名無しさん 2015-05-21 22:30:03 |
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(存外寛大な反応を返された事が不思議でならず横目で相手の表情を確認するも、そこから読み取る事ができたのは呆れの感情のみで。おかしな事もあるものだと内心首を傾げつつ、かと言ってそれ以上何か言えば喧嘩に繋がる事必至であるのは分かっているため黙って食事を進め。やがて綺麗に平らげると両手を合わせて食後の挨拶を済ませ、「まだ時間あるし、炊事場の片付け手伝ってくる」と膳を下げるため席を立って)
(炊事当番の刀剣や短刀の面々が広間から去り始めた所で、残った面子はある程度一定の場所に集合しており。あの輪の中に入っていくべきかどうかは悩ましい所で、如何したものかと考え込んでいると不意に降ってきた相方の声。只でさえ多くの刀剣が生活する本丸、宴と云えばその洗い物が並大抵の量でないことは想像に容易く。彼に続き膳を下げるべく立ち上がれば「…僕も手伝おうか?大変そうだし」と持ち掛けて)
じゃあ手伝ってもらおうかなー。
(この人数分の皿を洗うのはなかなかに骨の折れる仕事であり、今回は素直に相手の申し出を受ける事にして。炊事場に入ると真っ先に案の定溜まっていた皿の山が目に入り、洗い場から調理台に目を移すと先に酒の肴を作ってしまおうと忙しなく動き回る数人がいて。自分の膳を洗い場傍に置いては腕捲りをしながら堀川に声をかけ、相手を振り返り「割らないでよね」と揶揄うように短く告げて)
お前こそ、ね。
(傍目に見てもその慌しさがはっきりと分かる厨、相手の膳の脇に運んだ膳を並べれば此方も腕捲りを。半ば茶化す様な彼の物言いに負けじと言葉を返せば水道の傍に設置されたホルダーからスポンジ二つを鷲掴み、「はい、これ」と隣の相方に押し付け蛇口を捻って。勢い良く流れ出した水の量を調節し、ホルダー近くに数本置かれた洗剤の内一本を手に取り。)
どーも。
(此方も蛇口を捻り受け取ったスポンジを水に浸すと、手を伸ばして洗剤を取り適量をつけて泡立たせ。なるべく手早く、それでいて洗い残しがないよう丁寧に皿を洗っていたかと思えば、不意に「あーあ、明日の出陣が無ければなぁ」と名残惜しげにぼやいて。酒盛りが特別好きなわけではないが、今は余計な考え事をせずに済むくらい飲んでしまいたい気分なのも確かで、至極つまらなそうに洗い物を続け)
仕方ないよ、明日頑張れば明後日は非番なんだから。
(黙々と皿を洗い続けた為か、脇に所狭しと並べられていた筈の膳も片手で数えられる程に。皿にこびり付いた油脂を擦り落としつつ、傍からの愚痴には呆れ混じりの返答を。然しそう言う相手の不満も理解出来ない訳ではなく、来る出陣への憂欝さを深い溜息で以て紛らわして。そんな思いを巡らせている間にも皿は残すところあと数枚に)
非番かぁ……どうやって過ごそっかな。
(まるで宥めすかしているかのような言葉にほんの少しだけ罰が悪くなると、誤魔化したいがために当日の過ごし方を思案するふりをして。そのうち本当に悩み始めたのか黙り込んでひたすら皿を洗っていたものの、不意に閃いたように手を止めると「あ、主と万屋行きたいかも」とにわかにやる気を取り戻して)
二言目には主あるじってさ…、本っ当好きだよね、あの人のこと。
( 今更ながらに彼の審神者好きを再認し嘆息、そういうしている間に残された皿は此れで最後。念入りに汚れを洗い落して。洗い物が片付けば備え付けのタオルで濡れた両手を拭いつつ「ちょっと顔出して戻ろっか」と声を掛けては何となしに広間へと目を遣って)
悪い?お前だって二言目には「沖田くん」じゃん。
