竜と鶴 →非募

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大倶利伽羅  2015-04-14 21:18:45 
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募集板で声をかけてくださった、>8339様。

おおくりから と つるまる



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  • No.141 by 鶴丸国永  2015-07-25 22:57:07 

(前々からそういう類の話はあったようですが、まさか大倶利伽羅だとは。
本当に最近の事なんですね。 記事を読んだ時は驚きを隠せませんでした。
諸事情でネット環境が不安定な為、実際にプレイ出来ないのが悔しいです。

刀種変更を審神者から告げられて、という場面を何処かで取り入れても良いと思います。
貴女が仰る通り、大倶利伽羅は大倶利伽羅です。
けれど同じ太刀でなくなったというだけでなく、脇差との二刀開眼なるものまで導入されて…。
どんどん遠ざかってしまうようで、何だか少し寂しいです、…何て。)

  • No.142 by 大倶利伽羅  2015-07-26 06:37:17 

別に、俺はお前を翻弄したくてしている訳じゃない。むしろ――、
(夜の静寂、梅雨はとうに明けたものの熱気を含む生温くも暑苦しい夜風はただ肌を突くように撫で、通り過ぎて再び訪れる賑やかな喧騒をも秘めた庭先は月明かりに照らされ、生い茂る草木は恩恵を受けるようにまた一つ風が吹けば彼の後方からさざめく自然の香りと共に音が流れて聞こえ。下ろされた行き場の無い手元を握り締め、僅かに触れただけだと言うのに欲張りな気持ちは鳴りやまず、むしろより一層触れたいと言った欲求が喉の奥から閊えつつも想いが通じ合っているとは限らない現状にただ堪えるよう拳を作り上げ、その中にまたしても想いを留め。途端に吐かれる盛大で大きな溜息、次いで軽快な何時もの彼の調子に安堵をするものの言葉に引っ掛かるものがあり、すぐさまそれを言葉に表すもその次の言葉が何故か同じように喉に閊えてしまって歯切れが悪げに途切らせ。頬に触れたままの手を優しく退けるよう、彼の手を握り直したかと思えば段々とそれは離れて行き、緩やかに下方へとまるで一秒でも長くこうして触れていたいと言った無意識な想いとともにゆっくりと下ろし。先程相手と触れ合った距離と思わせ振りな言葉は情けなくも期待に心臓を高鳴らせたのも束の間、態と突き放すような言葉を相手に投げた事を今更悔いても遅く。炊事場の扉前にて待機していた時に聞こえた陶器の擦れ合う音、相手の事ばかりで忘れ去られていたその存在を思い出すと何処か弾んだ声音と共に隣り合った彼に疑問を持つものの長く気に留める事は無く、「そうだろうな…全く、誰の所為だと思ってる。…俺のはこれか。」均衡を保っている食器を少しでも負担を減らそうと許可を得ずに歩を合わせつつ隻手に持っている重なった皿と椀を自分が持ち上げるように取ると確認をしながら炊事場の敷居を跨っていき。)

  • No.143 by 大倶利伽羅  2015-07-26 06:52:55 

(太刀から打刀への刀種変更が余りにも急でしたので、
太刀での最後の活躍を大倶利伽羅にさせる事が出来なかったのが心残りです。
打刀になっても彼は彼で、別段と変わったところは見られません。

審神者に呼び出されて、刀種変更ですね。
脇差との二刀開眼は未だ未体験ですが、おそらく打刀と脇差の最大の見せ場と言ってもいいでしょう。
打刀になった大倶利伽羅もまた、頼もしいくらいに力を発揮してくれています。
太刀から打刀に移り変わっても、二振りの間に残る焦れる恋心は移り変わる事は無い、と信じたいです。
刀種は遠ざかって違ってしまっても、気持ちは少しずつ確実に、核心に近づけるように今後の展開を開けて行きたい、と思っております…!)

  • No.144 by 鶴丸国永  2015-07-26 09:17:32 

寧ろ、…何だ?
(長期に亘った五月雨を未だに引き摺っているかのように多湿な初夏の宵、水分を含んだ空気中を透る陽光が照る真昼と比較すると幾分か気温は下がり、屋根に遮られた濃紺の空には星屑が煌めいている事だろう。微温くも不快感の無い夜風に混じる仄かな瑞々しい香りは、中庭に植えられた植物や自分を含めた刀剣達が管理している畑の作物の其れだろう。薄硝子を撫ぜるかのような優しい指の背の感触は頬に残り、僅かな間を置いて消えてゆく。彼の手が己の其れを遠ざける前に、倣うよう親指の腹で彼の頬を一撫でした後に後ろ髪を引かれるような思いを胸中に抱きながら、促されるが侭に出来うる限り緩慢な動作で頬から手を離し腕をあるべき位置へと戻して。躊躇い故か言葉尻を不自然に途切れさせる彼の煮え切らない様子は相も変らず、両の腕を胸の位置で組み今度ばかりは躱されてはなるまいと隻眸を僅かに細め怪訝そうな面持ちにて、閊えた言葉の先を誘発させるよう語尾を上げ。漸く食事室を後にする事となり、胸中を占める甘苦い痛みや邪な思考は否応にも振り切らねばならず、意識的に明日の内番の事等の瑣末な事へと考えを巡らせ。律儀な彼が器を放置する事は考えられず、少々抜けた部分を持ち合わせている事を改めて看取しながら、彼の手に移る皿を目線にて見送った後に、「ん。…御互い様だろう?遅れた事に変わりないしな。一緒に怒られようぜ。」先に仕掛けたのは彼の方、気を好くし戯れた此方にも勿論の如く非はあるものの、同罪と見做しているのか悪戯を為す幼子のような笑みを浮かべながら相手に続いて炊事場へと足を踏み入れ、「遅くなってすまないが、こっちも頼む。」片付けの終盤に差し掛かっている刀剣達へと声を掛けつつ歩み寄り。)

