竜と鶴 →非募

竜と鶴 →非募

大倶利伽羅  2015-04-14 21:18:45 
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募集板で声をかけてくださった、>8339様。

おおくりから と つるまる



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  • No.201 by 大倶利伽羅  2015-08-26 05:30:12 

(彼が何か言葉を溢す前に玄関先に向かう際に背中よりもずっと後方の方角から戦場に赴く足取りを軽くさせる一言は単純にも心持ちまで闘志に煮え滾らせるのに十分。同時に彼の一言だけでこんなにも気持ちが忙しなく移り変わる不安定な空模様のようで、曇天の靄に掛かった胸中は一瞬にして雲を切り裂いて覗くはその上に据える陽光の一抹の光を起点に段々と好晴と成り代わり、恋慕よりも彼の為に誉を取って見せよう、と言った敬愛の情が僅かに燃え上がり、玄関に進む脚は徐々に速度を伴わせて言葉通り軽やかに向かって。既に召集の掛かった場所には短刀4振りと太刀1振り、そして己含め打刀1振りが無事に集まると途端に訝しげな視線を当然に集め、隻眼の彼も普段身に着けている梵字の飾りが胸元に煌めいていないのを不思議に思ったか、彼が何か問い掛ける前に「馴れ合うつもりはない。」牽制の言葉を我先にと伝えると彼含め短刀等にも指摘される事は無いが何処か意味深な視線を向けられる事に違和感が抜けきらずも其れに触れたら最後、無視を決め込み。隻眼の彼を筆頭に隊を作り、玄関から丁寧に出ると真っ先に向く目の先は本日白く煌びやかな彼と、爽やかな炭酸の色合いをした水色の彼とが当番を為すだろう畑部分や馬小屋等に。其処で審神者が遣って来、点呼を取られると短い返事だけを簡素に伝えて無事終えると出陣先が指定され、門から出る行き先は江戸の元禄年間の記憶。丁度脳内に浮かべている鳥類の名を冠した彼が未だ前の所有者の元に存在していた頃かと記憶に起こす事が容易い自分の気持ちに参る程に己の中の彼の存在は途轍も無く大きく、また、この面ならば昼前に帰還する事が叶う。最早誤魔化しきれない大きな刀を胸に抱いて出陣にいざ参らんとばかりに隻側だけ異なる彼の手袋を嵌めた手を握り締めて足を踏み入り。)

  • No.202 by 鶴丸国永  2015-08-26 21:46:27 

(嘗ては卑属に対す情に類似したもの抱いていたが、此方に背を向け歩み出す背中は広く頼り甲斐があり眩しさすら感じ得る。部隊員全員の無事の帰還と最良の結果を心内にて願いながら、慣れぬ形の手袋を嵌めた左手にて首から提げた梵字の飾りを握り締め。開け放たれた窓から入り込む微温い風を感じながらも小走りに食事の間に戻る足取りは軽快で、重みのある黄金色の飾りは降り注ぐ陽光を周囲に散らすように煌めき、弾むように揺れる身体に伴って胸元を跳ねる。障子を開き敷居を跨いだところ、先程よりは数を減らした幾口かの刀剣からの浴びせるような視線には、刹那居心地が悪そうに眉尻を下げ困惑を滲ませた笑みを浮かべるも、其れを歯牙にも掛けず彼の食した空の膳を持ち炊事場の流し台へと戻し。時間も時間故に当番の往来は収束に向かいつつあるようで、丁度手透きに見える当番の短刀に自分用の朝餉の用意を依頼すると、先程の部屋へと戻り丁度食事に取り掛かった所であろう同じ鳥の銘を持つ太刀の正面に座し。一度は箸を止めるも特に気に留めぬ温和な彼に二言三言語り掛けると、"…珍しい事もあるものだな。明日は空から竜でも降ってくるんじゃないか?"此方を覗く萌黄色の双眸はまるで此方の胸中を見透かしているかの如く愉快そうに細められており。間を割くように丁度良く運ばれてきた皆と同様の献立を一通り視線でなぞり、短刀が立ち去った所で「そりゃあ驚きだねえ。…ま、俺が一方的に馴れ合いに行ってるだけさ。」自意識過剰気味な思考を抑え唇に控え目な弧を描き、掌を合わせると和で統一された料理に舌鼓を打ち。)


(旧知の間柄である彼と共に食事を取り終えると、当番の相方に因って逃亡や怠慢の隙を与える事無く半ば強引に中庭の畑へと連行される。刺すような日差しを些かでも緩和する為に麦藁帽を被り、純粋な悪戯心から企み事を施す度に幼子を咎めるような小言を頂戴し、他愛の無い事柄に関して流暢に言葉を交わしながら着々と植物の手入れを行ってゆき。天から注ぐ陽光は言わずもがな、すっかり乾いた大地から蒸し上がるような熱気も容赦無く体力を奪い、額やこめかみ付近から滴り落ちる塩分の強い雫を無造作に着物の袖で拭い取り、地に付いた鍬を杖に見立て凭れ掛かりながら藍宝石の色合いを映した晴天を仰ぎ見て、気付かぬ内に高い位置まで昇っている光源を遮るように隻側の腕で目許を覆い。すると作業の終了と共に間も無く昼餉である事を知らせる相方の声に、茹だるような暑さに眩暈すら感ず身体を引き摺るようにして、何処か蹌踉たる足取りにて縁側の廊下に俯せに倒れ込むように横たわり。頬から伝わる滑らかな木の感触や冷たさに深く息を吐き出し、高い位置から腰を屈め被り物を取り去ってゆく柔和な声を上の空に聞きながら、脳内を占めるは懸想している彼の事。暑さに蕩けた頭でそろそろ帰還する刻限だろうか、等と思案を巡らせ「―…まだかなあ。」床の上で陽光を反射する飾りを眺めながら、無意識の内に零すは譫言の如く。)

  • No.203 by 鶴丸国永  2015-08-26 22:01:43 

(今晩は。葉月も終わりに近付いて来ましたね。如何御過ごしでしょうか。
台風が近付いているようですが、被害など御座いませんか?

