土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「……兄は……シャアの動きはわからないんですか?」
「この戦いに彼の意思は見えません。どこかで我々のやっていることを見ている。そして、何かを考えている。そんなふうに思えます」
「時代を待っているのですか。兄らしい……」
セイラは苦笑した。
「……危険な気がしますね」
「概念だけのニュータイプなど、悲しいでしょうにね。なんで……」
「いや、彼はそれを嫌って、具体的な行動に移すでしょう。そういう男です」
「そんな兄は見たくありません。死んでくれれば……」
「なぜ?」
「兄はジオン・ズム・ダイクンの意志を継ぐことはできません。だから……」
「しかし……」
ブライトは何か言いたかったが、黙った。それ以上は兄と妹の問題かもしれないと思ったからだ。そして、ブライトはまた横を向いた。リィナは天を仰いでいた。固く閉ざされた港口のハッチの向こうに広がる漆黒の闇、その冷たい闇の中で戦う兄の姿を見ているのだろうか。リィナは身じろぎもしなかった。
「……こちらも兄と妹か……」
一人の妹は兄の死を願い、もう一人の妹は兄の無事を祈る。そのちがいはどこから来るのだろう。ブライトには、その答えは出せなかった。
アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』小説 第二部 ニュータイプ 18 グレミーの反乱 本文 ブライト・ノア リィナ・アーシタ セイラ・マス より
「オトナになったのかな、アルは。どこか落ち着きがでてきたように見えないか?」
学校脇に停めた車の中で、アルの父親は、ふと読んでいた新聞から目を上げて、校庭に並んでいる自分の息子の後ろ姿に、言葉を漏らした。
助手席に座った母親が、クスクスと笑う。
「いつもかぶっている帽子をしてないからでしょう」
「そうか、そうだな----」
父親は再び新聞に目を落とした。
「あなたはさっきから、それとにらめっこをして、なにか面白い記事でもありますのかしら?
「いやね。おまえもこのコロニーが、クリスマスにジオンの核ミサイルの目標になっていたのは噂は聞いているだろう。この記者は、それなこのコロニーに駐在してた連邦の新型モビルスーツを、もろとも破壊しようとしたからではないか、というんだ」
「ま、あ、恐ろしい----」
「しかし、面白いのは、この記者が、クリスマスに連邦のモビルスーツと闘った、ジオンのザクについて言及してるくだりさ」彼は新聞を指で弾くと、続けた。「そのパイロットは、自分が連邦の新型を破壊しなければ、このコロニーが味方によって核攻撃されると知って、単身闘いを挑んだというんだ。つまり彼は、このコロニーを救おうとしていた、というんだな。自分が死んだ時に備えて、ことの一部始終を納めたテープも、残してあったらしい。それをこの新聞社は入手したんだそうだ」
「まあ、ほんとなのかしら?」
「さあねえ?ま、詳しいことはそのうちわかるだろう。そのパイロット----」新聞を折りたたみ-校庭のアルに目をやると、もう記事のことなどどうでもいいと言った口調で、彼は付け足した。「奇跡的に助かったらしい。今朝、意識を取り戻したそうだから----」
OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』小説 エピローグ/0080----春 本文 アルの両親 より
「日本中の蘭方医たちが崇める西洋医師も、先生にかかっちゃ形なしだぜ」
「いえ、そういうことでは……」
「実際によ、目の前で見たこともないすごい手術を見せられたら、どんな医者でもたまげるさ。どうだい、次は、江戸の蘭方医たちをびっくりさせてみねえかい」
そこまで言ってから、麟太郎は大きく一つ欠伸をして、腕を枕がわりに仰向けになった。
「先生の医術を江戸に……いや日本中に広めるためには、まず西洋医学所の連中を説得することが必要だまず大丈夫……先生のことは、横浜の外人医師の口から、たちまち彼らに伝わるからな……」
仁は、麟太郎の言葉を複雑な思いを抱いて聞いていた。麟太郎は続けた。
「おいらは海軍作りが専門だがよ、できる限り南方仁に協力するぜ……。あんたはこのニッポン国の虎の子だ。市井(しせい)の町医者で置いといちゃ、国家の損失だからな」
「……はい……」
あのポールという名の水兵のように、仁がこの時代においては死すべき定めだった人々を救うことによって、歴史は彼の知らない方向へと向かっているかもしれない。
それでも、仁は人を救いたかった。救わずにいられなかった。歴史が変わってしまうことを言い訳に、目の前で苦しんでいる人間を見捨てることはできなかった。
そう、仁がこの時代に最初にあらわれたあの時から、ずっとそうだったように。
小説『JIN--仁--』序 本文 南方仁 勝麟太郎(勝海舟) より
冷徹な目で見れば、あの両親の会話は、蛇足に過ぎないでしょう。もし、OVA“ポケット----”でそれをやっていたとしたとしたら、一流の悲劇が、瞬く間に三流のハッピーエンドに堕ちることは、目に見えています。
しかしぼくは、小説“ポケット----”は、それでいいのではないか、そう思ったのです。一流の悲劇である、OVA“ポケット----”を観た皆さんが、その感動ゆえに持つであろう、せつなさ、やるせなさを、少しでもやわらげてあげられたら----と。
OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』小説 あとがき/1989----秋 本文 著者 結城恭介 より
……ブライト・ノア艦長?ミライさんには、いい亭主のようだな……
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』小説 ベルトーチカ・チルドレン PART5 少年と少女 カムラン・ブルーム より
「いけます!」
トゥースのコールがブライトの耳を打ち、ブライトは、プチ・モビ部隊に後退命令を出した。
「ラー・カイラムがなくなっていたら、最後だがな」
「その時は、アクシズに乗って地球に帰りましょう?」
「結構だ!お前は、地球出身だったか?」
ブライトたちは、強がりを言い合い、勇気を奮ってプチ・モビを全速で走らせ、飛行した。
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』小説 ベルトーチカ・チルドレン PART14 宇宙の虹 本文 ブライト・ノア トゥース より
ほんとは超サイヤ人3ならあの時、太っちょの魔人ブウなら倒せてたかもしんねえ。
だが、これから先の地球は若ぇやつらにがんばって欲しかったんだ。
って、ベジータの野郎聞いてねぇ……!
