土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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実家がなくなり祖母が死んで二年になる。
真司は男のアパートの残骸を見つめながら祖母の言葉を思い出した。
この世には不幸が渦巻いている。世界を祭りの場にして不幸な人々を救ってやれ、お前ならきっとできる。お前の音を世界中の人々に聞かせてやれ。
インペラーの青年は真司の腕を掴みながら死んでいった。
真司の腕にはまだその痛みが残っている。
戦いを止めてやる。そう真司は決心した。
井上敏樹『仮面ライダー龍騎』 5 本文 城戸真司 祖母 より
続いてICレコーダーから、高階病院長の告白が流れる。何か言いかけた南雲忠義に、小百合は人差し指を唇に当てて、静かに、と言う。
----せっかくの田口先生の申し出なので、過去に遡ってやり直したいことをふたつ、告白させてもらいます。そのひとつはブラックペアンの因縁なのです。
高階病院長は、前教授の佐伯名誉教授が腹部に留置したペアンを取り出そうとして失敗し、カーボン製のブラックペアンを留置し直した過去を告白し、その患者が亡くなり謝罪の機会が失われてしまったことを悔いていた。カーボン製のブラックペアンは火葬時には燃えてなくなるので、その過失は蘇りませんよ、と田口が慰めている。
「腹黒ダヌキは勘がいいわね。でもさすがに過去の因業が未来の自分の首を絞めることなんて思いもしないみたいね。地獄の業火の中、燃え尽きたブラックペアンが蘇る時、ケルベロスの塔は崩れ落ちるというのに。こういうのを因果応報って言うのよ」
小百合はうっすら笑う。
海堂尊『輝天炎上』21章 陰謀 桜宮小百合 高階権太 田口公平 南雲忠義 より
その日、真司は眠れない夜を過ごした。
ショックだった。蓮も美穂も自分のために戦っていたわけではなかった。恋人と両親のために命を賭けていたのだ。それに比べて宝くじの当選を願った自分を深く恥じた。
間違っているのは自分の方ではないかと疑った。要するに自分のしているのはただのおせっかいなのではないのか。
故郷でのことが思い出された。昔から他人の悩みに首を突っ込み、おせっかいを焼きすぎて嫌われたものだ。
ふと、鍾乳洞のことが頭に浮かんだ。もしかしたら自分はまだあの迷路の中から抜け出していないのかもしれない。
おばあちゃん。
何度も祖母に語りかけた。
きっと祖母なら、なにも考えるな、お前のできることをしろと言うだろう。人々のために尽くせ、不幸な人々を救ってやれ、と。
だが、今の真司には自分にはできることがわからなかった。人のために尽くすという意味がわからない。
真司は鏡の協会で会った影のような存在を思い出した。
もし、彼が契約者バトルを仕切っている張本人ならもう一度会って話をしたい。契約者バトルの理由を、秘密を聞いてみたい。話によっては殴ってやりたい。元はと言えば、みんなあいつが悪いんじゃないのか?
真司は答えを見つけられないまま眠りに落ちた。
真司を病院に案内した翌日、恵里を見舞った蓮はテーブルの花に目をとめた。
昨日捨てた花に代わって、真っ白いユリの花が飾られている。
城戸真司という人が見舞いに来た、と優衣が教えた。
真司は花を花瓶に活けると長い間恵里の側に佇み、手を合わせて祈っていたという。
一瞬、蓮の頭に血が上った。
(奴め、よけいなことを!)
花を捨てようとして思いとどまる。
蓮には真司の心情が目に見えるようだった。
真司は恵里の回復を祈ったのだ。そうなれば、蓮は戦いをやめることができる。
蓮は花を床に叩きつけようとして花瓶に戻した。
たしかによけいなおせっかいに違いない。だが、恵里のために祈った。その祈りに嘘はない。恵里に向けられたその言葉を、誰が否定することができるだろう。
蓮はそっと恵里の頬に触れた。そして蓮もまた、恵里のために祈りはじめた。
井上敏樹『仮面ライダー龍騎』12 本文 城戸真司 秋山蓮 神崎優衣 より
そうか
ガランダーの毒を採取して血清を造るために・・・・
あの臆病なモグラがね・・・・
しかしまずアレだな
ウウ?
それがたとえ再生怪人でも「そいつがいる世界を守る」・・・・か
しかも泣くし いいやつじゃん
それならムラサメ「イイヤツ」
ムラサメの目・・・・
哀しさ知ってる目
大事な何かを失って・・・・
それを越えてきた強い目・・・・してた
・・・・そうか・・・・
・・・・そうだな
ま・・・・それでも
奴もまだまだライダーとして半人前よ
色々と鍛えてやってくるっつうか
それでもなにかあったら この俺に
ん?
いねえ?
なあ・・・・?
落ちたあっ
おい・・・・ 大丈夫か!?
タキ・・・・
魚!!
魚食うか!!
タキも早くくる!!
・・・・・
俺・・・・ナメられてんのかな・・・・
ん?
アマゾン?
あーーーームリムリ
あいつを手懐けようなんて・・・・
あいつは文明というか
そういう階層制(ヒエラルキー)みたいな価値観ないから
クッソオオオ!
なら実力で示してやろうじゃないか
また出ない
申し訳ありません
滝(カレ)にはまだスピリッツの隊長たる自覚に欠けているようでして
いいでしょう
それが彼流のやり方であれば 彼を選んだ我々が足並みを揃えるまでのこと
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 第46話 双頭の牙 アマゾン(山本大介) 滝和也 立花藤兵衛 アンリエッタ・パーキン 佐久間ケン より
!!
立花さん!!
滝!!
!!
待ちかねたぞ 旧型
俺の通信回路に話しかけてきた奴か・・・・
キサマら・・・・
何者だ?
ククク・・・・知りたいか ならば お見せしよう
変 身
な・・・・ に・・・・
まさか・・・・
お前達全員が 俺と同じ・・・・
「同じ」だと?
キサマと一緒にするな
旧型風情が・・・・
俺達の誰か一人と戦ったとしてめ・・・・
キサマに勝ち目はない
ナルホドね
!!
それがベルトを起動させる動きか・・・・
!!
キサマか・・・・
遊んでないで早く帰ってこい
そうだ
脳改造を済ませれば 迷いなどなくなる
この力を自由にできるのなら ショッカーに仕えるのも悪くない
ごめんだね・・・・
そんな不自由な自由
俺の正義は 俺に
決めさせてもらう
変 んっ・・・・ 身っ!! こうかい?
一文字!!
フン・・・・
未完成品が
旧型と一緒に処分するか
クッ・・・・ ムチャをするな!!
ムチャでもしなきゃ
倒せる相手じゃねえ
そうだろう「1号ライダー」
・・・・俺が「1号」?
そうだ 何故なら
俺が 「2号」だからさ
漫画『新仮面ライダーSPIRITS』1巻 第3話 皮肉という名の肖像 仮面ライダー旧1号 仮面ライダー旧2号 第2期強化改造人間 より
小百合の計画は着々と進行している。それは私にとって望ましくない結末に突き進んでいるということだ。危惧した私は東京行きの翌日、兄を呼び出し封筒を手渡した。
「これを東城大Aiセンターの責任者に渡してほしいの」
閉じられていない封筒を開けた兄は目をみはる。
「お前たちって本当にねじくれてるな。ねじれ方が左巻きか、右巻きかが違うだけだ」
城崎に手渡した手紙の本文はただ一行しかなかった。
『八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する』
それはAiセンターへの愛をこめたラブレターだった。たったこれだけの文章を書き上げるために、街角で拾った古新聞の束から文字を拾い出すのに一晩もかかったのだから。
「これは会心作よ。こうして予告すれば、東城大の警戒心を喚起して小百合の邪魔になるし、ケルベロスという隠語を使えば、身内の造反と思わせられて仲間割れだって期待できるし、一年後の八月に遂行せればブラフでもなくなるわけだし、ね」
「ほんと、いい性格してるよ、お前たちは」
「いちいち“お前たち”って小百合とひとまとめにしないで。なんかムカつく」
「悪い悪い。深い意味はないのさ。でもお前と小百合を足し引きすれば、どちらかがこの世界に実在できなくなるから、あちこちに痕跡を残すのはよくないんじゃないか?」
「それって、私に冥界に帰れっていう意味?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
生まれついての八方美人の兄、城崎亮は、ごにょごにょと言う。
わかってる。気のいい兄はきっぱりと言い返されると、それ以上何も言えなくなってしまう。本当に気がかりなことは決して口にはしない。兄は昔からそんなヤツだった。そして私は、そんな兄が愛おしくてたまらなかった。
海堂尊『輝天炎上』第三部 透明な声 03 魔窟 本文 桜宮すみれ 城崎亮 より
本郷・・・・聞こえたか
ああ
「アマゾン」が・・・・
倒された・・・・
あ〜〜〜〜あ
朝市のチーズが食べたい
知ってる?オーストリアのチーズっておいしいのよ
はあ
冗談よ
ちょっとワガママを言ってみただけ
じき日本だしね
そうです
ですからもう一度 現状の確認を
解ってます!!
