《 小説 》 ビヨンド・ザ・ドリーム

《 小説 》 ビヨンド・ザ・ドリーム

ハナミズキ  2015-10-30 16:57:47 
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オンラインゲームの中に入り込んでしまった男女2人の物語。

つじつまが合わない所はご容赦を…<m(__)m>

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  • No.75 by ハナミズキ  2015-11-19 16:40:21 


 ギルド設立の為に新しい仲間が見つかった事を、集合場所であるハロルドの家まで行って知らせる事になり、ハロルドが戻って来るのをモリト達はその場で待っていた。

 しばらくすると、ハロルド達4人が現れて、懐かしの再開をする。

「いよ~、モリト、久しぶり~ ユーリちゃんも元気だった?」

 相変わらず軽そうなケントである。

「久しぶりって、まだ一週間くらいしか経ってないだろ・・・・。」

 少々呆れた顔で答えるモリトだった。

「こんにちは~、初めまして。あなたが新しい仲間なの?」

 挨拶してきたのはアンズだ。
アンズはモリト達の腕輪の色をジロジロと見ながら、いかにも格下と言いたそうな顔つきで話しかけてきた。

「ギルドには入りたいけど、別行動がしたいんだって?いい心がけよね~。
ほら、私達ってまだ人数がそろってないじゃない?
あなた達を狩りに連れてっても安全を保障できないのよね~。
だから別行動の方が私たちにとっても助かるのよ~。」

 少しトゲのある言い方だが至極まともな意見だ。

「おい、こら、アンズ、そんな言い方はないだろ?」

 ハロルドがたしなめると、アンズは甘えたような声を出しながらハロルドにしなだれかかる。

「えぇ~、そんなつもりで言ったんじゃないのにぃ~
ひっどぉ~い、ハロルドってばぁ~」

  • No.76 by ハナミズキ  2015-11-19 16:41:11 



『あぁ…、いたいた…こんな女の子、どこの世界にも居るんだな…。』(by モリト

『・・・・・・・。なんだろ・・・・、この違和感・・・。』(by ユーリ



 見る限りこのアンズと言う人は、ハロルドに夢中のようだ。ハロルドに執着をしている間は、こちらには何もしてこないだろうと、とりあえずは安心をする二人であった。

  • No.77 by ハナミズキ  2015-11-19 16:41:53 

 無事にギルドを作り終えた6人は、祝賀会と言う名目の宴会をハロルドの家で行う事になった。
ハロルドの家に着くと、途中で買った食べ物を皿に並べて、リズとユーリ以外はお酒を飲んでいる。
 良い感じに酒が回った4人は楽しそうに会話をし、そして悪い癖が出たケントは悪戯をし始めた。
 ユーリがトイレに立った隙を見て、飲んでいたジュースに酒を混ぜたのだ。
ケントは時々こういう悪戯を酒が飲めないリズに対してやっていたが、今回はユーリにしてしまったのだ。
 何も知らないユーリは、酒が混ぜられてるとは知らずにジュースを飲み続けると、いささか様子がおかしくなってきはじめた。

 先ほどまでは「お兄ちゃん」とモリトに対して言っていたのだが、急に「モリト」に変わったのである。

  • No.78 by ハナミズキ  2015-11-19 16:42:45 



「モリト~。なんかぁ~、楽しいね~」
「ユーリ? 急にどうしたんだ?」

「ん~、なんかぁ~、良い気持ち~」

 ニヘラ~、と笑いながら、おもむろにモリトの膝の上で寝てしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 ユーリから微かに酒の匂いがする。

「ユーリ、酒なんか飲んだのか…?」

ハロルドとリズが一斉にケントの方を見た。

ケントは申し訳なさそうな顔をして

「・・・・・・・・、わりぃ。」

「「ケント!!」」

 2人から同時に怒られたケントだった。

  • No.79 by ハナミズキ  2015-11-19 16:43:43 


「そう言えばまだ聞いてなかったけど、モリト達はこれからどうするんだ?」

 ハロルドが今後の予定を聞いてきた。

「ああ、明後日辺りにローレライ大陸の方に渡ろうと思ってる」
「ローレライに? 俺達もローレライに行こうと思ってたんだ。
どうせなら一緒に行かないか?」

と、そこに口を挟んできたのはアンズだ。

「えええ~、あんた達のレベルでローレライに行くなんて馬鹿じゃないの?!
もしかしてハロルドに守ってもらおうなんて考えてるんじゃないでしょうね!?
誰かに守ってもらおうなんて甘い考えで行くなら迷惑だから来ないでくれる? 」

「アンズ!!」
「アンズちゃん言い過ぎですよ!」

 ハロルドとリズの2人からたしなめられると、アンズは口を尖らせながら甘えた声で言った。

「アンズ、悪くないもん・・・。本当の事言っただけだもん…。」

 そう言いながらケントの後ろに隠れるようにして、ケントの援護射撃を待っていた。
しかしまた、ケントもスワンの村での事を知っていたため、アンズが期待をするような答えは返って来なかったのである。

「今のはアンズが悪いな」

そう言われたのであった。

  • No.80 by ハナミズキ  2015-11-19 16:44:20 


 このメンバーの中で、スワンの村での出来事を知らないのはアンズだけ。
他の3人はモリトの強さを目の当たりにしていたため、腕輪の色と実力が違うのを知っていた。
でもその事は詮索をせず、人にも話さないで欲しいと頼んでいたので、一応仲間でもあるアンズにさえも黙っていた。
 何も知らないアンズは、腕輪の色=実力、という認識しかないのである。

 この先、行動を供にすれば、いつかは二人の実力がばれる事だろう。
その時はその時で仕方がないのだが、他の3人はともかくアンズにだけは、バレルのは危険だと本能的に悟ったモリトであった。

  • No.81 by ハナミズキ  2015-11-19 16:45:06 

 ユーリが寝てしまい、時間も良い時間になっていたので、モリトはユーリを背負って宿に戻る事にした。
 宿に戻りユーリをベッドに寝かせると、不意にユーリが目を覚まし「お風呂に入る」と言いだして、フラフラと歩いてシャワールームに入って行ってしまった。
 この時モリトはまだ気が付いてはいなかったのだが、実はこの宿屋のシャワールームは、子供が泊まる事を想定しておらず、シャワーのコックの付いている場所が少し高い所にあるのだった。
 普通の身長の大人であれば十分に手が届く高さの為に、モリトはその事に気が付いていなかったのである。身長が153㎝しかないユーリには、背伸びをしてやっと届くと言う場所だ。

