薬研藤四郎 2015-08-05 13:42:45 |
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寂しい。…そうですね、また巡ってくるというのに。
(相手の言葉を噛んで含むよう反芻しては納得した様子、薄暗い闇の中を飛び回っていた蛍の姿はなくなり、鈴のような音色に耳を傾け。恍けているのか触れられたくない事柄か、考えあぐね目線を外すとゆっくりと首を横に振り)いいえ、ただの気紛れでした。忘れてくださいな。
肉の器は、…人の心は、可笑しなもんだ。それでいて面倒で…愛しい、…はは、変な宗三だ。仕様がねぇから忘れる事にする、(幾度か手を握り開いては其れを月灯に翳してみては寂し気でそれでいて幸せそうな表情うかべ子供のようにゆらゆらと投げ出した足を揺らし。小さく笑い声漏らすとそのまま頷き
脆くて難儀だと思いますよ。…ただ、こうして触れられるのはこの器があってこそですからね。
(顕現し今の身体に馴染んだものの未だに五感には戸惑う事が多く、相手の仕草を一瞥しては月明かりにぼんやりと照らされた自身の掌を眺め。暗色の髪色や服も相俟って闇に溶けてしまいそうな相手の頬に掌を滑らせ、指の腹でそっと撫でて。)
鉄よりもずっと脆いからなァ、この体は。…嗚呼、そうだな。こうして触れてもらえるのも、俺っちが此処に在るのもこの体のおかげだ(月灯に滲む手をそっとおろすと同意するように小さく頷き、伸びた手に一瞬目を見開くも其の儘受け入れ。触れた小さな温もり感じては擽ったそうに目を細めるも其れを振り払う事はなく心地好さそうな表情伺わせ
切られるのがあれほど痛いとは思いませんでした。
(出陣の際の傷は既に癒えているものの憂いたように瞼を伏せると溜息交じりに述べ。拒絶も見せず寧ろ犬や猫を思わせるような面持を浮かべている相手を眺めながら) そうしていると随分と幼く見えますね。(冗談交じりに揶揄うような口調で、撫で下ろした手をそのまま床に付くと相手の方に膝を向けるように座り直し)
あの感覚は一番最初は驚くな…その分、血も騒ぐってもんだが。…俺っちが幼いと可笑しいか?(手入れも施され傷の残らぬ肌に過去の傷を思い浮かべてはつ、と指で見えぬ傷をなぞり其の儘手握りしめると無意識に戦闘時の様な不敵な笑みを浮かべ。相手の紡ぐ言葉にゆるりと首を傾げてはその動き見つめ不思議に思いつつ問いかけてみて
全く、長谷部と言い貴方と言い…血の気の多い連中が多いですね。
(美術品の如く飾られていた期間が長かった為に相手の感覚はあまり共感できず、好戦的な紫紺の瞳を見ると困惑と呆れ混じりに。隣を向いたまま何がある訳でもなくゆるりと首を傾げ) 貴方はいつも顔に似合わず大人びた事を言っていますから。(ゆっくりと述べた後に相手の発言を否定するように首を横に振り)
刀の本文なんて、そんなもんだろ…嗚呼、いや、アンタの兄弟刀は違ったか。…そういう性質なんだ、気にしねぇでくれや。いち兄の代わりに弟達もみてやんねぇといけないからな(呆れた様な気配読むと何処か言い訳をする様に肩をすくめて答えるも水色の太刀頭に思い浮かべるとその言葉止めて小さく呟き。此方に向いた顔にわずかに眉下げて笑みを浮かべると己の兄弟刀の名前を出しふ、と吐息漏らして
…ええ。兄さんは、お強いのに争いを好みませんね。
(頭の中に浮かぶ己と同じような袈裟を身に着けた清廉とした同じ刀派の兄弟の姿の、戦場を嫌う様子に眉を下げながら口元をふっと緩め。弱ったような笑みを浮かべる相手をまじまじと眺めると) 少し気を張りすぎだと思いますよ。(兄弟の多い粟田口の長兄に甘える短刀達の中に相手の姿が混じっている事が少ないように思え、風に乱れる自身の髪を煩わしそうに耳にかけて。)
それはそれで、ありなのかもしんねぇが…俺っちはああはなれねぇな。気張ってるつもりはねぇ、が…そう見えるもんかね(刀は斬るのが本分だろうと小さく付け足すとするりと己の本体撫でてはそれに目を落とし。ゆっくりと目瞬かせると先の表情すぐに消し去り雰囲気を払拭する様戯けたふうに肩すくめて
貴方までもがああいう風になる必要もないでしょう。
(相手の腰に佩かれた短刀を一瞥したのちに何気なく丸い敷石に下した自身の素足に目線を落としながら、凪いだような声色で。不安定な気配は取れたものの気掛かりなことには変わらず、しかし此方が何か出来る訳でもないために) …僕の見間違いかもしれませんけどね。(控え目に述べると、片膝を立て両手で床を押し上げるようにしてすっくと立ち上がり。)