叫び板では何とも素敵な文言を有難うございます…!
100を超えた時の事を覚えて下さっていて、凄く嬉しかったです。、
何度目か分からなくなる位、色んな御祝いが出来ればいいなあ、何て。

此方の返事がだいぶ長くなってしまいましたが、
御茶の方(←)とやりとりがしたかっただけなので御気になさらず!
戦闘の描写は難しいですから、思う存分略して頂いて構いませんので。

素敵な御相手様に巡り逢えて、鶴丸も私もとても幸せです。
…これ以上は恥ずかしいのでこの辺りで、どろん。)

  • No.204 by 大倶利伽羅  2015-08-27 06:34:12 

(清々しい程に広く大地に降り注ぐ紺碧色の空模様の下、部隊長である藍色寄りの彼を先頭に後ろには短刀4振り達を挟んで最後尾につく。間もなくして目的地の地を踏み締めるように爪先から確りとその場に立ち、早速隊長である彼に伴って目を凝らして索敵をすると漸く見つかった遡行軍を見逃さずに陣形を整えて抜刀準備をし、戦闘態勢。そんなに難しい場所では無いが些か数が多いのが難点、其処も審神者が均等に練度が上がりやすいように設定しての事だと聞いた。形成有利も助けて次々と打刀と短刀を斬り伏せ、多少の返り血を中に着込んでいる服に浴びるも少量故に気にする事は無く。無事に勝利し、着々と賽は順調に投げられて敵の一番深部の本陣に乗り込み、隈なく抜かりない索敵をした後に察知出来た歴史改正主義者が目の前に現れると中でも一際図体が大きい刀剣が向こう側に潜んでいる、恐らく緑色からして大太刀の部類だろうと察しが付くと気を付けなければと気を張り。然し隊の最後尾は自ずとも攻撃を受ける回数が多く、審神者によると一番練度が高く、且つ中々折れることの無い安心する刀剣を必ず六番目の使命に課すと言う。大太刀を運悪く一番最初に斬り伏せることが出来ず、その自分よりもはるかに長く鋭い刀身を身に受ける前に後ろに退いて避けたが矢張り大太刀と言うのも相俟って切先までもが長い。避けた際に頬へ熱い衝撃、触らずとも頬に走る傷からは掠り傷程度に留まり、道中で受けた口端の傷と共に滲む鈍痛は気にも掛けず。今度は此方の番、己が真っ先に最後に残る太刀へ大きく一閃を描くよう胴体を切り裂いてやるとこの場所での合戦の終結を告げ。短刀達を差し置いて誉を頂き、自分のほかに短刀2振りが軽傷、時計が無い代わりに太陽の位置が知らせるは既に昼間の時刻。さあ帰ろうかとした際に帰路の道が開かれ、其処から足を運ぶとあっと言う間に目の前は本丸に辿り着き、出迎える審神者が軽傷を負った短刀から手入れ部屋に連れて行かれると己も、と催促はされるが頑なに「これくらい、心配には及ばない。」と拒否を示して。中々に食い下がる審神者の横を通り過ぎると宥めるように隻眼の彼が伝え、腹の虫を抑えるように竜を纏う側の腕で腹部を擦りながら足の先は玄関へと向かうと引き戸式のガラスをはめ込んだ柵で縦の縞模様に出来ている和の扉を横に開けると微かな痛みが口端に感じ、僅かに眉が自然と寄り。)

  • No.205 by 大倶利伽羅  2015-08-27 06:48:57 

(おはようございます。葉月も終わりですか、早くも名残り惜しいものです。
台風に関しては今の所被害は蒙っておりませんので、ご心配なさらず。
相変わらず健康さが表に出ていて、夏風邪にも掛からずに済みました。
近頃、雨模様が続いて肌寒さすら薄ら感じますが
是非お身体のほうご自愛をなさってくださいね。
けれども少しずつ、秋が近づいて参りますね…!

某叫び板での件、此方こそありがとうございます!
鶴丸の退屈を持て余している様子が目に浮かぶようで、とても微笑ましい気持ちになりました。
こんなに早く見つかるとは…!嬉しい限りです、何と言葉にしたらよいか。
そして関係ないのですが投稿時間帯が22:22:22だったのは偶然でも凄いなと思いました。
100レスの大きい記念は忘れる訳がありませんな。
数えきれない程の色々な御祝い、大賛成です…!

いえ、此方の方こそどこからどこまで描写に取り入れて良いいのか
分からず、だらだらと長いだけのものになってしまいましたが
其処は長い目で見て頂けると嬉しいです。
御茶の方の何でも見透かしている感、好きです。流石年長さん。(←)

私も、大倶利伽羅も。
素敵な事この上ない御相手様にお逢い出来てとても幸せです。
恥ずかしく思う貴女様もまた愛いですね。
何て口説いている場合じゃない。すみません、お恥ずかしいことを。
長くなってしまいましたがこれからも愛を込めて参ります、どろろん!)

