僕 2015-05-14 13:16:14 |
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(自分の前で感情を露わに泣くだなんて初めてのことだった。切っ掛けはほんの些細なことだったのに、今まで溜めていたものが溢れ出してしまったのだろう。普段は気丈な彼が幼子のように泣きじゃくる姿を見て、我慢させていたことを悔やんだと同時に、やっと本音を言ってくれた嬉しさが込み上げてくる。ゴメンね。そしてアリガトウ。泣き顔を間近で見られたく無かったから離れたのだろうと思ったが、尚も涙を流す彼を放って置けなく抱き寄せると、自分の好きな彼の顔が何やら大変なことになっていることに気付いて、小さな子供でもあやすかのように思わずシャツで拭うと、汚れるからなんて言われるがそんなことを聞くつもりは更々無い。自分より少しだけ下にある彼の視線に合わせるように身を屈めて)仕事のことは本当にゴメン。配慮が足りなかったね。でも、真尋のことを最優先にしたい気持ちは分かって。俺は我儘だから、仕事を終わらせて真尋が寝る頃に帰るよりも、仕事を切り上げて真尋と少しでも一緒の時間を作りたいと思ってる。でも…。真尋が嫌だっていうなら家に持ち帰らないようにするから。これからはどんな小さなことでもいいから、何でも言うようにしよ。な?(話終わる頃には涙も止まり、いつもの彼に戻っていた。すると、ホッとしたのかすっきりしたのか何なのか分からないが、唐突に「泣きそうなら泣いてもいい」なんて言われて一瞬言葉を失った。いやいや!オッサンが若い男の子に抱きついて泣くなんてビジュアル的にきつ過ぎるだろう。たまに発せられる彼の言葉にはとてつもない破壊力があるため油断出来ない。引き攣った笑みでなんとか躱しながら、彼の背中を押すようにして部屋に戻ることにした)き、今日は間に合ってるから大丈夫。ほら、アイス食うんだろ。部屋に戻ろうか
(額を合わせた至近距離で彼を見詰め紡がれる言葉を聞く。彼はさっきから謝ってばかりだ、彼はちっとも悪くはなく悪いのは自分なのに。自分を最優先だと言ってくれたのはとても嬉しかったが、それでは彼を束縛するのと同じなのではと考えてしまうもそれが彼の気持ちならと受け止める事にした。こんなにも自分を思ってくれていたなんて、自分が思っていたよりも深く愛情を注がれていた事に今更気付いて、先程の自分がどんなに愚かだったのだろうと後悔する。自分は思い込みが激しく一人で考え込んでしまう傾向があるのは自覚済みで、彼からどんな小さな事でも伝え合う様にしようと提案を受ければ素直にそうしようも思えた。何となく目を合わせているのが気恥しくて視線を落としては、ちゃんと自分の思いを言葉に紡ぐ。「…大丈夫、篤が僕を一番に思ってくれてるのは分かってるから。だから、もう謝らないで…。…僕、仕事してる篤好きだし家で仕事するのも全然気にしない。篤が居てくれる方が僕も安心するし、寂しくない。…これからは、ちゃんと言う様にするよ。」そう言い終わると今度は自分が同じ思いをしていたという彼を慰める番だと涙を受け止める準備をしていたのに、今日は大丈夫なんだと断られた。背中を押されながら、なんだ、泣かないのか…泣いてる所見たかったな、なんて思うもいい歳したおじさんが声を荒らげて泣く姿はやっぱりちょっと気持ち悪い。やっぱり見なくて良かったかもと思い直し室内へと足を踏み入れれば、くるりと彼の方に正面を向けて抱き着く。胸元に顔を埋めて「…篤、…ありがと。…あと……だい、すき。」そう告げると勢い良く離れ赤らめた頬でキッチンの冷凍庫へと駆けて行って。)