…まぁ、そうだよな。人それぞれ、ってやつか。…あぁ、見間違いだろ。そーいうことにしといてくれや、…寝んのか(唇から零された言葉にどこか安心したような色をにじませて言葉を返すと小さく嘆息し、ゆるりと頭を振り。表情は崩すことなく薄い笑みを湛えたまま立ち上がった相手に合わせついと視線動かし
まあ、後先考えず突っ走るのはどうかと思いますけどね。
(闇の中に視線を投げたまま釘を刺すように簡素に伝え。自室のほうへ歩み出したところでかかる声に脚を止め、此方を見上げる藤色の瞳を見下ろすと暫し何か思案するように視線を合わせたまま、しかし目を伏せ一度首を横に振っては) 冷えてきましたからね。中に入るだけです。…貴方も、そうしたままでは風邪をひきますよ。(自分よりも軽装な姿を見ると口許を着物の袖で隠しながらゆるりと異色の目を細めて。)
それが俺っちたち短刀の役目でもあるし、な。活かせるもんなら機動でもなんでもいかさねぇと。…嗚呼…まぁ、そうなんだが。部屋はもう今頃混沌としてるだろうからな…こう落ち着いちまったら、あまり戻る気にもなれん。もう少しここにいる(先ほどより幾分か鋭い言の葉に気をつけると答えながらも数少ない利点なのだと反論の言葉返して肩を竦め。絡む視線に移る己の顔を見つめながら何時もあちこちに人の転がる大部屋思い出しては些か困ったように答え、再び空を見上げて
貴方たち短刀の戦い方は、危なっかしくて見ていられません。
(間合いの短さゆえに、我先に飛び出したかと思うと敵の懐に潜り込み急所を裂く。たとえ打撃力が低くとも彼らのような戦闘スタイルは到底不可能だと溜息交じりに述べては小さくかぶりを振って。相手の横顔から大所帯で気苦労も多い事が窺え、ふっと息を漏らし決して強制するつもりはないようだがいつもよりはゆっくりとした足運びで歩き、通りすがりざまに) …兄さんも小夜も遠征、僕の部屋は静かです。来るのならば、来ても良いですよ。
どうしたって間合いもねぇし力も弱ェんだ、そうする他勝てる術はねぇやな。ま、この体を恨んだこともないが。…!いい、のか?(自分よりも大きく、力も強い相手の姿をじっくりと眺め如何しても現れる差を臆する事なく口に出しながら瞬きを繰り返し。其れでいて暗い声色ではなく、自分なりにやるだけだと意思を露わにして。見送ろうと背に向けた顔をぱ、と子供らしく輝かせると喜びを滲ませた声で思わず問い返し
…そう謙遜しなくても、貴方は僕よりずっと強いですよ。
(打刀の中では非力な部類に入る事は自覚しており、美術刀として戦場に出る事の少なかった過去に思いを馳せるように自分の掌を見下ろしながら自嘲気味に薄く笑んで。凛とした声色から意思の強さを垣間見ることができ、それを眩しく思いながらすっと目を伏せて。足を止め目の端に映った相応な表情に驚いたようにたじろぐも、何でもないように自室に向かって歩みを再開しながら) お好きになさい。貴方なら煩くすることもないでしょうし、歓迎しますよ。
…強いってのは、其れの種類は人それぞれちがうだろ。俺っちはアンタも十分強いと思うぜ。…世話んなる、有難うな宗三(薄っすらと暗い感情のこもった笑み読み取ると少しの間取り何かを伝えようと言葉紡ぎ、そのまま思わずと言った風に立ち上がると己よりも大きくしかし細い手を握って言い切り。歩き出しながらも歓迎の意を表してくれた相手に無意識のうちに頬緩ませると礼述べて後ろについて歩き出し
!…それは、その…ありがとうございます。
(刀としての本分である強さを褒められる事は少なく凛とした目線から逃れるように顔を背け動揺したように目を泳がせるも、手から伝わる温もりをそっと握り返しながらぼそぼそと口ごもるように伝え。後ろからついて来る軽やかな足音を聞きながら、歩調を合わせるようにゆっくりと歩いて。あっという間に部屋に辿り着くと、襖を開ければ中に入り暗い部屋の隅においてある置き型の照明の明かりをともし、後ろを振り返って。)貴方たちの部屋に比べると、静かでしょう。
ン?俺っちは思った事を言っただけだ、礼を言われる覚えもねぇよ。、…っと、すまん、勢いで…。嗚呼、それに落ち着く…部屋は兄弟たちの荷物も多いからな、(礼を言われるなど思っていなったのか一瞬きょとりと目を瞬かせるとふとその表情崩し本心だという事を伝え、反射的に握ってしまった手を思い出すと半ば慌てながらその手を開き。歩調を合わせてくれている事に気がつくと嬉しそうに笑みをこぼしては自分たちの部屋とは大きさも雰囲気も違う部屋に思わず嘆息し)
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