  • No.206 by 鶴丸国永  2015-08-27 20:25:41 

(寄棟屋根の裾の広がったような軒の下、雲一つ無い紺碧の空から降り注ぐ陽光を遮り影が落ちている縁側の廊下にて。肌を撫でてゆく心許無い風も炎暑に上気した身体には心地好いもの、薄ら冷たい床や草木のそよぎにのって流れてくる風鈴の凛とした音色と相俟って徐々に体温を下げてゆく。寝返りを打つように仰向けの体勢に為り、汗に因って額に張り付く前髪を手櫛で梳くように頭頂部へ流しては、足首に草履の踵の部分を擦り付け石畳の上に無造作に脱ぎ落しす。傍らにてその横着さを見下ろす粟田口の太刀の男は眉間に呆れの色を湛えているものの、それを歯牙にも掛けず些細であろうと風を取り込むべく襟元を僅かに緩め扇子に見立てた隻手にて扇ぎ。退屈凌ぎの他愛の無いを交わしていると門の方から漂う喧騒に脳裡を過る思考は一つ、暑さに辟易し重怠い疲労を感じていた身体は驚く程に容易く起き上がり、爪先で跳ねるが如く廊下を駆ける脚は軽やかで。道中、審神者を先頭に手入れ部屋の中へ入りゆく短刀達の姿は今朝彼に声を掛けていた面々、部隊の帰還の事実に体内を血が巡り始めるような胸中の雀躍を抱き。手入れ部屋で無いのならば、恐らく眼帯の伊達男と共に在るのだろう。彼らの間柄を思うと当然の思考だが、小さな火種から燻る黒煙を踏み躙るように表れた仄暗い感情を揉み消しながら玄関へと向かい。折良く引き戸を開く彼と遭遇し安堵から表情を綻ばせるも、小走りに近付くとその精悍な面に付いた刀傷に気付き思わず眉根を薄く八の字の形に。「御帰り。…君が顔を切られるなんて珍しいな。」足袋のまま土間まで降り、向かい合うように立つと申し訳程度に唇の端を上げて。返り血を纏い周囲に香る鉄の臭い、無事な姿とはいえど顔の柔い皮膚を裂く其れは痛々しいもので、浮足立った心地は徐々に落ち着きを取り戻してゆく。)

  • No.207 by 大倶利伽羅  2015-08-28 09:05:19 

(無事江戸元禄年間と言う歴史から帰還し、厳しさ増す陽光から逃れるよう玄関の戸を開けるなり何処か遠い場所から騒がしい足取りが一振り。その足音の主は容易く特定出来、面をやおら上げてみると思惑通りの人物が眼前に現れ、共に些か目に眩しい白一色の内番装束の相貌に目を当て。玄関先まで慌ただしい駆け足でやって来たのだろう、彼の胸元に煌めく自分のものではあるが今や彼の一時の所有物となっている微かに揺れた梵字が鈍く反射したのを感じて双眸を薄く細め。「ああ。…運が悪かった、それだけだ。」彼の不安げな面持ちをどうにかして晴れやかなものに変えたいが、生憎其処まで器用では無い、不意打ちにも程がある敵の攻撃を読むことが出来なかった自分も浅い経験故に罰が悪そうに視線斜め下に向けて。既に無傷の担当2振りは先に屋敷内に入ったのか、靴が脱ぎ捨てられている。後ろに続いていた眼帯の彼も勿論無傷な為、如何やら其の侭昼餉の当番に取り掛かるようで炊事場の勝手口から屋敷内に入るらしく、"倶利伽羅、ちゃんと手入れ受けてからお昼ご飯食べるんだよ!"と言う親口調なお小言まで背中に投げられ、其れには無視をする訳には行かずに短いだけの返事を彼に返し。玄関の土間に漂う鉄の香りは刀の本分である事を思い出させ、同時に玄関先に2振りと言った空間は過去にも似た様な今と違って甘く脳髄が蕩けるような宵闇に染まる夕闇での場面をも思い起こす。胸の奥に響く恋心の鼓動を誤魔化すべく切れた口端を慰めるよう舌先で僅かに固まった血を撫ぜるよう掬ってみると相も変わらずに仄かな独特の味わいと亀裂が走る感覚は拭えずに。)

  • No.208 by 鶴丸国永  2015-08-29 07:10:10 

(昼前の玄関は、帰還した部隊の殆どは既に本丸内に入っている為に穏やかな静寂に包まれており、遠く縁側に垂れ下がった青銅の鈴の伸びやかな調べが風に靡いて届く。彼の纏う血や硝煙の臭いに凍結したかの如く立ち竦むも刹那、前者が彼自身の物で無い事を理解すると強張った肩から力は解け。気不味そうに擦れ違う金糸雀色の眸、石畳の土間から伝わる程良い冷気が蒸した足裏から体温を下げてゆくのを感じていると、玄関外から飛び込んで来る眼帯の男からの釘を刺すかのような苦言に脳裡を過るは審神者と共に手入れ部屋に入っていった短刀達の姿。記憶が正しければ数は四振りで手入れ部屋の許容数と同値である為に今直ぐ彼が手入れを受ける事は困難だろう。傷口を這う艶めかしい舌に心拍が跳ねるも誤魔化すかの如く伏せがちにかぶりを振っては、徐に昇り竜を彫り込んだ側の手首を掴み「よし、じゃあ昼餉前に軽く手当てしておくか。まずは傷を洗いに行こうぜ。」逡巡や彼の疵を放置する心算は皆無、抵抗しようものなら引き摺ってでも洗面場に連行するだろう。今朝方、広間から攫い出すかの如く手を引かれた出来事と逆転した立場と為る事に胸の内を擽られるような面妖な感覚を抱きながら、踵を返すように相手に背を向け平然と上がり框へ足を踏み出し。)

