Russian Blue 2015-08-18 22:00:45 |
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ん、早いじゃん…、ありがと。…てか、俺のイメージが可愛いとか…頭ん中どうなってんの?。…俺からしてみればセっちゃんの方が断然可愛いんけど、
( 部屋へと到着するや否か.宣言通り手際良く己の為にと服を選ぶ相手の横顔を眺めていれば、世話好きとは言え此処まで己の事を考えてくれている相手の言動に嬉しさから砕けた笑みを浮かべ。手渡された衣服を胸に抱えその笑みのまま礼こそ口にするものの.やはり何処か照れ臭いのだろう、此処まで思考を巡らす相手から出た言葉に軽く食いつくもやはり緩んだ心情から本心まで零してしまい。だがそんな事に恥じらいも然程感じないのが己と言うもので、何事も無かったかの様にその衣服等を近くの棚の上へとおけば.着替えるべく着用しているスウェットを脱いで行き。_恋人で有ろうなかろう身の危険、と言う様な物を感じる事に疎いのか、着替える事さえ睡魔と重なり面倒事だと本能的に感じれば下着姿のまま.当然と言わんばかりに相手にとただをこね、)
…てか無理、力入んない…。着替えるの手伝ってー…、
…はぁ?くまくんとかさくんはユニットの中でもそういう感じでしょお?まあ王さまは微妙なところだけど…とにかく、普段あれだけファンの母性本能がんがんに煽っといて何言ってるのって感じなんだけどぉ。
(可愛いなどと言われるより綺麗と称賛される方が好む質ではあるものの相手に言われるのはまた別で、思わず胸に感じる温かさに感化され嬉しさを出してしまうのをす寸前のところで留めると少しだけにやけそうになった口元を誤魔化すように呆れたような声を漏らしてみて。一年生な上ファンを「お姉様」などと呼ぶ後輩は勿論のこと普段から甘えた態度を見せる相手も言ってみればユニットにとっての可愛さ要員、そう勝手にカテゴライズさせていたからこそ半ば本音の言葉で応戦するとそうしている間にも自分の服も決めてしまい。早速着替えをと思いスウェットの裾に手を掛けた途端背後から聞こえた駄々っ子のような甘えた言葉、怠惰な性格こそ嫌えども庇護欲をそそられるような状況にはめっぽう弱く、うっかり絆されそうになる自分自身を引き留めながら相手に背を向けたままでいれば今日のコーディネートらしい柔らかな素材のシャツを堪える様に胸元で握りしめて。)
ッ何甘えてんの、さっさと着替えてよねぇ。くまくんはゆうくんと違って"弟"じゃないんだから、お兄ちゃんが手伝わなくたってひとりで出来るでしょお?
…、それと此れは違うって言うかさぁ…、スーちゃんはアレ.完全に素じゃん。…まぁ俺も素だけど…、見かけだけ、って言うか油断して噛み付かれても知らないよー…って一番身に染みてるの誰かなぁ?
