僕 2015-05-14 13:16:14 |
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(夜中にこんなものを食べようとしているところで、「太る」なんて痛い指摘をされる。どうせ何食っても太らない細身の彼を恨めしそうに見ながら、隙をついて脇腹を軽く摘まんでやる)うっせ。美味いもんはカロリーが高いと相場が決まっているんだよ。(彼が手に取った梅味を受け取り、籠に放り込んだ。最後にレジでいつものタバコを店員に告げて会計を済ませコンビニを出ると、あとは家に帰るだけ。2人でいつもの道を歩きながら話し掛ける)今日は急なことに付き合わせてゴメンな…。疲れただろう。大丈夫だった?(自分の知人・友人に彼を合わせたことが無かったので、随分と気を遣わせたのではないかと心配になる。ましてや、自分の会社の同僚で年も離れた相手だ。もっとフォローしてあげるべきだったと反省する点もあった。人気のない道すがら、優しく彼の頭を抱き寄せて彼を労った)
(人が折角選んであげてるというのに恨めしそうな視線に何なんだと眉を寄せるも、その隙に脇腹を摘まれその痛い様な擽ったさに「ひゃっ!?」と変な声と共に彼から勢い良く離れる。不意を突かれた事で情けない声と大袈裟な反応をしてしまい、その恥ずかしさに顔を赤くして「いきなり何するんだ!折角選んでやってるのに!」と怒りを露にするも手に持っていたポテトチップスをスッと抜き取られ籠に入れてレジへと向かう彼を不機嫌な表情はそのままに大人しくついて行く。レジに立つ彼の隣に居ると煙草を買おうとするのを見て「程々にしなよね。」と小声で忠告する。二人してコンビニを出た後は何時もの道を辿って帰るだけ。労う言葉を掛けられ頭を抱き寄せられると、不機嫌で居たのに振り払う事なんて出来ずそのまま寄り添う様に歩く。心配なんてする必要ないのにそんなに今日の事を気にしているのかと思い「別に、あれくらいなんて事ないよ。気にしすぎ。」と安心させるべく考えた言葉も口から出れば少々生意気になってしまう。が、それでもきっと彼はちゃんと言いたい事は分かってくれると信じているけど。)
(脇腹を摘まめば思った通りの反応が返ってきて、してやったりとニヤリと笑う。コンビニを出て帰るまでの道程、彼に今日のことを詫びると、いつものように飄々とした口調で「何でもない」と答えが返ってきた。きっと自分に気を遣わせないように配慮をしてくれているのだろう。プライベートでこれ以上彼に会わせるつもりの友人も居ないし、今日だって成り行きでこうなってしまった訳で。こんなことでも無ければ、彼を自分の知人に会わせることは無かっただろうということを考えれば、良い機会だったかもしれない。少なくとも、これで佐伯は自分に恋人がいることを納得した訳なのだから。何にも言わずに自分に寄りそう彼と言葉少なに歩みを進める。家に帰ったら、彼を抱きしめよう。きっと彼のことだから文句の一つや二つは返って来るかもしれないがそれでも構わない。エントランスを開けて、エレベーターに乗り込む。自宅のあるフロアに辿り着き部屋の鍵を開けると、手に持った荷物をその場に投げ出し彼を抱き寄せた)はぁ…。やっと真尋に触れる…(隙を見ては触れていたくせに、人目を気にせず彼を抱きしめることが出来るということは、どうやら別腹らしい)
(何ともないなんて言ったけど本当は凄く緊張していたし、少し気疲れもした。だけど、自分の知らない彼を知れた事や初めての共通の人脈に嬉しい気持ちの方が大きく、美味しいご飯も食べれたしとても満足している。おじさんの癖に小さい事を気にしすぎ、なんて心の中で悪態つくもそれも自分を思っての事だと分かっているから何だか擽ったい様な嬉しさとなって心の中に留まる。自宅のマンションのエントランスが見えて来ると他の人に見られない様にと用心の為、さり気なく離れ、エレベーターに乗って自分達の部屋へ辿り着けば何だかほっとしてしまう。さて、ゆっくり寛ごう…と靴を脱ごうとすれば背後から突然抱き締められ吃驚して肩を揺らす。自分と同じくほっとしたのか吐息と共に力が抜けた様な言い方で告げられた言葉にまたも照れ淡く色付いた頬で「ちょっと、ここ玄関なんだけど。アイス溶けるしビールも温くなるじゃん。」と照れ隠しに文句言いながらも振り払いはせず。)