(いつもはつい大切なこともはぐらかしてしまう癖がついてしまってなかなか本音が話せないが、今日ばかりは自分の気持ちが彼にちゃんと伝わるようにと、一言一言思いを込めて言葉をつ繋げる。上手く自分の気持ちを伝えられたかどうかは確信が無いが、少なくとも自分が伝えたいことだけはちゃんと話が出来たのでは無いだろうか。自信無さげな面持ちで彼を見つめると、自分の気持ちを汲んでくれたかのような真摯な言葉が返ってきた。だが、それに加えて謝り過ぎだと指摘されると、先程から「ゴメン」だの「配慮が足りなかった」だの謝罪の言葉ばかりだったことを思い出して苦笑してしまう。確かにそうかもしれない。だがそれも彼に伝えたかった言葉の一つだったのだから、女々しいと思われようとも仕方が無い。少し落ち着いた彼が自分に対して無茶な提案を持ちかけたが、どうにか部屋に戻すことに成功した。さて。仕事もひと段落ついたことだし、今までの時間を取り戻すべく飲み直そうかと思ったその時、振り向き様抱き着かれた。一瞬何が起こったのか分からずに衝撃を受け止めると、思っても見なかった言葉が返ってくる。「だいすき」と…。言った途端、すぐさま姿を消したところを見ると、余程恥ずかしかったのだろう。だが、残された自分はもっと恥ずかしいのだと言うことを分かって欲しい。この顔を見られなかったことを幸いに思う。どうせキッチンには彼が食べるアイスを取りに行ったのだろうから、すぐに戻って来るに違いない。それまでに、照れたせいでにやけてしまうこの顔を、なんとか平常に戻す必要がありそうだ。ソファに腰掛けて手摺に肘を付くと、未だにやついた表情のまま畏まった風を装って呟く)ったく…。人のことをどんだけ振り回すんだよ…
(ついに言えた、やっと言えた。口下手な自分はついつい生意気で釣れない言動をとってしまい、なかなか上手く伝えられないと気にしていたから今回の事は丁度良かったのかもしれない。言えた達成感と満足感でスッキリとした気持ちで冷凍庫を開けて自分の分のアイスを取り出しては、彼には珈琲を持って行ってあげようと思い付きアイスを一旦キッチン台に置いて珈琲の準備をする。お揃いで買った彼のカップに珈琲を注ぐとカップとアイスを両手にリビングへ戻ると、ソファに彼の後ろ姿を見つけ隣へと行くとけろっとした様子で「はい、篤。珈琲入れたよ。」とカップを手渡し、ソファへ腰掛ける。待ちに待った二人でゆっくり出来る時間に嬉しくて緩みそうになる頬を堪えながら「ねぇ、篤はお祭りとか興味ない?」と唐突に尋ねてはアイスの封を切って一口齧る。最近良く見かけるお祭りのポスター、彼を駅で待っていた時に掲示板に貼ってあったのを何気なく見たら、どうやら近所らしくて週末辺りの3日間ほどやっているみたいだ。少し子供っぽいかとも思ったが、一度くらい二人で行ってみたいと思った。人混みだし彼の年齢ではさほど興味は無いかもしれない、だけど聞いてみるくらいはしてもいいだろう。あまり興味を示していなければ適当に世間話の様に流してしまえばいい。彼の反応を見ようと彼の方へ顔を向ける。)
