KRA八十九。 2015-06-04 07:52:10 |
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…成長するのは嬉しいけど、あんまり早く大人になんないでね。いつまでも俺の可愛いおらんで居て。…俺だって蘭丸には惑わされてばっかだよ、もう。(健気な言の葉に眼差しを和らげながらも唇から飛び出すのは独占欲にも似た大人げない台詞、さらりと揺れる焦げ茶の髪へと徐に掌を伸ばすと慈愛を込めて一撫でを。先刻までの雰囲気は何処へやら、嬉々とした様子で此方に向けられたビニール袋の中から購入したたこ焼きのパックを手に取ると止めてある輪ゴムを外した途端に漂う香ばしいソースの香りに表情を和らげるも一向に口へと運ぶ気配は見せず…徐に口端を持ち上げたかと思いきや幼子のようにはしゃいだ声音と期待に揺れる瞳を相手に向けておねだり)折角のデートなんだからさ、何かそれっぽい事したいよね?…って事で蘭丸、あーんして!
…例え大人になったとしても、姿形が変わろうと蘭の心はいつまでも貴方のお傍にあります。ですから信長さんも…叶う事ならばずっと、強くて格好良い僕の大好きな“織田信長”様で居てください。(ほんのりと口許に浮かぶ淑やかな笑みから機嫌の良さは一目瞭然、瞳を伏せがちに髪を撫ぜる掌に自らの片手を重ね緩やかに指を這わせると切実なる願いをぽつり。辺りに広がる鰹節やソースの香りを鼻先を鳴らし吸い込み、感嘆の息を吐き出した後此方へと注ぐ視線に気が付いて数度瞬き小首を傾げ…どうしたのかと聞くよりも早く相手のおねだりが耳に届くと思わず頬が緩んでしまい。快く承諾し爪楊枝をたこ焼きに刺しパックから一つ取り出し息を吹きかけて)かしこまりました。信長さんのお口に合うと良いのですが…少々お待ちください。
――ありがとう、おらんが望んでくれるなら俺はいつまでもお前だけの俺で居るよ。…おかしいよね、蘭丸よりずっと年上なはずなのにお前の事になるとぜーんぜん余裕ないの!(声音を低めて粛々と、一語一句気持ちを込め言葉を並べると伏し目がちに愛しい姿を見つめ…重ねられた手指をやんわりと絡め取り穏やかな一笑を浮かべたかと思いきやわざとらしく明るい声調にて自戒にも似た台詞を。期待に満ち満ちた双眼で食い入るように端正な面立ちを見つめていたものの、穏和に浮かべられた微笑みと快諾の言葉に心の中でガッツポーズ…爪楊枝に刺したたこ焼きへと息を吹き掛ける所作を意気揚々と眺めた後雛鳥が餌をねだるようにぱかりと口を開いて)こういう所の食べ物とかあんまり食べた事ないけど、蘭丸と一緒ならきっと何でも美味しいよ!…って事であーん!
大丈夫ですよ、僕は決して信長さんを裏切ったりしません。この先どんなに素敵な方が現れようと僕には貴方だけだから。…信じて。(自重気味に紡がれた言葉の数々につられて双眸を薄めた後、眉を下げ困りがちに微笑んで小さく首を振り。少ない言葉数の中にめいっぱいの慕情を込めてはらりはらりと唇より言の葉を介すと己の手を握る彼の手甲を包み込むようにもう片手を重ね…真っ直ぐな、それでいて優しさを帯びた瞳に最愛の主君を映して。熱を冷まし終えふと相手に視線を戻した先には口を開く相手の姿、その何とも可愛らしい様子にだらしなく頬を緩ませたこ焼きの下に片手を添え、そうっと口元に近付け…)もう、あまり嬉しい事ばかり言わないでください。…あ、あーん。
…信じるよ、蘭丸の事。お前が思ってるのと同じように、俺にもおらんしか必要ないんだ。だから蘭丸も俺の事信じて付いて来て、…“ビリーブ”ってね!(紡がれる言葉の中に込められた計り知れない程の思慕の情をひしひしと感じ取り、緩慢に眸を瞬かせた後晴れやかな一笑を向けると包み込まれた手指の温もりに感嘆の吐息を一つ…空いた片手の人差し指を“ビリーブ”の言葉に合わせて軽く上向けると相手の形の良い眼に映る己の姿と対面するかの如く互いの視線を交えて。口元に近付くたこ焼きに半ば吸い寄せられるように唇を近付け丸い形をしたそれを口内に転がすと暫しの間咀嚼、大きく首を縦に振ったかと思いきやご機嫌に表情を綻ばせ)…うん、美味しい!蘭丸に食べさせてもらったからかな、いつもより美味しく感じる気がするよ。…って事でおらんにも俺が食べさせてあげる!
