僕 2015-05-14 13:16:14 |
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(もう何度もしているキスもやはりまだ緊張してしまう。徐々に鼓動が早くなる。嬉しいけど恥ずかしい…でも沢山して欲しい。彼の優しい口付けは愛されていると実感すると共に自分も彼がどれほど好きか思い知らされる。暫くして唇が離されると同時に抱き締められる。紡がれた言葉を受け入れる様に抱き返しては「…髭、擽ったいんだけど。」なんて照れ隠しに彼のチャームポイントに対して文句を告げる。彼に包まれている様な感覚に陥れば酷く落ち着く、と目を穏やかに細める。暫くして満足気に解放されると「待って、僕エプロンして来る!」と先程ソファに掛けた茶色をベースに水色の肩紐と腰紐のシンプルなエプロンを取りに行き慣れた手付きで着衣しては「僕、何すればいい?」と少し緊張した面持ちで声を掛ける。)
(腕の中に抱き締めると、見た目よりも意外とある肩幅と綺麗に張った筋肉が直に感じられる。自分より少し低めの体温も心地良い。そうしていると彼からも腕を回され、耳元で髭が擽ったいと言われてしまい慌てて体勢を変える。自分の心臓の音と密着した身体から伝わる彼の鼓動の音が重なり、2人の心臓の音が一つになる様な錯覚を覚えた。本当はこのままでも良いのだが、腹が減っているのは事実…。充電完了を告げ準備に掛かろうと促すと、先程のエプロンを肩に掛けた彼がキッチンに戻ってきた)か、可愛い!!(寸でのところで声を押さえたが、普段とのギャップに目がくらみそうになった。恋人のエプロン姿がこんなに自分の心に刺さるなんて思っても見なかった。出来れば毎日お願いしたいところだが、ここはグッと我慢した。彼の緊張をほぐすために)そんな顔すんなって。せっかくの2人の時間なんだから、一緒に楽しも(アッシュカラーの柔らかな髪をにそっと手を乗せた)味噌汁の出汁の準備をして…(水を張った鍋に煮干しを入れたりと説明をしていく)で、真尋は肉じゃがの人参・ジャガイモの皮を剥いてくれる?
(何時も料理をする時は付けているので特に特別感はなくエプロン姿でキッチンへとやって来れば"可愛い"と言われた。男が可愛いなんて言われても嬉しい筈がないが彼に言われると嬉しい気もする…いや、やっぱり恥ずかしい。目尻を僅かに赤らめると「別に大した格好じゃないでしょ。」とぶっきら棒に告げる。何だかエプロン姿で居るのが急に恥ずかしくなってきたが料理と言えばエプロンといった自分の中でのこだわりがあり外す事は外さなかった。自分の緊張を読み取ったのか二人の時間を楽しもうと声を掛けてくれる彼に髪に触れられれば「そうだね、最高傑作作るって約束したもんね!」と自分が一方的に言っただけで約束した訳ではないのだが気にせず明るい表情を向ける。彼が説明してくれながら作業をしていくのを感心する様に眺め、仕事を任されては「よし、任せて!皮をむくのは得意だよ!」と皮むき器を手に取り早速取り掛かる。自信満々に得意だと言ってのけたが得意なのではなく、数少ないまともに出来る作業の事で。)