(未だに先の言葉の余韻に浸っていると、先日買ったカップを持って漸く彼がキッチンから戻って来た。さっきのことをまだ気にしていたらと彼の顔を窺うと、自分の心配を余所に予想に反していつもと同じ表情で、ブラックコーヒーで満たされたグリーンのカップをテーブルに置く。少々拍子抜けしたが、普段の彼に戻っていたことで安堵した。こちらも普段通りの表情で「ありがとう」と告げると、自分のために入れてくれたコーヒーに口を付ける。自ら好んで飲まない癖に、自分好みの味・濃さで入れてくれる彼のコーヒーはどこの店のものよりも美味しくて、1日の疲れを癒してくれるようだ。そんな折、突然「祭り」だなんてことを聞かれて首をかしげるが、ぼんやりと思い出した。もうそんな時期なんだな…。そりゃまぁ、嫌いでは無い。普段人混みの中を歩くのは苦手なのだが、こと祭りに関しては話は別だ。安っぽいソース味しかしない焼きそばも、高いだけで美味くもなんとも無い焼き鳥も、コンビニで買うよりも倍近い高いビールも、祭りでしか味わえないものだ)嫌いじゃないよ。どうしたの、急に。(自分はさっき食べた癖に、人が食べているのを見るとつい欲しくなり、彼の手に持っていたシューアイスに一口齧りつく。うん。美味い。コーヒーに実に合う)
(突然祭りの話なんて切り出して可笑しいと思われただろうか。何だか変に緊張してきた…。様子を窺う様に隣を見れば何やらぼんやりとしていて、不思議に思いながらも黙って返答を待ちつつアイスを齧る。すると嫌いではないと返事が来てぱぁっと嬉しくなるも何とか表情に出すのは堪える。続けて急にどうしたんだと尋ねられ、つい"別に。"と言ってしまいそうになるのを止め「え?…あ、…えっと…」と言葉を濁す。嫌いじゃないんだったら躊躇する必要ないよね…よし!密かに意気込むと「僕…お祭り、行きたい!一緒に!」と彼の方に勢い良く体を向けて真剣な眼差しで見つめる。よし!言えたぞ!誘ってやった!と内心ガッツポーズを決めていると自分のアイスが彼に齧られたのに気付き「あー!篤はさっき食べただろ!」と大声を出せば彼の頬を押し返し、アイスを彼から遠ざける様に離して不服そうな表情でじとりと見る。)
(大人の余裕とやらで上手く隠しきれただろうか…。コーヒーをすすりながらチラリと横目で見ると、そこから言葉が返ってこない。な、なんだったの?さっきの?!勝手に行く気になってしまった自分を盛大に恥じた。もしかしたら、学校の友達と行くつもりだったのを自分に相談したのかもしれない。それか、バイト先で行くことになったのか。危うく自分から誘って、いつもの調子で「なんに言ってんのさ」なんて言われてはダメージが大きすぎる。ここは大人しく様子を見ることにしよう。やはりさりげなさを装い)そういや、このあたりであるよね。(例年通りに会社帰りにたこ焼きでも買って、君の帰りを待つよ。そう思った瞬間、まさかの返答が返ってきた。一緒に行きたい、と。一気にテンションが上がる。どうしよう。これではまるで中学生男子だ。夏好きとしては恋人とのデートとしては祭りは絶対外せない。彼が言っているのが近隣の祭りならば3日間あるはずだ。確か金土日の3日間ならどこかスケジュールが合うはず。アイスを齧ったせいで若干彼の機嫌を損ねながらも、やはり冷静に尋ねる。彼から奪ったアイスを咀嚼しながら)確か週末だったよね。真尋、いつなら空いてるの?