  • No.209 by 大倶利伽羅  2015-08-29 13:29:14 

(帰還したことで本丸の奥部からは様々な刀剣達が彼方此方に滞在している事だろう、朝方とはまた違う賑やかさの喧騒が身体で感じ取れ、特に彼が今し方来た方向からは粟田口の長兄である彼の弟で短刀らの声が仲睦まじく幾つか聞こえる。視線は斜め下に持った侭、後ろ手で開放した玄関の戸を横に引いて閉める方向に持って行った時。肩甲骨から腕まで尾を巻きつけて存在する竜が描かれている側の手にあたたかな温もりを感じたのも一瞬、土間に向けていた視線の先の世界は己とは相違する色白の手に目を転ばせてから其の腕を辿って彼を再び直に視界に入れて。途端に無機質な世界から華やかに彼を中心に鮮やかに色付いたような際立つ存在の背中へ目を暫し奪われるのは束の間の間だけ、「っ、おい、そんなのは自分で出来る…!」あっと言う間に今朝行った行動とは立場が逆転した様子は妙な既視感に近い何かを感じて、掴んでいる手からは華奢ながらも僅かな強引さが窺える。框を踏む前に一度掴まれた腕を自分の方へ微かな力に乗せて引き止めるのを試みつつ、然し完全に此方が強引に彼を止めようと思えば出来る事が思うように行かないのは所謂現世で言う惚れた弱みとでも言うのだろう。引かれるまま土間に靴を行儀悪く急くように脱ぎ捨て、片脚を框に乗せて屋敷内に上がり込み。)

  • No.210 by 鶴丸国永  2015-08-29 18:55:33 

(硝子を嵌め込んだ戸を挟む彼の背後、広い玄関前の敷地から聞こえてくる幾振りもの若さに漲った声は各々に戦績を語っている事だろう。敬愛して止まぬ長兄を取り囲むかの如く、押し合い圧し合い身を寄せる姿は想像に容易く、玄関に漂っていた何処か暗澹たる空気を払拭するようで無意識の内に眉に浮かべていた困惑は緩和されてゆく。持ち上げられる薄い瞼と刹那交じり合う蜜色の眸、動揺を孕んだ言葉は想定通りと言っても過言では無いもので、肩越しに背後を見返ると唇に弧を描き不敵な笑みを浮かべながら、「君は自分の事を後回しにするだろう。…それに、俺がしたいのさ。」現に短刀達に手入れ部屋を譲るという粋な所業に出ている事は慥かであり。溢れんばかりの恋慕だけではないものの、周囲に気を張り何処か脆く映る彼を見過ごす事は出来ず。その場に留まる為に抵抗を見せる力は形ばかりの弱く寸刻のもの、諦めたように弛緩し此方の力に素直に従い何歩か後方を歩む足音を聞きながらも手を解放為す事は無く、其の侭洗面場へと引き連れて行き。道中、「朝は逆だったのになあ?」何て背後へと目線を向け揶揄するかの如く語尾を僅かに上げながら、堪え切れぬとばかりに肩を小さく震わせ空いた側の手の甲を口許に添えながら笑みを逃がし。難度の低い合戦場とは言えど彼の言葉通り油断ならぬ事は事実、掌から伝わる温もりに安堵と世話を焼ける喜びが満ちてゆくよう。洗面場に辿り着くと彼の手を離し、石鹸を手に取り両の掌で挟み擦り合わせるようにして軽く泡立てると、「ほら、君も洗った方がいい。」其れを乗せた隻側の掌を相手の方に差し出して。)

  • No.211 by 大倶利伽羅  2015-08-30 06:44:04 

(屋敷内から聞こえる賑やかさは大方其々の刀派による短刀達の集う声だろう。長兄の周りに付き添う刀剣達は粟田口一派のもの、我先にと長兄の隣を陣取るも上手くその太刀は戦場に赴いていた刀の頭を撫ぜて労をねぎらって上手く宥める事が容易いだろう。不穏に陰を落とす彼の表情は何時の間にか元通り、思い当たる節のある其れに胸中は仄かに薄暗く醜い独り善がりな感情に覆われゆくのを感じて。框へ乗り上げ、彼の後方を手に引かれる侭に何処か怪しさを漂わせる金の眸と視線が噛み合うと一度だけ瞬きをして普段行っている行動に当て嵌まる故か強く反論は出来ず。伊達家の時に共に過ごした時間は決して長いとも言えない中、この刀は変わらない性質である事は百も承知。「甘い。…本当にお前は、俺に甘い。」自惚れにも程があるものの一つ確信めくような真面目な声色を背中に降らせつつも、募る恋情も最早核心を痛いほどに抉る。短刀が手入れを受けている部屋が空くには少々時間を要し、未だに彼の手によって竜の尻尾を捕えられた侭、後方へ景色が移ろい行く瑞々しい緑色を視界の端に捉えながら昼刻特有の高い太陽の光は些か眩しくて眸の視界を細めてしまう。揶揄う語調にて紡ぐ愉しげに企む表情に眉根を寄せ、「うるさい。」今朝攫い出した光景を瞼の裏に思い描くも一蹴するかの如く震わせる彼の背中へと吐き出し。洗面場に辿り着くと漸く解放する手元は夏季と言えども直ぐに冷える其れの名残惜しさを感じるのもほどほどに、両手の異なる手袋の指先から布を取り外すと傍らに置いて露わになった手を軽くすすぐように。彼から石鹸を貰い受けようと掴んだ矢先、「っ!」指の先の力が少々力みすぎたか直ぐに石鹸が手の内から逃れるよう泥濘を利用して洗面所の丸みを帯びた箇所に滑り落ちてしまい、閊えるような声を溢して暫しの沈黙の後に其れを今度は静かに掬うよう手に取って掴む事に成功すると両の手で挟んで泡立てつつ黙殺をしながら石鹸を元ある桶の元に戻し置いて再び蛇口を捻り。)

