愛しい声と温もり確かめて。［BML / 募集］

(何時もの流れで皿を洗い始めると彼もちゃんと持って来てくれ、シンクに入れてくれたのも続けて洗っていると小さな呟きが聞こえた。その言葉にふっと笑っては「さっきの、気にしてるのか？お前は忙しいんだから、気にしなくていい。」と口元に弧を描いて手元の作業を進め、洗い終わった皿を水切り台の上に乗せて。何故水族館なのだと尋ねられると定番のデートスポットと知って行きたくなったとは言えず「別に…夏といえば水、水といえば水族館だろ？それだけ。」と連想ゲームのように思い付いたのだと適当な嘘で誤魔化して。)

(確かにサークル行事やバイトに勤しんでいるが何より大切なのは彼の事でありそれでも緩やかに微笑んだ彼に腑に落ちない様子で「さよかぁ」とぽつりと答えて。彼が言うのならばしょうがなく身を引いけば元居たテーブルへ戻り残り僅かカップに残ったコーヒーに口をつけつつ彼の言葉に耳を傾ける。「それにしても水族館デートは初めてやね?イルカショーとかまだしとるんかな」普段は常日頃から一緒にいる為か二人で出掛けてもゲーセンやカフェで済ます事が多く大半はデートとは名ばかりのものであり新たな出先に胸を弾ませて。)

(何だか少し元気を無くした様な彼の呟きにそんなに手伝いたかったのだうか、とダイニングテーブルに戻る姿を眺めて。普段のデートでも満足していたのだがデートらしい行き先に胸を高鳴らせてしまう。自分もまだ残しておいた珈琲を飲もうと彼の元へ行き、楽しみな気持ちが隠しきれず「やってると思う。他にもペンギンの散歩があったり、餌やれたりトンネルみたいな水槽もあったりして。そんな感じだってテレビで言ってたんだ。」と知った情報をペラペラと楽しげに告げるとハッとして「たまたまついてたから見てただけだけど。」と視線を逸らして平然を装えば珈琲に口付けて。)

っはは、随分と熱く語ったなあ…そないに楽しみやったの？
(食器洗浄を終え再び正面に戻ってきた彼の言葉に思わず目を丸くしてしまう。次いで吹き出してしまえば彼の顔をちらりと盗み見ては取り繕う様なその様子にもう一度笑みを浮かべて揶揄い。きっと己が家を空けている間テレビで水族館の特集でも組まれており彼は興味津々という様子で見ていたのだろう。その様子を思い浮かべるだけで彼を可愛らしく感じてしまい。手を伸ばせば彼の癖の無い黒髪をわしゃわしゃとかき撫でて「つれてったるよ、水族館。…ほんま彼方が可愛らしくてしゃーないわ」優しげな声音で前記を述べればへらりと笑みを浮かべ)

違う！お前がショーの話するから、見所を教えてやっただけだ。
(吹き出す様に笑われ、まるで自分が凄く行きたがっているみたいに言われると、その通りなのだが認めるのは恥ずかしく眉を寄せて即座に否定し彼の為に教えてやったのだと言い張り。此方に伸びてくる手に逸らしていた視線を向ければ軽く髪を乱す様に撫でられ、言われた台詞、表情、声色全てにドキリとしては耳まで赤くして居ても立っても居られずガタッと立ち上がれば「俺、トイレ行ってくるからお前は早く用意しろ！」と行って立ち去り。)

(素直ではない彼の事もしかしなくとも本心からだろうが即座に否定されれば幼子に言う様な声音で「そうなん?てっきり俺は彼方が楽しみにしてくれてるー、と思ってたんやけどなあ」と相槌を打って。不意に立ち上がった相手に目を丸くし驚愕して肩を揺らすが彼の頬や耳が赤に染まっている事に勘づけば口許が緩んでしまう。更に揶揄いたい欲求が顔を覗かせるがこれ以上追撃でもしたら彼の怒りを買いかねなくデート前だというのに機嫌を損ねでもしたら大変だと撫でていた手を引っ込めトイレに立った彼の後ろ姿を見れば喉奥でくつくつ笑って。さて言い付け通り支度をしようと椅子から腰を浮かし自室へと向かえば着替えやへアセットを慣れた手付きで手際よく終えれば先刻から十分少しは経っておりもうそろそろ彼もトイレから帰り身支度を終えた頃だろうか。軽い足取りで彼の部屋まで行けば扉をノックし「かーなたちゃん、準備できた?」と問いかけて)