(自分から何処かへ行こうと誘ったのは何時ぶりだろうか、誘うってやっぱり緊張して苦手だ。友人なら気兼ねなく誘えるのに彼を誘うとなると断られた時にショックは大きく、気恥しいのもあってなかなか言い出せない。しかし、偶にはと勇気を出して誘ってみれば何時が空いているのかと尋ねられ、一緒に行ってくれるのだと分かれば嬉しくって頬が緩む。ソファの側に置いていた自分の鞄からスケジュール帳を出し今月のページを捲れば今週の欄を指でなぞり「えっとね、僕は…18時以降ならどれでも大丈夫。篤は都合何時なら行けそう?」と手帳から顔を上げて彼を見る。平然としているが心の中では、万歳をしたいくらいの喜びと今からワクワクが止まらないくらいの楽しみでいっぱいだ。お祭りといえば…林檎飴食べたいな…後、たこ焼きとかカステラとかかき氷も。花火も上がるみたいだから一緒に見て…うわぁ、恋人っぽい!恋人だけど。浴衣とか来て行った方がいいのかな?その方が大人っぽいかな?と想像を一人膨らませる。)
(彼から漸く誘いの返答が返ってきた。尋ねてみると3日間とも時間に余裕があるらしい。慌ててスマホの予定表を確認する。金曜日…。これは危険だ。残業の入る可能性がかなり高い。土曜日。仕事は入っているが、午後は必ずず終わる予定だ。日曜日。まぁ予定は無いが、世間一般に盛り上がるのは土曜日だろう。よし決めた!)土曜日はどう?仕事はも夕方には絶対終わるから。どっかで待ち合わせでもしようか。(このエリアに長年住んでいながら、地域の祭りに参加するなんてほとんど無かった。先にも述べたように会社帰りにデリバリーのように、何品か買って家で楽しむくらいが精々だったのに、まさか大好きな彼と一緒に祭りに参加出来るなんて夢のようだ。確か花火も上がるはず。ぐーぐる先生に聞いて、人通りも少なく、尚且つ花火が見れる場所を探しておく必要がある。そこで一つ問題です。どうしても浴衣の彼と祭りに行きたい場合はどうすれば良いでしょうか。彼の浴衣姿がどうしても見たい!なんなら買ってやる!!下心を隠しつつサラッと)土曜日はどうかな。あと、せっかくの祭りなんだからさ。真尋、浴衣着たら?似合いそうだけど。
(彼が携帯で予定を確認している間、勝手にお祭りの風景を想像する。賑やかな通りを人混みに混じって、色んな売り物に目を奪われながら歩く。半分こしたりして…。花火が上がったら二人並んで見上げて…ロマンチックだ…少女漫画みたい…。少し照れくさいけど、こんな機会は滅多にない。いい思い出になればいいなぁ。彼から土曜日はと聞かれ、勿論大丈夫で頷く。「いいよ、土曜日。待ち合わせは…駅にする?何時も僕達が使う。」此処からでも歩いて行ける距離で、彼が仕事帰りに寄りやすい場所…となるとやはり駅だろうか。何時もとあまり代わり映えしないが、待ち合わせは人混みではない方がいいだろうと考えて提案した。今度は今日よりもっと大人っぽく格好よくキメた装いで行こう、新しい服でも買いに行こうかと考えていた所で浴衣を提案された。ついさっき薄らと頭を過ぎったが、似合いそうなんて言われては断る事が出来ない。しかし、自分が求める様なイメージの物は持っていない。母さんに聞こうかとも思ったが子供の頃のしかないだろうし、友人に借りるのも何だか気が引ける。「けど、僕、浴衣なんて持ってないよ。それに篤はスーツなのに僕だけって変じゃない?」断る訳ではないが、着れる様なのがないのと彼と服装が違い過ぎておかしいのではとどうしようか迷う。買ってもいいが、彼好みのなんて正直分からないし…。)
