ハナミズキ 2015-10-30 16:57:47 |
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俺は、なぜそんなにユーリが驚いているのか分からず、更に的外れな返答をする。
「いや、マジで可愛いよ?イヤリングも似合ってるし、めっちゃ可愛いって!」
「・・・・・・・・・・、ありがと・・・。でも、なんかその口調・・・、ケントみたい…。」
「えっ?!」
しばらく間があった後、2人はクスクスと笑いだした。
「ごめんごめん。でも普段はこんな感じなんだぜ」
「なに?じゃあ、今まで猫被ってたの?」
「そりゃあ、少しは被るだろ。今までは友達とは言っても素性は知らなかったんだしさ」
「そりゃそうよね。じゃあ、私もこれからは素でいくわ。これからの付き合いも長くなりそうだし、その方が気が楽よね」
そう言いながら、俺達は今までの時間を埋めるかのように話し出したのだった。
甲板で俺達は長い時間話しをしていた。今となってはもう無い、故郷の話しや家族の話しなどだ。
ユーリは千葉県に住んでいて、家族は両親の他に弟が1人いたそうだ。中学生になった頃に病気が悪化して入院生活を余儀なくされたという。入院中も院内学級に通い勉強はそれなりにできるらしいが、歴史だけは苦手だったと言ってたな。それと、ユーリの弟と俺が同じ年だと初めて聞いた。
好きな食べ物はパスタとハンバーグ。嫌いな物は沢山あり過ぎて分からないそうだ。(笑)
俺と初めて会った時も、弟と歳が同じだって事で色々と面倒を見てくれたのがその理由だったらしい。ほんと、あの時の事は感謝してる。ユーリと出会わなかったら俺は、このキャラを育てる事は諦めていたかもしれないし。
俺の方は東京に住んでいて、今は一人住まいの大学生だった事。実家は北海道で大自然と食い物が美味い所だと言うと、一度行ってみたかったと言っていた。
ユーリは俺に、今まで何回告白された事があるのかとか、何人の女の子と付き合った事があるのかと聞いてきたが、俺は全力でそれを拒否した。(汗)
そりゃあ、告白された事や女の子と付き合った事もあるけど、そんな事人に話す事じゃないだろ?恥ずかしすぎる。(汗)
すると今度は、バレンタインに何個チョコを貰ったかと聞いてきた。話すまでこの話しが終わりそうもなかったので、俺は正直に答えたさ…。最低個数を・・・「5個…かな」とね。そうしたら急に、「へぇ~、モリトってモテるんだねぇ~」と、意味不明な事を言ってきた。チョコ5個でモテるってどう言う事ですか!? みんなそれくらい貰ってるだろ?たぶんそれ全部義理チョコだしさ…。それに、その数の中には母さんと婆ちゃんのも入ってるし…。
ユーリと話していて再認識した事は。やっぱりユーリは凄いという事だった。
人を見る目があるというか、観察力がすぐれているというか・・・。
まず、ハロルドの事だ。ハロルドは信頼して頼っても良い人物だと言った。言葉使いや周りに気を使う姿勢は、両親の躾が行き届いていた証拠だという。それと、いずれハロルドには自分達の素性がばれるかもしれない。とも言っていた。それだけ洞察力もある人物だというのだ。
次にケントだが、彼もなかなかの人物らしい。言動や行動がチャラく見えるけど、本当のケントは真面目なのではないかと言う。場の空気を盛り上げるためにわざと演出してる可能性もあるんだってさ。確かに、そう言われればそうかも知れないと、俺も妙に納得をした。
リズは長女で、下には沢山の弟妹がいるんじゃないかと言う。母親の様な面倒見の良さがあるんだって。それに、器が大きい。とも言っていた。確かにリズは周りをよく見ている。俺達の事も気にかけてくれてるしね。悪い人じゃないという事は俺にも分かるさ。
最後にアンズの事だけど、ユーリが言うには、悪い子ではないらしいがかなり自己中の気質があるらしい。自分が一番!と言う考えの持ち主のようだ。
ハロルド達4人の中で一番年下であり、女の子と言う事で、守ってもらって当たり前。我儘を聞いてもらって当たり前。と思っているらしい。だから自分より年下に見えるユーリが気に食わないようだ。今はまだ、俺がユーリの兄だと思っているのか、それほど風当たりは強くはないが、他人同士だとばれたらどうなるんだ?!
