名無しさん 2015-03-21 00:23:40 |
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もう忘れたの?昨日言ったじゃないか、「可愛いなって思っても柄じゃないからブスって言っちゃう」って、
(絶対に不貞腐れるだろうと見越していた通り不満を口にする相手にくすりと小さく笑いを零しては、食堂へと向かいがてら悪びれもせずに弁明して。強要される前に自分から可愛いと言って愛でればそれはそれで不気味がるであろうとことくらい目に見えていて、それならばどう褒めれば良いのか分からず眉尻を下げつつも誤解を解こうとしていると、不意に背後から声が掛かり慌てて口を噤んで振り返り。もともと深く慕っていた先輩である上一方的とはいえ抱えていたしがらみが無くなったからか、隣の相手同様人懐こい笑みを浮かべて挨拶を交わし。昔からの間柄ゆえに口を衝いて出てしまった親しげな呼び方を誤魔化しては、相手の言葉に続いて柔らかな笑みを浮かべ付け足しながらもさり気なく牽制して。)
あ、沖田くん…じゃなくて沖田先輩。そう、今日は“二人で”出掛けるんだ。
ごめんね、こいつ私服全然ないから俺が見繕ってやることになってさ。先輩も今度また遊ぼうね。
(いくら弁解を聞こうともその理由はさておき言われた言葉は自分を侮辱するものに他ならず、相手の言葉にふいと顔を背けてしまい。いっそ報復に先輩にわざとくっついて嫉妬のひとつでもさせてやろうかとまで考えたものの、昨晩の自分の提案から自分自身の首を絞めるだけの行為になるということに早々に気付きそれもできず。どうにも解消できないもやもやを抱えていた最中相手の口から恐らくうっかり漏れた様子の親しげな呼称に思わずぴくりと反応すると、先程まで報復など考えていたくせに今度は相手の口から洩れた呼称に少々想いを燻らせ、がばりと相手の肩に腕を回して体を引き寄せながら愛想だけは切らさぬよう心がけつつ先輩に言葉を返すとぱちりとウインクをして見せて。そのまま相手を引き寄せたまま先輩と別れ歩き出すと食堂に入る直前で漸く腕を開放し、少しだけ不機嫌そうに視線を逸らして。)
…人には先輩との仲あーだこーだいうくせに、随分と可愛い顔見せてんじゃん。なんなら俺も"先輩"じゃなく"沖田くん"に戻そっかなー。
わ、ちょっと……また部活で!
(相手が人前で大胆ともとれるような行動を起こすとは夢にも思わず、咄嗟のことに抗えぬまま肩を抱かれて慌てふためき。勝手に話を終わらせて歩き始めた相手に引き摺られるように足をもつれさせながらも先輩に手短に挨拶を済ませれば、強引な相手のペースから抜け出すように今度はしっかりと自分の足で歩みを進めて。不自然なほどの触れ合いを人前でするのは好まない相手が何故急にこのような真似をしたのかがいまいち分からず、解放され相手に呼称について指摘されても依然として不思議そうに瞬きをしていて。ただ一つ気になる点があったため視線を合わそうとしない相手を見つめては、相手の機嫌を損ねた原因をまるで理解できていないという事実を隠しもせずに歯に衣着せぬ物言いで答え。)
何が言いたいのかさっぱりだけど…とりあえず、可愛いのは清光だろ?僕の顔に“可愛い”はちょっと、ないかな。
はあ?化粧もしないでそんなぐりぐりのおっきい目した奴に謙遜されてもムカつくだけなんですけどー。
(食堂に踏み込み、トレーを手に取りそのまま食事の配給される列に並びながら相手の言葉にあからさっまに不満げな声を上げ。さりげなく出た"可愛い"の一言に状況柄うっかり浮かれそうになるのをぐっと堪え自分からすれば謙遜にしか聞こえない相手の発言を非難し。自分が褒められるときに必ずと言っていいほど頭に隠れているだろう"綺麗にしているから"可愛いなどという褒め言葉より、やはり相手のように何も気を遣わずとも元から整った顔立ちに対して結構なコンプレックスがあるようで。だからこそ相手の謙遜が苛ついてしまうのとそんな顔立ちの整った相手が自分以外に容易に笑顔を振りまくのがどうにも複雑なようで、それに伴う複雑な思いから相手に対してきつい態度を取ってしまうと、トレーに朝食を受け取りながらちらりと相手の方に視線を投げかけて。)
…元から可愛い奴に謙遜されて、褒められるのってなんか苛つくんだよ。もし自分が可愛いって自覚なしに言ってるならもっと苛つく。…それで、その自覚なしのままへらへら周りに笑顔振り撒かれんのは、もっともっと苛つく。
目と鼻と口が付いてさえいれば、自分の顔なんてどうだっていいんだけど…わざわざ無愛想に振る舞えって言うの?清光は僕が皆に嫌われればいいと思ってるわけ?