(言い回しのニュアンスで褒められているわけではない事くらい分かり、むっとしたように刺のある言葉を返して。自分の手についた泡を洗い流してタオルで拭くと、「そうね」と応えて既に酒盛りの始まったらしい賑やかな広間へと戻り。宴の主役である遠征部隊の面々に労いの言葉をかけつつ時折酒を注いでやり)
(無意識の内に冷ややかな言葉を浴びせてしまうのは自分の悪い癖なのだろう、自覚はしているものの意識して止めることも出来ず。彼の後に続いて広間の中央に集った宴の輪へと歩を進め、愚痴を零す者から嬉々として成果を語る者まで各々が自由な言葉を紡ぐ中腰を下ろし。時たま不意に投げ掛けられる問いや意見に曖昧に頷きつつ、彼らの言葉に耳を傾けて。そうこうしている間にも時計盤の短針は10を回り、今や11を指そうとしており。それに気付けば「…もう戻った方が良いかな」と傍らの相方にぽつりと零して)
もうそんな時間か……じゃ、戻りますかね。
(ちらりと時計を見遣り時刻を確認すると腰を上げ、酔ってくだを巻く者や酒を勧めてくる者たちを上手く躱しながら出口に向かい。途中まだ誰も手をつけていない徳利とお猪口2つを拾い上げ、近くにいた者に「もらってくよー」と声をかけると廊下に出て。広間で飲んでいる者たち以外は大方床に就いたのか静まり返っている廊下を足音を立てないよう気をつけて進み)
(相手に続き広間を後にすると、しんとした廊下からそっと自室へ戻り。縁側から見える満月の所為か、夜帯だというのにその室内はぼんやりとした光に包まれていて。流石に酔い潰れることは無いだろうが、然程酒に強いとも言えない自分のこと。後々が辛いだろうと「布団、先に敷こっか。そのまま寝られるように」と今朝方内番前に畳んでいった敷布団を広げ。)
そしたら着替えちゃおうよ、酔い潰れたお前を着替えさせるなんて俺には無理。
(文机に徳利とお猪口を一旦置くと、いつも通り相手の布団の隣に自分の布団を敷いて。またしても余計な一言を付け足しつつ箪笥から寝間着にしている小袖を取り出すと、帯と共に相手に放り投げて自分も小袖に着替え始め。脱いだ洋服を畳んで隅に置き細く髪を結っていた紙紐を解いて鏡台に置けば、ようやく楽になったと言わんばかりに伸びをして)
はいはい、酔い潰れる程弱くは無い心算だけどね。
(皮肉めいた遣り取りは最早恒例、まるで呼吸をする様に切り返せば放られた小袖に着替えて。初めこそ覚束なかった着替えも今は手早く済ませられるようになり、髪結い紐を解けば鏡台の上へ。不器用ながらも丁寧に畳んだ洋服を彼に習い隅に置けば、月明かりが洩れる丸窓の傍にすとんと座り込み)
ならいいけどー?ま、大した量じゃないから大丈夫かな。
(両耳の耳飾りを外して髪紐の隣に置き徳利とお猪口を手に相手の傍らに腰を下ろすと、お猪口の片方をその手に押し付けて。二合あるかどうかといった程度の量、二人で飲めば酔い潰れる事はまずないだろうと結論付ければ、「乾杯するんだからね、先飲むなよ」と何処か楽しそうな口調で釘を刺しつつ相手のお猪口に酒を注ぎ)
分かってるってば。
(彼らしい念押しに苦笑すれば「…ほら、乾杯」と注がれた酒を零さない様にお猪口を差し出し軽く合わせ、そのままぐっと飲み干し。酒を選んだ者の感性なのか、はたまた久々に呑むからなのか、常より体の芯に沁み渡るような心地がして)
かんぱーい。
(なんだかんだ付き合ってくれる相手の優しさが心地よく、僅かに目を細めながらお猪口を合わせると一気に呷って。相手の前では特に気を張る必要もないため、「今日の内番さ、俺にしちゃ頑張ったよなー」としまりのない表情を浮かべて自賛の言葉を口にし。ふと昼間の出来事を思い出すと、さりげなく相手の手元に視線を遣り傷の状態を確認して)
そうかもね、ほんのちょっとだけ頑張ってたんじゃない?
