僕 2015-05-14 13:16:14 |
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(自分の浴衣を選んでくれると言うからにはと思い、さっき彼が言った言葉を返すと、可愛い柄はどうかとさらに提案された。可愛いのってなんだ??辺りをよく見まわすと、売り場の片隅に国民的な猫キャラクター(リンゴ3個分の体重)をあしらった浴衣が目に入った。あれは流石にまずい…。試着だけでもどんな顔で着れば良いのか思わず考え込んでしまう。嬉々とした表情で物色する彼を戦々恐々と見守っていると、差し出された浴衣は思いの外シンプルで、しかも自分が良いと思っていた色だったので本当に驚いた。ここに来るまでに、彼には明るい色を、自分にはチャコールグレーの物をとずっと考えていたので、自分の好みをバッチリと把握されていたことに嬉しさを隠せなかった。浴衣は文句無しこれに決まりだ。しかし、帯はこの色だとあんまりにもキマリ過ぎて、天邪鬼な自分はつい外したくなる)うん。それが良い。浴衣はこれで決まり。でも帯はこの色だと恰好良すぎるから…。これを合わせたらどうかな…(傍らにあったハンガーからダークブラウンと臙脂の混じったような深いボルドーの帯を差し出し、お目利き役に意見を伺った)
(冗談はさて置き真剣に彼に似合う物を見つけようと目を凝らす。自分のを見つけた時と同様にピンときた物を手に取り彼に見せれば、これがいいとの事で一発で彼好みのを見つけたと嬉しくなり口角が上がる。しかし、帯が格好良すぎるなんて彼は言うので「別にいいじゃん。格好いい方が良くない?」と格好良さにこだわる自分としてはいいと思うのにと告げる。が、差し出されたダークブラウンの帯を見るとこなれ感と表現するのか?分からないがそっちの方がいいと思った。流石彼、オシャレだ。「そっちのがいいや!」絶賛するも、彼のはこんなに大人っぽいのに自分のは何だか子供っぽい様に思えて来た。「…僕の、あれでいいかな?」彼はあれがいいと言ってくれたが不安になってきて彼に確認を取る。隣に並んでもおかしくないだろうか。やっぱり濃紺のか紫のにしようかなと今更また迷い出した。)
(選んだ帯に賛同を得て、あっさり自分の物は決まった。それもこれも、彼が選んでくれた浴衣が自分の理想に非常に近かったからこそだ。後は小物を選ぼうと思い場所を変えようとすると、彼が不安げな表情で、先程選んだものが良いのか悩み始めた。自分からすれば、この広い売り場の中で一番似合うものを彼が選んだと思っていたので、なにがあったのかと考えた。懸念される要因として3つ考えた。1つ目はめったに買わないものなので念のためもう一度気に入ったものが無いか見直したい。2つ目は他に気に入ったものがあってそれをもう一度見たい。3つ目は自分の選んだ浴衣と彼の浴衣のバランスが悪い。このうちのどれかだろうと踏んで彼に尋ねる。少し俯き加減な彼の頭に優しく手を乗せて)どうした?さっきの浴衣、真尋にすごく似合ってると思ったけど。他に見たいんだったらいくらでも付き合うよ。
(少し気分が下がり拗ねた様に唇を尖らせる。すると、頭に手を乗せられ顔を上げると優しく気遣ってくれる彼に似合ってると言ってもらえると心のモヤモヤは消えていき「本当に?じゃあ、あれでいいかな。」と微笑み機嫌を取り戻す。「じゃあ、次は小物だよね。僕、下駄とか履いたことないなぁ。」そう言いながら彼の腕を引っ張って小物売り場へと足を運ぶ。下駄なんて普段履くような物ではないし履いた記憶もあまりなく、ただ歩きにくそうというイメージだけがある。が、下駄を履く機会がある事は楽しみで好奇心が刺激される。並べられた下駄を見るなり意外と色々な形や色がある事少し驚き「こんなに種類があるんだねぇ」と感心しながらもどれにしようかと選び始める。)