まぁ、そんな事は追々考えればいいが(考えたくもないが…)、ユーリの事だからどうにかしちゃうんだろうな。(苦笑)
ユーリじゃないけど、面倒くさい事を考えるのはよそう。起こってもいない事を考えるなんて、今の俺にはそんな余裕はないからな。
今目の前で起こっている事に全力で立ち向かうしかないんだ。俺は1人じゃない。ユーリと言う仲間がいる。ユーリを守るためにも俺は強くならなきゃいけないんだ。いつまでも守ってもらう立場じゃ男として情けないもんな…。
さぁ~て!俺は強くなるぞ!!(精神的に!)
― 9話完
ありがとうございました。
これにて ビヨンド・ザ・ドリーム グリーン大陸編を終わらせていただきます。<m(__)m>
ローレライ編は、また別の章になりますので、そのうち載せようかなと思います。
長い間お待たせいたしました
途中でネタが尽き、暫く執筆から離れておりました
またボチボチとのんびり書いていこうかと思います
ビヨンド・ザ・ドリーム ローレライ編 始まります!
船に乗って三日目。遠くにローレライ大陸の山が見えてきた。まだテレポートスキルが使えない頃に、何度となく船に乗ってやって来た大陸だ。その頃は、船に乗っても15分で着いていたと言うのに、今となっては三日もかかるとは…、船酔いが辛い…。
心配していた魔物との遭遇は、船の用心棒として雇っている元冒険者達が退治してくれたので、乗客には被害が出なかった。魔物より厄介だと言う海賊も、今回は姿を現さずヤレヤレと言ったところだろう。
甲板では、ローレライ大陸を懐かしそうにモリトとユーリが眺めていた。地図上ではグリーン大陸の二倍の大きさはあるが、その半分以上は草木が枯れて焦土化をしている。
高くそびえ立って見えている山々も、茶褐色の色をしており、草木などが生えている様子が見られない。
山のふもとの方に、多少だが緑が見えているのが救いだろうか。それさえ見えなければ、ここはただの廃墟にしか感じられない。
「やっとローレライね」
「あそこの人達も相変わらずなんだろうな…。」
あそこの人達というのはゲーム内のモブ達の事である。
以前はプログラムされた通りの行動で、元気いっぱいに動いていた。だが現実となった今でも相変わらず元気一杯なのだろうと想像したのだ。
穏やかな気質の人が多いグリーンランドとは違い、ローレライの人達はたくましい。
一般人なのか、盗賊や山賊の類なのか分からいような、豪傑な気質の人がほとんどなのだ。
国の半分以上が荒れ地とかし、その土地では食物は育たない。微かに残っている水源の周りに家を建て、小さな村や町が幾つも出来ている。
食物が育たないので輸入をするしかないのだが、それをするにもお金や物が必要となる。人々は危険と知りつつも、マナを取りに鉱山へと入るのだ。
マナとは、鉱物・鉱質・宝石の原石の様な物だが、その用途としては多種多様である。石炭の様に燃える石があれば光を放つ石もある。この光を放つ石は、人々の暮らしには無くてはならない物だ。部屋の明かりや街灯等に使われているからだ。
ゲルゲンやアマンダ、ミスリルなどと言う原石は、武器を錬金する時に使われ、それらを使わないで錬金をしたものに比べると、切れ味や刃のもろさが数倍違う。良い物を長く使おうと思うのなら、原石を練り込んで錬金した物の方が良い。当然それらは値段も高いが、それだけの価値もあるというものだ。その鉱石や宝石の原石を輸出をして、日々の糧を得ているのが、このローレライの人達なのであった。
船がローレライのグラ港に着くと、人々と貨物が船から降ろされる。船から降りたモリトは大地を足で踏みしめながら、大きく背伸びをし、深呼吸をした。
「やっと着いたな。船旅がこんなに辛いとは思わなかったよ…。」