(何かにつけて文句を垂れる割に、その癖任された仕事はきちんとこなす点については何の不満も持っていない。素直に相手を評価する言葉紡げば此方に向けられる視線手繰り、小首傾げ思案顔。数秒考え込んだ後納得したのか、「もう大丈夫だって、目立たなくなってるし」と件の掌突き出せば患部を晒して)
……お前、やっぱ池田屋はやめとけば。
(上機嫌でお猪口に酒を注いでいたものの、不意に徳利を置くと相手の手を掴んで目立たなくなった傷を指でなぞりながらぽつりと零し。そっと目を伏せると「言っとくけどこの傷は関係ないからな、明日は普通に出陣ね」と付け足し手を離して。相手を揶揄っておきながら強くないのは自分も同じなのか、飲み進めるうちに若干赤みの差してきた頬を冷ますように手で扇ぎ)
…大丈夫だよ。
(余りにも唐突な相手の戒飭に眉顰めれば否定、心配するなと言わんばかりの視線投げ掛け。続く言葉には「分かってる、でもなんでお前が決めるのさ」と声音に非難の色滲ませて。直後流石に言い過ぎたか、と反省するも謝る気は湧かずもどかしさから次々と酒を呷って)
怒んないでよ、無理強いするつもりはないって。
(もしも何かの拍子に疲弊した前の主や折れてしまった自分を見るような事があったら、不器用ながらも優しい相手が傷付かないはずがなく。不満げな相手を宥めると、「俺だって薄情者じゃないしー?付き合い長いお前がキツい思いするのは不本意なだけ」と飲むペースを速める相手の手を軽く押さえて)
やっぱり、お前には分かってるんだね。
(半ば宥める様な形で諭された事により平静を取り戻したのか、語気を落ち着けると嘆息混じりに呟いて。確かに彼の言い分は尤も、万が一にも過去の主や相手を目撃してしまえば自分でもどんな行動に出るか分からない。冷静に考え直せば目を逸らし、「分かった、今回はやめるよ。正直、ちょっと不安だから。…本当、敵わないな」と苦笑洩らせば"ありがと"と言い添えて)
……お前にとっては待つ事の方がトラウマかもしれないけど、
(自分の心細さを拭いたいがために一度は相手の申し出を受け入れた身、礼を言われれば流石に罪悪感に苛まれて口ごもり。悟られぬよう言葉を紡ぐと相手の頭にそっと手を置き、審神者が短刀たち相手にするように優しい手付きで撫でて。少しでも不安を取り除いてやりたい一心でらしくもない事をしてみたものの、後から湧き起こってきた羞恥心に堪え切れず咄嗟に「今度はちゃーんと帰ってくるから、いい子で留守番しててよね」と茶化して)
……大丈夫、もう昔のことなんだし。僕だってそんなに柔じゃないよ?
(心配からくるのであろう、どことない不安を見せる相手に今度は此方から宥める様な言葉をかけて。続いて髪に触れた掌が珍しく、瞬きを繰り返した後「やめてよ、もう子供じゃないんだから」と目逸らすもその声に非難の色は認められず。然しこうは言ったものの、一度考え出すとどうにも恋しくなるのは前の主の事。気遣う相手の前でこんな事を考えるとは、湧き上がる自己嫌悪に再度溜息をついて)
湿っぽいのやめろよ、うざい。昔の思い出話ならいくらでも付き合ってやるから、
(大丈夫だという言葉に反して零れた溜息とその思い詰めた表情に、それまで面白がって撫で続けていた手を止めると、態と素っ気ない言葉を吐きながら手を引っ込め。素直に心配だと言うのはどうにも恥ずかしく「できもしないくせに一人で抱え込むのはやめて」と冷たい言い方になってしまい、直後湧き上がる後悔に目を伏せて)
……何、心配してくれてるの?