(選んだものに不安になったのだろうか。だけど、彼の選んだ浴衣は自分も相当気に入っているし、出来れば変えて欲しくないのが本音だが、着るのは彼自身なので納得の行くものを選んで欲しいとは思う。正直に気持ちを伝えると、先程のもので良いとの答えが返ってきた。曇りそうだった表情にも笑顔が戻り、気分を入れ替えて小物選びにかかる。なるべくわざとらしくならない様に軽く肩を抱いて小物売り場へと移動する。先程までは彼から触れて来たのだから、自分から同じようなことをしても文句は言われまい。売り場へ到着すると、所狭しと並べられる下駄に困惑しながら、隣で物色する彼に倣い、自分も探し始める。黒…それとも…。先に選んでくれた帯のような黒と鮮やかな赤の、鼻緒の色違いを2点選び彼に意見を乞う)真尋は決まった?どっちかにしようと思うんだけど、どっちが良いと思う?(買い物に来て、おっさんが恋人に意見を求めるなどという乙女な行動を取るのもどうかと思うが、開き直って尋ねてみる)
(浴衣が緑だから鼻緒は色味ではごちゃごちゃとしてしまいそうだからモノトーンにしようか。そうざっくりとした感じで取り敢えず浴衣に似合いそうな物を絞っていく。自分は濃いグレーのにしようかと手に取った所で彼にどちらがいいかと問われ、片手に自分の選んだ下駄をぶら下げて彼の方を向く。綺麗な黒と鮮やかな赤、どちらも彼の浴衣に生えそうな色でうーん、も声を漏らして悩んだ結果決めた。「赤、かな。帯と良く合っていいと思うんだけど。」彼の帯は赤みがかっている色だから相性がいいんじゃないかと思うが、自分のセンスは良いとは思っていないため控えめに答えた。彼の問い掛けに答えた後、今度は自分のについても尋ねてみる。「僕、これにしようかと思うんだけど、どう?合うかな?」自分はいいんじゃないかと手に取った濃いグレーの鼻緒のを彼へと見せながら彼の意見を聞きたいと顔を上げる。)
彼に2つの下駄を差し出すと、それぞれを見比べて真剣に悩みだした。結論は赤となったらしい。同感。自分もこっちの方が気に入っていたので文句なしに彼の意見を受け入れる。少々軽薄な風貌になってしまいそうなセレクトだが、滅多に着ないものなのだから遊びがあっても良いと思う。自分のものが決まれば、今度は彼のものに意識を向ける。手に持った下駄は濃いグレーで先に選んだ浴衣とは対照的に、シックで大人びた色合いだった。自分とは逆で、浴衣本体は若々しい色合いだが、小物ですっきりと締めるようなコーディネートになりそうだ。勿論、彼の選んだ色合いに何の異論も無い。自分へ意見を求める彼に自信満々で応える)うん。絶対合う。それに、この下駄だと、真尋がもっと大人になっても使えそうだし。良いんじゃないかな。(これから先か…。クローゼットに毎年買い足す浴衣と下駄が増えて行くのを想像すると、なんとなく嬉しくなってしまう。必要なものは何とか決めて、あとは会計を済ませるだけだ。最後に変更や見直すものが無いか確認し、レジへと向かう。エレベーター近くのベンチを指差し)これ終ったらすぐ行くから、そこのベンチで待ってて
(自分が選んだ方に彼も同感に思ってくれているみたいで良かった。自分のも尋ねて見ると"絶対"の言葉と共に合うと答えてくれた。"絶対"が物凄く嬉しくて得意げな表情をしているとこの先も使えそうと言われ胸を打たれた。来年も再来年もお祭りがある限り使えたらいいな、勿論彼も隣に居て。浴衣も増えていったりして、どれを着ていこうか悩むのも楽しいかもしれない。「僕、一生この下駄使う
よ!」大切に履こう、今回の事を思い出しながら。彼に大事にすると熱意を告げると、後は会計だけでレジへと向かおうとすれば彼に待っているように言われた。普通に自分の分は自分で買う気でいたので思わずきょとんとしてしまう。「え?待って、僕自分のは自分で買うよ!」彼を行かせまいと彼の腕を掴み引き止める。何でもかんでも買ってもらうのは申し訳ない、普段からも色々と彼がお金を払ってくれる事が多いのに、浴衣は案外高く付くし二人分となれば自分からしてはとんでもない出費だ。この為に財布にはいつも以上にお金を入れているし、今回は流石に払って貰う訳にはいかないと揺るがない気持ちで彼に訴える。)