楽しみじゃないとは言ってないだろ！
(捨て台詞を吐いて逃げる様に去って来てしまったものの、本当にトイレに行きたかった訳ではなくトイレの前で佇み。何やってるんだ自分と呆れながら自室で待ってる事にし。自室と言っても寝る時は寝室を設けていて一緒に寝ているし、勉強する時と着替える時くらいしか使っていない。椅子に座り本棚にあるサボテンの図鑑を手に取ればもう何度も見返したが飽きる事はなくページを捲り彼を待っていて。部屋の扉がノックされ彼の準備が出来たのだろうと察すると明るい表情をするも扉を開けると不機嫌気味な表情で「遅い。それと、"ちゃん"付けするな。」と。遅いなんて思ってもいなかったがやっぱり癖の様に出てきてしまい、可愛らしい呼び方に案外悪い気はしないものの止める様言って。)

堪忍堪忍、折角のデートならはりきならあかんやろ。あは、『彼方ちゃん』って可愛らしくてええやんか
(扉が開かれ視界に写ったのは如何にも不機嫌オーラを漂わせる仏頂面の彼の姿でありこれが一種の強がりに似たものだと瞬時に察すれば思わず頬が緩み彼に惚惚しきった脳はその表情すら可愛らしいと思わせる。名前の響きからか『彼方ちゃん』と呼んでもなんら違和感を感じないが彼も男である以上名前にちゃん付けは宜しくないのだろうが気に入ってしまったものはしょうがなくもう一度「ええと思うんやけどな、彼方ちゃん」と呟いては悪戯を思い付いた子供の様ににんまり笑みを浮かべ「今度からそう呼ぼうか?」と提案して)

何浮かれてんだよ、ダサイ。
(いい歳した男がデートくらいで浮かれ気分とか…と彼を呆れた様に見るが、寧ろ浮かれいるのは自分でサボテンの図鑑を見ながらも頭の中は彼と水族館の事ばかりが占めていて楽しみで仕方が無く。男の自分は可愛さ等求めていないが、彼が可愛らしいと言うと話は別になる。普段の可愛さの欠片もない言動を少し気にしていたりして…まぁ男だから別にいいんだけど。それともう一つ、誰にも呼ばれた事のない呼び名に特別感を感じてしまい満更でもないような気になれば「好きにしろ。」と悪戯な笑みに対して素っ気なく返し自室から出て。)

んー、でも…なんっか勿体ないし特別な時に呼ぶ
(ダサい、と告げられては拗ねた様に唇を尖らすが不意に良い案を思い付いたとでも言う様に楽し気な口調で上記を述べて。何時も通り素っ気ない態度だが彼の反応等長年傍に居れば理解できてしまうもので更に構って遣りたい気を押し殺.しては部屋を出ていった彼の後へついて歩き。片手間にスマホを取り出して慣れた手つきで操作し水族館のホームページを開けば「イルカショー昼頃からやって。彼方見たいやろ?」スクロールし時間割り振りを見れば彼の先刻の言動を思い起こし問い掛けて)

…特別な時って…どんな時だよ…
(何が勿体無いのやら自分には理解不能で訝しげに見ては腕を組み。誕生日とかクリスマスみたいなイベントの時か…？と"特別な時"に当てはまる様な時は一体何時なのかと少し思考を巡らせるも、何だか少し楽しみにしている自分に気が付きいやいや、そんなのどうだっていいと気にしない事に決め込み。一度リビングへ戻れば着いて来た彼がスマホで何やら検索してくれているみたいで、近寄っては彼のスマホを覗き込む様にして「折角行くのに、見ない訳ないだろ。」とスマホの画面に写ったイルカ達の写真に密かに胸を高鳴らせ。)

(/上げますね。)