(自分の言葉に照れたのか、一瞬頬が赤くなったように見えたがそれもまた…。これ以上のことを言ってそっぽを向かれては計画が台無しになってしまうので、やはりここでも押しとどまる。2人の時間を楽しもうと声を掛けると、彼の瞳に光が灯り笑顔が戻ってきた。野菜の皮むきを頼むと以外にも得意だと言う。それなら任せてしまおうと、自分は使う予定の調味料をダイニングテーブルに並べて行くが、やはり気になってしまい横目でチラチラと見ていると、器用な包丁さばきで次々と野菜を処理して、形の揃った乱切りがきれいに並んでいる)上手いもんだなぁ…(自分の準備も終わり、感心したように背後から手つきを眺める。もしかして、自分に出してくれたのはたまたまの失敗作で、本当はちゃんと出来るんじゃないかと言う疑問が頭をもたげた)そんだけ包丁を使えりゃ十分。横で見てるから、真尋の思うように作ってみて。
(集中集中、と自分に言い聞かせながら手元に気を配る。上手いと褒められれば分かりやすく嬉しそうな雰囲気を纏い「でしょ!むくのと切るのは出来るんだ!」と得意気に告げる。だが、問題はここからだ。何時もこの辺りまでは順調にいくのだが、加熱を始めた途端にてんやわんやとなり長時間熱してしまい焦げ、かき混ぜ過ぎと煮込み過ぎで具がなくなり、汁物は味を調節しているうちに量が増え、挙句の果てに味見のし過ぎで味が分からなくなるといった見事な失敗ぶりである。じゃがいもと人参を切り終えれば彼から自分でやってみるよう言われる。ここからが自分の苦手な所なのにと戸惑いを見せれば「だ、ダメだって!何時もここから失敗するんだ!」とそんな事言わないでくれとばかりに眉を下げ必死に断ろうとする。)
(器用な手でジャガイモの皮を剥き丁寧に芽を取っている姿を見ていると、どこに失敗の要素があるのか全く見当もつかない。軽い気持ちでこの後の調理を任せると告げると、必死に断られてしまった。その姿を見てなるほどと納得してしまう。きっと彼は自分の読んだ本の通りに、きっちりと時間と分量を守ることが最重要項目になっていて、それから外れてしまうと自分のペースを崩してしまうのかもしれない。優しく肩を抱き)焦らなくても良いから。一緒にやろう。適当でも良いんだよ。それに今日は2人で作るんだから不味い訳無い(そこからは、少々のアクシデントもありながらも、なんとか全品作り上げた。特に卵焼きは神経質な彼ならではの焦げ一つ無い出来栄えで、売りに出しても見劣りしない1品になった。買ったばかりの食器に盛り付けて、全4品が全て揃った。2人してテーブルに着き、自分はビール。彼には缶チューハイをグラスに注ぐ)お疲れ様!
(想像上では完璧なのだが現実に目を向けるとあの有様だ。必死に訴えれば彼も分かってくれ優しく肩を抱かれては控えめに見上げ「ごめんね。」と告げる。ここで男らしく任せとけ!とか言えたらいいのに、それで味も見た目も完璧な物を作る事が出来たらいいのに。頼りない自分が悔しい。それから彼が手伝ってくれ、丁寧な指導の元無事全品が完成した。盛り付けられテーブルに並べられた料理を信じられないといった表情で眺めては「なんか、食べるのが勿体無いね!」と嬉しそうに彼の方を向く。一人の時はあんなにてんやわんやでどうしようもないのに、彼と一緒にやればこんなにも簡単でスムーズに美味しそうに出来るのか…。台所も汚れていないし、洗い物も溜まってない、生ゴミだって全然ない。何だか彼が料理の神様のように思えてくる…冗談だけど。席に着き労いの言葉を掛けられれば「こちらこそ、ありがとう。」と丁寧にお礼を告げる。グラスに入れられたチューハイに気付けば「僕も飲んでいいの…?」と驚いたように問い掛ける。)