  • No.212 by 鶴丸国永  2015-08-30 17:23:26 

(数歩後方から聞こえる不揃いの足音と、正鵠を射られ抵抗を諦めたように大人しく連行される男の気配に思わず口許が緩む。彼が周囲を大切にしているが故に自身を蔑ろにする節がある事、そして其処を突けば此方の手当てを拒否出来ぬ事は長年の付き合いから理解しており。少々狡猾な手段を講じてしまった事を内心にて薄ら自嘲しながらも、懸想云々を脇に置いても手負いの竜を放置しておくほど薄情にも為れず。此処数日の内に幾度聞いた分からぬ科白を噛んで含めるような物言いに、呆れ混じりの笑声を漏らすと、「もう分かり切っている事だろう?君は何度言えば気が済むんだ。」背後の彼へと言葉を返しながら肩越しに視線を送り。彼に対し膨れ上がった愛染は断ち難いもので、あれこれと御節介を焼く様を長年の誼と言い張るには少々不自然になりつつある事は自覚しているものの、今はそれを見て見ぬふりをして。淡泊な悪態も慣れたもの、軽快な笑声で受け流しておき。簀子を置いた渡り廊下を経て、中庭に面した洗面場は囲むように嵌め込まれた硝子窓から射し込む白銀の陽光に明るく、馬当番を終えて本丸の建物内に戻って行く窺い見る事が出来る。褐色の掌へと移った矢先、滑り陶器の流し台へと落ちる楕円状の白い洗浄剤に驚いたように薄ら瞠目の色を浮かべ数秒の間を置き、「おっと、活きが良いなあ!」少々間の抜けた光景は彼にとって居心地の悪いものだろう。相反し、込み上げる笑声を堪えるでも無く快濶と響かせながら、此方も捻った蛇口から出る井戸から曳いた冷水で土汚れを浮かべた泡を洗い流し。棚の竹籠から清潔な手拭を二枚取り出して一つは手首に引っ掛けておき、もう片方の端の方を湿らせると水を止めては軽く絞り水気を切って、疵口の汚れを拭うべく彼の方に身体を向け所作が終わるのを待機。)

  • No.213 by 大倶利伽羅  2015-08-31 06:38:37 

(静かに縁側を踏み締める足音、道中障子が空いた状態の一室の壁に掛けられた時計を盗み見ると既に午二つの時刻。炊事場から漂う昼餉の香りは腹を空かせた胃の中に甘い誘惑として滲むよう響き渡り、掴まえられていない側の手で腹部を僅かに擦って。つくづく彼に弱みを握られていると、唇を一文字に噤んで外側へ視線を逃がした先は晴れ間に覗いた陽光と、その恩恵を受ける花々。唇をついて出た先、思わずして喉奥から出た言葉は撤回出来ぬほどまでに来ている其れの言及に、「いや。俺も結局お前には甘い、…そう思っただけだ。」最早隠すのも億劫、包み隠さず返事をしながら時折態々見返る朝方魅入るほどに向けた含む意図と同じように微かな蜜の入る金の眸に焦点を合わせ。彼に触れた箇所から熱が灯る感覚は彼に知られてはならないと言う決意の元、一度掌を握り込んでもどかしさに奥歯を噛み締め。辿り着いた洗面場は非常に見通しが良く、換気性も整った環境は空気を肺に取り入れるたびに清潔な心地の良い石鹸の香りが漂って感じられ、窓の外からは昼餉の時刻に連れて屋敷内に戻り行く本日当番に当たっていた者たちを目で必然に追い掛けて見送り。手元から逃れるよう滑っていった薬用石鹸に対して茶化すようすが窺える隣へ、「やめろ。」揶揄う言葉に単語で簡素に反抗の牙を向けて。洗面台の横に洗浄剤を置き、捻り出た水へ洗い残しのないように流し。既に設置されている乾いた手拭いに水滴に塗れた手元を拭き、彼の元へ顔を向けると未だに首から下がったままの紐から目の先を辿るは手首。此処まで来ると放っておけと逃げる暇も無く、随分と用意の良い姿へ身体の方向を転換すると片側だけ赤みの帯びた襟足を手で掻きながら、「これでいいんだろう。」諦めの境地に達した溜息を無意識にも吐いて簡単な手当てが施される身構えを示し。)

