なんて言葉だけであいつらは――(せめて自分の目の届かない授業中だけでも自衛してくれればという思いで話し出したのだが、進行方向の曲がり角から現れた人物に事態はそれどころではなくなってしまった。彼女との時間をみすみす奪われてはたまらない。それが義理の兄なら尚更だ。咄嗟に彼女の手を引こうと腕を伸ばした。丁度目の前に多目的室がある。そこに身を隠してやり過ごそうと言うのだ)
(/かしこまりました!では次レスでアーサーを登場させますね!
また、本編中の季節ですがリアルに合わせて冬でもよろしいでしょうか…?デートの後、クリスマスイベントをやれれば面白いかなぁと思いまして…)
(危機感、そんな言葉を言われてもぴんとこないのか小首を傾げる。彼女はどちらかといえば人見知りをする方で、それこそ初対面の相手にホイホイとついていくほど頭が足りない訳でもなく、寧ろ事態は逆を辿る。言い換えれば顔見知りならばいいのだ、それが彼でなくとも、例えば彼の義兄だとか。しかし自覚している筈もなく、彼の言葉にあくまで心当たりがない、不思議そうな顔を取り繕ったままだ)でも、皆さんとてもお優しいです。此方に来てそれなりに経つのに、手間取ってしまうこともありまして…良く手伝って頂いてます。(彼の心境など露知らず、そう言って微笑む彼女の視線の先がずらされる。直面した曲がり角の先から此方へ歩いてくる青年は、彼の次ぐらいに見慣れた人物なのだから。彼から伸ばされた腕を知らずのうちにするりと抜けて、青年の名を呼んだ。そんなことは彼女にとってはほんの挨拶程度に過ぎないのだが)
(/ありがとうございます!
季節に関しても把握いたしました、クリスマスイベント…!良いですね。ハロウィンもできればよかったのですがもう過ぎてしまいましたし…。長期のお付き合いになるのでしたら来年はバレンタインとかできるかなぁ、なんて。)
アルフレッド:(彼の視線は手元の本にあった。かなり集中しているようで、声をかけたりしなければ気付かれずに撒けると思った。だがそんな願いも虚しく、彼女の手首を掴もうとした手は虚空を掴んだ。しまった、と思った時には時既に遅く。唖然と立ち尽くす自分から離れ、義兄の元へ歩いていく彼女。礼儀正しい彼女のことだ。彼を無視するという頭などないのだろう)まったく…本当に邪魔してくれるなぁ…(目付きで人を殺せるなら今頃彼の眉間には穴が空いていることだろう。それくらい義兄に向けるには不適切な敵意の眼差しを浴びせかけた。彼女を掴み損ねた手は行き場のない感情を抑えるように強く握り締められている。依然、彼女の後を追いかけようとする動きは見えない)
アーサー:(今日は生徒会の職務もなく、久々に自分の時間が取れそうだ。帰りがけに図書室で借りた魔術の本に目を通しながら昇降口までの廊下を歩いていると、聞き慣れた少女の声にはっと顔を上げた。見えざるもの、聞こえざるものを見聞きできる身としては、またその類の物の悪戯かとも思ったが彼女の隣に佇む義弟の姿を認めれば現実であることを確信する)お前らこれから帰りか?…なら、一緒に帰るぞ。迎えもさっき俺が呼んだからな。お前達も乗って行けよ。(彼女らの声の届く所まで来れば歩みを止め、本を閉じると軽い挨拶を交わす。ふと彼女の後に付いて来ず、その後ろで立ち尽くす義弟に気付く。相変わらず思っていることが表情に出るので分かりやすい。彼の企みに何となく勘付けば、やや強引に話を進める。こちらとて、彼女を諦めたわけではないのだ)
(/突然の提案にもご賛同頂きありがとうございます!アルとアーサーの行動など纏めてしまうとややこしいかなと思い、このように表記してみました。逆に混乱するというようでしたら一つに纏めますので仰ってくださいね。
こちらとしても長くお付き合いさせて頂けると嬉しいです。バレンタインもハロウィンも今から楽しみです!)
