俺が貴様を護るのは陛下からの命が有ったからだ。
其処に恋愛感情と云うふざけた物は存在し得ない。
――自惚れるな。
とある裕福で幸福な王国を治めていた国王が突然病床に伏した。
完治不可能な難病を身に患わせたらしかった。
国王は己の残りの人生はもうそう長くないと悟り――用心棒の一人の男を呼び出した。
『 ..此れが、私からの最後の願いだ。
我が息子は四つ…頼りない程に子供だ。当然の事ながら其の子供に国は治められぬ。其れに――私自身、息子に私と同じ道を歩んで欲しくはない。
身勝手な願いだと解っている。だが、どうか頼む。私が死んだ後の国王は目処が付いている。信頼出来る者故に我が国は滅ばぬ。
だから―― 』
国王は弱々しく用心棒の手を両手で包む。
『 息子を此の国から連れ出し、世界を見せてやって欲しい。
美醜両方の物を目にさせて欲しい。
そして――其の間、息子を様々な危険から守護してやってくれんか。
…息子を愛してやれなかった、私の代わりにどうか――頼む。 』
用心棒は国王の冷たい手を握り返し、頷いた。
「 ..承知致しました。其の命、此の私が必ずや護り通します。 」
国王は其の言葉を聞き、安心した様に微笑むのだった。
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