  • No.82 by ハナミズキ  2015-11-19 16:46:30 


 シンとした室内にシャワーの音が聞こえてくる。
どのくらい時間が経ったのだろうか。シャワーの音が消え、風呂場のドアが開く音がした。




『無事にシャワーが終わったようだな。
中で倒れてるんじゃないかと心配したけど、俺の取り越し苦労だったみたいだ。
まったく…、これだからユーリを1人にしておけないんだよな…。』


 そんな事を考えながら安堵していると、脱衣所のドアから出て来たのは!!
バスタオルを全身に巻いたままの、アサシン(盗賊)にリメイクしたユーリの姿だった。

  • No.83 by ハナミズキ  2015-11-19 16:48:10 


 一息つこうとコーヒーをいれて飲んでいたモリトは、思いっきりコーヒーを吹き出してしまった。

― ぶっっっふぁっ ―

 ゲホゲホと咳き込むモリト。



『なんで?!
なんでアサシンになんかリメイクしてるんだ?!
まさか、俺を誘ってるとかそう言うんじゃないよな?!
こう言う場合、どうすればいい?
据え膳食わぬは男の恥 って言葉はこう言う場合をいうんだよな?!

いやいやいや、待つんだ、俺!
ユーリの顔をよく見て見ろ。顔がまだ赤い‥。
それに、目だって虚ろだ。
ユーリはまだ正気じゃない証拠だ。

ああああああぁぁぁぁぁ・・・・・・、
一体どうすればいいんだよぉ~・・・・・。』



物凄い心の格闘がモリトの中で起こっていた。

  • No.84 by ハナミズキ  2015-11-19 16:48:59 



「あのぉ~・・・・、ユーリさん? なぜアサシンなんです?」

 モリトは精一杯の自制心と理性で平常心を装った。

「ん~っとねぇ、シャワーのコックがとどかないからぁ~
おっきくなってみましたぁ~!」

 それを聞いたモリトは、思わず納得をした。
良く考えれば、シャワーに付いているコックの位置が高い。
モリト自身は何の問題も無く普通に使っていたが、背の小さなユーリには微妙な位置だった。

「もしかして、毎回リメイクしてた?」
「してたぁ~!」

 元気いっぱいに右手を大きく上に振り上げ、挙手をするような形で返事をする。
あまりにも勢いよく右手を振り上げたものだから、体に巻き付けていたバスタオルが外れそうになった。

「あわぁわぁわああぁぁ!!!」

 慌てたのはモリトの方であった。
とっさにユーリの側に駆け寄り、はがれ落ちそうになるバスタオルを掴んで、しっかりと躰に結びつけたのだった。

  • No.85 by ハナミズキ  2015-11-19 16:50:10 

 普段ユーリは、四キャラの倉庫とも言える四天王の加護を持つキャラでいる。
そのキャラでいる時は、現実世界とリンクして本来の姿に戻っていた。
これは、このゲームにログインしていた時のキャラが、そのまま本体と同化してしまったからなのだろう。
 しかし、倉庫の中にいたキャラにはその同化現象が見られなかったのだ。
この四天王の加護を持たない者は、ゲーム内では一旦ログアウトをしてから新たにログインをし直さないと他のキャラには替えられない。
 現実世界と切り離されてログアウトが出来ないいまの現状では、キャラの変更は無理なのだ。
ユーリの様に四天王の加護を持ち、リメイクというスキルがあるからこそ出来る、チートにも匹敵する荒業ともいえよう。

  • No.86 by ハナミズキ  2015-11-19 16:50:52 

 昔作ったアバターがそのままに残っている。
誰が見てもユーリだとは決してわからないだろうその姿は。

アサシン:見た目年齢(23歳)身長163㎝、色気が漂う黒髪美人(ロングヘア)。
アーチャー:見た目年齢(18歳)身長168㎝、栗色の髪で活発な少女風(セミロング)。
魔法使い:見た目年齢(21歳)身長160㎝、ピンク色をしたクセ毛で美少女風(ロング)。
剣士:見た目年齢(24歳)身長175㎝、金髪ポニーテールで凛としたお姉さま風。

 この四キャラがそのままの姿で倉庫内に残っていたのである。
どのキャラも、モリトは以前一緒に狩りをした時に見ていたので、それがユーリだと言う事はすぐに分かった。
 しかし、15歳前後の幼さが残るユーリならまだしも、このキャラたちはダメだ。
微かに残っている理性と自制心が吹っ飛んでしまう。
 モリトは一生懸命に己自信と闘っていた。

  • No.87 by ハナミズキ  2015-11-19 16:51:39 



『耐えろ俺!
あれはユーリだけど、ユーリじゃないんだ!
それにユーリは酔っ払ってる
正気じゃないんだぞ
正気じゃないやつを襲うほど俺は獣だったのか?!
違うだろ?
いくらあんなに色っぽい目で見つめられても、誘いに乗っちゃダメだ!
もし誘いになんかのったりしたら、
・・・・・・・・・・・・確実に殺されるな。。。。』


 何とか理性を取り戻したモリトだったが、その夜は一睡もできずに夜を明かす事になったのであった。

  • No.88 by ハナミズキ  2015-11-19 16:52:59 

 朝、目を覚ましたユーリは、何事も無かったかのようにベッドから起きあがり

「おはよう、モリト。今日は早起きなのね」
「ああ…。」

「ん?どうかしたの?顔色が悪いみたいだけど・・・・。」
「いや・・・。何でもないよ…。大丈夫だから心配しないで…。」

 モリトは何度も眠ろうと瞼を閉じてみたが、その度に、瞼に映るのはアサシン姿のユーリだ。透き通るような白い肌と均整の取れた躰が瞼に焼き付いて離れない。
 効果音を付けるとすれば、

― わぁ~ぉ♡ ―
― うっふぅ~ん♡ ―
― いやぁ~ん♡ ―

 などと言う言葉が聞こえてきそうな映像が脳裏の中を駆け巡ったのだった。そのおかげで、一晩でげっそりと顔がこけてしまい、目の下には大きなクマも作っていたモリトであった・・・・。


哀れモリト。
頑張れモリト!