  • No.145 by 鶴丸国永  2015-07-26 10:29:01 

(太刀としてもっと活躍させてあげれば良かったと、私もそう思います。
メンテナンスが終わってしまった以上、後の祭りなのですが…。

二刀開眼、発動したなら本当に戦力になってくれる事でしょう。
夜戦に連れて行く事も出来ますし、戦闘の幅も広がる事と思います。
刀種変更によって変わってしまう事はあれど、鶴丸の気持ちが移ろう事はありません。
私も貴女と同様の意見です。 少しずつ少しずつ、歩み寄っていけたらな、と思っております!)

  • No.146 by 大倶利伽羅  2015-07-26 16:27:57 

…俺がお前に、翻弄されている。いい迷惑だ。
(憂鬱で気が滅入る程に毎日のように大地に水を恵んでいた長雨の時期も明けたと聞くこの頃、初夏の暑さに唸る刀剣らも多い事。今日の昼間の天候は心が澄み渡る程に雲一つも無い晴天な故に太陽が低い位置に感じる蒸し暑さだった為、宵闇に浮かぶ月を装飾して引き立てるように幾千もの星屑が辺りに散り散りなり、綺麗に美しさを絶える事無く、朧月を傍らに引き連れているだろう。刻一刻と夜が深まる空間、頬から離れ難い温もりを引き剥がすよう動いた際、此方の頬を一撫でする布の覆われていない指の腹へ思わず、と言った形で一瞬其方の方角へ縋るよう頭を傾けるものの、目的は離れさせる事。ゆったりとした動作で下に持って行くと解放をし、手元は有るべき箇所へと戻り。閊えた言葉の先を紡ぐべく、唇を数回か薄く開くものの彼の答えを聞く万全な体勢に一度瞼で瞳を伏せ、一息短く外へ溜息を零すと再び開かれた視界の中に相手の姿はこの目に映せず。先程の彼よりも情けない表情を浮かべているであろう、やり場のない気持ちに居た堪れなくなり、遂に彼に背中を向けて。薄暗く消灯をした塩梅色の食事室、其処で先程ほのかに甘いやり取りを鮮明に思い起こさせ、彼が戯れで口にしただろう言葉の意味を何度か脳裏で繰り返される。それを振り払うように他の記憶を手繰り寄せるが、合わさった唇の感触と唇に這った舌でしか思い出す事が出来ない。もう一度柔らかな唇に触れたいと言った煩悩とも言える欲求を喉奥に追い遣り、明日の出陣の際の編成はどんなだったかと今確認する程でも無いそれを思い浮かべながら皿を落とさないように確りと持って。「ちっ、…分かった。」中々気に食わないが己が先に仕掛けたのも事実、強く言い返せず両省の言葉だけを送り、悪戯を目論んだいつもの彼の笑いに目を奪われそうになるも平静を保ち。彼が炊事場に立っている刀剣達に声を掛けると、担当で該当の刀剣は表情を暗くし、“遅い!”と言われてしまえばそれまで。「…悪かった、責任取って俺が洗う。」終盤に差し掛かった炊事場はいつになく綺麗に片付いており、日々の調理で苦労をかけているであろう彼らに代わって告げればシンクに皿や椀を置いて、水でその中を満たして。)

  • No.147 by 大倶利伽羅  2015-07-26 16:56:27 

(此れからは打刀として活躍させる事で更なる力を発揮させてあげましょう。
聞いたところ、打刀の大倶利伽羅は大活躍だとの事です。

今は拗れる事も焦れる事も沢山あると思いますが、
潔く想いが通じ合った時も、その先も鶴丸と大倶利伽羅の行き先を見守りながら幸せを願って。
ゆっくりとした展開に長く御付き合い頂けますよう、宜しく御願い致します。
上の「両省」は「了承」です。誤字お恥ずかしい限りです。
他に何かやりたいものが御座いましたら遠慮なくお申し付けくださいませ。
それでは背後はどろん、とさせて頂きますか!
末永く御付き合いできる事を願って、どろん。)

  • No.148 by 鶴丸国永  2015-07-27 20:43:05 

そう言うな。…君も、退屈せずに済むだろう?
(西の空からの日差しは真昼の其れと異なり突き刺すような猛烈さは無いものの、だらしなく蕩けたような熱を長々と送り続ける。深い藍色の絵具を含んだ刷毛が広い空一面を徐々に塗り替えてゆき、漸く夜を迎えても猶抜け切らぬ茹だるような暑さに滅入るは自分だけでは無いだろう。然れども目の前の彼に一時でも長く触れていたいという欲求は冷める事を知らず、離れ際に掌の方に僅かに傾いた相手の所作を目敏く察知してしまうと、自意識過剰と理解していながらも淡い期待を抱いてしまう。逡巡するが如く幾度か開閉される薄い唇を自分の其れで塞いでしまいたい、何て思春期の青年のような衝動を理性で抑え込みながら待つ事少々、普段のとかけ離れた困惑を滲ませた面持ちに少しばかり瞠目して。まさに互いの首を絞め合うような状態、彼が此方へ向ける感情が如何なるものだろうと、己の存在が彼の思考の何割かを占める事が出来るならば、此れ程の愉悦は無く直ぐに眦を緩めて。不服を示すような舌打ちとは裏腹に反論する意の見えぬ素直な返答は相手らしいもの、当番の刀剣達には迷惑を掛けたにも拘らず、又一つ増えた秘め事に内心は御機嫌であり。炊事場に入るや否や吐き出される短い悪態は尤もで、空いた隻手にて困ったように後ろ髪を掻きながら申し訳無さげに笑んでいると、謝罪の意思を行動で示すように流し台に立つ彼を視界に捉えると、「おお、そうだな。残りは―…っつっても俺らの分くらいか。ま、後は任せておけ。」洗い終えて種類ごとに重なった食器を一瞥しては、当番の刀剣へ手渡そうとした皿を引っ込め、上記を伝えると多少は怫然さも和らいだようで、"もー…、分かりましたよ。ちゃんとやっておいてくださいね?"確認するように其々に視線を配ると立ち去ってゆく一振りの背後を見送ると、相手の隣に立ち同様に皿を置いては黒の手袋を片方ずつ取り外して。)