(失敗するからと頑なに拒否をされてしまったが、一つ一つの行程を一緒に追って行けば、案外スムーズに事は運んだ。どうやら頭の良い彼は「適量」「ひとつまみ」「数分」につまずいていたらしいことが分かった。それらについて説明し味見のことを伝えると、あっという間に要領を掴んだようで、後半は自分がアシストにまわるだけで立派な夕飯が出来上がった。肉じゃがもしっかりと味が染みているし、ほうれん草も見た目に鮮やかなグリーンでテーブルを彩っている。出来上がったものを皿に並べ2人テーブルに着く。今日の最大の功労者に感謝の意を込めグラスを軽くぶつける。普段自分からアルコールを注ぐことが無かったからか、躊躇いの声が上がったが)こんなご馳走を前にして、一人で飲めって言うの?どんなレストランで食べる食事よりも、今日の夕飯は美味しいと思うよ。真尋も付き合ってよ(言うや否や、グラスに入った琥珀の液体を勢いよく飲み干し)では…どれから行きますか(並べられた料理はどれも美味しそうで困ってしまう…。そうだな…まずは彼が丁寧に焼き上げた卵焼きから。箸で1切れつまみ口に放り込む。出汁巻風にしたため、噛むと口の中にじんわりと出汁が広がる)美味い!(思わず声があがる。自分一人で楽しむにはあまりにも惜しく、彼にも味わって貰おうと)ほら、口開けて!(間髪入れずに、新たに皿から取った出汁巻を彼の口にも含ませた)
(自分は「適量」「目分量」等が苦手で何時も苦戦してしまう。味の基準もよく分かっておらず途中で止めておけばそれなりの出来になっていたのかもしれないが、納得いくまで繰り返してダメにしてしまうのだ。今日は彼が付き添ってくれたおかげで目分量も味も苦戦する事なくスムーズにクリア出来た。嫌な顔一つせず励ましの言葉を掛けながら教えてくれた彼に感謝すると共に教え方が上手いなぁと感心する。仕事場でこんな風に教われば女性は簡単に惚れてしまうだろう…きっと彼に想いを寄せる人は少なからず居る筈だ。なんて小さな事をいちいち気に掛けていても仕方ないので食事を始めようとする。テーブルに並べられた自分達の共同制作の料理を食べてしまうのが勿体無く感じるが食べない事には作った意味が無い。"どんなレストランより美味しい"なんて言われてしまえば胸にぐっとくる物があり感激のあまり涙が出そうになるがなんとか堪え、「じゃあ僕も…いただきます。」と相手に釣られる様にして自分もグラスに口付ける。控えめに飲み込み卵焼きを食べた彼の方を窺うように見詰めれば"上手い"との言葉にぱぁと表情を明らめ「本当に!?」と嬉しそうに身を乗り出す。自分にも食べさせてくれようと口元に運ばれてくる卵焼きを素直に口に入れれば目を輝かせ咀嚼すれば「本当だ!美味しい!」と満面の笑みを浮かべる。)
だろ?(自分が感じたように、彼も自分達が作った食事に満足してくれたようで、この喜びを一緒に共有してくれたことを幸せに思う。卵焼きの次は肉じゃがだ。キレイに芽の取られたジャガイモは形も崩れること無くしっかりと味が染みているし、玉ねぎの甘さが全体の味を引き立てている。肉は2人で決めた牛肉だ。安売りのこま切れ肉なのにしっかりと良い風味が出ている。彼も肉じゃがには牛だって知ったのは今日が初めてだ。いつも一緒に居るのに、こんな些細なことも知らなかったなんて…)たまには、こうやって一緒に出掛けるのも良いよな。なんか、はしゃぐ真尋…。すんごい可愛かった…(自分で言いながら照れてしまい、傍らにあったグラスを煽る。自分の知らない彼の顔なんて、きっといくらでもあるのだろう。学校でどんなふうに笑うのか。根ほり葉ほり聞くことはしないが、仲の良い友達もきっとたくさん居るのだろうし、ゼミには女の子も居て、彼と一緒に課題なんかもするに違いない)最近、学校はどう?忙しい?
