土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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アンナがせっかく運んだ病人用の流動食を作って持っていっても、モートンは、「食事なんか頼んだ覚えはねえ」と言って食べようとしなかった。アンナは、
「私、どうしてもモートンさんを好きになれないわ。自分一人助かろうとするなんて身勝手すぎだわ」
と、すっかり腹をたててしまった。
「アンナ、これを読んでごらん」
エルンストは、アンナにカヌーの中で見つけた紙切れを差し出した。
「モートンさんが書いたものだ。カヌーを発見した人に読んでもらうつもりだったらしい」
アンナは紙切れを広げて、そこにびっしりと書かれた文字を読み始めた。
私は飢えと渇きで死んだ場合のことを考えてこれを書き記しておく。これを読んだ人はただちに救助に向かってほしい。おおよそ東経115度、南緯10度辺りと思われる無人島にスイス人医師の一家五人とオーストラリア生まれの少年一人が漂流している。島の特徴は、火山島で、島の中央に岩がむき出しの山がそびえ、島のまわりに環礁があること。そして島の四方少なくとも120マイルの範囲には、どんな陸地もない。絶海の孤島である。家族の中には、小さい子供もいる。至急、救助に向かってほしい-----。
モートンは船の航路までカヌーをこいでいって、みんなが漂流していることを知らせようとしたのだ。たとえ自分は死ぬようなことになっても、ロビンソン一家とタムタムを助けようとしたのだ。
「自分だけ助かろうとしたわけじゃないのか」
フランツはぽつりとつぶやいた。
「モートンさんはね、お母さんが帰った後、食べたのよ。お母さんが持っていったごはん。うまいうまいって。自分のばかりかタムタムの分まで横取りしてきれいに平らげちゃって、まだ足りないって顔してたわ」
フローネに聞いてアンナは驚いた。
「まあ……そうだったの……」
アニメ「ふしぎな島のフローネ」竹書房小説 恐ろしい地震 本文 フローネ・ロビンソン エルンスト アンナ フランツ より
雲は空のいやに低い位置に張り付いており、道行く子供たちをさらうための準備をしているように見えた。彼らは大きくて赤い目を凝らし、誰を連れ去るかの相談をしている。
彼らは、咳のかわりにごほんごほんっ街中に雪を降らした。
つまり、悪魔というのは存在のことである。と、神は言った。
桑島由一『神様家族7』新型握手 冒頭本文 より
そういえば、去年もそうだった。立候補の申し込みを、受け付けの締め切りギリギリまで引き延ばしたのだ。決心させたのは静さまの不用意な一言。
『私はあなたを妹として迎えるつもりよ』
それが、志摩子さんに火をつけた。志摩さんは、ただ自分とお姉さまのプライドを守るために戦ったのだ。
志摩子さんは白薔薇さま(ロサ・ギガンティア)の座に執着していない。過去も、今も、一貫して変わらない。
今野緒雪『マリアさまがみてる』仮面のアクトレス 始業式の甘えん坊 本文 蟹名静(回想) 福沢祐巳 藤堂志摩子 より
むしむしと湿った空気がよどんだ、暑い夜だった。ジョンも舌を出してぐったりと寝そべっていた。
「この間の船に乗っていれば、今頃はもっと涼しいところにいられたのに。どうして気づいてくれなかったんだろう。気づいても知らん顔をしていったのかもしれないな」
と言ってフランツは暑そうにヤシの葉であおいだ。
「そんなことはない。航海中に漂流者を発見したら、必ず救助の手を差しのべれことが義務付けさせられている」
「でも、海の上では誰も見ているわけじゃないから、知らん顔してもわからないよ」
「人間を信じるか信じないかは、おまえの自由だ。私は信じるね」
「そうですよ。人間を信じられなくなったらおしまいですもの。今度通る船はきっと助けてくれると思うわ」
と、アンナもエルンストに賛成した。
アニメ『ふしぎな島のフローネ』竹書房小説 船が見える 本文 エルンスト アンナ フランツ ジョン より
え〜。触っていいですか〜。
はい、タイホタイホ!
