アーテル 2015-03-14 01:28:24 |
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今朝は朝から冷や汗をかいてしまった。
今日もアルブスと森へ採集へ行ったのだが、途中でアルブスとはぐれてしまったのだ。
更に、アルブスはよりによってヴォジャノーイと遭遇してしまったらしい。
幸いすぐに見つかり、そのヴォジャノーイが顔見知りで無害だったからよかった物の…思い出すのも嫌になる。
良い機会だった為、近隣の水辺を任せる事にした。
アルブスがまた迷い込んでしまったら笑えない。
森の中であればまだ助けにいけるが、水中で呼吸する魔法を習得していないあの子が水中に連れて行かれたら助かる確率は低い。
今回の一番の問題は私の不注意だ。情けない。
ヴォジャノーイは水辺に住む水の精だ。
よく言われるのはカエルの姿、なんて言われるが、私の知り合いのヴォジャノーイはよく美男子に化けている。
美しい物を好むようで、更にあのヴォジャノーイは美的感覚が人間に近いらしい。
人間が増えてきた影響だろうか。
昔はカエルの姿だったような気がしなくもない。大昔の事だ、よく覚えていないが。
よく知られるヴォジャノーイはルサールカという妻がいるが、あのヴォジャノーイに妻と呼べる者はいない。
それを踏まえてアルブスが気に入った、なんていう物だからきつく釘を刺しておいた。
ルサールカを召喚してやるのも手かもしれない。
というか確かあの近辺にルサールカはいたはずだ。何故妻にしないのか、精の考える事はよく分からない。
今日の魔法練習も昨日に引き続き浮遊魔法にした。
そう簡単に行く物でもないが、アルブスは必至に練習していた。
きっと早く空を飛びたいのだろう。
だが焦るあまり手に力が入りすぎていた。
何度注意しても爪の痕がつく程に杖を握りしめるアルブスは、見ていてほほえましかった。
あれほど必死になってくれると教えている側も嬉しい物だ。
素敵な日常ですね、アルブスちゃんもアーテル様も素晴らしい方だな…って思って毎日読ませて頂いてます!
ヴォジャノーイって美男子になるのですね…素敵だろうな。調べてみたらウンディーネと同じ水の精とされていましたが、ウンディーネ等の精も拝見された事はありますか?
あ…いきなりコメントしてすみません、ご迷惑じゃなければお話したいな…等と思いまして。
あぁ、大丈夫だ。むしろ反応が来て嬉しいとも思っているよ。
今日はあまり長くはいられないかもしれないが、是非話相手になって欲しい。
素敵な日常か、ありがとう。暮らしている私でも素敵だと実感しているよ。
ウンディーネか…。今はこうしてアルブスと共に森の中の家に腰を置いているが、昔旅をしていた時期があってな。その時期にウンディーネと知り合った事ならあるな。
四精霊では、会った事が無いのはサラマンダーくらいだろうか。
良かった、怒っていらっしゃらなくて安心しました。私は日本に住む普通の社会人でして、仕事もあり余り居れないのは私も同じです。
私も魔法なんて使えたら…なんて学生の時思っていた事を思い出して、実際に魔法使いのお話を聞けて本当に素晴らしく毎日充実するだろうな…等と思って見させて頂いてました!
森に棲む私達の日常では幻とされている様々な生き物も御目にされた事もあるのでしょうね、ウンディーネにも…四精霊は本当に居たのですね!