(さりげなくこちらが持ち出した提案に彼が乗ってくれた。これはチャンスだ。この機会を逃す手は無い。だが、仕事帰りとなるとこちらはスーツで待ち合わせ場所に現れることになる。自分は全く気にならないのだが、敢えて突っ込んでくるところを見ると、どうやら気にしているらしいことが分かった。確かに言われてみるとそうかもしれないな…。しかしここで有耶無耶にしてしまっては、彼の浴衣姿を見られるのが1年先となってしまう。それだけは何とか阻止したい!別にコスフェチな訳では決して無い。…はずだが。好きな子が普段着ない浴衣を着て、しかも大手を振って一緒に外を歩けるだなんてそうそう無いだろう。この数分の間に策を練る自分にも我ながら呆れるが、今はそんなことを言っている暇は無い。どんな手を使ってでも、彼に浴衣を着せることが最優先事項なのだから。先程の彼の発言を踏まえて返答する)別に変じゃないとは思うけど。真尋が気になるんだったら一緒に着ても良いし。祭りの日は早めに仕事切り上げて帰るから、家から一緒に出れば良いんじゃない?来週、真尋がバイト無い時に一緒に買いに行くってのはどう?(コーヒーを飲みながらさらりと告げる)
(…浴衣かぁ…やっぱりそういうの着た方が大人っぽいのかな?彼が着たのを想像してみると…か、格好良すぎて…やばい。彼の浴衣姿なんて見た事もないし、見たいと考えてた事もなかったけど、今はすっごく見たい。彼はスーツで自分は浴衣でお祭りに行くのは変じゃないかと尋ねてみると、一緒に着てもいいとまさに願ったり叶ったりの返事が返ってきた。目を輝かせて表情を明るくし彼に訴える。「一緒に着たい!」彼と二人で浴衣を着てお祭り…うわぁ、素敵すぎる!!どうも彼との事となると思考が乙女化してしまう。ロマンチックに憧れもなければ少女漫画なんて読んだ事もないが、女の子達が好きなのも今なら分かる気がする。それに家から一緒に行けるのなら、待ち合わせをしなくてもいいし。浴衣を買いに行こうと提案されては、来週の予定を思い浮かべる。「そうだね。来週は、木曜日と金曜日ならバイト無いよ。」よし!大人っぽい浴衣で彼を悩殺だ!自分だって、もうこんなに大人なんだと見せ付けてやらないと!あ、でも…。「僕、自分で着たことないんだけどさ…篤は着付け出来るの?」小さい頃は着せて貰っていたし、大きくなってからは着た覚えすらない。簡単そうに見えるけど、全く持って知識がなく特に帯なんてどうやって結ぶのやら。彼はどうなのだろうと問いかけてみた。)
(自分から一緒に着ようと提案すると、先程とは打って変って前向きに検討してくれるらしかった。ヨシっ!!心の中でガッツポーズをする。浴衣かぁ。どんなのが似合うだろう。シンプルなのも良いだろうし、普段身に付けないような鮮やかな色合いのものも良さそうだ。合わせる帯や下駄の鼻緒も大切だし…。って、キモいな。俺。女の子の買い物に付き合うことほど不毛なことは無いと常々思っていたくせに、彼のこととなれば話は別だ。買い物、特に服。こっちが似合うだか色はどっちが合うだとか聞かれても全く興味が持てず、専ら荷物持ちの役目に回ることが大半だったが、彼が着るとなれば話は別だ。自分も一緒に買うと言う大義名分があれば、試着から付き合うことが出来る。我ながらナイスアイデアだと自画自賛したところで、彼から一体誰が着付けるのだということに指摘が入る)俺もそんなこと出来ないからさ…(勿論抜かりは無い。自分もそこは気にしていた点だったので、計画としては今度一緒に選んで購入し、祭り当日に店で着付けて貰うという流れを伝える。本当なら任せとけなんて言えればいいのだろうが、和装なんて全く知識も無く、温泉に行っても襟の左右前すら分からない自分に恰好良く着付けるだなんて不可能に近い)
(あの…。真尋くんのこと、絶対に大切にします!!至らないところも多々ありますが…今後とも宜しくお願い致します/)