  • No.214 by 鶴丸国永  2015-09-01 21:31:45 

(刻一刻と近付く真昼時、それに伴って本丸内に漂う鼻腔を擽る香りは肉体労働を為した後の空腹を唆る。部隊の無事の帰還に因る安堵から忘れかけていた空腹を思い出すも、献立の内容に意識を向ける程の余裕は残っておらず、脳内を占めるは引き連れている相手の事ばかり。手を離せども付いて来るだろう事は抵抗の意を失した言動から窺えるものの、引き締まった手首を離さないのは彼に触れていたいが為。背後から送られる同色の眸の糸が絡んだかと思うと淡泊ながらも今迄の押し問答紛いのやり取りを肯定するもので、驚いたように僅かに瞠目為すもすぐに眦を下げ喜色を滲ませて。周囲と距離を置こうとする彼だからこそ、垣間見せる甘さや他に見せぬ表情に自惚れてしまいそうになる。浮足立つような鼓動は歩調よりも速く、漸く顔を正面に向けるも僅かに俯きながら湧き出す温かな感情を噛み締めるかのように空いた側の手を胸元に当て緩く擦り。閑散とした洗面場には、審神者の時代から持ち寄られた石鹸や洗濯洗剤の清潔感のある花の香りが漂っており、手を拭った手拭も水分を含むと共に淡い香りが鼻を掠める。簡潔な拒絶の意にも慣れたもの、堪え切れぬ笑声の余韻を零し自身を落ち着かせるべく上擦った吐息を一つ。手洗いを終えて観念したように此方へと向く相手に満足げに口角を上げつつ僅かに顎を引くと創の無い頬に隻手を添え位置を固定させ、濡れた手拭で創傷部の付近を押さえるように出来る限り弱く拭い。それを終えると自然と距離が縮まっていた事に気付き、途端に高鳴り始める脈動は他には無い恋慕を痛感させる。「唾付けときゃ治る、と聞いたんだが…どうなんだろうな。」唇端の疵を眺めた後に緩慢と目線を上げると、兜割りを成し遂げた刀の発言を引用し冗句交じりの語調にて問い掛けながら、態とらしく頭部の角度を少しばかり横に傾けて。)

  • No.215 by 大倶利伽羅  2015-09-03 00:07:33 

(自分の手首に掴まっている彼の腕から辿り見ると内番装束を身に包んだ和装、襷を器用に施した濃紺に近しい色合いが白に美しく際立っていっとう映えて見える。其処で視線を持ち上げた先、金の眸が柔和に緩められていく過程を見守っていると途端に胸の奥に無理矢理押し込んだ慕情の念が燃えさかるよう湧きゆくのが分かり、胸中に燻る想いの火種は徐々に蔓延って心臓が焼き付けられる感覚の正体は既に掴めてはいるものの存在自体が曖昧に暈けすぎていてはっきりと認知は出来ないまま。完全不燃焼のまま薄く微笑んだように見えた表情を認めると、鼓動の的に瞳と言う名の矢に射抜かれたかと錯覚出来るほどに大きく脈打って。暫し縫うような視線を外せない中で漸く前方を向いた姿から見える晒された項に添う後れ毛は異様に艶めかしく見え、其処で初めて余裕が自分の思っている以上に持ち合わせていない事を改めて認識し。手拭で水滴を纏う手元を拭うと恐らく凝ったのだろう華やかで上品な香りが広がり、やがて自分と彼の間に甘美な空気が纏うように漂い。頬に感じられる温もりに少々驚愕の色を滲ませたのも束の間、直ぐに裂傷部付近に感ず水気に棘が刺さったような痛みを感知して思わず片目瞑り手の方角へ頭頂部を緩く傾け逃れるよう動き、やがて周りの細かい土埃を拭い終えた時。彼の視線の先は恐らく唇の端に予想外にも敵部隊から受けた疵だろう。同時に此方も相手の伏せた儚い睫毛から目を辿るは薄く健康的な色合いに色づいた唇、頬に添われた手の内側から煩いほどに脈打つ恋慕の鼓動は最早どちらのものかわからず。このまま暑さに彼と融け合ってしまいたいと思わせるほど、彼の言葉は余計に魅力的に感じられる。期待に満ちた心がまるで惹かれるようにかんばせを僅かだけ相手の元に寄るも、「さあな。…お前のそれは、誘っているのか。」寸前のところで噛み潰す言葉を何とか喉奥から持ち出しつつ、距離が近かった頭を後方に戻して掴まえられていた龍を纏う側の腕を持ち上げるとその手は彼と対になるよう柔らかな肌に手の内を添え、親指の腹で頬骨辺りを慈しみを含んだ指つきにて撫ぜ擦っては洗面場の外側から手入れ部屋が空いたことを知らせる一振りの短刀が声を張っていて。)

  • No.216 by 鶴丸国永  2015-09-04 20:33:24 

(腕を綾なす昇り竜の尾を手中に捕らえた侭、洗面場へと攫い出す。霊犀のようなものは無い為、背後を歩む彼の胸の内など露知らず。歌人が屡々偲ぶ恋を蛍に譬えるが、此方の心中など相手に透けてしまっているのでは無いかと憂慮する程に、胸の内に秘めたる情炎は大きく燃え盛り身を焦がすかのようで。自らは鉄の塊であり仮初の身体だと理解しているにも関わらず人間の真似事の如く、あろう事か彼に対し執着に似た感情を抱いている事実は受け容れざるを得ない。創は浅いと言えど脆い人の器、掌に押し当てられる頬は引き締まっていながらも滑らかで柔らかく、痛みを耐えるように伏せられた隻側の薄い瞼に因って栗色の睫が下りる。そんな何気無い仕草から目が離せず、まるで彼に触れた掌に心臓が移ったかのように脈打つ感覚は真か否か判別出来ぬものとなり。本来の目的を終えてもなお離れがたい為に今の距離感を保った侭、揶揄交じりに紡ぐ期待を織り交ぜた戯れ言葉を素気無く打ち捨てられる事を視野に入れていた為に想定外の返答に刹那僅かに目を瞠り。一度は更に此方に傾く精悍な面に心拍は跳ね上がり喉許で言葉が詰まり、頬に触れる先程捕らえていた側の掌はつい数刻前まで刀を振るっていたとは思えぬ程に堪らなく穏和で、その懸隔はどうしようもなく胸を締め付ける。締めていた蛇口から水滴の余韻が落ちる音など耳にも入らず、周囲に靄が掛かったような甘美な空間に酔いしれていた矢先に飛び込んで来る若さ漲る声に我に返り。普段なら有難い知らせも今や野暮なもの、微かに当惑の眉を顰めるも彼への返答の代わりに今度は此方から緩慢と距離を縮め。生成り色の手拭に滲む血液や土埃は周囲に付着していたものだろう、其れを持つ腕を下ろし双眸を伏せると唇の横の傷へと唇を触れさせて。心臓の音が相手に聞こえてしまうのではないかと懸念する程の緊張と羞恥は耳の辺りに熱を集めるも、「…驚いたか?」はにかむように口許を緩めると口癖と化した科白を、秘め事を語るかのような声量にて紡ぎ。短刀が此処まで呼びに来るのも時間の問題だろう、名残惜しいものの頬の輪郭を撫で下ろすように手を離し。) さて、お呼びだぜ。ちゃんと綺麗にしてもらってきな。