(こくこく、と何度も頷きながら味わいながら食べていく。肉じゃがに手を付けようとし、味の染みた濃い色のじゃがいもと柔らかく煮込まれた玉ねぎ、彼と同意見で買った牛肉。何から食べようかと一瞬悩むも、やはりここは何時も形が無くなってしまい食べた気にならないじゃがいもに決め落とさない様に気を配りながら口に入れる。程よい砂糖と醤油のバランスに感激し噛み締めては「うん!じゃがいもも美味しい!」と頬を緩める。一緒に出掛けるのは本当に楽しかった。久々のデートで改めて実感していては続きの言葉に淡く頬を紅く染める。確かに今日の自分は何時もとは比べ物にならない程浮かれていてテンションも高かった。落ち着いた今、思い返してみれば急に恥ずかしくなってくる。照れているのかグラスを煽る彼の手元に視線落とせば「…何時もはあんなんじゃないから。今日はたまたま…久しぶり、だったからなだけで…。」と告げる。)
(1口2口と2人でつまむうちに、テーブルの上に並べられた品々はどんどんと減っていく。普段にも増して、それだけ美味しかったことを物語っているようだ。彼の言ったようにもう少し品数を増やしても良かったかもしれない。今日はデザートもあることだし丁度良い量だろうが、今度一緒に作る時はそうしようと考えると、楽しみがまた一つ増えたが、先程の自分の問いに「いつもは違う」と返されては、猶更彼の普段の姿が気になるというものだ。初めて会った時から今に至るまでお互いの共通の友人なんてものは無く、あくまで1対1の関係なので、彼が普段周りの人間にどう接触しているのかなんて知る機会が無い。もちろん、自分に対する態度に問題がある訳では全く無い。今までは彼のプライベートに踏み入ることを良しとしなかったが、たまには聞いても良いだろう。簡単にいうと、彼を取り巻く人間への嫉妬心からかもしれないが…。幸い今日は2人ともアルコールが入っていることだし、彼も話し易いかもしれないと少々ズルい考えのもと、彼の空いたグラスに代わりを注いだ。)そっか。じゃぁ、いつもはどんな感じなの?真尋は友達の話とか、あんまり教えてくれないから。
(少食ではないが普段からあまり多くを食べない自分だか、今日の夕飯は手作りなのと美味しく出来た嬉しさからか箸が止まらずぱくぱくと食べ進めては味わう様にゆっくりと咀嚼する。彼の言った通り、レストランより美味しいかもしれないなんて自惚れては一人でもこれくらい作れる様にならなきゃ…!とやる気に拍車が掛かる。何時もは学校や友達の事なんてあまり聞いてこないし、自分から話す事もあまりない。言いたくない訳ではなく、出来るだけ共通の話題の方がいいかなといった考えあっての事なのだが、珍しく聞いてくる彼に視線向けては特にこれと言った事もない平凡な学校生活を送っているので何と答えようか…うーんと考える様に声を洩らす。「学校は楽しいよ。みんな仲良くしてくれてるし、一緒に馬鹿な事したりしてさ。勉強もちゃんとついて行けてる。友達、か…そうだなぁ…割と一緒に居る事が多いのが一人居て、そいつは僕が篤と一緒に居る事も理解してくれてるよ。篤の話、いっぱいしてもちゃんと聞いてくれるんだ。」自分の空のグラスに注いでくれているのを横目に笑みを浮かべて嬉しそうに話す。一人で居る時もあれば数人で居たりと気ままに学校生活を送っている。しかし一番の理解者が居てくれて他の人や彼には内緒だが惚気話を聞いて貰ったりしている。基本は男友達とつるむが女子とも話すくらいはする。学校での日々を思い返しながら、普段は聞いてこないから興味がないのかと思っていたが、彼と一緒でない時の自分を気にしてくれる事を嬉しく思い。)
:(さりげなく訊ねてみた自分からの質問に最初は口ごもっていたが、ぽつりぽつりと話をしてくれた。聞いているとどうやら毎日楽しいようで、年相応に学生らしい日々を送っているらしい。授業のノートを貸し借りしたり食堂で何を食べるか悩んだり、友達と空き時間に駄弁ったりしている姿を想像すると、自分の学生の頃のことを思い出し微笑ましく見ながら、グラスを傾けつつ彼の話に耳を貸す。女の子に絡まれるのは少々妬けるが…。そうしていると、話の中で仲の良い友人が出てきた。最初は何とも思わず聞き流していたが、どうやら自分との関係も全て知っているらしいことが分かった。それを聞いて思わず表情が強張りそうになるのを感じ堪える。