ったくショッカーめ・・・・
しつこいたら・・・・
あのお
あ・・・・ゴメン
間違えちゃった
ええとええと
許すまじは・・・・
・・・・そう!!
「BADAN(バダン)」・・・・よね
はい・・・・
組織の名は「SHOCKER(ショッカー)」
過去、世界征服を目論む秘密結社があった
そして----・・・・それに連なる組織は
常に人間を恐怖と絶望のへ闇へと誘い続けていたた----・・・・
そして・・・・その影には 全てを束ねる巨大組織があった
巨悪の名は----・・・・
「BADAN」
漫画『新仮面ライダーSPIRITS』第6話 巡る絆 本郷猛 一文字隼人 緑川ルリ子 技術者 より
ナニィ!?
キバ一族・・・・オニビセイウチ!!
何ぃ!? ヘリが爆破された!?
まさか!? デストロン・・・・
クッ・・・・ソオ
ジャマさえ入らなければ完全に行けたのに
結城さん!!
マシンガンアーーーーム!!
ぬうううう
チイイ ダメ・・・・か
!!
来い!!
先輩!!
!!
ちぃ・・・・
・・・・・ゼクロス
なぜ来たんだ!!
山口に向かえと伝えたハズだぞ
・・・・
伝えた・・・・だと
そうか あんたがウソを言わせたのか
オイ どういう事だ!?
俺は・・・・女の哀しむ顔がキライだ
山口には必ず間に合ってみせる あんたと風見志郎を連れてな
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第11話 突入 仮面ライダーZX(村雨良) ライダーマン(結城丈二) 技術者たち より
そう、今日はAiセンターの創設会議の当日だ。
病院のカフェテリアで僕はハコを待っていた。一緒に創設会議に参加するためだ。
僕の向かいには冷泉深雪がいて、授業が終わった後に一緒にお茶をしている。スマホをチェックしていると、少し前に田口センター長から簡素なメールが届いた。
(略)
これは提案ではなく通告だ。しかも発信者は放射線科の島津先生だ。やはり田口先生は傀儡で、黒幕は島津先生なのでは、と思えてしまう。それにしても、この傲慢なメールの印象と、極楽病棟で目にしたカルテの中の田口先生の実像は乖離(かいり)が大きすぎる。
気がつくと田口先生は、僕の前に巨大な壁として、立ちはたがっていた。
携帯画面を眺めている僕に、冷泉深雪が言う。
「さっきのメール、私も読みました。何だかどきどきしちゃって」
本日の冷泉深雪は、白いブラウスに細身のジーンズというシンプルないでたちだ。
だがその分、スタイルのよさと胸のふくらみが強調されている。
それは男心の妄想がなせる業だけど、何より自分の剣呑さに無自覚である点が、コイツの問題点だ。などとそんな他愛もないことを考えていたら、僕の中に溢れていたはずの美智を失った悲しみは、いつの間にか薄らいでいた。まったく、男ってヤツはどうしようもない生き物だ。
海堂尊『輝天炎上』23章 落第王子の当惑 本文 天馬大吉 冷泉深雪 より
高階病院長は立ちすくむ田口先生と彦根先生の肩を引き寄せ、小百合に言い放つ。
「この二人が東城大の良心、そして医療の未来です。彼らが生き残っている限り、私たちの希望が打ち砕かれることはありません」
僕のこころを、高階病院長の咆哮を貫く。
これが東城大の魂ぱくか。圧倒的不利な状況にありながら、何という傲慢な勝利宣言を高らかに謳い上げるのだろう。その不撓不屈の精神力に僕は感服していた。
海堂尊『輝天炎上』30章 よみがえる面影 本文 天馬大吉 高階権太 より
村枝 (略)でも、いまの子供が見ても、あの回は泣くと思います。何より死ぬ間際のセリフが素晴らしい。いつもモグラ獣人のことを小バカにしているマサヒコが、このときだけは「死んじゃイヤだよ」って泣くんです。それに対してモグラ獣人は「マサヒコはモグラ獣人を尊敬するかい?」って聞くんです。その拙(つたな)い言い回しがすごく名言たなと思いました。
岡崎 やっぱり先生は、作品の捉え方が僕ら凡人とは違うんですね。いま改めて聞いてみて、死ぬ間際に「尊敬するかい?」なんてセリフは普通は出てこない。たぶんシナリオを書いた人の意図としては、いくら悪いことをしてきたヤツでも正義のために働いた者に対しては敬意を表さなければならない、というこっなんでしょうね。
村枝 愚か者なんだけど勇敢なんですよ、モグラ獣人は。
岡崎 良いですよね。愚か者で勇敢って。『アマゾン』の世界でいえば、文明という知恵も力もないけど、ただ己が信じる“正義”のために何かをまっとうしようとする----その真摯な姿勢に子供たちは拍手喝采を送るんでしょう。
村枝 そういうところもナチュラルなんですよね。思想として正義や平和を語るのではなく例えば鳥を殺したヤツがいたら、アマゾンは「何故、鳥殺した?鳥悪くない」というスタンスをとる。子供には、これが一番分かりりやすいんです。
岡崎 ちゃんと子供の情操教育を教えて作られていましたよね。
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 ZKCファイナル特別対談 岡崎徹(アマゾン・山本大介役)× 村枝賢一 より
ちゃんとUFOと書いた映像ファイルがある
ええ〜!?
いや、いやウソついてる。最後にフォロー入れてたやん。
こんだけ(宇宙が)広いねんから我々以外のものにいつか会えるやろみたいな
そやね
もう……、ホンマは会ってるんですけどね
アハハ……
あとでもうじきバレるから「あいつ嘘ついてた」思われたら嫌。一応最後に言うてたけどな
保険をかけてるコメント!保険!
たぶん
バラエティ『世界の何だコレ!?』 宮迫博之 岡田圭右 三上丈晴 他 より
(略)休刊決定により気になったのは『仮面ライダーSPIRITS』の終わらせ方だった。はたして大団円を迎えられるのか。広げに広げた大風呂敷は『マガジンZ』の休刊までに畳めない事は明らかであった。かつて石ノ森章太郎先生の描いた『サイボーグ009 神々との闘い』が頭をよぎった。009最終章と冠されたこの作品は、009らゼロゼロナンバーサイボーグが人類の想像主たる神を相手に戦うと究極の作品だったが、残念ながら“未完”に終わっている。と、思い悩んでいるところへ『月刊少年マガジン』が手をあげてくださり、連載が継続する事となった。そこに至るまでにはどこの雑誌が引き受けるか様々な検討がなされたという。ありがたい話である。『仮面ライダーSPIRITS』の初掲載が2001年1月号で、9年もの長期連載となった。村枝賢一さんの描いた作品の中で最も長い連載である。
石ノ森先生のライフワークが『サイボーグ009』であったように、本作も村枝さんのライフワークになりそうな印象さえ漂う。あいにく009は完結にはいたらなかったが、ファンに愛され、雑誌のみならず、出版社を変えてまでも連載が続けられた。村枝さんも雑誌変更という状況になったが、是非石ノ森になり代わって、大団円を迎えるまで描き続けて欲しい。ファンの夢は終わらない。
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 あとがき 2009年、平成仮面ライダーは生誕10周年を迎えた。 早瀬マサト(石森プロ)より
(血塗れヒイラギはいつになったら花咲くことやら)
心の中で僕は呟く。僕が葉子につけた渾名を、葉子は知らない。血塗れは真っ赤な校正原稿の隠喩だ。
「とにかくこれはボツ。要求に応えてないから。いいものと売れるものは別物なの」
葉子は僕に少しだけ優しい視線を向ける。
「引用グセはやめた方がいいわ。ぴったりの引用をしても手柄にならないし、不適切なら見苦しい。大体、風俗嬢が餓死したという些細な事件記事に、トルストイなんて、大袈裟すぎる。読みたいのは、天馬君のオリジナルの言葉よ」
オリジナリティは、堅牢たるパーソナリティから生まれる。人格の輪郭が不明瞭なモラトリアム青年の僕は、葉子に痛いところを衝かれて黙り込む。
海堂尊『螺鈿迷宮』一章 血塗(ちまみ)れヒイラギ 本文 天馬大吉 別宮葉子 より
「明朝十時。桜宮病院事務室に集合よ。よろしくね、大吉クン」
葉子が、小学校の頃の呼び名で僕を呼ぶ時は、文句は言わせない、という無言の圧力をかけたい時、絶対に引かないわよ、という葉子の決意を雄弁に語っている。
「やなこった」
捨て台詞を吐いて、僕は時風新報のオフィスを後にした。果たして逃げ切れるのか。自分自身の逃走能力に疑問符をつけながらの遁走(とんそう)だった。
「後悔しても、知らないわよ」
葉子の捨て台詞が、僕の背中をおいかけてきた。
海堂尊『螺鈿迷宮』一章 血塗れヒイラギ 本文 天馬大吉 別宮葉子 より
メジャーとマイナーがある。間にマイジャーがある。
NHK Eテレ『ニッポンサブカルチャー史2』第二回 深夜テレビの伝説 泉麻人 より
村枝 ところで岡崎さんは、今でも漁に出てらっしゃるんですか?