(相手に倣ってトレーを取り朝食を取っていきながら黙って相手の言い分を聞いていたものの、余りに理不尽な言葉の数々に思わず眉をつりあげて。もともと整っているわけではない、化粧をしなければ可愛くないと思っているのは相手だけだというのに、勝手に一人で卑屈になりいつまで経っても周りからの評価を正しく理解しない相手にほとほと呆れ果ててしまい、受け取った御菜の小鉢を乱暴にトレーに乗せればちくちくと言い返して。そもそも自分は相手のように“可愛い”という褒め言葉に喜びを見出せる性分ではないため、なおのこと相手の苛つきはお門違いのように思えてならないのだが、それを口にしては絶対に相手の地雷を踏み抜くことまず間違いないのですんでのところで飲み込んで。デートの日の朝までこんな些細なことで口喧嘩などしたくはないのについ言い返してしまう自分にも嫌気がさしてきて、朝食を全て受け取り空いている席に座れば急に心もとなげな表情を浮かべてぽつりと零して。)
……化粧をしていない清光の顔だって好きだし、可愛いって思ってる。僕が好きなものを、お前が嫌うなよ。
ッちが、そういうこと言いたいんじゃなくて!
(そもそも相手に因縁を吹っ掛けたのは自分の方なのだが好いている相手があからさまに不機嫌さを表にだし物を乱暴に扱う様というのは少々恐怖を煽るものがあり、慣れた相手の棘を含んだ反論よりその態度に僅かに怯えの色を瞳に移しながらも上っ面だけは気丈に振る舞い言い返し。相手が誰にも不愛想でいればいいなんて自分本位な考えで縛るつもりはないものの、相手が自分と先輩の仲を気にするように自分とて同じだけ親しくしていた相手と先輩の仲は他とは違うと感じており、だからこそ感じる危機感からどうにも先程のやり取りを見過ごすことが出来なくて。食事をトレーに受けとり、相手の向かい側に腰を下ろしながら相手が零した言葉に視線をそっと落とせばあまり裕福とは言えなかった自分の家庭の関係からか生じてしまった自身の価値観をそっと語りだして。)
それは…恋した欲目とか、含めてでしょ。もし俺がきったない身なりしてたら、同じこと言える?…汚いと、誰も近寄って来ないの。それって元がそうでもないからでしょ?川の下の子、河原の子ってね。今はそうでもないけど、うち昔貧乏だったからさ。素でも可愛いとか言われても、正直安定の言葉でもあんまり響いて来ないよ。
……難しいことなんてわからない。何と言われようが僕はお前の顔が好きだし、それ以前に上っ面だけでお前を好きになったんじゃない。くそ面倒くさいところとか、優しいところとか、努力するところとか全部含めて好きなんだ。
(相手の紡いだ言葉に自分なんかが軽々しく口出ししていいことではなかったのだと思い知らされ、自らの浅はかさに一抹の羞恥すら感じて俯き唇を噛み締めて。自分の本心からの言葉ですら相手には届かなかったのだと思うと、頭の後ろを殴られたような衝撃と同時に突然足元が揺らいで無くなってしまったかのような大きな不安に駆られて。寂しさにも心細さにも似た感情にくしゃりと表情を歪めては、それでも顔を上げて相手を正面から見据えながら少しでも伝わればいいという一心で拙いながらに言葉を並べ。これからますます相手と深い関係になっていくのならば遅かれ早かれこの話題になっていただろうと思うと適当なその場しのぎで済ませる気には到底なれず、しかし本音をぶつけたところでまた相手の心に響かなかったらという不安のため自ずと縋るような、頼りなく弱々しい声が出て。)
汚い身なりのお前に会ったことなんてないし所詮結果論だけど…それでも、どんな見た目の清光でも僕は絶対好きになってたよ。それじゃいけないの?