旅をされていたとは…人間では成し得ない、とても過酷でとても得る物の多い旅だったのかな…等と勝手に想像致しました。
仕事か…きっとそちらとこちらでは、仕事内容も全く違ってくるのだろうな。
どちらにせよ労働で賃金を得るのは同じだろう、互いに頑張るとしよう。
無い物に憧れるのは、どこでも共通のようだな。人間が魔法を求めるように、魔法使いも化学を求めていた時期があったんだ。それも昔の事だがな。
あぁ、この世にはまだまだ多くの生物がいるのだろうな。それこそ、私が見えない物もたくさん存在するのだろうと考えると、多少の物が見えてしまう分欲が出てきてしまうな。
見えないだけで確かに存在する物もこの世には多い。たまには、意識してみたらどうだろう。
もしかしたら人間にも見えるかもしれないだろう?絶対なんて物は無いのだから。
あぁ、旅は確かに苛酷だったな。そしてその通り、得る物も多かった。
実はアルブスも、その旅の途中に出会った子だからな。
私とした事が、明日の仕事の準備を忘れていたようだ。
暫くしたら戻ってくるが、明日も忙しいなら今日は寝た方が良いだろう。
短い間だったが、やはり人と語り合うのは楽しい物だな。
今日はありがとう。また次の機会、休みの日にでも話し相手になってくれたら嬉しいのだが…。
期待して待っている。
では、良い夜を。おやすみ、ミント。
今日は良い事が一つと、悪い事が二つあった。
まず良い事は、アルブスが浮遊魔法を使えるようになった。
まだ鴉の羽や葉しか浮かせられないが、あの子のやる気ならきっとすぐに上達するだろう。あの子はセンスも良い。
悪い事の一つ目は、神父の使いのフクロウが窓を突き破って入室、アルブスがはしゃぎまわり、一人と一匹のおかげで半分近くの材料瓶が割れてしまった。
幸いアルブスには怪我が無かった。暫く泣いていたせいで目元が赤く腫れてしまったが、明日には直っているだろう。
材料の瓶は魔法ですぐに戻し、材料も戻したが、やはりもう無駄になってしまった物も多々ある。
また集めにいかなければいけないだろう。
悪い事の二つ目は、神父からの仕事の依頼内容だ。
フクロウが突然やってきた為、もしやと思い機械の中を確認したら、やはり数日前に届いていた。
今回の仕事はどうやら火山でやるらしい。
仕事内容については特に問題ないのだが、問題は私が仕事の間アルブスをどうしようか、という事だ。
長くて一週間、急いでも三日はかかる。村に預けて良いのだろうか。
悩みどころだ。
依頼を受けないという手もあるが、今は出来るだけ金を集めたい。
アルブスには年相応に、女の子らしく洋服でも買ってあげたい。子供らしく玩具も必要だろう。
一人でも練習できるよう初心者用の魔法指南本も買ってあげたいし、ローブも買わなければ。
あとは、人間の持つ電話という物が欲しい。
これがあれば遠くにいても一瞬でアルブスと連絡が取れる。この機械では文字のみだが、声までも送れるという。
この機械は連絡手段として神父に貰った物だが、重宝している。どうせなら電話もくれればよかったものを。
今のように人間と触れ合える、色々な事を調べる事も出来、一瞬にしてやり取りができる。
何より、文字盤を押す感触がたまらないな。
まだまだ文字を打つ速度は遅いが、病みつきになりそうだ。
あとは、洗濯機という物もほしい。
人間の作るスイッチは、とても押す感触が気持ちよさそうだ。
しかも、そのスイッチを押すだけで全ての作業が完了するとは、素晴らしい。
私達は洗濯も魔法でやるが、実質魔法を使っているのは私だからな。
何の手も加えず、スイッチ一つで、というのは、酷く魅力的だ。
仕事の材料もほしい所だ。
種類もそうだが量も増えてきている為に、圧倒的に瓶の数が少ない。
材料類はなるべく自分で集めたいのだが、アルブスがいる手前そう簡単にいく事でもない。
薬の依頼にせよ、材料に見合った報酬を毎回貰えたら助かるのだが。
考えれば考えるほど欲しい物が浮かぶが、金が少なすぎる。
あの時、あの馬鹿な精霊が存在しなければ、アルブスに家を買うくらいも出来ただろうに。
今日は風が強いからだろうか、忌々しいアレを思い出す。
昼食を作っている時、アルブスに母親みたいだと言われた。
この長い髪のせいだろう。神父にも女のようだと言われた事はある。髪を結べば尚更だ、と。
アッチの方面でも仕事ができるのでは、などとふざけた事をぬかしていた為、余計なお世話だと折檻しておいた。
この髪を切れば、せめて父親と言われるようになるだろうか。
注文していた竜皮の手袋がようやく届いた。
黒く輝き、滑らかで柔らかく丈夫で、軽くて薄い。素晴らしい。
今までは鱗製だったが、これはなんといっても皮だ。作業もうんと楽になるだろう。
さっそく使ってみる事にしよう。
結局依頼は受ける事にした。日はまだ先だが、色々と準備する事が多そうだ。
とりあえずアルブスの事は村の人々に任せる事にした。
危険が無いよう杖を取り上げておくべきか否か、悩んでいる。
アルブスと喧嘩をした。
何もかもが神父のせいだ。腐れ神父め、神から罰を受けるがいい。
神父が勝手に送ってきた卵をアルブスが気に入ってしまった。
よりによって水竜の卵だ。一体何処で育てるつもりだ?