― 7話完

  • No.89 by ハナミズキ  2015-11-19 17:03:01 

次回は【 ローレライ大陸に向かって出港せよ! 】です。

ローレライに行くためにマレイの港までやって来た2人は、そこで吟遊詩人と出会う。
吟遊詩人の唄を聞いたユーリが、唄と似たような出来事を思い出す。
唄の謎を解明する為にも、二人は新たな気持ちで旅立つのであった。

  • No.90 by ハナミズキ  2015-11-20 17:33:43 

◆ ローレライ大陸に向けて出港せよ! ◆




 新しく加わったハロルドのギルドの名前は、《 HOPE 》という。
メンバーは、ギルマスのハロルド、20歳。身長180㎝、剣士。レベル50代(水色の腕輪)を付ける真面目そうな好青年だ。
ケント:19歳。身長178㎝、アーチャー。レベル50代(水色の腕輪)言動は超軽いが女性には優しい。
リズ:18歳。身長163㎝、魔法使い。レベル50代(水色の腕輪)ギルド一のしっかり者だ。
アンズ:16歳。身長158㎝、剣士。レベル30代(オレンジの腕輪)世界で一番かわいい女の子は自分だと思っている。

モリト:18歳。身長178㎝、剣士。レベル20未満の銅赤色の腕輪を付けている。
(本来のレベルは71である)本人曰く、ヘタレの優男(らしい)。
ユーリ:21歳。身長153㎝、何でもござれの倉庫持ち。全職種のスキルを自在に操れるチートな職業(?)永遠のレベル1。(又はレベル100)超童顔で、15歳前後にしか見えない。(性格は不明)


 そんな六人が今居る場所は、グリーン大陸の南に位置する港町、マレイだ。
この港にはローレライ大陸からの船や、近隣諸島の小さな島から運ばれてくる輸入品と人で賑わう街である。
 商人は勿論だが、冒険者や旅行者なども大勢いる。そのため、宿屋や酒場などといった物が数多くあり、泊まる所には不自由しなさそうだ。

  • No.91 by ハナミズキ  2015-11-20 17:34:56 

 早速、宿の手配をし、部屋割りをしようとすると、ユーリが一言こう言った。

「私とお兄ちゃんは同じ部屋がいいな~」

 すると、すかさずアンズが喰いついてきた。

「あっれぇ~?ユーリって、ブラコンなんだぁ~?」

 銅褐色の腕輪と童顔のため、アンズはユーリの事を自分より年下だと思っているらしい。そのため、ユーリに対してはつい、上から目線で話すのである。

 返答に困っているユーリを見たモリトは、助け舟を出すかのように説明をしはじめた。

「ユーリはチョット人見知りなんだ。良く知らない人が一緒だと寝られないみたいでさ」

 そう言ったのだが、

「そう言うのをブラコンって言うんじゃないのぉ~?」

 もう、何を言っても無駄なようである。この際だからブラコン設定も付け加えようかと思うユーリであった。

 その時に、本当の意味で助け舟を出してくれたのがハロルドだ。

「はいはい、アンズ。そこまでだよ。この間も言ったろ?
俺達は一緒に行動しても、基本的には別行動だって。
モリト達はモリト達。俺達は俺達なんだよ。
あんまり突っかかるなよ、アンズ」

「はぁ~い・・・・。」

 何とか事が収まったようで安心をするが、この先の事も考えると不安も残る。

  • No.92 by ハナミズキ  2015-11-20 17:36:38 

 アンズは相変わらずハロルドにまとわりついて甘えているのだが、その光景とユーリのブラコン(?)とどう違うのか謎だ。
 同じようにいつも側に居るのだが、ユーリ達はベタベタしてはいない。モリトが勝手に過保護になっているだけに見える。ハッキリ言えば、ブラコン=× シスコン=○ と言う風に、第三者には見えている。 

 一方アンズの方は、「お兄ちゃん遊んで遊んで~」とまとわりつく子供のようだ。こちらの方がブラコンに見える。だが、こちらに被害が及ばなければそんな事はどうでもいい。あの手のタイプの女の子は、「はいはい」と言う事を聞いて、言いたいだけ言わせておけば、後は勝手にどこかに行ってくれるだろう。

 早い話しが、触らぬ神に祟りなし。と言う事だ。

  • No.93 by ハナミズキ  2015-11-20 17:37:29 



 どこの国でも、どこの世界でも、冒険や旅行となるとそれなりの荷物が必要となる。バックパッカーでさえ大きなリュックを背負って旅をするのが基本だ。だが、モリトとユーリは他の4人と比べると明らかに荷物が少ない。
 基本的に冒険者という者は、いつ、どんな災難が降りかかってくるか分からないので、準備は万全に整えている。薬草・回復薬・野宿をする時の為のテントなどを持ち歩いていた。細々とした物まであげればキリがないが、その荷物を運ぶために馬や召喚獣などといった動物を使う者が多い。
 モリト達の場合は、以前ゲーム内でやったクエストの報酬として貰ったショルダーを愛用しているため、荷物らしい荷物を持っていない。
 カバンの中に物を入れるとコマンドの中に納まり、取りだす時もコマンドを開いて操作をするだけでカバンの中から出てくる。という物だ。どんなに大きな物でも出し入れは自由なのだ。分かり易く説明をするなら、ドラえもんの四次元ポケットと同じような物だと思って欲しい。
 そんな姿を不審に思ったのか、モリト達と別れてから4人で部屋に集まった時に、愚痴を言うかのようにアンズが話し出した。

「あの人達って、あんな軽装で本当に旅に行くつもりなの?あのレベルじゃお金だってそんなに持ってなさそうだしぃ。もしかして、私達にたかろうとか考えてたりしてぇ~」

「「「 それは無いな(わね)。」」」

 三人が声をそろえて言った。

「なんでそう思うのよ!? 」

「・・・・・・、何となく・・・・、かな?」
「・・・・、だな。」
「・・・、そうね・・・・。」

「何よ!なによ!みんなして!! 私にも分かるように説明してよ!」

 説明をしろと言われても、詮索はしない約束をしている。それに、物腰や言動からみて、とても初心者には見えない。スワンでの事もあるので、信用をしても良い人物という認識しか今は無いのである。
 1人だけ蚊帳の外の様な気分を味わったアンズは、「ちょっと出かけてくる!」と言って部屋から出て行ってしまったのだった。

