死神娘 2015-08-08 13:36:53 |
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失恋延長線
私、朝霧 摩耶アサギリマヤは今日失恋しました。
10分前のお昼休み
『私っ快人のことが好きなのっ。』
『ごめん……、俺彼女いるから。』
『そっか…ごめんね。』
『ん、んじゃまた教室で。』
それが5分前のこと。ふと目で追ってみるとキラキラ笑顔の女の子が居た。あぁあの子が彼女か。快人もキラキラ笑顔を彼女に向けている。
幸せいっぱいのキラキラカップルだ。
あぁ私の入る隙間無いじゃん。
私は凄い喪失感と嫌な気分に教われた。
時は進み5時間目。
そういえば今日転校生が来るらしい。
突然だけど転校生が来る、突然だけど。
まっ私には関係無いことだ。私は窓に顔を向け変わりない景色を眺めていた。
――ガラガラ
「はじめまして、七瀬悠ナナセユウです。よろしく……。」
見たところイケメン分類でしかも優男。また女子達のファンクラブが出来るなーと思ってたら……。
「……。」
なぜだ。異様な視線と近付いてくる足音。
「……何か?」
ぴたりと私の机の前に立つと、突然。
「一目惚れした……付き合って下さい!」
「…………は?」
え?今なんと?私の耳は一目惚れしたから付き合ってって聞こえた。
「駄目かな?」
………ううん。私の耳は悪く無い。今実際うるうるとした目で聞いてくる奴が目の前にいる。
いやー今思ったこと言って良い?
なんで失恋直後(20ぐらい前)に少女漫画的なことが起きるんだよ!!おかしいだろ!!
……こほん。その前に伝えないと。
「ごめんなさい。私は今そんな気分じゃないんだ。」
よし、これで折れるだろう。私が折れたんだ。
「なら、僕頑張るよ!」
は?何を今更を言う?
私は今君を振ったんだぞ?
「僕はしつこいよ。でも頑張って君に振り向いて貰う!」
あぁ私はなんとやっかいな相手に目を付けられました。
『一目惚れしたから付き合って下さい!』
というあの問題発言から一時間後の10分休み。とっても私はイラついている。
「ねぇ、摩耶さん! この学校を案内して下さい!」
「……。」
ちなみに私はガン無視で本を読んでいる。
今日の午後は凄いわ……、失恋して告白されて。あー失恋の悲しみに浸るつもりがこの男に悩まされるとは……とほほ。
「摩耶さん? 摩耶さーーん!」
「……はぁ、分かった分かったから。今日の放課後案内してあげるよ。」
「やったーー。」
こいつ大丈夫か?
放課後
「放課後ですよ摩耶さん! あと好きです、付き合って下さい!」
「そうですね放課後ですねごめんなさい。」
相手からの告白2をさらりと流し校内を案内する。
「ここは音楽室ですか?」
「うん、音楽室だよって何勝手に入ってんの!」
七瀬は勝手に音楽室に入りピアノを手に掛けた。
「良いピアノだね……あっ弾いてもいいかい?」
「あっどうぞ。」
私の許可が出た同時にピアノの音が流れる。
甘く柔らかい音色で聞いていて心地よかった。
「……気に入った?」
「うん、とても良かったよ。ところで何の曲?」
「うーん即興曲だけど……I LOVE YOU.……君の事が好き。」
「無理です。」
こんな調子でなんどもなんども告白をしてくる。今日だけで20回だ。
「摩耶さん摩耶さん! 一緒に帰りましょう!」
「ごめん…無理…かな。」
しゅんとうなだれる七瀬、だけど明日にまた会えると思ったのか元気になり。
「そうですか……ではまた明日!」
「ま……また明日。」
転校生七瀬悠。あいつなんか犬に似てるな……。
わんこ系優男か?
とりあえず今日はあいつのおかげで失恋の痛みのことを忘れてました。
次の日
「摩耶さん! 愛してます!」
「私は愛していません。」
「……うーん壁は分厚く高いなぁ。」
ぶつぶつと何か呟いている。告白を何回もしたって無理なのになんでこんなに言ってくるのか……理解不能だ。
「あ……。」
「よぅ、朝霧。」
「快人君……どうしたの?」
「いや……大丈夫かなって、七瀬の告白に迷惑してるって聞いたから。」
優しいなぁ……快人君。ちなみに快人君の本名は矢崎快人ヤザキカイトと言うんだ。
「うーん、ちょっと迷惑してるけど頑張るよ。」
「そっか、頑張れよ。」
「うん、ありがとう。」
あーやっぱり快人君は優しいですよ。七瀬なんかより断然快人君!