自分は勿論彼のことを世間に隠すつもりは毛頭ない。この歳になってある程度の社会的立場もそれなりに築いてきた自負があるし、なんだったら彼一人を生活させる力くらいはある。だが、今の彼はそうでは無い。つまらないことで将来が変わってしまう可能性は十分にある。この大事な時期にそんな軽率な行動に出た彼を少し窘めようと)そっか。真尋にそんなに仲の良い友達が居るなんて知らなかった。でも、あんまり俺達のことを学校で言わない方が良いかもしれないな。(本音は自分でも良く分かっていた。単純に彼の友人に嫉妬していたのだ。「理解してくれる」ってなんだよ。彼の一番の理解者は自分なのだから、話したいことがあれば自分に言えば良いはずではないか。声を荒げそうになるのを寸でのところで押さえ、あくまで平静を装う)
(彼が自分の学校生活を聞いてきてくれたのが嬉しく思わずペラペラと話してしまった。自分と彼の事を唯一知っている親友の事も…。世間的にはどうかと思われる自分と彼の関係も真剣に認めてくれた友人には一番心を許し、不器用な自分が悩んだ時は相談に乗って貰ったりとしていた。悩むといっても"どうすれば彼を喜ばせられるか"や"対等な立場に近付くにはどうすればいいか"等で彼への不満や愚痴なんかではない。一緒になって悩んでくれる友人は唯一自分達の関係を認めてくれた人物で自分としてはとても信用しているのだが、彼には自分達の事はあまり話さない方がいいと言われてしまった。思わず表情が少し曇るが彼の言う通りだ。友人が話を聞いてくれるからといって嬉しくなり、何でもかんでも話すべきではなかった…。自分の軽率な行動を反省する。過ぎてしまった事は仕方ないがこれからは止めようと決めては、何となく彼の顔が見れず視線を泳がせ「…ごめん。これからは話さないようにするよ。」とぎこちなく謝罪をする。気まずい雰囲気にさせてしまったと焦っては紛らわせるように残りの料理をぱくぱくと口に運ぶ。)
(困惑した表情を見た瞬間、自分の発言が彼を傷つけてしまったことが分かった。本当なら彼の交友関係を微笑ましく聞きながら流せてしまえば良かったものを、余計なひと言で台無しにしてしまった。「今度、俺にも紹介してよ」なんて気の利いた言葉で返すべきだったのだろうが、先程の自分にはそれが出来なかった。彼の将来を心配しての発言だったことに偽りは無い。だが、そこに自分の知らない彼を知る人間が居ることを許せないという私情を挟んでしまったことが問題なのだから、ここは素直にこちらが謝るべきだろう。空元気で食事を摂る姿を見て反省することしきりだ。俯き加減の頭を優しく撫ぜ)こっちこそゴメン。真尋…。なんか嫌な言い方しちまったみたいで。真尋が信用してる友達なら間違いないのはちゃんと分かってる。少し心配になっただけだ。余計なこと言って悪かったな。でも、言いたいことがあったらちゃんと俺にも話をしてよ。俺のことは信用できない?(敢えて冗談めいた口調にしてみたが、言った後にいささか気恥ずかしくなり、手元のグラスを勢いよく煽る。いつからこんなに女々しくなってしまったのだろうと我ながら呆れるばかりだ…。そして、頭の中で先程浮かんだ言葉を出来るだけ穏やかな表情で反芻してみる)今度、機会があったら紹介して。真尋の仲の良い子。
(次々と口に料理を運ぶも先程より美味しくないように感じる。気持ちの所為なのか…空腹ではなくなったからなのか…多分、前者だろうなんて考えていれば頭に重みを感じ彼の方を見れば重みの正体は彼の手だった。紡がれた言葉に悪かったのは自分だと彼が謝る必要はないと告げようとするも、最後の一言"信用出来ないか?"に言葉を詰まらせる。そんな訳ない!自分は誰より彼の事を信じているのに…!そんな風に思わせてしまっていたのかと思えば胸が痛む。静かに席を立ち、座っている相手の横へと移動すればゆっくりと抱き締める。「…篤、僕こそごめん。僕を思って言ってくれたの、分かってるよ。暗い顔してごめんね、嬉しかった。これからはもっと考えて行動するよ。…それから、僕は篤を信用してない訳じゃない。寧ろ一番信用してる。心配掛けたくないなって思うけど、困った時はちゃんと篤に話すつもりでいる。」徐々に抱き締める力を込めながら思いが伝わるようにとゆっくりめに話す。話し終わると一呼吸おいて「けど!篤をびっくりさせて喜ばせようって話、本人に言う訳にはいかないでしょ?」と少し体を離してはにっと笑う。「まぁ、これからはあんまり他人には相談しないで、僕の力で成功させる事にするけど!」と続ける。)