アニメ『ドラゴンボール改』第151話 最強の頂上決戦!界王神界で決戦だ! 孫悟空 より
「なんていうのかな。数条的な連中には、世直しはできないと感じるんだ」
「でも、他にどこに住めます?」
「スペース・コロニーは、人を保守的にします。ここの連中は、いい方ですよ」
マドラスが補足した。
「そうだろうが、革新っていうのは、あくまでも、現在から見ての革新でなければならない。昔のシャア・アズナブルなど持ち出すのは、後退さ……生身の生活の心といったものは感じないな」
「それこそ、アフランシが示すことなんですよ。我々は、それだけは、知っているつもりです」
マドラスは、簡単に言った。
小説『ガイア・ギア』第二巻 第12章 メタトロン 本文 アフランシ・シャア ミランダ マドラス より
ねぇ、あずにゃん……。
なんですか唯先輩?
あたしが律っちゃんの代わりにドラムやろうかな。
どうしてですか。
律っちゃんなんか悩んでるみたいなんだよね。だから……
ダメです!唯先輩はあたしの目の届く範囲にいてください!
わかりましたか!
は〜い。
アニメ『けいおん!!』二期 三話 ドラマー! 平沢唯 中野梓 より
なんやねん、というように、セカイたち三人は呆気にとられている。
陽太。
海野。
美鈴。
地居。
冷泉。
サトリ。
マダム陰。
マダム陽。
死んだスペックホルダーと繋がるという当麻のスペックによって召還された者たちが、ずらりと当麻の背後に並んだ。
「チームスペックホルダー、全員集合かい!」
潤がケッと吐き捨てた。47人引き連れてみろ。
「平成仮面ライダーみたいだな」
セカイは相変わらずの薄笑いだ。
「フィギュアかカードでもあこぎに売るつもりか」
ユダが言った。使徒のくせに、考えることがあんがい俗っぽい。
「お前らを全員吸い込んでから冥界に行くつもりだったが、潤ちゃんの肉体を青池里子に返してやろうと、欲がついつい出ちまった」
言いながら、当麻は自分の足元に目をやった。床の金網を通して、里子の姿が見える。なりふり構わず娘を守ろうとした母の愛情を、無にはしない。それが命を救ってもらった仲間としてできる、せめてもの恩返しだ。
劇場版『SPEC〜結〜交ノ編』小説 当麻沙綾 セカイ 潤 ユダ より
お侍さん方、こちらをみてくんなせぇ。
お侍じゃねえ。俺たちは奇兵隊だ!