岡崎 ええ。でも、漁というよりは釣りですけどね。
村枝 僕は、岡崎さんが俳優をやめて長崎で「漁師」をしているって聞いたとき、最初にイメージしたのは「猟師」だったんですよ。長崎と言えば「猟師」ですからね。
岡崎 なるほどね(笑)
(略)
岡崎 本来、自然と共生することが人間の基本姿勢なんですよ。現代ではなおのこと、そういう認識をみんなが持たないとダメだと思います。僕もさっき「同じ魚を釣っていると飽きる」と言いましたけど、それはたぶん、もう自分には必要でないからなんでしょう。どんなに美味しい魚だって、自分が食べられる量なんてたかが知れている。
村枝 そうですよ。「鳥、殺すのよくない」って言っていたアマゾンだって、実は鳥や魚を捕らえて食べている。しかし、それは生きるために食べるのであって、むやみに殺しているのではないということを、ちゃんと子供たちに教えていたわけです。
岡崎 そういう『アマゾン』のテーマ性みたいなものに僕も惹かれたんでしょうね。自分自身の生き方というか、ライフスタイルが見事なまでにリンクしていた。そういう意味で『アマゾン』との出会いは、僕にとって運命だったのかもしれません。
漫画『仮面ライダーSPIRITS』16巻 ZKCファイナル特別対談 岡崎徹(アマゾン・山本大介役)× 村枝賢一 より
僕は結城に笑いかけた。
「当たりましたか」
結城は頬を痙攣させ”それから僕の愛車の屋根を撫でる。結城は肩をすくめる。
「ゲン担ぎです。ツイてない時には”ツイている人の持ち物に触ることにしてるんです」
百万円をむしり取った相手をツイているなんて、よく言えたものだ。
結城が目を細める。見つめる先に、セピア色のでんでん虫が聳え立っていた。
その視線の先に、“仮想敵”という言葉が脳裏を掠める。
海堂尊『螺鈿迷宮』五章 銀獅子 本文 天馬大吉 結城 より
すみれは、首を傾げて、続ける。
「ここだけは理解してもらいたいの。患者は病気にかかった人間であって、病人として扱うことではじめて病人になる。ベッドに縛りつければ悪化する。桜宮の終末期患者の平均存命期間は他施設の二倍よ。あたしは患者をこき使い、命を延ばす。これも医療のひとつの形だとあたしは考えてる」
海堂尊『螺鈿迷宮』七章 わがままなバイオレット 本文 桜宮すみれ より
(……)
蓮は仮面の下で悲しげに歪む真司の顔を見たように思った。
(じゃあ、俺は戦いを止めるために戦う)
(馬鹿げたことだ)
(わかってるさ、それぐらい。でも、おれにはそれしかできないんだ)
(城戸、お前には願いはないのか?戦いを止めることなんて言うなよ。お前自身の、お前のためだけの夢だ)
(あるさ)
(聞かせてくれ)
(おれの故郷で、みんなに出会うんだ)
ふと、真司は夜空を見上げた。
(赤く実った林檎の木の下で、お前と、恵里さんと、美穂と、優衣さん、みんなと会うんだ。偶然だって構わない。そこでみんな初めて会って知り合いになる)
(それで?)
(あとは出会ってからのお楽しみさ)
(いい夢だ)
(でもおれのは叶わなくていい。夢でいいんた)
ナイトが変身を解き、それに応えて龍騎も真司の姿に戻っていく。
(戦ってくれ、城戸)
仮面越しでは伝わらないものがある。
ミラーワールドで変身を解くのは死に近づくことを意味していた。
蓮の言葉はそれだけに重い。
(ああ、わかってる)
真司の気持ちは決まっていた。蓮が引き返せないことはわかっている。だったら戦ってやろう。それはただの戦いじゃない。秋山蓮の全存在を受け止めることだ。
蓮は真司が戦いを受けるであろうことは知っていた。どんな気持ちで戦うかを理解していた。だから友人と呼ぶ価値がある。
「変身!」
ふたりは同時に変身した。
相手のいるその場所になにか大切なものがあるように、龍騎はナイトを、ナイトは龍騎を目指して突っ込んでいた。
朝日の射す病室で、恵里はゆっくりと目を覚ました。
井上敏樹『仮面ライダー龍騎』18 本文 仮面ライダー龍騎(城戸真司) 仮面ライダーナイト(秋山蓮) 小川恵里 より
巌雄の言葉が重々しく響く。
「死者の言葉に耳を傾けないと、医者は傲慢になる」
巌雄は僕を見つめた。初めの頃と比べて、言葉が柔らかくなった。
海堂尊『螺鈿迷宮』十章 屍体の森 本文 桜宮巌雄 天馬大吉 より
「平気です。病院には死が眠っているというのが、現実なんですね」
巌雄はフン、と鼻先で笑って、腕を組む。
「少し見直した。これが医療の現実だ。誰でも死の前には平等だが死に際し誰もが平等に扱われるわけではない。だからワシは、せめて桜宮では誰でも等しく扱いたい、と思っている」
最後の言葉は、自分に言い聞かせているかのようだった。
「だがな、これしきでひびるな。医学とは屍肉を喰らって生き永らえてきた。クソッタレの学問だ。お前にはそこから理解を始めてもらいたい。医学の底の底から、な」
巌雄の言葉が、僕の想念と同期(シンクロ)した。巌雄の言葉は、僕が真っ直ぐに道を追い続けてていれば、いつか僕の目の前に立ち塞がるであろう未来の壁を、一足先に垣間見せてくれたのかもしれない。
巌雄は僕の瞳の底を覗き込む。
「人は誰でも知らないうちに他人を傷つけている。存在するということは、誰かを傷つける、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかもしれない。このことがわからないうちは、そいつはまだガキだ」
僕には唐突な巌雄の呟きの文脈が理解できず、またその言葉が孕む不可知の重さを支えることもできなかった。
海堂尊『螺鈿迷宮』十章 屍体の森 本文 桜宮巌雄 天馬大吉 より
僕は腕時計はしない。それは時間に無頓着ということではない。腕時計をしないことで却って時間には過敏になる。それは貧乏人がささやかな支出に敏感なのと似ている。腕時計をしないなんて社会人失格よ、と葉子にたしなめられたことがあるが、アポイントさえ守れば支障ないし、何より僕はモラトリアム真っ最中の落第医学生であって、社会人ではないので、葉子の指摘は気にならなかった。
腕時計は首輪だ。巻けば他人に自分の時間を縛られる。
海堂尊『螺鈿迷宮』十四章 白鳥は舞い降りた 本文 より
美智は二枚の写真を交互に見て、真剣に検討し、勢い良く片方を指さす。「こっち!」「伝染性軟属腫ね。それでいいの?実態はミズイボと同じだけど、後悔はしない?」
美智はこっくりする。決心は固いようだ。それにしても、後悔する事態って何だろう?