  • No.217 by 大倶利伽羅  2015-09-05 06:28:45 

(洗面場から見える景色の良い青々とした大地に草を生い茂るほどに其処彼処に伸びた雑草から一輪の可憐な花や三つ葉だらけの集う草木は季節を感じさせるほどに十分で。身体同士向かい合った手を伸ばせば触れられることなど容易い距離感は些かもどかしい、このまま壁際まで追い遣って美しく真白い鳥が容易に腕を抜けてしまわぬように閉じ込めることが出来たらとあられもない醜く貪欲な独占欲が今になって大きく彼へ伸びて顔を出す自分の気持ちに多少なりとも一人でに驚いてしまう。思いのままにいっそ唇を奪い去ってしまえたらと思い至るくらいには、自我が段々と強引で欲深な獣に移り変わりつつある心情に戸惑いを隠せずとも胸を締め付ける心地は彼を前にすると一向に潜んではくれない。簡単にこうして彼に触れさせてくれることには自惚れすら抱いてしまい、薄く自嘲気味に口角が上がり。時刻は残酷にも平等に進み、洗面場の向こう側から元気の漲る短刀の声は変わらず声で此方を誘き寄せていることに時が止まってしまえばと言う答えに辿り着くのは難しく無く。ふいに眼前に伏せた長く眩しい白銀の睫毛と共に影が差したと思った先、怪我を患った口端への柔らかい感触に一瞬だけ驚愕に目を瞠り。頬に添えている手の内側が直接と言うのもあってか徐々に体温が高くなりゆくのが分かり、彼のお決まり文句は何処か背徳感を感じながらも鼓動はこれでもかと大きく脈を打って忙しなく身体中に血が送り込まれる。「…くに、」言い掛けた時に既には洗面場の入口で佇む短刀、あどけない少年を感じさせ、一度目の前の彼に視線を寄越して頬から耳裏へ毛の流れに沿って髪へ指を這わせて最後に襟足を一束摘まんだ後に間があってするりと滑り落とさせ。「ああ、今行く。」足早に異なる手袋を引っ掴んで踵を返すよう洗面場から出て直ぐ其処に存在する空いた手入れ部屋の障子を開け、敷居を跨いで勢いよく閉めた障子の梁に背中を預けながら顔を隻手で覆った後触れた余韻の口端に指先を這わせながら、背をそのまま引き摺るようにして座り込んで大きな溜息を一つ吐くとはにかんだ笑顔を思い浮かべるなり胸を更に締めるそれに軽く眉を顰め。)く、そっ…――あれは、反則だろう…!

  • No.218 by 鶴丸国永  2015-09-05 17:47:04 

(艶のある石材の板を敷き詰めた床や水回りという事もあり、漂う空気は微温い外気と異なり涼やかで心地好い。窓の外には先程迄内番仕事に勤しんでいた畑が見え、明日には料理の一部として食事に並ぶであろう赤や紫など色彩鮮やかな実が瑞々しい緑の葉から見え隠れしており。壁一枚を隔てて酷く現実味の無い清廉な空間に良く通る短刀の声が急かすように響く。それに背中を押されるかの如く、逡巡を捨て去り思い切った行為に及ぶは相半ば衝動的と言っても過言では無い。理由付けしなければ容易く口吸をする事など出来ない曖昧な間柄、故にこの好機を逃す訳にはいかず。驚愕に因り些か丸く瞠った金糸雀色の眸に映るのは自分一人、それが堪らなく独占欲を満たす。然しそれも一時に過ぎず、一つ叶えば更に一つ求めてしまう一度は捨てた強慾さに因ってすぐに渇きを覚え完全に満足する事は無いだろう。彼の唇が己の銘を紡ぐ間も無く、出入り口に姿を現す短刀に否応無く意識は其方へと向かい。胸中に渦巻く憂いと溢れんばかりの慕情に早鐘を打ち生を刻む自身の心拍音、然し少々癪に障る程に平然とした対応を為す彼に眉間に不服の色を滲ませるも刹那、余韻を残すかの如く愛嬌毛を後ろへ送るように耳殻を掠めては首許へと下りる細い指の感触に胸の奥が甘く締め付けられる。足早に洗面場を去る二振りを心此処に在らずとばかりの呆けた面持ちにて眺めるも、障子と柱が勢い良くぶつかり合う小気味良い木の音に時間が動き始め。本能的に起こした行為を思い出したように頬や耳の辺りに熱が灯り、崩れ落ちるかの如く其の場に両膝を抱えるように座り込み。膝の間、土粉に汚れた内番衣装にも構わず顔を埋めながら「っ…なんなんだよ、これ。」何て気弱な声色にて漏らす。唇に残る肌理細やかな皮膚とは異なる鈍く引き攣ったような肌の感触を確かめるように自身の人差し指でなぞり吐息を漏らすと、視界に入る梵字の飾りを隻手に取り面妖な背徳感に苛まれながらも恐る恐る口付けを落とし。彼の仄かな香が残る甘美な空間に毒されるような感覚から逃れるべく、跳ねるように立ち上がると手の内にある二つの手拭を洗濯用の籠に放り込み、行く宛てを定めず無我夢中に駆け出す先は今朝も紛いの逢瀬を果たした廊下。)