放課後
「摩耶さんは矢崎さんのことが好きなんですか?」
「えっ!」
「とても楽しそうにお話してるので……うらやましいです。私のただの嫉妬ですが……。」
「………………好きだった。」
「だった? ってことはえっと……」
「告白したけど振られたの。」
「諦めたんですか?」
「うん……だってあんな……キラキラ笑顔……ヒック…ヒック……私じゃっなくで……ぐすっ……違う…女の子……ヒック」
わしゃわしゃ、泣いている私の髪を七瀬が撫でてくれた。
「諦めては駄目なんです。だから僕矢崎さんにバスケ勝負を仕掛けます!」
「……は?」
今あいつなんと言った?勝負?あいつが?
快人君はバスケ部のエースでスッゴく上手なのにあいつは勝負を仕掛けると。
「見てて下さい! 絶対惚れさせてみせます!」
「嘘だろ。」
涙もすっかり吹っ飛び今日も濃い1日となりそうです。
体育館
「たのもー! 矢崎さんは居ますか!」
部活中の体育館内。その中を大声で入ってくる七瀬。痛々しいような迷惑そうな視線が七瀬を貫く。
「何? 僕が矢崎だけど……果たし状? ……僕とバスケで勝負する気?」
「はい! 摩耶さんにかっこいい所を見せるんです! 先に点を入れた方が勝ちというルールで良いですか?」
「はぁ。俺何もやるって言ってないけど……いいよやろう。その代わり俺が勝ったらすぐさま出ていけ。皆の邪魔だ。」
「分かりました! よろしくお願いします!」
「ハァハァ始まってる? バスケ勝負とか……快人君に負けるだけだろ。」
どうも摩耶です。七瀬がバスケ勝負だーとか言って体育館に走っていったんで追いかけてきました。
七瀬を止めようしたけど残念ながら遅かったみたいです。
だけど……、
七瀬お前結構うまいな!
快人君と七瀬良い勝負ですよ!
私実況とか出来ないから説明出来ないけどとても良い勝負です。
ですが……。
「おい、七瀬。お前なんでそんなに朝霧を好きなんだ?」
「運命の人だからです!」
迷惑きわまりない言葉を大声で言わないで欲しいです。
「運命の人か……朝霧は迷惑してるのに運命の人とは可哀想だな。まっせいぜい頑張れよっ」
「あぁ!」
快人君が七瀬のボールを奪いそのままシュート。
「ということだ。朝霧ー! 七瀬を頼む。」
「わ、分かった。」
私は落ち込み七瀬を引きずるように体育館を出た。
教室
「……。」
「……大丈夫か?」
今私らは誰も居ない教室にいる。ちなみに七瀬は膝に顔を埋めたまま泣いてるのか何も発しない。
「………………。」
「おーい、なーなーせー?」
「……………………………。」
「………ちっ。」
まるで私がいじめたような雰囲気と何も発しない七瀬にイラついて舌打ちすると七瀬が突然動いた。いや……
"抱きしめられた"
「うわぁっ! ななな何する七瀬ぇ!」
「朝霧さんに良いところを見せたかった。
朝霧さんにかっこいい所を見せたかった。
空振りばかりだけど……朝霧さんに振り向いてほしくて……。」
「な、七瀬?」
ぼろぼろと子供のように泣き出す七瀬。
「でも……格好悪い所ばかりで、それに……朝霧さんに迷惑だけかけてるなんて……
僕、片思い失格です。」
初めて見る七瀬に私はただ見ているだけだった。
「あ……えっと……大丈夫だよ。私の方が片思い失格だよ。だって諦めちゃったんだもん。でも七瀬は私に振られてもガンガン来るし失格じゃない、かっこいいよ。」
「朝霧さん…………あーなんで朝霧さんがかっこいいことを言うのかなー!」
先ほどの泣きっ面からムスッとした表情になりまた髪をぐしゃぐしゃとなでる。
「うわっ! やめろー七瀬ぇ!」
「あはは……はー。ありがとう朝霧さん。僕元気でたよ。」
「良かったな、元気になって。」
ぐしゃぐしゃの髪を整えながら七瀬を見るとキラキラ笑顔で笑っていた。
その後、家に帰ったがまぁ次の日から大変でした。
「朝霧さーん大好きです!」
「私は大嫌い。」
「朝霧さん、愛してます!」
「私は愛してない。」
「朝霧、好きだ。」
「七瀬、無理だ。」
この調子で1ヶ月間続きました。流石に1ヶ月連続はとても辛すぎるので、今日1日ガン無視しましたが……。
「朝霧さーん大好き!」
「……。」
「朝霧さん?」
「……。」
反応の無い私にシュンとうなだれる七瀬に勝った!と思ったが……。
「朝霧さん! 好きです! 愛してます! 付き合って下さい!」
とてつもなくウザいです。しかも気付いてくれるまでずーっと話し掛けてくる鬱陶しさ。
あの時の泣き顔と片思い失格は何だったんだ?