この森には泉も湖も無い、一週間もすれば風呂にすらはまらなくなり、一か月もすれば家にすらはまらなくなる。
普段は全然我儘を言わないアルブスだ、できるだけ聞いて行きたいとは思う。
だが、さすがに水竜は無理なのだ。
人の手で育てた水竜を大人になってから湖に移動させても生きていけるかもわからない。
生き物の命を奪う事になるかもしれない。
無理をすれば、訓練をさせれば間接的に育てていく事はできるが、水竜の為にそこまでする必要があるか?
アルブスはまた大泣きだ。キツく言い過ぎたかもしれんが、間違えた事は言っていない。
未練が残る前に神父に送り返すのが一番だろう。
アルブスの部屋に戸締りの確認ついでに寄った時、アルブスが毛布もかけないで寝ていた。
目元が赤く腫れているのが痛々しい。きっと泣き疲れてそのまま眠ってしまったのだろう。
私はどうするべきなのだろうか。
アルブスの為に、水竜を育てるべきか?
生き物の命を担う仕事を、そのような軽い想いで行って良いのか?
神の下跪いたなら、この状況を解決してくれるのだろうか。
確認の出来ぬ存在に頼るつもりなどさらさらないが。
まだ怪しげな魔法書や殺傷能力の高いとされる機械を捌いている、神の僕を名乗る強欲な男に頼る方が現実的だろう。
神父に久々に会いに行くとしようか。気乗りはしないが、仕方ない。
水竜について、神父と話し合っている途中だ。
私だけが相手だと全て押し付けようとするが、アルブスも関わるとなると進んで協力すらしてくる神父には感謝している。
厄介事を持ってきたのはまた別の話だが。
神父はああ見えて頭が良く回り、色々と精通している。何か良い解決法を見つけてくれればいいのだが。
なんとか解決した。アルブスとも喧嘩は収まった。
神父の所有している鉄の土地を私の魔力で小さな森に変え、湖を作り、人が近寄らぬよう人払いの魔法をかけた。
おかげでもう魔力が残っていない。正直、辛い。
育てるのは私達ではないが、いつでも遊びにきていいという事でアルブスは喜んでいた。
アルブスは私に謝った。本当に優しく賢く、そして良い子だ。
私はアルブスを幸せにしてやれているのだろうか。
今日は酷く疲れた。もう寝るとしよう。
呪文の発音にアルブスが手間取っている。
アルブスは良く「ティーラ」を「ティラー」と言い、「ヴァラー」を「ヴァーラ」と言う。
「フィーネ」を「フィネー」と言ったり「フィーネ」とかろうじて言ったり、時には「フィナー」なんて言ったりもする。
発音が難しいのだろうか。
アルブスが苛ついているのが伝わってくるが、こればかりはどうしようもできない。
明日は発音練習でもしてみるとしようか。
発音練習をしてみた。
偶然、神父が言うには「偶然」魔法練習の時間に立ち寄った為、神父にも見てもらった。
発音云々は置いても、やはりアルブスの魔力は多いらしい。
今はまだ大丈夫だが、年が経つとどうなるかも分からない。
早めに制御具についても検討するとしようか。
発音については頑張っている。
一度覚えれば大丈夫らしい。これから努力していくとしよう。
アルブスが「箒に乗って空に飛べばいいのでは」という事に気付いてしまったらしい。
箒に乗って空に飛ぶのは自分を浮遊させるよりもずっと簡単な事だ。
更に、箒に私の魔法をかけてサポートする事もできる。
だが、アルブスはまだ小さい。
神父は心配しすぎと言うが、私は保護者だ。心配にもなるだろう。
神父は自分の育てる子、しかも女の子が大空を飛びまわる事を考える機会が一生ないだろう。羨ましい限りだ。残念でもあるがな。