(彼の選んだ下駄の鼻緒の色合いが殊の外気に入り、悩む間もなく即答で同意すれば、彼も同じように思っていてくれて即決してくれた。一生使うなんて言われれば彼の気持ちが嬉しくて、釣られてこちらも笑顔になる。買い物は済んだし、もとより今日は彼へのプレゼントと考えていたので迷うことなく自分で払うつもりでいたが、思わぬところで意見が入った。まぁ、彼の性格から考えると予想できたことではある。だが、払わせるつもりは毛頭ない。ただでさえ特別なイベントごとでも無い限りプレゼントを受け取ってくれない彼だ。付き合い始めの頃は、無駄に贈り物をしようとして何度怒られたことか…。でも、今回は譲れない。なんなら、浴衣を買ってあげるという毎年の恒例行事にしたいくらいだ。それに、年下の男の子と別会計でレジに並ぶなんて、流石にどうかと思う)んー…。じゃぁ、ここは払うから、店出たら真尋がなんか奢って。喉乾いたからビール飲みたい。早く会計終わらせるから、店考えておいて!(そう言って自分はレジへ、彼をベンチに追いやってやり過ごすことにした)
(ひょっとしてお金がないと思われているのだろうか?だから彼は何時も払おうとしてくれるのか、と一番有り得そうな事を考える。バイトだってしてるし、本以外の出費はあまりないので無駄遣いはしていない筈だ。貯めておけとでもいう事なのか…と思考を巡らせる。が、自分が次の言葉を発するまでに彼が早口に此処では自分が払うから食事の会計は自分がしてくれと、行きたい店も決めておくよう言われた。そう告げるなり足早にレジへと向かってしまった彼の背中を見つめながら仕方なさげにベンチへ腰掛け彼を待つことにした。行きたい店はもう決まっている、行きつけというほどではないが友人とよく行くお店だ。味は美味しいと思うが彼の口に合うかな。お酒もあるところだし楽しんでくれたらいいな。)
(自分も若い頃は年上の人間に金を出して貰うことを不服に思っていたが、いざ自分の年になると両方の気持ちが分かる。自分が若い時は相手に軽んじられているのではないかといぶかっていたし、年相応になると若い頃はどれだけ日々の支出が大変だったかということを思い出してしまう。ましてや
今回の買い物は生活必需品では無いのだから、通常の生活費とは別の出資となってしまうことは容易に判断できる。いつも甘えることなど無い彼に、せめて何かしてあげたいという気持ちも込めて、今日だけは自分に任せて欲しいと思い、自分から遠ざけることにした。それに、次の約束まで漕ぎ着けることも出来たことだし、計画は概ね成功だ。店員さんに包装はどうするかと尋ねられたが、どちらも自宅用だと答え一緒にバックに詰めてもらう。清算を終わらせると彼のもとに戻り、ベンチから立ち上がるよう手を引きながら、優しく声を掛ける)お待たせ。それじゃ、真尋のお勧めの店に行きましょうか。
(悶々と考え込んでいるといい事を思い付いた。来年の浴衣は自分が彼にプレゼントする、これでチャラになるしお返しにもなる。既に来年が楽しみになってきては気持ちがスッキリし大人しく彼を待つ。大きな紙袋を下げて彼が此方に向かってくる。浴衣と下駄二人分は重たいだろう、これからまた歩くし途中で交代しようと考えつつ手を引かれながら立ち上がる。「篤、ありがと。次は僕がお返しするから。」そう告げると今日は自分が彼をエスコートする日だ張り切ってお店へ向かおう。「僕のお勧めのお店、デパートの近くだから10分くらいで着くよ。」彼の持つ紙袋の取っ手に指を数本絡めて軽く引っ張りながら彼の斜め前を歩く。下りは楽だろうとエスカレーターで下りる事にして彼を誘導する。賑やかなデパートから少し離れた路地にあるお店へと歩を進めていくと、段々と人気はなくなってきたが直ぐに赤い提灯が見えてくるとそれを目の前に足を止める。「ここ、僕のお勧めのお店。お好み焼き屋さんだよ、お酒もあるし寛げる雰囲気だから篤も気を遣わないかなって。」彼に店を軽く紹介して反応を窺う。どうだろうか。)
(支払いのことで些か気に病んでくれていたようだが、彼のもとに戻る頃には割り切ってくれたようでホッとした。今日ばかりは自分の我儘を聞いてもらいたいと思っていたので、彼が何でもないようにやり過ごしてくれるのをありがたく思い、これ以上は言及しないようにした。待ち合わせの時間から買い物までをこなし、ウインドウから外を見ると夏とは云え真っ暗で、小腹が空いて居ることに気付かされる。ベンチから彼を立ち上がらせると、彼の行きたい店へと案内を促す。話しぶりからここからそう遠くは無い場所にその店はあるらしい。手を引かれるままに大人しく付いて行くことにした。しばらく歩き、着いた店は以外や以外。お好み焼き屋だった。てっきり小洒落たカフェか、スイーツのビュッフェにでも行くのかと思っていたが、まさかのお好み焼き屋ということにテンションが上がる。産まれのせいか粉物は嫌いでは無くむしろ好きな方なので、今日の彼のセレクトは自分にとっては何よりものプレゼントだった)真尋はなんでもお見通しだな。やばい…。腹減ってきた…。(空腹を訴える腹を摩りながら、案内の主を店内に押し込めるように背中を押した)