  • No.149 by 鶴丸国永  2015-07-27 20:52:25 

(確かに、それもそうですね。
打刀の大倶利伽羅、…戦場に連れて行くのが楽しみです。

擦れ違いや嫉妬、時には喧嘩もあるかもしれません。
ですが今のような名もない間柄を、鶴丸も私も楽しんでおります。
不器用な二人のもどかしいやりとりも、
通じ合った時には笑って話せる良い思い出となるでしょうから。
此方こそ、其の時まで――いえ、そうなった後も、宜しく御願いしますね。
その位の誤字なんて可愛らしいものです。
私も沢山あると思いますから、御互い様という事に致しましょう。
また何かありましたら何なりと仰ってくださいね。 それでは私も、どろん!)

  • No.150 by 大倶利伽羅  2015-07-28 09:27:10 

俺は一人でいい。
(庭先。其処は普段短刀達や別の刀剣達の手合せや、遊び、畑当番等で賑わう場所。昼間の喧噪は嘘のように其処は静まり返り、何処か別の世界にでも道を踏み外してしまったかのように閑散としている。浮かんだ濃い藍色はこの屋敷に住まう月を名前に飾る最も美しいと呼ばれる呑気な刀剣が何気無く思い浮かぶ。恐らく己よりも付の刀剣の彼のが近い存在と言う事実に200年余り共に過ごした其れとは比べものにならなく。憂鬱しい程に熱気を含む生温い風、夏の時期の今はどうにも暑苦しさが拭えず、ゆっくり温い汗が肌の表面に微かな滴を作り上げて。微かに抱き始め、それが日や時間を追うごとに、彼と同じ場所で言葉を交わす度に膨れ上がる小さな芽は最早大きく育ち、其れは萎れる事は無く、寧ろ大きくなって行く日々に僅かな戸惑いを隠せない。相手の言葉に反し、己の素直な気持ちよりも裏側、敢えて突き放して一人になり得ようと、そう考え始め。もう一度唇に触れ合えたらどんなに良い事か、と求めて止まない欲は甘く飴のような蕩ける感情を連れて頻りに芽生える。ふと、視線の先に賑やかな幼い刀剣を連れた青空の髪色の柔らかい物腰の彼が目に付き、玄関口で彼と己の目では愉快そうに話していたように見えた場面が頭にこびりついている事を知り、途端に甘い気持ちは隠されるように此処に来る前と同じ黒い靄を引き連れ始め。無人となった食事室を後目に目の前の刀剣はお小言宜しく此方二振りにお説教、隣の彼が言い包めるような言葉と共に少し納得が行ってない様子の目の前の刀剣が去ると水を打ったように静まり返る空間。相手と同じくして己の手を纏う黒く艶やかな手袋を片側から取り外し、何処か濡れずに済む場所の傍らに置いておくと隣に立つ相手の香りが鼻を掠め、釣られるように彼の元を見ると気になるのは桜の美しい飾りによる羽織り。「脱いだ方がいいんじゃないか。」軽装である己より幾らか厚手な其れ、下手をすると羽織の裾が濡れてしまう事も考えて出た言葉。流し台に男二振りが隣り合うと必然と近くなる距離、不気味なほどに静かな室内は互いの声しか響き渡らないだろう、其れは先程の薄暗い空間で密かな逢瀬や仄かな甘美を思わせるやり取りを思い起こさせるのには十分な動機。陶器の甲高い音と満たされて溢れかえる水音を響かせ、流し台に設置されている泡立ち用具のスポンジと呼ばれる柔らかい物を手に取り。)