( 幾ら褒め言葉とは言え、仮にも男である上性からか綺麗さを求む彼としては可愛い等と称されるのが気に食わなかったのか、正論通りの反論言葉に思わず返す言葉も詰まりかければ一度口をくと結び。それでも己から見える彼の愛らしさや可愛らしさは否定出来ないのか、相手をそう称する言葉は伝えずとも愚痴愚痴と反論にもならない反論を口にしていき。それとは別に己自身可愛い等と称される事には特に嫌な気もする訳が無く、ファン前ではこの堕落した素性も可愛らしく見えてしまうらしい好都合な状況を幾度か目の当たりにしては己のあざとさなる物も当然理解している訳で。むうと膨れ半分に伴い隠された獰猛な己の素性を仄めかした揶揄いを掛けようとするも、聞こえてきたのは己の自然と反発的に感じていた"弟"と言うワードで。肯定どころかその言葉を否定するその現状に先程までの不満が嘘かのように晴れれば、珍しく調子を乱された様に頬を赤く染め。そんな様子から己の負けを認めれば棚へと載せていた衣服を手に取り、幸い相手が背を向けていた為.この状況を好都合と思えばやんわりと染まった頬を隠す様にいそいそと着替えを進め、)
…何て。"お兄ちゃん"でも無いセっちゃんだよね。はぁ…良いよ、もう…俺の負け。大人しく着替えまーす…っと、
…くまくんが急かしたんだから、とっとと着替えちゃってよねぇ。
(身に染みて、という言葉通り意識こそない間に施されたにしてもしっかりと刻み込まれた首筋の歯型を思い出し思わずその個所を庇うように手で覆うと勢いよく後ろを振り返って。流石にここまで振り回されるのは好き嫌いという問題ではなく性格的に腑に落ちなくて一言文句をとそちらを見た途端目に入った相手の薄く色づいた頬に思わず不満の声を上げることも忘れ気付かれないうちに再び相手に背を向けて。てっきり此方ばかり相手に振り回されていたと思っていたのに恐らく先程自分が零した言葉に赤面する相手を見てしまった以上それは勝手な誤解だったと認めざるを得なくて、目にした光景に思わず緩く口元に笑みを浮かべながら先程までより随分と柔らかくなった声色で相手の着替えを促すと自分も着替えに取り掛かり。グレーのチェスターコートに似合うようなしっかりとしつつも固くなり過ぎないシャツスタイル、自分の魅力を理解して着こなすコーディネートに身を包むと先程の発見から少々だらしなく緩んでしまった表情を相手に見られないうちに洗面所へと逃げて。)
ッじゃあ俺先に洗面所使うから!見張られてないからってベッドに戻ったりしないでよねぇ?
んー…、?…って…別に寝ないけど、。…何あれ、
( てっきりまた何時ものように顔を染め反論の意を唱えてくるだろう相手を想像していた為か、着替え作業に同系色のバイカラーニットから顔を出せば反論無しの相手を不思議と伺い。背を向けたままの彼からは此方の失態とも言える恥じらい姿等見られていないはず、完全に己思考を信じきっている為に益々この状況が読めずに居て。幾ら此方が余裕満載己のペースに持ち込むのが上手いとしても逆にと言えば持ち込まれればどうか、中々引き摺りがちな面もある為深く付け込まれなかったのは幸いなのだろう。何を動揺しているのか一度も此方を振り向かず逃げる様にその場を去る相手を訝しげに思うも、此方としては今一人となる時間に安堵を覚えていて。注意を受けたにも関わらず空となった布団へとぽふり身を投げれば一度深く息を吐き、眠気こそまだ残っては居るも此処は起きておくべきと本能が囁いたのか、また長々と掛かるで有ろう相手の支度を待ち、)
――…ちょっとぉ、やっぱり寝てるじゃん。今から出かけるのに服にしわ付けないでよねぇ。
(相手の紅潮した顔を結果的に盗み見てしまったことに対する優越感と安心感のようなものが混じり合った不思議な感覚が顔をどうにも締まりのないものに変えてしまい、洗面所につくなりそんなだらしのない自分に喝を入れる様にぱしゃぱしゃと水で顔を洗い。冷たい水で顔を洗ったことで大分気持ちも落ち着いたようで、ついでに寝ぐせがないか最終チェックをしてから部屋に戻ると案の定布団に伏せてしまっている相手が真っ先に目に入り。待たせてしまった自分も悪いとは思うがその姿に流石にため息を漏らすと体重を掛けないように寝ころんだ相手の胴体にぎゅむ、と足を乗せ呆れたような声を上げながら相手を見下ろして。自分が出て行っていた間に相手の頬の赤みも何だか収まってしまったようで、それが少し残念な気もするがこれ以上だらしなく表情が緩んでしまうこともないだろうという安堵で締めると相手に乗せていた足を下ろしてから両手を差し出して。)
…ほぉら、起きて。今日はくまくんに最っ高に似合う服見つけるまで家に帰さないからねぇ?