(もっとオシャレな店も考えていたのだが、自分や彼は庶民的な雰囲気のお店の方が落ち着くのではとこの前居酒屋に行ったことで思ったのだ。彼の反応が嬉しくてお見通しなんて言われるとつい調子に乗ってしまう。「当たり前でしょ、篤の事なんてお見通し。」威張る様に告げると彼は空腹の限界なのか腹を摩っては自分の背中を押し店の中へと入れる。押されるまま店内へ入り、従業員とは特に関わり合いもないので出迎えてくれた店員さんに二人ですと告げて奥へと通して貰う。四人掛けのテーブル席へと案内され座るとお冷とお絞りを持って来てくれた。他の人が頼んだお好み焼きのソースの匂いに自分も空腹を感じては二つあるメニューを一つ彼へ渡し自分ももう一つ手に取る。「僕は何時もね、お餅とチーズ入ってる奴にするんだ。篤も食べてみる?」メニューに目を通すなり慣れた手付きでパラパラとページを捲りながら彼に尋ねる。)
(店の前に立ってるだけで、中から漂ってくるソースの匂いに吸い込まれそうになる。提案者の彼を急かすように店内に入れば、自分のイメージ通りの店で尚のこと嬉しくなる。長年に渡って壁に染みこんだ油と変わらないメニュー表。どれをとっても完璧と言わざるを得ない。こんな渋い店をよく知ってるななどと感心しながら、彼に倣ってメニュー表を眺める。シンプルに豚玉か…、それとも蕎麦の入ったモダン焼きか…。久々のお好み焼き屋ということで悩み果てているところで、彼から助け舟が出た。どうやら餅とチーズが入っているらしい。それだけ聞くと絶対に美味しいに決まっている。なら、自分は定番の品を頼むことにしよう。そうすれば2人でシェア出来る訳だ。そっちは餅とチーズで割とボリュームのあるメニューだからこちらはどうしようか…)餅チーズは決定で、もう一つはどうしようか…。海鮮か広島焼き、それとも全く変えて焼きそばにする?(どれも美味しそうでつい迷ってしまう)
(自分は何時もと同じのを即決してしまい、偶には違うのにした方が良かったか?とも思ったが彼もそれを食べたいと思ってくれているみたいで一つは決定した。自分もシェアするつもりでいたので異論なくもう一つメニューを悩む。大学生になってから何度か来たが同じ物ばかり食べていたので他にお勧め出来る様なメニューはなくて彼と一緒に悩むが、一番気になったのが広島焼きと名前のついたもので食べてみたいと思った。「じゃあ、広島焼きは?まだ食べた事ないし、麺が入ってるんだよね?美味しそう。」メニューに向けていた視線を彼の方へ移しては食べた事ない物への好奇心と彼だから気を遣わずに新しい物に挑戦出来る安心感で何処か楽しげに告げる。)
(さすが成長盛りの男子。数ある中でボリュームのある広島焼きをセレクトしてくれた。自分もそれには異論は無い。こんなところも男同志で出歩くことのメリットの一つだ。ガッツリ食べたい時に一緒に食べてくれるのは実に嬉しい。なんせ年頃の女の子はダイエットだなんだと下らないことで、せっかくの美味しいものもスルーしてしまうのだから…。それはともかく、案外広島焼きの食べれる店は少なくて、意外に期待してしまう。彼がテッパンだと言うノーマルの物に餅とチーズをトッピングしたものと、広島焼きをオーダーする。他にも鉄板焼きやホイル焼き、果ては串焼き等、メニュー表を開ければ魅力的な品々に目を奪われるが、ここはグッと抑えてお目当てだけを注文する。足りなければ、あとから注文すれば良いだけの話だ。あとはドリンクオーダーだが、自分は勿論ビールで決まっている。それと、すぐに出てくるようにときゅうりの浅漬けに決めた。彼はどうだろう。メニューを見ても、メロンジュースは見当たらない)俺はオーダー決めたけど、ドリンクどうしようか?