  • No.151 by 鶴丸国永  2015-07-29 20:25:15 

全く、君は相変わらずだな。
(中庭に紫陽花の花が咲き誇り、様々な彩に染められた小さな花弁の束があちらこちらで見受けられたのは、数日前の事。然し今や大地に潤いを齎した慈雨の名残すらも無く、中庭には移り気の花言葉を持つ其れの代わりに、大きな向日葵の花が太陽へと茎を伸ばしている。季節の移ろいに即座な対応の出来ぬ人間の身体は不慣れである事を除いても不便であり、体温を調節する為に項に薄らと浮かぶ霧状の水滴を指の腹で拭い取り。周囲を跳ね退け彼を孤独にする言葉は数百年前、以前の所有者の元で共に過ごし互いの思惟の及ばぬ所で引き裂かれる事と為った彼の頃から何ら変わらぬもので、追懐の念を抱くと同時に其の一本気な質に思わず嘆息混じりの笑みを零し。楽しげな談笑に意識は取られ其方へ視線を向けると、廊下の少々離れた所を通り過ぎて行く仲睦まじい兄弟の姿があり、慈愛に満ちた面持ちと其れに甘えるような眼差しを送る彼らは微笑ましいもので、隣の竜の男の仄暗い胸中など露知らず穏やかに双眸を緩めて。詳細を語る事も無く謝罪し説得とは言い難い強引過ぎる詫び方は、無理矢理追い出すかのようにも解釈出来る。其れを自覚したのは当番の刀が炊事場から退室した後、相手と二人きりになるには好都合であったものの不自然な印象を与えていないだろうかとの一抹の不安が過り、手袋を取り外し彼の物の傍らへと纏めて置きながら表情を盗み見て。水場に立った矢先、不意な主語の無い指摘に一度は頭部の角度を僅かに傾けるも自らの身形に目線を落とした先には彼からの贈物である花飾り、振りの長い袖よりも其れが意識に入り一歩後退。「おっと、危ない。濡れてしまっては敵わんからなあ。」純白の羽織を脱ぐと二回程無造作に折りたたみ、廊下の隅の方の丁寧に磨かれた木の床に置いておく。厚手の上着を取った事に因って幾分か風通しも良くなり、水回りという事も相俟って気怠い暑さは軽減されたようで上機嫌に長い袖を捲り、肩の位置で何度か捩じる事で固定を試み。内番の際の装いのように上手くはいかぬものの、最初よりは身軽となった恰好にて彼の元へ戻ると爽快な水音と陶器の擦れる音が静寂に響く。流れ落ちてゆく水を遮るかの如く両の手で作った器を差し出すと、満ちては指の隙間から零れ出てゆく其れを眺めながら伝わる心地好い冷たさに表情を綻ばせ「冷たくて気持ちいいな。全身に浴びたいくらいだぜ。」上機嫌に紡ぐは本心とは別に、二人きりの空間の緊張感や脳裏に刻まれた甘やかな記憶から意識を逸らす目的も含まれており、隻手は水に晒した侭、別側の手で洗剤の入った容器を取ると蓋を開き相手が持つ柔らかな洗浄用具へと近付け適量を垂らし。)

  • No.152 by 大倶利伽羅  2015-07-30 15:05:23 

どうでもいいな。…だがお前の隣は、なぜか心地が良い。
(水無月の月に彼方此方で咲き乱れていた紫陽花は錆び行くように枯れて行く一方で、同じ中庭で背の高い向日葵の花が数本か太陽の方向に向かって顔を出し始め、漸く此の本丸にも夏の報せ。途端に天候が安定したとも言えないようで、晴れやかな天候だったものが一転、何処か僅かな雨音。屋根を僅かに叩き、落ちた雫が柔く跳ね、窓の隙間からそう時間も経たないうちに雨が織りなす自然の香りが鼻を擽り。前の所有者にて彼がやって来る時はもう一つの刀剣は行方知らずになった矢先、その事情も自立を助け、拒むようになったのはいつくらいだったか、と思いを馳せる暇も無く少々離れた場所での賑やかな笑い声、囲まれる短刀に対し一つ一つ確かな愛情を向けて柔らかな笑みを浮かべている長兄である刀剣。仄かに靄が掛かる胸中を取っ払うよう、一つ息を深く吐いて長兄と彼らから視線を外しては此方を見て居ない隙に彼の方角へ目先を転じると一瞬にして胸中が愛おしいものに移り変わり、思わず意識しない内に言の葉をぽつりと相手の方角へ零し。今しがた此方二振りをお小言付きの説教を齎した刀剣の姿はもう既に見えず炊事場に残されるような形。彼も己と同じように一つの場所へ手袋を纏めた時、窺い知るような視線の意味には気が付かず、流し台に置かれた皿や椀等に早々と視線を移して。羽織を指摘した矢先に数秒疑問符を浮かべている様子から気が付いた彼、軽快な言葉と共に離れて行く後姿を見届け、彼が帰って来ると先程よりかは軽装になった姿に自然と暑苦しさは感じられず。御機嫌な彼の細すぎる華奢な腕が次々と面積を表して行く其れに、「本当に食べているのか?さっきも言ったがお前は細すぎるんじゃないのか。」何処か、そう遠くない過去と同じ言葉を確認するように繰り返しつつ、肩の位置で捩じり止められた布、其処から覗く肌から視線を逸らし、正直目のやり場に困る其れに煩悩と健気に闘いながらも目の前の課せられた仕事に向き直り。「ああ。…水遊びは却下だからな。」彼の水の冷たさに対する気持ちよさは理解できる。連日の猛暑日で暑くて堪らないからだ。釘を刺すように"却下"を強調させ、水に濡れた用具に垂らされた洗剤にて数回程柔らかく揉み込み、泡立って来た所で容器の底や縁を丁寧に滑らせていけばそれを洗う係に自然と任される隣の彼に渡し。)