少々げんなりした様子で肩をすくめて言う。。
「あら、そう? 私は楽しかったけど?」
船旅というものを初めてしたユーリの方は、楽しくてしょうがなかったようだ。
グラ港に降りた2人は、久しぶりに来た街の様子を見て歩く事にした。
パッと見は以前と変わらないようだったが、雰囲気がどことなく以前と違って見えた。いかつい姿の男ばかりというのは同じだが、前はもっと陽気で楽しい人ばかりだったはずだ。それが今は、陽気に楽しく酒を飲んでる人が半分。ニヤニヤと舐め回すような目つきで見てくる得体の知れない男が半分と言ったところだろう。
後者の男達が気になったユーリは隣を歩くモリトに小声で話しかける。
「あの人達っていったい何者なのかしらね?」
「人相が良くないとこを見ると、どうせ流れ者の元冒険者ってとこじゃないかな」
あまりジロジロ見て因縁を付けられてもたまらないので、さり気なく流し目で雰囲気を探る。
「この大陸に王様がたったって聞いたけど、兵士とかはいないのかしら?」
「それらしい姿のやつは見えないよな」
そんな話をしながら道を歩いていると、前の方からより一層人相の悪そうな集団が歩いて来た。
見た目は思いっきり山賊風だ。
その集団はガハハと下品な笑いをしながら一件の酒場に入った。気になったモリト達はその後を付けてみる。
酒場に入った男達は、先に店で飲んでいた客の椅子を蹴り倒すと、その人達をそこからどかせて自分達が座り込んだ。蹴り倒された方の客は、ペコペコしながら他の空いてる席へと移っていった。
男達はどかせた席に意気揚々と座り、偉そうな物言いで酒を注文した。
「酒だ!酒!あと食いもんも適当に持ってこい!」
店の亭主はオドオドしながら男たちの言う通りに酒と食い物を運んできた。
モリトとユーリも空いてる席へと座り食事をとる事にする。亭主が注文を取りに来た時に、モリトが男達の事をさり気なく聞いてみた。
「あの人達は一体どういう人達なんですか?」
「なんだい。兄ちゃん、ここの人じゃないのかい?」
店主は少し驚いて問いかける。
「はい。さっきグリーン大陸から着いたばかりです」
「そうかい。悪い事は言わねぇ。あいつ等に関わっちゃいけねぇよ」
「それはどう言う意味です?」
「あいつ等は、自称警備隊だ。警備隊と言っても正式なもんじゃねぇ。あいつ等の親玉は山賊の頭だってぇ噂だ。やりたい放題さ…。」
「王様は何をしてるんですか? ああいうのを野放しにしてるのっておかしくないですか?」
こういう街の問題は国に報告をして、王様や統治者に何とか改善して貰うのが慣例だと思う。それをどうしてしないのかと尋ねると。
「王様って言ったってよ、数カ月で交代してるんだ。王都なんてもっと酷いもんさ。ここの方がまだましだよ」
亭主の話しによれば、この一年間で王様が3回変わっているそうだ。自分が王座に相応しい人物だと言い、腕に自信のある者がその座をかけて争っているそうだ。この国では、王族の血統ではなく、現王様を倒した者が新しい王様になれるしきたりらしい。そんなしきたりなど初めて聞いた。
俺が知っている限りでは、この大陸に王はいなかった。王様がいない代わりに、各集落ではその長が民をまとめていて、貧しいながらも安定をした生活を送っていたはずだった。ところが今は、この大陸にも王が必要だと言いだした奴がいて、ローレライに居た元貴族の子孫をそそのかし、この大陸で王位につかせたらしい。
しかし、勝手に王を決められた事に納得をしない者達が、我こそが王に相応しいと、仲間を集い襲撃し、次々にやって来るそうだ。
その中には元貴族もいれば盗賊の類もいた。腕に自信のある者達は、少しでも良い暮らしをしようと王座を狙いにやって来る。そして今、王座に付いているのが山賊の親玉らしいと言う話しだ。