アルブスがやりたいと思った事はやらせてあげたいし、早めに色々と覚えさせたい。
小さい頃から慣れていた方が良い事も事実だ。
だが、やはり心配なのだ。
いつからこんなに過保護になってしまったのだろう。
今日はアルブスに服を作ってあげた。
神父に手伝いを頼むとああでもない、こうでもないと言われ続け、最終的にはセンスが無いと罵られた。
神父からは下品な服を渡されたが燃やしておいた。胸元と背中が広く開いている服で、アルブスには大きすぎる。そして早すぎる。
いや、成長してもあんなものを着せるつもりは無いが。
アルブスは私が作ったのを気にいってくれたらしい。本当によかった。
下品な服を燃やしておいて見られずにすんだ。それも本当によかった。
後日その服を着せて町へ連れて行こうと思う。
あぁ、誰だか知らないが心配ありがとう。大丈夫だ。
昨日の魔力使いすぎで今日は不調だった。
アルブスは箒に乗りたがったが、さすがに私がこの体調ではいざという時が不安な為防御魔法の練習をした。
合わせて浮遊練習もしているが、それに比べて防御魔法は得意らしい。
数回練習しただけで大分強度のある防御壁を張れるようになった。
防御魔法を覚えてくれるのは大分助かるし、安心する。
今日はこれから昨日の分の仕事までしなければ。
ふと思ったのだが、他の魔法使いも機械を使用しているのだろうか。
少なくとも私の知る所では私以外にいないのだが。
もし機械を使う魔法使いが少ないのであれば、少し優越感のような物を感じてしまうな。
化学を知らない魔法使いがまだ多くいるのも事実だろうが。
裏切り者などと罵られそうだが、それも古い考えに固執している一部の魔法使いだけだろう。
魔法界の事情も変わってきているし、もちろん魔法使いの考え方も変わってきている。
保守派やら変革派やら、今はまだ小さな争いだが、いつか大きな争いにならないか心配だ。
心配しすぎだろうか。
アルブスの保護者になってから変に考えすぎるようになってしまったようだ。
急いで三日などと言っていたが、四日かかってしまった。
昨日、今日で任務の仕上げをしていた。
今回の任務は思っていた程苦でも無かった。
サラマンダーの機嫌が良かったのかもしれないな。火の被害に極力合わずにすんだ。
新調したローブは死守したが、やはり靴が少し焦げてしまった。
直してはおいたが、やはり炎は厄介だな。風に比べるとマシだが。
アルブスは私が村へ迎えにいった途端泣き出してしまうという事があったが、どうやら私がいなくて心細かったらしい。
あの時はこちらも戸惑って村の連中に笑われたが、今になって思い返すと抱きしめるくらいはしてやればよかったと思う。
泣きじゃくるアルブスの世話をしてくれた村の連中には感謝しきれない。
アルブスがくれた花は大切に保管している。
数年は枯れないように保存魔法でもかけようと思ったが、さすがに花に悪いと思いとどまった。
神父への報告を終えたら少し休むとしよう。
あぁ、そういえば書き忘れたが、私の留守中にアルブスが新たな魔法を使えるようになったらしい。
どうも怪我をした村の子供に治癒魔法を使ったそうだ。
アルブスの自覚が無かったという事は、詠唱破棄だろうか。
興味深い、が、共に不安や心配も募る。
大丈夫だとは思うが、これも含め神父に報告するとしよう。
寝過ごしてしまった…
アルブスは私が疲れて眠っているのを知っているからか、空腹を我慢して起こさずにいてくれたらしい。
急いで夕飯を作ったが、満足してくれたようで何よりだ。
時間が時間だった為、今日の魔法訓練は無しになった。
アルブスは好奇心が強いが、私の仕事内容にも興味を持っているらしい。
