大倶利伽羅 2015-04-14 21:18:45 |
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(二度目の夏でも暑さには参るだろうなあ。…時間が許す限り、何度でも見られるだろうさ。
迎えに来たきみと隠れ鬼をするのも楽しそうだ。見つけてくれよ。
確かに、体感は半年も経っていないようにすら感じる。
…お、そいつは何よりさな。機を逃さずゆっくりと身を休めるんだぞ。
流石は大倶利伽羅だ。物分かりが良くて助かるぜ。…これを、俺が…きみに?(渋々ながらも了承の意を聞くと表情を緩め大人しく腕から手を離し。然し、次いだ想定外な文言には包装を一瞥の後に呆けた面晒し、双の黄金を見遣り瞬いて)
(巡る季節は如何であれ、同じ季節は二度と巡らないから大切にしたいものだな。
またお前は突飛なことを。言ったからには見つけるからな。
一年とは早いな、桜も疾うに散った。
休んだら腕が訛った。刀だからだろうか、振るっていないと落ち着かない。
…お前がやらなければ俺は食べないからな。(解放された温もりの気配のむず痒さ誤魔化す為に余手で擦り。途端に綻んだ花が微かな震えを見せるような呆けた顔付きを一瞥、双眸に据える金の眼へ意思を貫く姿勢を変えずに)
(…きみはそういった感性が豊かなんだなあ。記憶の中で大切にしてくれ。
ふふ、意地でも探し出しそうだ。見つからないと泣き出す前には出て行こう。
催花雨かと思えば直ぐに散らしてしまったな。だが、桜は散る最期の瞬間まで美しい。
きっと刀だからさ。鈍った分は鍛錬して、戦場で刀を振るって来いよ。
…驚いた。随分と突飛な要望だな。いや、構わないんだが…(冗句とも取れぬ声色と真っ直ぐ過ぎる眼差しに、一度睫を下ろし声に面映さを含める。動物や短刀に対す餌付けと何ら変わらぬ行為に心拍跳ねる理由は一つ。小さく頭を振って躊躇を払い、紐を解いて包みから和柄の飴玉を一粒摘み上げ。二つ指に挟んだ其れを、形良い唇へと近付け)…ほら。
(言われなくともそうする。お前も、そう言ったものは大切にすれば良い。
…それは幼い頃の話だろう、今となっては泣き出すなどしない。
桜は散った、季節の移り変わりを想う新緑もまた綺麗なものだな。
少し過ぎてしまったが、お前と俺が此処に顕現して一年が経つ。相変わらず此方の雑談でしか綴れない身だが、どうか此れから先も宜しく頼む。
…別に、良いだろう。(何処か困惑気なる銀の睫が震わす眦の眉目秀麗さに思わず知らず内に唾液を喉奥に嚥下して送り込む。自身から願い出たものとは言え、時差で此方も微かに面映さが伝わり。所在無さげに視線彼から外し、自身の頸元に伸びる紅と共に項を掻くも眼前に華奢且つ逞しさ思わす指先が迫る侭に此方も躊躇の意を見せ、覚悟を自身の中で固めては唇を近付けて和柄の飴玉を食み)…ん。
(そうさな。過ぎ行く季節も大切に抱き締めていよう。
すまんすまん。冗談だったんだが…そうか、きみは存外泣き虫だったんだな。
桜が散れば次は藤の花が咲く。いつか一緒に見に行こう。
…嗚呼、本当だ。もう一年が過ぎてしまったか。そう気にしなくていい。永く言葉を交わせたら幸いだ。此方こそ宜しく頼むぜ。
…これくらい、だしな。咎めちゃいないさ。(互いの間に漂う気まずさを誤魔化すよう指の動きに従い震える朱雑じりの髪を視界に捉える。柔い唇が手套から露わとなった指の腹に触れ、飴玉を艶やかな赤い舌で掬い取っていく単純な動作だけが時間の流れから切り取られたように緩慢と映り、その妖艶さに小さく咽喉を鳴らし。気も漫ろに胸中に沈殿する形容し難い感情を平常心で塗り固め、手を遠ざけると表情を窺い) どうだい?