  • No.94 by ハナミズキ  2015-11-20 17:39:14 

 アンズが居なくなった事によって話しやすくなった三人は、ハロルドにモリト達の事を聞いてみた。

「なぁ、ハロルドはどう思ってるんだ?モリトの事」

「実は、まだよく分からないんだ。悪い奴じゃないって事は分かるんだけど、どこの出身でローレライに何をしに行くのかは俺も聞いてない」

「聞いたらダメなのかな」
「詮索をしないって約束だからな…。」

「そっか…。」

その時リズが小さな声で呟いた。女の感とでも言うのだろうか。

「モリトって、ユーリちゃんの事を守ってるように見えるけど、実は守られてるのってモリトの方じゃないかな…。」

その発言にケントはゲラゲラと笑いながら「まさかー」と言い、ハロルドはどうしてそう思うのかをリズに聞いた。

  • No.95 by ハナミズキ  2015-11-20 17:40:10 


「確信はないんだけどね、ここに来るまでに何匹かの魔物に遭遇したじゃない?
モリトの腕輪の色だったら1人で魔物と闘えるわけがないじゃない?
そりゃあモリトは強いわよ?それは知ってる。でも、ユーリちゃんは魔物が怖くなかったのかしら。怯えてる様子が全然なかった」

「そう言えばそうだな」

「それにね。キロルの谷間で落石があったじゃない。」
「そうそう!あれは危機一髪で助かったよな!」

ケントが思い出したかのようにそう言った。

「あれ…、偶然じゃないと思う。」
「どう言う事だ?」

「あの時私見たの。ユーリちゃんが何か呟いてるところを・・・。」
「呟くって何を」

「小さな声で一瞬だったけど、破壊の呪文だったような気がするのよ…。」
「まさかー?! 銅褐色で破壊の呪文なんか使えるかよ!リズの気のせいじゃね?」

ケントはそう言って疑っているが、ハロルドは黙ったまま何かを考えていた。

「ハロルドはどう思う?」

「俺も確信は無いんだけど、ユーリちゃんてさ、本当は俺達より年上なのかもしれない。
なんて言うか、時々ユーリちゃんの纏うオーラで身が引き締まる様な気がするんだ。」

「そっか?俺は何も感じないけどな~」
「ケントが鈍感なだけじゃないの?」

そう言ってリズはクスクスと笑った。

 モリトとユーリは一体どこから来て、何者なのか。そして彼らはこれから何をしようとしているのか。ハロルド達には全く分からなかったが、今は信用をし、仲間として行動する事に異存はなかったのであった。

  • No.96 by ハナミズキ  2015-11-20 17:41:06 



 一方こちらはモリト&ユーリ組。旅に必要な物は全て王都にて揃えてきてはいたが、これから行くローレライに向けてユーリの服を買いに街に出てきていた。
 スワンで女将さんから貰ったゴスロリの服も捨てがたいが、いささかこの服装では目立ちすぎる。王都の様な大きな街ではそれほど気にしなくても良かったのだが、これから行く所はローレライと言う辺境の地だ。そこにこの服で行くと言う事は、金持ちの娘だから誘拐をしてくれと言っているのも同じ事になる。
 ユーリにとって誘拐犯や山賊・盗賊の類は怖くもないが、面倒くさい事に巻き込まれるのだけは嫌だった。できれば、目立たず、ひっそりと旅をしたかったのだ。

 ユーリが町の中を歩けば、やはり大勢の人の視線を浴びた。こんな港町でフリフリの洋服など着ている者など居ないからだ。
 何件か見て歩いたうちの一件で、ユーリは新しい服を選んで買った。今度の服はごく普通の洋服である。動きやすさも考慮して七分丈のパンツとショートパンツを二着ずつ。Tシャツ4枚にベスト2着とマントを買う。かなりボーイッシュな格好である。

  • No.97 by ハナミズキ  2015-11-20 17:41:59 


 ユーリが洋服を選んでいる間、モリトは小物を見ていた。



『この紐、可愛いな…、ユーリが付けたらきっと似合うな。
でも、あいつはこういうの買わないんだろうな
自分の容姿に無頓着だもんな…。

おっ!?
このイヤリングもユーリに似合いそうじゃないか
こういうのを付けて、少しは自分が女の子なんだって事を自覚して貰わないとな…。』



 モリトはコッソリとそれらの小物を買った。後でユーリに渡そうと思っていたのだ。


 買い物も終わり、ブラブラと街を眺めて歩いていると、広場の方から賑やかな声が聞こえてきた。やはりここにも大道芸の人達が大勢きているようだ。
 ピエロの格好をして曲芸をする者やジャグリングをしている者。紙芝居をしている者もいれば歌を唄っている者もいる。そしてその中に、吟遊詩人もいたのだった。

―― 遥か昔
   昼が夜になりし時
   天から女神が舞い降りる
   
   ときの魔王オリジンが
   ローレライの民を喰い殺す

   土地は痩せ
   民も逃げ出すローレライ
   
   戦は絶えず
   村は焼かれ川も枯れたローレライ

   天から来たれし女神の名は
   その名も美しき『アリア』様

   女神は魔王を討ち果たし
   天よりマナを降り注ぐ    ――



 と言う歌であった。

  • No.98 by ハナミズキ  2015-11-20 17:42:43 

 その歌を聞いていたユーリは、

「これって…、もしかしてアレの事かな?」

 ユーリは何かを思い出したのか呟くように言った。

「あれって?」

 モリトには何の事だかさっぱりわからない。しかしまだ結論を言おうとしないユーリである。
 吟遊詩人が歌い終わった時、ユーリが吟遊詩人の側に行き、お金を払った後に尋ねた。

「今の歌って、ローレライの歌ですか?」
「そうだよ。お嬢さん」

「どう言う意味なのか聞いても良いですか?」

 吟遊詩人の話しによると、遥か昔、ローレライ大陸にはオリジンと言う王様がいたそうだ。その王は、祭り事などは全て臣下にやらせて贅沢三昧の毎日を過ごしていた。
 お金がなくなると税金を上げて民から巻き上げる。税のきつさを訴える者がいれば処刑をしたと言う。
 食べる事にも困った国民たちは、故郷を捨ててグリーン大陸へと移住し始めた。民が居なくなった領地は荒れ果て税金も取れなくなり、その領地を任されていた貴族達は、まだ人の残っている領地を我が物にしようと戦を仕掛けたのだ。
 あちこちの領地で戦が行われ、その巻き添えで民家や田畑が焼き払われてしまった。
 そこに天から女神が現れて、王や臣下達を一網打尽に討伐をしたのだった。女神は大地の復活を約束し、天から無数のマナが大地に降り注いできて、そのマナは今、鉱山の中に眠っていると言う。それを掘り出すためには鉱山の中に入らなければならないが、中には無数の魔物が潜んでおり簡単には取りに行けないと言う。
 焼き払われた村や町は、今は遺跡として残っているが、とてもじゃないけど人が住める状態ではないらしい。なぜなら、そこにも魔物が出るからだ。