…!はい、“ビリーブ”です!(顔を上に、高くへと掲げられた彼の指先に視線を注ぎ此方も同じく重ねていた掌を空に向けて食指ぴん!ノリ良く言葉を返した後曲のイントロ部分を鼻歌で奏で。どうやら彼の口に合ったらしい事が分かると密かに胸を撫で下ろし目前の和やかな面持ちを微笑ましげに一瞥。それから睫毛を落しパックの中を数秒見つめ、たこ焼きに爪楊枝を差し再度相手の口へ運ぼうとするもその途中でされた思いもよらぬ提案に瞳を大きく見開き。悩ましげに眉を寄せた後そればかりは気が引ける、と遠慮がちに身を退いて)――いえっ、結構です!信長さんの手を煩わせる訳には…。
――俺が提案したんだし煩わしいなんて思わないってば!…蘭丸に食べさせてもらって凄く美味しいって思ったから、俺もおらんに食べさせたいの。…だめ?(瞳を大きく見開いたかと思うとすぐさま憂わしさの色を如実に示し遠慮をする相手の姿に半ば予想していたとは言えども困ったような微笑を一つ…大切な相手に手ずから食べさせてもらった得も言われぬ充足感を同じように味わって欲しい一心で軽く拳を握って力説を。いささかの間の後やんわり握った拳を解くと爪楊枝を持つ彼の手の上に己の手指を包み込むように被せ、緩やかな角度で首を傾げながら駄目押しとばかりに相手の顔を覗き込み)
いえそんなっ!信長さんがそう仰るのでしたら…お言葉に甘えさせていただきます。(近しくなった双方の距離へ僅かに肩を跳ね上がらせるも視線を逸らす事はせず、此方を気遣う彼の心優しいお言葉に感極まってぱくぱくと金魚の如く口を開閉した後、首を揺すり即座に否定を示して。普段であれば決して味わう事の出来ない体験を目前に期待と嬉しさとが入り混じった表情を浮かべ、もう片手で緩んだ頬を隠すように包むとその手を動かし己の横髪を耳にかけ…上目に様子を伺いながらそっと口を開いて)
そうそう、蘭丸は俺に甘えてれば良いの。――はい、あーん…ってちょっと待っておらんその顔可愛過ぎない!?写真撮らなきゃ!……ごめんね、お待たせ。(説得の甲斐あってか了承を示してくれた相手への満ち足りた気持ちを表すように大きく首を縦に振り得意気な笑みを一つ。横髪を流れるように耳に掛けた後控えめに口を開く姿に釘付けられた様子で視線を注いでいたものの、はたと己のすべき事に気が付くと手にしたたこ焼きを相手の口元へ…運ぶかと思いきや懐から取り出した愛用機でその可愛らしい姿を捉えるべくボタンを勢い良く連打。幾枚ものショットを収めた後一仕事終えたとでも言わんばかりの輝かしい笑みと共に今度こそ形の良い唇の傍までそっとたこ焼きを運んで)
もう、信長さん…っ!――…あーん。(鼻先をくすぐる香ばしいソースの香りにきらきらと輝く瞳…目前まで迫ったたこ焼きを食い入るように見つめていたものの次いで聞こえてきたのはけたたましい程のシャッター音。不意打ちを受けて幾度か瞬きを繰り返した後、ほんのり頬に熱を込め主君の名を口に。それから此方へ寄せられたたこ焼きに視線を戻しお待ちしておりました!と言わんばかりに表情を明らめると半身を前に倒し丸いそれを口内に運び、暫くの間咀嚼を繰り返し。飲み込んで感嘆の息を一つ。再び相手と視線を交え柔く微笑むと日頃の感謝の言葉と共に目線を下に頭を下げて)…美味しいです。あと、今とっても幸せです。…いつもありがとうございます、信長さん。