「本に書いてある通りにお薬だすからね。僕とみっちゃんが二人で決めたことだから、文句はいわないこと。あと、お薬を塗って症状がひどくなったら、すぐお薬中止、看護師さんに報告。これだけは守ってね」
白鳥は小指を差し出す。
「指切りげんまん、具合悪くなっても文句言わない。指切った。おーい姫宮、処方箋持ってきて」
遠くで様子を見守っていた姫宮はぴょんとはねると奥に消え、処方箋一式を持って駆け戻ってきた。投げられたボールをくわえた犬みたいだ。姫宮ならさしずめシェパード。白鳥は薬の名前を書きあげると、ひょいと姫宮に投げる。うぉん。姫宮は処方箋をくわえ、じゃなくて、小脇にはさんで、とたとたと駆け出す。
「こういうのをインフォームド・コンセントって言うのさ。患者さんとお医者さんがお互いに納得してから治療を始めるっていう、最先端医療なんだよ」
おお、と西遊記の三婆が感心してどよめく。だが僕は白鳥の言葉に納得がいかず、首をひねる。どこかが違う。絶対そんなはずはない。落第医学生の僕ですら、そう思った。これでいいならひょっとして、僕なんかでも医者になれるかも、僕は自分の考えにぎょっとする。医学生なんだから、医者になれて当たり前だろ。
海堂尊『螺鈿迷宮』十六章 白鳥皮膚科病院 本文 天馬大吉 白鳥圭輔 姫宮香織 三婆 より
頭を動かさないで
強い洗脳を受けたらしいわ
こっちは大丈夫です
・・・・・
大丈夫だよ 神さんは・・・・・
5分隊 唯一の生き残りか・・・・か
ち・・・・ また やっかい者が増えやがるぜ・・・・
あら?仲間に入れてあげるの
さすが
・・・・・
おい
!えっ
おい・・・・動いていいのか
滝さん
立て・・・・敬介
泣くな・・・・
強くなれ 敬介----・・・・
・・・・・・
・・・・・!
あれ・・・・?
俺何やってんの?
クス・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』14巻 第36話 父 神敬介 村雨良 コンラッド 10分隊 アンリエッタ・パーキン 神啓太郎 より
「ところで田口先生って誰ですか?」
すみれは押し黙る。それから、まるでムキになって日記帳を取り返し終えた少女みたいに、照れたように微笑む。初々しい表情に、僕はどきりとした。
「昔、研修の時に世話になった人。東城大でさ、まあ、ましな方かな……グズでどうしようもない人だけど」
すみれの笑顔の裏側には、僕には手の届かない膨大な時間があることに気づかされる。不意に僕は、小さな苛立ちを感じた。
海堂尊『螺鈿迷宮』十六章 白鳥皮膚科病院 本文 天馬大吉 桜宮すみれ より
「トクは立派だった。今朝、解剖させていただいたが、身体中身癌だらけだった。悪いところは全部とってしまったから痛むことはないだろう。トク、ゆっくり眠れ」
巌雄の言葉は、百万遍の読経より心に響いた。僕は瞑目した。美智が噛みつく。
「ジィさん、戯言をぬかすんじゃねえ。立派な死なんてありゃあせん。死んだら負けじゃ。トクは立派じゃねえ。負けたんじゃ。ワシは絶対負けんぞ」
巌雄は、美智を見つめる。
「大した婆さんだよ。薔薇の知らせに逆らって生き延びているのは、あんただけだ」
「大したことじゃねえ。あっちへは行きたくないから行かねえって言っただけじゃ」
「それだけ大したことなんだよ。婆さんは、桜宮最高のクソッタレさ」
巌雄はじっと美智を見つめる。
「生きるも地獄、死ぬも地獄……死ぬも極楽、生きるも極楽、どっちにしても同じこと」
巌雄の言葉に美智は答えず、棺を睨みつけて言う。
「トク、ジンジョーセーユーゼーはお前にやる。どこぞでも好きなところへ持っていけ。この根性なしめ」
海堂尊『螺鈿迷宮』十八章 煙と骨 本文 天馬大吉 高原美智 桜宮巌雄 より
「君って、結構面倒くさいヤツなんだね。黙っていればわからないことなのに。甘ったれなセリフに聞こえるけど、そればかりではなさそうだし……きっとこれまでずっと、一人ぼっちで生きてきたんだね」
白鳥の言葉が、切れ味鋭く僕の過去を断罪した。白鳥は続ける。
「要するに、天馬君には隠されミッションがある。だから客観的な視点で物を見なければならない。同時に桜宮病院とは表沙汰にはできない取引がある。それで単純な社会的正義から、この病院を一方的に弾劾する立場にもない、ということなんだね」
細部は少々不満だが概ねその通りだ。そうした時には四捨五入して、ビンゴ、と呟くことにしている。僕はうなずく。ビンゴ!
「わかりました。それなら今日から天馬君のことをコウモリ君と呼ぶことにしよう。こうして名づけてみると、我ながらとてもしっくりくるな。僕って天才かも。だけどよくわからないのは、天馬君がこの病院にそこまで肩入れする本当の理由だね」
ものすごく不愉快な気持ちにさせられながらも、その言葉には妙な説得力があり、僕は同意せざるを得ない。なかなか鋭いぞ、白鳥。
僕の中で不意に、ある夏の日の光景が甦る。
海堂尊『螺鈿迷宮』十九章 真夏の神話 本文 天馬大吉 白鳥圭輔 より
巌雄は、僕の顔を見て言う。
「いいか、医学生、医学とは、屍肉を喰らって生き永らえてきたクソッタレの学問だ。そのことを忘れてはいかん」
巌雄の眼光に射すくめられ、身体をすくませる。僕がずっと思ってきたのと寸分違わない言葉。だが、深さの格が違う。雨上がりの水たまりと、大海原の差異。僕は密かに恥じる。
海堂尊『螺鈿迷宮』ニ十三章 古豪 vs.新鋭 本文 桜宮巌雄 天馬大吉 より
すみれは膝の上に肘をつき、両手を組む。手の甲の上に小さな顔を載せて微笑む。
「誘惑されるんじゃないか、と思ってるでしょう」
ど真ん中の剛速球にどぎまぎした。この状況でその可能性を考えない男がいたら、そいつはウスノロか大嘘つきだ。
「こう見えても、昔はモテたのよ」
すみれは朗らかに笑う。きっとそうだろうなと思う。昔は、という限定詞を外しても、おそらく僕は同意しただろう。
「でも、なかなかうまくいかないの。寄ってくるのはろくでなしだし、追いかけると逃げるいくじなしはかり。あたしってば、男運は悪いの」
男には二種類しかいない。勇ましいろくでなしと腰抜けのいくじなしだ。すみれに寄ってきたのは勇気があるろくでなしで、逃げ出したのが腰抜けの方だ。
「これは誘惑じゃない。それならもっとうまくやるわ。あたしは天馬君にあたしたちの本当の姿を知ってもらいたいだけ。でないと、あたしは……」
僕の眼を覗き込む。それから視線を窓に向け、呟く。
「でも、どうでもいいと思っている相手には、こんなこと言わないから、やっぱり誘惑なのかな?天馬君て不思議。捨てられた子犬みたいに、つい頭を撫でたくなる。そうやって人の心を開かせてしまうのね。こういうタイプって、本当に始末が悪いわ」
かつて葉子はそれを、この世でひとりぼっちの赤ん坊の吸引力と呼んだ。
葉子が言ったことがある。
……天馬君は、一見優しそうだけど、自分の気持ちは他人(ひと)には見せないのね。
すみれの脳裏には他の誰かが浮かんでいて、僕と比較している。ふと、そんな気がした。僕たちは向き合いながら、他の空間の相手と会話しているのだろうか。
海堂尊『螺鈿迷宮』ニ十ニ章 天空の半月 本文 天馬大吉 桜宮すみれ 別宮葉子 より
「僕は巌雄先生に心の底から敬意を表したい。この医学情報の存在は世の中に対する楔(くさび)になる。それがわかるのは、もっとずっと先のことだろうけど」
「オートプシー・イメージング・センター(Aiセンター)、ですか」
「巌雄先生はエーアイ・センター構想と碧翠院桜宮病院の検死システムが両立しないことを見抜いてた。同じエーアイだけど、桜宮病院では真実を覆い隠すために行われていた。それに対し、エーアイ・センターの設立理念は、ガラス張りの医療だ。実現すれば桜宮病院は歴史の徒花(あだばな)として叩き潰される運命にあることを予見してたんだね、きっと。一年半前のバチスタ・スキャンダルの時、この流れを読み切って、廃院に向けて舵を切っていたとは、いやはや大した慧眼(けいがん)さ」
白鳥はため息をつく。
「失ってみて初めて、巌雄先生の言葉の真の意味がわかったよ。桜宮病院という闇が無くなって、これからの僕の仕事はずいぶんとやりやすくなった。そして……」