(玄関に入った途端、手に持った荷物はその場に投げ出し、壁越しに彼を抱き留めた。アイスが溶けるだとかビールが温くなるだとか小さな文句が聞こえたが、敢えて耳を貸さないことにする。今日は昼からずっとお預けを食らっていたのだからこれくらいは許されても構わないだろう。まだ何か言いたそうな唇を自分のそれで塞ぐことにした。軽く舌を潜り込ませると、普段はしないアルコールの甘い味が舌に触る。微かに分かるメロンの味を堪能した後、今度は首筋に唇を寄せる。夜になったとはいえ蒸し暑い最中歩いてきたのと、締めっぱなしの室内で身体を寄せていたのとで、汗ばんだ素肌に情欲を掻き立てられる。そのまま舌を這わせると汗のせいか少し塩味を感じて、さらに情欲を掻き立てられ、シャツごしに汗ばんだ彼の香りを堪能するかのように自分の方へ抱き寄せて、首筋に顔を埋める)今日はお疲れ様。これから飲み直すから付き合ってよ(そのままの姿勢でこの後の予定を一方的に告げる。時間は21:00を過ぎたばかりで夜はまだ長い)
(自分の文句に耳を貸さず未だに抱きしめてくる彼をとりあえず部屋に入る様に言おうとすれば言葉を遮る様に唇を塞がれる。「ちょっと、聞いてるの?あつ…んっ」突然の事で薄く開いていた唇の隙間から彼の舌が潜り込んでくる。ぬるりとした感触にキツく目を閉じると今度は唾液の絡まる音が耳に響く。羞恥心が掻き立てられ体中が熱くなり始める。上手く息が出来ずに声を洩らしていると漸く解放され少し乱れた息を整えていると、これで終わりではなく首筋に唇を当てられ反射的にピクリと体を揺らす。この先何をされるか予想がつくと引き離そうと彼の背中へ回した手で服を引っ張るも遅く、予想していた通り首筋に舌を這わされる。「…あっ、篤…本当、ダメだって。僕、汗かいてるから…汚いんだって。」と止めるよう懇願しながら押し返す。今日も外は暑くて普通に汗もかいていて、シャワーだって浴びてない、そんな汚い状態の自分を抱き締められる事にも抵抗があるのに舐められるなんて有り得ない。やっとの事止めてくれたと思えばまだ解放する気は無いらしく引き寄せられ、もう抵抗するのを諦め大人しく抱かれたまま彼の声を聞き「分かったから、とりあえず部屋に入ってくれる?おじさん。」と半ば強引に歩き出しリビングへと向かう。全く、部屋に入るまでどうして待てないのだか…ていうかせめてシャワーを浴びてからにして欲しい。どう考えたって清潔でない他人の肌をどうして舐める事が出来るのかと疑問で仕方が無いが、ふと自分が彼に同じ事をしてと言われたとすると愛しさ故にあまり抵抗がないかもと思い立てば少し彼の気持ちが分かった気がした。だけど!やっぱり汗かいた肌を舐めるなんて有り得ない!と認める事はしなかった。)
(身を捩る彼をそのまま押さえつけてシャツの裾から手を忍ばせると、指先にもしっとりとした感触が伝わった。そのまま背骨のラインに指をすっと這わせて、その指を抜き取ると自らの口に含み、に見せつけるようにニヤリと笑う)汚いってどこが?真尋に汚いところなんて無いんだけど。(汗ばんだ前髪を掻き上げてやり呟くと、やっとのことで彼を解放した。これ以上続けると、流石に彼に嫌われかねない。まぁ、ここまでの長い付き合いだから、自分がいかにしつこいかは分かってくれているだろうと思っているが、本気で嫌われてしまっては元も子もない。手元に落とした荷物を拾い上げ、ダイニングテーブルで中身を確認すると、ビールが保冷材になっていたのか、彼の大切なシューアイスは無傷だった。慌てて冷凍庫に入れて事無きを得る。リビングの窓を開けると、心地良い風が吹き抜け、室内の温度は一気に下がった。気持ちの良い風を浴びながらソファに腰掛け、少しでも彼の機嫌を取ろうと話しかける)今日はシャワーで良いか。どうする?真尋くん、先に入る?