(普段の服も特にこだわりがなく適当に買って適当に着ていたのだが、彼と出会ってからは割とこだわる様になった。出掛ける時なんてそれはもう持っている服を全て引っ張り出す勢いだ。理由は勿論、大人っぽく見られたいから。今回は流行りも着飾り方もイマイチ良く分からない浴衣を選ぶのだが、これがまた難しい。彼はどういうのが好きかな。自分的には落ち着いた色で大人の色っぽさが出る様なのが理想だが。こればかりは行って売っているのを見なければ分からない。彼に着付けは出来るかと尋ねると、やはり出来ないと返ってきた。男はあんまり着ないからな…こういうの。店で着付けてくれると聞けば、そんな事全く知らず驚く。「売るだけじゃなくて着付けまでしてくれるんだ…凄いね。」わざわざ店に出向くのが面倒だが…。あ、そうだ!こういうのは女の子なら良く知ってるんじゃないかな…香菜に聞いてみようかな。「ね、僕が着付け方教わって来ようか?女の子なら知ってると思うんだよね。」彼に事を切り出してみる。家で着れた方が楽だし、何より着付けが出来るなんて格好いい。何時もは世話を焼いて貰ってばかりだから、今回は自分が彼を着付けていい所を見せよう。)
(/わぁっ!有難うございます!!! 此方も篤さんの事、大切に愛していくと誓います!!!これからもお隣に真尋を置いて頂けたらと思います。末永く宜しくお願い致します。)
(浴衣を購入しに行くところまでは概ね同意を得ることが出来た。問題の着付けに関しては、彼がどこかで調達してきてくれるという案を出してくれた。恐らく学校の友人に、そう言ったことに詳しい人間が居るのかもしれない。茶道部や和楽部ならば、なんてことない話なのだろう。ここは素直に彼に任せることにした。相手が女の子だということには目を瞑ることにして…。彼の友人に女の子の話が出て来るなんて初めてだから、つい怪訝な顔をしそうになったがなんとか押し留めることに成功した。と思う。そりゃ、共学なのだから女の子も居るだろう)真尋がしてくれるなら手間が省ける。じゃぁ、当日は真尋に任せることにして、今週の木曜に一緒に買いに行こうか。(大型デパートか呉服屋か…。これも迷うところだ。考えあぐねた結果、今回はカジュアルなものも選べるようデパートでの待ち合わせにすることにした。これなら彼の好きなブランドからも選べるかもしれないし、もしまた欲しくなれば来年また買いに行けば良い話だ。というか、何着でも買ってあげたいと言うのが本音なのだが)19:00に駅前で待ち合わせで良い?
(香菜、彼女の事は数少ない女友達だとは思っているが、それ以外の感情で接した事はなく何の気なしに話題に出した。彼も何も突っ込んで聞いてこなく、不機嫌といった様子も見受けられないし時に気に障る事はなかったようだと判断する。自分に任せると言われては、頼りにされている感を感じてつい張り切ってしまう。「任せといてよ、凄く格好いい着方教わって来るから!」まだ彼女が着方を知っているかどうかも分からないが、もう教わる気満々で早く明日になって欲しいなんて思ってしまう。買い物の日時を彼が決めてくれれば異論はなく頷く。「木曜日の19時に駅ね。送れないでよ!」余計な一言を添えながらも楽しみだと頬を緩める。「どんなのがあるかな。僕、浴衣買いに行くの初めて。」俯き加減で何処か照れくさそうにしつつ、初めてなのだと彼に打ち明ける。お祭りに行きたいの一言から浴衣を買いに行く所まで話が行くとは思わなかった。何だかお祭りよりも浴衣を着る方が楽しみになってしまっている様な気がするが、まぁいっか。)
(浴衣を購入することにも同意を得て、彼のツテで着付けの問題も解決した。あとは予定通りにことを運ぶのみだ。彼に祭りに誘われた瞬間に頭を過ったこの計画が、こんなにうまく乗るとは思わなかった。祭り当日は勿論楽しみだが、一緒に浴衣を選びにいくというオプションまで付いてくるなんて。やっぱり夏は良い。実に良い。時間厳守と言われたからには、約束を守るために仕事を終わらせる必要があるが、それはなんとかなるだろう。しかし彼が着付けを乞う女の子とは一体どんな子なんだろう。本当は聞いてみたいところだが、仲の良い友人だと言っているのだからそれ以上の詮索はしないことにした。第一そんなことに嫉妬するなんてみっともないということくらいの自覚はある。そして、頬を染めて浴衣を買いに行くことが初めてだと告げられてしまえば、自分のちっぽけな嫉妬心なんて一瞬にしてどうでも良くなった。嬉しそうに微笑む彼につられて、こちらも思わず笑みが零れる)俺もだよ。真尋が祭りに誘ってくれなかったら、一緒に浴衣を買いに行くなんて出来なかったもんな。ありがと。(素直に喜んでくれる彼の髪を、愛おしそうに優しく撫でる。淹れてくれたコーヒーも空になり、夜も随分と更けてきた。)そろそろ寝ますか。(ソファから立ち上がると、彼にも立ち上がるよう腕を差し出す)