任務の方は危ないが、薬の調合くらいならば少しずつ教えていくのも有りではないだろうか。
私はコーヒー派だが、神父は紅茶派だ。
度々くだらない事がきっかけで言い合いになるのだが、今日はそれで軽い討論になった。冗談の一貫な為本気ではない、オアソビだが。
今日はなんと、アルブスがジュース派として参入してきた。
今日の所はジュース派が勝ちで終わったが、オマケで神父のティーポットの中身をコーヒーに変えてきた。
アルブスの杖を折ってしまった。
いや、正確には私の昔の練習用のお下がりだったのだが、やはり古い為強度が足りないらしい。
手本として私が杖を振った途端に杖の欠片が飛んだ。
アルブスに怪我が無くてよかった。
それにしても、あの杖を振る感触が懐かしくてつい感傷に浸ってしまった。
もうどれくらい前かも覚えていないが、大変ながらも楽しかったな。
私は今のアルブスと同じように師となる方から学んだが、魔法界には学校なんて物もある。
アルブスに与えている初心者用の魔法書も、そこの所謂教科書だ。
そんな事よりも、早々に杖を買わなければ。
明日にでも買ってくるとしよう。
今日は神父が吸血鬼の任務について報告しにきたが、何故あんなにも邪見にするのだろうか。
吸血鬼は魔法使いの血を人間の血よりも好まない。だから安心していられるのだと神父に言われた。
だが、吸血鬼も悪ばかりではない。
人間や魔法使いが悪ばかりではないのと同じで、善良な吸血鬼も存在する。
攻撃魔法を乱射する魔法使いがいるように、科学の力を暴発させる人間がいるように、むやみやたらに吸血し人を殺める吸血鬼も存在するのは事実だ。
だが、全てでは無い。悪の芽があるというのは全ての生き物が共通だ。
そこに意識があるかどうか、故意かどうかは置いておくとしても。
だが、やはり恐怖を抱く者がいるのは確かだ。
人間の中にも我ら魔法使いを恐れる者もいた。姿を隠すようになってはもはや昔の事だが。
私の友人にも吸血鬼はいるが、もちろん善良だ。
神父が恐れる気持ちが全く分からないでもないが、どうか誤った選択だけはしないでほしいと切に願う。
そもそも、私は魔法使いというのは「周りよりも少しだけ奇跡を起こせる人間」だと、そう考えている。
まあ、逆に人間を魔法の使えない魔法使い、と思う輩もいるようだが。
だからこそ共存していくべきだとも考えるのだが、それが無理な事も仕方ないのだろう。残念な事だが。
私はこのような考えを持っている為に科学、機械に興味を持ち、ここに来ている。
もし私を奇特だと思い、その奇特な物に恐怖を持つ者がいるならば、いくら凶暴な者でも手を出せないこの空間だけは歩み寄ってきて欲しいと思う。
そして、私達の事を理解してほしい。
今日は任務時に溜まった仕事の処理に追われ、結局杖を買いに行く事はできなかった。
アルブスにはもう少し我慢してもらう事になる。
早く買ってやりたいが、まずはこの薬の依頼書を片付けるのが先だろう。
ちょっとした問題はあったが、無事にアルブスの杖を購入できた。
結局アルブスも連れて行ったのだが、喜んでくれたようで何よりだ。
ついでに服を何着かと小さなネックレスを買った。とても気に入ってくれたようだが、何度も礼を言われるのは少々気恥ずかしい。
そして街中で泣かれたときはどうしようかと思ったものだ。嬉し涙、という奴か。
このネックレスは近々魔力抑制の為の装置へと改良するつもりだ。
最近疲れが溜まるというか、疲れが取れないな。
最近一度に魔力を使いすぎたせいだろうか。
アルブスには無理をさせないように気を付けなくては。