(自分の抵抗も虚しく押さえ込まれてしまい、着ていたシャツの中へ手を入れられ背骨のラインをなぞられるとくすぐったい様な焦れったい様な刺激に思わず体を捩らせる。「…ん、…」上擦った声が出てしまった。やばい、このままじゃ自分もその気になってしまって、彼に流されてしまいそうだと飛びそうな理性を何とか引き止める。引き抜かれほっとすれば、見せ付ける様にその指を口に含むといった衝撃的な行動と台詞に信じられないといった表情で真っ赤に顔を染める。「…馬鹿なんじゃないの!?本気で言ってんの!?き、汚いに決まってんじゃん!」と全力で反論する。時々可笑しな行動をするとは思っていたけどさ、何してんのこの人、絶対可笑しい!頭が混乱してきた所で自分をさておき、彼は何事もなかったように何時も通りに買って来た物を冷蔵庫にしまってリビングの窓を開ける。さっきまでのは何だったんだと突っ立ったままでいると、いつの間にかソファに腰掛けた彼が尋ねてくる。「あ、お風呂?今日は篤先に入って来なよ、譲ってあげる。」と自分もソファへ移動しては彼の隣に腰掛ける。)
(変態で大いに結構。オッサンは変態な生き物なのだと開き直り、隣に腰掛けた彼の髪を指でクルクルと回しながら彼の返答を待っていると、自分に先に入れと促された。彼が先に入ると言うのならば、あとから追いかけるというシチュエーションも考えられたものの、そう言われてしまっては仕方ない。確かに自分は一日中がっちりとスーツを着込んで、汗臭さにはかなりの自信がある。クールビズだなんて言って半袖のワイシャツもあるが、下らない自分の見栄でそれは絶対にしたくない。日本の気候を恨んでしまうが、あくまでもスーツは長袖でないとだめなのだ。ここは彼のありがたい言葉に甘えて、自分が先に入るとする。大人しく寝室に向いクローゼットにスーツを掛けて。ルームウェアを手に取る。本当なら脱ぎっぱなしのままでバスルームへ向かいたいところだが、流石にそこは恋人に気を遣いシャツとスウェットを身に付けて移動する)じゃ、先に入るから。(リビングを抜けて洗面所に入るとすぐに振り返り)一緒に入りたかったらどうぞ。(罵声が返って来ることを予想しながら、悪戯めいた笑みで声を掛けてバスルームに消えて行った)
(ソファに腰掛けると髪を彼に弄られる。髪を触られるのは嫌いではない、彼だからというのもあるのか分からないが気持ち良く感じる。何時も先に入らせてくれるから今日はと彼に譲れば、何か企んでいた様な気がしてじとりと見遣るも先程の事で敏感になり過ぎかと疑うのをやめて「何時も僕が先だから、今日は篤が先ね。」と自分は半袖を着ているが彼は長袖をきっちりと着こなしていて、涼しげな顔をしているが暑いに決まってると早くさっぱりさせてあげたい気持ちから告げる。ソファから彼が立ち上がり着替えの準備をするのを眺めていると去り際に、後から入って来てもいいと勝手に許可され「行く訳ないじゃん!おバカ!」と彼の背中へ向けて叫ぶ。何言ってんだ、もう…とソファにぽすっと横になる。さっき背中を触られた感覚がまだ残ってる、欲求不満なのか?と疑問に思いながらウトウトとしてきては浅く眠りに落ちて。)
(熱めの湯を勢いよく頭からかぶると一瞬で汗も引きとび、心身共に洗われるような気がする。気がするだけで、洗われるのは心だけなのだが。風呂に浸かるのも勿論好きだが、この時期はシャワーだけでも十分心地よい。声を掛けたものの勿論入って来ないことは承知だったので、身体を流したあとはさっぱりと着替え、癖毛の髪をタオルで無造作に拭きながらリビングに戻ると、小さな寝息を立ててソファでうたた寝をする彼の姿が目に入った。そりゃそうだ。忘れ物を取りに来てくれて、その後学校に行って授業を受けて。自分の誘いを快く受けてくれた後、飲み会に付き合ってくれたのだ)真尋くん。お布団行こうか…(遠慮がちに頬を付くが起きる気配は無い。このままベッドに連れて行こうかとも思ったが、あんまりにも気持ち良さそうに寝ているものだから、起こすのも気が引けてしばらくそのままにしておくことにした。時間もあることだし、仕事の続きでもしようと考えたが。さて…どこでしようか。ソファは占領されているし…。書斎は今では彼の私室のようなものだ。考えた結果ダイニングテーブルが一番適しているらしい。タバコもOKだし。家主も随分追いやられたものだ…。彼に気を遣いながら生活をしていることをちっとも不満に思わず、むしろそれが嬉しく思う自分に笑みが込み上げながら、軽快にキーボードを叩いて行く)