白鳥は言葉を切り、モニタ画像をぼんやり見つめた。僕は根強く次の言葉を待つ。あまり長い沈黙に我慢しきれなくなり、とうとう、そっと促してしまった。
「……そして?」
ぼんやりと宙を見つめていた白鳥は、僕の催促に、夢から覚めたようにはっと我に返る。
「そして同時に、とても難しくなった。なるほどね、光も闇も一ヶ所に集めようとすると気が狂う、か」
海堂尊『螺鈿迷宮』三十五章 螺鈿の闇と光の中で 本文 天馬大吉 白鳥圭輔 より
「天馬さんはご自分の強運を認識していなんだと、別宮さんは言っていました。そう、こんな風に。……だって、天馬君は中途半端だから」
結城が痙攣のように笑う。明らかに葉子の模倣(ミミック)だ。真顔に戻って、続ける。
「天馬さんのドジで、お二人の初デートが中止になった時、別宮さんは震え上がったそうです。ドライブの予定先が集中豪雨で土砂崩れを起こし、車が何台も生き埋めになった。逆算すると、土砂崩れの時そこを走っていてもおかしくなかったとか」
知らなかった。あの後僕は腫れあがった顔でフテ寝して、二日間ニュースも見なかった。
「駅のホームで壺を壊して十万円の借金を背負った時は、割りのいいバイトがダメになったそうですね。実はそのバイトは学生名義で借金をさせ上前をかっぱく悪質な詐欺バイトで、社会問題にもなりました。もし関わっていたら五百万円以上の借金を押しつけられたはず。下手したら詐欺罪にも問われます。その時は、別宮さんは天馬さんと冷戦状態で言えなかったんだとか」
結城は、尊敬のまなざしで僕を見る。
「極めつけはご両親の事故です。墓参り当日、具合が悪くなったあなたはひとり留守番をした。同じ和菓子を召し上がったのに、あなただけがお腹をこわした。その後ご両親の車は居眠り運転の高倉のトラックと正面衝突して亡くなった……。天馬さん、あなたは稀に見る強い守護星に守られているんです」
思い出した。その和菓子は葉子の家からのおすそ分けだった。そのお礼に僕は、仄暗い碧翠院の境内で葉子にアリグモの話をして、思い切り冷ややかな眼で見られてしまったのだ。両親の葬式の時、葉子がしおらしくしていたのは、僕の腹痛の原因がその和菓子だと聞かされていたからだ。今日まで思い出すこともなかった。ささやかな事実。
ようやく僕は真実を知った。葉子こそ光と影を入れ替えてくれる、僕の女神だった。
刺だらけの血塗れヒイラギが護っていたのは、時風新報桜宮支所だけではなかった。
海堂尊『螺鈿迷宮』三十五章 螺鈿の闇と光の中で 本文 天馬大吉 結城 より
インターポールか・・・・・・
これでアンリもなんとか助かる
よかった・・・・
ごめんね・・・・
ジョージが流れついた時 このヘルメットを隠したら ずーーっとヒナウの家にいてくれると思ったの・・・・
でも・・・・
行かなきゃね
ジョージの腕は・・・・
みんなを 守る腕 だもんね
漫画『仮面ライダーSPIRITS』2巻 第6話 右腕の記憶 ライダーマン(結城丈二) ヒナウ より
そう・・・・お母さんはクリームシチューが上手なの
うん
じゃあ明日にはまた作ってもらえるわ
ホント!?
元気になる?
ええ
あなたがお母さんのそばにずっといてくれたおかげね
じゃあじゃあ
かめんらいだあもスグによくなる?
?
だってね
かめんらいだあにもいたのよ
ずーーっとそばにいてくれる人
漫画『仮面ライダーSPIRITS』10巻 第9話 魂の結成 フレイア 少女 より
・・・・・
夢・・・・・?
我が夢など見るものか・・・・
ちがう
!
それは私の夢だよ
JUDO
私とお前の記憶だよ・・・・
この惑星に生物が宿る前の・・・・な
・・・・・
JUDO・・・・か
お前が呼称を持つとはな・・・・
我々に名など意味がないものだろう・・・・
フ・・・・・
必要なのだ・・・・
人間のように感知する力に乏しい者たちには
支配者を恐れ唱える呼び名がな
ク・・・・ク・・・・
どうだ・・・・
一つ戯れに
キサマも 何かの名で呼んでみるか?
・・・・そうだ
我らが降り立った「聖地」・・・・
ヤマトに造らせた神話では
キサマ 人間にこう呼ばれてたな
「ツクヨミ」・・・・と
そして我は「スサノオ」
キサマに破壊されたあれは・・・・
「アマテラス」・・・・とな
ムダだ・・・・
JUDO
・・・・ここは私が造りだした虚空の牢獄だ
ぬけ出せやせんよ
チ・・・・
黙れ!!
唱うな!!
我の幽閉と引きかえに
己の肉体を失い
頭蓋をさらした
裏切り者が
そうだ・・・・
まるでキサマの魂を受け継ぐように
人間の中からも反逆者が出ようとは・・・・
一条享
村雨しずか
ZX(ゼクロス)
そして
カメンライダー
まさか・・・・
キサマがやらせているのか
ちがう
人間の意志だ
自由と命を求める人間の・・・・な
自由・・・・?
命・・・・?
人間が
やはりキサマは 壊れてしまった様だな
・・・・・
しかし・・・・ZXへの移り身のかなわぬ今・・・・
JUDO
お前の自由も潰えた
フ・・・・いい気になるなよ
ツクヨミ・・・・
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第3部 序章 JUDO(スサノオ) ツクヨミ より
ハァ・・・・
!
あ・・・・あの
村雨良だ・・・・・
この人が・・・・10人目の仮面ライダー・・・・
沖さんの事 聞かせてくれないか
え?
義経の言っていた
「望んでなった」という9号ライダーの話を
(略)
数年前 国際宇宙開発研究所
ヘンリー博士
宇宙開発用改造人間第1号には 僕が志願します
一也・・・・
君は孤児としてこの研究所で育てられた
そのために自分を犠牲にしようとしているのではないのか?
・・・・違います
僕が志願したのは 科学者だった両親の遺志をを継ぎたいからです
父も・・・・母も・・・・
人類の未来を
宇宙に懸けていました
スーパー1 目覚めよスーパー1
大気汚染 飢餓 資源の枯渇
エネルギーの供給を宇宙に求めた国際宇宙開発研究所はスーパー1を造り上げた
一也さんは そのプロジェクトチームの一人だったの
そうか・・・・
自ら望み・・・・
そして求められて生まれてきた・・・・か
そんな仮面ライダーもいたんだな
いや・・・・なんか嬉しそうだな・・・・って
嬉しい・・・・
そうかもな
同じ改造人間として・・・・
それほど
恵まれてる者がいる・・・・
それは我が事のようにな・・・・
漫画『新仮面ライダーSPIRITS』5巻 第18話 黒き赤心 村雨良 沖一也 草波ハルミ ヘンリー博士 より
チイッ 梅花
ダメよ!!ダメダメ
同じ赤心小林拳が争うなんて・・・・
ちょっと・・・・・
そこの村雨良!!
見物してないで 早く二人を止めてよ!!
いや・・・・
「いや」・・・・?
しかし・・・・
「しかし」?
これだけ仲良く盛り上がられちゃ止めるのも無粋かなと思ってな・・・・
「仲良く」〜〜!?
やはり・・・・来ない・・・・
・・・・とすれば梅花は・・・・
な・・・・
ヒュ ウウ
師範 なにを・・・・
数珠はどうした
僧兵にとって 数珠とは
戦の中で いつ何時 首を奪われたとしても魂は赤心寺と共に在るためのものだと教えたはずだぞ
ガッ
それと・・・・キサマ
息が少々生臭い
漫画『新仮面ライダーSPIRITS』第19話 矛と盾 沖一也 村雨良 草波ハルミ 義経 地獄谷五人衆ヘビンダー より
「フフフフ!見たか、天道総司!加賀美新!天は我らに味方した!私はこの場を生き延びる!そしてネイティブ軍団を再構築し、人間どもを全滅させてやる!」
送信施設で小爆発が始まり、その爆発を盾にしている根岸を追撃できないハイパーカブトとガタック。
笑いながら逃げてゆく根岸。
しかしそんな根岸の腕を掴んで止めた黒いライダーがいた。
「お、おまえは!?は、離せ!」
根岸を引き留めたのはダークカブトだった。
「天道総司、この世界ん頼んだよ。ひよりがいるこの世界を……ボクたちの世界を」
「任せろ」
ダークカブトは根岸を連れて送信施設に飛び込んだ。
「うわああああああ!?」
同時に送信施設は大爆発を起こした。
ドドーン!