  • No.99 by ハナミズキ  2015-11-20 17:43:49 

 話しを聞き終わったユーリは、復活を約束したはずなのに未だ復活されていないのは何故なのだろうかと聞いてみた。

「真の復活は千年後だと言う話しですよ。その千年後と言うのがいつの事なのかは分かりませんが…。」

「・・・・で、その女神さまの名前が「アリア」様?」
「私はそう聞いています」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「そう言えば…、この歌にはまだ続きがあるんですが、その続きを私は知らないんですよ。すみません。」

 ユーリは吟遊詩人にお礼を言ってからその場を離れた。


「ユーリは何か知ってるの?」モリトが尋ねた。

「あのね、前に千年クエストって言うのがあったじゃない?モリトはアレやった?」
「そう言えばそんなのあったな。俺はまだ出来るようなレベルじゃなかったからやってないよ」

「そっか…。」
「それがどうかしたのか?」

「たぶん、そのクエストじゃないかな…。と、思う。」
「どう言う事だ?」

「女神の名前が「アリア」だって言ってたでしょ?その時使ったキャラが魔法使いで「アリア」って名前でやったのよ。」

「じゃあ、天から舞い降りて来たって言うのは?」
「召喚獣の雷鳥に乗って行ったのよね…。」

「昼が夜になった時って言うのは?」
「あぁ、ちょうど日食のイベントと重なっちゃってたのよ」

「天からマナが降り注ぐって言うのはどういう事なんだ?」
「あれは運営側のサプライズ…かな?」

「なるほどねぇ~」

「納得した?」
「理解した。 で?これからどうするつもりなんだ?」

「どうするもこうするも・・・、成り行きに任せるしかないじゃないw」

 こう言う時のユーリは本当に何もする気が無いらしい。予定を立てて行動すると言う事が苦手のようだ。

  • No.100 by ハナミズキ  2015-11-20 17:44:51 

 しばらく街中をブラついた後に宿屋に戻り、ゆったりとお風呂に浸かった後、先ほど買った洋服に着替えて夕食を食べに食堂に下りて行くと、既にハロルド達4人が食事をしている最中であった。
 ケントが一緒に食べようぜと言ってくれたが、モリトはその言葉を辞退して別のテーブルで食事をする事にした。

 食事をしながらユーリが話す。

「さっきの吟遊詩人の話しだと、あの歌の後にはまだ続きがあるって言ってたわよね?」
「言ってたな」

「どんな続きなのか気にならない?」
「気になるけど…、ユーリは何か思い出した事ってないのか?」

「うん。私がやったクエストと吟遊詩人が言ってた話しって、ちょっと違うのよね…。」

 ユーリはクエストの内容をモリトに話した。

  • No.101 by ハナミズキ  2015-11-20 17:45:28 


 まだ、このエメラルダスがオンラインゲームであったころ、ユーリがやったというクエストは【 千年クエスト】と言って、千年前の大古の時代にさかのぼり、ローレライ大陸にやって来たという闇の魔王オリジンとその眷族達の討伐クエストだった。
 闇の魔王は世界を暗黒の世界にしようともくろみ、人間を皆殺しにし、闇の眷族と魔物で埋め尽くそうと考えていた。
 緑豊かな土地のローレライだったが、一夜にしてその木々や草花を枯らし、焦土化にしてしまった。
 そこに、このクエストを受けてやって来た冒険者達が、闇の魔王と眷族の魔物達を討伐するという内容である。
 もちろん討伐を行う冒険者は1人ではない。何人もやって来る。その者達と力を合わせクリアしていくのだが、なぜ吟遊詩人の歌では1人しか出て来なかったのかが不思議である。そして、その人物がなぜユーリなのかと言う事もだ。

「なんか謎だらけよね~。でも退屈しないで済みそうだわ」

 そう言って笑うのであった。

  • No.102 by ハナミズキ  2015-11-20 17:46:53 


 一夜明け、ギルドHOPE御一行様が、海を渡りローレライ大陸に行くために、港に集まっていた。

「うっわぁ~!すっごく大きな船~♪」

そう言って大はしゃぎををしていたのがアンズだった。

「アンズちゃん、船は初めてなの?」
「初めてじゃないけど~、こんなに大きな船は初めて見た!」

 荷物と人を同時に運ぶこの船は、かなり大きめの客船である。陸だけではなく、海にも魔物が潜んでいるので、船乗りの他にも用心棒として、それなりに腕の立つ元冒険者達も乗っている。
 海で遭遇をする魔物はレベル40代の中堅クラスなので、そこまで危険ではない。それに、いつも出るというわけではなく、運が悪ければ出くわす。といった感じだ。それより怖いのは海賊の方かもしれない。あいつらは見境なく襲ってくるからだ。
 なにはともあれ、何事も無く無事に航海が出来る事を祈り、船に乗り込んだ。


―― ボオオォォォォー ――


 大きな汽笛と共に、船が動き出した。








― 8話完

  • No.103 by ハナミズキ  2015-11-20 17:49:13 

次回はグリーン大陸編 最終回【 モリトの決意 】です。

  • No.104 by ハナミズキ  2015-11-22 09:06:51 

◆ モリトの決心 ◆



 グリーン大陸からローレライ大陸までは、船で三日かかる。空を飛ぶ召喚獣で行けば半日といった距離だ。その海を渡るのだからそれなりの大きさの船でならなくてはならないし、客室も値段別に数多く用意されている。
 一番安いのが二等客室。50人程が雑魚寝できる広さがあり、値段は1人6000円。(食事は含まれていない)食事は大衆食堂で取り、シャワーは一回に付き500円取られる。一等客室になると1人一万円になり、四人一部屋で食事とシャワー等は二等客室の人と同じとなる。
 一番高いのは特別室だ。当然個室で鍵付きである。部屋にはシャワーが付いており、食事はルームサービスで三食付く。値段も1人10万円~と高い。