(彼が戻って来た事にも頬を突かれた事にも全く気付かず、スヤスヤと寝息を立てていたがカチカチとキーボードを打つ様な音に段々と意識が戻って来て目を覚ます。起き上がりダイニングテーブルの方を向けばいつの間にか彼が戻って来ていて「あれ、戻って来てたの?起こしてくれれば良かったのに。」と。自分に気を遣ってくれたと分かったが、パソコンの開き仕事をしているらしい彼に気付くと「あー!」と急に大きな声を出してドタドタと近寄り「何で仕事してるの!?飲み直すんじゃなかったの!?」と問い詰める様に詰め寄る。この後一緒にまったり過ごすのを楽しみにしていたのにと不貞腐れた顔をするも、自分が寝てしまっていたから彼は仕事を始めてしまったのかと気付き、寝てしまった自分への悔しさから彼に八つ当たりをしてしまった事を反省して「…ごめん。」と謝っては「僕も、シャワー浴びて来る。」と寝室へと向かおうと彼に背を向ける。)
(液晶の画面に目を凝らしていると背後から物音がした。どうやら眠っていた彼が起きて来たらしい。画面から目を逸らさず片手にはマウスを握ったままで、起きたであろう彼に向って振り向かずに話しかける)おー。起きた?(すると覚醒した彼から不満の声があがったため、動かしていた手を休めてメガネを外して彼の方へ振り向く。急にメガネを取ったため視界が明るくなり、条件反射で眉間に皺が寄るが特に他意は無い。目つきが悪いなんて言われてしまう所以だが、彼にも見慣れた光景だろう。視界が慣れてくるといつものように笑いかけ、椅子を跨いで背もたれに正面から寄りかかりながら話し掛ける)悪い悪い。あんまり気持ち良さそうにしてたから起こすのも悪くてさ。(そう声を掛けるも、風呂に入るという力ない返事が返ってきた。2人の時間を楽しみにしてくれてたのなら悪いことをしたか…。素直に謝るのも照れ臭くて、寝室へ消えた彼を追い着替えを用意する彼の肩に腕を回し)早く来ないとアイス食っちゃうよ。待ってるから、風呂入ったらおいで(髪をガシガシと乱暴に撫でながら、またダイニングへと戻って行った)
(今は座っている彼より立っている自分の方が目線が上で不服といった表情で見下ろしていると眉間に皺を寄せた彼が振り向き思わず息が詰まる。今まで自分にこんな表情を向けた事なんてなかったのに。それが眼鏡を取った所為なんて思わなくて僅かに動揺すると、彼は何も無かった様に笑いかけてくる。あれ?見間違い?少し混乱しながら風呂に行く準備をしに寝室へと行くと肩を抱かれ髪を乱す様に撫でられながら「う、うん。」と一言返し着替えを持つとそそくさと風呂場へと向かう。さっさと服を脱ぎシャワーを浴びるとべたついていた汗がサラリと流されていくのが気持ちいい。頭と体を手早く洗い、洗い流しながらさっきの彼の表情を思い出す。ガキみたいにギャーギャー騒いだからか、仕事の邪魔をしたからか…自分に気を遣ってやったのに自分があんな態度をとったからか…いや、全部か…。何時も優しい彼があんな表情をするなんて珍しい、いや、見た事がない。もしかしたら、気付いていないだけで彼は何時もあんな心境だったのかもしれない。流石に大声で問い詰めたのは良くなかった。どうしてこんなガキみたいな行動しちゃうんだろう、彼の事となると何時もこうだ。「はぁぁぁ…」重く長い溜息をシャワーの音で誤魔化して。)