激しい炎が天を焦がし、どす黒い爆煙が舞い上がった。
その炎を見ながら天道は変身を解除した。
同じく変身を解除した加賀美は力を使い果たし、その場に崩れ落ちそうになった。そんな加賀美の肩を天道が支えた。
「やったな、天道……」
「もうちょっとスマートに決めたかったんだがな……」
「よく言う……」
「加賀美……一度しか言わないからよく聞いておけ」
「なんだ?」
「同じ道を往くのはただの仲間にすぎない。別々の道を立って往けるのは」
「友達だ」
「ああ」
「それもおばあちゃんの言葉か?」
「いや、俺の言葉だ」
天道がニヤリと微笑んだ。
加賀美もニヤリと返した。
「加賀美君!」
「師匠〜!」
岬と蓮華が駆けてくる。
その後方から田所もやってくる。
「陸さんも無事だ。よくやったぞ、二人とも!」
それぞれがそれぞれのできうることを全力でやりきった。爽やかな笑顔を浮かべていた。
加賀美と天道も……。
二人は今、並び立っていた。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦!3 本文 仮面ライダーハイパーカブト(天道総司) 仮面ライダーガタック(加賀美新) 仮面ライダーダークカブト(擬態天道総司) 根岸 岬 蓮華 田所 より
「子供のころ、まだ物心ついて間もないときに、父親は俺の目の前で死んだ……」
炎が舞いあがる武家屋敷の一室、身体中を矢に貫かれた丈瑠の父親は、棒立ちの息子に向かい自分の代わりに闘え、今日からおまえがシンケンレッドだと言い残し、この世を去った。手渡された折神の意味もわかんないその息子へ、すべてを託して父は死んだ。
「でもその当時、俺はまだ死の意味がはっきりわかってなかったんだと思う。死というものがどういうことなのか、まるで理解していなかったんだ」
「……今は、どうなんですか?」
丈瑠は俯く。西村は答えが戻ってくるのをじっと待っている。しばしの間。
「あれ以来、俺はずっと孤独だった……人との繋がりを避け、壁を作り、一定の距離を保ち生きてきた……人との繋がりを持てば、それは弱さになる。自分に近づけば、それだけその人が危険に晒される。だから……それが俺の生き方だった……」
「…………」丈瑠の言葉が過去形だったことに、西村は安堵の思いだった。それはつまり、今は違うと言っているのが同意だからだ。
「だから、俺にはわからない。身近な人間が突然いなくなるなんて経験を、したことがないから……」
「その言葉を聞けて、少しほっとしましたよ……」
「…………」意味が分からないので西村を見やる丈瑠。
「あなたは強い……とてもね。そして、その強さに裏打ちされているのは深い思いやり……つまり優しさです」
「なぜ、そう言いきれるんだ?俺はただの、人付き合いの悪い殿様だ」
「口にしなくてもわかりますよ。なにせ私は精神科医ですからね。あなたにたとえ近しい人を失った経験がなかったとしても、あなたは今現在これだけ心痛めている……自らを責め、その責任を必要以上に感じて、深く苦しんでいます」
「…………」
「きっとあなたなら大丈夫……あなたなら成し遂げられる。だから、自信を持ってください……それは私が保証しましょう」
「そういう、ものなのか?」
「そういうものです。理想は高く、妥協する必要はありません……ただし、自分をあまり責めないでください……私に言えることは、それくらいですかね?」
「知らないうちに、俺はカウンセリングを受けていたようだな」そう言うと丈瑠は椅子から立ちあがる。
「お代はけっこう、ただし……」西村は言葉を切って丈瑠を見つめる。
「必ずこの世を救ってください」そう言うと西村も立ちあがり力強く、そしてまっすぐに丈瑠を見やる。
「ああ……わかった」丈瑠も力強く頷き、そう答えた。
「幸運を……」そう言うと西村は手を差し出した。
二人は固い握手をかわして、そして別れた。
大和屋暁『侍戦隊シンケンジャー』26 本文 志葉丈瑠 西村 より
「早く正式な隊員になりたい……そして組織が密かに開発しているというマスクドライダーシステムを使って……弟の仇を……!」
そう一人ごちてある加賀美のズボンのポケットから男が財布を奪って走り去った。
「アッ!」
と、なりながらもバイクのスタンドを立て、それから慌て追いかける加賀美。
「待て!」
元高校球児で足には自信のあった加賀美だが、男の足はそれより速い。
必死に追いかける加賀美と逃げる男の前方から作務衣(さむえ)を着た一人の男が歩いてくる。
道は狭く、このままでは作務衣姿の男と引ったくりの男がぶつかってしまう。
「危ない!逃げて!」
加賀美が叫ぶ。
しかし作務衣の男は堂々とまっすぐ歩いてくる。
引ったくりの男は刃物を出して作務衣の男に叫ぶ。
「どけ!」
それでも堂々と歩く作務衣の男。
引ったくりの男は威嚇のために刃物を振り回す。
作務衣の男は刃物が届かないと見切っているが如くに微動だにしない。
実際、刃物は男の首のギリギリを空振りした。
加賀美は引ったくりの男にタックルした。
ZECTで鍛えられた格闘術で男を素早くねじ伏せ、男の右手から刃物を手放させ、関節を決めた。
そして加賀美は男から財布を奪い返した。
だが男は加賀美が安堵した一瞬のスキを見逃さず、ドン!と加賀美を押し倒し、逃げていった。
「いって〜」
と、押し倒しされた際に後頭部をさすりながら立ち上がった加賀美はジッとこちらを見ている作務衣の男と視線を重ねた。
「危ないじゃないか。なぜ逃げないんだ?」
「俺は誰からの指図も受けない。俺の通る道は俺が決める」
相変わらず作務衣の男は堂々としていた。
「はあ……?」
加賀美はその返答に呆気にとられた。
「そしてもう一つ。へたにかわせば」
作務衣の男は持っていたボウルの中を見せて言った。
「せっかくの豆腐が崩れる」
加賀美はさらに呆れて言った。
「あのな、運良く助かったからいいようなものの、へたすりゃ刺されてたかもしれないんだぞ」
「運良くという言葉は俺にはない。だいいちこんななまくらは俺の命まで届かない」
男は引ったくりが落としていった刃物を下駄で踏みつけた。
「なんなんだ?おまえ」
「おばあちゃんが言っていた」
作務衣の男は神が降臨したかの如く、人差し指を手に向けてこう言い放った。
「天の道を往き、総てを司る男……」
思わずその人差し指の先を見上げる加賀美、そこには眩しい太陽が輝いていた。
「俺の名は天道総司」
光り輝く天道の姿には後光が差していた。
それが加賀美と天道の出会いだった。
米村正二『仮面ライダーカブト』選ばれし者 本文 天道総司 加賀美新 引ったくりの男 より
三途の川。イカシンケンオーはそこにいた。
コクピットの一行。顔を見合わせている。
(略)
「それでも、あの船を沈めれば……命を賭ける価値はある、か」
「せめて一撃!いいな!?」レッドは一同の顔を見返す。
「おう(はいっ)!」
イカシンケンオーは六門船をめがけて走り出す。
「はああああああああああああああああああ!」六人の雄叫びと共にイカシンケンオーは槍を振り上げる。
「行くぞっ!」
レッドの声と共にイカシンケンオーの背中のウイングへと雷が降ってくる。避雷針のようにウイングが落雷を吸収、エネルギーがチャージされ集約されたそれが槍の刃部分へっ集中する。
「槍烏賊一閃!」レッドたちは声を合わせ叫ぶ。
槍を六門船をめがけて降り下ろす。
激しい激突音と衝撃が、大きく六門船を大きく揺らし水しぶきが飛び散る。
哀れ六門船は真っ二つかと思われたが……実際はそうはならない。六門船は壊れることなくそこにあった。
「なに!?」
見れば六門船の舳先にはもうひとりのはぐれ外道、腑波十臟がいる。サイズの違いもお構いなしに彼の愛刀裏正で、イカシンケンオーの一撃を受け止めているではないか!