  • No.153 by 鶴丸国永  2015-07-30 20:26:01 

…っ――、君は本当に、俺を喜ばせるのが上手いな。
(微温い風が深緑の草木を揺すり、奏でられる葉擦れの音は穏やかに本丸を包み込む。真昼にさざめいていた蝉も眠りに落ちた静謐とした夏の夜、交わす言葉の隙間に潜む屋根瓦に落ちる控え目な雨音に無意識の内に目線は暗闇が溶ける窓の外へ向かい。真昼の暑さに茹だっていた植物には甘雨であろう、薄く開いた窓から入り込む湿った大地の瑞々しい香りに一度は双眸を細めると、其の隙間を広げるべく其方へと歩を進め、騒音が立てぬよう徐に開け放ち。邂逅を経てからというもの、以前と比較すれば幾分も和らいだものの、前の所有者を同じくする世話焼きの刀剣や何かと干渉を為す己を除き深入りを拒む姿勢が崩れぬ彼には、張り詰めたピアノ線のような危さや脆さを感じており。然し多少なりとも気を許す彼の心の枠の数少ない内に自分が在る事に対し、優越感や己の醜い独占欲が満たされている事も事実で、相反する思惟を脳内に抱え密かに葛藤している中に聞こえた相手の言葉に陰鬱な思案は全て消え去り、代わりに胸中に広がる温かな感情に徐に綻んでゆく表情を抑える事も出来ず、窓際に立ち彼に背を向けているのを良い事に、余計な情報を遮断するかの如く隻側の手で自身の目許を覆うと顔を伏せて。一振りが立ち去り静寂と水の音に満ちる炊事場、此方の懸念は直ぐに杞憂のものであった事が見て取れ秘密裡に胸を撫で下ろす。羽織を置く際に床に敷いてしまわぬよう畳み方に気遣った結果、見えた花飾りは相も変わらず美しく繊細な細工が為されており、脳裏を過る万屋での出来事に脈拍は僅かに速度を増す。早速作業に取り掛かろうとした所に掛かる指摘は食事中と同様のもの、「その質問は二度目だぜ。光忠の心配性が移ったか?」気遣いは嬉しいものの其の加減に呆れ混じりの声色にて。自ら出した名であるにも関わらず、彼らの仲睦まじい様子を思い出すと少々胸の内が焦げ付くような痛みを抱き。意見に限り同意は得られたものの、行動に関しては己の思考を見透かしたかのように牽制する返答に「今すぐにでもしたい所だったんだが…致し方あるまいな。」此処を水浸しにしては先程の刀剣から更なる御叱りを受けるだろう、其の光景を思い描くと小さく肩を竦めてみせ。手渡される侭に器を受け取り、汚れ一つ無い陶器の表面を指の腹で擦りながら泡を洗い流すと、布巾で拭くのは後回しに一先ずは台に置いてゆき。)

  • No.154 by 大倶利伽羅  2015-07-31 12:14:41 

俺は思った事を言ったまでだ。おい、そこにいると濡れるだろう。
(安穏の静謐とした、燈籠のその灯りはぼんやりと其の宵闇に包まれた道を照らす役目を果たしている。目の前の彼が大地を潤す水音に釣られて縁側を外敵から守る為の窓の傍へと寄って行く際、目で背中を追い掛けると彼特有の香りが鼻腔を擽り。降りしきる雨音は次第に強くなり始め、地を跳ねる雨雫は激しいものに移り変わりゆく。懸想している先は彼、窓の傍に立つ後姿を暫し眺め見、今すぐその華奢な背中をこの腕に掻き抱きたくて仕方が無い。だがそれをしないのは己のありとあらゆる、抱くだけで済まない醜い感情の所為だろう。一向に止む気配の無くなった雨、彼がもし濡れると世話焼きの刀剣が煩い。途端にその背中が丸まる彼、怪訝そうにしつつも好い加減其処から離れさせようと歩み寄り、肩に隻側の手を置いて指先を後方へとやんわり力を込め。炊事場の微かな蒸し暑さは火を使ったからだろう、その名残が空中に残っている。視界の端に映る大事そうに畳まれた彼の羽織りからは一層と目を惹く桜色の飾り、其処から万屋へ御遣いに出向かった昼間の出来事、その中で彼の頬に唇が触れた事も鮮明に思い出してしまう。此方の指摘に今此処に居ない銘の名前、聞き慣れた其れに「移ってない。ただ、光忠に気遣うように言われた。」すぐさま否定を迷わず口にしつつ、世話焼きの刀剣の名を借りながらも同時に相手の胸中を焼くものに気づけずに。取り敢えず彼の遊び心は流石に一旦潜んだ様子に面倒事は起こらないと確信、相手が器に付着した泡を洗い流している間も次々と洗い流し待ちの椀を貯めておき、一旦此方が完了すれば流れる水で洗浄用具を一握りし、垂れている清潔な布で手を拭く前に濡れそぼる指先を窄め、その手を彼の方へ向けて指を開くと途端に弾かれる水滴。「ほら、これで少しは涼しくなったんじゃないか。」ほんの悪戯心を彼に仕掛けてみると、何事も無かったように傍らに掛けられている布巾を手に取って。)