(これで少しでも機嫌が直ってくれれば良いのだが…。時々彼は自分の行動を深く読んで考え過ぎる傾向があるような気がする。繊細な彼の性格とがさつな自分の性格の違いなのだろう。もう少し自分に対して図々しくなってくれても良いのだと思うが、彼からして急にはそうはいかないだろうし、完全に自分に合わせろだなんていうのはエゴでしかない。)幾つになっても恋愛は難しいもんだ…(彼の気持ちをうまく汲んであげることが出来なくて自嘲気味に呟く。気分転換にベランダでタバコでも吸おうと、冷蔵庫から1本缶ビールを取り出しベランダに出る。日中の暑さが嘘のように心地良い風が吹き抜ける。空を見上げれば今にも無くなりそうな三日月が浮かんでいた。100円ライターで消え入りそうな炎を両手で囲いタバコに火を点けると、最初は小さな煙を立てるだけだったそれが、強く吸い込むことによって先端を赤く灯しだした。漸く火が着いたことを確認して軽く煙を肺に入れると、手に持った350mm缶を勢い良く煽る。振り向いた瞬間にこちらへ向けられた視線…。彼に怪訝な表情が浮かんでいた。ベランダの手摺に凭れながら考える。今日のことがやっぱり嫌だったか、それとも家で仕事をされるのが嫌なのか…。小さな不満が後々大問題になることはよくある話だ。自分勝手に悩むのは辞めて、彼に直接聞いてみることに決めた)
ふぁ…さっぱりした…。
(髪と体を拭くのもそこそこに何時ものダボダボの服を身に着けてリビングへ戻る。部屋着に着替えると気が抜けるというか、落ち着くというか…一気にグダグダしたい気分になるなぁ…。汗を流してさっぱりしたからか、さっきまで考えていた事はあまり気にならなくなっていた。リビングへ戻って来たものの彼の姿が無いと室内を見渡せばベランダで煙草を吸う姿を発見し、自分の所為で仕事を中断させたかと思うと少しだけ罪悪感が湧く。「そうだ、」ふと何かを思い立てば冷凍庫からシューアイスを一つ取り出してから彼の戻るへ向かう。そっと彼の背後へと近寄れば、手に持つアイスを彼の首筋にピトッとくっつける。「へへ、吃驚した?」と悪戯を仕掛けた子供の様ににっと歯を見せて笑い。)
(ぼんやりと外を眺めていると、不意に首筋に冷たい感触が走った。ふと横を見ると、彼が子供のような顔をして先程買ったシューアイスを当てて来たらしい。条件反射でビクっと身体を震わせるも、振り向く際にはわざと落ち着いた風を装って冷静に返す)びっくりするでしょ。全く。(片手に持った缶はベランダに置いた小さなガーデンテーブルに置いて、差し出されたアイスを受け取ると、徐に包装を破いて一口齧る)うん。美味い。たまに食べると美味いよな。こういうのって。(アイスを片手に齧りながら、さっきまで考えていたことを反芻する。問うなら今だ。側に居る彼の腰に手を回して力強く引き寄せた。まどろっこしいことは好きでは無い。ここは単純明快に彼の本音を尋ねることにした。2人してベランダに凭れるような姿勢で、自分が出来る精いっぱいの優しさを込めて問いかける)さっき…。風呂に入る前さ。なんかあった?俺さ、真尋のこと全部分かってあげたいと思ってるんだけど、なかなかそうも行かなくて…。ごめんな。俺に思ってることあるんだったら何でも言って。今日のこと嫌だった?それとも…家で仕事されるの…嫌かな?落ち着かない?他にも何かあるんだったら言って欲しいな…、なんて。(ここまで言ってしまうといつもみたいに上手く笑えている自信は無いが、あえて彼に向き直った)
(ビクリと肩を揺らした彼に悪戯成功とばかりに笑い、構ってくれといった意思表示だったのだが思ったよりも冷静に返されて不貞腐れた様な顔をする。自分用にと持ってきたアイスを取られ食べられてしまえば「あー、それ僕のだったのに。」と唇を尖らせるも、そのままあげる事にし機嫌を直し「珍しい奴だしね、もう一つ取って来よ。」と部屋へ戻ろうとすれば腰を引き寄せられた。「わっ!」と思わず彼にしがみつき、何なんだと尋ねようとすれば彼が先に口を開いた。大人しく聞いているとまさかの言葉に目を見開き、彼がそんな風に思っていた事を知って驚く。彼の何気ない言動に一々反応してそれが彼にも伝わってしまっていて、不安な思いをさせていた事に気付くと腕を背中へ回してキツく抱きしめる。此処はちゃんと言葉にして伝えなくてはと決意しては彼の胸元へ顔を埋める。「…違う。