「十臟!」
「悪いな、シンケンジャー。だが、まだこの船を沈めさせるわけにはいかない。はあ!」
気合いと共にイカシンケンオーの槍を弾き、たたらを踏ませ後方へと下がらせた。
「フ……」
「なんて野郎だよまったく!」
「源太!まだいけるのか!?」ゴールドを見やり叫ぶ。
「さっきからとっくにやばいって!」
「殿!攻撃を!」
「へっ、あいつら道連れにできんだったら!」
「この命、惜しくはない!」
「殿様!」
「覚悟はできてる!」一同は叫んだ。
皆一様にノリノリである。敵の本拠地を叩くチャンス。命に代えても逃すわけにはいかないという空気に完全になっている。
「…………」レッドは隙間と六門船を見やる。隙間は確実に小さくなっている。
このまま闘いを続ければ、隙間は閉じ、自分たちは確実に命を落とすことになる。レッドは悩む。千載一遇のチャンスではあるが、絶体絶命のピンチでもあった。
レッドは考える。進むか?退くか?
「殿、やりましょう!」
「丈瑠!」
しかし、
「……撤退だ」レッドは悩んだ挙げ句、決断した。
イカシンケンオーは六門船を一瞥し、背を向け隙間へ向かった。
「…………」その背中を見やる十臟。
そして同様に、船の中からドウコクらが、その背中を見送っていた。
「シンケンジャー、あいつら……」今度会ったらぶっ殺す。そんなニュアンスを言葉に込めてドウコクは呟いた。
大和屋暁「侍戦隊シンケンジャー 三度目勝機」本文 シンケンレッド(志葉丈瑠)シンケンブルー(池波流ノ介)シンケンピンク(白石茉子)シンケングリーン(谷千明)シンケンイエロー(花織ことは)シンケンゴールド(梅盛源太) 腑波十臟 血祭りドウコク より
そんなどん底まで堕ちた影山を助けたのは、やはりすべてを失った矢車であった。
「影山、いい顔になったな。俺はといっしょに地獄に堕ちるか?」
「これ以上の地獄がどこにあるというのさ?」
「俺の弟になれ」
矢車はそう言ってホッパーゼクターを影山にポイと投げつけた。
「……あんただけだ、俺に振り向いてくれたのは」
影山は矢車に感謝した。
「二人で歩いてゆこう。ゴールのない暗闇の中を」
こうして影山は矢車を「兄貴」と呼ぶようになり、キックホッパーと同じく第三勢力のライダー、パンチホッパーとなったのだ。
ZECTにとってもひたすら迷惑な存在となった矢車のキックホッパーと影山のパンチホッパー……二人はいつしか『地獄の兄弟』と呼ばれるようになった。
それでもパンチホッパーとして再びライダーの力を手に入れた影山にはワームを倒したいという気持ちが芽生えもしたが、矢車はそんな影山にこう吐き捨てた。
「いいよなおまえは、正義の味方の燃えカスがあって……そんなもん、ウジ虫にでも食わせてしまえよ……ああ、生きているってむなしいよな……どうせ俺なんか……」
あくまでも光を求めない矢車の態度に影山も光を求めることをやめた。
(略)
北欧行きのタンカーが、月光を反射して波模様を作る大きな海を切り裂くように進んでいた。
夜の海原はすべての音を吸い尽くしたように静かだった。
柔らかな月光を浴びたタンカーの一角に密航者の影があった。
淡い月光さえ届かない暗闇の壁にもたれて、矢車が座り込んでいた。
矢車の腕には影山が抱かれていた。
「相棒、俺たちは永遠にいっしょだ」
しかし矢車には頬を寄せるように俯いたままの影山は瞳を閉じて動かない。
「行こう、俺たちだけの光を掴みに……」
影山は返事をしない。
「けっして輝かない闇にまみれた光を掴みに……なあ、相棒」
影山は息をしていなかった。
矢車の瞳から涙がこぼれ落ちた。
その血の涙は月光を反射してどす黒く光った。
それこそが二人が掴もうとしていた闇の光なのかもしれなかった。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦!2 本文 仮面ライダーキックホッパー(矢車想)仮面ライダーパンチホッパー(影山瞬) より
天道家の台所には料理をするひよりの姿があった。
その横では樹花がひよりを手伝っていた。
「ひよりさん、わざわざ来てくれてありがとう」
「いいんだ、これぐらい」
樹花とひより……二人は共に天道の妹だった。
だがそのことで話をしたことはない。
それでも二人は何か不思議な絆みたいなもので結ばれているような気がした。
だからお互いがお互いの存在に温かいものを感じていた。
「いいにお〜い!ねえ、ひよりさん、どんな料理ができるの?」
「ビストロ・サルで僕が出そうと思ってるメニューなんだ……まだ完成してないんだけど」
二人並んで料理を作った。
やがて食卓にはひよりのシェフデビューの料理が並んだ。
「わ〜!どれもおいしそ〜」
「どうぞ」
「いただきます」
樹花が勢いよく食べ始める。
「おいし〜!これ、お兄ちゃんの作る料理とおんなじだ」
「え?」
「優しい妹……」
「そう……ありがとう」
樹花の言葉がひよりには嬉しかった。
「おばあちゃんが言っていました。料理は人から人へ受け継がれ、その味は人と人をも結ぶって」
おばあちゃんの言う通りだった。
たしかにひよりは料理でたくさんの人とも繋がった。
目の前にいる樹花とも加賀美とも弓子とも、そして天道とも。
そしてひよりと樹花はまだ帰ってこない兄の無事をいっしょに祈った。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦! 2 本文 天道ひより 天道樹花 より
どんな状況でも彼らはこの世を守りきった。だからこそこの風景を愛おしく思える。この風景を見やることができるのが、奇跡のように感じられる。
「たしかに、そう考えて見ると感慨深いものがあるな……」
「ま、あと一秒でも三途の川から戻るのが遅かったら、そんなことも言ってられなかったんだろうけど?」
「たしかにそうかもね」
千明の言うとおり、丈瑠が三途の川から撤退を決心するのがあと一秒でも遅かったら、彼らはこの世に戻れなかった。それは事実だ。彼らが隙間から飛び出した瞬間、装置は彼らの帰還を待っていたかのように派手な音と共に爆発四散した。まさに間一髪の生還劇だった。
「で、丈ちゃん?なんであそこで戻るって決めたんだ?」
「そのことか……」丈瑠は苦笑いを浮かべる。
「…………」一同は丈瑠に注目する。
丈瑠は一同を見渡し、そしてまた風景に目を戻す。
「……なんとなく、だ」
嘘だった。
丈瑠自身、自分の命を惜しいとはまったく思っていなかった。外道衆の本拠地を叩けるなんてチャンスはそうたびたびはない。だが、結局のところ、仲間の命とチャンスを天秤にかけた途端、丈瑠は仲間の命を取ったのだ。ただそれだけの話だ。
大和屋暁『侍戦隊シンケンジャー 三度目勝機』43 志葉丈瑠 池波流ノ介 白石茉子 谷千明 花織ことは 梅盛源太 より
おい
あれ
よっと
千弘くん!!
千弘くん!!千弘くん!! 生きてたんだね!!
バッカ 俺が死ぬかよ
ワアアア
村上ぃ!!
先生
スマンかったなぁ・・・・ お前にばかり迷惑かけてなぁ・・・・
アレ アライグマ 死にたがりなおったのかよ・・・・
(略)
ええ?ネオショッカーが逃げ出した?
ああ もうちょいで全滅だったんだけどな
ス・・・スゴイ!!
じゃあ 千弘くんが!?
俺じゃねえよ
俺もちったあがんばったけどな
やったのは
仮面ライダーーよ
カメン・・・・ライダー・・・・
って 千弘くん キライじゃなかったっけ
俺はさ・・・・
本当はそんな
たいしたヤツじゃねえんだ
千弘くん・・・・
少し変わった・・・・?
漫画『仮面ライダーSPIRITS』第4話 共闘 村上千弘 少年 先生 生徒たち より
京都で 滝が待っている
行ってやってくれ
お前も「仮面ライダー」ってやつの一人なんだろ
!
・・・・・
まだ抵抗あるかい?