ごめんごめん、折角可愛い顔してたし撮らなきゃ勿体ないじゃん!――うん、俺も今とーっても幸せ!…蘭丸がいつだって文句一つ言わずに俺に付いて来てくれるから、俺はいつも頑張れるんだよ。俺の方こそありがとう、…おらん大好き。(反省の欠片も見せず情けなく緩んだ表情のままおざなりに謝罪を告げると品良く咀嚼を繰り返すその口元を凝視、少々の間の後返ってきた言葉に瞳を細め大きく首を縦に振って。刹那交わる視線にやおら双眼を瞬かせたのも束の間、嫋やかな笑みと共に告げられた感謝の言葉に我知らず口元を綻ばせ…彼を大切に想う気持ちを込めて切々と言葉を並べながら黒く彩られた爪が印象的な手指を相手の掌の上に被せ包むように握り込むと込み上げる感情にそっと瞳を伏せて)
お礼を言われるような事は何も。主君に付き従うのは小姓として当然の事ですから。…信長さんは優し過ぎます。(眉根を下げ照れ臭そうに微笑み返すと小さく首を振って。互いの立場を明白にするかのようにお決まりの句を介せば、暇手を伸ばし伏せられた瞳の上をそっとなぞり…大人しく掌を引いて相手の瞳が上がるのを待ち。視線が合うとより一層幸せそうな表情を見せ、己の膝上に置かれたままのたこ焼きのパックを見降ろし爪楊枝を持ち替えようと手を動かす…ものの、それとほぼ同時に辺りへ響き渡った大きな音に顔を上げると、月の見える真黒の空に一本の白い線が伸びて行くのが見え思わずあっと声が上がり)
…うん、蘭丸は本当に良く出来た小姓だよ。俺には勿体ない位に、ね。好きな子に優しくすんのは当然だろ…って、花火始まったみたいだな!(定型句となりつつある互いの立場への線引きをする一言に込み上げるのは得も言われぬ寂寥感、ごく緩やかに眉尻を下げると相手の細い指先が緩慢と瞼に触れた刹那薄い皮膚を震わせて瞳を閉じたままに数秒…程なくして穏やかに瞳を開きやんわりとした一笑を向けて。彼の膝上に乗っかるたこ焼きの残されたパックに視線を移すと反射的に唇を開けたものの、矢庭に辺りへと鳴り響いた大きな破裂音に瞳を瞬かせ…目当ての花火が打ち上がった事に気が付くと子供のようにはしゃいだ声を上げて薄く墨を引いたような色をした空を輝く瞳で見上げ)
…、…恐縮です。――信長さん。花火と言えばあの掛け声、ですよね?(彼の小さな表情の変化を受け何となしに後ろめたい気持ちにさせられるものの、決して多くを語ることはせずただただ穏和な微笑みのみを浮かべて呟き。次いで、空高くへと打ち上げられる煌びやかな花の数々を眺める傍ら何処か落ち着かない様子で主君の横顔に視線を寄越し。徐に名を呼んだかと思うと祭りでよく耳にするあのフレーズについてわくわくと双眸を輝かせながら問い、期待に満ちた表情で相手からの言葉を待ち)
掛け声…って、あの“玉屋”とか“鍵屋”……ってやつ、だよね?おらん、合ってる?(是非には及ばないといった様子の物静かな微笑を視界に映すとそれ以上何を言うでもなくうっそりと双眸を伏せ…たものの、呼び掛けに次いで相手の口から期待に溢れた声音で飛び出した言の葉に伏せ掛けた瞳を持ち上げ間の抜けた様子で幾度か瞬きを繰り返して。此処には己と相手しか居ないと言えども声を張って掛け声を叫ぶのはいささか面映ゆい様子、それでいて期待は裏切りたくない複雑な男心…顎元に親指を添え瞳を揺らした後困ったような笑みを湛えると打ち上がる花火の音をBGMにしながら一応とばかりに確認をば)
はいっ、それです!…ええと。(期待に胸を膨らます小姓には主君の胸の内など知る由もなく、複雑な笑顔と共に紡がれた言の葉に大きく目を見開くとすぐに嬉しそうに表情を綻ばせ頷き返し。テレビで何度も目にしていた憧れのフレーズではあるものの、いざ己が口にするとなると些か物恥ずかしい気持ちが芽生え…先程の相手と同じく困ったように眉根を下げて静に一笑。それから少しの間花火に視線を流し、再び相手を己の視界に捉えると柔らかく双眸を薄め大きな手を両の掌でそっと包み込み…平素に比べ幾分か大人びた声色にてはらり、呟き)――…とても綺麗だ。花火も、…信長さんも。