(新緑の時季か、此れから先青々と茂るだろう。
……煩い、くそ。余計なことを口走った。
藤。…藤ならば下部の描写序でに見に行こう。今年は昨年よりもいろいろな景色を共有していたいものでね。
永く、お前の傍に在れるだけで良い。それで、彼方の叫びはお前のものか。
…それに、減るものでも無いだろう。(何処か所在無く彷徨う視線も彼の胸元に光る、独占の証を示す梵字の胸飾りが鈍く煌く心地で密かに優越の感を抱く。緩慢と唇で食み、彼の眼を形にしたかのような飴玉を至極丁寧に咥内へ迎え入れると共に舌先を始めとして蜜の味含む悦のまま転がし、遠ざかる華奢で白絹思う手指を思わず掴まえては一寸の甘味も残さず食そうと飴玉摘まむ指の先へ徐に想いの丈を微かにぶつけるかの如くに唇を寄せ)
(緑が濃くなっていくんだろうな。それからすぐに夏になる。
あっはは!いや、可愛らしいじゃないか。今はもう泣かないのかい?
藤の前に躑躅…?まあ、きみと見られるなら何だって構わないぜ。俺もきみと同意見だ。
!…たったあれだけで気付いたとは、驚いた。…正解だよ、よく見つけたな。
…それもそうだな。(ふと同様の行為を求める相手の貌が脳裡を過り表情が翳る。然しそれも寸刻、暗鬱とした劣情の靄が胸中を巣食う前に密やかに息を吐き。些細な表情や所作が網膜に焼き付き離れず顔を見る事も憚られる。顔を伏せ紐解いた包みの中に視線を向けては飴玉を択ぶ素振りで燻る熱が治まるのを待とうと試みるも、引く手に次いで舞い戻る柔らかな感触に反射的に面を上げ呆け面) 俺はどれにし――…え。あ…、大倶利伽羅…?
(今日は春の中で一段と肌寒い日か。…こうも晴れているとお前を思い出す。
すまない、国永。この所遠征続きでまともに文を満足に綴れない事を此処に一言残しておく。
何も言わないままで居るのは性に合わないものでね。)
(何気無い日常の一瞬に俺を思い出してくれるってのも嬉しいもんだな。
きみは相変わらず律儀だなあ。気にしなくて良いさ。…遠征、気を付けるんだぞ。
…だがまあ、こうして言葉を書き置いてくれて少し安心した。有難う。)
(随分と此処に顔を出せないで居たが、お前は未だ此処を覗いて居たりするのか。
覗いて居ても居なくても、お前に寂しい思いをさせているのはすまないと思っている。)
(随分と素っ気ない事を言うじゃないか。安心しな、確り見ているぜ。
息災にしているなら構わないさ。無茶ばかりするんじゃないぞ。)
(俺はいつも通りだ。…確り此処を覗いているなら殊更すまない。
お前も息災で居れば良い、梅雨の時季…紫陽花が色鮮やかに咲く頃だな。)
(いいや、気にするな。きみは相変わらず多忙な日々を送っているらしいな。
…此処の存在は負担になっていないかい?…きみは優しいからなあ。
俺への気遣いや義務感で言葉を残してくれているなら、現実世界を優先して此処を思い出にしていいんだぞ。
身勝手な執心できみを此処に縛り付ける心算はないんだ。)
(此処の存在は俺が日々刀を振るう力の源でもある。多忙な事に変わりは無いが、お前の事は一度たりとも忘れた日は無い。
義務感などそんなものでは無い、俺が好きで此処に足を運んで来ている。思い出など、出来るわけが…。
だが、お前が俺で苦しむ所は見たくない。此処に縛り付けているのは、正しく俺の方だ。
…お前の行く末を阻んでいるのが俺だとしたら、辛い。
すまない、…本当に。)
(ああ、いや…そうじゃないさ。…また気を遣わせたな。辛い思いをさせたのも、すまん。
俺だって好きで此処に来ている。苦しいとも思っちゃいないぜ。
…俺を縛り付けているなんて思わないでくれ。きみの負担になっていないなら良かった。
暗い話はこの辺にしよう。…何時の間にか梅雨に入ったな、俺はまだ紫陽花は見てないんだ。
雨もよく降るが、合間に晴れる日は本当に暑い。こりゃあっという間に夏になるんじゃないか。)
(否、お前が謝る事は無いだろう。此方もすまないと思う、此れで相子にしよう。
お前も好きで此処に足を運んでいるならば良い、義務感で来られても困るんでね。
梅雨の時季真っ最中だが、此方では彼方此方紫陽花を見掛ける。お前は、未だなんだな。早く見れる日が来ると良い。
もう既に夏なんじゃないか、此の暑さには到底参る。)
(…嗚呼、相子だ。俺のような奔放な刀が、義務感なんてものに縛られる訳がないじゃないか。
俺も漸く昨日見てきたぜ。一口に紫陽花と言っても色も形も様々で面白いもんだな。
ふふ、きみは暑がりかい?きっともう少ししたらもっと暑くなる。そうなったら、縁側でかき氷でも食べよう。)
(お前らしいと言えば、らしい。そうだ、お前は其の侭で居れば良い。