…んぐう、…寝てないってばー…。…っよい、しょ…、別に俺は帰んなくても良いけどねぇ、…兄者煩いし、
( どれ程時間が経っただろうか、空白の時間を過ごすのも全く苦では無い為かぼんやりと布団の端を手先で弄り過ごして居れば頬の赤みも大分落ち着いてきた様で。その安堵からかふと瞼を閉じた所で丁度.待っていた相手の呆れ声が聞こえ、其方の方向へと顔を向けようとすれば突如腹部辺りに重みこそ無いものの違和感を感じ。此方を起こす手段と言え踏まれて居る.等余りよろしくは思わないのか、反射的に呻き声を上げれば元々睡魔に等負けていなかったとも言いたげに不満声で相手を柔く睨み。それでも本心からの悪意では更々ない為か、差し出された両手を何言う無く掴み体制を起こせばふるふると数度頭を振り。余程楽しみなのだろう、己を起こす脅し文句とは言え家にまで帰さないと口にする相手を微笑ましく等思って仕舞えば、口元に笑みを描きその意見に乗るかの様に半信半疑な言葉を返し。_それと共に相手の背をとんと押せば玄関口へと向かい、)
…ん、早く行かないと店とか混むんじゃない…?、良く分かんないけどさ、…、
言われなくとも急ぎますぅ。まあ、まずはあそこの店覗いてー、次はあそこで…――。
(相手に背を押されながら行く玄関までの道のりすら既に気持ちをわくわくと高まらせ、口でこそいつもの様な嫌味っぽさを滲ませた言葉を返すものの、隠し切れなかった弾む想いが漏れ出したようにこれから回る店のルートを確認しながら鼻歌交じりに呟いて。家を出てきちんと施錠を確認してからマンションのエレベーターを降りていき、エントランスにたどり着いたところで一度立ち止まり。本来ならば昨日の帰りのようにバイクを飛ばせば一番なのだろうが、相手とのデートという目的が前提にある以上それもなんだか味気なくて、ちらりと背後の相手の方に視線を向けてから暫し考えるような沈黙を挟むと僅かに相手との距離を詰め。少しだけ躊躇いがちながら相手の方に手を伸ばし、そっと相手の人差し指に自分の人差し指をきゅっと絡めると視線を逸らしたまま小さく言葉を紡ぎ始めて。)
…バイク、昨日のでガソリンなくなったかも。…だから、さぁ…そんなに距離ないし、俺は歩いて行ってもいいと思ってるんだけ、ど…。
…、…へぇ、そうなの?、。…まぁ、どうせ忌々しい日の光は浴びなきゃだし、…醍醐味ってヤツだもんねぇ、
( 嫌味こそまた口には出すものの根っからの本心では無いのだろう、これから先の予定を明らかに楽しみ.と言わんばかりに口にする相手は何処か幼くも見え、同い年な上学年も一つ上である彼のそんな姿が珍しくも有るのかくつくつと笑みを零せば直ぐ後ろを付いて歩き。広けたエントランスへと到着すれば何を思ったのか、周りに人影の無いのを確認してか距離を詰め寄りぎこちなく手先を絡められ。突如の行動にまだ上手く回っていない思考でぼんやりとその指先を眺めて居れば、漸くと提案と共に相手の意図が読め。バイクなる乗り物の事こそ良く知らない身では有るものの几帳面な相手の事、行き帰り程のガソリンの準備など怠るとは考え難く.この提案こそまた相手なりの甘えと受け止めればそのいじらしさににこにこと妖しげに笑みを浮かべて。遠慮がちに絡まれた手先を一度離し.所謂"恋人繋ぎ"なる様指を絡めてはぴたりと互いの肩をくっつけ、)
…ふふ、こんな外で大胆な事したいとか、セっちゃんも欲張りだねぇ…、誰かに見られる前には離すから。…それまでコレで文句は無いでしょ?、