…お前の気持ちを疑ったりとか、軽く見てるわけじゃないよ。そうじゃないんだけど、さ…やっぱり可愛いって言われてないと不安だし、お前が他の奴に好かれるのも不安になる。俺以外に愛想よくするなとか、安定が俺以外から嫌われればなんて思ってないけど…自信がないから、自分も繕ってたいし安定にあんまり何処でも笑顔振り撒いたりしてほしくないよ。
(可愛くしていないと相手に嫌われる、なんて悲劇のヒロインみたいな考えを抱いている訳じゃないけれど、それでもやはり取り繕っていないと不安になってしまうのも事実で。そんな不安と元々顔の良い相手が自分との蟠りの解消により先程の先輩に対しての反応のように色々な方面に愛想を振りまいてしまう事への危惧が重なり、自分でも"重い"と感じてしまうほどの言葉を口にしてしまい。たった一日でまるで面倒くさい彼女のような考えを持つようになってしまった自分を自嘲するように思わず苦笑を浮かべると「…ごめん、朝から暗くした。早く食べて出かけよ?」どうにか自分が暗くしてしまった空気を元の軽さに戻そうと声を掛け。手を合わせ頂きます、なんて挨拶を口にしてから食事を始めるものの、やはりそう簡単に気持ちを切り替えられるほど自分の中でも軽い話題ではなかったのか依然として少しだけ沈んだ表情のままもそもそと口を動かしていて。)
先輩に愛想良く振る舞えたのは、その、お前が好きなのは先輩じゃなくて僕なんだって知って心に余裕ができたからで…これからは気をつける。それに、昨日も言ったけど着飾るなって言ってるわけじゃないよ。お前が可愛くありたいって思う理由が僕だとしたら、それは嬉しいし。
(想いが通じ合う前の、愛想が良く人懐こい性格ゆえに相手が誰かの物になってしまうのではと焦燥感に苛まれていた自分と目の前で不安を口にする相手が余りにも似ていたため、ようやく先ほどの呼称の指摘の理由を理解して得心が行き。本来ならばプライドゆえに絶対に言いたくない本音ではあるが、相手に不安があるのならば少しでも取り除きたいという気持ちがプライドに勝り、相手に想われているのは自分だという優越感のためにいつもよりも愛想が良かったことを明かして。容姿の問題は何も知らない自分が何か言ったところで相手を傷つけるだけだろうと悟り、静かに肯定すればそれ以上は何も言わずに相手同様食事を始めて。やけに味気なく感じられ数口食べたきり箸が思うように進まず、終いにはトレーに置いて手を膝元に下ろし深く俯いて。昔から相手が居てくれないとついつい湿っぽくなりがちである性格が災いしてか、情けなくもじんわりと目元に溜まってきた涙を相手に見られる前にごしごしと拭って。自業自得な上にみっともないとは分かっていながらも未だに心細さが拭い切れず、ぐずつく鼻を啜ればゆっくりと言葉を紡ぎ。)
──僕が無神経なこと言ったせいだって分かってるけど、不快にさせたなら謝るから…いらつくとか、響いて来ないとか、寂しいこと言わないでよ。好きな人に突き放されるのがこんなに怖いなんて…知らなかった。
…やーだ。これからも言いたいことは言うよ、言わなきゃお前分かってくんないじゃん。