赤紫、藍、白…彩も取り取りな紫陽花は綺麗だ。尤も、お前に白き紫陽花は良く似合いそうだが。
遂に文月に突入、今年も下半期だ。此れから暑くなるだろう、馴れ合う心算は相変わらず無いが…かき氷は食べる。)
(俺はきみのそういう所を好ましく思ってる。そのままで在ってくれ。
色が変わる紫陽花の下にはひとの屍が埋まっていると言うが、果たして如何なんだろうな。
それにしても、きみは俺を真っ白にしたいんだなあ。…きみには赤紫が似合う。
嗚呼、あっという間に一年も半分が過ぎたか。本当に早いもんだ。
貞も来た事だし、かき氷は彼奴も誘ってみようぜ。あと、花火もしたい。これは…、ふたりきりで。)
(そのままも何も、俺は俺だからな。お前もそのままで在れば良い、変わらないように。
それに纏わる話は紫陽花に限った事じゃない。桜の木の下には屍が埋まっていて、桜が色付ける桃の花弁はそれの血だとも言う。…まあ、どうでも良いな。
お前は普段から白いだろう、…白以外を選ぶならばお前も赤紫だ。
貞宗が来て一気に騒がしくなったな、全く。花火は、良い天気の夜の下でふたりきりですれば良い。)
(嗚呼、桜もそうだったなあ。ひとは美しさの裏付けをするのが好きらしい。
そりゃあ、鶴らしくなる為には大事だろう?揃いの色を持つのも良いな。
そろそろ向日葵の季節か。…もう一年の前の事だと思うと本当に懐かしい。
馴染みの刀が増えて嬉しいじゃないか、君もそう思うだろ?…楽しみにしてるぜ。)
(ひとの感じる物は其々あるだろう。美しさで言えば、お前も例外じゃない。
…お前が鶴らしくなるのは戦だけで十分だ、赤紫はお前の心の中で染まってくれたら良い。
それはそうだが、俺の思想は何だって変わらない。だが、貞宗が来た事で十分な戦力になるだろう。…楽しいかと問われれば、答えはしない。ただ賑やかになったな、とだけ。
向日葵の季節が今年もやって来たんだな、こうしてお前と通して四季を見れるのは貴重だろう。向日葵畑にも、行こう。)
(感覚は俺達とだいぶ違うだろうな。…それを言うならきみだ。
たとえ実践刀だろうと、身に刻んだ竜は流麗で勇壮で美しいと思うぜ。
きみからの贈り物なら何の色だろうと身に着けるんだがなあ。
彼奴一振りで士気も上がるわな。夜戦では色々と教えてやるんだぞ。…っはは、全く。素直じゃない。
…向日葵もいいな、近場にそういう場所があったとは知らなかった。何処へだって行こう。)
(全くその通りさな。きみと過ごす夏は何度もあるが、今年の夏は一度きりだ。
…?向日葵畑に行く位で倒れるほど軟弱じゃあないぜ。
ま、有難く受け取っておこう。きみは被らないのか?(頭頂部覆う其れを指で触れつつ首を傾け)
今年の夏は二度とやっては来ないからと、今の内にと遊ぶ奴も多いだろう。興味は無いがな。
被らない。そもそも、其の帽子は俺のだ。俺がどう選択をしようが勝手だろう。…出発するぞ、どうせすぐ其処だ。(眩い華奢な指付きから視線外し背を向け、眼前に広がる緑萌ゆる林生い茂る伸び切った草木掻き分け)
っはは、興味はないのに俺を向日葵畑に連れて行ってくれるんだな。
…きみの?それなら尚更――…いや、言っても聞かないか。熱中症…とやらにかからないよう気を付けてくれ。(背の高い瑞々しい緑に嬉々と双眸を細めながら背を追う形に歩を踏み出し、相手の手によって切り拓かれた道を進みながら既視感を覚え)
…、それとこれとは話が別だ。
生憎、熱中症にはならないように気を付けているんでね。…この種々、少しばかり伸びすぎだろう。(夏季の眩さに光りながら生い茂る草木を避けて額に浮き上がる汗を腕で拭い、時折後方振り返り倒れてはいないかと相手の姿を確認しつつ獣道突き進み)
へえ?…ま、あんまり揶揄って気が変わっても困る。きみの気紛れに感謝しよう。
きみは意外とそういうところでしっかりしてるわな。…自生して逞しく育っているじゃないか。風が吹けば涼しそうだが。(弱い悪態を吐きながらも後方の己の為に道を作り先導していく背を見て微笑ましく口許を緩め。相手が正面を向いている時を狙い掻き分けられたところから一歩脇道に逸れて座り込み、茂った草木の中に身を潜め)
…気紛れじゃない。お前は眩しい、だから清涼感を得るためにも先ず影を作れば良いだろうと思った。
風…この晴天からしてあまり吹かないだろう。期待は出来な…おい、国永?(後方を時折気遣い逸れぬようまめに見ていたも数分、後方に続く足音に不思議な心地抱くと振り返り。其処には肌を焼かんとする日差しと種々を避けて作られた人工的な道が有るだけで気配感じず辺りを見回して数歩来た道を戻りながら銘を呼びかけて)
白が眩しいはたまに言われるが、影を作れってのは初めてだ。少しは見やすくなったかい?