た、たーまやー…かーぎやー……。――これ、人がいっぱい居てテンション上がってる時なら良いけど今みたいに静かに花火見てる時だとめっちゃ恥ずかしいな!素面だと割とキツい!(表情を綻ばせる可愛らしい姿を目にしたが最後、無理ですなどとは口が裂けても言えるはずがなく…ええいままよと口元に手を添えると閑散とした公園内に向かっていささか控えめの戸惑いがちな掛け声を響かせて。困ったように笑う相手と視線を交わらせると羞恥心を誤魔化すように上擦った声で言い訳を、それでいて胸の裡は愛しい小姓のお願いを叶えた達成感でほんのりと温かく。暫しの間の後徐に包み込まれた掌に不思議そうに瞬きを数度、零された呟きの内容と普段に比べ幾何も大人びたその声音にまあるく瞳を見開いた後含羞の色を滲ませ落ち着きなく視線をあちらこちらに彷徨わせ)や、俺は別に綺麗じゃ…っていうかそれ俺が言おうとしてたんだけど!花火よりおらんの方が綺麗だなって!
…!の、信長さん…っ!差し支えなければもう一度掛け声をお願いしてもよろしいでしょうか?携帯に保存させてください!(照れの混じった表情ながらも己の要望に応えようとたどたどしい語調で掛け声を口にする主君の姿に本日何度目かも分からぬ胸キュン!嬉しさやら動揺やら様々な気持ちがごった返し、ほんのり紅潮した頬を押さえ小刻みに肩を震わせ…徐に巾着袋から携帯を取り出すと素早く画面を動画モードに切り替えて。普段の温厚な雰囲気からは想像も付かない有無も言わさぬ勢いで押し迫り。彼の反応を満足そうに眺めた後くすくす、と楽しげな笑み。指先に少しばかり力を込め相手の視線の先に回り込むと小首を傾げ)ありがとうございます。でも、僕はやっぱり信長さんの方がお綺麗だと…いや、ですか?
えっ、ちょっと待って…今の掛け声の何が蘭丸の琴線に触れたの?流石の俺でも理解出来ないよ…。――たま、やー…かぎやー……んん、これで満足か蘭丸ッ!(面映ゆい感情を誤魔化すべく取り繕った様子の咳払いを一つ、緩慢と視線を相手に向けた所で気迫に満ちた表情で携帯を構えるその姿を捉えてしまい困惑した様子で頻りに視線を彷徨わせ。普段好き放題に彼の姿を携帯に収めている己にいささかの反省を覚えながら出した答えは“是非に及ばず”、愛しい小姓からの滅多とないお願いを断るなど到底不可能だと覚悟を決め…先程よりも幾らもたどたどしく普段の気概の欠片も感じられぬ張りの無い声音を響かせると我慢ならないとレンズから逃るが如く両の掌で己の顔を覆い。相手に応えるように手指にいささかの力を入れるとかち合った視線から逃れる術もなく揺らめく黒目がちな瞳で整ったかんばせを捉え、互いの距離を少しばかり縮めて)…ずるいよおらん、そんな言い方されたら嫌だとか言えないじゃん。
――ああっ、とても可愛らしいです!ありがとうございます!動画と言えど信長さんのお姿をいつでも見ることが出来るだなんて…蘭丸は幸せ者です。(普段の威厳に満ちた態度は何処へやら、皆から恐れられる魔王様の影は今や鳴りを潜め。相手が掛け声を言い終えたのと同時に動画を終了させ満足そうに双眸を薄めると、携帯の中で静々と動く主君の姿を愛好するように親指の先で一撫で。それから再び瞼を持ち上げ、先程よりも近しくなった互いの距離へ一寸瞳を見開いてすぐ、ゆうるりと笑い。此方からも僅かに身を寄せ悪戯に口を開いて)…僕はずるいですよ。だって、小姓の身でありながら主君である貴方を独り占め出来たら…なんて、無粋にも考えてしまう。信長さんが思っているような綺麗な人間ではないんです。
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