  • No.155 by 鶴丸国永  2015-08-01 14:13:02 

無意識なら猶更だろう。…ああ、案ずるな。これくらいで風邪を引く程やわじゃあないさ。
(つい先刻迄天に浮かび煌々と照っていた望月は厚い鈍色の雲に隠れ、道沿い幾つも設置された燈籠の朧げな灯りは降り注ぐ雨の靄の中に隠微に映り酷く幻想的である。まるで時間の流れから隔離された空間に居るかのような形容し難い憂いを抱くと、胸中に満ちる幸福な感情が真のものである事を確かめるべく、濡れる事も厭わず雨粒へと隻側の掌を伸ばし。雨脚が強くなった為か瞬く間に黒の布手袋は水分を含み掌に張り付き、袖や露わとなった肘下に沁み込んでゆく。此方の身を慮るような言葉と共に後方に引く力に従い、窓の外へ向いていた身体の正面を相手に向けるとはにかむように口許を緩め。過剰な程の心配はあの刀剣の性質が伝染したものだろうか、何にせよ此方を気に掛ける意思を素直に受け取り、風向きに因っては屋敷の中へと吹き込みかねない雨粒を防ぐべく先程開いた窓を徐に閉め。人気の無い炊事場にて、胸飾りを視界に捉える事に因り彼が同様な回想をしている事など想像に及ばず、声色や所作にぎこちなさが垣間見えぬよう平然を装う。相手の唇が紡ぐ銘に心中は不穏に揺蕩うも、「あいつも相変わらずだな。…で、君は?」重要なのは此方の体型を気遣う相手の真意、其れを誘発すべく語尾を上げ。まさに流れ作業、汚れが落ち代わりに泡を纏った皿を濯ぐ事を何度か繰り返すと作業は終了する。後は濡れた碗を拭き棚に仕舞うだけ、という所で此方へ向くは掌の部分に空気を収めた緩やかな拳。其の後の行動を予測付けるも束の間、避ける暇も無く弾き飛ばされる細やかな雫に反射的に目を瞑り庇うように顔を背けて。一度は瞠目してしまうも、先程は己の遊び心を諌めたにも関わらず、仕掛けられる悪戯に好戦的に唇端を上げ。「お、やったな?…それっ!」両の掌を器状に為し其の中に水道水を少々溜めると、仕返しとばかりに軽快な掛け声と共に腕を振り上げ、相手の頭上の宙を目掛けて手の中の水を放ち。)

  • No.156 by 大倶利伽羅  2015-08-01 19:02:59 

っ、それで?本当に風邪を引いたらどうするつもりだったんだ、あんた。
(見事な満月の夜の姿を隠す。次第に雨を含ませた強風が時折吹くように草木をなぶり、穏やかな宵闇だったものは一転として木々を一瞬ではあるが大きく葉を撫ぜて揺さぶられ。所々に点在する燈籠の灯りは仄かに揺らぐ事はあれども、中に灯る火の意思は強いものなのか小さくなるだけになり。宵闇に浮かぶ月の幻想的さとは違い、各所に存在する燈籠に対し闇中で揺らぐ火の魂にも思え。己が隻側の手を肩に置き、柔らかく後方側へと力を込めると案外呆気なく向き合う体勢。程無くしてあどけなく、邪気の無い唇の緩みに切な言葉を詰まらせてしまい、胸中の塊が何者かの矢が突き刺さり、切なく締まって息も上手に出来ない感覚から漸く何とか言葉を紡ぎ出し、はっとして彼の姿をもう一度見遣ると袖が雨を含んで湿った事や手袋の布の部分が元の色より濃く変色しているのを目敏く見つけ、「無防備にも程がある。」彼に聞こえるか聞こえない程度の細やかな独り言を呟き出し、閉まった窓の外を彼越しに見ると雨脚は一層と強まるばかりであり。夜も刻一刻と深まるだけの時刻は淡々と進むだけ、食事を済ませてからどれくらい時間が経ったか、少なくとも1時間か2時間程は経っている。他の刀剣は思い思いに自室で寛いだり、他の刀剣の部屋に遊びに行ったりもする癒しの時間であるこの時間帯は炊事場の灯り以外に点る部屋は辺りに無く、突如として振られた己の真意を探る為であろう誘う語尾に一瞬だけ身体が止まるものの、其れはすぐに力を抜いたものに移り変わると、「…心配をしていないと言えば嘘になる。これで十分だろう?」敢えて遠回しな捉え方に出来る言い回しを口に。此方が水滴を彼の方角へ弾かせると途端に背かれた頭に隠れてしたり顔のまま布巾を手に取った途端、視界の端に彼が動いたと気付いた時には既に時は遅し、両手の器にて放たれた水に思わず条件反射で彼と同じくして「っ!」と即座に隻側の腕で顔を遮るようにするもあえなく服は水を吸い取り。中の白い服にも水の端くれが届いたらしい、小さいながらも部分的に濡れてしまう。顔にも飛びついた水滴を腕で拭い、仕掛けたのは己である故に強く歯向かう事は出来ず。「これで満足か。」布巾を手に水に晒された椀の元へと相手を通り過ぎ、先程の立ち位置より逆側に立って一つずつ椀を丁寧に拭いて棚の中に仕舞い込み。一旦綺麗に片付いた炊事場に布巾を元の位置へ掛け直し、次に取り出すは急須と約束した二人分の湯呑み。)