(木曜日は午前と午後跨いで講義があるが待ち合わせの時間までは時間があるし、本屋にでも寄って流行りの浴衣をばっちり学んでおこう。無知なまま何かをするといった事が苦手で、料理も取り敢えずは本を熟読する所から始まるし、彼との関係だってドラマや雑誌を立ち読みして積極的に知識を取り入れようとしたりと興味がある事に関しては特に積極的で学ぶ事に貪欲である。が、知識はある程度身に付くもののそれを踏まえて行動するとなると不器用を発揮し上手くいかないのが何時ものパターン。今回はそうならない様に気をつけると自分に言い聞かせる。自分が始めてな事が彼にとっても始めてだと知ると、些細な事だが一緒の初体験が嬉しくまたほんのりと頬を染める。誘った事に対して礼を言われると何だか気恥しく、うっかり…僕は興味ないけど篤が好きかなと思ったからとか、今時お祭りに行かない方が流行遅れなんだとか照れ隠しの言い訳を思い付いてしまうが、髪を優しく撫でる手付きと愛しげな視線を見るとそんな言葉は出てこず、代わりに「どう致しまして…。」と照れ臭そうに俯き告げる。そろそろ寝ようかと立ち上がった彼を見上げると此方に手を差し伸べていて、その手をゆっくり掴めば「あーあ、今日は篤の所為で凄く疲れちゃった。」と本心ではなく冗談で軽口を叩いて立ち上がる。)
(予定も決まり、あとはその日を待つだけだ。いつもより幾分素直な彼が可愛くて髪に触れると、普段のような軽口は無くて、照れたようにこちらからの礼を受け入れてくれた。手を差し出せば握り返してくれたので、彼が立ち上がりやすいように軽く手を引く。疲れたという彼の言葉に苦笑をもらしながら、こちらも彼の調子に合わせる)まぁ、そう言うなって。今日は本当に感謝してるんだから。真尋さんのおかげで仕事も上手く行ったし、飲みにも付き合ってくれて、本当にありがとうございました。今度のデートの時には必ず埋め合わせするからさ(少し芝居染みたようにそっぽを向きながら不満を告げる彼の頬に口づける。今日は自分に付き合って貰ったのだから、今度の買い物の際は彼に合わせようと決めていた。甘いものの好きな彼のことだから、そう言った店に行っても良いし、普段彼が行く店というのにも単純に興味がある。リビングの電気を消し、2人して寝室へ移動しながら話し出す)買い物終わったら真尋が食べたいもの食いに行こう。考えといてくれると助かるんだけど、どうかな?
(同じ事をするにしても友人と行く時より彼と行く時の方が楽しみな気持ちは大きく、ついつい色々想像してしまって浮かれてしまう。しかも夏限定のイベントとなると尚更。夏っていいな。今までは暑いだけあまり好きではなかったけど、今は一番好きな季節に思える。手を握り立ち上がり彼から一日のお礼と埋め合わせをすると聞けば頬に口付けられる。反射的にほんのり色付いた頬で照れを隠す様に態と不貞腐れた表情をして彼を横目に見る。リビングの電気を消すために手を繋いだまま彼に引かれる様にして歩きながら、今度は自分の好きな店に行こうと提案されると少し考えた後頷く。「…分かった。考えておくよ。」電気を消し終え暗い中歩き寝室へと辿り着くと手を離して先にベッドに寝転べば、真ん中で大の字に手足を広げて「ふふん、篤の場所は占領した。」とドヤ顔を向ける。)
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