アルブスが来てからというものの、明らかに家の中が賑やかになった。
小さき者達は隠れているつもりだろうが、私が分かっていないとでも思っているのだろうか。
アルブスはやはり周りの者を惹きつける魅力があるようだ。
それは誇らしい事でも微笑ましい事でもうれしい事でもあるが、不安でもある。
その特性を生かして早いうちに守護獣でもつけてやってもいいかもしれない。
アルブスの浮遊呪文はそれなりに使えるようになってきた。
まだ華麗にとは言わないが、杖を構えて意識を集中すれば数冊の本なら浮かせて移動できるようになってきた。
アルブスは本当に好奇心が強く頑張り屋だ。
一人で魔法訓練をしていたらしく、今日は椅子を浮かせてみせた。
あまりの上達の速さに感動する一方で不安もある。
急に魔力を使いすぎると、なんといえばいいか、魔力の器のようなものがまだ小さい未熟なアルブスは体に影響が出る恐れがある。
アルブスが一人でどれほど練習をしていたのかわからないためなんとも言えないが、アルブスはたまにやり過ぎる。
勉学の好奇心に規制はしたくないが、教える立場、、保護者の立場からしても安全は考えねばならないだろう。
落ち着いてきたな。今度は神父が忙しいようだが、こっちまで厄介事が来ない事を祈ろう。
今はアルブスの訓練に手一杯だとでも言わせてもらおうか。
今日の夕飯は何にしようか。
今回の仕事は長かった。長くなる事を予想してアルブスを連れて行ったのは正解だったな。
長らくこの機械にも触れていない為か、また文字を打ち込む速度が落ちた気がする。
また今夜仕事が入っているが、アルブスを連れていくべきだろうか。
今回の任務でアルブスも大分体力がついたようだ。
その変わりといってはなんだが、魔法の練習も振りだしに戻ってしまいそうでもあるが。
出発は明日にして、やはり今夜は久々にアルブスに魔法を教えるとしようか。
最悪だ。留守中に何者かに家が荒らされている。
犯人は残されたフクロウの羽で検討はついているが。あの神父、何のつもりだ。
薬瓶が主な被害にあっていたが、アルブスが怪我をする前に気付いてよかった。
薬瓶の補充、薬、材料の補充と、神父への折檻。
やる事が増えたな。
アルブスが掃除を手伝ってくれるらしい。
あの子は本当に出来た良い子だ。
さすがに私の部屋は危険な為、キッチン周りの埃取りを頼んだ。
意気揚々と掃除に向かう背中が頼もしい。
さて、私も始めるとしよう。
今回の依頼は見送らせてもらった。
さすがに連続で長期の仕事となると、生活に支障が出そうだ。
それに、アルブスの訓練もしなければならない。思っていた通り、今回の長期任務中訓練をしていなかったせいか以前よりもレベルが格段に落ちていた。
魔法の訓練を1からやり直す事よりも、アルブスの落ち込みようが心配だ。
今夜のうちに甘い物でも買ってこようかと思う。
少しは元気を出してくれるといいのだが。
今日久々に神父に会ったが「また過保護が進んでいる」と笑われた。
自分では自覚はないのだが、客観的にみたら過保護なのだろうか…。
それとも、神父にからかわれただけだろうか?
仕事が終わらない…。
調合の方が専門だと何度言ったら分かるんだあの神父は…。
休憩がてら夜の森へ散歩に行ってくるとしよう。
薬の材料集めも兼ねて気分転換といったところだ。
徐々に冷え込んできたな。
アルブスの防寒具を買わなければならない。
火の魔法は、まだ教えたくはないからな。
ここらでローブを買うのも手だろうか。
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