(話し終えた後、少しの間が空いた。横暴な自分の態度に文句の一つや二つ飛んでくるかと神妙に身構えていたがそうではなかった。無言で席を立ちあがると、この状況で自分の横に腰掛け…。抱き締められた…。一回りも歳の離れた恋人に抱きしめられ、そのことに随分と安心してしまう自分が居る。一体どっちが年上だか分かりゃしない。つい、形だとか世間体だとかに囚われてしまう自分の壁を、いとも簡単に壊してしまう彼が本当に好きなのだと言うことを、こういう時に実感させられる。自分からも手を回し身体を預けながら、彼のつむぐ言葉に耳を傾けた。言葉を選びながら真剣に自分とのことを話してくれる姿に、先程までのつまらない独占欲が嘘のように消えて行く)うん。分かった…。俺も大切なことは必ず言うようにする。(言わなくても分かるだなんて、ありゃ嘘だ。…なんてことを、虫の良い話だが今まで自分が散々言われても分からなかったと言うのに、彼と付き合追うようになって初めて気付かされた。彼の温もりにしばし浸っていると、急に身体を離され「びっくりさせる」なんて言葉が出て来た。悪戯めいた笑顔を見せる彼に)なんだよ。さっき、全部教えてくれるっていったばかりだろ?(得意満面な笑顔が可愛くて、ついこちらも悪戯を仕掛けようと彼の頬を軽く摘まんでやる。キレイな顔が少々歪んだのが可笑しくて、つい吹き出してしまった)
(自分の話を黙ってしっかりと聞いていてくれる彼に有り難く思うが、こんな真剣に胸の内を話すなんて気恥しい。何時もはつい内心とは裏腹な事を言ってしまうのに。偶にはちゃんと気持ちを伝える事も必要だ…言葉にしなくても気持ちが伝わるなんて事は殆どないと実感した。彼からも抱き返して貰えれば安堵する。「僕じゃ頼りないかもしれないけど、篤の為なら何だってする気でいるんだからね!」自分なんて彼や世の中の大人とは比べてもとても頼りなく、力になんてならないかもしれない…だけど、ほんの少しでも彼の為に何か出来る事があるのだとすれば自分はそれに全力を出すつもりでいる。世界で一番愛している存在なのだから。頬を摘まんできたかと思えば吹き出し笑う彼に怪訝な顔をしつつ「全部、とは言ってないんだけどー。」と話しにくく感じながらもべ、生意気にと舌を見せる。「それと、僕の友達…絶対、篤には紹介しないから。」と急に不服そうな表情を浮かべては「…あいつに目移りしたりしたら、やだから…。」と。自分の親友は顔はイケメンの部類に入ると思うし、明るくて人懐っこく誰からも好かれる様な奴だ。おまけに運動も得意だと言う。自分より何もかもが上回っている様に思える友人を彼に紹介してしまえば、彼を取られてしまう…なんて心配になってしまったのだ。)
(自分のために何だってするだなんて言葉。一体どこで覚えて来たんだか…。これ以上の殺し文句があるだろうか。不覚にも胸が熱くなってしまった。若さ故の勢いも勿論あるだろうが、自分のことを真剣に想ってくれていることは十分に分かった。勿論、自分はそれ以上に、彼のことを大切に想っている自負がある。2人で休日を過ごし、買い物をして料理を作り一緒に食べた。特別な日では無くただそれだけの休日だったが、こんな日常をこれから先ずっと彼と過ごせることが出来ればと心の底から願う。何やら隠し事をしているらしい彼の頬をからかうように摘まむが、重要なところは結局教えてくれなかった。話すべき時が来ればきっと教えてくれるだろうとそれ以上の詮索は止めたが、その後に「絶対に友達は紹介しない」と告げられた。まぁ、ただ言ってみただけのことだからとは思いつつ、キッパリと拒絶されてしまったことに動揺を隠せないが、話をよく聞くと自分が思ったこととは若干内容が違うようだ。どうやら友人に対して自分が気移りしてしまうと考えたらしい。彼に向き直り、彼の頬を両手で優しく包んで伏し目がちな瞳を覗き込む)あのねぇ…。俺には真尋以外は何にも目に入んないの。だから下らない心配しないで。それに、こんなオッサンと一緒にいてくれる物好きは、真尋くらいしか居ないと思うよ(彼にこの気持ちが伝わるようにと、まぶたから頬、鼻先、唇に口づけた)
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