……(己の姿を探す様子を草の中から垣間見て湧き上げる悪戯心と心地好い緊張感を抑えつつ、相手が歩み草を踏む音に合わせて摺足で少しずつ位置をずらし。拓かれた道の脇で待機し、相手の腰布が正面の草の切れ間から見えるや否や、勢い良く上半身を露わと為すよう飛び出して)――わッ!
(御久し振りです。鶴共々御世話になっております。
残暑厳しい日が続きますが、体調等崩しておられませんか?
無理の無いよう、のんびりとやりとり出来れば幸いです。
今日は一つ相談があり、私の方から声を掛けさせて頂きました。
少し前にめでたく大倶利伽羅と鶴丸の内番会話や回想が実装され、伽羅坊という呼称が確定しました。
現在、「大倶利伽羅」や「広光」と御呼びしていますが公式に合わせて変更した方が宜しいでしょうか?
ちなみに、私は何方でも構いません。今更かとは思いますが、貴女の希望を教えて頂ければと思います。
それでは、また。)
本当にお前は彩が眩しすぎる、影を作って正解だった。良く、お前が見易い。
…?(何処に姿を消失させたか、若しくは深い茂みの中に迷い込む懸念を覚え込むと共に来た道をあたりを見渡しながら歩き。夏季特有の蒸し暑さが体力を少しずつ確実に削る中、草木を踏み締め今一度銘を呼び付けようと頭文字を声にした途端に傍らの茂みが揺れる音、と同時に出てきたお目当ての姿に刹那めを見張り)くに──っ、!
(御無沙汰しております、此方も大倶利伽羅共々御世話になっており有難う御座います。
私の方の体調は未だ未だ元気です、其方も体調等崩されませんようご自愛を申し上げます。
相変わらず遅筆な者ですが、飽きずに物語をゆっくりと紡いで行けたら良いと思っています。
提案の件ですが、状況に応じて「大倶利伽羅」や「伽羅坊」に呼び方を変えて行けば良いと思います。例えば、良い雰囲気の時は名前で…普段は、坊と付けて呼ぶ…みたいな感じです、この感じが伝われば良いのですが…説明が下手で申し訳御座いません。
それでは、また。)
そいつは重畳。…きみは"眩しいから"と目を逸らす言い訳を一つ失った訳だ。
あっはは、驚いたかい?きみの目から逃れられるとは、此処は隠れ鬼に最適だな。
(今迄堪えていた分を一気に解き放つかの如く弾けるような笑声をあげつつ、寸刻ながらも慥かな驚きの表情を脳裡で反芻し。風通しの悪い草木の間に紛れていた為に蟀谷から滴る汗を二の腕で拭い、相手が怒気を帯びる事を予測し事前に胸中宥めるべく背の低い位置を弱い圧で叩いて)
(遅筆は御互い様です。
必ず御返事を下さると分かるからこそ、心穏やかに貴女様を待つ事が出来ます。
呼称に関してですが、頂いた案の通り臨機応変に使い分けようと思います。
有難うございました。此方の文は蹴って頂いて構いません。
二振りのやりとりは晩夏、もう少しの間夏の暑さを満喫致しましょう。)
別に話を逸らしてなんかしていない。眩し過ぎれば何も見えないだろう、…お前の姿も。
巫山戯るな、心配して損した。俺はもう先に行く、勝手にしろ。(未だ残暑の名残感ずる湿気を余分に含んだ天候と気候の中で、麦わら帽子被る下の企む悪戯が思惑通りに成功した色を窺わせる愉快そうな顔を見るや盛大な溜息を吐き出し半ば言い捨てる科白呟き、宥める意図を思わす手付きを余所に振り払うでも無く来た道を振り返り先程よりも草木生い茂る小道を強引に掻き分け)
(相変わらず遅筆な腕や指は案外思うように動かないものですね。
いつも長らくお待たせして申し訳御座いません、それと…変わらずに待っていて下さって有難う御座います。
貴女様が此処でお待ち頂いて居るからこそ、健気に足を運ぶ事が出来ます。