・・・・だよな
!
あるよなぁ
普通・・・・・
筑波君!!筑波君!!
私は・・・・ この青年を死なせたくない!!
これは・・・・
この顔は・・・・
これが俺の姿か・・・・
俺が目を覚ました時は
すでにネオショッカーの改造人間計画に巻き込まれてた後だった
そして
その科学者は
俺の姿を見て・・・・
罪悪感に押しつぶされそうになっていた
君には詫びる言葉もない
私を憎んでくれ!!
博士・・・・
見てください
この・・・・力を・・・・
セイリングジャンプ!!
そ・・・・
そんな話・・・・
ただのやせ我慢じゃないか
・・・・・・・・かもね
だけどあの時 俺は一人の科学者の涙を止めた・・・・
あれが俺にとって
仮面ライダーとしての最初の仕事だった
ば・・・・ばかな!!
俺にそんなマネができるか!!
おい・・・・
俺はな・・・・
バダンの尖兵として何人も・・・・
何百何千の人間を殺してきたんだぞ!!
この・・・・
この俺の体は・・・・
いずれ JUDO のものとなる!!
その時・・・・
俺はまた人間を殺して・・・・
そしてキサマも!!
だから
いいんじゃないか
それでも・・・・
それでも 戦っていいんだぜ
村雨良 君は・・・・
人間のために 戦っても いいんだ
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第5話 旅立ち 筑波洋(スカイライダー) 村雨良(仮面ライダーZX) グレゴリー警部 志渡敬太郎博士 より
ヒ・・・・ヒイ・・・・
た・・・・助けて・・・・
あ・・・・
!! ノリちゃん早く!!
!!
ったく・・・・
鴨川のせせらぎが台無しだぜ
こいつら風流ってもんがわかっちゃいねえ
なあ 滝
まあな 一文字
しかし一文字 いくら変装ったって こりゃ 逆に目立っちまうんじゃねえか?
そうか? ホラ・・・・
大丈夫
ヒッ・・・・
!!
お母さん!!
おうおうおう!!
出やがったな ナメクジキノコ エイドクガー
ノリノリだろ お前
京の町を騒がす 悪党どもよ!!
このベルトが目にはいらねえか!!
目・・・・つぶってな
変身
テメエの相手はこっちだ
へ・・・・
こいつは結構 使えるぜ 結城!!
ム ウンーー
ライダアアア キイイイック
漫画『仮面ライダーSPIRITS』9巻 第6話 部隊 仮面ライダー2号(一文字隼人) 滝和也 母親 ノリちゃん より
「それはそうと源太、あの装置、あれからどうなった?」丈瑠は源太に向き話を変える。
「ああ、それがさ、難航してるらしい。設計図はあるし部品も作った本人がいるってのに、あの装置の復元は難しいらしい」
「ってどういうこと?だって設計図はあんだろ?だったら……」
「さあな、どういうわけかそのとおりに作ってもうんともすんとも言いやしない。作った本人も首傾げてやがったよ」
「そうなんや……なんか不思議な話やな」
「結局のところ、あの装置には博士の執念がこもっていたということだな」
「ちがうって、奥さんのために研究したんなら執念じゃないだろ」
「ほんまやわ。流さんムードないわぁ」
「え、いや、私はただ本当のことをだな……」
「つまり、大切な人への想いが奇跡を起こしたってことよね?」
「かもしれないな……」
おそらく装置は二度と作動しないだろう。皆が言うように大切な人に会いたいと思う心が、この世を護ろうとする人の意志が、そのときにはこもっていた。だからこそ、あの装置は奇跡を起こした。今ならそう素直に信じられる。けっして設定や整合性などを考えずに信じられる。
大和屋暁『侍戦隊シンケンジャー 三度目勝機』43 本文 志葉丈瑠 池波流之介 白石茉子 谷千明 花織ことは 梅盛源太 より
その日のビストロ・サルの客席には珍しい客が来ていた。
仮面ライダードレイクの有資格者、風間大介とその相棒ゴンであった。
「あ〜!メイクアップアーティストのお兄さんだ!」
店の手伝いで注文を取りに来た樹花が素っ頓狂な声をあげた。
「久しぶりだね。しばらく見ないうちに随分と美しくなった。たとえていうなら……その……えっと」
「百合子のよう!」
ゴンがいつものように助け船を出す。
「そうそう、それそれ……って百合子はゴンの本名だろ」
「そうだよ。あたしだって名無しのゴンべは卒業だもん」
ゴンの言うとおり、髪を下ろしたゴンは少し大人っぽくなっていた。
「じゃあ、お嬢さん、ひよりみランチを二つお願いするよ」
「かしこまりました。ひよりさん、ひよりみランチ二つ入りました〜!」
「はい!」
厨房から、ひよりが元気に返事する。
ひよりは汗を拭う間もなく、料理を続けていた。
天道はまだ来ない。
でも寂しくはなかった。
「そばにいないときはもっとそばにいるか……」
ひよりは天道が言った言葉を思い出していた。
天道はそのうち必ず来てくれる。
そして店に入るなり、我が物顔でこう言うはずだ。
「サバ味噌!」
ひよりは料理を作り続けた。
扉が開き、厨房にも爽やかな風が吹き込んできた。
それは天の道を往く者が来た合図だった。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦!3 本文 天道ひより 天道樹花 風間大介 ゴン(百合子) 天道総司 より
その日のビストロ・サルの客席には珍しい客が来ていた。
仮面ライダードレイクの有資格者、風間大介とその相棒ゴンであった。
「あ〜!メイクアップアーティストのお兄さんだ!」
店の手伝いで注文を取りに来た樹花が素っ頓狂な声をあげた。
「久しぶりだね。しばらく見ないうちに随分と美しくなった。たとえていうなら……その……えっと」
「百合子のよう!」
ゴンがいつものように助け船を出す。
「そうそう、それそれ……って百合子はゴンの本名だろ」
「そうだよ。あたしだって名無しのゴンべは卒業だもん」
ゴンの言うとおり、髪を下ろしたゴンは少し大人っぽくなっていた。
「じゃあ、お嬢さん、ひよりみランチを二つお願いするよ」
「かしこまりました。ひよりさん、ひよりみランチ二つ入りました〜!」
「はい!」
厨房から、ひよりが元気に返事する。
ひよりは汗を拭う間もなく、料理を続けていた。
天道はまだ来ない。
でも寂しくはなかった。
「そばにいないときはもっとそばにいるか……」
ひよりは天道が言った言葉を思い出していた。
天道はそのうち必ず来てくれる。
そして店に入るなり、我が物顔でこう言うはずだ。
「サバ味噌!」
ひよりは料理を作り続けた。
扉が開き、厨房にも爽やかな風が吹き込んできた。
それは天の道を往く者が来た合図だった。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦!3 本文 天道ひより 天道樹花 風間大介 ゴン(百合子) 天道総司 より
その日のビストロ・サルの客席には珍しい客が来ていた。
仮面ライダードレイクの有資格者、風間大介とその相棒ゴンであった。
「あ〜!メイクアップアーティストのお兄さんだ!」
店の手伝いで注文を取りに来た樹花が素っ頓狂な声をあげた。
「久しぶりだね。しばらく見ないうちに随分と美しくなった。たとえていうなら……その……えっと」
「百合子のよう!」
ゴンがいつものように助け船を出す。
「そうそう、それそれ……って百合子はゴンの本名だろ」
「そうだよ。あたしだって名無しのゴンべは卒業だもん」
ゴンの言うとおり、髪を下ろしたゴンは少し大人っぽくなっていた。
「じゃあ、お嬢さん、ひよりみランチを二つお願いするよ」
「かしこまりました。ひよりさん、ひよりみランチ二つ入りました〜!」
「はい!」
厨房から、ひよりが元気に返事する。
ひよりは汗を拭う間もなく、料理を続けていた。
天道はまだ来ない。
でも寂しくはなかった。
「そばにいないときはもっとそばにいるか……」
ひよりは天道が言った言葉を思い出していた。
天道はそのうち必ず来てくれる。
そして店に入るなり、我が物顔でこう言うはずだ。
「サバ味噌!」
ひよりは料理を作り続けた。
扉が開き、厨房にも爽やかな風が吹き込んできた。
それは天の道を往く者が来た合図だった。
米村正二『仮面ライダーカブト』決戦!3 本文 天道ひより 天道樹花 風間大介 ゴン(百合子) 天道総司 より
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