(似ていない様で自分によく似た彼の事、その素気無い言葉も遠回しな気遣いと取れば苦笑して。普段なら的を射た言葉が気に障る筈が「分かってるよ、…頼りきりは申し訳無いけど」と間接的に悩み過ぎない様伝え。先程の相手と同様その髪を半ば掻き乱すようにして撫で付け「ちゃんと帰って来てよね、僕が待ってるんだから」と小さく零し)
…ちょっと、撫で方雑すぎ。
(やり返されるとは思ってもみなかったため見事に不意を突かれ、髪を掻き乱されれば眉を寄せて不満を呟いて。後は寝るだけとはいえ髪型が崩れるのは気になるのか、相手の手を軽く払いのけると手櫛で直しながら「そう何度も折れてやるもんか。心配無用ですー」と答えて口をへの字に曲げ。僅かに残った酒を飲み切ると、お猪口二つを重ねて空の徳利と共に文机に戻し)
はいはい、言う程心配なんてしてないし。
(素直に返せない言葉は最早御愛嬌、口を衝くのは突き放す様な語調で。とはいえ心底安堵しているのか、その表情は先程と比べ若干和らいで居り。お猪口を相手に渡せば後は寝るだけ、「ほら、もう寝るよ」との言葉と共に自分の布団へ潜り込み)
(素っ気ない言葉に隠された本心はその表情を見れば明らかで、思わず小さくふき出しながらもそれ以上余計な事は言わずに布団に潜り込み。相手の不安を少しは取り除けたらしいと分かると自ずと心が凪いで、穏やかな声色で「おやすみ」と紡げば瞼を閉じて)
(少なからず疲労した身とは裏腹、先程の言葉の効力かその胸中は存外落ち着いており。傍らからの声には「うん、おやすみ」と応じ、ぼんやりとした心地の中瞼下ろせば瞬く間に意識は闇に沈んで行き)
*
(野鳥の鳴く声と共に珍しくすっきりとした目覚めを迎え、そっと半身起こし時計盤を見遣れば時刻は午前四時過ぎ。普段なら既に日が昇り始めた辺り、重い体を引き摺りながら洗面台に向かう所だが未だ早朝、寝直すか否か厭にはっきりとした頭で思考を巡らせ)
(日に日に近づく出陣を意識しすぎないよう努めていた事が仇となったのか、遠くの空が白み始めた頃夢に見たのは忘れもしないあの日の出来事で。額に汗を滲ませて一つ寝返りを打つと、掛け布団の端を握り締めながらせつなげに眉を寄せ、時折小さな呻き声を洩らして)
……ちょっと。
(傍らの相方はどうしているだろう、そう思い目を遣るや否や目に飛び込んで来たのは苦々しげな表情浮かべ恐らく魘されているであろう姿。其の侭放っておく程薄情にもなれず、相手の肩に手を添え二、三度揺さ振り「…大丈夫?」等と声掛けてみて)
……やすさだ?