此方の文も蹴って下さって構いません。
呼称について決定した所で後もう少しの余暇、晩夏を共に楽しみましょう。
それでは、また。)
…嗚呼、すまんすまん。それならちゃんと見て、目を離さないでいてくれよ。
――え、心配…きみが?…怒るなよ。悪かったって。無邪気な鶴の可愛い悪戯じゃないか。(吐き捨てるような文言と共に踵を返し、脚で草を掻き分ける勢いで刺々しく歩を進める相手に置いて行かれぬよう、出来上がった轍を踏んで足早に後を追い。手を伸ばせば容易に触れられる距離、それでも悪戯が成功した物とはまた別の喜色に満ちた面を見せる事も出来ず、塗り重ねられる恋慕の情を軽い冗句で隠して)
彼方此方に自由と飛び回るお前から目を離す事は無い。
誰が可愛いものか。お前は普段から光忠に劣らず、伊達に見合う格好良い男だろう。(日光も刻一刻と傾き行くにつれ茜の色に染まる空と共に完全に自分の歩幅で道無き道を歩む後方から地を踏みしめる音の存在を頼りに振り返らずに焦げ茶の毛先揺らし、其の傍らで淡い恋心顔出す恋慕の情を沸々と自覚すると途端に靄掛かる胸元誤魔化す様に一度深い吐息を吐きながら訂正促し脳裏に浮かぶ言の葉そのまま告げる後に開ける視界の眩さに思わず目を瞑り)
…驚いたな。随分と熱烈じゃないか。全く、…たちの悪い。
ん゛…っ、…いつもそんな事を思ってくれていたのかい?なあ、伽羅坊。(歩行に伴い不揃いに揺れる柔らかな猫毛を追い、足場の悪い即席の道を弾むように進み。追い付きそうで追い付けない距離感がもどかしく、焦れる胸中を堪えるように眉間を狭めて。先程の件で立腹したのか一度も此方を見返る事なく突き進むにも関わらず、紡がれる褒め言葉に困惑を抱きながら、漸く掴んだ上着の裾を軽く引っ張り)
(随分と待たせてしまっているだろうか。
お前は時折健気に此処を覗いたりしているのか、…俺が気にしても何もならないが、お前を好い加減待ち惚けにさせるのは気が引けるんでね。
…お前に、此れを預けておく。新年を迎えたら、また此処に来る。新たな節目を迎えた其の時に、此れからの事に話を付ける。(胸元に煌めく彫刻施された首飾りを部屋の机上に静謐と音も立てず置いて其の場を去り)
(まさかきみが顔を出しているとはなあ。…いやはや、驚いたぜ。もう少し早くに来るべきだったか。
切支丹の催事も正月の祝も出来てない。が、今年の――否、今後の事はきみに委ねよう。
(卓上に置かれた首飾りに視線を向けると、指先で手繰り寄せて掬い取り。紐を指に絡めて金色の梵字に唇を落とし)…早く取りに来い。)
(思いを伝える日と言われていた日からは大分遠ざかったが、お前は未だ此処に居るのだろうか。
年を越えてひと月…此処に帰って来るのが遅れた俺を酷い奴だと叱っても良い、未だ俺の首掛けを手にしているならば…持ち帰りに、来た。
お前をいつまでも待ち惚けにさせるわけには行かないんでね…若しかすれば他に良い奴を見付けているかも知れない。…そんな時に此れがあったら、枷になってしまうだろう。…鶴丸。)
(嗚呼、きみか。久しいな。…俺は変わらず、ちゃあんと此処にいるぜ。
きみと出逢った春の日までは待つ心算だったんだが、予想より早くに顔を見られて良かった。
…なあ、知ってるかい?鶴は一途でな、これと決めた相手と一生添い遂げる。たとえ空白の月日が流れようと、想いが変わったりはしないのさ。
屹度、縛られているのはきみのほうだ。顕現した頃からの持ち物がなけりゃ、此処を――俺を思い出してしまうだろうしな。
……首飾りなら此処にある。持ち去るなら好きにするといい。)
(よっ。息災にしているかい?