  • No.157 by 鶴丸国永  2015-08-02 06:40:34 

冬の雪の日に雪合戦をしてずぶ濡れになっても大丈夫だったんだぜ?これくらいの雨でどうにかなる筈がないさ。
(瓦屋根や庇、硝子窓を叩く大きな雨粒が奏でる音は互いの話し声すらをも掻き消してしまう程である。恐らくは驟雨の一種であろうが、先程までの静寂が幻であったかの如く斯様に繽紛たる悪天候は久方振りであり、煩わしい暑さに因る刀剣達の疲弊も多少は改善されるに違いない。朧げに浮かんだ頼り無い燈籠の火は風に煽られ不安定に揺らぎ、聊か周囲の闇は深まり暗色の衣装を纏う彼が其れに溶けてしまうかのような憂思を抱く。一度は何かが閊えたように詰まる声に怪訝に窺うような表情を経た後、食指を立て何処か得意満面な面持ちにて語り、取り越し苦労だと言わんばかりに能天気な笑声を零し。濡れた側の腕を相手から遠い位置にて振るい無造作に水分を取り払うと、流石に不快なのか湿った掌の布を取り外し懐へ仕舞っていると聴覚にて拾い上げるは微かに不満を示す言葉、瞼を伏せ浅く呼気を漏らすや否や乾いた側の手を彼の方へ伸ばし、「そうかい?…まあ、風邪を引いてしまった時は君に看病を頼むとするか。」紡ぐは剽軽な声色にて、宥めるように側頭部の栗色の髪を二度程撫で其の侭腕を下ろし。夕餉の時間と静寂の食事室にて過ごした時間を含めると、此の付近に居る時間は四刻程だろうか。時間の流れとは刀の姿を成していた頃以上に早いもので、まさに矢のように過ぎて行く。刹那は動揺に硬直するも吐き出されるは何とも天邪鬼な発言、薄々想定出来たものの込み上げてくる笑気は其の侭軽やかに弾け「そうかそうか!…いや、それならいいんだ。」楽しげ、というよりも何処か満足げな面持ちで。視界の端に映り込む小悪魔な表情は密やかに脈拍を乱すも、其れを紛らわすは自らの仕返しに因る行為。頭上から降る水滴に濡れた彼の反応を窺うべく斜め下の位置から覗き込み御決まりの科白を吐こうとした矢先、つれない感想に快活な表情は不貞腐れたようなものへと塗り替わり。「なんだ、つまらん。」乾いた柔らかな手拭で水分を拭き取ると早々に仕事を済ませてしまう彼を見守る事しか出来ず。次いで用意された茶を淹れる為の道具一式に、思い出したように水で満たした小さめの薬缶を火にかけ、棚から煎茶の茶葉の缶を取り。「今日はこっちだ。こうも暑いと冷たい方がいいだろう。」折角用意された物だが、二つの湯呑を手に取ると戸棚に戻し代わりに透き硝子の涼しげな湯呑を出して。共有の居間に設置された十日間の当番が掲載された木の板に因ると、明朝に出陣する部隊に相手の銘が刻まれていた事を曖昧に記憶しており。詫言という建前の上に誘った茶だが、出陣に備え十二分に休息を取る必要がある事を懸念し成る丈早く切り上げなければならない事を自身に言い聞かせ。)

  • No.158 by 大倶利伽羅  2015-08-02 14:29:05 

そうか。…近いうちに台風と言うものがやって来ると聞いた、精々ばかな事はしないようにしろ。
(厳しさを増す、大地を叩きつける程の強い雨脚は次第に落ち着きを取り戻していく。注意して彼の言葉や声音を丁寧に耳に拾い上げなければ外の荒れた天候によって会話は吸いこまれ、消え入るだろう。やがて其れは時間が経てば経つほど段々と微弱なものに移り変わってゆき。そんな中、得意気な無邪気を思わせる表情から声音へ敢えて釘を刺す忠告を一つ彼に告げながら水を掃う飛沫が其処彼処に飛び散って行くのを見守り。不意に此方に伸びる手付きは変わらず白く華奢だと、そう思わずにはいられない。側面の髪を柔らかく撫ぜる心地の良い彼の体温を享受すると矢張り胸の奥が顔を出し、温かみのある、恐らく懸想の芽。名残惜しく下りて行く隻側の手を視界の端で見送り、今度は此方が手を相手の方に向かうように伸ばし。「ああ。あんたが風邪で弱っている所を他の奴に見られるのは気に入らないからな。」素直な心情を白状したつもりだが、仄かな独占欲を秘めている言葉でもある其れは無意識にも、簡単にも唇から出てしまう。彼の方に伸ばした片側の手、触れるのは先程彼が下ろした手元。手首から掌へと指先を滑らせ、彼の肩に静かに頭を預けるよう凭れ掛かり。食事室の広間の出来事の余韻が次第に表面から薄れつつあるが、未だ脳の奥に存在する微かで甘美な出来事は焼き付いて離れず。時計を一瞥しれみれば、終わった時刻から大分時間が進んでいる。途端に柔らかな笑顔を浮かべた彼、一瞬と怪訝にはなったものの彼の表情を見れば微かに口角を上げる事に留め。就寝時間も迫って来ている事態は胸中に憂鬱とした感情を住まわせ、其れは彼との時間が後僅かだと言う事を知らされているかのようで、より鬱蒼とさせる。その為か不貞腐れてしまった彼の心境や表情には気づかず、其れは陶器の湯呑から涼しさを思わせる硝子の湯呑に変わった事で食後のおやつでも添えようと思い、棚から取り出したのは小皿2つ分。その上に冷蔵庫から余った団子を人数分に分け、後は湯呑に注がれる茶が出来上がるのを待って。出陣が明日に迫っている為、長居は早々出来ないが僅かな時間でも惜しむように彼との時間を少しでも長引かせるように「何処で飲み食いするんだ。」言葉に表しながら決まっていなかったものを口に。)