(自分の言葉に傷つき涙を浮かべた相手に流石に動揺したのか手にしていた箸を落としかけるものの、手から零れ落ちてしまう前にそれをトレーの上に置くと深く息をついてから相手をじっと見つめて。こんな時普通の恋人同士なら自分の言葉に傷ついた愛しい人を慰めて、もう酷いことは言わないと約束するのが正解だろう。そう分かったうえで弱々しい相手の願いを酷く軽い口調で突っぱねると目を細め、静かに相手の方に手を伸ばして。慰めで誤魔化したって自分の中に根付いた考え方は変わらないし、これきり相手を傷つけないなんて約束は端から出来るなどと思っておらず、だからこそ"普通の恋人同士"の使うその場しのぎの慰めをこの先もずっと一緒に居たいと願う相手に向けたくはなくて。伸ばした手で手入れが行き届いていないせいか少しぱさついた相手の髪を撫でながら真っ直ぐに相手を見つめると、静かに言葉を続けて。)
いくら好きでもさ、俺とお前は別の人間じゃん。だから、言いたいことは言って、どんな気持ちも伝えていよ。怖がらせてでも、分かってほしい。怖かったならその分愛してあげるし、いつだって撫でてあげるから…俺の気持ち、ちゃんと受け取って。お前の言葉を受け取れない癖にこんなこと言うの、おかしいかもしれないけどさ。我儘だって自覚してるけど、響かないから響くまでお前の言葉を聞かせてほしいし、"怖い"と思っても俺の気持ちを拒否して欲しくない。――傷つけるから我慢して、怖いから聞かないなんて、そんなの今までみたいなすれ違いを繰り返すだけだって思うから。
……恋人になれて、味を占めたからかな。愛想尽かされるんじゃないかって思ったら、些細な一言が急に怖くなったんだ。いつもいつも無神経なこと言って清光を傷つけてばっかだし、お前の欲しい時に欲しい言葉をやれなくて、全部裏目に出て……自分で自分が情けなくなる。
(相手の零した溜息に思わず目を固く瞑り身構えるも、頭にのせられた手の心地に体の強張りを解いて恐々目を開け顔を上げて。かち合った視線を外せず相手の瞳を見つめたままその言葉の数々を聞いているうちに、我が身可愛さと臆病ゆえに向き合うべきことから逃げようとした自分と違っていかに相手がお互いのためを思っていたかに気づかされ。もう一度強く目を擦った後真っ直ぐ相手の目を見つめれば、少々自嘲気味な苦笑を浮かべて心の内を零し。後悔するくらいならばはじめから素直に“可愛い”と口にすればいいのだが、分かっていながらも照れくささから意地を張ってしまうのは悪癖以外の何物でもなく。それでも反省したところで次に繋げなければ意味がないことは痛いほど分かっているため、からかいではなく心からの言葉を相手に贈れるよう少しずつ変わっていこうと決めて。相手自身とて嘘や偽りの優しさで塗り固めたほうが楽なはずなのに、敢えてそうはしないでいてくれたことに感謝せずには居られず。先ほどまでとは打って変わってしっかりとした声で切り出したかと思えばどうやら始めだけだったようで、次第に無くなってきた自信に比例して声も小さくなっていき。最後に妙にあらたまった口調で締めくくれば、ぺこりと深く頭を下げてからおずおずと相手の反応を窺って。)
これからもたくさん間違えるかもしれないけど、もう逃げたくないから、甘やかさないで今日みたいに叱って。…あと、もう少し素直になれるように頑張ってみるよ。ちょっと難しいけど。──全然だめな彼氏だけど、見捨てないでください。
――だめなのはお互い様だろ。俺こそお前に見捨てられないか不安だし…少しずつさ、一緒に変わっていけたらー、なんて思うんだけど。…どう、かな?