  • No.219 by 大倶利伽羅  2015-09-05 22:49:31 

(徐々に遠退く洗面場、短刀と並んで歩いたのも手入れ部屋で道程が終わり。視界の端に見える瑞々しい夏野菜の生った畑は午前の時刻に丁寧に手入れされたものだろうと見て窺えるも、忙しなく踏み入れた部屋が外の世界から切り離してくれるようで障子を閉めた事による薄暗い室内が鼓動を落ち着かせるのには最適に思えて。唇の端に触れたもう一つの柔らかく甘い感触、此方の胸中を更に抉る飾り気のない笑顔は頬や耳元にあとあとから確かな熱を集める理由には十分で、治癒を施す付喪神と自分だけしかいない空間にも拘らず隠すよう俯いている間にも頬の裂傷や口端に残る切り傷は数分もすれば元通りにはなるものの感触だけはいつまでも揺蕩うように留まっているように感じられ、数刻前の洗面場で触れた髪の柔らかさも指先に残っている感覚は拭えずに静かに握り込むと幾らか落ち着いた心情のもと、手の内に手袋を掴んだままに隻手で畳を押し上げ体勢を整えて障子を開けると夏日の厳しい昼刻特有の肌を貫く勢いで降り注ぐ太陽の日射しは傾いているが高い位置にいることには変わりが無く。軒下で作られた廊下の影に身を寄せて食事室を目指して歩行を始め、歩いている最中にも脳裡を占めるのは洗面場での秘めやかなる出来事を鮮明にも思い起こさせ、再び彼に対する自惚れやら期待やらを募らせて山となるやり場のない純粋なる想いは息苦しささえ感じてしまう。ぼんやりとした脳内で悶々とし、道中審神者に“夏祭り”の単語が聞こえ、ろくに話も聞かず上の空に返したことで心配はされるも「あんたには関係ない。」と突っ撥ねつつ審神者とすれ違うようにして歩を進めてはやがてやりきれないと大きく溜息を吐いて俯き気味に傾いていた頭をいざ前方に移した先は食事室に向かった筈が無意識にもいつの間に昨晩話し込み、今朝方刀剣らの目も憚らずに攫い出したことのある逢瀬を幾度なく交わした見覚えのありすぎる廊下に辿り着いてしまうと足を揃えて立ち止まってしまっていて。)

  • No.220 by 鶴丸国永  2015-09-06 07:16:59 

(手拭から漂う掠めるような淡い柔軟剤の香りや鼻腔を擽る相手の香、その甘美なる空間に一時でも長く留まったならば己惚れめいた思考が脳内を占め、間近にある手入れ部屋の薄い障子一枚を開き放つ事すら安易に為してしまう事を憂慮し洗面場を飛び出す。一心不乱に駆ける最中でさえ、脳裡を埋め尽くす蜜色の眼差しや銘を紡ぐ声に身体の奥に植え付けられた火種が疼くような感覚を抱き、きつく瞼を伏せて。前方不注意も甚だしく、曲がり角に差し掛かった所で何者かと正面衝突為し反動に背後へと傾いた身体、咄嗟に踏ん張るよう足裏に力を込めるも虚しく、体勢を戻すかの如く腕を引く力に因って難を逃れる。"鶴丸。…君は全く、廊下を走るなと何度言ったら分かるんだい?"呆れ怒る気力も無いのか深く溜息を吐く雅なる打刀の言葉に恐る恐る両瞼を起こしては困惑に眉尻を下げながら誤魔化すかのような力無い笑みを浮かべ「いや、すまんすまん。ありがとう。―…歌仙、それは?」黒の外套に閑麗な和装を纏うにも関わらず涼し気な面持の彼の隻腕には見事な幾輪もの向日葵。中庭に咲いたものを花器に活ける為に切ったとの科白に、不意に過るは一つの思考と褐色の竜の姿。両の掌を合わせ明日の朝餉の準備を手伝う事と引き換えに、入手出来た玲瓏たる一輪の花の長い茎を彼の持つ花鋏にて切り落とし。用途を問う想定外と言わんばかりの言葉には意味深な微笑を一つ返し、御礼の言葉と共に駆け出して。遠目にある広間からは昼餉の為に刀剣達が徐々に集まり始めており、朝のような和やかな談笑を咲かせているだろう。其れに相反し本能の赴くままに辿り着くは比較的閑散とした廊下で、すっかり短くなった緑の茎を持ち広く丸い日輪草を上の空に眺めていると、背後から近付く床が軋むような足音に反射的にッ花を背中に隠すように振り返り。其処に佇むは想って止まぬ相手、刹那こそ微かな瞠目を為すも先程の感情的な行為を思い出し、気恥ずかしさと気まずさ故に視線を下方へと落とし彷徨わせながらぎこちない笑みを浮かべて。) あー…、なんだ、もう終わったのか?随分と早いじゃないか。

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