匿名さん 2015-09-26 20:27:02 |
通報 |
…それは買い被り過ぎだよ。君にしか出来ない事や、君にあって僕には無いものだってきっと沢山ある。
(ソファーに腰を下ろして足を軽く揺らしながら待ちつつ、思い当たる節が幾つかあり言い返す言葉もないと思わず口を閉ざして。続けられた何処か弱気なその発言に何とも言えないような顔をすれば、ゆるゆると左右に首を振り。相手に視線を向けながら「勿論、その逆もあるだろうけどね」と当たり障りなく述べて)
……お前の世話焼いてやれんのは俺だけだと思ってたけど、そっちは思い違いだったみてえだ。嬉しいことだけどな。
(コーヒーをいれたドリッパーをサーバーにセットし、まず少量のお湯を注ぎながら出会ったばかりの頃を思い返す。師匠を失った代わりに得た相棒は、まるで初めて鳥かごから出された鳥のようで、彼には自分しかいないのだと強く感じたものだった。蒸らしを終えまた少しずつポットを傾けては、くすぐったそうに笑って肩を竦め。)
世話を、焼く…。
(いまいちピンと来ていない様子で復唱するようにポツリと呟いては、暫し考えるような素振りを見せて顔を俯かせながらも。言い方は違えど同じ意味を持つのでは、と何処か閃いたようなな顔をして「僕に足りない部分を、いつの間にか翔太郎が埋めてくれていたのか…」と誰に言うわけでもなく一人納得したように述べて何度か頷き)
だからお前の表現はいちいちくせえんだよ!
(ひとりごとのようなものであることはわかっていたものの、あまりのむずがゆさに大袈裟に震えてポットを置く。冷静な顔で芝居がかった台詞を吐くのはハードボイルドだと言えなくもないが、何気ない日常のなかでそんな言葉選びをされるとこっちが照れてしまう。「だー」だの「うー」という言葉にならない声をあげつつカップにコーヒーを注ぎ、「さっさと飲め」とそれをカウンターに下ろして。)
…あぁ、そうさせてもらうよ。
(また知らぬ間に要らぬ事を言ってしまったのだろうかと、思考を巡らせていたものの全く心当たりがなく。さほど気にはせず相手へと視線を戻していけば、よく分からない言葉を発している様を不思議に思いつつ。カウンターへと足を運んでカップを両手で持ち上げながら香ばしい香りに「うん、良い香りだ…」と目を細め)
心の余裕ってのはいい暮らしから生まれるもんだ。コーヒーが美味くて、空がきれいで、――…気の置けない相棒と、のんびり過ごせる。これに勝るもんがあるか。
(顔をほころばせる相手を横目に、窓から風都の空を見上げてカップを口へ運び。余裕とはいささか遠い位置にいる今の自分に言い聞かせるかのように口を開くと、今まさに味わっている幸せをあげ連ねてゆき、最後に躊躇いがちな視線とともに相手を見遣って笑い。)
─…そうか。翔太郎、漸く分かった気がするよ。気に入るという事が…。
(独り言のような語り掛けているような言葉に耳を傾けながら、カップを口元へと運んで一口口にすれば。ふと何か思い出したような顔をして小さく口を開き、カップを一度置いて相手をちらりと見て「君とこうして過ごす時間を心地好く感じていたのは、まさにそれだ。何故なら…僕はこの時間の流れを好んでいるからね」と何処も得意気に述べては、つられるように柔らかい笑みを浮かべて再びカップを口元に運び)
…何たって、おやっさんから引き継いで俺が完成させた俺の城なんだからな。流れる時間も特別に決まってるさ。
(二口めのコーヒーを飲み下せば、カップを持ってラウンジチェアーまで戻っていきながら冗談めいてけろりとのたまい。事務所の一番奥に存するそれは玉座のようなものであり、インテリアから小物までこだわりぬいたこの部屋が一番よく見える場所とも言える。カウンターとカフェテーブルの間をすり抜け、椅子に腰を下ろす前に机にカップを置いて。)
鳴海壮吉のようなハードボイルドには、まるで程遠いようだけどね…。
(相手の口から出た一つのワードにかつて己を救い出してくれた張本人であり、失ってしまった彼を脳裏思い浮かべて代償は大きかったものの。引き換えに得たものは何よりもかけがえのないものだと、穏やかな表情を浮かべつつひっそりと内に秘めては「…まぁ、君には半熟卵の方がきっとお似合いさ」と意地悪く述べて)
まーたお前…。
(歯に衣着せぬ物言いにがくりとうなだれた勢いで椅子に腰を下ろし、何も言い返せない悔しさを晴らすためなのか、足元の床を蹴り椅子ごとぐるぐる回転して。しかしむなしさは加速するばかりで、今一度机に向き合えば背中を丸めその表面に片頬をくっつける。「……亜樹子、どこまで昼飯買いに行ってんだか」気だるい午後の空気に身を任せつつ、少し重いまぶたを持ち上げ低い声で呟いて。)
そういえば、まだ帰っていないようだね。
(カップの珈琲をゆっくりと飲み干していきながら、相手の幼さを感じる様にやはり彼がハードボイルドになれる日は暫く来ないだろうと。その様子を楽しむように眺めては今更ながら常に賑やかな彼女の事を思い出し、どうりで嫌気のない静けさだったと一人納得すれば「いくら彼女でも、迷子にはなっていないと思うけど…」とあり得そうで有り得ないような事を口にして)
そういや一人で動きまくるから忘れちまってたけど、アイツ風都に来てまだ日が浅いんだったか。ちょうちょでも追っかけておかしなところに入り込んでたりしてな。
(そういえば、と机に体を伏せたまま顔だけ上げて話しだし、横着してその体勢でコーヒーを啜る。父親を追いかけて風都にやってきた彼女だが、人一倍以上の根性で邁進しまくる様を見せられ続けた結果、そんな心配は頭の片隅に追いやられてしまった。日頃から揶揄している彼女の幼さを話題にし、おかしそうに笑って。)
トピック検索 |