と言う事は、マナを取りに鉱山へ行けば魔物に襲われ、町ではならず者たちに襲われる。と言う事か…。これじゃ安心して暮らせないよな。どうにかならないんだろうか・・・。
「なぁユーリ。王都に行ってみないか?」
「なに?王様にでもなりたいの?」
王様になりたいとかそんな事は考えてはいなかったが、『なぜ、王様が出てくる?』と言う思いから
「ちっ、違うって! そうじゃなくてだな、さっきここの亭主も言ってただろ? 王都はここ以上に荒れてるってさ。だから自分の目で確かめに行きたいんだよ」
「うん。いいわよ。行きましょう。確か王都って隣の国だって言ってたものね」
俺達は食事を済ませるとすぐさま王都に向かって出発をする事にした。
俺達の食事が終わるころ、いつから飲んでいたのか、かなり酒を飲んで出来上がっていた男達がいた。
そいつらは散々飲み食いをしたあげくに、金も払わず店を出て行ってしまった。
「食い逃げか?」
俺はそう思い、飲み屋の亭主に尋ねた。
「ああ。いつもの事だよ。あいつらはいつもそうさ。金も払わず飲み食いしてくんだ。
俺の店だけじゃないぜ。どの店でもそうだ」
「なぜ金を払うように言わないんだ?」
「言った奴もいたさ。その後そいつは死んだがな」
たてつく者は殺す…って事か。警備隊なんてもんじゃない。時代劇でよく見る悪徳商人が雇ってる、用心棒と言う名前のチンピラじゃないか!まぁ、親玉が山賊じゃ当たり前なのかもしれないな。
ならどうして他の人が王座について、国を変えようとは思わないのだろうか。ああ、そうか。だから一年で三人も王様が変わったのか。それにしても、もう少しましなやつはいなかったのか?!これなら俺が王様になった方がマシじゃないか・・・。
俺はこの国の王について聞いてみた。
「王様ってどんな人なんです?」
「噂じゃ、かなりの高レベルなアサシンって話だ。闇の力が使えるくらいのな。
税収や賄賂をくれるやつには何もしないし、好き勝手にやらせてる。
だがな、高額な税金を払えないやつは酷い目にあってるらしいぜ。」
「酷い目?」
「そうさ。俺の知り合いで、年老いた両親を殺されたあげくに、子供をさらっていかれたんだが、王はどうもコッチ系らしい」
と言いながら、右手を左側の頬にあてて「オホホホ」的なポーズを取って見せる。直訳すると『オカマ』である。
『マジか・・・。』と、モリトはげんなりとした顔をした。
「さらっていくのは男のガキだけとは限らん。可愛ければ女のガキも連れて行くそうだ。
そのネーチャンみたいなのをな」
亭主はガハハハと笑いながら話していたが、モリトにしてみれば笑い事ではない。もしもユーリがさらわれたとしたら、さらった相手が無事なわけが無いからだ。下手をすれば城ごと吹っ飛ばすかもしれない。危険だ。
悪人がやられるのはまだいいが、無理やり連れて来られて働かされている人まで巻き添えにしてしまう可能性も、ユーリなら大いに考えられる。それだけは避けたい。
「ユーリ。ひとつだけ言っとく。知らない人には絶対に付いて行くなよ!」
「・・・・・。何よ急に・・・。子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。もぅ。」
まだ不安要素は残ってはいるが、とりあえずはこの店を出て、王都があるアルムに行く事にしたのだった。
>>スカイさん
応援有難う御座います
誰かが読んでくれてると思うと嬉しいものですねw
スクロールの都合上、文章が短くなったり長くなったりしますが、大目に見て下さい(≡人≡;)スィマセン…
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