なんで逮捕されるんですか。
変態だから。
え〜!勘弁してよ。あはは〜♪
バラエティ『指原カイワイズ』アンタチャップル山崎 アンガールズ田中 より
「つかぬことを訊くです。二人は恋人なのですか?」
「違う」「違います」
マリナと刹那がユニゾンで答える。
「むむっ、乙女の勘が外れたです」
少女は眉を寄せ、ぷうと頬を膨らました。
ノベライズ『機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン』1 天使再臨 刹那・F・セイエイ マリナ・イスマイール ミレイナ・ヴァスティ
涼子は、よろめくようにしてモルフェウスの宮殿に舞い戻る。
丸一日、宮殿を空けたのは久方ぶりだ。涼子は地下室に駆け下り、チェックを始める。本当はすぐにでもベッドに倒れ込みたかったが、手を抜けばモルフェウスは、二度と目覚めなくなるかもしれないという強迫観念が涼子を襲う。
その日に割り当てられた八十三項目のチェックを終え、二階に上がる。余ったボルシチを、冷たいカップに注ぎ一息で飲み干す。空っぽのカップにぎらついた油がどろりと残る。
血を飲み干すバンパイアになった気がした。次の瞬間、涼子はベッドに倒れ込んだ。
海堂尊『モルフェウスの領域』第一部 凍眠 3.マニッシュ・リーバー 本文 より
翔子は佐藤部長代理の顔を覗き込む。佐藤は続けた。
「今ここであんな番組が流れたら、上層部や市民はこう思うだろう。救急現場は大変そうだけど、まだ現場は頑張れそうだ。現状でここまでやれるなら、このまま見守ろう。そして結局何もしない。やがて俺たちは擦り切れて壊れていく。だけどそれまで救急現場を死守すればそれでいいと考えている。上層部や市民は俺たちを安く使えればそれでいいんだ。あの素晴らしい番組は、そうした気持ちを視聴者に呼び覚ますいい出来だった。だからこそ、あんな番組を流されては困るんだ」
佐藤部長代理は、たちあがってのびをする。
「それにさ、俺が患者に暴言を吐いたのも事実だし、入院させるべき患者を追い出したんだ。そんな場面を流さず、カッコいい所だけを流すのはやっぱり反則だろ。俺は、あの革ジャン野郎を入院させたかった。あの時の判断は、救命救急センターの部長代理としては正当だった、と今でも自信を持って言える。でも、救急医としては最低の判断だったんだよ」
佐藤部長代理はうつむいて、呟く。
「ああ言った瞬間、舐めかけのチュッパチャップスを投げつけられたような気がした」
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』残照--2007 佐藤伸一部長代理 如月翔子 より
曽根崎教授の言葉は謎と啓示に充(み)ち、いくら考えても真意に到達できそうにない。長い間練りに練った戦略を一瞬で砕いた智将の弱点を、こんな私が見つけられる、とでもいうのかしら。
一時間後、涼子は唇を噛み、白旗を掲げる。
「私にはとてもできそうにありませんし、大体、どうすればいいのかさえ、よくわかりません。せめてヒントだけでもいただけませんか?」
たった一行のメールが返ってくる。
「ヒント、ですか……」
曽根崎メールとしては異例の間投詞、そして長考。
一時間後、メールが返ってきた。それはシンプルな一文だった。
----スリーパーをひとりぼっちにしてはならない。
涼子は呆然とした。
そんなこと私が毎日考えてることじゃない。
モニタ上で赤く点滅する新着メールサイン。その時涼子は、かつて自分が選択できなかったもうひとつのオプションについて、考えていた。
海堂尊『モルフェウスの領域』2.インソムニア 本文 日比野涼子 曽根崎教授 より
西野はあっさり答える。
「人は誰も自分の顔を見ることはできないからですよ」
「鏡を使えば見えるでしょ」
西野は首を振る。
「鏡に映るのは自分の顔でなく虚像です。誰も自分自身の顔は直接は見られない。ということは凍眠をした人間の状態を理解できるのは外部の人間であり、本人ではない。これで認知系の論文が三本は書けます」
この場に田口がいないのは、彼にとって幸せだった。
海堂尊『モルフェウスの領域』本文 西野昌孝 如月翔子 より
もしかして自分はすでに死んでいるのではないかと、レノックスは思った。最初の戦闘でじつは死亡したのではないか。死んでないと思いこみしてるだけで。だから、まるで死んだようにここにすわっているのではないか。
事実を受けいれれば出られるのかもしれない。ようやく天国へ召されるのかもしれない。
ハヤカワ文庫『トランスフォーマー ダークサイド・ムーン』本文 ウィリアム・レノックス より
佐藤は一時間ほど地下室に滞在し、質問を重ねた。問いに答えるうちに、モルフェウス・システムが、単純な原理で構築されている複雑系であることを思い知らされた。
佐藤はひとこと残して部屋を去った。