…誰かに見られそうになるまでは、勝手に離しちゃだめだから。
(甘え過ぎてはいないか、相手にとって苦しいと感じる束縛になってしまってはいないか、出来るだけ負担になってしまわないようにそっと伸ばした指が離れたことに一瞬体が強張るもののすぐに絡み直された指先に静かに息を漏らして。相手に受け入れてもらえたことが心の底から嬉しくて、じんわりと頬に赤みと熱を灯しながら安心したように表情を緩めると絡んだ指に力を込めて。きゅっと強すぎないくらいに手を繋いでから甘えを許されたことが余程嬉しかったのかそんな嬉々とした色を消しきれずいつもの小奇麗に整えた表情とは違うものの柔らかく温かみを感じる笑みで繋がれた指に視線を落とすと、小さな声で言葉を続け。それから漸くエントランスから足を進め、アイドルという立場を考えてか相手となるべく長く手を繋いでいたいからか、わざと人通りの少ない道を選んで入っていくと時折視線を繋いだ手元に向け、目元を緩ませて。)
ほーい、…って、何その顔。…_気持ち悪ーい、…
( 己の記憶こそ曖昧では有るものの.今朝寝起き一番に見せた己の軽い嫌悪を恐れていたようにも見えた相手、普段強気で弱味を見せないにも内心は案外不安がりなのかも知れない、そんな推測を裏付ける様に発せられた言葉に自然な返事を返しては此方も少々強く手を握り返し。人気の無い道程を進む中、日々物事に無関心な己で有れこの状況は嬉しくも愉しくも感じるのか.何時もは再起不能となっている昼間にも関わらず軽い足取りで歩みを進め。それは相手も同じ_と言うよりそれ以上か、何時もの取り繕った様な表情とは一変.完全に緩んだ笑みを浮かべる様子に思わず胸が高鳴るのを感じ。また先程の様に調子を崩されては不都合と思った為か.気持ち悪いなど心にもない言葉を投げかけては一度じとりとした視線を向け。_其れでも本心から湧く言葉に嘘はつけないのか、一気に距離を縮め相手の耳元へと口寄せれば[嘘、。可愛い、]、囁いた後ゆっくりと身を離し.満足気ににんまりと笑みを浮かべ、)
ッ、…くまくんのそういうとこ、ほんっと嫌ぁい。
(相手に対して自分が先手を打てている自覚がない以上時折行使される相手の意地悪の理由が分かっておらず、だからこそそれを完全に相手の性質だからだと認識していて、漸く手を繋ぐことが出来たと思っていた最中ふと気が緩んでいた瞬間に放たれた"気持ち悪い"の一言に思わず表情が固まり。じとりとした相手の視線も口にされた言葉もまるで遊木の嫌悪の念を彷彿とさせるもの、弟として執着する彼にそんな視線を浴びせられるのはまだ過去の自分の行いも相まって諦めがつく問題なのだが好き慕う相手に同じ視線を向けられて平然としていられるほど強靭な精神など持ち合わせていなくて。きりきりと締め付けられるような胸の痛みと共に弁解でも謝罪でも、何か話さなければと息を漏らした時一気に耳元に唇を寄せた相手に過敏なほど肩を震わせながら僅かに身を縮めるも口にされた言葉は先程とは真逆のもので。完全に相手に振り回され一瞬ぽかんと呆けた表情を浮かべた後、じわじわと傷心を堪えるようなしかめっ面に変わっていくと握った相手の手の甲に爪が食い込んでしまうほどきつく手を握りしめながら呻くような低い声で言葉を漏らして。)
んー…嫌い?何…でっ痛い痛い痛い…!、あ、やまるから…、…!