(まるで相手ばかりが不足しているかのようなその言葉に少しだけ居心地が悪そうに苦笑しながら首を振ると息をつき。偉そうに言ってしまった手前何となく気まずさを感じつつ、自分にとっての欠点、それこそ自分の生い立ちから未だに引きずる劣等感やちょっとしたことでも相手を疑ってしまう程の自信の欠如、そのことを指してか僅かに瞳を揺らしながら言葉を続けて。相手が言葉を次第に小さくしていったように、此方も段々と先程までの勢いをなくしていき。最後には半ば相手にお願いするような状態になりながら相手の様子を窺うと、緩く首を傾げて。)
うん、わかった。これから一緒に変わっていこう。
(控えめに此方の様子を窺う仕草から今この瞬間不安なのは相手も同じなのだと十分に伝わり、目元を緩めて綻ぶように笑みつつ相手の申し出に応じて。おもむろに相手の頭に手を伸ばして軽く撫ぜながら「さっきのお返し」と小声で囁けば、その手を下ろして箸を持ち中断していた食事を再開し。先ほどの味気なさから一変して美味しく感じてしまうあたり我ながら現金なものだと呆れつつも、早速今日のデートで少しは反省を活かせるよう神妙な面持ちで考え事をしながら御菜の小鉢をつついて。)
…ふふ、ありがと。
(自分が相手の不安を察したように相手も自分の不安に気付いてくれたのか、そんな想いを解きほぐすように施された頭への柔らかな接触はじわりと胸の中に温かなものを広げていき。ほわんと体中に巡るようにして伝わる"嬉しい"という想いに自然に頬が緩んでいき、少しだけ照れくさそうにしつつも優しい笑みを浮かべながら呟くと自分も食事を進め。先ほどまでは食べるのが辛いと感じてしまうほど重かった空気が軽くなったからか、早く食べてしまって相手と出かけたい、なんて願望が先行していってしまい。そんな思いがあったからかいつもより少しだけ食事を早く終え、ちらりと相手の方を見ると僅かにそわそわと落ち着きのない様子を滲ませながら相手の食事が終わるのを待って。)
──ご馳走様でした。
(今日一日をどう過ごすかあれこれ考えを巡らせるうちにますます楽しみになってきたのか、食べるペースを早めて間も無く完食すれば手を合わせ。ふと相手を見ると何処と無くそわそわしているのがその様子から伝わってきて、思わずくすりと笑いを零してから相手と自分のトレーを返却口に返すべく席を立ち。返却を済ませれば真っ直ぐ相手の元に戻り、気が急いでいるのは自分も同じであるからか照れ笑いを浮かべながら声をかけて。)
…お待たせ。
ッそれさあ…ほんと、狙ってやってんの…?
(さらりと自分のトレーまで一緒に返却しに行ってしまう相手の行動は小さな事かもしれないが何だか大事にしてもらっているような、ちょっとした優越感があって。こんなことでさえその行動の内容以上に嬉しくなってしまう自分を引き締める様に相手が戻る前にぺち、と頬を叩いてからこちらに向かってきた相手を迎えるものの、あくまでスマートに礼でも行って出発しようと考えていた自分の考えを吹き飛ばすような相手の笑顔に思わずじわじわと頬を染めて。デートを相手も楽しみにしていてくれたのだろう、照れたような笑顔にそれを理解させられ何とも言葉にしがたい擽ったさにも似たような気持ちになると薄く色づいた頬を両手で押さえながら言葉を続け。)
…すっごい、楽しみにしてますって顔してる。そわそわしてた俺が人のこと言えないけどさあ…なんか、気恥ずかしいっていうか。…嬉しいんだけど、照れくさくなる、よ。
……はあ!?してない、いや、たしかに楽しみだけどそんな顔してない!お前みたいに顔に出てないし!