  • No.159 by 鶴丸国永  2015-08-02 20:33:57 

たいふう?…野分のようなものか?
(一時的に猛威を振るった驟雨は微弱なものに変わり、絹糸の如く細い雨粒は密やかに降り心地好い音を奏でる。苦言を呈する彼の言葉には、柳に風と受け流し薄く唇の端を上げるのみ。雨粒の付いた腕は羽織で拭わずとも何れ乾くだろう、聞き慣れぬ単語を鸚鵡返しのように問うと前の遣り取りから予測立て自身の持つ知識との結合を試み。馴れ合いを嫌う彼が己の手を払い退ける事も無く穏やかに受容する、唯其れだけの事が心の内を温かくときめかせ、指先に残る柔らかな髪の感触は離れた後でさえ名残惜しさを胸に植え付ける。「ッ…は?―…こりゃあ、驚いた。君がそんなことを、考えているとはな。」全く図に乗った言葉は素気無く一蹴されるのも承知の上であった為、慮外な返答に呼吸をする事も忘れる程に驚き間の抜けた表情を晒してしまう。真っ白になった脳内は徐々に思考を再開させるが、思いも依らぬ思惟に言葉を選ぶ余裕など皆無であり、月並みの言葉を譫言のように呟き。何よりも気掛かりなのは其の言葉の真意、然し今それを問い質す度胸も余裕も無く。伸びてくる長い指が触れた肌は熱を帯びるようで一度は身動ぐも、掌を掠める其れを緩やかに握り。懸想の相手からの独占欲を垣間見せる言葉はあまりにも唐突で、紛う事無く心拍は高鳴り昂りを示すが如何様な表情を作れば良いのか分からず、相手の足許辺りで眸を泳がせぎこちなく笑む。触れたいと願っていた相手が此方に甘えている現状に胸の奥は甘く締め付けられ、苦しくなる呼吸に短く吐息を漏らすと肩に寄り掛かる頭部に頬を寄せ瞼を伏せて。二人きりの食事室にて、後片付けも早々に終わり夕餉の後の時間を共に過ごす為の口実に因る茶の準備に取り掛かる。急須の中に心持多めの量の茶葉を落とし、薬缶の蓋を開き沸騰する手前ほどで火を消してしまうと其れを急須に注ぎ入れ。冷凍庫から取り出した氷で硝子の湯呑を満たすと、茶葉が開くであろう頃合いを見計らって濃さが均等になるように深い深緑色の茶を注ぐ。同じ鳥類の銘を持つ彼から教わった手法ならば不味くなる事は無いだろう、相手の方に視線を向けると手にある御茶請けの団子に嬉々と表情を綻ばせ、「ほう、団子か!茶によく合いそうだ。…場所は、そうだな。君の部屋か俺の部屋になるだろうが、どちらがいい?」悪天候の為、有力候補であった縁側は使用できず場所は限られてしまう。漆塗りの盆に二つの湯呑をのせると、両手で持ち上げながら確認を。)

  • No.160 by 大倶利伽羅  2015-08-03 06:01:53 

さあな。俺は知らん、だが直撃した時はひどく荒れた天候になると聞いた。
(短い時間帯に吹き荒れていた風向きは漸く、段々と静かな宵闇に導かれていく。先程とは打って変わった、しとしと降り積もる水溜りには不安定に燈籠の形を鏡のように映し出し、落とされた雨粒によってその光景は更に揺らぐ。忠告を告げた後、人の身を賜った己の身で得た知識は未だごく浅いもので、問われた単語に脳裏は疑問符を浮かべているだけ。結果として招く天候の荒れ模様だけ簡素に纏めると体験した事の無い其れは今の自分にとって未知の天候。頭の側面を柔らかく撫ぜた掌の温もりは僅かに触れられたのにも拘らず、確りと其処にほんのりとした温かみを帯びて身体全体へ脈打つ肌にゆっくりと広がりゆく。素っ頓狂で呆気ない言葉を紡ぎ出す彼、然し先程口をついて出た言葉は本音であることは変わりなく、相手の言葉には黙り込みつつ頭部を彼の元に預けたまま、指先が応えるように柔く握り込む優しい掌には想いが其処から溢れそうな程の感覚を覚え、敢えてもどかしく小指と小指を絡み合わせるだけにすると切なく指を僅かに曲げ。彼が挙動不審にもなっている事は露知らず、頭の側面に再び求めていた温もりが触れ合えば堪らなく衝動に任せるよう何も無い側の手を久方振りに彼の身体、腰部へと巻きつけて更に距離を詰めようと試み。「…―あんたが他の奴に触られると思うと、胸がひどく苦しい。」独占欲と純粋な恋情が胸中を締めて葛藤を繰り広げると矢張りこの唇は抑止する事を知らない、これでは彼を唯困惑させてしまうと言った理論が自分の中で取りつけられるも、言葉と言うのは直ぐには掻き消えてはくれないもの。ただ純粋にこの胸の奥の靄と、切なく締め続ける甘い感情の答えを求め、そう口に出てしまっただけでありながらも段々と心と言った桶に満杯寸前の想いによって嘘はつけなくなって行くのもまた事実。炊事場に蒸す暑さと、木材で出来上がった格子の窓の向こうには微かに雨が降られ、未だ悪天候なことには違いないらしい。緩やかに、流れる動作で茶葉を急須に取り入れて無駄なく薬缶の火を止めてから注がれる其処からは目を凝らせば静かな湯気が立ち込めている。瞬く間に時間が過ぎ、氷が風鈴のような音を立てて硝子細工の湯呑に落とされていくのを目で追い、最後に煎茶特有の濃い深緑色の飲み物は瞬く間に硝子を微かに曇らせて行く。そんな一連の動作を見守り終えると炊事場から外の様子を窺い見る。其処にはしんと静まり返る廊下があるだけで、「俺の部屋でいいだろう、お前は等級が高いから部屋が遠い。」それだけ告げると炊事場の隅に置かれて丁寧に畳まれた彼の肌触りの良い羽織を優しく飾りが傷つかないように腕へ掛け、その空いた手側で流し台の傍らに置いておいた二人分の手袋を纏めて一掴みするなり水回りや火の栓を止めている事を確認し、炊事場を出て消灯をするために出入り口の傍で待ち構え、「鶴丸、さっさと行くぞ。」急かすような口振りで彼を待ち。)

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