(後ろの彼の考えなど知る由もない彼女は歩き読みなんて危ないですよ、などと少しばかりピントのずれたことを指摘する。英国紳士を絵に描いたような青年はどうにも彼とそりが合わないらしい、というのは何となく肌で判っている。何とかここを平穏に切り抜けねば約束を果たせないだろうことも)あの、アーサーさんのお心遣いは嬉しいのですが、私達、今日はゆっくり歩いて帰りたい気分なので…。それに送迎車なんて恐れ多いもの、使えません。(しかし悲しいかな、彼女は口が上手い方ではない。それでも誠意を持ってお願いしているつもりだ。思わず目を伏せれば黒い睫毛が影を落とす。青年だって好意で言ってくれていることを、此方の事情で退けるのは心苦しい。何より、誰かに進言したことなど数えるほどしかない彼女は、ぎゅっと胸の前で震える己の手を握った)
(/いえいえ、見やすい工夫をして頂き感謝の言葉しかございません。さて此方はそろそろ引っ込みますね。また何かあれば気軽に仰って下さい)
アルフレッド:(少し頭が冷えたのだろう。握った拳に食い込んだ爪の痛みにはっと我に返ると、二人の様子を窺った。何やら困惑の色を見せる彼女に慌てて駆け寄ると、言葉の途中からだが話し声が聞こえてきた。会話の断片から察するに、義兄が一緒に帰ろうとでも誘ったのだろう。だが彼女は手を震わせてまで断ってくれたのだ。俺のために)…聞いただろ。そういうことだから、迎えの車には君一人で乗ってくれよ。(人の良い彼女にとって、それがどんなに心苦しいことであったか想像に難くない。その心に寄り添うように彼女の手に自分の手を重ねようとしながら、もう大丈夫だからと優しく微笑みかける。それから義兄に対し、そこを退けと手を払う動作で示した)
アーサー:な、何だよ。…じゃあ逆に聞くが、歩いて帰らなきゃいけない理由でもあるのか?それにな、アル。今は親父も俺達のことを面白がって静観しているが、奴は結果的に俺と桜を結婚させる気でいるんだぞ。(義弟の挑発は軽く流すものの、まさか彼女にまで断られるとは思っていなかったのか冷静な表情にやや動揺が滲む。だが、そこで引き下がらないのがアーサーという男。すぐに冷静さを取り戻す。彼女らに口を挟ませる余地など与えぬ理路整然とした話し方だ)楽しいキャンパスライフを送りたいなら程々にしておけって話だ。まぁ、俺にしてみれば結果は同じだからな。後はお前の好きにしろ。(理詰めで責めていたかと思えば、突き放すような言葉で話を締め括る。これも彼の戦術だ。去り際、名残惜しそうに彼女を一瞥し、昇降口へと姿を消した)
(/とんでもないです。では、アーサー登場の際にはこのように表記しますね。それでは、こちらもこの辺で失礼致します)
(ふと添えられた手、自分の細く頼りないものをいとも簡単に覆い隠してしまう彼の掌はいつも安心を齎すものだ。いつの間にか背後まで来ていた彼が仮にも義兄に、やや強い物言いだ。そうさせたのは自分なのに、ちくりと心が痛む。大丈夫だと、掛けられた言葉に小さく頷き、理由は判らないが一旦は引き下がった青年の後姿を見送る)…どうせ、私とアーサーさんが結ばれるというのなら、あの人は何故焦る必要があるのでしょうか。(ぽつ、と零した独り言は青年の理論を受け入れた訳ではないけれど、冷静という仮面が剥がれた下に見える動揺。彼女の言葉が貫いた壁の向こうにあった素の表情に心動かされたのか、それきり黙りこくってしまった)
(流石、義兄は口が上手く反論の隙がない。いつもならここで感情のまま言い返していた所だが、彼女の手の温もりを感じることで怒りに支配されることはなかった。要するに彼もまた焦っているのだ。そう思えば去り際の一言も捨て台詞にしか聞こえず、涼しい顔で聞いていられた。けれど、義兄を見つめる彼女の表情を見てとれば、じわりとまた腹の底で淀んだ感情が湧き上がるのを感じ)あんな奴どうだっていいだろ。…アーサーは寂しがり屋だから、俺達に構って欲しくてあんな適当なことを言うんだよ。(彼女の独り言に被せるように言い捨てた。無意識にも近かった。きっと今の自分は嫉妬で歪んだ醜い表情になっているのだろう。慌てて笑顔を取り繕うと話を茶化した。彼女にはこんな醜い感情を抱いていることを気付かれたくない。笑顔を貼り付けたまま彼女の手を引こうと腕を伸ばしながら)そんなことより早くハンバーガー食べに行こうよ!俺もうお腹が減り過ぎて死にそうなんだぞ!
(寂しがり屋、そう聞くとまた彼女の眉が下がる。どんなに言い繕うが青年とは少しの年の差しかないのだからそう邪険にすることもあるまい。ただ婚姻の件は最初に断り、その後も何だかんだと理由をつけて回避している負い目があるのもまた事実だ)そうですね。…少し、悪いことをしてしまいました。(彼と一緒に遊びに行く、とまでは言わないけれど、花を育てることになったら青年にアドバイスを貰うのもいいかもしれない。些細なことでも助けになれたら、と考える彼女は根っからの善人というよりは、身内には優しい日本人特有のものである。今度こそ伸ばされた腕は彼女の手を掴み、彼の言葉にそうですね、と声を漏らせば外へと足を向けた)もうお腹が空いたんですか?