(自分としては隠せているつもりだったため、図星の指摘を受ければ一瞬ぼんやりと間抜けな表情を晒した後大慌てで否定して。思うように格好がつかなかったことで相手につられて赤面しては、どうやら緩んでしまっていたらしい自分の頬を両手で思い切りはたいて、うっすらと跡のついた顔を顰めながら「これで良し」と呟き。少しだけ気持ちを落ち着かせてからあらためて相手を見れば、その可愛らしさにときめけば良いのか、そんな相手の可愛らしさを不特定多数の目に晒している状況に危機感を感じれば良いのか分からず。ともかく早く食堂を出ようと他人の目がある手前手は繋がずに相手の袖口を掴めば、短く告げた後そのまま引っ張るようにして寮を目指して。)
ほら、行くよ。
いやいや、良くないだろ!もうちょい可愛げのある誤魔化し方しろよ、いくらなんでも男らしすぎるだろ!?
(自分自身少し顔に出ていたかも、程度には思っていたが自分が相手を見て分かったように相手にも自分の浮足立った様子が丸わかりだったことを思い知らされれば気まずそうに視線を逸らしながら小さく唸り。そうして相手から目を外した隙に聞こえた何かを叩いたような音に視線を戻せば可愛い顔についた手形と思しき後に焦ったような声を上げ。相手は気にせずとも何だかんだで相手の顔が好きな自分にとっては大きな問題で、それに対して抗議をし。そんな自分にお構いなしに袖口を引っ張り寮へと歩みを進める相手に少し戸惑ってから、後を追う形から横に並ぶよう歩調を速めると少し落ち着いて余裕が出てきたのかにっと悪戯っぽく笑みを浮かべながら相手の顔を覗き込んで。)
…デート、楽しみにしてたんだ?昨日はそんな感じ見せないでちゃっちゃと寝てたのに、意外ー。
僕に可愛げ求めてどうするんだよ。可愛いのは清光一人で十分。
(どんぐり眼に泣きぼくろというお世辞にも“格好良い”という言葉が似合うとは言えない容姿ゆえに男らしいと評されることに慣れていない上、それが好きな相手に言われたとなれば殊更嬉しいため相手の小言を聞き流しながらも口元が緩むのを抑えられず誤魔化すために下唇を軽く噛みしめ。横に並んだ相手にからかわれれば悔しそうに口を噤むも全て事実であるがゆえに反論できず、それならばと周囲の他の生徒らにちらりと遣った視線を相手に戻し袖口を掴んでいた手をパッと離して。そのまま人差し指を自らの唇に当て仕返しだと言いたげにせせら笑えば、人目を盗んでその指先を相手の唇に押し当てながら小声で言い返して。)
それ以上言うのなら、今この場で口塞がれるか首落とされるか…好きな方選ばせてやるけど。
――なら、口塞いでもらおっかな?
(やっといつもの調子を取り戻しかけた自分を再び混乱に落とし込む様な相手の発言に僅かに瞳を揺らしながら唇に押し当てられた指の感触を感じていて。ついさっきまで相手をからかっていた自分が言えたことじゃないが何となく相手の言葉が調子に乗っているように感じて負けたような気分になったのか、少しだけむっと唇を尖らせたあと、ふっと鼻で笑ってから返事を口にすると唇に当てた相手の手を軽く払い。早めに食堂を出たお蔭か廊下に人気が少なかったのを利用し相手の服の胸倉を強引に引き寄せるとそのままほんの一瞬だけ相手の唇に自分の唇を重ね。「…ふふ、安定の癖に調子乗ったお仕置きー。」いくら人気がないと言えどいつ人が通るか分からないこともあってかすぐに相手の胸倉を離し距離を取ると、先行するように歩みを進めながら不意に振り返り自分の唇に人差し指を当てながら悪戯っぽく笑み呟くと相手を置いてさっさと寮に向かい歩調を速めて。相手の裏をかいてやったつもりだったが、後から段々恥ずかしさが襲ってきてしまい自分からした癖に赤くなっていく顔を相手に悟られないようそのまま部屋へと向かって。)
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