(メニューを決めると彼がオーダーをしてくれる様で店員さんを引き止めてくれた。餅とチーズのお好み焼きに広島焼きを頼んだ後、彼はドリンクにビールを追加し自分へはどうするのか尋ねてくれた。普段は昼間に来ている事が多いし友人には酒が弱いと公言しているのでアルコールを頼まない時だってある。が、幾つか飲めそうな物はあるのでその中から今の気分のを選ぶ。「僕は、カシスオレンジをお願いします。」どうだ、僕だって飲めるお酒はあるんだ!と彼に見せつける様に頼んでみせる。注文を確認した後店員さんは厨房の方へと向かって行った。「僕だって、何時もメロンジュースばっかり飲んでるんじゃないからね!」と体を前のめりにして上目で彼を見上げて得意気に告げる。この前は居酒屋で失態を晒してしまったが今回は大丈夫。最近、酔って記憶を無くす事は少なくなってきたし、彼が居るから酔っても介抱してくれるだろうし。やっぱり彼が居ると自分は安心出来て行動出来る、信頼しているから。)
(彼の頼むメニューを聞いて、最近のお好み焼き屋さんは随分洒落たものを置いていると、つい感心してしまった。先日の件からメロンジュースがあまりにも可愛らしかったのでそれに突っ込むと、カシスオレンジなんてものを注文されてしまう。彼のことだから、てっきり謎のソフトドリンクを注文するかと思いきや、普通なオーダーに少々つまらなさを感じながらも、久々に自分に合わせてアルコールを頼んでくれたことが嬉しくて、互いにジョッキが来るや否や勢いよくぶつけた。カシスオレンジを手にして得意げな彼に)お疲れ様!今日は付き合ってくれてアリガト。(手元のジョッキをグッと煽ると、今日1日の疲れが全て吹き飛びそうになるほどに癒される。ましてや、共に着る浴衣まで一緒に揃えて、その充実感たるやひとしおだ。珍しく一緒に飲んで、気分良くなってくれればこんなに嬉しいことは無い。彼と一緒に摂る食事が、過ごす時間が何物にも代えがたいほど自分にとっては大切なのだ。他の客に聴かれないように小さな声で囁く)連れて帰ってあげるから、好きなだけ飲んで良いよ。酔った真尋も可愛いから…。(恥ずかしい自分の発言には触れないまま、程よく温められた鉄板に出来立てのお好み焼きを乗せられ、彼のと自分のを切り分けた)
(あの時は平常心を保つ為アルコールは控えた方がいいかと思い頼んだのがメロンジュースだった。今回は誰に気を使うでもなく美味しくアルコールを頂ける。直ぐに運ばれてきた二つのジョッキとお好み焼きと広島焼きに目を爛々とさせる。ジョッキを合わせられ乾杯をするとカシスオレンジを一口飲む。何時も彼は有難うというが彼に付き合ってあげている訳ではなく、一緒に来たくて来ているのに何となくその言葉が腑に落ちないと思うも、お礼の言葉は大切だと思い気にしない事にした。「僕こそ、浴衣有難う。いいの買えて良かったね。早くお祭り行きたいよ。」満足気な表情で告げてはもう一度カシスオレンジを口に運ぶ。すると、彼から心を見透かされた様な台詞と自分の欠点だと思っている酔いやすい所を可愛いなんて言われてはみるみる顔を赤らめ固まってしまう。「篤の手なんか借りなくたって大丈夫だし。」ツンと返すと切り分けてくれたお好み焼きを自分の取り皿に取り恥ずかしさを紛らわす為にパクパクと口に運ぶ。)
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