* 2015-05-22 21:21:26 |
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「 異常であり日常 」
彼女を拾ったのはもう随分昔となるなとカルロスは考えた。
あの雨の日はきっといつまでも忘れられないだろう、ふっと小さな苦笑を残し満月の夜空を背に向けるように寝返りを打って___ふと気付く。
先程まで隣に居た少女が居ない。
躯を起こして座れば居間へと伸びる鎖、そして彼女の形跡。
安易に彼女は居間に居るのだろうと予測が出来てしまう、そして居間に居る理由すらも。
ベットから降りて鎖の伸びる進行方向へと脚を踏み出せば暗闇の中、目に栄えて見える白い髪が見えた。
「………シピ。」
些か牽制するように少女の名を呼べば、白い髪が揺れて瞬く間には赤い瞳が己を映し出していた。
「……なあに?」
問い掛ける声は鈴のように軽やかな物で。そんな穏やかに広がる声とは別に、少女の真っ白な肌は赤で汚されていた。
少し赤黒い赤、それは仕事柄良く見る動脈血、またかとため息が溢れる。
少女の周りにも広がる赤、___そして少女が持つのは青白い手。
些かこの状況ではホラー映画と言われても過言ではないなと思いつつ少女に近寄る。
何も云う言葉はない。
ゆるりと指を冷えた鎖へと伸ばし、ぐいっと力強く鎖を己へと引っ張った。
軽い彼女の躯はいとも簡単に、そして軽やかにころりと転がり己の胸元へと引き寄せられた。
___今更、寝間着が汚れるだとか思考は無くなっていたなと心中笑みをこぼした。
「………寝ろ。」
言葉は少ない只2つの文字なのに震える威圧がある。
__だが少女は何も驚いた様子は無く、只無邪気に左手に持っていた青白い手に噛み付いた。
「……んむ、かるちゃんもたべたいの?」
片言な言語で、只子供のように無邪気に腕に噛みつきながら応えるその姿は子供そのものだと思う。
「いらねェ、人肉には興味ねェよ。」
きっぱりと断ればそう、と端的な一言。
少女もまた然り、言語を話すのは嫌いなんだなと実感した。
___まあ、実感なんかしている場合ではなく、彼女を寝かしつけるのが一番最優先な事なのだが、多分この状況になってしまえば彼女は眠らないだろう。
__そう、~コレ~を平らげるまでは。
只少女を見ていれば特に何か興味を示すことは無く、腕に歯を立てていた。
ぷち、と毛細血管が切れる音が聞こえてはまたぽとりと赤い致が寝間着を汚す。
赤い唇はせわしなく動いていて、肌は真っ赤に血で染め上げられていた。
己に引き寄せたままだった彼女を膝上へと載せて頭を撫でる。
その感覚すら伝わってない様子でまた腕へと噛みついた。
「……口ぐらい拭いたらどうだ。」
「…んー…」
うとうと、と眠りに就こうとする少女の体とは別にせわしなく動く唇は何かの病気ではないのかと疑わせる程だった。
真っ赤に染まる唇を近くに置いてあったティッシュで拭き取れば漸く我に返ったように胸元へと擦り寄る彼女。
「……おなかすいた。」
少女は只無邪気に今日も人肉を頬張る。
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