今私が思うことです。
放課後、教室
「おい、朝霧。」
「快人君……どうしたの?」
「俺と付き合え。」
「え……えあ……ん? でも快人君彼女いるっていってたけど?」
「別れた。もう好きじゃないから。」
「嘘……。」
「本当だ。ところで返事は……。」
「よっ宜しくお願いします!」
まさか快人君と付き合えるなんて……今私幸せです。
片思い、実りましたぁ!
次の日
「あっ快人君。」
「摩耶……おはよ、後快人って読んで。」
「あっうん……快人、おはよ。」
「うん、おはよ。」
どうも朝からラブラブの摩耶です!
昨日、片思いが実り付き合うことになったんです!
「朝霧さん……、付き合うことになったんですか。」
「うん快人が告白してくれたんだ。」
「そう……ですか。僕の……負け……ですね。」
「? なんで?」
「片思いは相手が付き合ったらそこで終わりです。でも朝霧さん、それでいいですか?」
「何で?」
「確かに片思いは実りました。でも朝霧さんからの告白からじゃないんでしょう。それに両思いなら朝霧さんが告白した時に付き合ってると思います。」
「…………何なのよ。もしかしたら気が変わったからかもしれないじゃん! 本当に何のよ! 馬鹿七瀬!」
グチグチ言う七瀬に怒鳴りつけてその場から立ち去った。
「片思いの成功は……そんな簡単じゃないです。自分からのが片思いの成功です!」
「快人っ。」
「摩耶……どうした!?」
知らぬ間に泣いていた私に快人が驚いていた。
「あっ……ちょっとね。」
涙を拭き笑顔で大丈夫と言う。
七瀬の言葉に少し傷ついただけ。
だから、私のこの不思議な気持ちはただの気のせいだよね。
「……摩耶。俺がお前を幸せにする。」
嬉しい言葉、安心する快人の腕の中。だから泣いてるんだよね……。私は快人の腕の中で泣き崩れた。
摩耶家
「はぁぁぁぁ……。」
ベッドの上で大きな溜め息をつく。七瀬の言葉
"自分からのが片思いの成功です!"
が引っかかっていた。
「別に自分からじゃなくてもいいじゃん。」
多分私はそんなことに引っかかってるんじゃない。私はあの時振られて喪失感と嫌な気持ちになった。
嫌な気持ち……嫉妬、悲しみ。そして……
振られて全てを諦めた自分。
次の日
「朝霧さん……昨日はすみません。あんな事言って……。」
「大丈夫。」
「僕のただの持論ですので気にしないで下さい。朝霧さんが後悔せず幸せなら僕も幸せです。」
「……ありがと。」
何故かチクリと胸が痛んだ。後悔は……してないはず、でも自分からしたかったって思っている。あー腹立つ!
イライラするし……あーもうどうしたら良いんだよ!
「七瀬! ちょっと来い!」
「え? …うぇぇぇええええ!」
とりあえず片思いに詳しい七瀬に頼るとした。
放課後
「快人。」
「ん、何摩耶。」
「快人は私が好き……なんだよね。」
「あぁ好きだ。だから俺は摩耶と付き合っている。」
「なら…私と別れて。」
「……何故?」
「私の嫌な気持ちを消したいの。だから別れて。」
「わかった。」
「……ありがと。」
理不尽な別れ方だから嫌われたかもしれない。だけど……ちゃんと伝えて付き合いたいの、愛してるって。
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