(意識を引っ張り上げられて初めて夢が夢であったと気付き、ゆっくりと目を開けて相手に焦点を合わせると確かめるようにその名を呼んで。布団に手を突いて身体を起こすと、室内の薄暗さからおおよその時刻を察し「あー…ごめん、起こしちゃった?」と謝りながら髪を掻き上げて)
ごめんじゃないよ…まぁ、別に良いけどさ。
(心配をするなと告げられた矢先にこの有様、思い返した言葉とは裏腹に不安は募るばかりで。寝起き故に頭が回らないのであろう、という事は一切考慮しなかったのか「口大丈夫大丈夫って言うけど、……本当に大丈夫なの、お前」とさも深刻そうな声音で問えば嘆息し)
ぶっちゃけ……怖いけど、俺近侍だし。
(相手の言葉の意図は辛うじて理解できたものの、眠気には打ち勝てず欠伸混じりに応じて。普段ならば意地でも明かさないような心の内も、判断力が鈍っているせいか「…お前にださいとこ見せたくないし」とあっさり零すと、身体を起こした体勢のまま頭を垂れてうつらうつらと船を漕ぎ)
僕にって、……どうだっていいよ、そんなの。
(未だ睡魔に襲われている様子から、恐らくその言葉が本音であることを察すれば此方も本心を洩らして。一人気不味い雰囲気に苛まれると「…なんで、なんでそんなに頑張るのさ」と消え入りそうな声で呟くも強く咎める事はせず。今にも寝入りそうな相手を見ては兎に角今は寝かせてあげるべき、と判断し「…まだ時間もあるし、もう少し寝ておいてもいいんじゃない」と片手を伸ばし軽く右肩を叩いて)
そんなの、今度こそずっと一緒にいたいからに決まってんじゃん。
(弱々しい声音を案じて寝惚け眼を擦りながら顔を上げると、視線がかち合った瞬間問いかけの答えはいとも容易く口を衝いて出て。一拍置いて自分の失言に気が付き「……やっぱ今のウソ。そーね、俺二度寝するからバイバイ」と口早に言い捨てると、横になって相手に背を向け薄手の掛け布団を口元まで引き上げて。一瞬にして目は覚めてしまったものの、会話をしなくて済むよう一先ず瞼を閉じて寝たふりを決め込む事にし)
え、ちょっと。……今なんて、
(彼らしからぬ返答に我が耳を疑い、思わず問い返すも返って来たのは素気無い返答。布団を被った挙句背を向けられてはどうしようもない、とはいえ先程の言葉は偽りでないと判断すれば嬉しいやら微笑ましいやら、誰にも見られていないのを良い事に一人頬を緩め。然し今から起きていたとしても特に為すべき事もなくぼんやりと過ごすのは目に見えており、どうせ出陣する分はもう一度寝ておこうかと横になれば「まぁ、僕も一緒に居たいんだけどね」との独り言の後瞼閉じて)
……なにそれ、初耳なんですけど。
(隣の布団から規則正しい寝息が聞こえてきた頃合いに寝返りを打ってそちらを向くと、寝顔を眺めながらさも可笑しそうに笑って呟いて。自分ももう一眠りしようとは思いつつもまた夢を見るのではと思うとどうにも寝付けず、できる限り相手の方に身を寄せると伸ばした片手を相手の掛け布団の下に忍ばせて。温もりにひどく安堵すれば瞼を閉じ、そのまま朝日が昇りきるまで眠り続け)
*
…ん、今何時……?
(何時の間にか眠ってしまっていたのか、重い瞼を上げれば室内に夏特有の刺す様な日光が差し込んでいるのを見留め。掌からじんわりと伝わる体温を訝しみそっと布団を剥ぐと案の定重ねられていたのは相手の片手、言葉にして直に伝えない辺りが何とも彼らしく思わず含み笑い漏らし。しかしいつまでもそうしている訳にも行かず、ゆっくりと手を離せば「ほら、出陣だよ寝坊助清光。もう起きないと」とその侭相手を揺さ振って)
……寝坊助じゃないし、もうちょっと優しく起こせないわけ?
