匿名ゆき 2015-05-17 09:59:59 |
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心臓が、割れたピンポン玉のように、ぎくしゃくとはずみだす。
連想するものにこと欠いて、なんだってまた、あんな不吉なものを思い出したりしたのだろう。
そうでなくても、十月の風には、せつないほどの悔恨のひびきがこめられている。
中身がはぜて、からっぽになった種子の莢を、笛のように吹き鳴らしては、飛び差って行く。
月光に淡くくまどられた穴のふちを見上げながら、この焼けつくような感情は、あんがい嫉妬なのかもしれないと思った。
街や、通勤電車や、交差点の信号や、電柱の広告や、ネコの死骸や、タバコを売っている薬屋や、そうした地上の密度をあらわすすべてに対する嫉妬なのかもしれない。
砂が、板壁や柱の内部を食い荒してしまったように、嫉妬が彼の内部に穴をあけ、彼をコンロの上の空鍋同様にしてしまったのかもしれない。
空鍋の温度は、急激に上昇する。
やがて、その熱に耐えられなくなり、自分で自分をほうり出してしまわないとも限らないのだ。
希望を云々するまえに、この瞬間をのりきれるかどうかが、まず問題だった。
『砂の女』より
存在に興味をもったのは不在があったから。
不在には明確な始点と終点がないから。
不在とみなす対象を視界に入るもの以外としたら…
そもそも眼に映るものが『それ』であるかどうか…
あなたの頭ではrecognize、identify
どちらの作業が行われているのでしょう。
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