(アーサーを寂しがり屋だと表現したのは彼へのちょっとした侮辱だった。同時に彼女が彼に幻滅すればいいと思った。けれど彼女の反応は意外なもので同情的だ。誰に対しても慈悲深いのは彼女の良い所だが、今はそれが憎らしい。一度婚約を断られている手前、慎重に行動してきたのだがアーサーのことも気がかりだ。これからは少し強引に事を進めなければ)当たり前じゃないか!午後の授業もいっぱい頭を使ったからね!(彼女の手をそっと握り返し、校舎を出ると彼女の歩幅に合わせてゆっくりと歩いた。もちろん自然な流れで車道側を確保する。そんな紳士的な行動にそぐわず問いかけに対して明るい調子で答えた。目的地までは1ブロックほど。そうこうしていると前方に店が見えてきた。ほら、あれだよ、と空いている方の手で指し示す)
(彼の言葉に思わずくす、と笑い声を零す。お昼にあんなに食べましたのに、と茶化すような言葉も。食べ盛りの青年はそれでも足りないのだろうが、彼女の優に三人分を平らげそうで恐ろしくもある。筋肉質な体つきのどこにそれほど入るのだろうか、不思議で仕方がない)お腹いっぱい食べてしまうと、授業のときに眠くはなりませんか?私は他のクラスなんですから、起こして差し上げれないんですよ。(気をつけてくださいね、なんて愚問だったろうか。移動教室の際に彼の教室を覗くことはあるが、クラスの中心的存在なのには違いないだろう。さり気無く紳士に振舞うところとか、きっと他の女生徒が知ったら益々放って置けませんよ、だなんて己の言った冗談が、真実味を含みすぎていて閉口した。指差された方向を少しばかり首を捻って見ただけである)
(くすぐったい彼女の笑い声。茶化されているというのに不思議と悪い気分はしなかった。夢の中の君に起こしてもらってるから大丈夫だよ、と彼女と一緒になって笑いながら冗談めかして言う。最愛の人が傍らに居て、手を繋いで、笑い合っているというのに。少し店に視線を移した隙にその笑みは消えていた。横断歩道を挟んで店はすぐ目の前。赤の信号で立ち止まると)どうしたんだい、桜。具合でも悪いの?(彼女を気遣うように顔を覗き込むと、眉を下げたまま問いかけた。ポーズこそ立派なものだったが、その瞳の奥には別の切り口の答えを探すように疑念が渦巻いているようにも見える。車が幾台か通り過ぎ、信号機が青のランプを灯しても、彼はそんなことなど目もくれず彼女の瞳を覗き込んでいた。そうしていれば心も透けて見えるというように)
(いいえ、と、黒髪の隙間から静かな声が落ちる。何でもありませんよ、と次いで告いだ言葉と共に、横断歩道の白へ足を滑らせる。彼がどうして自分に構うのか、その理由は良く判らないが、きっと恋人でもできればこの関係は終わりを迎えるだろう。そう漠然とした何かがずっと胸の中にあり、錘となって苦しめている)気にしないでください。少し、考え事をしていただけなので。…アルフレッドさん、早く行きましょう?(それは恋、とは違うと彼女は知っている。許嫁でなければこんな女、彼が見向きもしないのは当然だと心中で己を貶める度に、優しく接する彼すら汚す気がして。ふるふると考えを振り払うとにこりと笑って見せた)
(彼女が話し出してからも彼の視線は彼女の瞳を凝視したままだった。微かな変化も見逃すまいと瞳孔が開き、一語も聞き逃すまいと耳を欹てた。店へと促す言葉などまるで聞き入れようとせず、ゆったりとした動きで姿勢を正すと、あぁ、それならいいんだ、と義務的に答えた。それから再度信号機を一瞥する頃にはいつもの調子で)走ろう、桜!(彼女の手を引いたまま急に走り出そうと彼女の歩幅の二倍はあろうかという一歩を踏み出した。それと同時に信号機の青色ランプが点滅を始める。幸い、車が走ってくる様子はない。依然として危険な行為に変わりなかったが、英国ではよくあることでライフスタイルが体に染み付いていると見える)
(信号機は青、赤になりかけのそれを彼だって確り見ている。それなのに踏み出す足に意図を察した頃、強い力に引っ張られる身体がふわりと彼の方へ引き寄せられる。浮きかけた足を慌てて地に降ろして、彼に続く)アルフレッドさん、貴方、なんて危ない事を…!いえ、急に立ち止まった私も悪いです。それでも万が一、事故にでも遭ったらどうするんですか!もしそんなことになったら私は、アーサーさんにも、貴方の御父上にも顔向けできません。(珍しく慌てた様子で長く言葉を並び立てる彼女、息を切らしていても先程の行為が生まれ育った国では危険の類に入る事を身に染みるぐらい知っているのだから。突如黙り込んだ負い目を感じつつも、己より高い双眸をぎっと見上げた)
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