ハナミズキ 2015-10-30 16:57:47 |
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酒場に入った男達は、先に店で飲んでいた客の椅子を蹴り倒すと、その人達をそこからどかせて自分達が座り込んだ。蹴り倒された方の客は、ペコペコしながら他の空いてる席へと移っていった。
男達はどかせた席に意気揚々と座り、偉そうな物言いで酒を注文した。
「酒だ!酒!あと食いもんも適当に持ってこい!」
店の亭主はオドオドしながら男たちの言う通りに酒と食い物を運んできた。
モリトとユーリも空いてる席へと座り食事をとる事にする。亭主が注文を取りに来た時に、モリトが男達の事をさり気なく聞いてみた。
「あの人達は一体どういう人達なんですか?」
「なんだい。兄ちゃん、ここの人じゃないのかい?」
店主は少し驚いて問いかける。
「はい。さっきグリーン大陸から着いたばかりです」
「そうかい。悪い事は言わねぇ。あいつ等に関わっちゃいけねぇよ」
「それはどう言う意味です?」
「あいつ等は、自称警備隊だ。警備隊と言っても正式なもんじゃねぇ。あいつ等の親玉は山賊の頭だってぇ噂だ。やりたい放題さ…。」
「王様は何をしてるんですか? ああいうのを野放しにしてるのっておかしくないですか?」
こういう街の問題は国に報告をして、王様や統治者に何とか改善して貰うのが慣例だと思う。それをどうしてしないのかと尋ねると。
「王様って言ったってよ、数カ月で交代してるんだ。王都なんてもっと酷いもんさ。ここの方がまだましだよ」
亭主の話しによれば、この一年間で王様が3回変わっているそうだ。自分が王座に相応しい人物だと言い、腕に自信のある者がその座をかけて争っているそうだ。この国では、王族の血統ではなく、現王様を倒した者が新しい王様になれるしきたりらしい。そんなしきたりなど初めて聞いた。
俺が知っている限りでは、この大陸に王はいなかった。王様がいない代わりに、各集落ではその長が民をまとめていて、貧しいながらも安定をした生活を送っていたはずだった。ところが今は、この大陸にも王が必要だと言いだした奴がいて、ローレライに居た元貴族の子孫をそそのかし、この大陸で王位につかせたらしい。
しかし、勝手に王を決められた事に納得をしない者達が、我こそが王に相応しいと、仲間を集い襲撃し、次々にやって来るそうだ。
その中には元貴族もいれば盗賊の類もいた。腕に自信のある者達は、少しでも良い暮らしをしようと王座を狙いにやって来る。そして今、王座に付いているのが山賊の親玉らしいと言う話しだ。
と言う事は、マナを取りに鉱山へ行けば魔物に襲われ、町ではならず者たちに襲われる。と言う事か…。これじゃ安心して暮らせないよな。どうにかならないんだろうか・・・。
「なぁユーリ。王都に行ってみないか?」
「なに?王様にでもなりたいの?」
王様になりたいとかそんな事は考えてはいなかったが、『なぜ、王様が出てくる?』と言う思いから
「ちっ、違うって! そうじゃなくてだな、さっきここの亭主も言ってただろ? 王都はここ以上に荒れてるってさ。だから自分の目で確かめに行きたいんだよ」
「うん。いいわよ。行きましょう。確か王都って隣の国だって言ってたものね」
俺達は食事を済ませるとすぐさま王都に向かって出発をする事にした。
俺達の食事が終わるころ、いつから飲んでいたのか、かなり酒を飲んで出来上がっていた男達がいた。
そいつらは散々飲み食いをしたあげくに、金も払わず店を出て行ってしまった。
「食い逃げか?」
俺はそう思い、飲み屋の亭主に尋ねた。
「ああ。いつもの事だよ。あいつらはいつもそうさ。金も払わず飲み食いしてくんだ。
俺の店だけじゃないぜ。どの店でもそうだ」
「なぜ金を払うように言わないんだ?」
「言った奴もいたさ。その後そいつは死んだがな」
たてつく者は殺す…って事か。警備隊なんてもんじゃない。時代劇でよく見る悪徳商人が雇ってる、用心棒と言う名前のチンピラじゃないか!まぁ、親玉が山賊じゃ当たり前なのかもしれないな。
ならどうして他の人が王座について、国を変えようとは思わないのだろうか。ああ、そうか。だから一年で三人も王様が変わったのか。それにしても、もう少しましなやつはいなかったのか?!これなら俺が王様になった方がマシじゃないか・・・。
俺はこの国の王について聞いてみた。
「王様ってどんな人なんです?」
「噂じゃ、かなりの高レベルなアサシンって話だ。闇の力が使えるくらいのな。
税収や賄賂をくれるやつには何もしないし、好き勝手にやらせてる。
だがな、高額な税金を払えないやつは酷い目にあってるらしいぜ。」
「酷い目?」
「そうさ。俺の知り合いで、年老いた両親を殺されたあげくに、子供をさらっていかれたんだが、王はどうもコッチ系らしい」
と言いながら、右手を左側の頬にあてて「オホホホ」的なポーズを取って見せる。直訳すると『オカマ』である。
『マジか・・・。』と、モリトはげんなりとした顔をした。
「さらっていくのは男のガキだけとは限らん。可愛ければ女のガキも連れて行くそうだ。
そのネーチャンみたいなのをな」
亭主はガハハハと笑いながら話していたが、モリトにしてみれば笑い事ではない。もしもユーリがさらわれたとしたら、さらった相手が無事なわけが無いからだ。下手をすれば城ごと吹っ飛ばすかもしれない。危険だ。
悪人がやられるのはまだいいが、無理やり連れて来られて働かされている人まで巻き添えにしてしまう可能性も、ユーリなら大いに考えられる。それだけは避けたい。
「ユーリ。ひとつだけ言っとく。知らない人には絶対に付いて行くなよ!」
「・・・・・。何よ急に・・・。子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。もぅ。」
まだ不安要素は残ってはいるが、とりあえずはこの店を出て、王都があるアルムに行く事にしたのだった。
>>スカイさん
応援有難う御座います
誰かが読んでくれてると思うと嬉しいものですねw
スクロールの都合上、文章が短くなったり長くなったりしますが、大目に見て下さい(≡人≡;)スィマセン…
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