「日比野さんの医学に対する理解度は大したものです。一年目の研修医よりよっぽど現場で役立ちそうです。お世辞抜きに保証します。もっともいまの研修医のレベルが低いんですが。まったくあいつらときたら、指示がないと動けない連中ばかり、眺めているとチュッパチャプスを投げつけてやりたくなります」
何故にここで飴(あめ)?涼子は不思議に思うが追及せず、会話は途切れた。佐藤が退去する直前の話し合いで、目覚めの日は四月一日に設定された。
海堂尊『モルフェウスの領域』5.グレイ・ゴー・アウエイ 本文 日比野涼子 佐藤伸一 より
エクシアのコクピットの中で、刹那は記憶の片隅に残っている声を聞いていた。
それは懐かしい声でもあり、真新しい新鮮味のある声でもあった。
夕焼けの朱い空が郷愁を呼び起こすわけではないだろうが、刹那の心の中はなぜか穏やかだった。身体の力を抜いて、ヘルメットに覆われた頭をシートにもたれかける。
瞼に浮かぶ人物は刹那にたおやかな微笑みを向けていた。
彼女が自分の名を呼ぶ。まるで心地いい音楽のように耳の中に残る。
たとえそれがまやかしだとしても、刹那は一時でもそれに浸った。
その声は自分をカマルと呼び、
そしてソランと呼んだ。
それは、マリナ・イスマイールの声であり。
母の声でもあった。
ノベライズ『機動戦士ガンダム00』1 ソレスタルビーイング 第5章 本文 より
この丸いゲージは第六文明人が計器として使っていたと思われるもので、直径が一メートル余りある一見なんの変哲もないモニターにみえた。が、この遺跡が発掘された当初、このゲージに○線があらわれ、その線で示されるものがギリシャ文字のI△EoN に分解されるのではなかろうかという推測がされ、以後、イデのゲージと呼ばれているにすぎない。勿論、アルファベットの組み合わせはいくつかの呼称を可能にさせたのだが、フォルモッサ・シェリルが、
“イデオンって読めないでもないし、意味性が深そうで趣味に合いません?”
そう言ったことで決められた呼称でしかないのだ。
ノベライズ『伝説巨神イデオン』1 覚醒編 第一章 コンタクト 本文 フォルモッサ・シェリル より
「なあ、アイアンハイド。やつはいずれ彼らの故郷をさがすほかなくなるという気がするんだが。さあ、船にもどろう」
アーク号にもどりはじめたとき、マイスターがたずねた。
「ここからどこに向かうんです、コンボイ司令?」
「さまざまな理由から、わたし自身も人間たちの世界を訪ねてみたい。もしもメガトロンがなおもそこにいて、動けずにいるのだとしたら。やつをこれきりに排除するかつてない好機となろう」彼は遠くの星々を示した。「われらはなにも、探索に慣れていないわけでもない」
この控えめな表現に、仲間の誰もが笑いだした。
ノベライズ『トランスフォーマー ゴースト・オブ・イエスタディ』本文 コンボイ(オプティマス・プライム) マイスター(ジャズ) より
天井から啓示のような声が降り注ぐ。
----受けろ。
前任のセンター長の声がどれほど恐怖で、そしてどれほど心強かったことか。
失って初めてわかった。翔子はため息をつく。
この世界にはそういうことが多すぎる。だから世界には哀しみが溢れてしまうと思う。何も考えずに疾走していたあの頃。どんな救急患者も拒否せず受け続けた、鉄の結束を誇った近衛兵集団も、今は完全に消滅した。それは誰の罪だろう。
海堂尊『モルフェウスの領域』本文 如月翔子 前任のセンター長(速水晃一) より
わたしはオプティマス・プライムである。他の星系や他の惑星に避難している生き残りの同胞たちにこのメッセージを送る。諸君は一人ではない。ここに住める世界があり、仲間がいる。諸君の合流を待っている。
映画『トランスフォーマー(第一作)』オプティマス・プライム より
ここはどこ?ぼくは死んだの?
わたしたちはプライム王朝だ。きみをずって見てきた。きみの感覚では長い時間。
見ていた?ぼくを?
きみは自分の過去の真実をまだ一部しか知らない。自分の未来についても。
どういうこと?
やがて知ることになる。
指導者のマトリクスは、最大の善をなす力も、最大の破壊をなす力も持っている。きみはそれを手にする資格があることを証明した。最初は犠牲によっつ。次は勇気によって。
なにより、きみは力を求めていない。他者を助けるために必要としているだけだ。それは真のリーダーの美徳だ。指導者のマトリクスはきみのものだ。
でもへんだよ。マトリクスは塵に還っていった。ただの砂だった。なにも残っていなかった。
きみは信念でここまできた。それを見失うな。
サム、愛してるから……生き返って……。
愛してる。
映画『トランスフォーマーリベンジ』サム・ウィトウィキー ミカエラ・ベインズ プライム王朝のプライムたち より
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