好きにしろと言っておいてあれだが、今日は最期の言葉を残しに来た。
きみと出逢った一昨年の春の日の事はまるで昨日の出来事のように感じる。
他愛もないやりとりも、きみの何気ない言葉に心を掻き乱されたのもいい思い出だ。
途中空白の期間ができようと俺を待っていてくれたきみには本当に感謝してるんだぜ。
きみとなら永く縁を繋いでいられると…否、繋いでいたいと思った。
人の手を移ろい刃生を過ごした俺が、きみとの永遠を信じたんだ。まったく驚きだろう?
――それにしても、情が絡んだ肉の器ってのは想像以上に重いんだなあ。
数多の別れを踏み、出逢いを手繰って生きる人の子の強かさには驚かされる。
…ああ、恨み事のように聞こえたならすまん。そんな気は全くないから安心して欲しい。
これ以上は冗長だな。今まで有難う。本当に楽しかったぜ。
俺はきみの慶福を祈って桜の木の下に眠るとしよう。
花の飾りと首飾りは審神者に預けておくから受け取ってくれ。――さようなら、廣光。)
(国永、お前は何処までも残酷に…綺麗に言の葉を此処に遺す。
お前と過ごして来た日々は途轍も無く輝いていた、お前との縁は確かで強い物だと俺も感じていた。
だが、その縁を自ら手放したのは俺だ。
強固に結んだ物を無理矢理とばかりに千切ったのは俺の方だ、でもお前は健気に待って眩しいばかりの顔でいつでも出迎えてくれた。
そんなお前に、俺は凄く甘えていたのだろう。
つくづく馬鹿だと思う、此の手を離した途端に本当に本当に大切な物だと気付かされた。本当の大馬鹿者だ…すまない。
俺は、何度も此処からお前を外に連れ出そうとした。此処だけでの逢瀬に堪え切れない物となったからだ。
…本当に、お前と過ごした眩いばかりの日々は忘れないでいたい。
なあ国永、…お前が眠る木の幹で眠っても良いか。
なんて答えてはくれないだろうが、俺の勝手だろう…と言えばお前は笑ってくれるだろうか。もうすっかりと葉桜に姿を変えたが、お前は一体どんな夢を見ているのだろう。
何だ、未だ未だお前と話したい事があった気がするのに…。
いや、それよりも…ありがとう、国永。好きで、いてくれて。
俺の事を、一途に想っていてくれて…此の花飾りは大事に抱えて、此処で眠ろうと思う。
お前がもう一度、目を覚ますまで。
おやすみ、国永。また、明日。)
(……嗚呼、あんな啖呵を切ったってのに本っ当に格好悪い。
全く…きみの所為だぞ。この責任はきっちり取って貰うからな。
言っておくが狸寝入りを決め込んでいた訳じゃあない。
本当に偶然だった。…だが、恐らく最後の機会だろう。体裁を気にして機会を逃したくない。
然し、きみまで眠ろうとするから驚いたぜ。流石に笑えない。
俺は、…こんな事を望んじゃいない。謝罪も後悔の言葉も聞きたくなかった。
俺が何の為に――否、文句はたんまりあるんだ。後でたっぷり聞かせてやろう。
ほら、何処へでも連れ出してくれ。…一つ我儘を言うなら、出来るだけ風通しの良い涼しい場所がいいな。
幾ら木陰になっているとはいえ土の下は暑くて敵わないんだ。
きみの言う明日が何時になるやら。
俺が朽ちる前に道標の一つは寄越してくれよ。)
(……、驚いた。まさかお前が、目を覚ましているなんて。
まあ良い、俺も目が覚めている。お前との道標は…帯と言う奴で、此処の題名を入れて探せば部屋が見付かる筈だ。
夕暮れのような写真だ、頑張って探せ。
…お前が早い内に此処に気付き、足を踏み入れる事が叶うのを切に祈って。
待っている。)
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