( 一瞬ばかり見せた相手の固まった表情や言動から先程の相手の性質の推測に確信を持てば、今後の先手打ちの悪戯もどう変えていこうか等己なりに配慮の意思を巡らせていれば突如手の甲辺りから鋭い痛みが走り。しかめっ面に呻き声、流石に此方がやり過ぎた真似をしたのかと反省の色を見せる間も無くきりきりと痛みが伝われば流石の己も声を上げざるを得ず。痛みを訴えるかの様に爪を立てる相手の手の甲をぺちぺちと叩くと同時に昼間っからのこの気持ちの上がり方には負担が有るのか、何処か懇願する様に大人しく謝罪の言葉を述べれば相手を最も簡単に落とせる最終手段を行使し。_最終手段と言っても唯の甘えっ面を見せるだけのものなのだが、昨晩同じ布団へと誘いこむ事に成功した事例がある為に自信は有り。痛みに潤んだ瞳を揺らしつつそんな余裕など無いのだが無理に空いた片手で相手の服袖をくいと引っ張ってはこてんと首を傾げてみせ、)
…セっちゃ、…痛ぁい、。
…もういいよ、行こ。あんまり遅くなるとまぁたくまくん泊めなきゃいけなくなっちゃいそうだしぃ?
(相手にとっての自分は、自分にとっての相手と同じ認識でいるのだろうか。好きとはいってもそこに込められる意味は様々で、重く苦しい自分の恋心と違い相手の言う好きはもしかしたら本当にその場だけのすぐに飽きてしまうようなものなのではないか。一度煽られた不安はじわじわと胸の中に広がっていき鋭い痛みと共に喉までせり上がってくるような苦しさを訴えてきて、唇を噛み締めたまま僅かに視線を落としていればそんな最中に相手の悲鳴が耳に届き。可愛らしく自分に謝り解放を求める相手、いつもならきゅんと胸にくる様な光景なのに沈んだ想いの中には到底響いて来ず、ただ相手の訴えだけは聞く気になったのかするりとそのまま相手の掌を離すと先程まで握っていた手をひらりと翳しながら相手に背を向けて。急がなければ、なんて尤もらしい理由を口にすることでこの子供のように拗ねる自らの醜い部分を隠すと先程よりやや速めた歩みで先を急ぎ。)
…、?…ッ、__待って!
( 何時もの彼ならきっとまた直ぐに表情緩め妥協してくれるはず、暫し見せた相手の苦し紛れな表情も気になりはするもコレで如何にか変えられると確信は持っていて。_だが返って来たのは惚気た声でも言葉でも無く。加えて痛みとはまた別の刺激.相手の体温を感じなくなった手先から暫く時が止まった様に全身が強張ってしまい、行き過ぎた揶揄いは後に自分も相手も傷つける事等何度か経験をしているにも関わらず脳内は学習をしない様で。相手の考えている事がちっとも分からない_疑問符を頭に浮かべていればいつの間にか足を進められていて。手を引かれていない為に相手との距離が開いていくと、やはり如何しても避けられない恐怖が込み上げてきてしまい。目の前を行く相手の背中が歪む中、まるで自分の声とは思えない程強く相手を引き貯める為に言葉を発せば苦し足取りに追い掛け、外だというのも何も気にせずその背を背後から抱き締めれば自分らしくもなく細々と言葉を紡ぎ。)
__ごめ、…ん。ごめん…ッ不安にさせた、また。俺またセっちん不安にさせたでしょ、…ねえ。
…別に、くまくんが心配することじゃないでしょお。くまくんが一人になりたくないなら"つなぎ"でも何でも傍に居てあげるし、俺はくまくんが居てくれるならその間は勝手に楽しんでるから。
(相手の好きはきっと一人になりたくないから、過去の辛い思い出から匿ってくれるような相手が欲しいから発せられるもので、言葉では違うと言っていても衣更に向けていた執着と自分に向けた好きには恐らく大した差などないのだろう。もしかしたらユニットで一番傍にいたからそう錯覚しているだけで、仮に他のメンバーが自分の位置にいたらその相手と付き合っていたのではないだろうか。相手の性質と不安を理解し、自分の中に好かれる要素を見いだせないがために陥っていく暗い想像は留まることを知らず、折角のデートだったはずなのに気が付けばこんなにも仄暗い想いでいっぱいになってしまった自分自身に嫌悪の感情を抱いて。そうやって自分に抱き付く背後の相手をまた不安にさせてしまったこともまた自分の落ち度であり、愛しい相手に不安を抱かせてしまったことにより何かを吹っ切ったように息を深く吐くと回された相手の腕をそっと解いて。仄暗い想像から出た結論、いずれは離れていくであろう相手に深く執心することの無意味さを自分の中で確立させれば遊木の時のような、同じ轍を踏んでしまわないようにという無意識の自己防衛からか諦めにも似た色を瞳に宿したまま相手に向き直ると薄く作った笑みを浮かべながら言葉を続けて。)
…心配とか、気遣いとか…くまくんそういう面倒なの苦手でしょ?…そんな余計なもので一緒に居られる時間が短くなるくらいなら、そんなもの要らない。なるべく長く…くまくんが飽きるまで一緒に居てくれれば、それでいいよ。