(揺すられる振動に目を開けたかと思えば相手の大きく愛らしい瞳を軽く睨め付け、ふてぶてしく文句を垂れつつも寝床から這い出て布団を畳み。顔を洗いに行くにも身支度だけはしておかなければ気が済まず、小袖を脱いでいつもの洋装に着替えると鏡台の前に座り込み。当たり前のように「髪結ってやるから、支度できたら言って」と相手に声をかけると、慣れた手つきで自分の髪を櫛で梳かして一つに結わえて)
仕方ないよ、こうでもしないと起きないんだから。
(乱れた布団を畳めば此方に向けられた視線を軽く往なし、先ずは洗面所へ向かおうと歩を進めようと。しかし背後より投げ掛けられた声には「…分かった。ちょっと待ってて」と常の通りならば即座に却下している所を何故だか今は拒否する気にもなれず素直に応じ。そのまま洗顔と歯磨きを済ませると、部屋に戻り小袖を脱げば袴に着替え「はい、終わったよ」と鏡台の前に座る彼に声を掛けて)
お前って不器用だしさー、戦闘中に緩くならないように俺がやってあげる。
(相手を座らせてから背後に回って膝立ちになると、少し癖のあるその髪に優しく櫛を通し。普段の揶揄うような語調ではなく純粋に世話を焼きたがっているかのような口ぶりで零しては、髪結い紐を手に取り高い位置で一つに結い上げて。手櫛で整えてから「…できた。俺主のとこ寄って行くから、お前先にご飯食べてなよ」と告げると、洗顔料やらタオルやらを用意して)
有難う、でも不器用は余計。
(言葉中に普段とは何処か違った語気を感じ取ると此方も存外あっさりと感謝の念を表し、珍しくも鏡を覗き込めば結われた髪にそっと触れて。常と比べ丁寧に束ねられている事を確認した後「…ん、それじゃあ僕は先に行ってるね」と立ち上がり、心成しか上機嫌に部屋を出ると広間へと足を進め)
*
(洗顔やら歯磨きやらを終えて審神者の部屋を訪れると、今日の出陣の概要を一通り聞いた後池田屋攻略のための部隊編成について手短かに話し合い。自室で相手と別れて四半刻ほどが経った頃、審神者の部屋を後にしようやく広間に姿を見せると慌ただしく食卓に着き朝食を摂って)
早かったね。…編成、どうなったの?
(既に殆どが空になった皿を前に、忙わしく朝食を摂る相手を一瞥すると件の池田屋攻略に出陣する面々に凡その予想を立てると直に問って。時計盤に目を遣れば出陣まで後半刻程、その間にも小鉢から箸を往復させ惣菜を口に運びつつ返答を待ち)
小夜、五虎退、厚、鯰尾、俺と、お前の代わりに骨喰。あいつに礼言っとけよ。
(黙々と食べ進めていた手を止め先ほど決まった面々を思い浮かべては、相手が一番気にしているであろう部分に触れて。夜戦であるがゆえに常とは異なる出撃時刻を思い出すと、苦々しげに「明後日の夕方出撃だけど、絶対蒸し暑いよな。最悪」と愚痴を零しつつ皿を空にしていき)
ありがと、言われなくてもそうするつもり。…そういう所、本当変わらないよな。暑いのどうのって言ってられないだろ。
(無理を言い外して貰った自分に代わり、一体誰が編入されたのか気に掛かっていた面が相手の言葉によって取り払われると彼が長年を共にした相方である事を再認し。暑いとぼやく相手を一瞥、諌めるような言葉を投げ掛ければ空になった器を前に「ご馳走さま」と手を合わせ)
…相変わらず手厳しいねお前。
(少しは身を案じてくれるだろうか、といった淡い期待は正論によって見事に断ち切られ、脱力したように手元の茶碗へと視線を落としため息混じりに呟いて。しかし直ぐに顔を上げると、わずかに瞳を輝かせて「あ、そうだ。俺の我侭一つ聞いてよ」と唐突かつ厚かましい頼みを口にし)
仕方無いよ。少しでも気を緩めたら、……ううん、やっぱり何でもない。
(お前まで引き止めたくなるから、との言葉をぐっと呑み込めば愚考を断ち切るべくふるりと首を振って。膳を片付けるべく立ち上がるも、此方に掛かる声に目を向ければ「我が侭?…別に良いよ、碌でも無い頼みじゃ無ければね」と小さく頷き)
?変な奴。
(何かを我慢しているような様子が少々気に掛かるものの、吐き出させてゆっくり話を聞く時間も無いため小さく呟くのみに留めて。自分も膳を下げようと相手に続いて席を立つも、釘を刺された途端に「あー…お前は碌でもないって言うかも」と歯切れ悪くなり)
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