 俺達は二等客室を選んだが、ハロルド達の方はアンズの我儘により一等客室に泊まっていた。人数が四人と言う事もあり丁度良かったんだろう。しかし、アンズの本当の目的は、三日間ハロルドと同じ部屋で寝泊まりする事だ。ここだけの話しだが、実はハロルドは良い所のお坊ちゃんらしい。(byアンズ情報)
上手くいけば玉の輿に乗れると、アンズはこの三日間にかける気満々だった。

  • No.105 by ハナミズキ  2015-11-22 09:07:34 

 甲板から、だんだん遠ざかるグリーンランドを見ている俺とユーリ。船に乗って移動するなんていつ以来だろうか。たまにはこんな旅も悪くない。そう思いながら潮風に当たっていた。
 ふと、隣にいるユーリを見て見ると、長い髪が後ろから吹く風になびき、前方へと覆い被さって来ていた。それに気が付いた俺は、ポケットに手を入れて昨日雑貨屋で買った可愛い紐を取りだした。

「髪が邪魔そうだね。ちょっとそのままでいてくれるかな」

 俺はユーリの背後に回り、髪を束ねてポニーテールに結んだ。思った通り、ピンク色の紐はリボンの形をとると、より一層ユーリに似合う。まるで・・・・、小学生のようだ・・・・。

「これまた可愛くなっちゃって・・・・。」

俺は思わず苦笑いをしてしまった。そして同時に、赤い石がハートの中にぶら下がっているイヤリングも付けてあげた。

「うん。可愛い。完璧だよ、ユーリ」

 こう言う歯の浮くようなセリフを平然と言ってのけた自分にもビックリだったが、「可愛い」と言う言葉を聞き慣れていないのかユーリは、「えっ?」と、驚き、俺の方へ振り返った。
 その顔は、恥ずかしさなのか照れなのか、顔を真っ赤にしているように見えた。その顔を見た俺も、「えっ?」と、間抜けな返事を返すのだった。

  • No.106 by ハナミズキ  2015-11-22 09:08:19 

 俺は、なぜそんなにユーリが驚いているのか分からず、更に的外れな返答をする。

「いや、マジで可愛いよ?イヤリングも似合ってるし、めっちゃ可愛いって!」
「・・・・・・・・・・、ありがと・・・。でも、なんかその口調・・・、ケントみたい…。」
「えっ?!」

しばらく間があった後、2人はクスクスと笑いだした。

「ごめんごめん。でも普段はこんな感じなんだぜ」
「なに?じゃあ、今まで猫被ってたの?」

「そりゃあ、少しは被るだろ。今までは友達とは言っても素性は知らなかったんだしさ」
「そりゃそうよね。じゃあ、私もこれからは素でいくわ。これからの付き合いも長くなりそうだし、その方が気が楽よね」

 そう言いながら、俺達は今までの時間を埋めるかのように話し出したのだった。

  • No.107 by ハナミズキ  2015-11-22 09:09:16 

 甲板で俺達は長い時間話しをしていた。今となってはもう無い、故郷の話しや家族の話しなどだ。
 ユーリは千葉県に住んでいて、家族は両親の他に弟が1人いたそうだ。中学生になった頃に病気が悪化して入院生活を余儀なくされたという。入院中も院内学級に通い勉強はそれなりにできるらしいが、歴史だけは苦手だったと言ってたな。それと、ユーリの弟と俺が同じ年だと初めて聞いた。
 好きな食べ物はパスタとハンバーグ。嫌いな物は沢山あり過ぎて分からないそうだ。(笑)
 俺と初めて会った時も、弟と歳が同じだって事で色々と面倒を見てくれたのがその理由だったらしい。ほんと、あの時の事は感謝してる。ユーリと出会わなかったら俺は、このキャラを育てる事は諦めていたかもしれないし。

  • No.108 by ハナミズキ  2015-11-22 09:09:53 

 俺の方は東京に住んでいて、今は一人住まいの大学生だった事。実家は北海道で大自然と食い物が美味い所だと言うと、一度行ってみたかったと言っていた。
 ユーリは俺に、今まで何回告白された事があるのかとか、何人の女の子と付き合った事があるのかと聞いてきたが、俺は全力でそれを拒否した。(汗)
 そりゃあ、告白された事や女の子と付き合った事もあるけど、そんな事人に話す事じゃないだろ?恥ずかしすぎる。(汗)
 すると今度は、バレンタインに何個チョコを貰ったかと聞いてきた。話すまでこの話しが終わりそうもなかったので、俺は正直に答えたさ…。最低個数を・・・「5個…かな」とね。そうしたら急に、「へぇ~、モリトってモテるんだねぇ~」と、意味不明な事を言ってきた。チョコ5個でモテるってどう言う事ですか!? みんなそれくらい貰ってるだろ?たぶんそれ全部義理チョコだしさ…。それに、その数の中には母さんと婆ちゃんのも入ってるし…。

  • No.109 by ハナミズキ  2015-11-22 09:10:36 

 ユーリと話していて再認識した事は。やっぱりユーリは凄いという事だった。
人を見る目があるというか、観察力がすぐれているというか・・・。
 まず、ハロルドの事だ。ハロルドは信頼して頼っても良い人物だと言った。言葉使いや周りに気を使う姿勢は、両親の躾が行き届いていた証拠だという。それと、いずれハロルドには自分達の素性がばれるかもしれない。とも言っていた。それだけ洞察力もある人物だというのだ。

 次にケントだが、彼もなかなかの人物らしい。言動や行動がチャラく見えるけど、本当のケントは真面目なのではないかと言う。場の空気を盛り上げるためにわざと演出してる可能性もあるんだってさ。確かに、そう言われればそうかも知れないと、俺も妙に納得をした。

 リズは長女で、下には沢山の弟妹がいるんじゃないかと言う。母親の様な面倒見の良さがあるんだって。それに、器が大きい。とも言っていた。確かにリズは周りをよく見ている。俺達の事も気にかけてくれてるしね。悪い人じゃないという事は俺にも分かるさ。

 最後にアンズの事だけど、ユーリが言うには、悪い子ではないらしいがかなり自己中の気質があるらしい。自分が一番!と言う考えの持ち主のようだ。
 ハロルド達4人の中で一番年下であり、女の子と言う事で、守ってもらって当たり前。我儘を聞いてもらって当たり前。と思っているらしい。だから自分より年下に見えるユーリが気に食わないようだ。今はまだ、俺がユーリの兄だと思っているのか、それほど風当たりは強くはないが、他人同士だとばれたらどうなるんだ?!
 まぁ、そんな事は追々考えればいいが(考えたくもないが…)、ユーリの事だからどうにかしちゃうんだろうな。(苦笑)

  • No.110 by ハナミズキ  2015-11-22 09:11:49 


 ユーリじゃないけど、面倒くさい事を考えるのはよそう。起こってもいない事を考えるなんて、今の俺にはそんな余裕はないからな。
 今目の前で起こっている事に全力で立ち向かうしかないんだ。俺は1人じゃない。ユーリと言う仲間がいる。ユーリを守るためにも俺は強くならなきゃいけないんだ。いつまでも守ってもらう立場じゃ男として情けないもんな…。

さぁ~て!俺は強くなるぞ!!(精神的に!)