嫌とかそんなんじゃない。…ただ、お風呂上がり一緒にゆっくりするの楽しみにしてたのに、僕、寝落ちちゃって…起きたら篤、仕事してて…僕と違って別にどっちでも良かったのかと思って…僕が寝てても、じゃあ仕事してよって切り替えられるくらいなのかなってなって…八つ当たり、した。でも、分かってるんだ。篤が僕に気を遣ってくれたって事は。分かってるんだけど、篤相手じゃ何か上手くいかなくて、どうしていいか分からなくて…。ごめん、こんなガキで。篤は何にも悪くないんだ、僕が勝手なだけ。何にも気に入らなくなんてないのに…。」話していると段々と涙が溢れて来て彼の服を濡らしてはいけないと少し離れ、話し終えると涙を拭う子供もなく子供の様にわんわん泣いて。)
(今まで一緒に居る間に何度も思ってきたことだった。もっと言うなら、自分と一緒に居たいと言ってくれた日からずっとそうだった。年の差や立場の差から、彼はどうにも自分に必要以上に気を遣おうとするが、それは自分が望む2人の関係では無く、あくまで対等な立場で笑ったり怒ったりすることが「恋人」という関係だと思っている。今日のことを良い切っ掛けだと思って、それこそ捨て身でこの話を切り出すと、やはり予想通り、いやそれ以上の返答が返ってきた。まずは1つ。今日の飲み会はスルーだったと言うことは、これは大丈夫らしい。良かったな佐伯。これで彼の機嫌を損ねることがあれば、明日は無事で無いと思って欲しいところだ。2つ目。自宅での仕事も辛うじてスルー。今日はたまたま日が悪かっただけの話のようだ。仕事の遅い自分としては、持ち帰らないことには益々仕事が終わらない。そして3つ目。自分とどうやって接して良いか分からない。だなんて。自分と同じように考えているなんて思いもしなくて、つい吹き出した)ぷっ!それ、俺も同じ。あーあー。折角の男前が台無しなんですけどー(わざとぶっきら棒に言いながら顔を覗き込むと、案の定きれいな顔がグチャグチャデ。本当は袖で拭ってあげたかったのだけど今は半袖だと言うことを思い出して、取りあえず抱きしめてTシャツの裾で涙を拭う。顎に手を掛けて顔を上げさせると、長い睫に光る涙が目に映る)なんで今まで言わなかったの。そんなこと。……。言わせてあげられなくてゴメンね。俺も一緒。真尋と一緒に居ると好きすぎてどうしたら良いか分かんなくなる。(夜風に揺れる前髪を掻き分けて、自分の額を合わせた)
(情けないけど流れる涙は止められない。次々と溢れ出て顔中がべちょべちょでおまけに鼻水まで出てくる。ズッと音を立てて鼻を啜り嗚咽混じりに泣きじゃくっていると、彼が突然吹き出し"同じ"と聞こえたが自分の声が煩くてしっかりとは聞き取れなかった。「男前、なんかじゃないっ!」何とか落ち着こうと息を整えていると抱きしめられしがみつけば、何かの布で涙を拭われちゃんと見ると彼のTシャツの裾で慌てて少し距離をおき「わぁ!折角濡らさない様に離れたのに意味ないじゃん!」と涙腺が緩んでしまったのかまたじわりと涙が滲む。顔を上げられ彼を見ると怒るでも呆れるでもなく優しげな表情で、それを見て安心したのか涙はぴたりと止まった。なんで言わなかったかなんて決まってる、嫌われたり呆れられたりしたくないから。少しでも余裕がある様に見せたくて意地を張っていたけれど、やっぱり何処かで素は出てしまうもので混乱していたのかもしれない。これからは、恐れず本当の自分を出していけるようにしたい。額が合わさり彼を見つめると、自分と同じなのだと告げられた。そうだったのか、そんなことならもっと早くに打ち明けていればよかったと今更後悔する。が、別に自分からでなくても彼から打ち明けてくれても良かったのになんて風にも思ってしまう。「篤こそ、なんで言わなかったのさ。…泣きそう?泣いてもいいよ?」自分が泣いてしまった様に彼も泣くのを我慢しているのだしたらと的外れな事を思っては、気を利かせたつもりで優しく問い掛けて。)
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