__ッ、何…言ってるの。それだと俺が単なるお遊びで付き合ってるって言われてる様なもんじゃん…?、_飽きるまで、…とか何でそうなるんだよ。信用されないのは…俺が悪いかも知れないけどさぁ。それでも不安なら不安って言えば良いじゃん!
( 己の抱くこの不安は側から見れば一人を恐怖と変換してしまう、そんな性質として受け止められてしまっているのだろうか。実際一人はとても恐ろしく恐怖を抱く物、だがそれ以上に相手の見えない心情は恐ろしさを引き立てるものであり、抵抗する間も無く腕を離されれば鈍い音が頭に響き。苦しさを隠すのが上手い相手の得意技.貼り付けたような笑み等直視する事が出来ずに居れば視線を一度地面へと落とし。きっと相手はこのデートと言う形を守りたいのだろう、心優しい相手なりの己の気持ちを汲み取り如何にか進行しようとする態度でさえ今は不安を湧き上がさせる要素となってしまい、それに加え流れる様に浴びせられる言い分が一つ一つがナイフの様に突き刺されば次の瞬間有ろう事か相手の胸ぐらを掴んでおり。これだけはしたくなかった、ただ汚い己の我が儘で醜い欲望感情で壊れていく様な姿だけは見せたくなかった、そんな後悔すら跳ね除けるように赤黒い瞳で相手の何処か儚げな水色の瞳を覗き込めば噛み付くように己の不安をぶつけていってしまい、)
__俺はあんたの気持ちが分からないのが一番不安だよ。心配とか気遣いが面倒、って言うけど…そう、だけど。例外が居たって可笑しくない位思えないの。…言って、不安な事今ここで言え…!
…だって、くまくん飽き性な方でしょ。干渉されるのも、面倒くさいのも嫌いでしょ。…不安とか、そういう面倒臭いものの中でも一番厄介なものでしょ。くまくんに嫌われるかもしれないもの、何でわざわざ出さなきゃいけないのさ。
(相手は穏やかと言えば聞こえはいいが言ってしまえば極力荒々しい行動を始めとしたエネルギーの浪費を好まないタイプだと勝手に思っていたからこそ、胸倉を掴むなどという方法で自分を引き留めたことが非常に意外で思わず固まってしまい。ぶつけられる言葉は自分の不安を指摘しているはずなのにどこか相手の不安まで感じ取れるような悲痛な声を聞きながら、心から感情が抜け落ちてしまったかのような呆けた表情で語り出し。好きな相手のことはいくら金をつぎ込もうが目の届くようにして自分の手の中に置いておきたい、遊木にさえ金で雇った監視を付けている自分だからこそ相手のことは隅から隅まで知っているつもりで、面倒事を嫌う相手が彼の言う"例外"であるはずがないと心の底から信じ切ってしまっているのか相手のように不安に心を震わす事もなく淡々と当然のことのように告げ。胸倉を掴む相手の手をそっと包むように片手を添えながら相手の深い血色の瞳を見つめ返せば僅かに口角を上げ、薄い笑みを浮かべたまま静かに言葉を続けるとそっと瞳を伏せて。)
…俺はお兄ちゃんだから、平気なの。大好きな子には世話を焼いて、不安な時はずっと一緒に居てあげて、悪いものから守ってあげられる。けど、くまくんは違うでしょ?くまくんは、あの優しくて綺麗で、他人のために馬鹿みたいに一生懸命尽くすゆうくんですら耐えきれなかった俺の"重さ"を支えられるほど強くない。――…俺はくまくんの言う"例外"だったとしても、くまくんはそうじゃないんだよ。