― 9話完

  • No.111 by ハナミズキ  2015-11-22 09:19:55 

ありがとうございました。
これにて ビヨンド・ザ・ドリーム グリーン大陸編を終わらせていただきます。<m(__)m>


ローレライ編は、また別の章になりますので、そのうち載せようかなと思います。

  • No.112 by 匿名  2016-10-10 14:49:27 

面白かった。続きが気になる。

  • No.113 by ハナミズキ  2018-11-06 22:11:55 

長い間お待たせいたしました
途中でネタが尽き、暫く執筆から離れておりました

またボチボチとのんびり書いていこうかと思います


ビヨンド・ザ・ドリーム  ローレライ編 始まります!

  • No.114 by スカイ  2018-11-06 22:13:43 

頑張って下さい更新楽しみにしてます()

  • No.115 by ハナミズキ  2018-11-06 22:13:46 

 船に乗って三日目。遠くにローレライ大陸の山が見えてきた。まだテレポートスキルが使えない頃に、何度となく船に乗ってやって来た大陸だ。その頃は、船に乗っても15分で着いていたと言うのに、今となっては三日もかかるとは…、船酔いが辛い…。

 心配していた魔物との遭遇は、船の用心棒として雇っている元冒険者達が退治してくれたので、乗客には被害が出なかった。魔物より厄介だと言う海賊も、今回は姿を現さずヤレヤレと言ったところだろう。

 甲板では、ローレライ大陸を懐かしそうにモリトとユーリが眺めていた。地図上ではグリーン大陸の二倍の大きさはあるが、その半分以上は草木が枯れて焦土化をしている。
 高くそびえ立って見えている山々も、茶褐色の色をしており、草木などが生えている様子が見られない。
 山のふもとの方に、多少だが緑が見えているのが救いだろうか。それさえ見えなければ、ここはただの廃墟にしか感じられない。

  • No.116 by ハナミズキ  2018-11-06 22:15:22 

「やっとローレライね」
「あそこの人達も相変わらずなんだろうな…。」

 あそこの人達というのはゲーム内のモブ達の事である。
 以前はプログラムされた通りの行動で、元気いっぱいに動いていた。だが現実となった今でも相変わらず元気一杯なのだろうと想像したのだ。

  • No.117 by ハナミズキ  2018-11-06 22:17:08 

 穏やかな気質の人が多いグリーンランドとは違い、ローレライの人達はたくましい。
一般人なのか、盗賊や山賊の類なのか分からいような、豪傑な気質の人がほとんどなのだ。
 国の半分以上が荒れ地とかし、その土地では食物は育たない。微かに残っている水源の周りに家を建て、小さな村や町が幾つも出来ている。
 食物が育たないので輸入をするしかないのだが、それをするにもお金や物が必要となる。人々は危険と知りつつも、マナを取りに鉱山へと入るのだ。
 マナとは、鉱物・鉱質・宝石の原石の様な物だが、その用途としては多種多様である。石炭の様に燃える石があれば光を放つ石もある。この光を放つ石は、人々の暮らしには無くてはならない物だ。部屋の明かりや街灯等に使われているからだ。

 ゲルゲンやアマンダ、ミスリルなどと言う原石は、武器を錬金する時に使われ、それらを使わないで錬金をしたものに比べると、切れ味や刃のもろさが数倍違う。良い物を長く使おうと思うのなら、原石を練り込んで錬金した物の方が良い。当然それらは値段も高いが、それだけの価値もあるというものだ。その鉱石や宝石の原石を輸出をして、日々の糧を得ているのが、このローレライの人達なのであった。

  • No.118 by ハナミズキ  2018-11-06 22:20:57 

 船がローレライのグラ港に着くと、人々と貨物が船から降ろされる。船から降りたモリトは大地を足で踏みしめながら、大きく背伸びをし、深呼吸をした。

「やっと着いたな。船旅がこんなに辛いとは思わなかったよ…。」

少々げんなりした様子で肩をすくめて言う。。

「あら、そう? 私は楽しかったけど?」

 船旅というものを初めてしたユーリの方は、楽しくてしょうがなかったようだ。

  • No.119 by ハナミズキ  2018-11-06 22:22:06 

 グラ港に降りた2人は、久しぶりに来た街の様子を見て歩く事にした。
 パッと見は以前と変わらないようだったが、雰囲気がどことなく以前と違って見えた。いかつい姿の男ばかりというのは同じだが、前はもっと陽気で楽しい人ばかりだったはずだ。それが今は、陽気に楽しく酒を飲んでる人が半分。ニヤニヤと舐め回すような目つきで見てくる得体の知れない男が半分と言ったところだろう。

後者の男達が気になったユーリは隣を歩くモリトに小声で話しかける。

「あの人達っていったい何者なのかしらね?」
「人相が良くないとこを見ると、どうせ流れ者の元冒険者ってとこじゃないかな」

 あまりジロジロ見て因縁を付けられてもたまらないので、さり気なく流し目で雰囲気を探る。

  • No.120 by ハナミズキ  2018-11-06 22:23:39 


「この大陸に王様がたったって聞いたけど、兵士とかはいないのかしら?」
「それらしい姿のやつは見えないよな」

そんな話をしながら道を歩いていると、前の方からより一層人相の悪そうな集団が歩いて来た。
 見た目は思いっきり山賊風だ。
 その集団はガハハと下品な笑いをしながら一件の酒場に入った。気になったモリト達はその後を付けてみる。

  • No.121 by ハナミズキ  2018-11-06 22:25:01 

 酒場に入った男達は、先に店で飲んでいた客の椅子を蹴り倒すと、その人達をそこからどかせて自分達が座り込んだ。蹴り倒された方の客は、ペコペコしながら他の空いてる席へと移っていった。