NHK『歴史秘話ヒストリア』 奇兵隊デビュー 農民たちの一発逆転 奇兵隊の若き面々 写真屋 より
マフティー・ナビーユ・エリン、つまり、正当な預言者の王、という名前を名乗るのは、あなた、ハサウェイ・ノアだってわかったてこと
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』本文 ギギ・アンダルシアの台詞 より
ケネスは、助手席からたつと、その青年が走ってるあいだから、どなりはじめていた。
「敵のモビルスーツは、みんなガンダムだと思えっ!蹴とばしたくらいで、敵のモビルスーツの戦意が、喪失したと思うなっ!なんでとどめを刺さなかった。相手のパイロットが、意気地がなかったからいいようなものの、今度もあれなら、ペーネロペーは取り上げるから」
「ハァッ!」
立ちどまってパッと敬礼をする若者に、ハサウェイは、なるほどと納得した。ロクに経験のないパイロットが、新型車を使えば、自信過剰になろうというものだ。
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』14 ヤングパイロット 本文 ハサウェイ・ノア ケネス・スレッグ レーン・エイム より
ギギは、これこそが最後の餞別なのだ、と自分にいいきかせながらも、こんなことをしなければならない自分の運命に、涙を流してしまった。
『……伯爵も可哀想……』
ギギは、ショルダー・バッグひとつで、夕方の道路に出た。
守衛と管理人が、車はいいんですか、ときくのを笑ってかわすと、坂道をズンズンと下っていった。
『アデュー!……わたしのパトロン。わたしは、死ににいくのかもしれません』
そんな言葉を頭にならべるギギに、午後の暑さを想像させる陽光が、降りそそいでいた。
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(中)9 アンダーウェア オン ザ ベッド 本文 ギギ・アンダルシア より
仁は笑みを浮かべ、咲に向かって頭を下げた。
「咲さん、ありがとう。さすがは武家の娘さんだ」
咲は、感激の涙を浮かべながら、満面の笑みで答えた。
「いいえ……南方先生こそ。先生はきっと、神様の国からやってきたお医者様ですわ!」
だが、仁は心の中でそれを否定していた。
自分は神の国から来た人間などではない。百数十年の未来からやってきた 、ただの一介の脳外科医に過ぎないのだ、と。
仁はこの子供の運命を変えてしまった。おそらく、仁がいなければ、子供は助からなかっただろう。恭太郎と同じように。
それが、未来にどんな影響をあたえるか、仁は想像もつかなかった。あるいは、日本の、いや世界のたとるべき歴史が大きく変わってしまうことになるのかもしれない。
けれど……救える命を放っておくなど、仁ははできなかった。このまま、この世界で過ごさなければならないのなら、仁は医者として生きていくつもりだった。
もし、仁をこの時代に送ったのが神の仕業なら、それが神の意志に違いない。仁は確信に近いを抱き始めていた。
小説『JIN-仁-』神の章 本文 南方仁 橘咲 より
「フム……ガンダムらしいが、このなんというかな、マシーンとしては、複雑になっていく一方なのが、気にいらんな」
ブライトは、このコクピットに、自分の息子のハサウェイがすわっていたことなどは、想像がつくことなどではなかった。
「でも、艦長。不穏分子がつかうモビルスーツに、ガンダムという名称をつかうなんて、許せないでしょう?」
メカニック・マンが、整備台でいった。
ブライトは、シートの下から抜け出し、ガンダムの煤まみれの顔を見上げて、
「そうでもないさ。歴代のガンダムは、連邦軍にいても、いつも反骨の精神をもった者がのっていたな。そして、ガンダムの最後は、いつもこうだ。首がなくなったり、機体が焼かれたり、バラバラになったり……。しかし、反骨精神は、ガンダムがなくったあとでも、健在だったものだ」
「そういうものですか?」
メカニック・マンは、整備台を降りはじめたブライトのあとから、ガンダムを振りあおぐようにしてつづいた。
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』12 ビフォー ザ ディ 本文 ブライト・ノア メカニック・マン より
しかし、この引越しを機に、シオはナディアも自分も、本当の意味で普通の人々になる努力をしなければならない、と決意したのである。
それは、利発すぎるセシリーをきちんと教育したいと考えるようになったからだ。
「利発すぎる娘をよごれさせないためには、暮しが普通であることだ。理想をいえば、ちょっとだけ裕福であれば、いうことはない」
それが、才能がじゅうぶんでない物書きの考える策であった。まちがいではない。
映画『機動戦士ガンダムF91 クロスボーン・バンガード』小説(上)本文 シオ・フェアチャイルド より
真理とか秘密というものは、隠されているものではなく、そのことが存在した瞬間にすでに現れているのである。その現れといるものの意味を率直に認めさえすれば、人は、過ちをくり返すことなく、歴史を積み重ねられたであろう。
しかし、そうではなかった。
だからこそ、マイッツアーも個人の力で達成できないかも知れないことをはじめざるを得なかった、という意味では、彼は、率直で頑固すぎたのである。
その部分では、彼は強直(ごうちょく)な偏狭者であろう。
しかし、クロスボーン・バンガードの基本理念にも、コスモ・バビロニア建国について鉄仮面の語る理念にも、その基本の論調になんの誤りもないのである。
誤りは、実行したというただ一点のみである。
映画『機動戦士ガンダムF91』小説 クロスボーン・バンガード(下) 二十四章 バグ 本文 より
「人は、もともと生命あるものを食べて生きてきたんです。そして、人だって**ば、大地のなかに腐っていって、有機物に分解されていって、他の動植物の滋養になりました。これが自然界の摂理です。論理といってもいいけど……それを、人類が道具を持ったときから、その輪廻というか循環をたちきってしまって、自然界から隔絶した異質の存在になってしまったんです」
「だから、なんだというんだ?化け物になってしまった人類は、死滅しろいうのか!?」
「それが正道でしょう。でも、それでは、ぼくは両親に会えなくなります。シャクティだって……フランダースと別れるのも厭です」
「そうだよ。そのために、われわれは、ザンスカールと戦わなければならんのだ」
「……とりあえずの敵、ということですか?」
「そうだ、いいことをいったな。とりあえずの敵の存在は、善き力をあつめるための求心力になる」
アニメ『機動戦士Vガンダム』小説 第一巻 8 ギロチンのザンスカール 本文 ウッソ・エヴィン オイ・ニュング(伯爵) より
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