__何であんた何かに決め付けらんなきゃならない訳。何が嫌われるかもしれないの、何が平気なの、…何__ッ!、比較されるまで信用されて無いんだね、…何も行動起こして無い癖に、唯逃げてるだけの癖に、…この根性無し、
( 微かに肌へと伝わっていた周りの空気もすっかり冷え切ってきた物、そんな気温とは裏腹に己自身も感じた事のない熱さが身体を駆け巡れば.普段の自分とは想像もつかない程感情的になっているのが身に染みて良く分かり。こんなにまで狂い掛けた己の姿を見ても尚、己の不安一切見せないどころか.まるで普段とは真逆の様に冷めた表情で淡々と話しを仕出す相手を見れば、感情的となっている今だからか自分へと向けられた嫌悪に似た念さえふつふつと湧いて来てしまい。更に先程述べた"例外"、その言葉を丸切りに否定された瞬間、反射的に添えられた手を振り払い気付けば相手の頬へと平手打ちをかましており。_相手が不安感情を見せないのなら、そんな単なる理由では無いにしろ相手に肉体的な傷を負わせた上に自嘲的な笑みを浮かべればもう狂い掛けていた心も抑える物が無くなってしまい。_嫌われた、そんな言葉が脳内を占めれば最低な行為を行使した本人にも関わらず歪んだ笑みのまま涙で顔を汚し、)
_その顔だって無理して作ってるんじゃないの?、そこまでして醜く取り繕うとすんだったら、こうして自分の欲ぶち撒けた方がよっぽど利口に見えるんだけど。__ッ…馬鹿みたい。あんたの"重さ"より、よっぽど汚いじゃん__俺、
ッ、…――根性なしでいいよ。嫌な所ぶちまけて、逃げられて、嫌われて…ただ、想うことさえ嫌がられるようになるなら、一生知られたくない。弟として好きだったゆうくんに嫌われた時だって、辛くて苦しくて、どうにもならなかったのに…くまくんに、っ初めて心の底から好きになった人にまで、拒絶されたら…ッも、笑える自信ない、よ…っ!
(最後に顔をぶたれたことなんていつだっただろうか、むしろ幼い頃からモデルとして顔を商売道具にしてきた分もしかすると初めての行為だったかもしれない。じんじんと熱を持った様な痛みを訴える頬にすっかり冷たくなった自分の指先を這わせながら目の前で涙する相手を見つめていればとうとう隠し通してきた不安が緩やかに決壊していき。一度慕ってきてくれた遊木に拒絶されてから、好かれる顔だということに自信を持つ反面自らの内面性に酷くコンプレックスを抱くようになってしまった己、嫌われて拒絶されるくらいなら手の内など見せず、いつしか"お兄ちゃん"として常に相手を自分が囲った檻の中で可愛がるような接し方しか出来なくなってしまっていて。今まではそうして一年生の葵ゆうたとも上手くやれていたのに、それが通用しないどころか相手の怒りを煽るものとなってしまったことが自分の中にあった不安を一気に膨らませて、薄く浮かべていた笑顔の仮面すら徐々に悲痛な色を滲ませていく中ぽつぽつと震える声で言葉を漏らすと頬に添えていた指先で自分の口角を笑うために押し上げて。アイスブルーの瞳に張った涙の膜も無理矢理押し上げた笑顔で誤魔化したまま相手を見つめると爪を立てながら自らの胸板に手を当てて。)
――俺は、億の価値がある綺麗な顔で、笑顔さえ浮かべればどんな奴でも惚れ込むくらい、精巧なお人形。それには自信あるよ、けど…いくら万人が俺を綺麗だって言ってくれたって、俺の中身を好きだって言ってくれた人なんか居やしない。くまくんだって、俺が甘えた時呆れてたじゃん。…そんな態度とられて、何で不安を打ち明けられるって思う訳…ッ?
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