 男達はどかせた席に意気揚々と座り、偉そうな物言いで酒を注文した。

「酒だ!酒!あと食いもんも適当に持ってこい!」

 店の亭主はオドオドしながら男たちの言う通りに酒と食い物を運んできた。

 モリトとユーリも空いてる席へと座り食事をとる事にする。亭主が注文を取りに来た時に、モリトが男達の事をさり気なく聞いてみた。

「あの人達は一体どういう人達なんですか?」
「なんだい。兄ちゃん、ここの人じゃないのかい?」

 店主は少し驚いて問いかける。

  • No.122 by ハナミズキ  2018-11-06 22:25:50 

「はい。さっきグリーン大陸から着いたばかりです」
「そうかい。悪い事は言わねぇ。あいつ等に関わっちゃいけねぇよ」

「それはどう言う意味です?」

「あいつ等は、自称警備隊だ。警備隊と言っても正式なもんじゃねぇ。あいつ等の親玉は山賊の頭だってぇ噂だ。やりたい放題さ…。」

「王様は何をしてるんですか? ああいうのを野放しにしてるのっておかしくないですか?」

 こういう街の問題は国に報告をして、王様や統治者に何とか改善して貰うのが慣例だと思う。それをどうしてしないのかと尋ねると。

「王様って言ったってよ、数カ月で交代してるんだ。王都なんてもっと酷いもんさ。ここの方がまだましだよ」

 亭主の話しによれば、この一年間で王様が3回変わっているそうだ。自分が王座に相応しい人物だと言い、腕に自信のある者がその座をかけて争っているそうだ。この国では、王族の血統ではなく、現王様を倒した者が新しい王様になれるしきたりらしい。そんなしきたりなど初めて聞いた。

  • No.123 by ハナミズキ  2018-11-06 22:26:57 

 俺が知っている限りでは、この大陸に王はいなかった。王様がいない代わりに、各集落ではその長が民をまとめていて、貧しいながらも安定をした生活を送っていたはずだった。ところが今は、この大陸にも王が必要だと言いだした奴がいて、ローレライに居た元貴族の子孫をそそのかし、この大陸で王位につかせたらしい。
 しかし、勝手に王を決められた事に納得をしない者達が、我こそが王に相応しいと、仲間を集い襲撃し、次々にやって来るそうだ。

 その中には元貴族もいれば盗賊の類もいた。腕に自信のある者達は、少しでも良い暮らしをしようと王座を狙いにやって来る。そして今、王座に付いているのが山賊の親玉らしいと言う話しだ。

 と言う事は、マナを取りに鉱山へ行けば魔物に襲われ、町ではならず者たちに襲われる。と言う事か…。これじゃ安心して暮らせないよな。どうにかならないんだろうか・・・。

「なぁユーリ。王都に行ってみないか?」

「なに?王様にでもなりたいの?」

 王様になりたいとかそんな事は考えてはいなかったが、『なぜ、王様が出てくる?』と言う思いから

「ちっ、違うって! そうじゃなくてだな、さっきここの亭主も言ってただろ? 王都はここ以上に荒れてるってさ。だから自分の目で確かめに行きたいんだよ」

「うん。いいわよ。行きましょう。確か王都って隣の国だって言ってたものね」

俺達は食事を済ませるとすぐさま王都に向かって出発をする事にした。

  • No.124 by ハナミズキ  2018-11-06 22:28:22 



 俺達の食事が終わるころ、いつから飲んでいたのか、かなり酒を飲んで出来上がっていた男達がいた。
 そいつらは散々飲み食いをしたあげくに、金も払わず店を出て行ってしまった。

「食い逃げか?」

俺はそう思い、飲み屋の亭主に尋ねた。

「ああ。いつもの事だよ。あいつらはいつもそうさ。金も払わず飲み食いしてくんだ。
俺の店だけじゃないぜ。どの店でもそうだ」

「なぜ金を払うように言わないんだ?」

「言った奴もいたさ。その後そいつは死んだがな」

 たてつく者は殺す…って事か。警備隊なんてもんじゃない。時代劇でよく見る悪徳商人が雇ってる、用心棒と言う名前のチンピラじゃないか!まぁ、親玉が山賊じゃ当たり前なのかもしれないな。

 ならどうして他の人が王座について、国を変えようとは思わないのだろうか。ああ、そうか。だから一年で三人も王様が変わったのか。それにしても、もう少しましなやつはいなかったのか?!これなら俺が王様になった方がマシじゃないか・・・。

 俺はこの国の王について聞いてみた。

「王様ってどんな人なんです?」

「噂じゃ、かなりの高レベルなアサシンって話だ。闇の力が使えるくらいのな。
税収や賄賂をくれるやつには何もしないし、好き勝手にやらせてる。
だがな、高額な税金を払えないやつは酷い目にあってるらしいぜ。」

「酷い目?」

「そうさ。俺の知り合いで、年老いた両親を殺されたあげくに、子供をさらっていかれたんだが、王はどうもコッチ系らしい」

と言いながら、右手を左側の頬にあてて「オホホホ」的なポーズを取って見せる。直訳すると『オカマ』である。

『マジか・・・。』と、モリトはげんなりとした顔をした。

「さらっていくのは男のガキだけとは限らん。可愛ければ女のガキも連れて行くそうだ。
そのネーチャンみたいなのをな」

 亭主はガハハハと笑いながら話していたが、モリトにしてみれば笑い事ではない。もしもユーリがさらわれたとしたら、さらった相手が無事なわけが無いからだ。下手をすれば城ごと吹っ飛ばすかもしれない。危険だ。

 悪人がやられるのはまだいいが、無理やり連れて来られて働かされている人まで巻き添えにしてしまう可能性も、ユーリなら大いに考えられる。それだけは避けたい。

「ユーリ。ひとつだけ言っとく。知らない人には絶対に付いて行くなよ!」

「・・・・・。何よ急に・・・。子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。もぅ。」

 まだ不安要素は残ってはいるが、とりあえずはこの店を出て、王都があるアルムに行く事にしたのだった。

  • No.125 by ハナミズキ  2018-11-06 22:36:08 

>>スカイさん

応援有難う御座います
誰かが読んでくれてると思うと嬉しいものですねw


スクロールの都合上、文章が短くなったり長くなったりしますが、大目に見て下さい(≡人≡;)スィマセン…

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